以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、センサ装置100の検出信号に応じて、予め定められた処理を実行する制御装置10の構成例を示す。センサ装置100は、入力する磁場を検出する磁気センサであってよく、これに代えて、入力する電流を検出する電流センサであってもよい。センサ装置100は、外部から入力する磁場または電流の大きさに応じた検出信号を出力する。
制御装置10は、センサ装置100が出力する検出信号に応じて、当該制御装置10に接続される装置等を制御する。制御装置10の制御対象は、センサ装置100が出力する検出信号に応じて制御する装置であれば、モーター、アクチェータ、移動ステージ、およびエンジン等でよい。本実施形態において、制御装置10は、モーターに接続され、モーターの駆動を制御する例を説明する。この場合、センサ装置100は、当該モーターの駆動電流を検出し、制御装置10は、検出された駆動電流に応じたフィードバック制御を実行する。即ち、制御装置10、モーター、およびセンサ装置100は、モーターを駆動する処理システムを構成する。センサ装置100は、CPU20と、過電流処理回路30と、を備える。
CPU20は、センサ装置100が出力する検出信号に応じて、モーターの駆動を制御する。CPU20は、一例として、インバータ回路等を介してモーターに接続され、インバータ回路を制御する制御信号を供給することで、モーターを駆動する。CPU20は、予め定められたアルゴリズム等に基づき、モーターの駆動を制御してよい。CPU20は、ベクトル制御、またはPID制御等を実行してモーターを駆動してよい。
CPU20は、過電流処理回路30が、検出信号の異常を検出したことに応じて、制御をモーター、インバータ回路の保護制御への変更、または、制御を中止または中断する。例えば、過電流処理回路30は、これらを実行させる割り込み信号をCPU20へ送ってよい。また、CPU20が過電流処理回路30を有してもよく、その場合、センサ装置100が出力する検出信号を割り込み信号として直接CPU20が受けてよい。モーターを駆動する電流が基準値を超えた過電流となった場合、当該モーターが加熱されることがあり、動作不良、故障、および破壊等に至る場合がある。また、駆動回路等に短絡が生じた場合、回路および/またはモーターの動作不良、故障、および破壊等に至る場合がある。そこで、過電流処理回路30は、検出信号の振幅値の大きさ等に基づき、当該検出信号の異常を検出する。
過電流処理回路30は、検出信号が第1基準値以上になったことに応じて、モーターの駆動電流が過電流であると判断してよい。また、過電流処理回路30は、検出信号が第2基準値以下となったことに応じて、短絡が生じたと判断してよい。ここで、第1基準値および第2基準値は、予め定められた値でよく、これに変えて、外部から指定される値でもよい。なお、図1において、過電流処理回路30が検出信号に基づいて異常を検出する例を説明したが、これに代えて、センサ装置100が異常を検出し、検出した結果を過電流処理回路30が受け取ってもよい。
以上の処理システムにおいて異常が検出された場合、過電流処理回路30は、直ちにCPU20へ制御の割り込みを実行し、CPU20がモーター、インバータ回路の制御を調整し、電流が過剰に流れないような保護制御への変更を行うか、制御の中止または中断させることが望ましい。しかしながら、信号配線の長さ、寄生抵抗、および寄生容量等によって、過電流処理回路30が受け取る検出信号の応答時間にはバラツキが生じることがあった。即ち、センサ装置100から出力される検出信号をCPU20および過電流処理回路30がそれぞれ受信する受信タイミングにバラツキが生じてしまい、過電流処理回路30が異常を検知しても、CPU20がモーター、インバータ回路の保護制御への変更、または、制御の中止若しくは中断を直ちに実行できない場合があった。
また、一例として、センサ装置100が単一のデバイスとして形成される場合、制御装置10の内部において、CPU20および過電流処理回路30の受信タイミングおよび制御タイミングを調整しなければならず、設計、製作、動作試験、異常検出および改良等のコストが上昇していた。そこで、本実施形態に係るセンサ装置は、センサ装置内部で検出信号および検出信号の異常を検知する検知信号の出力タイミングを調整可能に出力する。このようなセンサ装置について、まず、磁場を検出する磁気センサ装置を例に述べる。
図2は、本実施形態に係る磁気センサ装置200の構成例を示す。磁気センサ装置200は、入力する磁場の大きさに応じた磁場検出信号を第1出力として出力する。また、磁気センサ装置200は、入力する磁場が基準範囲外となった場合に、異常を通知する検知信号を第2出力として出力する。磁気センサ装置200は、磁気センサ素子210と、増幅部110と、検知部120と、入出力部150と、設定部160と、クロック生成部170と、を備える。
磁気センサ素子210は、当該磁気センサ装置200に入力する磁場の大きさに応じた検出信号を出力する。磁気センサ素子210は、例えば、基板等の表面に形成され、当該平面に略垂直な方向の磁場を検出する。本実施形態に係る磁気センサ素子210は、ホール素子を有する例を説明する。ここで、基板表面をXY平面とし、XY平面に垂直な方向をZ軸とすると、ホール素子は、X軸方向に電流を流すとZ軸方向に入力する磁場に応じたY軸方向の起電力を発生させる(ホール効果)素子である。磁気センサ素子210は、XY平面において、十字形状に形成されてよい。磁気センサ素子210は、半導体等で形成されてよい。
磁気センサ素子210は、端子212および端子214を含む第1端子対および端子216および端子218を含む第2端子対を有する。磁気センサ素子210は、一例として、第1端子対および第2端子対が基板表面に形成され、基板に略垂直に入力する磁場を検出する。即ち、磁気センサ素子210は、第1端子対に電流を流すと、入力する磁場に応じて第2端子対から磁場に応じた起電力を発生させる。また、磁気センサ素子210は、第2端子対に電流を流すと、入力する磁場に応じて第1端子対から磁場に応じた起電力を発生させる。
このような磁気センサ素子210は、出力信号に素子固有のオフセット信号を含めて出力することがある。このようなオフセット信号を低減すべく、非特許文献1に記載されているスピニングカレント法等を利用してよい。当該スピニングカレント法は、第1位相と第2位相を繰り返すスピニングカレントクロックに基づき、ホール素子に流す電流の方向を切り換え、磁場入力に応じた信号成分とオフセットによる信号成分の極性を反転させる。
例えば、第1位相において、+Z方向の磁場入力Bに対して、端子212から端子214(+X方向とする)へと通電した磁気センサ素子210は、端子218(+Y方向側とする)からホール起電力信号+VSを発生する(−Y方向側の端子216からホール起電力信号−VSを発生する)と共に、+Y方向のオフセット電圧+VOを出力する。この場合、磁気センサ素子210は、同じ+Z方向の磁場入力に対して、第2位相において端子218から端子216(−Y方向)へと通電すると、+X方向側の端子214からホール起電力信号+VSを発生する(−X方向側の端子212からホール起電力信号−VSを発生する)と共に、+X方向のオフセット電圧+VOを出力する。
したがって、第1位相において磁気センサ素子210のY軸方向の第2端子対から出力電圧Vh1を取得し、第2位相において磁気センサ素子210のX軸方向の第1端子対から出力電圧Vh2を取得することで、磁気センサ素子210の磁場Bの検出信号は次式のように示される。なお、次式は、端子218および端子212を正側として符号を付与した例を示す。
(数1)
Vh1=+2VS+VO
Vh2=−2VS+VO
このように、通電方向を切り換えることにより、(数1)式のように、ホール素子の検出信号のうち、ホール起電力信号VSの信号成分の符号を、第1位相と第2位相において反転させることができる。即ち、スピニングカレント法は、スピニングカレントクロックによってホール起電力信号VSを変調して変調信号にすると共に、オフセット電圧VOをDC信号出力とするので、周波数領域で2つの信号を分離することができ、理想的には、フィルタ等を用いて当該オフセット信号を除去することができる。
増幅部110は、このように、磁気センサ素子210の駆動電流を切り換えて供給しつつ、磁気センサ素子210の変調された検出信号を受け取り、当該検出信号を復調して第1出力として出力する。また、増幅部110は、内部に増幅回路を有し、磁気センサ素子210の出力を増幅して出力する。増幅部110は、切換部230と、第1増幅回路240と、復調部250と、第2増幅回路260と、第3増幅回路270と、を有する。
切換部230は、磁気センサ素子210の第1端子対および第2端子対の間で駆動電流を流す端子対および磁気センサ素子210の出力をセンスする端子対を、外部から供給される第1クロックに応じて切り換える。切換部230は、例えば、第1クロックの第1位相において、電源の電位VDDを端子212に、基準電位VSSを端子214にそれぞれ接続して、第1端子対に駆動電流を供給する。この場合、切換部230は、第1クロックの第2位相において、電源を端子218に、基準電位VSSを端子216にそれぞれ接続して、第2端子対に駆動電流を供給する。なお、基準電位VSSは、一例として、0Vである。
また、切換部230は、例えば、第1クロックの第1位相において、端子216および端子218を検出用の端子とし、当該検出用の端子を後段の第1増幅回路240に接続する。この場合、切換部230は、第1クロックの第2位相において、端子212および端子214を検出用の端子とし、当該検出用の端子を後段の第1増幅回路240に接続する。なお、切換部230は、端子218および端子212を正側の検出用端子としてよい。
第1増幅回路240は、切換部230から供給される磁気センサ素子210の出力信号を増幅する。第1増幅回路240は、差動増幅回路でよい。また、第1増幅回路240は、電圧を電流に変換するトランジスタ差動対でもよい。第1増幅回路240は、例えば、第1クロックの第1位相において、(数1)式に示す第2端子対からの出力電圧Vh1を増幅し、第1クロックの第2位相において、第1端子対からの出力電圧Vh2を増幅する。第1増幅回路240は、増幅した信号を復調部250に供給する。
復調部250は、入力する信号の正負を予め定められたタイミングで反転する。復調部250は、切換部230の切り換えタイミングと同期したタイミングで、信号の正負を反転してよい。即ち、復調部250は、外部から供給される第1クロックに応じて、信号の正負を反転してよい。
復調部250は、例えば、入力信号を2つの信号線を用いた差動信号として第1増幅回路240から受けとり、2つの信号線を用いた差動信号として出力する。この場合、復調部250は、入力信号線の一方を出力信号線の一方に接続し、かつ、入力信号線の他方を出力信号線の他方に接続するか、入力信号線の一方を出力信号線の他方に接続し、かつ、入力信号線の他方を出力信号線の一方に接続するか、を切り換えてよい。
これにより、復調部250の第1位相の出力信号Vo1および第2位相の出力信号Vo2は、次式で示される。なお、次式において、Aは、第1増幅回路240の増幅率を示す。
(数2)
Vo1=+A(2VS+VO)
Vo2=+A(2VS−VO)
復調部250は、入力信号を第1クロックに同期して反転させることで、ホール起電力信号VSを直流成分にし、オフセット電圧VOを変調信号成分とする。復調部250は、(数2)式に示すような出力信号を第2増幅回路260に供給する。
第2増幅回路260は、復調部250から供給される出力信号を増幅する。第2増幅回路260は、差動増幅回路でよい。また、第2増幅回路260は、電流電圧変換回路でもよい。第2増幅回路260は、増幅した信号を第3増幅回路270に供給する。また、第2増幅回路260は、増幅信号を検知部120に供給する。
第3増幅回路270は、第2増幅回路260から供給される出力信号を増幅する。第3増幅回路270は、バッファアンプでよい。また、第3増幅回路270は、差動増幅回路でよい。第3増幅回路270は、アナログ信号を出力してよい。第3増幅回路270は、増幅した信号を増幅部110の第1出力として外部に供給してよい。なお、第2増幅回路260の出力信号が増幅部110の第1出力として出力できる場合、第3増幅回路270は、無くてもよい。
以上の本実施形態に係る増幅部110は、直流成分のホール起電力信号VSと、変調信号成分のオフセット電圧VOと、を有する磁気センサ素子210の磁場検出信号を第1出力として出力する。なお、増幅部110は、フィルタ等を更に有し、オフセット電圧VOを低減させた磁場検出信号を出力してもよい。ここで、増幅部110が、磁気センサ素子210の出力を受け取ってから、第1出力を出力するまでの遅延量を第1遅延量とする。第1遅延量は、一例として、5μsである。
検知部120は、増幅部110から受け取った増幅信号と、閾値とを比較して、異常を検知する。検知部120は、検知結果を第2信号として出力する。ここで、検知部120は、第2信号の遅延時間を変更可能とする。検知部120は、閾値生成部310と、比較部320と、遅延部330とを有する。
閾値生成部310は、増幅部110から検知部120に入力する信号の閾値を生成する。閾値生成部310は、外部からの指示に応じた閾値を生成してよい。閾値生成部310は、磁気センサ素子210の出力の上限値および下限値に対応する閾値を生成してよい。閾値生成部310は、生成した基準値を比較部320に供給する。
比較部320は、磁気センサ素子210の出力または増幅部110の出力を閾値生成部310が生成した閾値と比較する。比較部320は、例えば、増幅部110の出力が、上限を超えたか否か、および、下限を下回ったか否かを、比較結果として出力する。このような比較結果を用いることで、増幅部110の出力が上限を超えた場合、または下限を下回った場合に応じて、磁気センサ素子210の出力異常を検知できる。また、増幅部110の出力が上限および下限の間の範囲にある場合、磁気センサ素子210の出力が正常であることを検知できる。比較部320は、第1クロックとは少なくとも位相が異なる第2クロックに応じて、磁気センサ素子210の出力を閾値と比較してよい。比較部320は、比較結果を遅延部330に供給する。
遅延部330は、比較部320が出力する比較結果を遅延して出力する。遅延部330は、グリッチフィルタ332と、可変遅延回路334とを有する。グリッチフィルタ332は、比較部320が出力する比較結果のグリッチを除去する。グリッチフィルタ332は、過渡的なノイズ等により発生する比較部320の誤判定を低減させる。グリッチフィルタ332は、ローパスフィルタ、サンプルホールド回路、および/またはフリップフロップ等で構成されてよい。また、グリッチフィルタ332は、第2クロックに応じて動作してよく、第2クロックに応じてグリッチ数をカウント(比較部320が出力する比較結果をカウント)してグリッチであるかどうかを判定し、グリッチを除去してよい。
可変遅延回路334は、グリッチフィルタ332を通過した比較結果を遅延して出力する。可変遅延回路334は、第2クロックに応じて、比較結果を遅延させてよい。可変遅延回路334は、外部から設定された遅延量で、比較結果を遅延させて出力する。可変遅延回路334は、当該検知部120の遅延量が第1遅延量と同等または超える範囲程度まで調節可能としてよい。一例として、当該検知部120の入力から可変遅延回路334に至るまでの遅延量が1μsの場合、可変遅延回路334は、0から5μsの範囲で遅延量を可変する。可変遅延回路334は、シフトレジスタ、カウンタ、フリップフロップ、および/または、複数のディレイラインと切換スイッチの組み合わせ等で構成されてよい。遅延部330は、このようにグリッチフィルタ332および可変遅延回路334を構成することにより、不要なグリッチを除去しつつ、遅延の時間を詳細に調整できる。
入出力部150は、当該磁気センサ装置200の外部との信号を授受する。入出力部150は、例えば、当該磁気センサ装置200の内部回路のパラメータ等を設定する信号を受信する。また、入出力部150は、外部からの要求等に応じて、内部回路のパラメータ等の情報を外部に供給してよい。また、入出力部150は、内部回路の動作状態等を外部に供給してもよい。入出力部150は、一例として、外部の制御装置10と接続され、制御装置10によって当該磁気センサ装置200の内部設定および/または動作制御が実行される。
設定部160は、当該磁気センサ装置200の内部回路のパラメータ等を設定する。設定部160は、入出力部150が受信する外部からの指示に応じて、内部回路のパラメータ等を設定してよい。設定部160は、記憶部162を有し、内部回路のパラメータ等を記憶してよい。また、設定部160は、外部からの信号に応じて、内部回路のパラメータ等を記憶してよい。また、設定部160は、記憶部162に記憶されたデータに基づき、内部回路のパラメータ等を記憶してもよい。
設定部160は、外部からの指示に応じて、可変遅延回路334の遅延量を設定する。また、設定部160は、外部からの指示に応じて、閾値生成部310の閾値を設定してよい。また、設定部160は、外部からの指示に応じて、クロック生成部170のクロック周波数を設定してもよい。また、設定部160は、外部からの指示に応じて、グリッチフィルタ332のグリッチであることを判定する数、または除去までの時間を設定してよい。
クロック生成部170は、第1クロックを生成する。また、クロック生成部170は、第1クロックの整数倍の周期を有し、第1クロックのタイミングに対して予め定められた位相差をもつ第2クロック信号を生成する。即ち、第2クロックは、第1クロックの1以上の整数倍の周波数を有する。クロック生成部170は、第1クロックおよび第2クロックの周波数を変更可能に生成してよく、この場合、当該周波数は設定部160により設定されてよい。クロック生成部170は、生成した第1クロックを増幅部110に供給し、生成した第2クロックを検知部120に供給する。
以上の本実施形態における磁気センサ装置200は、スピニングカレント法によって、磁気センサ素子210の磁気検出成分およびオフセット成分を周波数的に分離して第1出力として出力しつつ、磁気検出成分の異常を検出する検出信号を第2出力として出力する。また、磁気センサ装置200は、第2出力の遅延量を外部から入出力部150を介してプログラマブルに調節できる。
ここで、磁気センサ装置200は、第1出力の第1遅延量よりも第2出力の遅延量を小さく設定してよい。これにより、当該磁気センサ装置200に接続する制御装置10等は、第1出力を受信する前に第2出力を受信し、第2出力が異常を検知した信号であることに応じて、CPU20がインバータ回路の出力を直ちに遮断することができる。これにより、モーター、およびインバータ回路等を保護することを容易に実行できる。この場合、制御装置10等は、磁気センサ装置200の第2出力の遅延量を変更できるので、当該制御装置10の内部回路のタイミング調節等の工数を低減させることができ、製造コストを低減させることができる。このような磁気センサ装置200の比較部320について次に説明する。
図3は、本実施形態に係る閾値生成部310および比較部320の構成例を示す。図3において、図2に示された本実施形態に係る磁気センサ装置200の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。
閾値生成部310は、磁気センサ素子210の出力の上限値に対応する上方閾値と、下限値に対応する下方閾値とを生成する。図3は、閾値生成部310が3つの抵抗を用いて2つの閾値を生成する例を示す。閾値生成部310は、電源電圧VDDおよび基準電位VSSの間に直列に接続される3つの抵抗を有する。一例として、抵抗R1は一端が電源電圧VDDに接続され、抵抗R2は一端が基準電位VSSに接続され、抵抗R3は抵抗R1および抵抗R2の間に接続される。抵抗R1および抵抗R3は、固定抵抗でよい。抵抗R2は可変抵抗であり、抵抗値は設定部160によって設定可能でよい。
図3は、上方閾値を抵抗R1および抵抗R3の間の電位とし、下方閾値を抵抗R3および抵抗R2の間の電位とした例を示す。即ち、設定部160が抵抗R3の抵抗値を設定することにより、閾値生成部310は、対応する上方閾値および下方閾値を生成できる。なお、図3に示す閾値生成部310は一例であり、本例に限定されることはない。例えば、抵抗R1、抵抗R2、および抵抗R3のうち、少なくとも2つの抵抗が可変抵抗でよく、この場合、設定部160は少なくとも2つの可変抵抗の抵抗値を設定する。これにより、設定部160は、上方閾値および下方閾値をそれぞれ独立に設定することができる。
比較部320は、第1比較回路322と、第2比較回路324と、論理回路326と、を有する。第1比較回路322は、第2増幅回路260からの出力信号と、上方閾値とを比較する。第1比較回路322は、例えば、当該出力信号が上方閾値よりも大きい場合にハイ電位を出力し、当該出力信号が上方閾値以下の場合にロー電位を出力する。即ち、第1比較回路322は、磁気センサ素子210の出力が設定された上限値を超えたか否かを判定する。
第2比較回路324は、第2増幅回路260からの出力信号と、下方閾値とを比較する。第2比較回路324は、例えば、当該出力信号が下方閾値よりも小さい場合にハイ電位を出力し、当該出力信号が下方閾値以上の場合にロー電位を出力する。即ち、第2比較回路324は、磁気センサ素子210の出力が設定された下限値を超えたか否かを判定する。第1比較回路322および第2比較回路324は、コンパレータでよい。
論理回路326は、第1比較回路322および第2比較回路324の出力の論理和を出力する。即ち、論理回路326は、磁気センサ素子210の出力が上限値を超えたこと、または、下限値を下回ったことに応じて、ハイ電位を出力する。また、論理回路326は、磁気センサ素子210の出力が上限値および下限値の間の範囲内の場合、ロー電位を出力する。以上の閾値生成部310および比較部320の動作について次に説明する。
図4は、本実施形態に係る比較部320の入力信号および出力信号の第1例を示す。図4の横軸は時間を示し、縦軸は信号電圧を示す。なお、図4は、基準電位VSSが0Vであり、上方閾値電圧がVDD/2より大きく、VDD未満であり、下方閾値電圧がVSSより大きく、VDD/2未満である例を示す。比較部320は、入力信号に応じて、ハイ電位またはロー電位の出力信号を出力する。
比較部320は、例えば、入力信号が上方閾値電圧を超えたことに応じてハイ電位を出力し、また、入力信号が下方閾値電圧未満となったことに応じてハイ電位を出力する。また、比較部320は、入力信号が下方閾値電圧以上、上方閾値電圧以下の場合、ロー電位を出力する。以上のように、比較部320は、入力信号と閾値を比較することで、磁気センサ素子210の出力の異常を検知することができる。また、図4に示すような入力信号に、瞬間的に閾値電圧を超える(または下回る)雑音が混入する場合が生じても、グリッチフィルタ332が当該雑音を低下させるので、検知部120は、磁気センサ素子210の出力異常の誤検知を防止することができる。
図5は、本実施形態に係る比較部320の入力信号および出力信号の第2例を示す。図5の横軸は時間を示し、縦軸は信号電圧を示す。図5は、磁気センサ装置200がスピニングカレント法を実行した場合の、比較部320の入力信号および出力信号の一例を示す。即ち、切換部230は、クロック生成部170が生成する第1クロックをスピニングカレントクロックとし、駆動電流を流す端子および磁気センサ素子210の出力をセンスする端子を切り換えてホール起電力信号を変調する。そして、復調部250は、当該第1クロックに応じて、変調されたホール起電力信号を復調する。
磁気センサ素子210に一定の磁場が入力する場合、比較部320の入力信号は、理想的には一定電圧のホール起電力信号となる。しかしながら、切換部230が切り換え動作を実行すると、磁気センサ素子210が有する浮遊容量成分等により、スパイク状の過渡的な雑音が発生することがある。また、復調部250による切り換え動作においてもスパイク状の過渡的な雑音が発生することがある。そこで、比較部320は、第1クロックの立ち上がりおよび立ち下がりタイミングに対して異なるタイミングを有する第2クロックを用いて、比較動作を実行する。
これにより、比較部320は、第1クロックの立ち上がりおよび立ち下がりタイミングで発生するスパイク状の雑音が低減した期間において、入力信号および閾値を比較することができ、より正確な比較動作を実行することができる。また、比較部320は、第1クロックの2倍以上の周波数を有する第2クロックを用いることにより、時間分解能を高くすることができる。
図5は、第1クロックの第1位相の立ち上がりタイミングにおいて、入力信号に正のスパイク雑音が発生し、第2位相の立ち下がりタイミングにおいて、入力信号に負のスパイク雑音が発生した例を示す。そして、比較部320は、第1クロックの2倍の周波数を有し、第1クロックの立ち上がりおよび立ち下がりタイミングに対してΔφの位相差を有する第2クロックに応じて、入力信号と閾値とを比較する例を示す。
そして、比較部320は、第2クロックに応じて入力信号および閾値を比較した結果を、信号出力とする。図5は、第2クロックの立ち下がりタイミングにおいて、入力信号が上方閾値を超えたことに応じて、比較部320が出力信号をハイ電位にした例を示す。また、第2クロックの立ち下がりタイミングにおいて、入力信号が上方閾値以下となったことに応じて、比較部320が出力信号をロー電位にした例を示す。
このように、第1クロックのタイミングでスパイク状の雑音を有する入力信号が入力しても、第1クロックとは位相の異なる第2クロックを用いることで、検知部120は、磁気センサ素子210の出力異常の誤検知を防止することができる。したがって、磁気センサ装置200は、スピニングカレント法を実行して磁気センサ素子210のDC雑音成分を信号成分から周波数的に分離しつつ、正確に磁気センサ素子210の出力異常を検知することができる。そして、磁気センサ装置200は、検知結果である比較部320の比較結果を、プログラマブルに遅延させるので、雑音を分離した磁気センサ素子210の出力と、正確な検知結果の出力タイミングとを、外部からの指示に応じて設定可能に出力することができる。
以上の本実施形態に係る磁気センサ装置200は、比較部320および遅延部330を1組有する例を説明したが、これに限定されることはない。磁気センサ装置200は、比較部320および遅延部330を複数備えてよい。この場合、磁気センサ装置200は、磁気センサ素子210の出力または増幅部110の出力を閾値と比較する複数の比較部320と、複数の比較部320のうち対応する比較部320が出力する比較結果を遅延してそれぞれ出力する複数の遅延部330と、を備える。このような磁気センサ装置200の例を次に説明する。
図6は、本実施形態に係る磁気センサ装置200の第1変形例を示す。第1変形例の磁気センサ装置200において、図2に示された本実施形態に係る磁気センサ装置200の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第1変形例の磁気センサ装置200は、比較部320および遅延部330の組を複数備える。
ここで、複数の遅延部330は、可変遅延回路334をそれぞれ有する。設定部160は、外部からの指示に応じて可変遅延回路334の遅延量のそれぞれを設定する。複数の遅延部330は、複数の比較部320のうち対応する比較部320が出力する比較結果のグリッチをそれぞれ除去する複数のグリッチフィルタ332を更に有してよい。この場合、可変遅延回路334のそれぞれは、複数のグリッチフィルタ332のうち対応するグリッチフィルタ332を通過した比較結果を遅延して出力する。
また、複数の比較部320のそれぞれは、第2クロックに応じて磁気センサ素子210の出力または増幅部110の出力を閾値と比較する。また、複数の遅延部330のそれぞれは、第2クロックに応じて、対応する比較部320が出力する比較結果を遅延させる。即ち、第1変形例の磁気センサ装置200は、検知部120を複数備える。図6は、磁気センサ装置200が第2出力を出力する検知部120と、第3出力を出力する検知部130と、を備える例を示す。
設定部160は、検知部120の閾値生成部310に設定する閾値と、検知部130の閾値生成部310に設定する閾値とを、異なる値に設定可能でよい。例えば、複数の比較部320および遅延部330の組のうち、第1の組の比較部320は、磁気センサ素子210の出力または増幅部110の出力を第1閾値と比較する。また、複数の比較部320および遅延部330の組のうち、第2の組の比較部320は、磁気センサ素子210の出力または増幅部110の出力を第1閾値とは異なる第2閾値と比較する。なお、図6において、検知部120は、比較部320および遅延部330の第1の組の一例であり、また、検知部130は、比較部320および遅延部330の第2の組の一例である。
そして、設定部160は、検知部120の比較部320に第1閾値を設定し、検知部130の比較部320に第2閾値を設定する。ここで、第1閾値は、磁気センサ素子210の予め定められた第1出力範囲を示す第1上方閾値および第1下方閾値を有してよく、第2閾値は、磁気センサ素子210の予め定められた第2出力範囲を示し、第1上方閾値よりも小さい第2上方閾値と、第1下方閾値よりも大きい2下方閾値とを有してよい。
これにより、第1変形例の磁気センサ装置200に接続する制御装置10等は、検知部120の第2出力と検知部130の第3出力とを、異なる用途で用いることができる。一例として、制御装置10は、検知部120の閾値を第1出力の定格出力電圧程度、または第1出力の定格出力範囲程度に設定し、第2出力がハイ電位になったことに応じて、CPU20がインバータ回路の出力を遮断する。例えば、第1出力の定格出力電圧の、高電圧側が4.5V、低電圧側が0.5Vである場合に、検知部120の閾値の、高電圧側を4.4V、低電圧側を0.6Vとしてよい。
また、一例として、制御装置10は、磁気センサ素子210に入力する磁場の大きさを制御するフィードバック回路等を有する場合、検知部130の閾値の範囲を検知部120の閾値の範囲よりも狭く設定してよい。つまり、検知部130の上方閾値電圧は、検知部120の上方閾値電圧よりも小さくする。また、検知部130の下方閾値電圧は、検知部120の下方閾値電圧よりも大きくする。この場合、制御装置10は、第3出力がハイ電位になったことに応じて、磁気センサ素子210の出力が正常な動作範囲となるように当該フィードバック回路を動作させてよい。これにより、制御装置10は、第3出力を用いて、磁気センサ素子210の出力に応じて入力磁場を制御しつつ、第2出力を用いて、磁気センサ素子210が深刻な異常を示す出力信号の範囲になった場合に、動作を停止させることができる。
ここで、設定部160は、検知部120の遅延時間と、検知部130の遅延時間とを、異なる値に設定可能でよい。即ち、第1の組の遅延部330は、第2の組の遅延部330とは異なる遅延量を有してよい。この場合、第1の組の遅延部330は、第2の組の遅延部330よりも小さい遅延量を有してよい。これに代えて、第1の組の遅延部330は、第2の組の遅延部330よりも大きい遅延量を有してもよい。
一例として、制御装置10は、検知部120の遅延部330の遅延時間を検知部130の遅延部330の遅延時間よりも短く設定する。これにより、制御装置10は、第2出力から磁気センサ素子210の出力が深刻な異常を示す範囲になったか否かを第3出力よりも早く受け取ることができ、直ちに動作を停止させることができる。また一例として、制御装置10は、検知部120の遅延時間を検知部130の遅延時間よりも長く設定する。これにより、制御装置10は、磁気センサ素子210の出力が急激に変化し、検知部120と検知部130の比較部320とが同時にハイ電位を出力しても、第2出力による保護制御を開始する前に、第3出力による保護制御を実行する時間を確保できる。つまり、このように、検知部120および検知部130の遅延時間を異なる値に設定することにより、制御装置10の細やかな制御を実現できる。
図7は、本実施形態に係る磁気センサ装置200の第2変形例を示す。第2変形例の磁気センサ装置200において、図2に示された本実施形態に係る磁気センサ装置200の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第2変形例の磁気センサ装置200は、積算部350と、積算通知部360と、を更に備える。図7は、検知部120が、積算部350および積算通知部360を有する例を示す。
積算部350は、比較部320が出力する比較結果または遅延部330が出力する遅延された比較結果を積算する。図7は、積算部350が遅延部330の出力する遅延された比較結果を積算する例を示す。積算部350は、比較部320のハイ電位の比較結果に応じてカウント数をアップさせてよく、ロー電位の比較結果に応じてカウント数をダウンさせてよい。これに代えて、積算部350は、比較部320のハイ電位の比較結果に応じてカウント数をアップさせる第1カウンタと、ロー電位の比較結果に応じてカウント数をアップさせる第2カウンタとを有してもよい。
ここで、設定部160は、外部からの指示に応じて、積算部350の基準範囲を設定してよい。例えば、設定部160は、積算部350のハイ電位およびロー電位の上限カウント値を設定する。
積算通知部360は、積算部350の積算結果が基準範囲外となったことを外部に通知する。例えば、積算通知部360は、指定されたカウント数を超える回数のハイ電位の比較結果を比較部320が出力したことに応じて、外部にハイ電位の通知信号を出力する。また、積算通知部360は、指定されたカウント数を超える回数のロー電位の比較結果を比較部320が出力したことに応じて、外部にロー電位の通知信号を出力する。これにより、第2変形例の磁気センサ装置200は、例えば、磁気センサ素子210の出力が異常を示す状態が継続した場合に、通知信号を外部に供給することができる。
第2変形例の磁気センサ装置200においても、図6で説明したように、比較部320および遅延部330を複数備えてよい。この場合、磁気センサ装置200は、複数の比較部320のうち対応する比較部320が出力する比較結果、または、複数の遅延部330のうち対応する遅延部330が出力する遅延された比較結果を積算する一または複数の積算部350を備える。また、磁気センサ装置200は、一または複数の積算部に対応し、対応する積算部350の積算結果が基準範囲外となったことを外部に通知する一または複数の積算通知部360を備える。即ち、磁気センサ装置200は、複数の検知部120を備え、当該複数の検知部120のうち、少なくとも一の検知部120が、積算部350および積算通知部360を備えてよい。
図8は、本実施形態に係る磁気センサ装置200の第3変形例を示す。第3変形例の磁気センサ装置200において、図2に示された本実施形態に係る磁気センサ装置200の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第3変形例の磁気センサ装置200は、第3増幅回路270に代えて、AD変換部272を備える。また、磁気センサ装置200は、積分部352と、積分通知部362と、を更に備える。図8は、増幅部110がAD変換部272を有し、検知部120が積分部352および積分通知部362を有する例を示す。
AD変換部272は、第2増幅回路260から供給される出力信号をデジタル信号に変換する。即ち、第3変形例の増幅部110は、磁気センサ素子210の出力を増幅してデジタル信号に変換し、第1出力として出力する。なお、AD変換部272は、変換したデジタル信号を、入出力部150から出力してもよい。
積分部352は、比較部320が出力する比較結果または遅延部330が出力する遅延された比較結果が予め定められた論理値であることに応じて、増幅された磁気センサ素子210の出力を積分する。図8は、積分部352が遅延部330の出力する遅延された比較結果を積分する例を示す。積分部352は、比較部320の比較結果がハイ電位であることに応じて、AD変換部272からの出力を積分する。積分部352は、AD変換部272の出力信号を積分することで、磁気センサ素子210に入射する磁場を発生させるモーター等に流れる電流量の総量、および当該モーター等に入力される電力量等を算出することができる。また、積分部352は、AD変換部272の出力信号を二乗に積分してもよく、この場合もモーターに入力される電力量等を算出することができる。
ここで、設定部160は、外部からの指示に応じて、積分部352の基準範囲を設定してよい。例えば、設定部160は、積分部352の電流量の総量、および/または出力電力の上限値等を設定する。
積分通知部362は、積分部352の積分結果が基準範囲外となったことを外部に通知する。例えば、積分通知部362は、AD変換部272が指定された電流量の総量を超えて出力したことに応じて、外部にハイ電位の通知信号を出力する。また、積算通知部360は、AD変換部272が指定された電流量の総量未満の第1出力を出力したことに応じて、外部にロー電位の通知信号を出力する。これにより、第3変形例の磁気センサ装置200は、例えば、磁気センサ素子210の出力が異常を示す状態が継続した場合に、通知信号を外部に供給することができる。
なお、AD変換部272が第1出力を出力するタイミングと、比較部320または遅延部330が比較結果を出力するタイミングとは、異なる場合が多い。例えば、AD変換部272が第1出力を出力する更新レートが12.5μsであり、遅延部330の更新レートが2μsの場合、10.5μsの間に積算されるべきAD変換部272の出力が積分量に不足することになる。
そこで、積分部352は、積分を開始する場合、比較結果がハイ電位になってから最初にAD変換部272の出力が更新された時間t0における出力値VAD(t0)に、AD変換部272および遅延部330の更新レートの差分を乗じた値を、積分値に加算してよい。このような積分部352について、次に説明する。
図9は、本実施形態に係る積分部352の構成例を示す。積分部352は、カウント部410と、乗算部420と、演算部430と、比較部440とを含む。カウント部410は、遅延部330から供給される遅延された比較部320の比較結果を受け取る。カウント部410は、一例として、比較部320の比較結果がハイ電位になってからカウントを開始し、当該比較結果がハイ電位になってからの経過時間を計測する。
乗算部420は、比較結果がハイ電位になってからAD変換部272の出力が更新された時間t0以降の当該AD変換部272の出力VAD(t)を取得する(t=t0,t1,t2,...)。乗算部420は、AD変換部272の出力が更新された時間t0における出力値VAD(t0)に、比較結果がハイ電位になってからAD変換部272の出力が更新されるまでにカウント部410がカウントした時間tcntを乗じる。乗算部420の乗算結果tcnt・VAD(t0)は、AD変換部272が第1出力を更新する間に積算されるべきAD変換部272の出力に略一致する。
演算部430は、時刻t0以降のAD変換部272の出力VAD(tk)にAD変換部272のサンプリング間隔Δtを乗じた値を積算し、当該積算結果に、乗算部420の乗算結果tcnt・VAD(t0)を加算する。演算部430の演算結果Sは、次式で示される。積分部352は、演算結果Sを積分結果とする。
(数3)
S=tcnt・VAD(t0)+ΣVAD(tk)・Δt
比較部440は、演算結果Sと、設定部160から受け取る上限値とを比較する。これにより、比較部440は、積算されるべきAD変換部272の出力を加算した演算結果Sと、上限値とを比較することができ、より正確な比較を実行することができる。
第3変形例の磁気センサ装置200においても、図6で説明したように、比較部320および遅延部330を複数備えてよい。この場合、磁気センサ装置200は、複数の比較部320のうち対応する比較部320が出力する比較結果、または、複数の遅延部330のうち対応する遅延部330が出力する遅延された比較結果が、予め定められた論理値であることに応じて、増幅された磁気センサ素子210の出力を積分する一または複数の積分部352を備える。また、磁気センサ装置200は、一または複数の積分部352に対応し、対応する積分部352の積分結果が基準範囲外となったことを外部に通知する一または複数の積分通知部362を備える。即ち、磁気センサ装置200は、複数の検知部120を備え、当該複数の検知部120のうち、少なくとも一の検知部120が、積分部352および積分通知部362を備えてよい。
図10は、本実施形態に係る磁気センサ装置200の第4変形例を示す。第4変形例の磁気センサ装置200において、図2および図8に示された本実施形態に係る磁気センサ装置200の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第4変形例の磁気センサ装置200は、自己の故障を判定すべく、第1故障判定部370を備える。また、磁気センサ装置200は、第3増幅回路270に代えて、AD変換部272を備える。図10は、増幅部110がAD変換部272を有し、検知部120が第1故障判定部370を有する例を示す。
第1故障判定部370は、デジタル信号が、比較部320が出力する比較結果または遅延部330が出力する遅延された比較結果の論理値に対応する値でないことに応じて、故障を判定する。図10は、第1故障判定部370が遅延部330の出力する遅延された比較結果を取得し、AD変換部272からのデジタル信号と対応するか否かを判定する例を示す。
ここで、設定部160は、閾値生成部310に設定する閾値に対応する閾値のデジタル値を、第1故障判定部370に供給してよい。第1故障判定部370は、当該閾値のデジタル値と、AD変換部272の出力とを比較する。そして、第1故障判定部370は、自己の当該比較結果と、比較部320の比較結果とが対応しなかった場合、磁気センサ装置200が故障したと判定する。第1故障判定部370は、故障を判定した場合、判定結果を外部に通知してよい。
なお、AD変換部272の出力タイミングと、比較部320または遅延部330の比較結果の出力タイミングが異なる場合、第1故障判定部370は、タイミング差に対応する時間以上の時間が経過するまで、故障の判定を継続してよい。第1故障判定部370は、継続した時間の間に、自己の当該比較結果と、比較部320の比較結果とが対応することがなかった場合、磁気センサ装置200が故障したと判定してよい。以上のように、第4変形例の磁気センサ装置200は、装置内部の故障を判定することができる。
第4変形例の磁気センサ装置200においても、図6で説明したように、比較部320および遅延部330を複数備えてよい。この場合、磁気センサ装置200は、増幅部110が出力するデジタル信号が、複数の比較部320のうち対応する比較部320が出力する比較結果、または、複数の遅延部330のうち対応する遅延部330が出力する遅延された比較結果の論理値に対応する値でないことに応じて、故障を判定する一または複数の第1故障判定部370を備える。即ち、磁気センサ装置200は、複数の検知部120を備え、当該複数の検知部120のうち、少なくとも一の検知部120が、第1故障判定部370を備えてよい。
図11は、本実施形態に係る磁気センサ装置200の第5変形例を示す。第5変形例の磁気センサ装置200において、図2および図6に示された本実施形態に係る磁気センサ装置200の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第5変形例の磁気センサ装置200は、自己の故障を判定すべく、複数の検知部と、第2故障判定部380と、を備える。また、磁気センサ装置200は、第3増幅回路270に代えて、AD変換部272を備える。図11は、磁気センサ装置200が第2出力を出力する検知部120と、第3出力を出力する検知部130と、を備え、増幅部110がAD変換部272を有する例を示す。
第2故障判定部380は、比較部320および遅延部330の第1の組における比較部320が出力する比較結果または遅延部330が出力する遅延された比較結果と、比較部320および遅延部330の第2の組における比較部320が出力する比較結果または遅延部330が出力する遅延された比較結果とを比較した結果に応じて、故障を判定する。図11は、第2故障判定部380が検知部120の遅延部330の出力する遅延された比較結果と、検知部130の遅延部330の出力する遅延された比較結果とを、比較する例を示す。
ここで、一例として、検知部120の上方閾値電圧は、検知部130の上方閾値電圧よりも小さいとする。また、検知部120の下方閾値電圧は、検知部130の下方閾値電圧よりも大きいとする。また、検知部120の遅延量は、検知部130の遅延量未満とする。この場合、検知部120の第2出力よりも、検知部130の第3出力の方が時間的に先にハイ電位となることはあり得ない。また、検知部120の第2出力が、検知部130の第3出力よりも時間的に先にロー電位となることはあり得ない。
したがって、第2故障判定部380は、検知部120の第2出力よりも、検知部130の第3出力の方が時間的に先にハイ電位となったこと、および/または、検知部120の第2出力が、検知部130の第3出力よりも時間的に先にロー電位となったことに応じて、磁気センサ装置200が故障したと判定する。第2故障判定部380は、故障を判定した場合、判定結果を外部に通知してよい。
また、設定部160は、検知部120および検知部130の閾値生成部310にそれぞれ設定する閾値に対応する閾値のデジタル値を、第2故障判定部380に供給してよい。第2故障判定部380は、当該閾値のデジタル値と、AD変換部272の出力とを比較する。そして、第2故障判定部380は、自己の当該比較結果と、検知部120および検知部130の比較部320の比較結果とが対応しなかった場合、磁気センサ装置200が故障したと判定する。第2故障判定部380は、故障を判定した場合、判定結果を外部に通知してよい。
なお、AD変換部272の出力タイミングと、検知部120および検知部130の比較部320または遅延部330の比較結果の出力タイミングが異なる場合、図10で説明したように、第2故障判定部380は、タイミング差に対応する時間以上の時間が経過するまで、故障の判定を継続してよい。以上のように、第5変形例の磁気センサ装置200は、装置内部の故障を判定することができる。
以上の本実施形態に係る磁気センサ装置200は、比較部320が出力する比較結果を遅延部330が遅延して出力する例を説明した。これに加えて、磁気センサ装置200は、比較部320に入力する信号を遅延させてもよい。このような磁気センサ装置200の例を次に説明する。
図12は、本実施形態に係る磁気センサ装置200の第6変形例を示す。第6変形例の磁気センサ装置200において、図6に示された本実施形態に係る磁気センサ装置200の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第6変形例の磁気センサ装置200は、遅延回路510を更に備える例を示す。
遅延回路510は、磁気センサ素子210の出力を遅延させる。遅延回路510は、遅延量が固定の遅延回路でよく、これに代えて、遅延量が可変の遅延回路でもよい。遅延回路510は、バッファアンプおよび/またはディレイライン等を有してよい。
また、遅延回路510は、雑音を低減するフィルタを有してよい。この場合、フィルタは、ローパスフィルタを形成して、リップル等の除去に用いてもよい。また、遅延回路510は、アンチエイリアスフィルタ、バンドパスフィルタ、および/またはノッチフィルタ等を有してもよい。なお、遅延回路510は、抵抗値が固定の抵抗および/または抵抗値を変更できる可変抵抗を有してよい。また、遅延回路510は、容量が固定のキャパシタおよび/または容量を変更できる可変キャパシタを有してよい。
図12において、遅延回路510は、増幅部110に設けられる例を示す。また、図12は、遅延回路510が第2増幅回路260および第3増幅回路270の間に設けられる例を示す。そして、複数の比較部320および遅延部330の組のうち、第1の組の比較部320は、遅延回路510の入力と、第1閾値とを比較する。また、複数の比較部320および遅延部330の組のうち、第2の組の比較部320は、遅延回路510の出力と第2閾値とを比較する。
即ち、図12は、検知部120の比較部320が第2増幅回路260の出力と第1閾値とを比較し、検知部130の比較部320が遅延回路510の出力と第2閾値とを比較する例を示す。これにより、検知部130は、検知部120が増幅部110から増幅信号を受け取る時刻よりも、遅延回路510が有する遅延時間遅れて当該増幅信号を増幅部110から受け取ることになる。
これにより、第6変形例の磁気センサ装置200は、検知部120および検知部130における閾値との比較動作のタイミングを調節することができる。また、磁気センサ装置200は、遅延回路510にフィルタ等を設けることにより、信号を遅延させると共にノイズを低減させることができる。したがって、磁気センサ装置200は、高速に処理すべき制御に対して第2増幅回路260の出力を用いるので、比較部320の比較動作を高速に実行させることができる。また、磁気センサ装置200は、遅延させて処理する制御に対して遅延回路510を通して低ノイズ化させた信号を用いるので、比較部320の比較動作を精度よく実行させることができる。
例えば、磁気センサ装置200は、計測対象となる電流の磁場に応じて、過電流等の深刻な異常を示す出力信号の範囲を判定する動作を検知部120の比較部320に高速に実行させる。これにより、磁気センサ装置200は、深刻な異常の検出をより高速に動作させて、破壊、劣化等を防止できる。また、磁気センサ装置200は、磁気センサ素子210の出力を正常な動作範囲となるようにフィードバック制御する場合、遅延回路510を通して低ノイズ化させた信号を用い、より精度の高い比較動作を用いることができる。
また、第6変形例の磁気センサ装置200は、検知部120が出力する第2出力と検知部130が出力する第3出力との出力タイミングを、遅延回路510が有する遅延時間を用いて調節することができる。したがって、第6変形例の磁気センサ装置200は、検知部120の遅延部330および検知部130の遅延部330が設定できる遅延時間の差よりも大きい時間範囲で、第2出力および第3出力の出力タイミングを調節することができる。また、第6変形例の磁気センサ装置200は、増幅部110に遅延回路510を設けるので、ノイズを低減させた第1出力を増幅部110から出力することができる。
図13は、本実施形態に係る磁気センサ装置200の第7変形例を示す。第7変形例の磁気センサ装置200において、図12に示された本実施形態に係る磁気センサ装置200の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第7変形例の磁気センサ装置200は、遅延回路510が検知部130に設けられる例を示す。
図13は、遅延回路510が第2増幅回路260および検知部130の比較部320の間に設けられる例を示す。この場合においても、複数の比較部320および遅延部330の組のうち、第1の組の比較部320は、遅延回路510の入力と、第1閾値とを比較し、第2の組の比較部320は、遅延回路510の出力と第2閾値とを比較することになる。
したがって、第7変形例の磁気センサ装置200は、第6変形例の磁気センサ装置200と同様に、検知部120および検知部130における閾値との比較動作のタイミングを調節することができる。また、第7変形例の磁気センサ装置200は、検知部130に遅延回路510を設けるので、増幅部110からの第1出力に遅延を生じさせずに出力することができる。また、磁気センサ装置200は、遅延回路510にフィルタ等を含めることで、第2の組の比較部320の比較動作を精度よく実行させることができる。
図14は、本実施形態に係る磁気センサ装置200の第8変形例を示す。第8変形例の磁気センサ装置200において、図11および図12に示された本実施形態に係る磁気センサ装置200の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第8変形例の磁気センサ装置200は、遅延回路510および第2故障判定部380を備える例を示す。
遅延回路510は、図12で説明したように、検知部120および検知部130における閾値との比較動作のタイミングを調節する。遅延回路510は、図14に示す例のように、増幅部110に設けられてよく、これに代えて、検知部130に設けられてもよい。検知部130に遅延回路510を設ける場合は、比較部320の前に遅延回路510を設けてもよい。
第2故障判定部380は、図11で説明したように、検知部120の第2出力および検知部130の第3出力を比較した結果に応じて、故障を判定する。第2故障判定部380は、第2出力および第3出力のハイ電位またはロー電位が出力されるタイミングを検出することで、磁気センサ装置200の故障を簡便に判定することができる。
図15は、本実施形態に係る磁気センサ装置200の第9変形例を示す。第9変形例の磁気センサ装置200において、図11および図12に示された本実施形態に係る磁気センサ装置200の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第9変形例の磁気センサ装置200は、遅延回路510および第2故障判定部380を備える例を示す。
また、第9変形例の磁気センサ装置200は、第3増幅回路270に代えて、AD変換部272を備える。AD変換部272は、遅延回路510の出力をデジタル信号に変換して出力する。
遅延回路510は、図12で説明したように、検知部120および検知部130における閾値との比較動作のタイミングを調節する。遅延回路510は、図14に示す例のように、増幅部110に設けられてよく、これに代えて、検知部130に設けられてもよい。検知部130に遅延回路510を設ける場合は、比較部320の前に遅延回路510を設けてもよい。
第2故障判定部380は、図11で説明したように、検知部120の第2出力および検知部130の第3出力を比較した結果に応じて、故障を判定する。第2故障判定部380は、第2出力および第3出力のハイ電位またはロー電位が出力されるタイミングを検出することで、磁気センサ装置200の故障を簡便に判定することができる。
また、設定部160は、検知部120および検知部130の閾値生成部310にそれぞれ設定する第1閾値および第2閾値にそれぞれ対応するデジタル値を、第2故障判定部380に供給してよい。第2故障判定部380は、当該閾値のデジタル値と、AD変換部272の出力とを比較する。そして、第2故障判定部380は、自己の当該比較結果と、検知部120および検知部130の比較部320の比較結果とが対応しなかった場合、磁気センサ装置200が故障したと判定する。第2故障判定部380は、故障を判定した場合、判定結果を外部に通知してよい。
なお、AD変換部272の出力タイミングと、検知部120および検知部130の比較部320または遅延部330の比較結果の出力タイミングが異なる場合、図10で説明したように、第2故障判定部380は、タイミング差に対応する時間以上の時間が経過するまで、故障の判定を継続してよい。以上のように、第9変形例の磁気センサ装置200は、装置内部の故障を判定することができる。
以上の本実施形態に係る磁気センサ装置200において、比較部320は、増幅部110の出力と閾値とを比較する例を説明した。ここで、比較部320は、磁気センサ素子210の出力異常を検知できればよく、増幅部110内部の各部のうちいずれかの出力と閾値とを比較してよい。また、比較部320は、磁気センサ素子210の出力と閾値とを比較してもよい。
図16は、本実施形態に係る磁気センサ装置200を実装したパッケージ50と、当該パッケージ50を備える電流センサ装置300の構成例を示す。本実施形態の電流センサ装置300に接続された制御装置10は、図1に示された本実施形態に係るセンサ装置100に接続された制御装置10の動作と略同一なので同一の符号を付け、説明を省略する。
パッケージ50は、磁気センサ装置200が内部に実装される。パッケージ50は、増幅部の出力信号を出力する第1出力端子52および遅延部330の出力信号を出力する第2出力端子54を有する。また、パッケージ50は、複数の検知部120を備える磁気センサ装置200を実装する場合、複数の検知部120に対応して複数の第2出力端子54を有してよい。即ち、パッケージ50は、一または複数の第2出力端子54を有する。当該一または複数の第2出力端子54は、複数の遅延部330のうち対応する遅延部330の出力信号を出力する。また、パッケージ50は、入出力部150に対応する入出力端子56を有してよい。また、パッケージ50は、電源電圧VDDに接続される電源端子と、基準電位VSSに接続される基準電位端子とを更に有してよい。
これにより、制御装置10は、パッケージ化された磁気センサ装置200の設定を指示する信号を供給し、当該指示に応じて磁気センサ装置200が出力する第1出力および第2出力等を受け取ることができる。また、磁気センサ装置200は、パッケージ50に実装されることにより、小型および軽量化した磁気センサとして、外部の装置等に容易に搭載することができる。
また、パッケージ50は、計測対象の電流を流す電流路に接続されてよい。図16は、電流路40および電流路42の間にパッケージ50が接続される例を示す。即ち、磁気センサ装置200は、電流路40および電流路42に対応して配置され、計測対象の電流に応じて生じる磁場を検知する。これによって、電流路40、電流路42、および磁気センサ装置200は、電流センサ装置300を構成することができる。
したがって、制御装置10がモーター等を駆動する場合、駆動電流をモーターに供給する電流路に当該電流センサ装置300を設けることにより、電流センサ装置300は、駆動電流の変動を検出することができる。また、電流センサ装置300は、駆動電流が過大または過小になったことを制御装置10に通知することができる。制御装置10は、駆動電流の変動、過大電流、および過小電流の検出結果に基づき、モーター駆動を安定に制御することができる。
なお、以上の実施の形態の説明において、グリッチフィルタ332と可変遅延回路334を分けて説明したが、グリッチフィルタ332の機能を可変遅延回路334が備えていてもよい。この場合も、外部からの指示に応じて、可変遅延回路334が除去するグリッチの除去までの判定数、または除去までの時間を設定してよい。
また、以上の実施の形態の説明において、比較部320、グリッチフィルタ332と可変遅延回路334は第2クロックに応じて動作することを説明したが、これに代えて、グリッチフィルタ332および可変遅延回路334へ、第2クロックと異なる第3クロックを供給して動作させてもよい。第3クロックは、第2クロックと位相が異なるクロックでよい。これに代えて、またはこれに加えて、第3クロックは、第2クロックの2以上の整数倍の周波数を有してよい。これにより遅延部330の遅延をより詳細に調整できる。
例えば、第2クロックが1MHzであり、第3クロックが10MHzの場合、比較部の判定は1μs間隔で行われ、遅延部330による遅延は100nsの分解能で調整できる。また、比較部320は、第2クロックと関係なく常時動作し、遅延部330が第2クロックで動作する形態でもよい。この場合、比較部320は、比較動作を常に実行することになる。この場合、比較部320は、スパイク状の雑音で判定結果を出力するが、雑音時間分をグリッチフィルタ332が除去することにより、スパイク状の雑音を低減させることができる。また、この場合、第2クロックは第1クロックと位相が異なっていなくてもよい。
また、以上の実施の形態の第6から第9変形例(図12、図13、図14、図15)において、遅延回路510は、増幅部110、または、検知部130に設けられる例を説明したが、それらに限らず、検知部120と検知部130の比較部320の前に遅延回路510をそれぞれ設けてもよい。これにより、磁気センサ装置200は、遅延回路510にフィルタ等を含めることで、第1および第2の組の比較部320の比較動作を精度よく実行させることができる。
また、検知部120と検知部130の比較部320の前に遅延回路510をそれぞれ設ける場合には、遅延部330を設けなくてもよい。この場合においても、例えば遅延回路の遅延量をそれぞれ異なる値とすることにより、制御装置10の細やかな制御を実現できる。
また、以上の実施の形態の第2から第5、第8、および第9変形例(図7、図8、図10、図11、図14、図15)において、磁気センサ装置200は、通知信号を入出力部150から外部に出力してもよい。また、磁気センサ装置200は、通知信号の出力値を第1出力の定格出力範囲外で外部に供給してもよい。例えば、第2変形例において、定格出力電圧が4.5V、0.5Vの場合に、4.9V、0.1V等で外部に供給してよい。また、第3から第5、および第9変形例において、定格出力範囲のデジタル値以外のデジタル値を外部に供給してよい。これにより、磁気センサ装置200は、外部との通信において、通知信号を他の信号に重畳させることができ、信号線を増やさずに通知信号を送信することができる。
また、以上の実施の形態の第2から第5、第8、および第9変形例(図7、図8、図10、図11、図14、および図15)で説明したように、磁気センサ素子210の出力の異常状態の診断、装置の故障診断は、車載等の安全要求の厳しい用途に有用である。特にISO26262のような機能安全規格に準拠するシステムの構築に有用であり、実施の形態の説明のとおり、車載等の用途に適した磁気センサ装置200を提供することができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。本願によれば、以下の構成もまた開示される。
(項目1)
磁気センサ素子と、
前記磁気センサ素子の出力を増幅して出力する増幅部と、
前記磁気センサ素子の出力または前記増幅部の出力を閾値と比較する比較部と、
前記比較部が出力する比較結果を遅延して出力する遅延部と、
を備える磁気センサ装置。
(項目2)
前記遅延部は、可変遅延回路を有し、
外部からの指示に応じて前記可変遅延回路の遅延量を設定する設定部を更に備える、
項目1に記載の磁気センサ装置。
(項目3)
前記遅延部は、前記比較部が出力する前記比較結果のグリッチを除去するグリッチフィルタを更に有し、
前記可変遅延回路は、前記グリッチフィルタを通過した前記比較結果を遅延して出力する、
項目2に記載の磁気センサ装置。
(項目4)
前記磁気センサ素子は、第1端子対および第2端子対を有するホール素子であり、
前記増幅部は、前記第1端子対および前記第2端子対の間で駆動電流を流す端子対および前記磁気センサ素子の出力をセンスする端子対を第1クロックに応じて切り換える切換部を有する、
項目1から3のいずれか一項に記載の磁気センサ装置。
(項目5)
前記第1クロックの整数倍の周期を有し、前記第1クロックのタイミングに対して予め定められた位相差をもつ第2クロック信号を生成するクロック生成部を更に備える、
項目4に記載の磁気センサ装置。
(項目6)
前記比較部は、前記第2クロックに応じて前記磁気センサ素子の出力または前記増幅部の出力を前記閾値と比較する項目5に記載の磁気センサ装置。
(項目7)
前記遅延部は、前記第2クロックに応じて前記比較結果を遅延させる項目5または6に記載の磁気センサ装置。
(項目8)
前記比較部が出力する比較結果または前記遅延部が出力する遅延された比較結果を積算する積算部と、
前記積算部の積算結果が基準範囲外となったことを外部に通知する積算通知部と、
を更に備える項目1から7のいずれか一項に記載の磁気センサ装置。
(項目9)
前記比較部が出力する比較結果または前記遅延部が出力する遅延された比較結果が予め定められた論理値であることに応じて、増幅された前記磁気センサ素子の出力を積分する積分部と、
前記積分部の積分結果が基準範囲外となったことを外部に通知する積分通知部と、
を更に備える項目1から7のいずれか一項に記載の磁気センサ装置。
(項目10)
前記増幅部は、前記磁気センサ素子の出力を増幅してデジタル信号に変換して出力し、
前記デジタル信号が、前記比較部が出力する比較結果または前記遅延部が出力する遅延された比較結果の論理値に対応する値でないことに応じて故障を判定する第1故障判定部を更に備える、
項目1から9のいずれか一項に記載の磁気センサ装置。
(項目11)
前記比較部および前記遅延部の組を複数備える項目1から10のいずれか一項に記載の磁気センサ装置。
(項目12)
複数の前記比較部および前記遅延部の組のうち、第1の組の前記比較部は、前記磁気センサ素子の出力を第1閾値と比較し、
複数の前記比較部および前記遅延部の組のうち、第2の組の前記比較部は、前記磁気センサ素子の出力を前記第1閾値とは異なる第2閾値と比較する、
項目11に記載の磁気センサ装置。
(項目13)
前記第1閾値は、前記磁気センサ素子の予め定められた第1出力範囲を示す第1上方閾値および第1下方閾値を有し、
前記第2閾値は、前記磁気センサ素子の予め定められた第2出力範囲を示し、前記第1上方閾値よりも小さい第2上方閾値と、前記第1下方閾値よりも大きい2下方閾値とを有する、
項目12に記載の磁気センサ装置。
(項目14)
前記第1の組の前記遅延部は、前記第2の組の前記遅延部とは異なる遅延量を有する項目12または13に記載の磁気センサ装置。
(項目15)
前記第1の組の前記遅延部は、前記第2の組の前記遅延部よりも小さい遅延量を有する項目14に記載の磁気センサ装置。
(項目16)
前記磁気センサ素子の出力を遅延させる遅延回路を更に備え、
前記第2の組の前記比較部は、前記遅延回路の出力と前記第2閾値とを比較する、
項目12から15のいずれか一項に記載の磁気センサ装置。
(項目17)
前記遅延回路は、雑音を低減させるフィルタを有する項目16に記載の磁気センサ装置。
(項目18)
前記比較部および前記遅延部の前記第1の組における前記比較部が出力する比較結果または前記遅延部が出力する遅延された比較結果と、前記比較部および前記遅延部の前記第2の組における前記比較部が出力する比較結果または前記遅延部が出力する遅延された比較結果とを比較した結果に応じて故障を判定する第2故障判定部を更に備える、
項目12から17のいずれか一項に記載の磁気センサ装置。
(項目19)
当該磁気センサ装置は、前記増幅部の出力信号を出力する第1出力端子および前記遅延部の出力信号を出力する第2出力端子を有するパッケージに実装される項目1から18のいずれか一項に記載の磁気センサ装置。
(項目20)
磁気センサ素子と、
前記磁気センサ素子の出力を増幅して出力する増幅部と、
前記磁気センサ素子の出力を閾値と比較する比較部と、
前記比較部が出力する比較結果が予め定められた論理値であることに応じて、増幅された前記磁気センサ素子の出力を積分する積分部と、
前記積分部の積分結果が基準範囲外となったことを外部に通知する積分通知部と、
を備える磁気センサ装置。
(項目21)
計測対象の電流を流す電流路と、
前記電流路に対応して配置され、計測対象の電流に応じて生じる磁場を検知する項目1から20のいずれか一項に記載の磁気センサ装置と、
を備える電流センサ装置。