以下に、本発明による飲料注出装置の一実施形態を図面を参照して説明する。本発明の飲料注出装置10はビール等の飲料をグラスまたはジョッキ(容器)に自動で注出することを目的としたものである。図1及び図2に示したように、この実施形態の飲料注出装置10は、装置本体11の前部に注出コック40、コック操作装置50、容器受台装置60及び受台傾動装置70を含んだ自動注出ユニット12L,12Rを左右に2つ備えたものであり、自動注出ユニット12L,12Rは左右同一のものであるので、以後の説明においては自動注出ユニット12L,12Rの一方だけを説明する。
図1〜図3に示したように、飲料注出装置10は、装置本体11内に設けられた冷却水を貯える冷却水槽20と、冷却水槽20内に配設されてビールを冷却する飲料冷却管13と、装置本体11の前部にて飲料冷却管13の導出端部13aに接続された注出コック40と、注出コック40の下側にて装置本体11の前部に傾動可能に軸化された傾動基板62と、傾動基板62の前側に取り付けられて注出コック40から注出されるビールを受けるグラスまたはジョッキを載置する受台63とを有する容器受台装置60と、装置本体11の前部に設けられて、傾動基板62を起立した起立姿勢と傾斜した傾斜姿勢との間で傾動させる受台傾動装置70とを備えている。
この飲料注出装置10は、受台傾動装置70によって傾動基板62を起立姿勢から傾斜姿勢に傾動させることで受台63に載置したグラスまたはジョッキを傾斜させるようにして注出コック40からビールを注出するようにしたものである。飲料注出装置10においては、冷却水槽20は冷却水を貯える水槽本体21の前部に容器受台装置60と受台傾動装置70を支持する支持板部22を一体的に設けた。以下に、本発明の飲料注出装置10について詳述する。
図3に示したように、飲料注出装置10の装置本体11内には上部に冷却水槽20と、下部の機械室に冷却水槽20内の冷却水を冷却する冷凍装置30とが設けられている。図4及び図6に示したように、冷却水槽20は、冷却水を貯える水槽本体21と、水槽本体21の前部に一体的に形成された支持板部22と、水槽本体21の後部に一体的に形成された外側後壁23と、水槽本体21の左右両側部に設けたサイドパネル24と、水槽本体21の下側に設けた底板25とを備えている。冷却水槽20の水槽本体21と支持板部22と外側後壁23とは樹脂材による一体成形品である。また、サイドパネル24も樹脂材による成型品である。左右のサイドパネル24は前後対称の形状となっているため、左右のサイドパネル24は同一形状の共通部品となっている。
図3及び図4に示したように、水槽本体21は上側が開口した箱形をしている。水槽本体21には前壁の上部前縁から水槽本体21の前壁外周面と離間した状態で下側に垂下する支持板部22が一体的に形成されており、図2及び図3に示したように、支持板部22には後述する自動注出ユニットの注出コック40、コック操作装置50、容器受台装置60及び受台傾動装置70が支持されている。水槽本体21には後壁の上部後縁から水槽本体21の前壁外周面と離間した状態で下側に垂下する外側後壁23が一体的に形成されており、外側後壁23は装置本体11の外装の一部(外装の後壁上部)となっている。
図2、図4及び図5に示したように、水槽本体21の左右両側には支持板部22と外側後壁23の左右両端縁と密着して取り付けられたサイドパネル24が設けられており、サイドパネル24は装置本体11の外装の一部(外装の左右両側壁上部)となっている。図6及び図7に示したように、水槽本体21の下側には底板25が設けられており、底板25は支持板部22と外側後壁23と左右のサイドパネル24の各下部に密着して取り付けられている。図1及び図8(a)に示したように、水槽本体21の上側にはトップパネル26が設けられており、トップパネル26は水槽本体21の上面開口を覆っている。冷却水槽20の水槽本体21の周壁外周面、支持板部22、外側後壁23、左右一対のサイドパネル24及び底板25により仕切られた空間内には発泡断熱材が充填されており、水槽本体21内の冷却水は空間内の発泡断熱材によって外部の熱の影響を受けにくくなっている。
図3に示したように、水槽本体21は冷却水を貯えるものであり、水槽本体21内には内周面に沿って冷凍装置30の蒸発管31が螺旋状に配設されている。蒸発管31は螺旋の進行方向を上下方向となるように水槽本体21内の内周面に沿って螺旋状に配設されている。水槽本体21内の冷却水は蒸発管31を循環する冷媒の気化熱によって冷却され、蒸発管31の周囲には所定の厚みの氷の層が形成される。
図3に示したように、水槽本体21内の四隅部には螺旋状に配設した蒸発管31を支持するホルダ32が立設している。ホルダ32には蒸発管31が係合する切欠部32aが上下に複数形成されており、蒸発管31は切欠部32aに係合することで上下方向にて螺旋の進行方向にて所定の間隔となるように保持されている。水槽本体21の内周面に沿って螺旋状に配設された蒸発管31は、水槽本体21の周方向に進むにつれて徐々に上下方向に高さが変わることになるが、水槽本体21の四隅部に同じホルダ32を用いたことに対応して、水槽本体21の底部の四隅部には各々のホルダ32の高さを少しずつ変える高さ調整段部21aが形成されている。すなわち、四隅部の各ホルダ32の各切欠部32aは高さ調整段部21aによって隣接する各ホルダ32の各切欠部32aに対して螺旋状の蒸発管31の周方向に進むに連れて上下方向に変わる高さ分だけ高さが異なるように配置されている。
図3に示したように、水槽本体21内の中心部には螺旋状に巻回した飲料冷却管13が立設している。上述したように、この実施形態の飲料注出装置10は、2つの自動注出ユニット12L、12Rを備えたのに対応して、内側及び外側にて2つの飲料冷却管13を備えている。2つの飲料冷却管13は水槽本体21の底部の中心部に設けた支持台部21bに支持されている。各飲料冷却管13の導入端部には装置本体11の外部に設けたビア樽が接続され、飲料冷却管13の導出端部13aには装置本体11の上部に設けた注出コック40が接続されている。なお、ビア樽にはガスボンベ(図示しない)が接続されており、ビア樽のビールはガスボンベの炭酸ガスの圧力によって飲料冷却管13に送られるようになっている。
図3及び図8(b)に示したように、水槽本体21には撹拌装置14が設けられている。撹拌装置14は、水槽本体21の左右両側部の上縁に架設した支持板14aの上面に撹拌モータ14bを備えている。撹拌モータ14bにより回転する回転軸14cは支持板14aを貫通して螺旋状の飲料冷却管13の中央部となる位置で水槽本体21内に延び、先端には冷却水を撹拌する撹拌羽根14dが固定されている。撹拌モータ14bにより回転軸14cを回転させると、回転軸14cの先端部の撹拌羽根14dが水槽本体21内の螺旋状の飲料冷却管13の内側で回転し、撹拌羽根14dは螺旋状の飲料冷却管13の内側にて上部から底部に冷却水の流れを発生させる。支持板14aの前縁には隔壁14eが立設しており、隔壁14eは後述するトップパネル26に設けた給水口26aから注入される冷却水が撹拌モータ14b及び後述する制御装置80にかかるのを防ぐ機能を有している。
図8(c)に示したように、水槽本体21内には氷厚検知センサ15が設けられている。氷厚検知センサ15は、水槽本体21の右側部上縁から下方に延出して蒸発管31の周囲に設けたブラケット15aと、ブラケット15aに固定した一対の電極を備えている。氷厚検知センサ15は、一対の電極の間の電位差または電気抵抗(電気伝導度)に基づいて蒸発管31の周囲に所定の厚みの氷が形成されたことを検出するものである。ブラケット15aは撹拌装置14の支持板14aの下側にて水槽本体21の右側部上縁に形成した凹部に係合した状態で支持板14aとともにねじでとも締めされている。
図8(b)、(c)に示したように、水槽本体21の前側底部には排水口21cが形成されており、図6及び図7に示したように、水槽本体21の底壁下面には排水口21cの周囲から下方に延びる排水筒部21dが下方に延出するように形成されている。排水筒部21dには排水パイプ(図示省略)が接続されており、水槽本体21内の冷却水は排水パイプによって装置本体11の外部に排出される。水槽本体21の前側底部の排水口21cは水槽本体21の内周面に沿って配設された蒸発管31の前部よりも少し後側に形成されている。水槽本体21の底部には排水口21cの前側にて上方に突出する仕切り板21eが形成されており、仕切り板21eは蒸発管31の周囲に形成される氷が排水口21cを塞ぐのを防ぐ機能を有している。
図2及び図3に示したように、支持板部22は注出コック40、コック操作装置50、容器受台装置60及び受台傾動装置70よりなる自動注出ユニット12L,12Rを固定するためのものである。支持板部22は下側に進むにつれて前方に少し傾斜している。支持板部22の前面には左右方向の中央部に上下方向に延びる隔壁22aが前方に突出して形成されており、隔壁22aにより仕切られた左右両部に上述した左右の自動注出ユニット12L,12Rが配設されている。
図2及び図4に示したように、支持板部22の前面には水槽本体21内の過剰な水位の冷却水を下方に案内する排水ガイド22bが一体的に形成されている。排水ガイド22bは、支持板部22の隔壁22aにより仕切られた右部の左端にて、支持板部22の隔壁22aの側壁とともに前側に開いた溝形をして、水槽本体21内の過剰な水位の冷却水を下方に案内するものである。排水ガイド22bは、支持板部22の隔壁22aにより仕切られた右部の左端にて、水槽本体21と支持板部22の上縁を他の上縁部分より低くなるように切り欠いた切欠部22b1を有し、水槽本体21内の過剰な水位の冷却水はこの切欠部22b1から溝形の排水ガイド22bに導かれるようになっている。支持板部22の下部にはさらに前方に傾斜させた傾斜部22cが形成されており、傾斜部22cは排水ガイド22bを流下する冷却水を装置本体11の下部に設けたドレンパン16に導くようになっている。
図4に示したように、支持板部22の上部には隔壁22aに仕切られた左右両部に注出コック40を取り付けるコック取付部22dが形成されている。コック取付部22dは支持板部22と水槽本体21の上部とを貫通する孔部22d1を有し、この孔部22d1には注出コック40を取り付けるコックブラケット42が嵌合されている。コック取付部22dは孔部22d1の周囲にて支持板部22の前面に前方に突出した環状の突部22d2が形成されており、環状の突部22dの前側はコックブラケット42の外周に形成したフランジ部42aによって塞がれている。環状の突部22dとフランジ部42aとにより断熱空間が形成されており、注出コック40内の飲料はこの段熱空間によって外部の熱の影響を受けにくくなっている。
図2及び図3に示したように、支持板部22の前面の左右両部にはコック取付部22dの下側に取付板27を介して容器受台装置60と受台傾動装置70とが取り付けられている。取付板27は、容器受台装置60と受台傾動装置70とを一体的に組み付けた状態として、容器受台装置60と受台傾動装置70とを支持板部22に支持させるものである。取付板27の上部には上下に延びる左右一対のレール27aが設けられており、レール27aにはコック操作装置50が上下に移動可能に支持されている。取付板27には、上下方向の中間部に容器受台装置60のブラケット61が固定され、下部に受台傾動装置70が固定されている。取付板27の前側にはカバー28が設けられており、カバー28はブラケット61の取付板27に固定した部分及び受台傾動装置70とを覆っている。
図4及び図5に示したように、サイドパネル24は樹脂材の成形品であり、前端部及び後端部を除いた中間部分の外周面には平坦面24aが形成され、前端部及び後端部にはなだらかな弧面となるように外側に拡がるリブ24b,24cが形成されている。サイドパネル24は前端部及び後端部になだらかな弧面よりなるリブ24b,24cを形成したことで、サイドパネル24に卵形のような曲面の印象を付与している。また、サイドパネル24の平坦面24aには前後のリブ24b,24cの間に意匠パネルを装着することができる。意匠パネルにステンレス等の磁性体部材を用いたときには、意匠パネルにボタン状または棒状の磁石を着脱可能に装着して、磁石によって意匠パネルを介してサイドパネル24にメモ等の紙を貼り付けることできる。
図6及び図7に示したように、底板25の前縁及び後縁には下側に折り曲げられた脚部25aが形成されており、これら脚部25aは水槽本体21の排水筒部21dよりも下側に延びている。水槽本体21の前後の支持板部22と外側後壁23との両側にサイドパネル24と、水槽本体21の下側に底板25とを組み付けた状態で冷却水槽20を作業台に載置しても、排水筒部21dは底板25の脚部25aによって作業台に当たらないようになり、排水筒部21dが製造過程で破損しにくくできた。また、底板25の脚部25aは支持板部22及び外側後壁23の各下端内周面と当接するように配置され、底板25の左右両側端部はサイドパネル24の下端部内周面に内側に突出して形成したリブ24dに当接している。水槽本体21の周壁外周面、支持板部22、外側後壁23、左右一対のサイドパネル24及び底板25により仕切られた空間内に発泡断熱材を充填するときには、底板25の脚部25aと支持板部22及び外側後壁23の各下端内周面とを当接させ、底板25の左右両側端部とサイドパネル24の下端部内周面に内側に突出して形成したリブ24dとを当接させ、これらの間に適宜に目張りをする。底板25は前後端部及び左右両端部を支持板部22、外側後壁23及びサイドパネル24に面接触させているので、これらの間から発泡断熱材がはみ出るのを防ぐことができた。
図1、図2及び図8(a)に示したように、トップパネル26の前部には水槽本体21に給水するための給水口26aが設けられており、トップパネル26を取り外すことなく給水口26aから水槽本体21に給水可能となっている。給水口26aには蓋体26bが着脱可能に設けられており、給水口26aは給水時以外は蓋体26bにより覆われている。給水口26aには水槽本体21に異物の混入を防ぐための格子26cが設けられている。格子26cはブロック形の角氷を通過させる程度の大きさで開口しており、これよりも大きな異物の進入を防ぐように移している。給水口26aは水槽本体21の上部に設けた撹拌装置14の支持板14aの前縁の隔壁14eより前側に配置されており、給水口26aから注入される冷却水は隔壁14eによって撹拌装置14(特に撹拌モータ14b)にかからないようになっている。
装置本体11の下部の機械室には水槽本体21内の冷却水を冷却する冷凍装置30が設けられている。冷凍装置30は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮した冷媒ガスを冷却する凝縮器と、液化冷媒を膨張させるキャピラリチューブ(何れも図示省略)と、膨張させた液化冷媒を気化させて水槽本体21内の冷却水を冷却する蒸発管31とを備え、これらを連結して冷媒が循環する冷媒回路を構成している。上述したように、蒸発管31は水槽本体21の内周面に螺旋状に配設されている。冷凍装置30は、冷媒回路の冷媒を循環させることにより、冷却水槽20内にて蒸発管31の周囲の冷却水を冷却し、蒸発管31の周囲に所定の厚みの氷の層を形成させている。
図1〜図3に示したように、装置本体11の下部外周面には機械室を覆う装置本体11の外装の一部となる下部外装パネル17が設けられている。下部外装パネル17は、下部前側パネル17a、下部後側パネル17b及び左右の下部サイドパネル17cを備えている。下部後側パネル17b、左右の下部サイドパネル17cには格子状の通気口が形成されており、機械室内の冷凍装置30の冷媒はこれら通気口を通過する外気により冷却されている。下部サイドパネル17cの前端部及び後端部にはサイドパネル24の前端部及び後端部に形成されたリブ23b,23cと同様にリブ17c1,17c2が形成されており、下部サイドパネル17cのリブ17c1,17c2はサイドパネル24のリブ24b,24cとともになだらかな弧形の曲面形状となっている。装置本体11の側面が設置場所の壁面に密着して設置されたとしても、下部サイドパネル17cのリブ17c1,17c2とサイドパネル24のリブ23b,23cとにより、下部サイドパネル17cの通気口が設置場所の壁面によって塞がれないようになっている。
図1〜図3に示したように、注出コック40は、容器受台装置60に載置したグラスまたはジョッキにビールを注出するものである。注出コック40は飲料冷却管13の導出端部に接続された取付軸部41を備えている。取付軸部41は支持板部22のコック取付部22dの孔部22d1に挿通され、取付軸部41の外周部に設けたコックブラケット42によってコック取付部22dの孔部22dに液密に嵌合されている。取付軸部41の前端部は取付板27及びカバー28の前側に突出して取り付けられている。注出コック40は弁機構部43aを内蔵した筒形の本体部43を備え、本体部43はナット44によって取付軸部41に固定されている。本体部43の上部には操作レバー45が設けられ、本体部43の下部には注出ノズル46(46a,46b)が設けられている。
本体部43の弁機構部43aは開放状態とすることによって注出ノズル46にビールを導くものである。また、弁機構部43aは、液用開放状態とすることで液用の注出ノズル46bに液状態のビールを導き、泡用開放状態とすることで泡用の注出ノズル46aに泡状態のビールを導く。操作レバー45は弁機構部43aを閉止状態と開放状態との開閉操作を行うためのものである。操作レバー45は、垂直に起立した起立位置にあるときには弁機構部43aを閉止状態とし、前方に傾動(前傾)させると弁機構部43aを液用開放状態とし、後方に傾動(後傾)させると弁機構部43aを泡用開放状態とする。注出ノズル46は弁機構部43aを通過したビールをグラスに注出するものであり、本体部43の下部の前部にビールを泡状態で注出する泡用の注出ノズル46aと、本体部43の下部の後部にビールを液状態で注出する液用の注出ノズル46bとを備えている。
図1〜図3に示したように、コック操作装置50は注出コック40の操作レバー45を前傾または後傾させて、注出コック40の弁機構部43aを開閉させるものであり、装置本体11の上部にて注出コック40の上側に設けられている。コック操作装置50は筐体51内にサーボモータ52と、サーボモータ52により前後に移動するスライダ53とを備え、前後に移動するスライダ53によって注出コック40の操作レバー45を前傾または後傾させるものである。コック操作装置50の筐体51の後部には取付板27の上部のレール27aに上下動可能に係合する係合部が設けられており、コック操作装置50は係合部がレール27aに上下動可能に係合することで注出コック40の上側にて取付板27に上下動可能に支持されている。コック操作装置50は、筐体51内に注出コック40の操作レバー45を収容してスライダ53により操作レバー45を自動で前後に傾動させる自動操作位置と、自動操作位置から上側に移動させて筐体51内から注出コック40の操作レバー45を離脱させて、操作レバー45を手動で傾動可能な手動操作位置とに位置決め可能となっている。
図1〜図3に示したように、容器受台装置60は、グラスやジョッキを載置するものである。容器受台装置60は取付板27に固定したブラケット61を備えており、ブラケット61の左右のアーム部61aはカバー28から前方に突出している。ブラケット61の左右のアーム部61aにはカバー28の前側で傾動基板62の上端部が水平軸線回りに傾動可能に軸架されている。傾動基板62は後面が受台傾動装置70により押動されると、傾動基板62の下端部が斜め前方に押し上げられて傾動する。傾動基板62の前面には受台63が設けられており、この実施形態では受台63は傾動基板62の前面にて上下に2つの受台63a,63bを備えている。上段の受台63aは主としてグラスの小型の容器を載置するものであり、下段の受台63bは主としてグラスよりも容量の多いジョッキ等の大型の容器を載置するものである。
上段の受台63aは傾動基板62に対して水平軸線回りに回動可能に支持されており、下段の受台63bにジョッキを載置するときには、上段の受台63aを前方に突出した使用位置から傾動基板62に沿う退避位置まで退避させる。装置本体11の前部には上段または下段の受台63a,63bが使用状態であることを検知する検知器64が設けられており、検知器64はこの実施形態ではリードスイッチ等の近接スイッチを用いている。上段の受台63aの側部には検知器64により検知される被検知部材として磁石65が設けられており、磁石65は上段の受台63aが退避位置に退避したときに検知器64に近接するようになっている。具体的には、グラスを載置するときのように、上段の受台63aが傾動基板62から前方に突出した使用位置にあるときには、磁石65は検知器64から離間しており、検知器64は磁石65が離間していることでオフ信号を出力し、上段の受台63aが使用状態であることを検知する。これに対し、下段の受台63bにジョッキを載置するときのように、上段の受台63aが傾動基板62に沿う退避位置にあるときには、磁石65は検知器64に近接しており、検知器64は磁石65が近接していることでオン信号を出力し、下段の受台63bが使用状態であることを検知する。
図2及び図3に示したように、受台傾動装置70は、傾動基板62を起立姿勢から傾斜した傾斜姿勢に傾動させ、傾斜姿勢から起立姿勢に復帰させるものである。受台傾動装置70は、サーボモータ71と、サーボモータ71の駆動によって前後に傾動するアーム72とを有している。受台傾動装置70は、サーボモータ71を正回転で駆動させることによりアーム72を前方に突き出すように傾動させ、容器受台装置60の傾動基板62を前方に押し出して起立姿勢から傾斜姿勢に傾動させる。受台傾動装置70は、サーボモータ71を逆回転で駆動させることによりアーム72を後方に戻すように傾動させ、容器受台装置60の傾動基板62を後方に戻して、容器受台装置60の傾動基板62を傾斜姿勢から起立姿勢に復帰させる。
図3に示したように、飲料注出装置10は、グラス等の容器にビールを自動注出するのを制御する制御装置80を備えており、制御装置80は、コック操作装置50(特にサーボモータ52)、検知器64、受台傾動装置70(特にサーボモータ71)に接続されている。制御装置80は内蔵するマイクロコンピュータによりメモリに記憶させた自動注出プログラムを実行すると、コック操作装置50の作動を制御して操作レバー45を一定時間傾動させることで弁機構部43aを開放させて、注出コック40の注出ノズル46からグラスやジョッキに所定量のビールを注出させる。また、この実施形態では、ビールを注出させるのに対応して、受台傾動装置70の作動を制御して、容器受台装置60の傾動基板62及び受台63a,63bに載置したグラスまたはジョッキの姿勢を制御している。
上記のように構成した飲料注出装置10の自動注出プログラムの作動について説明する。装置本体11内の冷却水槽20内の冷却水は冷凍装置30により冷却されている。グラスにビールを注出するときには、上段の受台63aを使用位置にして、上段の受台63aにグラスを載置し、ジョッキにビールを注出するときには、上段の受台63aを退避位置にして下段の受台63bにジョッキを載置する。上段の受台63aが傾動基板62から前方に突出しているときには、上段の受台63aの側部の磁石65が検知器64から離間しており、検知器64は上段の受台63aが使用状態であることの検知であるオフ信号を制御装置80に出力している。これに対し、上段の受台63aが傾動基板62に沿って退避しているときには、上段の受台63aの側部の磁石65が検知器64に近接しており、検知器64は下段の受台63bが使用状態であることの検知であるオン信号を制御装置80に出力している。
制御装置80は、自動注出プログラムを実行すると、受台傾動装置70により容器受台装置60の傾動基板62の後面を押動して前方に押し出す。傾動基板62は傾斜姿勢になり、受台63a,63bに載置したグラスまたはジョッキは傾動基板62とともに傾斜して傾斜姿勢となる。制御装置80は、検知器64による検知に基づいてコック操作装置50によりグラスまたはジョッキに対応した時間で操作レバー45を前方に傾動させる。注出コック40の弁機構部43aはグラスまたはジョッキに対応した時間で液用に開放され、液用の注出ノズル46bから傾斜させたグラスまたはジョッキに液状態のビールが注出される。
液状態のビールを注出すると、制御装置80は、コック操作装置50により操作レバー45を起立位置に戻し、弁機構部43aを閉止状態とすることで、注出コック40からビールの注出を停止させるとともに、受台傾動装置70による傾動基板62の傾斜姿勢を起立姿勢に戻すことで、受台63a、63bに載置したグラスまたはジョッキを起立姿勢に戻す。次に、制御装置80は、検知器64による検知に基づいてコック操作装置50によりグラスに対応した時間で操作レバー45を後方に傾動させる。注出コック40の弁機構部43aはグラスまたはジョッキに対応した時間で泡用に開放され、泡用の注出ノズル46aからグラスまたはジョッキに泡状態のビールが注出される。グラスまたはジョッキに対応した時間での泡状態のビールの注出が終了すると、制御装置80は、コック操作装置50により操作レバー45を起立位置に戻し、注出コック40の弁機構部43aを再び閉止状態とする。
上記のように構成した飲料注出装置10においては、冷却水槽20は冷却水を貯える水槽本体21の前部に容器受台装置60と受台傾動装置70とを取付板27を介して固定する支持板部22を一体的に形成した。さらに、支持板部22には注出コック40が取り付けられ、コック操作装置50が取付板27を介して上下に移動可能に支持されている。これにより、強度のある取付板を別に用いることなく、容器受台装置60と受台傾動装置70だけでなく、注出コック40及びコック操作装置50を装置本体11の前部に配設することができるようになり、コストダウンを図ることが可能となった。
冷却水槽20は、水槽本体21の前壁の上部前縁から水槽本体21の前壁外周面と離間した状態で下側に垂下する支持板部22と、水槽本体21の後壁の上部後縁から水槽本体21の後壁外周面と離間した状態で下側に垂下して装置本体11としての外装の一部となる外側後壁23とを一体的に形成するとともに、水槽本体21の左右両側には支持板部22と外側後壁23の左右両端縁と密着して取り付けられて装置本体11の外装の一部となる左右一対のサイドパネル24と、支持板部22と外側後壁23と左右一対のサイドパネル24の各下部と密着して取り付けられる底板25とを設け、冷却水槽20の水槽本体21の周壁外周面、支持板部22、外側後壁23、左右一対のサイドパネル24及び底板25により仕切られた空間内に発泡断熱材を充填した。このようにしたことで、冷却水槽20の水槽本体21の周壁外周面に発泡断熱材を充填する作業と、冷却水槽20の外側に装置本体11の外装の一部を取り付ける作業とを同時に実行できるようになり、製造コストを低廉に抑えることができた。また、水槽本体21と装置本体11の外装との間に発泡断熱材を直接充填したので、水槽本体21と装置本体11の外装の一部が発泡断熱材によって強固に接着されることになり、装置本体11の強度を高くすることができた。また、水槽本体21の両側に左右一対のサイドパネル24を取り付けるようにしたので、自動注出ユニットのユニット数を変えたときも、サイドパネル24を共通部品として使用することができ、部品点数ができるだけ増加するのを防ぐことができた。
このように構成した飲料注出装置10の他の実施形態においては、冷却水槽20は、水槽本体21の周壁の上部周縁から水槽本体21の周壁外周面と離間した状態で下側に垂下して、支持板部22を含んで装置本体11の外装の少なくとも一部となる筒形をした外側周壁22,23,24を一体的に形成するとともに、外側周壁22,23,24の下部と密着して取り付けられる底板25を設け、冷却水槽20の水槽本体21の周壁外周面、外側周壁22〜24及び底板25により仕切られた空間内に発泡断熱材を充填してもよい。このようにしたときには、冷却水槽20の水槽本体21と装置本体11の外装の一部とを一体としたことで、部品点数を減らすことと、水槽本体21の外側に装置本体11の外装の少なくとも一部を取り付ける作業をなくすことができ、製造コストを低廉に抑えることができた。また、水槽本体21と装置本体11の外装の一部が発泡断熱材によって強固に接着されることになり、装置本体11の強度を高くすることができた。
また、装置本体11の前面下部には容器受台装置60の受台63a,63bに載置したグラスまたはジョッキから溢出するビールを受けるドレンパン16を備え、冷却水槽20の支持板部22の前面には水槽本体21内の過剰な水位の水をドレンパン16に案内する排水ガイド22bを一体的に形成した。従来技術では、冷却水槽の水槽本体の外周に設けた発泡断熱材の内部にオーバーフロー管を埋設していたが、冷却水槽の水槽本体に対してオーバーフロー管を離間した位置で位置決めする必要がないので、飲料注出装置10を製造するときの作業性を向上させることができた。
また、水槽本体21の底部には冷却水を排出する排水筒部21dを底板25より下方に延出するように形成し、底板25の前後両端部には排水筒部21dより下方に突出する脚部25aを設けた。これにより、飲料注出装置10の冷却水槽20と装置本体11の外装の一部を製造する過程で、発泡断熱材を充填したあとの冷却水槽20を作業台に載置しても、排水筒部21dは底板25の脚部25aによって作業台に当たらないようになり、排水筒部21dが製造過程で破損しにくくできた、製造過程で排水筒部が破損するのを防ぐことができた。なお、この実施形態では、底板25の前後両端部に脚部25aを設けたが、本発明はこれに限られるものでなく、底板25の左右両端部に脚部を設けたものであってもよく、このようにしたものであっても、上述したのと同様の作用効果を得ることができる。
上記のように構成した飲料注出装置10においては、飲料としてビールを注出するもので説明したが、本発明はこれに限られるものでなく、発泡酒、酎ハイ、炭酸飲料、ソフトドリンク等の他の飲料に適用できるものであり、これらの飲料を注出するものであっても上述したのと同様の作用効果を得ることができる。
上記のように構成した飲料注出装置10においては、注出コック40は本体部43に内蔵した弁機構部43aを操作レバー45によって閉止状態から液用開放状態または泡用開放状態に操作することで液状態または泡状態のビールを通過させるようにしたものである。本発明はこれに限られるものでなく、例えば、注出コック40に制御装置80の制御によって開閉動作する電磁弁等の開閉弁を設けたものであってもよい。この場合には、液用の開閉弁と泡用の開閉弁を別々に設け、各々の開閉弁を開閉動作させることによって、液状態と泡状態の発泡性飲料を選択的に注出できるようにする。
上記のように構成した飲料注出装置10においては、注出ノズル46は泡用の注出ノズル46aと液用の注出ノズル46bとからなるが、本発明はこれに限られるものでなく、1つの注出ノズル46から液状態及び泡状態の発泡性飲料を注出するようにしたものであってもよく、このようにしたときにも上述したのと同様の作用効果を得ることができる。
上記のように構成した飲料注出装置10においては、受台傾動装置70は、サーボモータ71の駆動によって前後に延びるアーム72により容器受台装置60の傾動基板62を前方に押し出すものであるが、本発明はこれに限られるものでなく、傾動基板62の上端の支持軸をサーボモータにより直接回動させることにより、傾動基板62の下端部を前方に押し上げて傾動基板62を傾動させるものであってもよく、このようにしたときにも同様の作用効果を得ることができる。また、容器受台装置60の傾動基板62の上端部を支持板部22の前面に水平軸線回りに傾動可能に軸架したが、本発明はこれに限られるものでなく、傾動基板62の上部、上下方向の中間部、下部または下端部のように上下方向の何れかの部分を支持板部22の前面に水平軸線回りに傾動可能に軸架したものであってもよく、このようにしたときにも上述したのと同様の作用効果を得ることができる。さらに、傾動基板62を前後方向に傾斜するように水平軸線回りに回動可能に支持したが、本発明はこれに限られるものでなく、傾動基板62を左右方向に傾斜するように水平軸線回りに回動可能に支持したものであってもよく、このようにしたときにも同様の作用効果を得ることができる。