以下に添付図面を参照して、本発明に係る硬貨搬送装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
<硬貨処理装置>
図1及び図2は、それぞれ本発明の実施の形態である硬貨搬送装置が適用された硬貨処理装置の概略構成を示すものであり、図1は平面図、図2は正面図である。尚、以下においては、硬貨処理装置の概略について説明した後、本発明の実施の形態である硬貨搬送装置について説明する。
ここで例示する硬貨処理装置10は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗においてPOS(Point Of Sales)レジスタ装置に接続される自動釣銭機として適用されるものであり、装置本体11を備えている。
装置本体11は、略直方状を成す筐体であり、投入口12、操作表示部13、出金口14及び返却口15を備えている。投入口12は、装置本体11の前端上面の右側に設けてあり、投入された硬貨を装置本体11の内部に受け入れるための開口である。この投入口12は、例えば顧客等の利用者からの預り金を一時保持する一時保持部として機能する。
操作表示部13は、装置本体11の前端上面の左側に設けてあり、表示部13a及び操作部13bを有している。表示部13aは、各種情報を表示するものであり、操作部13bは例えばテンキー等で構成されて各種の操作入力を行う入力手段である。
出金口14は、装置本体11の前面左側の上部に設けてある。この出金口14は、装置本体11の内部に収納された硬貨を払い出すための開口であり、装置本体11に取り付けられた出金トレイ16に硬貨を払い出すものである。返却口15は、装置本体11の前面右側の上部に設けてある。この返却口15は、硬貨を返却するための開口である。
図3は、図1及び図2に示した硬貨処理装置10の内部構成を模式的に示す模式図であり、図4は、図1及び図2に示した硬貨処理装置10の特徴的な制御系を示すブロック図である。これら図3及び図4を用いて硬貨処理装置10の内部構成を機能別に説明する。
装置本体11の内部には、搬送ユニット20が設けてある。この搬送ユニット20は、入金搬送部21、一時保留部22、振分部(硬貨振分装置)23、収納庫24、出金搬送部25、切換ゲート群26及びリフトアップ部27を有している。
入金搬送部21は、投入口12より投入されるとともに図示せぬ投入検出センサによって検出された硬貨を搬送するものであり、検銭部21aが設けてある。検銭部21aは、硬貨の真贋及び金種を判別するものである。
一時保留部22は、検銭部21aで正貨と判定された硬貨を一時的に保留するものである。振分部23は、一時保留部22で保留されてから搬送された硬貨を金種毎に振り分けるものである。この振分部23の具体的な構成については後述する。
収納庫24は、金種毎に設けてあり、振分部23により振り分けられた硬貨を収納するものである。より具体的には、収納庫24として、1円収納庫24a、100円収納庫24b、10円収納庫24c、50円収納庫24d、5円収納庫24e、500円収納庫24fの6つが設けてある。これらの収納庫24については、10枚で1桁繰り上がる1系硬貨を収納する収納庫24(以下、1系硬貨収納庫24a,24b,24cともいう)が装置本体11の内部の上部に配置され、2枚で1桁繰り上がる5系硬貨を収納する収納庫24(以下、5系硬貨収納庫24d,24e,24fともいう)が装置本体11の内部の下部に配置されている。つまり、装置本体11の内部において、1系硬貨収納庫24a,24b,24cが上段に、5系硬貨収納庫24d,24e,24fが下段に設けてある。
そして、1系硬貨収納庫24a,24b,24cでは、1円収納庫24a、100円収納庫24b、10円収納庫24cの3つが前方側から順に設けてあり、5系硬貨収納庫24d,24e,24fでは、50円収納庫24d、5円収納庫24e、500円収納庫24fの3つが前方側から順に設けてある。これら収納庫24は、それぞれ投入された硬貨を金種別に個別に収納するようにしている。また各収納庫24は、収納する商品を繰り出す機能を有している。
出金搬送部25は、上方側出金搬送部251と下方側出金搬送部252との2つが設けてある。上方側出金搬送部251は、装置本体11の内部の上部に設けてあり、1系硬貨収納庫24a,24b,24cから繰り出された硬貨を前方に向けて搬送するものである。この上方側出金搬送部251は、1系硬貨収納庫24a,24b,24cから繰り出された硬貨を、出金口14に連通する出金シュート28に向けて前方に搬送するものである。
下方側出金搬送部252は、装置本体11の内部の下部に設けてあり、5系硬貨収納庫24d,24e,24fから繰り出された硬貨を後方に向けて搬送し、リフトアップ部27に搬送するものである。
切換ゲート群26は、第1切換ゲート26a、第2切換ゲート26b及び第3切換ゲート26cを備えている。第1切換ゲート26aは、入金搬送部21の搬送方向下流側に設けてある。この第1切換ゲート26aは、入金搬送部21で搬送された硬貨を一時保留部22に搬送させる状態と、該硬貨を出金口14に搬送させる状態との間で択一的に切換可能なものである。
第2切換ゲート26bは、一時保留部22の搬送方向下流側に設けてある。この第2切換ゲート26bは、一時保留部22で保留された硬貨を振分部23に送出させる状態と、該硬貨を返却口15に送出させる状態との間で択一的に切換可能なものである。かかる第2切換ゲート26bは、常態においては、一時保留部22で保留された硬貨を振分部23に送出させる状態となっている。
第3切換ゲート26cは、上方側出金搬送部251の搬送方向下流側に設けてある。この第3切換ゲート26cは、上方側出金搬送部251で搬送された硬貨を、出金シュート28を経由して出金口14に搬送させる搬送状態と、該硬貨を一時保留部22に搬送させる循環状態との間で択一的に切換可能なものである。かかる第3切換ゲート26cは、常態においては、搬送状態となっている。
リフトアップ部27は、下方側出金搬送部252により後方に向けて搬送された5系硬貨を導入し、上方に向けて移動させて、上方側出金搬送部251に送出するものである。このリフトアップ部27は、出金搬送部25とともに、硬貨を上方に向けて搬送する硬貨搬送装置を構成している。かかる出金搬送部25及びリフトアップ部27の具体的な構成について後述する。
硬貨処理装置10は、上記構成の他、出金検知部30、計数センサ(計数検出手段)31及び制御部32を備えている。出金検知部30は、出金シュートセンサ30a及び出金トレイセンサ30bを備えている。
出金シュートセンサ30aは、出金シュート28を通過する硬貨の有無を検知するものである。出金トレイセンサ30bは、出金トレイ16に払い出された硬貨の有無を検知するものである。
かかる出金検知部30は、出金シュートセンサ30a及び出金トレイセンサ30bの少なくとも一方で硬貨を検知した場合には、出金検知した旨の検知信号を制御部32に送出するものである。
計数センサ31は、振分部23から各収納庫24への通過路に設けてある。かかる計数センサ31は、後述するように例えば光センサ等により構成されるもので、振分部23から対応する収納庫24へ振り分けられた硬貨の枚数を検出するものであり、その検出結果を計数信号として制御部32に送出するものである。
制御部32は、出金検知部30や計数センサ31、表示部13a、操作部13b、搬送ユニット20、検銭部21aに電気的に接続してあるとともに、POSレジスタ装置等の上位装置1に電気的に接続してある。この制御部32は、操作部13bを通じて指令が与えられた場合、あるいは検銭部21aから検出信号が与えられた場合、更には上位装置1から各種指令が与えられた場合、記憶部33に格納したプログラムやデータに基づいて表示部13aの表示制御、搬送ユニット20の駆動制御を行うものである。
以上のような構成を有する硬貨処理装置10は、次のように動作する。まず入金動作について説明する。上位装置1から入金許可指令が与えられた場合、投入口12に投入された硬貨を投入検出センサによって検出した後、入金搬送部21によって搬送し、検銭部21aにより真贋及び金種を判定する。硬貨が正貨である場合、一時保留部22に保留する。一方、硬貨が正貨でない場合、第1切換ゲート26aを介して出金口14に搬送し、出金トレイ16に返却する。尚、上位装置1からの返却指示があった場合、一時保留部22に保留した硬貨を、第2切換ゲート26bを介して返却口15に返却する。
一時保留部22に保留した硬貨を振分部23に搬送し、振分部23にて後方に向けて搬送しながら金種毎に振り分ける。振分部23によって振り分けられた硬貨は、金種に応じて収納庫24に収納される。すなわち、1系硬貨については上段の1系硬貨収納庫24a,24b,24cに金種毎に収納され、5系硬貨については下段の5系硬貨収納庫24d,24e,24fに金出毎に収納され、その後に上位装置1に対して入金完了通知を行うことにより入金動作を終了する。
次に出金動作について説明する。上位装置1から出金指令が与えられた場合、該出金指令に応じた金種の硬貨を任意の収納庫24から出金搬送部25に繰り出す。ここで1系硬貨については、該当する1系硬貨収納庫24a,24b,24cから上方側出金搬送部251に繰り出し、5系硬貨については、該当する5系硬貨収納庫24d,24e,24fから下方側出金搬送部252に繰り出す。上方側出金搬送部251に繰り出された硬貨については、上方側出金搬送部251により前方に向けて搬送し、第3切換ゲート26cを介して、出金シュート28を経由して出金口14から装置本体11の外部に払い出す。下方側出金搬送部252に繰り出された硬貨については、下方側出金搬送部252により後方に搬送する。そして、リフトアップ部27で5系硬貨を上方側出金搬送部251に送出する。上方側出金搬送部251に送出された硬貨については、上方側出金搬送部251により前方に向けて搬送し、第3切換ゲート26cを介して、出金シュート28を経由して出金口14から装置本体11の外部に払い出す。このようにして所定の硬貨を外部に払い出した後、上位装置1に対して出金完了通知を行うことにより出金動作を終了する。
更に精査動作について説明する。精査動作は、各収納庫24に収納された硬貨の枚数を計測する動作である。上位装置1から精査指令が与えられた場合、または操作部13bから精査指令が与えられた場合、1系硬貨については、1系硬貨収納庫24a,24b,24cから上方側出金搬送部251に硬貨を繰り出し、上方側出金搬送部251により前方に搬送して一時保留部22に一時保留させる。そして、一時保留部22に保留した硬貨を振分部23に搬送し、振分部23にて金種毎に振り分けた後、計数センサ31にて金種毎の枚数を検出しつつ所定の収納庫24(1系硬貨収納庫24a,24b,24c)に収納させる。これにより、各収納庫24の硬貨の枚数を計測することができる。
5系硬貨については、5系硬貨収納庫24d,24e,24fから下方側出金搬送部252に硬貨を繰り出し、下方側出金搬送部252により後方に搬送する。そして、リフトアップ部27で5系硬貨を上方側出金搬送部251に送出し、上方側出金搬送部251により前方に搬送して一時保留部22に一時保留させる。そして、一時保留部22に保留した硬貨を振分部23に搬送し、振分部23にて金種毎に振り分けた後、計数センサ31にて金種毎の枚数を検出しつつ所定の収納庫24(5系硬貨収納庫24d,24e,24f)に収納させる。これにより、各収納庫24の硬貨の枚数を計測することができる。その後に上位装置1に対して精査完了通知を行うことにより精査動作を終了する。
そのような硬貨処理装置10によれば、10枚で1桁繰り上がる1系硬貨を収納する1系硬貨収納庫24a,24b,24cが上段、2枚で1桁繰り上がる5系硬貨を収納する5系硬貨収納庫24d,24e,24fが下段となるように構成されているので、奥行き寸法の小型化を図ることができる。
また硬貨処理装置10によれば、搬送頻度が相対的に低い5系硬貨の搬送経路の一部を、搬送頻度が相対的に高い1系硬貨の搬送経路と共通化させているので、部品点数の削減による製造コストの低減化を図りつつ、消費電力の削減による省エネルギー化を図ることができる。
<振分部23>
次に、上記振分部23の具体的な構成、すなわち硬貨振分装置の具体的な構成について説明する。図5は、図3に示した振分部23を示す斜視図であり、図6及び図7は、それぞれ図5に示した振分部23の主要構成要素を示した斜視図及び側面図である。これら図5~図7に示すように、振分部23は、搬送ベース40、ガイド部材41、当接部材42、振分搬送ベルト(搬送ベルト)43及び押圧ローラ44を備えて構成してある。
搬送ベース40は、前後方向が長手方向となる長尺状平板部材であり、上面が硬貨の搬送路401を構成している。この搬送ベース40は、図7に示したように、後方に向かうに連れて漸次上方に傾斜する態様で設置してある。つまり、搬送路401も後方に向かうに連れて漸次上方に傾斜している。このような搬送ベース40には、振分開口402が設けてある。
振分開口402は、上記搬送路401を臨む態様で前後方向が長手方向となる長尺状の切欠により構成してあり、金種毎に設けられた通過口402a等が外径の小さい金種の順に上流側(前方側)から並びつつ互いに連続することで形成してある。より具体的に説明すると、振分開口402は、図8及び図9に示すように、前方から後方に向けて、すなわち搬送路401における上流側から下流側に向けて、1円硬貨用通過口402a、50円硬貨用通過口402b、5円硬貨用通過口402c、100円硬貨用通過口402d、10円硬貨用通過口402e及び500円硬貨用通過口402fが互いに連通することで形成された異形状開口である。
ここで1円硬貨用通過口402aは、1円硬貨の通過を許容するのに必要十分な大きさを有しており、1円硬貨よりも外径が大きい硬貨(50円硬貨、5円硬貨、100円硬貨、10円硬貨、500円硬貨)が通過することを規制するものである。この1円硬貨用通過口402aは、前後幅が1円硬貨よりも僅かに大きく、左右幅が1円硬貨よりも僅かに小さいものである。
50円硬貨用通過口402bは、50円硬貨の通過を許容するのに必要十分な大きさを有しており、50円硬貨よりも外径が大きい硬貨(5円硬貨、100円硬貨、10円硬貨、500円硬貨)が通過することを規制するものである。この50円硬貨用通過口402bは、前後幅が50円硬貨よりも僅かに大きく、左右幅が50円硬貨よりも僅かに小さいものである。
5円硬貨用通過口402cは、5円硬貨の通過を許容するのに必要十分な大きさを有しており、5円硬貨よりも外径が大きい硬貨(100円硬貨、10円硬貨、500円硬貨)が通過することを規制するものである。この5円硬貨用通過口402cは、前後幅が5円硬貨よりも僅かに大きく、左右幅が5円硬貨よりも僅かに小さいものである。
100円硬貨用通過口402dは、100円硬貨の通過を許容するのに必要十分な大きさを有しており、100円硬貨よりも外径が大きい硬貨(10円硬貨、500円硬貨)が通過することを規制するものである。この100円硬貨用通過口402dは、前後幅が100円硬貨よりも僅かに大きく、左右幅が100円硬貨よりも僅かに小さいものである。
10円硬貨用通過口402eは、10円硬貨の通過を許容するのに必要十分な大きさを有しており、10円硬貨よりも外径が大きい硬貨(500円硬貨)が通過することを規制するものである。この10円硬貨用通過口402eは、前後幅が10円硬貨よりも僅かに大きく、左右幅が10円硬貨よりも僅かに小さいものである。
500円硬貨用通過口402fは、500円硬貨の通過を許容するのに必要十分な大きさを有している。この500円硬貨用通過口402fは、前後幅が500円硬貨よりも僅かに大きく、左右幅が500円硬貨よりも僅かに小さいものである。
ガイド部材41は、前後方向が長手方向となる長尺平板状部材であり、図10に示すように搬送ベース40の搬送路401であって振分開口402の右方側に、該振分開口402に隣接する態様で設けてある。このガイド部材41は、その厚みが、搬送路401を通過する硬貨のうち、最も厚みが大きい硬貨の厚みよりも僅かに大きいものである。
当接部材42は、前後方向が長手方向となる長尺平板状部材であり、図7~図9にも示したように、ガイド部材41の上部に該ガイド部材41の長手方向と自身の長手方向が一致する態様で設けてある。この当接部材42には、各通過口402a等に対応して左方に向けて突出する6つの突部421が形成してある。これら突部421は、その突出端部が対応する通過口402a等の上方域に進出する態様で形成してある。尚、図7~図9に示すように、上記計数センサ31は、各通過口402a等に対応して設けてあり、対応する通過口402a等の前方側の下方域に設けてある。
振分搬送ベルト43は、搬送ベース40の上方域に設けられた複数の振分搬送プーリ43aに無端状に張設されて設けてある。これら振分搬送プーリ43aのうち最も後方の振分搬送プーリ43aは、モータ43bによる駆動力が伝達されることにより回転する駆動プーリである。モータ43bが駆動することにより、駆動プーリである振分搬送プーリ43aが右方から見て反時計回りに回転することにより、振分搬送ベルト43は、下方側延在部分431が後方に向かう態様で、自身の延在方向に沿って変位する。かかる振分搬送ベルト43は、下方側延在部分431が後方に向かう態様で変位することにより、該下方側延在部分431により搬送ベース40の搬送路401に沿って硬貨を後方に向けて搬送するものである。つまり、下方側延在部分431は、硬貨と接触可能な領域を構成している。
押圧ローラ44は、各通過口402a等に対応して複数(本実施の形態では6つ)設けてある。これら押圧ローラ44は、左右方向に沿って延在する自身の中心軸441回りに回転可能に設けてあり、ローラバネ(付勢手段)442により下方に向けて付勢されている。そのような押圧ローラ44は、振分搬送ベルト43における下方側延在部分431(硬貨と接触可能な領域)のうち自身が対応する通過口402a等の上方部分を、上記ローラバネ442の付勢力により下方に向けて付勢する態様で設けてある。また押圧ローラ44は、右方に向かうに連れて、すなわちガイド部材41に近接するに従って外径が小さくなる先細り形状を成しており、具体的には円錐台形状を成している。
そのような振分部23において、複数の押圧ローラ44は、常態においては図11に示すように、下部が搬送ベース40の搬送路401よりも下方に配置されている。
以上のような構成を有する振分部23においては、制御部32から指令が与えられたモータ43bが駆動することにより、振分搬送ベルト43は、下方側延在部分431が後方に向かう態様で変位する。これにより、一時保留部22に保留された硬貨が、下面が搬送ベース40の搬送路401に接しつつ上面が振分搬送ベルト43に接した状態で、搬送路401を後方に向けて搬送される。この場合において、押圧ローラ44は、ガイド部材41に近接するに従って外径が小さくなる円錐台形状を成しているので、硬貨をガイド部材41に向けて押圧することができ、これにより、硬貨は、一部がガイド部材41に接した状態で搬送路401を後方に向けて搬送される。
搬送路401を搬送される硬貨Cの外径が、対応する通過口402a等が対象とする硬貨の外径よりも大きい場合、図12に示すように、押圧ローラ44は、振分搬送ベルト43の下方側延在部分431とともに、ローラバネ442の付勢力に抗して上方に向けて移動し、該通過口402a等の上方を硬貨Cが通過することを許容する。
その一方、搬送路401を搬送される硬貨Cが、対応する通過口402a等が対象とするものである場合、図13に示すように、押圧ローラ44は、自身の形状を利用して該硬貨Cの左方側が下方となるように該硬貨Cを傾斜させ、該硬貨Cの右方側を当接部材42の該当する突部421に当接させる。これにより、硬貨Cは、通過口402a等を通過し、所定の通過路45(図14参照)を通過して該当する収納庫24に収納される。
上述したように、押圧ローラ44は、常態において自身の下部が搬送ベース40の搬送路401よりも下方に配置されているので、該当する硬貨Cを押圧する際、搬送ベース40の搬送路401に対する該硬貨Cの傾斜角度を大きくすることができる。そのため、該硬貨Cが5系硬貨である場合、5系硬貨収納庫24d,24e,24fへの通過路45は、1系硬貨収納庫24a,24b,24cの存在により、一部が屈曲した上下寸法の大きいものとなるが、搬送ベース40に対する硬貨Cの傾斜角度を大きくすることができるので、通過路45の壁面に当接する硬貨Cの傾斜角度θを小さくすることができ、該通過路45での硬貨詰まり等を抑制することができる。
以上説明したように、上記振分部23によれば、押圧ローラ44は、常態において自身の下部が搬送ベース40の搬送路401よりも下方に配置されているので、搬送路401を搬送される硬貨が該当する硬貨である場合、該硬貨を下方に向けて十分に押圧することができ、硬貨の振り分けを良好に行うことができる。
また上記振分部23によれば、計数センサ31が対応する通過口402a等の前方側の下方域に設けてあるので、突部421に当接して該通過口402a等を通過した硬貨の枚数を検出する。つまり、突部421に当接したときのように硬貨が振動等により挙動が不安定な状態の硬貨の枚数を検出するものではないので、チャタリングにより1枚の硬貨を複数枚と検出してしまうことがなく、これにより、計数の検出精度の向上を図ることができる。
<出金搬送部25及びリフトアップ部27>
次に、上記出金搬送部25及び上記リフトアップ部27の具体的な構成、すなわち硬貨搬送装置の具体的な構成について説明する。図15は、図3に示した出金搬送部25及びリフトアップ部27を示す斜視図であり、図16は、図15に示した出金搬送部25及びリフトアップ部27を示す側面図である。これら図15及び図16に示すように、出金搬送部25及びリフトアップ部27は、第1出金搬送ベルト(第1搬送ベルト)51及び第2出金搬送ベルト(第2搬送ベルト)52を備えている。
第1出金搬送ベルト51は、複数の第1出金搬送プーリ51aに無端状に張設してあり、その搬送面を構成する外面に複数の突起511が設けられている。この第1出金搬送ベルト51は、第1出金搬送プーリ51aの回転に伴って延在方向に沿って変位するものである。尚、複数の第1出金搬送プーリ51aのうち1つが駆動源からの駆動力が付与されることにより回転する駆動プーリであり、その他は第1出金搬送プーリ51aの変位により回転する従動プーリである。
第2出金搬送ベルト52は、複数の第2出金搬送プーリ52aに無端状に張設してある。この第2出金搬送ベルト52は、一部分が第1出金搬送ベルト51の一部に密着する態様で対向配置されており、第1出金搬送ベルト51の変位により自身の延在方向に沿って変位する従動ベルトである。つまり、第2出金搬送プーリ52aは、第2出金搬送ベルト52の変位により回転する従動プーリである。
そして、第2出金搬送ベルト52は、第1出金搬送ベルト51との密着対向配置部分が、第1出金搬送ベルト51により後方に向けて搬送された硬貨を該第1搬送ベルトと挟持した状態で上方に向けて搬送する挟持搬送部分53を構成している。また第2出金搬送ベルト52は、挟持搬送部分53で上方に向けて搬送した硬貨を前方に向けて搬送するものである。
このように第1出金搬送ベルト51と第2出金搬送ベルト52との挟持搬送部分53がリフトアップ部27を構成し、第1出金搬送ベルト51における挟持搬送部分53に対して硬貨を後方に向けて搬送する部分が下方側出金搬送部252を構成し、第2出金搬送ベルト52における挟持搬送部分53からの硬貨を前方に向けて搬送する部分が上方側出金搬送部251を構成している。尚、第2出金搬送ベルト52における上方側出金搬送部251を構成する部分の上流側は、前方に向かうに連れて漸次上方に傾斜する態様で設けられ、1系硬貨収納庫24a,24b,24cのうち最も後方に配置された10円収納庫24cの繰出口24c1との間に10円硬貨の外径以上の間隔が確保されている。
そのような硬貨搬送装置においては、姿勢規制部材54、リバースローラ(流量規制部材)55、ローラガイド部材56が設けてある。
姿勢規制部材54は、第1出金搬送ベルト51における下方側出金搬送部252を構成する部分の上方域に設けてある。この姿勢規制部材54は、5系硬貨収納庫24d,24e,24fから繰り出された硬貨が起立姿勢となることを規制するもので、第1出金搬送ベルト51の下方側出金搬送部252を構成する部分に複数の硬貨が横倒姿勢で堆積させるためのものである。
リバースローラ55は、第1出金搬送ベルト51の下方側出金搬送部252を構成する部分の下流側上方部分に設けてある。このリバースローラ55は、図17に示すように、自身の中心軸551回りに回転可能に設けてあり、駆動源からの駆動力が付与されることにより左方から見て反時計回りに回転するものである。ここで第1出金搬送ベルト51及び第2出金搬送ベルト52の搬送速度に対するリバースローラ55の回転速度の比である増速比は、2以上とされている。
またリバースローラ55は、第1搬送ベルトとの離間距離dが硬貨の厚みの3倍未満となる態様で設置してある。つまり、離間距離dは、硬貨が2枚重なった状態で通過できる大きさであり、硬貨が3枚以上重なった状態では通過できない大きさである。
ローラガイド部材56は、リバースローラ55の前方に設けてある。このローラガイド部材56は、第1出金搬送ベルト51により後方に向けて搬送される硬貨がリバースローラ55の周面に接触する場合に、該硬貨と、この硬貨が接触する部分におけるリバースローラ55の接線とのなす角度である接触角αが90°以上となる態様で、リバースローラ55に対する硬貨の接触姿勢を規制するものである。
以上のような構成を有する硬貨搬送装置(出金搬送部25及びリフトアップ部27)においては、リバースローラ55と第1出金搬送ベルト51との離間距離dが硬貨の厚みの3倍未満となる態様で設置してあるので、挟持搬送部分53における硬貨が、表面及び裏面の少なくとも一方が第1出金搬送ベルト51及び第2出金搬送ベルト52のいずれかに接した状態で挟持搬送されるよう該挟持搬送部分53への硬貨の流量を規制することができる。これにより、挟持搬送部分53において硬貨を2枚重ねた状態で挟持搬送することができるとともに、第1出金搬送ベルト51及び第2出金搬送ベルト52のいずれに対しても非接触となる硬貨を無くすことができる。このように硬貨を2枚重ねた状態で挟持搬送することで、上方に向けて硬貨の時間当たりの搬送量を増大させることができ、しかも第1出金搬送ベルト51及び第2出金搬送ベルト52のいずれに対しても非接触となる硬貨を無くすことができるので、挟持搬送部分53で硬貨が滞留してしまうことを防止できる。よって、硬貨処理装置10によれば、複数の硬貨を上方に向けて搬送するのに要する時間の短縮化を図ることができる。
上記硬貨搬送装置によれば、増速比が2以上であるので、第1出金搬送ベルト51における下方側出金搬送部252を構成する部分により搬送された複数の硬貨を良好に分離させることができる。
上記硬貨搬送装置によれば、ローラガイド部材56が、接触角を90°以上となる態様でリバースローラ55に対する硬貨の接触姿勢を規制するので、硬貨がローラガイド部材56とリバースローラ55との間に挟み込まれて硬貨の搬送をロックさせてしまうことを回避することができる。
上記硬貨搬送装置によれば、姿勢規制部材54が、5系硬貨収納庫24d,24e,24fから繰り出された硬貨が起立姿勢となることを規制するので、第1出金搬送ベルト51の下方側出金搬送部252を構成する部分に複数の硬貨が横倒姿勢で堆積させることができ、これにより起立姿勢となる硬貨が第1出金搬送ベルト51とローラガイド部材56との間に跨って、硬貨の搬送をロックさせてしまうことを回避することができる。
上記硬貨搬送装置によれば、第2出金搬送ベルト52における上方側出金搬送部251を構成する部分の上流側は、前方に向かうに連れて漸次上方に傾斜する態様で設けられ、10円収納庫24cの繰出口24c1との間に10円硬貨の外径以上の間隔が確保されているので、繰出口24c1から繰り出された10円硬貨により硬貨詰まりが生ずることを抑制することができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
上述した実施の形態では、リバースローラ55が挟持搬送部分53における硬貨が、表面及び裏面の少なくとも一方が第1出金搬送ベルト51及び第2出金搬送ベルト52のいずれかに接した状態で挟持搬送されるよう該挟持搬送部分53への硬貨の流量を規制するものとして説明したが、本発明においては、リバースローラ55に限定されず、上記硬貨の流量を規制することができれば、平板部材等の種々の形状のものを採用することができ、その形態は特に限定されるものではない。
上述した実施の形態では特に言及していないが、リバースローラ55は、ワンウェイクラッチを介在した状態で駆動源に連係されていてもよい。このようにワンウェイクラッチを介在していれば、第1出金搬送ベルト51及び第2出金搬送ベルト52を上述した例と逆方向に変位させた場合に、挟持搬送部分53を下方に向けて挟持搬送された硬貨がリバースローラ55と第1出金搬送ベルト51との間で詰まってしまうことを回避することができる。
上述した実施の形態では、第1出金搬送ベルト51の搬送面を構成する外面に複数の突起511が設けられていたが、本発明においては、搬送面に突起が設けられていなくてもよい。