JP6590396B2 - セルロース多孔質糸状成形体の製造方法 - Google Patents

セルロース多孔質糸状成形体の製造方法 Download PDF

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本発明はセルロース多孔質糸状成形体の製造方法、セルロース多孔質糸状成形体、並びに、セルロース多孔質中空糸膜に関する。
従来、極めて多くの多孔質膜が開発されている。多孔質膜を構成する原料は様々な種類の合成高分子や天然高分子が使用されており、多孔質膜の製法も多くの方法が開発されている。そして多孔質膜には多孔質中空糸等の多孔質糸状成形体が使用されている。
多孔質糸状成形体並びに多孔質膜を製造する方法として従来の紡糸技術を利用する方法があるが、その方法にも様々な種類の方法が存在する。
例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンなどを原料とする熔融紡糸、アセテート、アクリル、ビニロンなどを原料とする乾式紡糸、レーヨン、アクリル、ビニロンなどを原料とする湿式紡糸があり、また、ノズルから押し出された原料を気体中に走行させた後凝固浴液に導き凝固させる乾湿法による紡糸技術に関しても多くの原料を用いて使用されている。
一方、多孔質糸状成形体並びに多孔質膜を構成する原料は上述した如くに多数の原料が存在するが、このうち、セルロースや酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、フタル酸セルロース、コハク酸セルロース等のセルロースエステル、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロースエーテル、酢酸メチルセルロース等のセルロース誘導体を材料として使用した多孔質糸状成形体並びに多孔質膜が開発されている。
例えば、引用文献1には、イオン性液体中に溶解させたセルロース乃至セルロース誘導体の多孔質支持体にコーティングした多孔質膜が開示されている。
この多孔質膜は限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜、正浸透膜等の水処理用の多孔質膜として利用される。
また、引用文献2には、紡糸技術により、第三級アミンオキシドに溶解させたセルロース溶液を、水及び水を主成分とする溶液からなる凝固浴を用いて製造される再生セルロース系中空糸膜の製造方法が開示されている。
この中空糸膜は血液適合性を有する人工腎臓等として利用される。
特表2010−527772号公報 特開2001−029759号公報
本発明は極めて優れた機械的強度を有し、耐久性、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性に優れたセルロース多孔質糸状成形体の製造方法、当該製造方法により得られるセルロース多孔質糸状成形体、並びに、セルロース多孔質糸状成形体からなるセルロース多孔質中空糸膜を提供することを目的とする。
本発明者は上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、先ず、多孔質膜を構成可能な多数の原料の中からセルロースを選択し、さらに、多数の液体の中からイオン性液体を選択してセルロースを溶解させた。そして、多孔質膜を製造する多数の方法から、特に紡糸技術に着目し、さらに種々の紡糸技術の中から乾湿法を選択した。さらに、乾湿法の凝固浴として利用可能な多数の液体の中から、イオン性液体に混和可能であって沸点が100℃以下のアルコールを選択し、当該特定の凝固浴を用いて乾湿法によりゲル化状態を経て糸状に成形し、次に、ゲル状セルロースからなる糸状成形体を延伸すると、驚くべきことに、極めて優れた機械的強度を有し、耐久性、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性に優れたセルロース多孔質糸状成形体が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、イオン性液体にセルロースを溶解させた溶液からセルロースを再生することによってセルロース多孔質糸状成形体を製造する方法において、
(1)前記イオン性液体に混和可能であって沸点が100℃以下のアルコールからなる凝固浴を用いて乾湿法により、ノズルから吐出されたイオン性液体がノズルの周囲に設置された蒸気拡散防止カバーの内側で凝固浴の蒸気と接触することによって糸状のゲル化状態を経て糸状に成形する工程Aと、当該工程Aの後に、(2)ゲル状セルロースからなる糸状成形体を延伸する工程Bを有することを特徴とする、セルロース多孔質糸状成形体の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記イオン性液体にセルロースを溶解させた溶液中のセルロースの含有量が3〜15重量%であることを特徴とする上記のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、前記イオン性液体に混和可能であって沸点が100℃以下のアルコールがメタノールであることを特徴とする上記のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記イオン性液体に混和可能であって沸点が100℃以下のアルコールからなる凝固浴の温度が0〜25℃であることを特徴とする上記のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、前記ゲル状セルロースのゲル強度が1MPa以上であることを特徴とする上記のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記ゲル状セルロースのアルコール含有率が90重量%以上であることを特徴とする上記のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、前記セルロース多孔質糸状成形体の外径が1〜100μmであることを特徴とする上記のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記セルロース多孔質糸状成形体の孔径が0.5nm〜1μmであることを特徴とする上記のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、前記再生したセルロースからなる糸状成形体を延伸する延伸倍率を調整することによって、異なる孔径若しくは外径を有する糸状成形体を得ることを特徴とする上記のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記蒸気拡散防止カバーは、蒸気拡散防止カバーを貫通した蒸気導入管を有するものであることを特徴とする上記のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、前記セルロース多孔質糸状成形体がセルロース多孔質中空糸であことを特徴とする上記の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記セルロース多孔質中空糸がセルロース多孔質中空糸膜であることを特徴とする上記の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記セルロース多孔質中空糸膜の膜厚が1〜100μmであることを特徴とする上記製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、前記セルロース多孔質中空糸膜の孔径が0.5nm〜1μmであることを特徴とする上記製造方法を提供するものである。
本発明の製造方法によれば、極めて優れた機械的強度を有し、耐久性、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性に優れたセルロース多孔質糸状成形体を製造することが可能となる。
また、本発明の製造方法により得られるセルロース多孔質糸状成形体は、例えば、水処理用途の多孔質膜、医療用途の多孔質膜を初めとする様々な用途に使用することが可能となる。
図1は、本発明において乾湿法によりゲル化状態を経て糸状に成形する工程を行うための一実施態様を示した断面構造の模式図である。 図2は、本発明においてゲル化状態を経て糸状に成形する工程を行うための別の一実施態様を示した断面構造の模式図である。 図3は、本発明においてゲル化状態を経て糸状に成形する工程を行うための別の一実施態様を示した断面構造の模式図である。 図4は、実施例1におけるゲル状セルロースからなる糸状成形体の走査型電子顕微鏡写真である。 図5は、実施例1におけるゲル状セルロースからなる糸状成形体の横断面の走査型電子顕微鏡写真である。 図6は、実施例2におけるゲル状セルロースからなる中空糸状成形体の写真である。 図7は、実施例2におけるゲル状セルロースからなる中空糸状成形体の横断面の光学顕微鏡写真である。
以下に本発明を詳述する。
本発明に用いるセルロースは限定されない。種々の方法で製造される漂白木材パルプ、非漂白木材パルプを使用することが出来る。例えば、クラフトパルプ、加水分解クラフトパルプ、サルファイトパルプ、コットンリンター等のセルロースを使用することが出来る。なお、本発明において使用するセルロースは、セルロースの誘導体化を必要としないものである。
本発明において、上記セルロースを溶解させる液体としては、種々の液体(例えば、アミン−N−オキシド溶液、酸化銅アンモニア溶液)中から、イオン性液体が選択される。
本発明に用いるイオン性液体は限定されない。例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、亜鉛クロリド/コリンクロリド、3−メチル−N−ブチル−ピリジニウムクロリド、ベンジルジメチル(テトラデシル)アンモニウムクロリド、1−メチルイミダゾールヒドロクロリド、酢酸1−エチル−3−メチルイミダゾリウムなどが挙げられる。
本発明においては、最初にセルロースをイオン性液体に溶解させる。セルロースを溶解する溶媒は種々存在するが、本発明においてはイオン性液体を使用しなければならない。
イオン性液体中のセルロースの含有量は、セルロースが溶解したイオン性液体全量に対して3〜15重量%であることが好ましい。さらに好ましくは、5〜10重量%である。
この際、イオン性液体を20℃〜60℃にしてセルロースを溶解することが好ましい。当該温度範囲であればセルロースをイオン性液体に容易に溶解させることが出来る。
なお、セルロースを溶解させた特定温度のイオン性液体は、ノズルから吐出する際においても同じ温度を維持することが好ましい。この場合、イオン性液体をノズルに供給するプロセスにおいては保温装置が設置されることが好ましい。
次に「イオン性液体に混和可能であって沸点が100℃以下のアルコールからなる凝固浴を用いて乾湿法によりゲル化状態を経て糸状に成形する工程A」(以下、単に工程Aと略記する場合がある)について説明する。
本発明においては、上記により調製したセルロース溶解イオン性液体を特定の紡糸法によって凝固浴に吐出させる。
凝固浴としては通常水を使用するが、本発明においては、沸点が100℃以下のアルコールからなる凝固浴を使用しなければならない。
沸点が100℃以下のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノールが挙げられる。 これは単独で用いてもよく、また、複数のアルコールを用いても良い。
特に好ましくはメタノールである。
なお、これらのアルコールからなる凝固浴は前記イオン性液体と混和可能である。
上記凝固浴は浴槽に入れて保持されるが、凝固浴の温度は0〜25℃であることが好ましく、さらに好ましくは0〜10℃である。
この温度設定は凝固浴の浴槽の温度を常法により制御することにより行われる。浴槽は加熱若しくは冷却機能を有する恒温浴槽を使用することが好ましい。
上記工程Aにおいては、紡糸技術によりセルロースを糸状に成形するものである。紡糸法には、例えば、湿式法、乾式法、乾湿法、メルトブロー法、遠心紡糸法、スパンボンド法、その他の方法等があるが、本発明においては、様々な紡糸法の中から、乾湿法が選択される。
そして、乾湿法によりセルロースを溶解したイオン性液体は、ノズルを通して凝固浴蒸気に接触し冷却されて、ゲル化状態を経て凝固浴中に導かれる。
本発明の構成要件である工程Aは、その前提として(1)多孔質膜の原料としてセルロースを選択し、(2)当該セルロースを溶解する液体としてイオン性液体を選択し、そして(3)セルロースを溶解させたイオン性液体を吐出する凝固浴としてイオン性液体に混和可能であって沸点が100℃以下のアルコールを選択し、さらに(4)紡糸技術として乾湿法を選択し、(5)ノズルから吐出されたイオン性液体がゲル化状態を経て糸状に成形されることから構成される。上記(1)及び(2)を前提とする(3)〜(5)の組み合わせが工程Aの特徴となる。
工程Aの最大の特徴は、乾湿法により凝固浴中で糸状成形体を得るにあたってゲル化状態を経るということである。
ノズルから吐出されたイオン性液体は、凝固浴の液面に到達するまでの間に凝固浴の蒸気が当該イオン性液体に十分に接触しつつ冷却されることにより、セルロース間に部分的な水素結合を形成し繊維状形態を維持したまま、糸状のゲル化状態になる。そして、糸状のゲル化状態となったイオン性液体のゲル組成物が凝固浴中にて糸状の成形体となる。
糸状のゲル化状態を効率良く経るための一手段としては、図1に説明するような蒸気拡散防止カバーを備えたノズルを用いて、ノズルから凝固浴液面までの距離(エアギャップ)を可能な限り小さくし、そして凝固浴の温度を低い温度に保つことが有効である。
例えば、エアギャップは1〜10cmが好ましい。凝固浴の温度は上述したように、0〜25℃が好ましく、さらに好ましくは0〜10℃である。
蒸気拡散防止カバーとは、沸点が100℃以下のアルコール蒸気、好ましくはメタノール蒸気がノズルから吐出されるイオン性液体に効率良く接触するために設置される、凝固浴液面からノズルまでの空間をほぼ全面的に覆うカバーを意味する。
図1は、乾湿法によりゲル化状態を経て糸状に成形する工程を行うための一実施態様を示した断面構造の模式図である。
すなわち、ゲル化状態を経るための一実施態様としては、例えば60℃に加温したイオン性液体は、図1に示されるように、ノズルの周囲に設置された蒸気拡散防止カバーの内側で、ノズルから吐出されるのと同時に冷却され、凝固浴の蒸気と十分に接触することによってゲル化状態となる。そして、ゲル化状態を経たイオン性液体が凝固浴中に導入され糸状の成形体を得ることが出来る。
ノズルから吐出されたイオン性液体の冷却は、イオン性液体がノズルから吐出された時点で凝固浴から発生する蒸気の雰囲気中で冷却される。そのため、凝固浴の温度は低い方が好ましいが、これに反して凝固浴からの蒸気の発生の観点からはあまり低くない温度がよい。
図2はノズルから吐出されたイオン性液体をさらに効率良く冷却するための本発明の一実施態様を表す断面図である。
図2の実施態様において、蒸気拡散防止カバーは冷却風導入管を備えており、ここから冷却風をカバー内に導入することにより、ノズルから吐出される例えば60℃のイオン性液体による蒸気拡散防止カバー内の温度上昇を防止して、当該イオン性液体を効率良く冷却することを可能とする。
また、拡散防止カバー内の温度上昇を防止する他の手段として、蒸気拡散防止カバーを冷媒にて冷却する手段を採用することが出来る。例えば、蒸気拡散防止カバーの外周若しくは内周に還流管を設置して水等の冷媒を還流させることにより蒸気拡散防止カバーを冷却する手段が考えられる。
当該手段により、蒸気拡散防止カバーに囲まれているノズル近傍の蒸気が冷却され、ノズルから吐出されるイオン性液体は冷却された蒸気に接触し、効率良くゲル化状態になることが可能となる。
また、図3はゲル化状態を経るための本発明の一実施態様を表す横断面図である。図3においては、メタノール等のアルコール蒸気は蒸気拡散防止カバーを貫通した蒸気導入管から、ノズル近傍に供給される。これにより、ノズルから吐出されるイオン性液体は効率良くメタノール蒸気と接触することが可能となる。
この際、蒸気導入官から供給されるメタノール蒸気は凝固浴とは別の供給源から供給することも可能である。
蒸気導入管により供給されるアルコール蒸気は、凝固浴を構成するアルコール蒸気と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
なお、メタノール等のアルコール蒸気は蒸気拡散防止カバーの内面に凝縮され、再び凝固浴中に滴下するという利点を有する。
なお、本発明においては、ゲル化状態を経るための手段は上記の実施態様に限定されない。上記の実施態様に種々の改変を加えることも可能である。
次に、ゲル状セルロースからなる糸状成形体を延伸する工程B(以下、単に工程Bと略記する場合がある)について説明する。
上記工程Aによって、凝固浴中に混入されたイオン性液体は、ゲル状セルロースからなる糸状成形体となり、本発明においてはこのゲル状セルロースからなる糸状成形体を延伸する。
当該糸状成形体の延伸方法は限定されず、常法並びに将来開発される新たな延伸方法によって延伸されてもよい。
通常は、凝固浴中において巻取機により延伸される。
巻取機の巻取速度によって任意の延伸倍率に延伸可能である。延伸倍率は適宜決定されるが、例えば2〜10倍に延伸することが可能である。
また、延伸倍率を調整することによって、異なる孔径若しくは外径を有する多孔質糸状成形体を得ることが可能となる。
延伸される糸状成形体は、イオン性液体を吐出するノズル形状によって、通常の糸であってもよいし、中空糸であってもよい。
糸状成形体が中空糸である場合は中空糸膜として、水処理膜を初めとする様々な用途に使用可能である。
一方、延伸された糸状成形体のゲル状セルロースのゲル強度は、1MPa以上であることが好ましい。また、ゲル状セルロースのアルコール含有率が90重量%以上であることが好ましい。
なお、ゲル状セルロース中に含まれるイオン性液体は、凝固浴中に混和された際、ゲル状セルロースからは離脱するが、凝固浴中のアルコールを蒸留することにより再生可能である。この点も本願発明の利点である。
本発明の製造方法は上記工程Aと工程Bを有することを特徴とするものである。工程Bによって延伸された後のゲル状セルロースからなる糸状成形体は、その後、常法により、水−メタノール混合溶液中で洗浄され、熱風乾燥された後、巻き取られる。
巻き取られた糸状成形体は多孔質であるという特徴を有している。この糸状成形体は製膜することにより多孔質膜として利用される。糸状成形体が中空糸である場合は多孔質中空糸膜として利用可能である。
本発明において製造される多孔質糸状成形体の外径は1nm〜100μmであることが好ましい。当該外径は多孔質糸状成形体の用途によって決定される。例えば、多孔質糸状成形体を濾過フィルターの用途に応用する場合は10〜100μmが好ましい。また、水処理用分離膜の用途に応用する場合は1〜10μmが好ましい。
一方、本発明において製造される多孔質糸状成形体の孔径は0.5nm〜1μmであることが好ましい。当該孔径は多孔質糸状成形体の用途によって決定される。
例えば、濾過フィルターの用途に応用する場合は0.1〜1μmが好ましい。また、水処理用分離膜の用途に応用する場合は0.5〜100nmが好ましい。
本発明により製造される多孔質糸状成形体は極めて優れた機械的強度を有しており、さらに耐久性、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性に優れたセルロース多孔質糸状成形体である。
本発明により製造されるセルロース多孔質糸状成形体が中空糸の場合は中空糸膜として利用することが出来る。本発明のセルロース多孔質中空糸膜の膜厚は1〜100μmであることが好ましい。当該膜厚は多孔質中空糸膜の用途によって決定される。セルロース多孔質中空糸膜を濾過フィルターの用途に使用する場合は10〜100μmが好ましい。また、水処理用分離膜の使用する場合は1〜10μmが好ましい。
一方、本発明のセルロース多孔質中空糸膜の孔径は0.5nm〜1μmであることが好ましい。当該孔径は多孔質中空糸膜の用途によって決定される。
例えば、濾過フィルターの用途に応用する場合は0.1〜1μmが好ましい。また、水処理用分離膜の用途に応用する場合は0.5〜100nmが好ましい。
本発明のセルロース多孔質中空糸膜は極めて優れた機械的強度を有しており、さらに耐久性、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性に優れている。
本発明のセルロース多孔質中空糸膜は膜モジュールとして利用することも可能である。
以下に本発明の実施例を説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
粉砕したウッドパルプ5gを、イオン性液体(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム メチルホスホネート(関東化学製))に加え、ロータリーポンプで減圧しながら3時間60℃で加熱攪拌することによりセルロース溶液を調整した。
セルロース溶液を60℃で加温したドープ供給槽に入れ、粘性セルロース溶液内を脱気した。ドープ供給槽内への窒素による加圧およびギアポンプによって、セルロース溶液を直径0.2mmの孔径のノズルから押し出した。
ステンレスからなる蒸気拡散防止カバーを備えたノズルを、凝固浴内のメタノール表面から3cm程度離すことにより、メタノール蒸気によってノズルから吐出されたイオン性液体をゲル化状態にした。
そして、10℃に温度調節されたメタノール5Lを凝固浴とし、ゲル化状態になったイオン性液体を凝固浴内でゲル状セルロースにして、ゲル状セルロースからなる糸状成形体からイオン性液体を抽出した。
次に、糸状成形体の巻き取り速度を制御することにより、凝固浴内で糸状成形体を構成するセルロース繊維軸方向に2〜10倍の延伸を行った。
延伸したゲル状セルロース糸状成形体をメタノール及び水の混合溶液で洗浄を行い、熱風乾燥機によって乾燥した後、巻取機で巻き取り、セルロース多孔質糸状成形体を得た。
上記実施例1にて得られたセルロース多孔質糸状成形体は、応力が4.0cNdtex-1、ヤング率が2.5GPa、伸び率が1.7%、孔径が1nm程度の糸状成形体であった。
実施例1にて得られたセルロース多孔質糸状成形体の走査型電子顕微鏡写真を図4と図5に示す。
実施例2
実施例1で用いた直径0.2mmの孔径を有するノズルを、同心円状に外径0.2mmと外径0.5mmの流路を持つ中空糸用ノズルに変更した以外は、実施例1と全く同様にして、中空糸状成形体からなるセルロース多孔質中空糸膜を得た。
上記実施例2にて得られたセルロース多孔質中空糸膜の写真を図6に、光学顕微鏡写真を図7に示す。
本発明の製造方法によれば、極めて優れた機械的強度を有し、耐久性、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性に優れたセルロース多孔質糸状成形体を製造することが可能となる。本発明のセルロース多孔質糸状成形体並びにセルロース多孔質中空糸膜は、例えば、水処理用途の多孔質膜、医療用途の多孔質膜を初めとする様々な用途に使用することが可能である。

Claims (14)

  1. イオン性液体にセルロースを溶解させた溶液からセルロースを再生することによってセルロース多孔質糸状成形体を製造する方法において、
    前記イオン性液体に混和可能であって沸点が100℃以下のアルコールからなる凝固浴を用いて乾湿法により、ノズルから吐出されたイオン性液体がノズルの周囲に設置された蒸気拡散防止カバーの内側で凝固浴の蒸気と接触することによって糸状のゲル化状態を経て糸状に成形する工程Aと、当該工程Aの後に、ゲル状セルロースからなる糸状成形体を延伸する工程Bを有することを特徴とする、セルロース多孔質糸状成形体の製造方法。
  2. 前記イオン性液体にセルロースを溶解させた溶液中のセルロースの含有量が3〜15重量%であることを特徴とする請求項1記載のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法。
  3. 前記イオン性液体に混和可能であって沸点が100℃以下のアルコールがメタノールであることを特徴とする請求項1または2記載のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法。
  4. 前記イオン性液体に混和可能であって沸点が100℃以下のアルコールからなる凝固浴の温度が0〜25℃であることを特徴とする請求項1〜3記載の何れか1項記載のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法。
  5. 前記ゲル状セルロースのゲル強度が1MPa以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法。
  6. 前記ゲル状セルロースのアルコール含有率が90重量%以上であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法。
  7. 前記セルロース多孔質糸状成形体の外径が1〜100μmであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法。
  8. 前記セルロース多孔質糸状成形体の孔径が0.5nm〜1μmであることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項記載のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法。
  9. 前記再生したセルロースからなる糸状成形体を延伸する延伸倍率を調整することによって、異なる孔径若しくは外径を有する糸状成形体を得ることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項記載のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法。
  10. 前記蒸気拡散防止カバーは、蒸気拡散防止カバーを貫通した蒸気導入管を有するものであることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項記載のセルロース多孔質糸状成形体の製造方法。
  11. 前記セルロース多孔質糸状成形体がセルロース多孔質中空糸であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項記載の製造方法。
  12. 前記セルロース多孔質中空糸がセルロース多孔質中空糸膜であることを特徴とする請求項11記載の製造方法。
  13. 前記セルロース多孔質中空糸膜の膜厚が1〜100μmであることを特徴とする請求項12記載の製造方法。
  14. 前記セルロース多孔質中空糸膜の孔径が0.5nm〜1μmであることを特徴とする請求項12又は13記載の製造方法。
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