以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図10は、本実施の形態に係る硬貨処理装置やこのような硬貨処理装置に設けられた硬貨繰出機構を示す図である。このうち、図1は、本実施の形態による硬貨処理装置の内部を上方から鉛直方向下方に向かって見たときの構成を示す構成図であり、図2は、図1に示す硬貨処理装置から各硬貨収納部および硬貨払出部のみを抜き出して示す構成図である。また、図3は、図2に示す各硬貨収納部および硬貨払出部の斜視図であり、図4は、図2に示す各硬貨収納部および硬貨払出部の縦断面図である。また、図5は、図4に示す硬貨収納部のA−A矢視による断面図であり、図6は、図4に示す硬貨収納部のB−B矢視による断面図である。また、図7(a)〜図7(c)は、図4に示す硬貨収納部に設けられた後端ガイド部の上側ガイド部分および下側ガイド部分の構成を示す上面図や縦断面図である。なお、図8は、従来の硬貨処理装置の硬貨収納部に設けられたガイド部の近傍に硬貨が詰まった状態を示す上面図である。また、図9は、変形例に係る硬貨処理装置の硬貨収納部に設けられた後端ガイド部の構成を示す上面図である。また、図10は、図4に示す硬貨収納部のC−C矢視による縦断面図である。
本実施の形態による硬貨処理装置1は、例えば、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等の商業施設の店舗における顧客が商品の精算処理を行う精算所(具体的には、レジカウンター)に設置される釣銭機の硬貨処理ユニットとして用いられるものである。このような硬貨処理装置1は、略直方体形状の筐体10と、筐体10の前面側に設けられ、硬貨の入金処理を行う際に操作者によって硬貨が投入される硬貨受入部12と、筐体10の前面側に設けられ、硬貨の出金処理を行う際に硬貨が払い出される硬貨払出部50と、筐体10の内部で硬貨を金種毎に収納する複数の硬貨収納部30a〜30fとを備えている。ここで、複数の硬貨収納部30a〜30fは筐体10の幅方向(すなわち、図1の左右方向)に沿って並列に並ぶよう配置されており、各硬貨収納部30a〜30fにはそれぞれ50円硬貨、5円硬貨、500円硬貨、100円硬貨、10円硬貨および1円硬貨がこの順でそれぞれ収納されるようになっている。
硬貨受入部12は、硬貨投入口を介して受け入れた硬貨を1層1列状態で1枚ずつ筐体10内に取り込むようになっている。より詳細には、硬貨受入部12には、図1における右方向に移動する繰出ベルト14a等からなる繰出部14が設けられており、硬貨受入部12に受け入れられた硬貨を検知するとこの繰出部14が駆動されることにより当該繰出部14によって硬貨が筐体10の内部に1枚ずつ繰り出されるようになっている。また、図1に示すように、硬貨受入部12には、繰出部14により筐体10の内部に繰り出された硬貨を1層1列状態で搬送する入金搬送部16が接続されている。
入金搬送部16は、複数のプーリ16bにより張架された循環ベルト16aを有しており、繰出部14により筐体10の内部に繰り出された硬貨は循環ベルト16aとの間で働く摩擦力により筐体10の内部で搬送されるようになっている。具体的には、複数のプーリ16bのうちある一つのプーリ16bには駆動モータが接続されており、当該駆動モータによりプーリ16bが回転させられることにより循環ベルト16aは図1における時計回りの方向に循環移動するようになっている。このことにより、繰出部14により筐体10の内部に繰り出された硬貨は筐体10の内部における左側の領域において当該筐体10の奥行き方向に搬送されるようになる。
図1に示すように、入金搬送部16の途中には、硬貨の金種、真偽、正損、表裏、搬送状態等の識別を行う識別部18が設けられている。また、入金搬送部16による硬貨の搬送方向における識別部18の下流側にはリジェクト分岐部20が設けられており、識別部18により正常な硬貨ではないと識別された硬貨や識別部18により識別することができなかった硬貨はリジェクト分岐部20により入金搬送部16から分岐させられて図示しないリジェクト部に送られるようになっている。また、操作者は筐体10の外部からリジェクト部に手を入れることができるようになっている。このことにより、操作者はリジェクト部に送られたリジェクト硬貨を筐体10の外部に取り出して硬貨受入部12に再投入等することができるようになる。なお、変形例に係る硬貨処理装置1として、リジェクト部が設けられておらず、リジェクト分岐部20により入金搬送部16から分岐させられた硬貨が図示しないシュート等により後述する硬貨払出部50に送られるようになっていてもよい。この場合には、操作者は硬貨払出部50に送られたリジェクト硬貨を筐体10の外部に取り出して硬貨受入部12に再投入等することができるようになる。
また、入金搬送部16による硬貨の搬送方向におけるリジェクト分岐部20の更に下流側には複数の金種別分岐部22が各硬貨収納部30a〜30eに対応して直列に並ぶよう設けられている。具体的には、識別部18により識別された硬貨の金種が50円である場合には、図1における最も左側に位置する金種別分岐部22により入金搬送部16から当該50円硬貨が分岐させられて硬貨収納部30aに送られるようになる。同様に、識別部18により識別された硬貨の金種が5円である場合には、図1における左側から2番目に位置する金種別分岐部22により入金搬送部16から当該5円硬貨が分岐させられて硬貨収納部30bに送られるようになる。また、識別部18により識別された硬貨の金種が500円である場合には、図1における左側から3番目に位置する金種別分岐部22により入金搬送部16から当該500円硬貨が分岐させられて硬貨収納部30cに送られるようになる。また、識別部18により識別された硬貨の金種が100円である場合には、図1における左側から4番目に位置する金種別分岐部22により入金搬送部16から当該100円硬貨が分岐させられて硬貨収納部30dに送られるようになる。また、識別部18により識別された硬貨の金種が10円である場合には、図1における左側から5番目に位置する金種別分岐部22により入金搬送部16から当該10円硬貨が分岐させられて硬貨収納部30eに送られるようになる。また、識別部18により識別された硬貨の金種が1円である場合には、当該硬貨は各金種別分岐部22により入金搬送部16から分岐させられることなく当該入金搬送部16から直接硬貨収納部30fに送られるようになる。このようにして識別部18により識別された硬貨が各硬貨収納部30a〜30fに金種別に振り分けられてこれらの硬貨収納部30a〜30fに収納されるようになる。
図4に示すように、各硬貨収納部30a〜30fは、複数の硬貨が収容される硬貨収容空間31を有している。また、各硬貨収納部30a〜30fには、硬貨収容空間31に収容されている硬貨を当該硬貨収容空間31から1枚ずつ繰り出す繰出部40が設けられている。これらの各硬貨収納部30a〜30fや繰出部40の構成の詳細については後述する。繰出部40により各硬貨収納部30a〜30fの硬貨収容空間31から繰り出された硬貨は硬貨払出部50に送られ、この硬貨払出部50に集積されるようになっている。より詳細には、図1乃至図3に示すように、6つの硬貨収納部30a〜30fのうち左から3つの硬貨収納部30a〜30cの手前側には、硬貨払出部50に向かって斜め下方にわずかに傾斜している硬貨案内溝52が形成されており、繰出部40により硬貨収納部30a〜30cの硬貨収容空間31から繰り出された硬貨はこの硬貨案内溝52に略立位状態で入り、硬貨案内溝52において図1や図2における右方向に硬貨が略立位状態で転がりながら移動することにより硬貨払出部50に送られるようになる。一方、6つの硬貨収納部30a〜30fのうち右から3つの硬貨収納部30d〜30fの硬貨収容空間31から繰出部40により繰り出された硬貨は硬貨払出部50に直接送られるようになる。また、硬貨払出部50は筐体10の外部に露出しており、操作者はこの硬貨払出部50に集積されている硬貨を手で掴んで筐体10の外部に取り出すことができるようになっている。
次に、各硬貨収納部30a〜30fおよび繰出部40の構成の詳細について説明する。各硬貨収納部30a〜30fは、硬貨収容空間31の両側部を区画するための一対の側方ガイド部32(図3および図10参照)と、硬貨収容空間31の後端部を区画するための後端ガイド部34(図4乃至図7参照)とを有しており、これらの一対の側方ガイド部32および後端ガイド部34の間に形成される硬貨収容空間31に硬貨が収納されるようになっている。ここで、図3や図10に示すように、隣り合う2つの硬貨収納部30a〜30fにおいて、一つの側方ガイド部32が共用される場合がある。すなわち、隣り合う2つの硬貨収納部30a〜30fの各硬貨収容空間31が1つの側方ガイド部32により区画される場合がある。また、本実施の形態では、硬貨処理装置1の装置全体の幅を小さくするために、各硬貨収納部30a〜30fにおける一対の側方ガイド部32の間の距離は当該硬貨収納部30a〜30fに収納されるべき金種の硬貨の直径よりもわずかに大きな大きさとなっている。
また、繰出部40は、硬貨収容空間31の底部に配置され、複数のプーリ44により張架された繰出ベルト42と、複数のプーリ44のうちある一つのプーリ44に接続され、当該プーリ44を回転させる駆動モータ(図示せず)と、繰出ベルト42との間でわずかな隙間(具体的には、硬貨収納部30a〜30fに収納されるべき金種の硬貨の厚さよりもわずかに大きな隙間)を隔てて当該繰出ベルト42の上方に配置される逆転ローラ46とを有している。ここで、硬貨収容空間31に収容される硬貨は繰出ベルト42上に載置されるようになっている。また、繰出ベルト42は無端状の(言い換えると、環状の)平ベルトからなり、当該繰出ベルト42の幅の大きさは硬貨収容空間31の幅の大きさと略同一となっている。そして、駆動モータによりこの駆動モータに接続されるプーリ44が回転させられると繰出ベルト42は図4における時計回りの方向に循環移動し、この繰出ベルト42上に載置されている硬貨は略水平姿勢で図4における右方向に搬送され、逆転ローラ46と繰出ベルト42との間に形成される隙間を通って硬貨案内溝52または硬貨払出部50に送られるようになる。ここで、逆転ローラ46は繰出ベルト42による硬貨の繰出方向と逆方向(すなわち、図4における時計回りの方向)に回転するようになっている。このことにより、繰出ベルト42により繰り出される硬貨が逆転ローラ46と繰出ベルト42との間に形成される隙間を通る際に当該硬貨は1層1列状態に整列されるようになり、整列された硬貨が繰出ベルト42により硬貨案内溝52または硬貨払出部50に送られるようになる。
図4に示すように、後端ガイド部34は、下側ガイド部分34aと、下側ガイド部分34aの上方に設けられた上側ガイド部分34bとを有している。ここで、本実施の形態では、下側ガイド部分34aは、少なくともその一部が上側ガイド部分34bよりも繰出部40による硬貨の繰出方向における後方側(すなわち、図4における左側)に位置するような構成となっている。このような下側ガイド部分34aおよび上側ガイド部分34bの構成の詳細について図5乃至図7を用いて説明する。上述したように、図5は、図4に示す硬貨収納部30a〜30fのA−A矢視による断面図であり、図6は、図4に示す硬貨収納部30a〜30fのB−B矢視による断面図である。また、図7(a)は、図4に示す硬貨収納部30a〜30fに設けられた後端ガイド部34の下側ガイド部分34aおよび上側ガイド部分34bの構成を重ねた状態で示す上面図であり、図7(b)は、図4に示す硬貨収納部30a〜30fの幅方向(すなわち、図7(a)の上下方向)における端部近傍での下側ガイド部分34aおよび上側ガイド部分34bの構成を示す縦断面図であり、図7(c)は、図4に示す硬貨収納部30a〜30fの幅方向における中央箇所での下側ガイド部分34aおよび上側ガイド部分34bの構成を示す縦断面図である。
図5に示すように、下側ガイド部分34aは硬貨収納部30a〜30fの幅方向に沿って略直線状に延びるようになっており、この下側ガイド部分34aの内面の少なくとも一部は平面となっている。これに対し、図6に示すように、上側ガイド部分34bは硬貨収納部30a〜30fの幅方向に対して湾曲した状態で延びており、上側ガイド部分34bの内面は湾曲面となっている。より詳細には、図7(a)に示すように、硬貨収納部30a〜30fの幅方向における中央箇所での上側ガイド部分34bの凸部分が下側ガイド部分34aの略直線状に延びる部分と重なるようになっている。このため、図7(c)に示すように、図4に示す硬貨収納部30a〜30fの幅方向における中央箇所では、鉛直方向において下側ガイド部分34aおよび上側ガイド部分34bは略直線状に延びるようになるが、図7(b)に示すように、図4に示す硬貨収納部30a〜30fの幅方向における端部近傍では、下側ガイド部分34aと上側ガイド部分34bとの間に段差が生じており、下側ガイド部分34aは上側ガイド部分34bよりも後方側(すなわち、図4における左側)に位置するようになる。このことにより、図4に示す硬貨収納部30a〜30fの幅方向における端部近傍では、上側ガイド部分34bにより区画される硬貨収容空間31よりも後方側に硬貨の逃げ空間(図7(a)(b)において参照符合Eで表示)が形成されるようになる。
また、本実施の形態では、図6に示すように、各硬貨収納部30a〜30fにおいて上側ガイド部分34bは当該硬貨収納部30a〜30fの幅方向における中央箇所に対して左右非対称となるように湾曲している。
また、繰出部40の繰出ベルト42からの下側ガイド部分34aの高さは、各硬貨収納部30a〜30fの硬貨収容空間31に収容されるべき金種の硬貨の直径よりも小さくなっており、より好ましくは、各硬貨収納部30a〜30fの硬貨収容空間31に収容されるべき金種の硬貨の直径の半分の大きさよりも小さくなっている。具体的には、繰出部40の繰出ベルト42からの下側ガイド部分34aの高さは、各硬貨収納部30a〜30fの硬貨収容空間31に収容されるべき金種の硬貨の例えば2〜6枚分の厚さと同じ大きさとなっている。
本実施の形態では、このような構成の下側ガイド部分34aおよび上側ガイド部分34bを有する後端ガイド部34において、下側ガイド部分34aの少なくとも一部(具体的には、硬貨収納部30a〜30fの幅方向における端部近傍の箇所)が上側ガイド部分34bよりも後方側に設けられているため、硬貨がブリッジしてしまうことを抑制することにより硬貨収容空間31の後端部で硬貨が残留してしまうことを防止することができるようになっている。このような技術的特徴について、図8に示すような従来の硬貨収容空間を区画するガイド部38と比較しながら説明する。
図8は、従来の硬貨処理装置の硬貨収納部に設けられたガイド部38の近傍に硬貨が詰まった状態を示す上面図である。従来の硬貨処理装置の硬貨収納部に設けられたガイド部38は、本実施の形態による後端ガイド部34と異なり、硬貨収容空間の後端部を区画する箇所では全体的に硬貨収納部の幅方向(すなわち、図8の上下方向)に対して湾曲した状態で延びており、その内面は湾曲面となっている。しかしながら、このような形状のガイド部38では、硬貨処理装置を小型化するために各硬貨収納部における硬貨収容空間の幅の大きさを小さくすると、硬貨収容空間の後端部の近傍において繰出ベルト上で水平姿勢となる硬貨(図8において参照符合C1で表示)と、ガイド部38における硬貨収納空間の側部を区画する箇所との間に1または複数の硬貨(図8において参照符合C2で表示)が立位姿勢で入り込んでしまい、ブリッジしてしまうおそれがある。このような現象は、硬貨収納部の奥側に向かって(すなわち、図8における左側に向かって)ガイド部38の幅の大きさが徐々に小さくなることに起因している。この場合には、硬貨収納部の硬貨収容空間に硬貨が残留してしまい、当該硬貨収納部において硬貨の繰り出し不良に係るエラーが生じてしまう。
これに対し、図4乃至図7に示すような下側ガイド部分34aおよび上側ガイド部分34bを有する後端ガイド部34を用いた場合には、硬貨収容空間31の後端部の近傍において繰出ベルト42上で略水平姿勢となる硬貨と、硬貨収容空間31の側部を区画する側方ガイド部32との間に1または複数の硬貨が立位姿勢で入り込んでしまった場合でも、繰出ベルト42上で略水平姿勢となる硬貨は硬貨収容空間31の後方側の逃げ空間(図7(a)(b)において参照符合Eで表示)に逃げることができるため、立位姿勢の硬貨の周囲に隙間ができるようになり、ブリッジしてしまうことを抑制することができるようになる。また、本実施の形態では、上側ガイド部分34bは硬貨収納部30a〜30fの幅方向に対して湾曲した状態で延びており、上側ガイド部分34bの内面は湾曲面となっているため、この上側ガイド部分34bの内面として構成される湾曲面により、硬貨収容空間31の内部で立位姿勢にある硬貨を倒して略水平姿勢とすることができるようになる。より詳細には、繰出部40の繰出ベルト42からの下側ガイド部分34aの高さが、各硬貨収納部30a〜30fの硬貨収容空間31に収容されるべき金種の硬貨の直径の半分の大きさよりも小さい場合には、下側ガイド部分34aの近傍に位置する立位姿勢の硬貨を、上側ガイド部分34bの内面として構成される湾曲面により倒して略水平姿勢とすることができるようになる。
なお、本実施の形態では、各硬貨収納部30a〜30fの硬貨収容空間31の後端部を区画するための後端ガイド部の構成は図4乃至図7に示すようなものに限定されることはない。具体的には、図4乃至図7に示す後端ガイド部34は下側ガイド部分34aおよび上側ガイド部分34bが一体なものとなっているが、これらの下側ガイド部分34aおよび上側ガイド部分34bが互いに離間していてもよい。
また、図4乃至図7に示す後端ガイド部34では、図7(a)に示すように、硬貨収納部30a〜30fの幅方向における中央箇所での上側ガイド部分34bの凸部分が下側ガイド部分34aの略直線状に延びる部分と重なるようになっているが、変形例に係る後端ガイド部において、硬貨収納部30a〜30fの幅方向における中央箇所でも下側ガイド部分と上側ガイド部分との間に段差が生じており、この中央箇所において上側ガイド部分により区画される硬貨収容空間31よりも後方側に硬貨の逃げ空間が形成されるようになっていてもよい。
また、別の変形例に係る後端ガイド部として図9に示すような構成の後端ガイド部35が用いられてもよい。図9に示す後端ガイド部35も、下側ガイド部分35aと、下側ガイド部分35aの上方に設けられた上側ガイド部分35bとを有しているが、下側ガイド部分35aは硬貨の繰出方向(すなわち、図9における右方向)にそれぞれ延びる複数のリブから構成されており、これらのリブの先端部分により硬貨収容空間31の後端部が区画されるようになる。ここで、図9に示すように、下側ガイド部分35aを構成する複数のリブの先端部分は、硬貨収納部30a〜30fの幅方向に沿って略直線状に揃うようになっている。これに対し、上側ガイド部分35bは硬貨収納部30a〜30fの幅方向に対して湾曲した状態で延びており、上側ガイド部分35bの内面は湾曲面となっている。このことにより、下側ガイド部分35aを構成する複数のリブの先端部分の一部は上側ガイド部分35bよりも後方側(すなわち、図9における左側)に位置するようになる。具体的には、図9に示す硬貨収納部30a〜30fの幅方向における中央箇所では、鉛直方向において下側ガイド部分35aを構成するリブの先端部分および上側ガイド部分34bの位置が揃うようになるが、図9に示す硬貨収納部30a〜30fの幅方向における端部近傍では、下側ガイド部分35aを構成するリブの先端部分と上側ガイド部分35bとの間に段差が生じるようになり、このリブの先端部分は上側ガイド部分35bよりも後方側(すなわち、図9における左側)に位置するようになる。このことにより、図9に示す硬貨収納部30a〜30fの幅方向における端部近傍では、上側ガイド部分35bにより区画される硬貨収容空間31よりも後方側に硬貨の逃げ空間(図9において参照符合Fで表示)が形成されるようになる。
このような複数のリブから構成される下側ガイド部分35aおよび上側ガイド部分35bを有する後端ガイド部35を用いた場合でも、下側ガイド部分35aの少なくとも一部(具体的には、硬貨収納部30a〜30fの幅方向における端部近傍の箇所)が上側ガイド部分35bよりも後方側に設けられているため、図4乃至図7に示すような後端ガイド部34を用いた場合と同様に、繰出部40の繰出ベルト42から浮いた状態で硬貨が硬貨収容空間の幅方向に噛み込んだ状態となるようなブリッジ現象の発生を抑制することにより硬貨収容空間31の後端部で硬貨が残留してしまうことを防止することができるようになる。
また、本実施の形態では、6つの硬貨収納部30a〜30fのうち図1における左から3つの硬貨収納部30a〜30cにおいて、硬貨収容空間31の両側部を区画するための一対の側方ガイド部32のうち少なくとも一方の側方ガイド部32は、硬貨収容空間31が繰出部40の繰出ベルト42から上方に離れるに従って狭くなるような形状となっている。このような技術的事項について図10を用いて説明する。なお、図10は、図4に示す硬貨収納部30a〜30fのC−C矢視による縦断面図である。
図10に示すように、6つの硬貨収納部30a〜30fのうち左から3つの硬貨収納部30a〜30cの各々において、硬貨収容空間31の左側部を区画するための側方ガイド部32には、当該側方ガイド部32の延びる方向からわずかに傾斜した板状の傾斜部材32aが取り付けられている。ここで、傾斜部材32aが延びる方向と鉛直方向との間の角度は例えば1°〜10°の間の大きさとなっている。なお、本実施の形態では、このような傾斜部材32aは側方ガイド部32の一部に含まれるようになっている。一方、6つの硬貨収納部30a〜30fのうち左から3つの硬貨収納部30a〜30cの各々において、硬貨収容空間31の右側部を区画するための側方ガイド部32は鉛直方向に沿って延びている。このように、6つの硬貨収納部30a〜30fのうち左から3つの硬貨収納部30a〜30cでは、左側の側方ガイド部32が右側の側方ガイド部32に対して傾斜しているため、硬貨収容空間31が繰出部40の繰出ベルト42から上方に離れるに従って硬貨収容空間31が狭くなるようになる。このことにより、一対の側方ガイド部32の間で複数の硬貨がブリッジしてしまい、繰出部40により硬貨収容空間31からの硬貨の繰出動作が行われる際に硬貨収容空間31に硬貨が残留してしまうことを防止することができるようになる。
より詳細には、もし仮に一対の側方ガイド部32が鉛直方向に沿って平行に延びている場合には、これらの一対の側方ガイド部32の間において繰出ベルト42上で一方の側方ガイド部32に接しながら立位姿勢となる硬貨と、他方の側方ガイド部32との間に1または複数の硬貨が繰出ベルト42から浮いた状態で略水平姿勢で入り込んでしまい、繰出ベルト42から浮いた状態で略水平姿勢の硬貨および立位姿勢の硬貨がブリッジしてしまうおそれがある。この場合には、繰出部40により硬貨収容空間31からの硬貨の繰出動作が行われる際に硬貨収容空間31に硬貨が残留してしまい、硬貨収納部30a〜30fにおいて硬貨の繰り出し不良に係るエラーが生じてしまう。
これに対し、本実施の形態では、6つの硬貨収納部30a〜30fのうち左から3つの硬貨収納部30a〜30cにおいて、硬貨収容空間31が繰出部40の繰出ベルト42から上方に離れるに従って硬貨収容空間31が狭くなっているため、鉛直方向に沿って延びる一方の側方ガイド部32に接しながら立位姿勢となる硬貨と、鉛直方向に対して傾斜している他方の側方ガイド部32との間に1または複数の硬貨が繰出ベルト42から浮いた状態で略水平姿勢で入り込んでしまった場合でも、下方に向かって硬貨収容空間31の幅が広くなるためこの略水平姿勢の硬貨が下方に落下するようになり、この硬貨が繰出ベルト42上に載置されるようになる。このため、繰出ベルト42から浮いた状態で略水平姿勢の硬貨および立位姿勢の硬貨がブリッジしてしまうことを防止することができるようになる。
なお、6つの硬貨収納部30a〜30fのうち右から3つの硬貨収納部30d〜30fについては一対の側方ガイド部32が鉛直方向に沿って平行に延びているようになっているが、これらの硬貨収納部30d〜30fにはそれぞれ100円硬貨、10円硬貨および1円硬貨が収納されるようになっており、各硬貨収納部30d〜30fの硬貨収容空間31の幅を大きくすることによりこれらの金種の硬貨の収納枚数を比較的多くしているため、このような幅が比較的大きな硬貨収容空間31では一対の側方ガイド部32が鉛直方向に沿って平行に延びていても繰出ベルト42から浮いた状態で略水平姿勢の硬貨および立位姿勢の硬貨がブリッジしてしまうような現象が生じにくいといえる。
また、図10に示す例では左から3つの硬貨収納部30a〜30cにおいて一対の側方ガイド部32のうち一方の側方ガイド部32(具体的には、傾斜部材32aが設けられた側方ガイド部32)が鉛直方向に対して傾斜しているような態様について述べたが、一対の側方ガイド部32の各々が鉛直方向に対して傾斜するようになっていてもよい。
なお、本実施の形態では、上述した各硬貨収納部30a〜30fに設けられた側方ガイド部32、後端ガイド部34および繰出部40により、硬貨収容空間31から硬貨を繰り出すための硬貨繰出機構が構成されている。
また、図4に示すように、各硬貨収納部30a〜30fの硬貨収容空間31において繰出部40の繰出ベルト42上には鎖49でつながれた撹拌部材48が載置されており、この鎖49の基端部分は各硬貨収納部30a〜30fの天井部分に取り付けられている。ここで、各硬貨収納部30a〜30fの硬貨収容空間31の後方側において複数の硬貨が重なった状態で繰出ベルト42から浮いてしまうようなブリッジ現象が生じた場合には、繰出ベルト42を逆転させることにより(すなわち、図4における反時計回りの方向に循環移動させることにより)、撹拌部材48を硬貨収容空間31の後方側(すなわち、図4における左側)に移動させ、この撹拌部材48によって硬貨収容空間31の後方側で繰出ベルト42から浮いた状態でブリッジしている硬貨を崩すことができるようになる。
以上のような構成からなる本実施の形態による硬貨繰出機構およびこのような硬貨繰出機構を備えた硬貨処理装置1によれば、硬貨収容空間31の後端部を区画するための後端ガイド部34は、上側ガイド部分34bと、上側ガイド部分34bの下方に設けられ、少なくともその一部が上側ガイド部分34bよりも後方側に位置する下側ガイド部分34aとを有している。このように、硬貨収容空間31の後端部を区画するための後端ガイド部34における下側ガイド部分34aの少なくとも一部が上側ガイド部分34bよりも後方側に設けられているため、繰出部40の繰出ベルト42から浮いた状態で硬貨が硬貨収容空間の幅方向に噛み込んだ状態となるようなブリッジ現象の発生を抑制することにより硬貨収容空間31の後端部で硬貨が残留してしまうことを防止することができる。より詳細には、このような構成の下側ガイド部分34aおよび上側ガイド部分34bを有する後端ガイド部34を用いた場合には、硬貨収容空間31の後端部の近傍において繰出ベルト42上で略水平姿勢となる硬貨と、硬貨収容空間31の側部を区画する側方ガイド部32との間に1または複数の硬貨が立位姿勢で入り込んでしまった場合でも、繰出ベルト42上で略水平姿勢となる硬貨は硬貨収容空間31における上側ガイド部分34bよりも後方側の空間に逃げることができるため、繰出部40の繰出ベルト42から浮いた状態で硬貨が硬貨収容空間の幅方向に噛み込んだ状態となるようなブリッジ現象の発生を抑制することができるようになる。
なお、特許請求の範囲における「下側ガイド部分が上側ガイド部分の下方に設けられ」という記載は、下側ガイド部分および上側ガイド部分が一体的に成型されているような態様や、下側ガイド部分および上側ガイド部分が互いに離間しているような態様も含むものとする。
また、本実施の形態の硬貨繰出機構においては、下側ガイド部分34aは、硬貨収容空間31よりも後方側に硬貨の逃げ空間が形成されるような構成となっている。
また、本実施の形態の硬貨繰出機構においては、繰出部40の繰出ベルト42からの下側ガイド部分34aの高さは、硬貨収容空間31に収容されるべき硬貨の直径よりも小さくなっている。この場合には、硬貨収容空間31内で立位姿勢にある硬貨が当該硬貨収容空間31における上側ガイド部分34bよりも後方側の空間に入り込む際にこの空間で倒れて略水平姿勢となることができるようになる。
また、本実施の形態の硬貨繰出機構においては、繰出部40の繰出ベルト42からの下側ガイド部分34aの高さは、硬貨収容空間31に収容されるべき硬貨の直径の半分の大きさよりも小さくなっていてもよい。この場合には、下側ガイド部分34aの近傍に位置する立位姿勢の硬貨を、上側ガイド部分34bの内面により倒して略水平姿勢とすることができるようになる。
また、本実施の形態の硬貨繰出機構においては、上側ガイド部分34bの内面は非対称となる湾曲面を含んでいる。この場合には、硬貨収容空間31の内部で立位姿勢にある硬貨を、上側ガイド部分34bの内面として構成される湾曲面により倒して略水平姿勢とすることができるようになる。
また、本実施の形態の硬貨繰出機構においては、下側ガイド部分34aの内面の少なくとも一部は、繰出部40による硬貨の繰出方向に直交する方向に延びる平面となっている。この場合には、下側ガイド部分34aにより形成される、硬貨収容空間31における上側ガイド部分34bよりも後方側の空間をより広くすることができるようになる。
また、本実施の形態の硬貨繰出機構においては、硬貨収容空間31の両側部を区画するための一対の側方ガイド部32が設けられており、少なくとも一方の側方ガイド部32は、硬貨収容空間31が繰出部40の繰出ベルト42から上方に離れるに従って狭くなるような形状となっている。この場合には、略水平姿勢となる硬貨および立位姿勢となる硬貨が繰出ベルト42から浮いた状態で一対の側方ガイド部32の間に挟まってしまった場合でも、下方に向かって硬貨収容空間31の幅が広くなるため略水平姿勢の硬貨が下方に落下するようになり、この硬貨が繰出ベルト42上に載置されるようになる。このため、繰出ベルト42から浮いた状態で略水平姿勢の硬貨および立位姿勢の硬貨がブリッジしてしまうことを防止することができるようになる。
ここで、少なくとも一方の側方ガイド部32は他方の側方ガイド部32に対して傾斜している。また、少なくとも一方の側方ガイド部32は鉛直方向に対して1°〜10°の角度をなすよう傾斜している。この場合には、硬貨収容空間31の広さを大幅に狭めることなく、繰出ベルト42から浮いた状態で略水平姿勢の硬貨および立位姿勢の硬貨がブリッジしてしまうことをより一層確実に防止することができるようになる。
なお、本実施の形態による硬貨繰出機構やこのような硬貨繰出機構を備えた硬貨処理装置1は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
例えば、後端ガイド部34の下側ガイド部分34aは、図5に示すような硬貨収納部30a〜30fの幅方向に沿って略直線状に延びるような形状のものに限定されることはない。下側ガイド部分34aの別の構成例として、例えば横断面が多角形形状のものが用いられるようになっていてもよい。
また、更に別の後端ガイド部の構成として、図11に示すような下側ガイド部分36aおよび上側ガイド部分36bを有する後端ガイド部36が用いられるようになっていてもよい。より詳細には、図11に示すように、下側ガイド部分36aの内面は硬貨収容空間31の幅方向における中央箇所が端部近傍よりも硬貨の繰出方向(すなわち、図11における右方向)に突出するような凸形状の湾曲面となっており、また、上側ガイド部分36bの内面は硬貨収容空間31の幅方向における中央箇所が端部近傍よりも硬貨の繰出方向とは反対方向に突出するような凹形状の湾曲面となっていてもよい。ここで、硬貨収容空間31の幅方向における中央箇所において上側ガイド部分36bの内面が下側ガイド部分36aの内面と重なるようになっている。このため、硬貨収容空間31の幅方向における中央箇所では、鉛直方向において下側ガイド部分36aおよび上側ガイド部分36bは略直線状に延びるようになるが、硬貨収容空間31の幅方向における端部近傍では、下側ガイド部分36aと上側ガイド部分36bとの間に段差が生じており、下側ガイド部分36aは上側ガイド部分36bよりも後方側(すなわち、図11における左側)に位置するようになる。このことにより、硬貨収容空間31の幅方向における端部近傍では、上側ガイド部分36bにより区画される硬貨収容空間31よりも後方側に硬貨の逃げ空間(図11において参照符合Gで表示)が形成されるようになる。
また、本発明の原理が適用される硬貨繰出機構が各硬貨収納部30a〜30fに設けられる代わりに、あるいは本発明の原理が適用される硬貨繰出機構が各硬貨収納部30a〜30fに設けられることに加えて、本発明の原理が適用される硬貨繰出機構が硬貨受入部12に設けられるようになっていてもよい。すなわち、硬貨受入部12における硬貨収容空間の後端部を区画するための後端ガイド部(図1における左側の端部に位置するガイド部)が、上側ガイド部分と、上側ガイド部分の下方に設けられ、少なくともその一部が上側ガイド部分よりも後方側に位置する下側ガイド部分とを有していてもよい。この場合には、硬貨受入部12において繰出部14の繰出ベルト14aから浮いた状態で硬貨がブリッジしてしまうことを抑制することにより硬貨受入部12の硬貨収容空間の後端部で硬貨が残留してしまうことを防止することができる。