JP6747228B2 - 加工性に優れた高炭素鋼帯の製造方法 - Google Patents
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Description
この高炭素鋼帯は、加工業者が成形した後、熱処理されて各種部品として完成するが、高炭素故に圧延したままでは強度が高く、穴広げ性等の成形性に劣り、加工性が良いとはいえない。
したがって、通常は、納品業者である製鉄メーカーが、熱処理して成形性を確保している。
加工性を付与するために鋼帯を軟質化させる焼鈍熱処理としては、古くは鋼帯コイルを箱焼鈍する方法が用いられてきたが、展開した鋼帯を加熱炉内で走行させながら加熱する連続焼鈍が開発されてからは、この連続焼鈍法が用いられることが多くなった。
この球状化焼鈍には長時間の加熱処理が必要とされ、連続焼鈍方式では対応が困難となるため、依然として、コイル箱焼鈍が採用されている。
高炭素鋼に対して箱焼鈍を施す技術は、特許文献1,2以外にも多数存在するが、何れも、昇温条件や焼鈍雰囲気の工夫にとどまり、箱焼鈍前に、電気的加熱方法で鋼帯に任意の温度分布を付与することについて、記載した文献は見当たらない。
(1)質量%で、C:0.33〜1.0%、Si:0.05〜0.4%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.005〜0.03%、S:0.0001〜0.006%、Al:0.005〜0.10%、N:0.001〜0.01%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物である鋼を、オーステナイト域で熱間圧延し、550℃以下の温度で巻き取った(第1の工程)後、コイルを展開し、50℃/s以上の加熱速度で600℃以上700℃以下まで再加熱し、再度巻き取る(第2の工程)ことを特徴とする熱処理性に優れた高炭素鋼帯の製造方法。
Cは、鋼板の強度を確保するうえで重要な元素であり、0.15%以上添加し、所要の強度を確保する。0.15%未満では、焼入れ性が低下し、機械構造用高強度鋼板としての強度が得られないので、下限を0.15%とする。1.0%を超えると、靭性や加工性を確保する熱処理に長時間を要することになるので、上限を0.95%とする。好ましくは、0.25〜0.85%である。
Siは、脱酸剤として作用し、また、焼入れ性の向上に有効な元素である。0.05%未満では、添加効果が得られないので、下限を0.05%とする。0.4%を超えると、熱間圧延時のスケール疵に起因する表面性状の劣化を招くだけでなく、再加熱時の軟質化を阻害するので、上限を0.4%とする。好ましくは、0.10〜0.3%である。
Mnは、脱酸剤として作用し、また、焼入れ性の向上に有効な元素である。0.5%未満では、添加効果が得られないので、下限を0.5%とする。2.0%を超えると、焼入れ、焼戻し後の衝撃特性を劣化させるだけでなく、再加熱時の軟質化を阻害するので、上限を2.0%とする。好ましくは、0.5〜1.5%である。
Pは、固溶強化元素であり、鋼板の強度に有効な元素である。過剰な含有は、靭性を阻害するので、上限を0.03%とする。0.005%未満に低減することは、精錬コストの上昇を招くので、下限を0.005%とする。好ましくは、0.007〜0.02%である。
Sは、非金属介在物を形成し、加工性や、熱処理後の靭性を阻害する原因となるので、上限を0.006%とする。0.0001%未満に低減することは、精錬コストの大幅な上昇を招くので、下限を0.0001%とする。好ましくは、0.001〜0.004%である。
Alは、脱酸剤として作用し、また、Nの固定に有効な元素である。0.005%未満では、添加効果が十分に得られないので、下限を0.005%とする。0.10%を超えると、添加効果は飽和し、また、表面疵が発生し易くなるので、上限を0.10%とする。好ましくは、0.01〜0.05%である。
Nは、Nは窒化物を形成する元素である。湾曲型連続鋳造における鋳片曲げ矯正時に窒化物が析出すると、鋳片が割れることがあるので、上限を0.01%とする。少ないほど好ましいが、0.001%未満に低減するのは、精錬コストの増加を招くので、下限を0.001%とする。好ましくは、0.004〜0.007%である。
Crは、焼入れ性の向上に有効な元素である。0.05%未満では、添加効果がないので、下限を0.05%とする。1.0%を超えると再加熱時の軟質化を阻害するので、上限を1.0%とする。好ましくは、0.07〜0.7%である。
Niは、靭性の向上や、焼入れ性の向上に有効な元素である。0.01%未満では、添加効果がないので、下限を0.01%とする。1.0%を超えると再加熱時の軟質化を阻害するし、また、コスト増を招くので、上限を1.0%とする。好ましくは、0.05〜0.5%である。
Cuは、焼入れ性の確保に有効な元素である。0.05%未満では、添加効果が不十分であるので、下限を0.05%とする。0.5%を超えると、硬くなり過ぎ、冷間加工性が劣化するので、上限を0.5%とする。好ましくは、0.08〜0.2%である。
Moは、焼入れ性の向上と、焼戻し軟化抵抗性の向上に有効な元素である。0.01%未満では、添加効果が小さいので、下限を0.01%とする。1.0%を超えると、再加熱時の軟質化を阻害するので、上限を1.0%とする。好ましくは、0.05〜0.5%である。
Nbは、炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化防止や靭性改善に有効な元素である。0.01%未満では、添加効果は充分に発現しないので、下限を0.01%とする。0.5%を超えると、再加熱時の軟質化を阻害するので、上限を0.5%とする。好ましくは、0.07〜0.2%である。
Vは、Nbと同様に、炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化防止や靭性改善に有効な元素である。0.01%未満では、添加効果が小さいので、下限を0.01%とする。0.5%を超えると、炭化物が生成し焼入れ硬度が低下するので、上限を0.5%とする。好ましくは、0.07〜0.2%である。
Taは、Nb、Vと同様に、炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化防止や靭性改善に有効な元素である。0.01%未満では、添加効果が小さいので、下限を0.01%とする。0.5%を超えると、炭化物が生成し焼入れ硬度が低下するので、上限を0.5%とする。好ましくは、0.07〜0.2%である。
Bは、微量の添加で、焼入れ性を高めるのに有効な元素である。0.001%未満では、添加効果がないので、下限を0.001%とする。0.01%を超えると、鋳造性が低下し、また、B系化合物が生成して靭性が低下するので、上限を0.01%とする。好ましくは、0.003〜0.007%である。
Tiは、脱酸剤として作用し、また、Nの固定に有効な元素である。N量との関係から、0.005%以上の添加が必要である。0.2%を超えてTiを添加しても、添加効果は飽和し、コストも増加するだけでなく、製造工程中の吸窒の促進、炭化物形成による有効炭素量の低減等によるTi系析出物量の増加を招き、焼入れ熱処理時のオーステナイト粒の粒成長を阻害し、焼入れ性を劣化させるので、上限を0.2%とする。好ましくは、0.01〜0.2%である。
Wは、鋼板の強化に有効な元素である。0.01%未満では、添加効果が発現しないので、下限を0.01%とする。0.5%を超えると、加工性が低下するので、上限を0.5%にする。好ましくは、0.04〜0.2%である。
熱延工程終了後、鋼帯をコイル状に巻き取るに際しては、鋼帯温度を550℃以下に冷却しておく。
熱延終了温度から、550℃以下の巻取り温度までの冷却に要する時間や、鋼帯の板厚の違い等によって、鋼帯コイルのマトリックスを構成するフェライト組織中に、微細なベイナイトやマルテンサイトが部分的に発生する。
本発明においては、これらを硬質相と称する。
巻取り後の放置時間を長くとれば、硬質相とマトリックスの結晶粒サイズは増大し、鋼帯は柔らかくなる傾向を示す。
熱延を終了した鋼帯コイルをランアウトテーブル上で所望の温度まで、所定の冷却速度で冷却し、その後、鋼帯を直接通電加熱手段や電磁誘導加熱手段によって、50℃/s以上の加熱速度で600℃以上700℃以下の所望の温度まで再加熱する。
一方、試験2(表2)、板厚1.2mmの鋼種A〜Eを、表に示す条件で製造したものである。
本発明においてプレス加工性は密着曲げ可能かどうかで判定を行った。
焼入性の評価は得られた鋼板を熱処理シミュレータを用い10℃/sで900℃に加熱して0sと180s保持後に50℃/sで冷却して硬さ測定を行った。マルテンサイト組織を70%以上確保した上で、180s保持と0s保持の硬さの差がHv35以下で焼入性良好と判断した。
Claims (7)
- 質量%で、C:0.33〜1.0%、Si:0.05〜0.4%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.005〜0.03%、S:0.0001〜0.006%、Al:0.005〜0.10%、N:0.001〜0.01%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物である鋼を、オーステナイト域で熱間圧延し、550℃以下の温度で巻き取った(第1の工程)後、コイルを展開し、50℃/s以上の加熱速度で600℃以上700℃以下まで再加熱し、再度巻き取ること(第2の工程)を特徴とする熱処理性に優れた高炭素鋼帯の製造方法。
- 質量%で、C:0.33〜1.0%、Si:0.05〜0.4%、Mn:0.5〜2.0%、P:0.005〜0.03%、S:0.0001〜0.006%、Al:0.005〜0.10%、N:0.001〜0.01%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物である鋼を、オーステナイト域で熱間圧延し、550℃以下に冷却した後、50℃/s以上の加熱速度で600℃以上700℃以下まで再加熱し、巻き取ることを特徴とする熱処理性に優れた高炭素鋼帯の製造方法。
- 再加熱が、電気的加熱手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高炭素鋼帯の製造方法。
- 鋼帯の長手方向に再加熱温度の分布を設けて、巻き終えた状態における鋼帯の冷却条件をコイル内外周で均一化することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の高炭素鋼帯の製造方法。
- 質量%で、さらに、Cr:0.05〜1.0%、Ni:0.01〜1.0%、Cu:0.05〜0.5%、及び、Mo:0.01〜1.0%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の高炭素鋼帯の製造方法。
- 質量%で、さらに、Nb:0.01〜0.5%、V:0.01〜0.5%、Ta:0.01〜0.5%、B:0.001〜0.01%、Ti:0.005〜0.2%、及び、W:0.01〜0.5%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の高炭素鋼帯の製造方法。
- 質量%で、さらに、Sn:0.003〜0.03%、Sb:0.003〜0.03%、及び、As:0.003〜0.03%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の高炭素鋼帯の製造方法。
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