JP6596905B2 - 加工性と熱処理性に優れた高炭素鋼帯の製造方法 - Google Patents
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Description
これらの部品は、高炭素鋼帯を素材として、打ち抜き、曲げ、プレス加工、切削等の加工工程と、焼入れ、焼戻し、その他の熱処理工程を経て製造される。部品の品質向上、部品製造の効率化、低コスト化のためには、軟質で良好な加工性と、熱処理後の強度が容易に得られる熱処理特性が求められている。
高炭素鋼帯は、炭素を高濃度に含んでいるので、熱間圧延終了後の鋼帯は、一般にフェライトとパーライトからなる硬質な組織を有している。そのため、軟質で加工性の良好な鋼帯を製造するために、通常、セメンタイトを球状化させて軟質にする球状化焼鈍が施されることが多い。
また、連続焼鈍炉は設備費が高額であり、連続操業することが前提であるため、小ロットの生産品にも、コイル箱焼鈍が採用されている。
しかし近年では、自動車用部品や機械部品等の素材である高炭素鋼帯を製造するに際し、さらなる高強度化および製造性の向上が望まれているが、これらをすべて満たす技術は未だ開発されていないのが現状である。
すなわち、これまで、熱処理後の強度が容易に得られる熱処理性については、鋼成分の観点からの検討は多くされてきているものの、鋼帯の製造方法によって熱処理性を向上させる技術に関しては未だ検討されておらず、加工性と熱処理性を両立しうる高炭素鋼帯を効率よく製造できる技術の開発が望まれている。
[2] 前記鋼は、前記Feに代えて、質量%で、B:0.0003〜0.0050%及びTi:0.027%以下の1種又は2種を含む、上記[1]に記載の加工性と熱処理性に優れた高炭素鋼帯の製造方法。
[3] 前記再加熱処理を行う際、前記再加熱処理後の前記鋼帯をコイル状に巻き取ったときに、前記鋼帯の幅方向の両端の温度が前記鋼帯の幅中央の温度よりも高くなる温度分布を持つように、前記鋼帯の幅方向に再加熱温度の分布を設けることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の加工性と熱処理性に優れた高炭素鋼帯の製造方法。
[4] 質量%で、C:0.15〜1.0%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.2〜3.0%、P:0.005〜0.10%、S:0.0005〜0.010%、Al:0.005〜0.50%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を、オーステナイト域で熱間圧延して鋼帯とした後、この鋼帯を550℃以下の温度で巻き取りコイルとし、次いで、このコイルを巻き解きながら、巻き解かれた前記鋼帯を50℃/s以上の平均加熱速度で380℃以上、700℃以下まで再加熱処理し、再度、前記鋼帯を巻き取る高炭素鋼帯の製造方法であって、 前記再加熱処理を行う際、前記再加熱処理後の前記鋼帯をコイル状に巻き取ったときに、前記鋼帯の幅方向の両端の温度が前記鋼帯の幅中央の温度よりも高くなる温度分布を持つように、前記鋼帯の幅方向に再加熱温度の分布を設けることを特徴とする加工性と熱処理性に優れた高炭素鋼帯の製造方法。
[5] 前記鋼は、前記Feに代えて、質量%で、B:0.0003〜0.0050%及びTi:0.027%以下の1種又は2種を含む、上記[4]に記載の加工性と熱処理性に優れた高炭素鋼帯の製造方法。
[6] 前記再加熱処理をし、再度、前記鋼帯を巻き取った後に、箱焼鈍することを特徴とする上記[1]〜[5]の何れか一項に記載の加工性と熱処理性に優れた高炭素鋼帯の熱処理方法。
図1に示すように、本実施形態では、C含有鋼を、オーステナイト域で熱間圧延して鋼帯Sとし、550℃以下の温度でこの鋼帯Sを巻き取りコイル2とした後、このコイル2を巻きほどき装置3によって巻き解きながら、巻き解かれた鋼帯Sを加熱装置1によって50℃/s以上の平均加熱速度で700℃以下まで再加熱し、再度鋼帯Sを巻取装置4によってコイル状に巻き取ってコイル2´とする。
均一組織の観点から巻取温度は低温ほど好ましい。炭素が均一に分散した組織は、炭化物中への合金元素の濃化がなく、部品とした後の熱処理の加熱の際に炭化物の溶解が迅速である。特に、高周波焼入のような加熱時間が短い熱処理において、優れた熱処理性を示す。
加熱装置(再加熱設備)1をコンパクトにし、かつ再加熱の生産性を高めるため、再加熱する際の平均加熱速度は速い方が好ましい。平均加熱速度が50℃/s未満であると、加熱帯長が長くなる、もしくは生産性が低下して経済的でなくなるので、平均加熱速度は50℃/s以上とする。なお平均加熱速度の上限は特に限定せず、用いる加熱設備によって適宜決定してよいが、設備能力上、500℃/s以下とすることができる。
加熱装置1としては、急速加熱および均一加熱が可能な通電加熱或いは誘導加熱等の電気加熱手段が好ましい。
再加熱温度が700℃を超えると、オーステナイトが出現し、その後の冷却によりパーライトが析出し、炭素の不均一が生じて熱処理性が低下するため、再加熱温度の上限は700℃とする。再加熱温度の下限は特に限定しないが、十分軟化させるための観点から、380℃以上とすることが望ましい。
このように、再度巻き取り後の鋼帯コイル2´の温度を下げることで生産性が向上する上、再加熱温度を高くすることは加熱設備が大型化することから、再加熱温度を低く抑えてもよいが、再加熱温度が低い場合には軟化に時間がかかるので、再度巻取った後にコイル2´が自然に冷却されると焼戻量が少なくなりすぎる。
その場合は、再加熱工程して再度巻取りコイル2´とした後に、コイル2´が高温のまま、箱焼鈍を行い(図2参照)、焼戻し時間を長くすることが好ましい。
箱焼鈍を行う場合であっても、鋼帯コイル2´はあらかじめ予加熱されているので、通常の箱焼鈍とは異なり、箱焼鈍炉内での昇温が不要であり、箱焼鈍時間を短縮できる。
そのため、必要に応じて、鋼帯の長手方向に再加熱温度の分布を設けて、巻き終えた状態における鋼帯の冷却条件をコイル内外周で、均一化することもできる。
すなわち、コイル2を巻き解きながら加熱装置1にて再加熱する際、鋼帯の先端側よりも尾端側の方の再加熱温度が高くなるよう温度分布を付与することが好ましい。このような温度分布を付与した鋼帯を再度巻き取りコイル2´とすることで、このコイル2´の外周側と内周側との温度偏差を解消させることができる。
すなわち、コイル2を巻き解きながら加熱装置1にて再加熱する際、鋼帯の幅方向の両端の再加熱温度が、鋼帯の幅方向中央の再加熱温度よりも高くなるよう温度分布を付与することが好ましい。このような温度分布を付与した鋼帯を再度巻き取りコイル2´とすることで、このコイル2´の幅方向での冷却条件を均一とすることができる。
なお、以下の説明においては、特に指定の無い限り、「%」は質量%を表すものとする。
Siは、脱酸剤として作用し、スケール密着性を向上させ、また、焼入れ性の向上に有効な元素である。0.05%未満では、熱延時にスケールが剥離しやすくなるので、下限を0.05%とすることが好ましい。一方1.0%を超えると、Ac3変態点が上昇し、熱処理性が劣化のおそれがあるので、上限を1.0%とすることが好ましい。
Mnは、脱酸剤として作用し、また、焼入れ性の向上に有効な元素である。0.2%未満では、添加効果が得られないので、下限を0.2%とすることが好ましい。一方、3.0%を超えると、熱間圧延荷重が増加し、焼入れ性が飽和するおそれがあるので、上限を3.0%とすることが好ましい。
Pは、固溶強化元素であり、鋼帯の強度に有効な元素である。過剰な含有は、靭性を阻害するので、上限を0.10%とすることが好ましい。0.005%未満に低減することは、精錬コストの上昇を招くので、下限を0.005%とすることが好ましい。
Sは、非金属介在物を形成し、加工性や、熱処理後の靭性を阻害する原因となるので、上限を0.010%とすることが好ましい。0.0005%未満に低減することは、精錬コストの大幅な上昇を招くので、下限を0.0005%とすることが好ましい。
Alは、脱酸剤として作用する元素である。0.005%未満では、添加効果が十分に得られないので、下限を0.005%とすることが好ましい。一方、0.50%を超えると、Ac3変態点が上昇し、熱処理性が劣化するので、上限を0.50%とすることが好ましい。
Bは、焼入れ性を向上させる元素であり、部品の用途に応じて必要により添加してよいが、0.0003%以下ではその効果が十分でないため、下限を0.0003%とすることが好ましい。一方、0.0050%を超えると、添加効果は飽和し、析出物を形成して靭性を劣化させるさらに、スラブの表面割れが生じるおそれがあるので、上限を0.0050%とすることが好ましい。
また、鋼帯の原料としてスクラップを用いた場合、不可避的にSn、Sb、及び、Asの1種又は2種以上が混入する場合があるが、いずれも、極微量であれば本発明の効果を阻害しない。
また、鋼帯の溶製原料としてスクラップを用いた場合、Zn、Zr等の元素が、不可避的不純物として混入するが、本実施形態に係る鋼帯においては、本発明の効果、特性を阻害しない範囲で、上記元素の混入を許容する。なお、Zn、Zr等以外の元素でも、本発明鋼板の特性を阻害しない範囲で、混入を許容する。
まず、質量%で、C:0.20%、Si:0.25、Mn:1.3%、P:0.017、S:0.003、Al:0.04%、Ti:0.027、B:0.002%を含有する鋼を実験室で溶解し、熱間圧延により板厚2.0mmの鋼板となし、その後、再加熱処理を施した。
熱処理性の評価は、通電加熱式の加熱装置で再加熱処理を行い徐冷却した後の鋼板の板厚中心のビッカース硬さを用いて評価した。具体的に、熱処理性評価の温度履歴は、昇温速度100℃/sで850℃まで昇温した後、冷却速度30℃/sで室温までガス冷却を行い、ビッカース硬さを測定した。
以上の試験を行った巻取温度、再加熱温度の組み合わせと、熱処理性評価試験の前(熱処理評価前)と後(熱処理評価後)のビッカース硬さを表1に示す。
なお、熱処理性の評価は以下のように判定した。
<熱処理評価前>
◎:HV<200
○:200≦HV<300
△:300≦HV<400
×:400<HV
<熱処理評価後>
○:HV≧400
×:400>HV
熱処理評価後の硬さは、巻取温度が本発明範囲より高い試験番号1−7,1−8および再加熱温度が本発明範囲より高い試験番号1−4では、熱処理評価後のビッカース硬さが400未満と低くなり熱処理性の向上が不十分となっている。
巻取温度および再加熱温度を本発明の条件範囲とした、試験番号1−2,1−3,1−5,1−6は、熱処理評価前の硬さが低く、熱処理評価後の硬さが高くなっており、加工性と熱処理性に優れている。
まず、質量%で、C:0.20%、Si:0.25、Mn:1.3%、P:0.017、S:0.003、Al:0.04%、Ti:0.027、B:0.002%を含有する鋼を実験室で溶解し、熱間圧延により板厚2.0mmの鋼板となし、その後、再加熱処理を施した。
熱処理性の評価は、通電加熱式の加熱装置で箱焼鈍を模擬した熱処理を行った後の鋼板の板厚中心のビッカース硬さを用いて評価した。具体的に、熱処理性評価の温度履歴は、昇温速度100℃/sで850℃まで昇温した後、冷却速度30℃/sで室温までガス冷却を行い、ビッカース硬さを測定した。
以上の試験を行った巻取温度、再加熱温度の組み合わせと、熱処理性評価試験の前(熱処理評価前)と後(熱処理評価後)のビッカース硬さを表2に示す。
なお、熱処理性の評価は実施例1と同様にして行った。
熱処理評価後の硬さは、巻取温度が本発明範囲より高い試験番号2−7および再加熱温度が本発明範囲より高い試験番号2−3、2−6では、熱処理評価後のビッカース硬さが400未満と低くなり熱処理性の向上が不十分となっている。
巻取温度および再加熱温度を本発明の条件範囲とした、試験番号2−1、2−2、2−4,2−5は、熱処理評価前の硬さが低く、熱処理評価後の硬さが高くなっており、加工性と熱処理性に優れている。
2、2´:コイル(鋼帯コイル)
3:巻きほどき装置
4:巻取装置
S:鋼帯
Claims (6)
- 質量%で、C:0.15〜1.0%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.2〜3.0%、P:0.005〜0.10%、S:0.0005〜0.010%、Al:0.005〜0.50%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を、オーステナイト域で熱間圧延して鋼帯とした後、この鋼帯を550℃以下の温度で巻き取りコイルとし、次いで、このコイルを巻き解きながら、巻き解かれた前記鋼帯を50℃/s以上の平均加熱速度で380℃以上、700℃以下まで再加熱処理し、再度、前記鋼帯を巻き取る高炭素鋼帯の製造方法であって、
前記再加熱処理を行う際には、前記再加熱処理後に巻き取ったコイルの外周側が内周側よりも高温になる温度分布を持つように、前記鋼帯の長手方向に再加熱温度の分布を設けることを特徴とする加工性と熱処理性に優れた高炭素鋼帯の製造方法。 - 前記鋼は、前記Feに代えて、質量%で、B:0.0003〜0.0050%及びTi:0.027%以下の1種又は2種を含む、請求項1に記載の加工性と熱処理性に優れた高炭素鋼帯の製造方法。
- 前記再加熱処理を行う際、前記再加熱処理後の前記鋼帯をコイル状に巻き取ったときに、前記鋼帯の幅方向の両端の温度が前記鋼帯の幅中央の温度よりも高くなる温度分布を持つように、前記鋼帯の幅方向に再加熱温度の分布を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工性と熱処理性に優れた高炭素鋼帯の製造方法。
- 質量%で、C:0.15〜1.0%、Si:0.05〜1.0%、Mn:0.2〜3.0%、P:0.005〜0.10%、S:0.0005〜0.010%、Al:0.005〜0.50%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を、オーステナイト域で熱間圧延して鋼帯とした後、この鋼帯を550℃以下の温度で巻き取りコイルとし、次いで、このコイルを巻き解きながら、巻き解かれた前記鋼帯を50℃/s以上の平均加熱速度で380℃以上、700℃以下まで再加熱処理し、再度、前記鋼帯を巻き取る高炭素鋼帯の製造方法であって、
前記再加熱処理を行う際、前記再加熱処理後の前記鋼帯をコイル状に巻き取ったときに、前記鋼帯の幅方向の両端の温度が前記鋼帯の幅中央の温度よりも高くなる温度分布を持つように、前記鋼帯の幅方向に再加熱温度の分布を設けることを特徴とする加工性と熱処理性に優れた高炭素鋼帯の製造方法。 - 前記鋼は、前記Feに代えて、質量%で、B:0.0003〜0.0050%及びTi:0.027%以下の1種又は2種を含む、請求項4に記載の加工性と熱処理性に優れた高炭素鋼帯の製造方法。
- 前記再加熱処理をし、再度、前記鋼帯を巻き取った後に、箱焼鈍することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の加工性と熱処理性に優れた高炭素鋼帯の熱処理方法。
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