以下、本発明に係る作業車両の実施の形態を、作業装置のアタッチメントとしてリフティングマグネットが取付けられた油圧ショベル(リフティングマグネット機)に適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1ないし図4は、第1の実施の形態を示している。図1において、作業車両の代表例である油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に設けられた後述の上部旋回体12と、該上部旋回体12の前後方向の前側に俯仰動可能に取付けられた作業装置5とを含んで構成されている。下部走行体2および上部旋回体12は、走行可能な車体を構成している。
下部走行体2は、例えば、履帯3と、該履帯3を周回駆動させることにより油圧ショベル1を走行させる左,右の走行用油圧モータ4(図2および図3参照)とを含んで構成されている。即ち、下部走行体2は、油圧モータからなる走行用油圧モータ4に、後述のメイン油圧ポンプ23からの圧油が供給されることにより、上部旋回体12および作業装置5と共に走行する。なお、図2および図3では、図面が複雑になることを避けるために、左,右の走行用油圧モータ4を簡略的に1個の走行用油圧モータ4で示している。
作業装置5は、フロント(フロント装置)とも呼ばれるもので、先端側に作業装置5のアタッチメント(作業具)となるリフティングマグネット11が取付けられている。即ち、作業装置5は、上部旋回体12の前部に回動可能に取付けられたブーム6と、該ブーム6の先端側に回動可能に取付けられたアーム7と、上部旋回体12とブーム6との間に設けられブーム6を回動するブームシリンダ8と、ブーム6とアーム7との間に設けられアーム7を回動するアームシリンダ9とを含んで構成されている。
そして、アーム7の先端側には、リフティングマグネット11が取付けられており、アーム7とリフティングマグネット11との間には、リフティングマグネット11を回動する作業具シリンダ10が設けられている。リフティングマグネット11は、電力の供給により作動する電動作業具である。即ち、リフティングマグネット11は、例えば、電磁石(コイルとコア)を含んで構成され、後述の発電機30から制御盤31を介して電磁石(のコイル)に電力が供給される。リフティングマグネット11は、給電によって吸着力となる磁力が発生し、吸着物となる金属物を吸着することができる。このようなリフティングマグネット11が取付けられた油圧ショベル1は、リフティングマグネット機と呼ばれている。
一方、上部旋回体12は、旋回用油圧モータ、減速機構、旋回軸受等を含んで構成される旋回装置13を介して下部走行体2に取付けられている。上部旋回体12は、旋回装置13の旋回用油圧モータによって下部走行体2に対して旋回駆動する。上部旋回体12は、支持構造体をなし前,後方向の前側に作業装置5が取付けられた旋回フレーム14と、該旋回フレーム14の左前側に搭載され運転室を形成するキャブ15と、該キャブ15の後側に位置して旋回フレーム14に搭載された後述のエンジン22、油圧ポンプ23,26,28(図2および図3参照)等を収容する建屋カバー16と、旋回フレーム14の後部に取付けられ作業装置5との重量バランスをとるカウンタウエイト17とを含んで構成されている。この場合、カウンタウエイト17は、下部走行体2の車体幅内に収まる構成としてもよい。即ち、油圧ショベル1を、後方小旋回型の油圧ショベルとして構成してもよい。
ここで、キャブ15の内部には、オペレータが着座する運転席(図示せず)が設けられている。運転席の前側には、後述するように、オペレータによって操作される走行用操作装置としての左,右の走行用レバー・ペダル装置27(図2および図3参照)が設けられている。左,右の走行用レバー・ペダル装置27は、下部走行体2を走行させるときに操作される。なお、図2および図3では、図面が複雑になることを避けるために、左,右の走行用レバー・ペダル装置27を簡略的に1個の走行用レバー・ペダル装置27で示している。
一方、運転席の左,右方向の両側には、オペレータによって操作される作業用操作装置としての左,右の作業用レバー装置(図示せず)が設けられている。左,右の作業用レバー装置は、作業装置5を回動(俯仰動)させるときや上部旋回体12を旋回させるときに操作される。左,右の作業用レバー装置は、それぞれオペレータが把持するレバーを備えている。
後述するように、左側のレバーの上端側には、例えば、リフティングマグネット11に吸着物(金属物)を吸着するときに操作される吸着スイッチ33(図2および図3参照)が設けられている。右側のレバーの上端側には、例えば、リフティングマグネット11から吸着物を釈放するときに操作される釈放スイッチ34(図2および図3参照)が設けられている。さらに、キャブ15内には、リフティングマグネット11を用いた作業を行うときにONの位置に操作されるモード切換えスイッチ32(図2および図3参照)が設けられている。
次に、リフティングマグネット11が取付けられた油圧ショベル1、即ち、リフティングマグネット機の油圧回路21について、図2および図3を参照しつつ説明する。なお、図2および図3の油圧回路21は、走行用油圧モータ4と発電用油圧モータ29を駆動するための油圧回路である。図2および図3では、図面が複雑になることを避けるために、ブームシリンダ8、アームシリンダ9、作業具シリンダ10、旋回用油圧モータ等を駆動するための油圧回路は省略している。また、図2は、リフティングマグネット11を用いた作業を行わないとき、即ち、モード切換えスイッチ32がOFFの状態に対応する。一方、図3は、リフティングマグネット11を用いた作業を行うとき、即ち、モード切換えスイッチ32がONの状態に対応する。
油圧回路21は、走行用油圧モータ4に加え、エンジン22、メイン油圧ポンプ23、作動油タンク24、走行用方向制御弁25、パイロット油圧ポンプ26、走行用レバー・ペダル装置27、発電用油圧ポンプ28、発電用油圧モータ29、発電機30、制御盤31、モード切換えスイッチ32、吸着スイッチ33、釈放スイッチ34、コントローラ35、発電用切換弁36、走行用パイロット圧切換弁37を含んで構成されている。
エンジン22は、キャブ15とカウンタウエイト17との間に位置して旋回フレーム14上に設けられている。エンジン22は、例えばディーゼルエンジンにより構成され、メイン油圧ポンプ23、パイロット油圧ポンプ26、および、発電用油圧ポンプ28を回転駆動するための原動機(回転源、駆動源)となる。なお、油圧ポンプ23,26,28を駆動する原動機は、内燃機関となるエンジン単体で構成できる他、例えば、エンジンと電動モータ、または、電動モータ単体により構成してもよい。
メイン油圧ポンプ23は、上部旋回体12の旋回フレーム14に搭載され、エンジン22によって回転駆動される。メイン油圧ポンプ23は、例えば、斜板式、ラジアルピストン式または斜軸式の可変容量型油圧ポンプとして構成されている。メイン油圧ポンプ23は、作動油を貯溜する作動油タンク24と共にメインの油圧源を構成している。メイン油圧ポンプ23は、下部走行体2の走行用油圧モータ4、作業装置5のブームシリンダ8、アームシリンダ9、作業具シリンダ10、旋回装置13の旋回用油圧モータに圧油を供給する。
即ち、メイン油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動されることにより作動油タンク24から作動油(油)を吸入し、吸入した作動油を圧油としてコントロールバルブ装置(制御弁群)に向けて供給(吐出)する。なお、図2および図3は、コントロールバルブ装置を構成する複数の方向制御弁のうち、走行用油圧モータ4に対する圧油の供給と排出を制御する走行用方向制御弁25を示している。この場合、図面が複雑になることを避けるために、走行用油圧モータ4と同様に、左,右の走行用方向制御弁25を簡略的に1個の走行用方向制御弁25で示している。
走行用方向制御弁25は、メイン油圧ポンプ23と走行用油圧モータ4との間に設けられている。走行用方向制御弁25は、例えば、4ポート3位置または6ポート3位置の方向制御弁により構成され、メイン油圧ポンプ23から走行用油圧モータ4に供給する圧油を切換え制御する。走行用方向制御弁25は、走行用レバー・ペダル装置27により操作(切換え操作)される。このために、走行用方向制御弁25の両端側には、一対の油圧パイロット部25A,25Bが設けられている。油圧パイロット部25A,25Bには、走行用レバー・ペダル装置27の操作に基づくパイロット圧(切換信号)が供給される。
パイロット油圧ポンプ26は、メイン油圧ポンプ23と同様に、エンジン22によって回転駆動される。パイロット油圧ポンプ26は、例えば、固定容量型油圧ポンプとして構成され、作動油タンク24と共にパイロット油圧源を構成している。パイロット油圧ポンプ26は、左,右の走行用レバー・ペダル装置27および左,右の作業用レバー装置を介して、コントロールバルブ装置にパイロット圧を供給する。図2および図3では、パイロット油圧ポンプ26は、走行用レバー・ペダル装置27の操作量に応じたパイロット圧を、走行用方向制御弁25に供給する。
走行用操作装置としての走行用レバー・ペダル装置27は、走行用油圧モータ4を正転または逆転するために(即ち、下部走行体2を前進、後退、または、旋回(信地旋回)させるために)、オペレータによって操作される。走行用レバー・ペダル装置27は、減圧弁型パイロット弁からなるパイロット操作弁として構成され、オペレータによって操作される操作レバー27A、および、ペダル(図示せず)を有している。オペレータが操作レバー27Aを手動で傾転操作(レバー操作)、または、ペダルを足踏み操作(ペダル操作)すると、その操作量に比例したパイロット圧(切換油圧信号)が、走行用レバー・ペダル装置27から走行用方向制御弁25の油圧パイロット部25A,25Bに供給される。
図2および図3に示すように、操作レバー27Aが中立位置のときは、走行用レバー・ペダル装置27から走行用方向制御弁25の油圧パイロット部25A,25Bにパイロット圧が供給されない。このため、走行用方向制御弁25は中立位置(A)となる。この場合は、メイン油圧ポンプ23から吐出した圧油が走行用油圧モータ4に供給されず、走行用油圧モータ4は回転しない(停止している)。即ち、下部走行体2は停止している。
一方、操作レバー27Aが正転側(下部走行体2を前進させる側)に傾転操作されると、その操作量に比例したパイロット圧油が走行用レバー・ペダル装置27から走行用方向制御弁25の油圧パイロット部25Aに供給される。これにより、走行用方向制御弁25は、図3の中立位置(A)から正転位置となる切換位置(B)に切換えられる。この場合、メイン油圧ポンプ23から吐出した圧油が走行用油圧モータ4に供給され、走行用油圧モータ4が正転する。この結果、下部走行体2が前進する。
これに対して、操作レバー27Aが逆転側(下部走行体2を後退させる側)に傾転操作されると、その操作量に比例したパイロット圧油が走行用レバー・ペダル装置27から走行用方向制御弁25の油圧パイロット部25Bに供給される。これにより、走行用方向制御弁25は、図3の中立位置(A)から逆転位置となる切換位置(C)に切換えられる。この場合、メイン油圧ポンプ23から吐出した圧油が走行用油圧モータ4に供給され、走行用油圧モータ4が逆転する。この結果、下部走行体2が後退する。
発電用油圧ポンプ28は、メイン油圧ポンプ23およびパイロット油圧ポンプ26と同様に、エンジン22によって回転駆動される。発電用油圧ポンプ28は、例えば、固定容量型油圧ポンプとして構成され、作動油タンク24と共に発電用油圧源を構成している。発電用油圧ポンプ28は、発電用油圧モータ29に圧油を供給する。発電用油圧モータ29は、発電用油圧ポンプ28からの圧油が供給されることにより回転する。発電用油圧モータ29は、発電機30を回転駆動する。
発電機30は、発電用油圧モータ29と共に上部旋回体12に搭載されている。発電機30は、ロータとステータ(図示せず)とを含んで構成され、発電機30のロータは、発電用油圧モータ29の回転軸(図示せず)に接続されている。即ち、発電機30は、例えば交流発電機により構成され、発電用油圧モータ29によって回転駆動されることにより、リフティングマグネット11に供給する電力を発電する。発電機30は、例えば、3相交流ケーブル30Aを介して制御盤31と接続されている。
制御盤31は、上部旋回体12に搭載されている。制御盤31は、例えば、上部旋回体12の右前側、または、上部旋回体12の後方で建屋カバー16の上側に配置されている。制御盤31は、発電機30とリフティングマグネット11との間に設けられ、リフティングマグネット11に対する通電、非通電を制御する。この場合、制御盤31は、例えば、発電機30の発電出力を整流する整流器と、整流器の出力電圧を平滑化するコンデンサと、リフティングマグネット11の電磁石に対する電流の供給、遮断を行うスイッチと、電流を遮断したときに電磁石のコイルに生じる逆起電力を消費する放電抵抗器とを含んで構成されている。制御盤31は、後述のコントローラ35を介して、モード切換えスイッチ32、吸着スイッチ33、釈放スイッチ34と接続されている。制御盤31は、吸着スイッチ33、釈放スイッチ34の操作に従って、リフティングマグネット11の電磁石(コイル)に対する電流の供給、遮断を行う。
モード切換えスイッチ32は、キャブ15内の運転席の近傍に設けられている。モード切換えスイッチ32は、MGモードスイッチとも呼ばれ、オペレータによって切換え操作される。モード切換えスイッチ32は、例えば、ONの位置とOFFの位置との2つの選択位置を有するトグルスイッチにより構成されている。また、モード切換えスイッチ32は、例えば、コントローラ35を介して制御盤31に接続されている。モード切換えスイッチ32は、リフティングマグネット11を用いた作業を許可する電動作業ONモードと、リフティングマグネット11を用いた作業を不許可とする電動作業OFFモードとのいずれか一方に切換えるものである。
この場合、電動作業ONモードは、モード切換えスイッチ32のON位置(MGモードON)に対応し、電動作業OFFモードは、モード切換えスイッチ32のOFF位置(MGモードOFF)に対応する。そして、電動作業ONモードのとき、即ち、モード切換えスイッチ32がON位置のときは、吸着スイッチ33と釈放スイッチ34とを操作することにより、リフティングマグネット11を用いて吸着物となる金属物の吸着と釈放とを行うことができる。
吸着スイッチ33は、左側の作業用レバー装置のレバーの先端側に設けられている。吸着スイッチ33は、プッシュ式スイッチにより構成され、オペレータによって操作される。吸着スイッチ33は、例えば、コントローラ35を介して制御盤31に接続されている。モード切換えスイッチ32がON位置のとき、即ち、電動作業ONモードのときに、オペレータによって吸着スイッチ33が操作される(押される)と、リフティングマグネット11に吸着物(金属物)を吸着させることができる。これに対して、モード切換えスイッチ32がOFF位置のとき、即ち、電動作業OFFモードのときは、吸着スイッチ33を操作しても、リフティングマグネット11に吸着物を吸着することはできない。
釈放スイッチ34は、右側の作業用レバー装置のレバーの先端側に設けられている。釈放スイッチ34は、プッシュ式スイッチにより構成され、オペレータによって操作される。釈放スイッチ34は、例えば、コントローラ35を介して制御盤31に接続されている。釈放スイッチ34は、モード切換えスイッチ32がON位置のときに操作される(押される)と、リフティングマグネット11に吸着されている吸着物をリフティングマグネット11から釈放することができる。
コントローラ35は、モード切換えスイッチ32、吸着スイッチ33および釈放スイッチ34の操作に応じて制御盤31、後述の発電用切換弁36、走行用パイロット圧切換弁37を制御するものである。コントローラ35は、例えばリレー、または、マイクロコンピュータを含んで構成され、その入力側は、例えば、モード切換えスイッチ32、吸着スイッチ33、釈放スイッチ34に接続されている。コントローラ35の出力側は、例えば、制御盤31、発電用切換弁36、走行用パイロット圧切換弁37に接続されている。
コントローラ35は、モード切換えスイッチ32がON位置のときに、吸着スイッチ33が操作されると、制御盤31を介して発電機30で発生した発電電力をリフティングマグネット11(の電磁石)に給電する。これにより、リフティングマグネット11に吸着力となる磁力が発生し、リフティングマグネット11に吸着物が吸着される。一方、コントローラ35は、モード切換えスイッチ32がON位置のときに、釈放スイッチ34が操作されると、リフティングマグネット11の磁力を消失させる。これにより、リフティングマグネット11から吸着物を釈放することができる。
ところで、油圧ショベル1は、下部走行体2の履帯3を周回させて走行する。このとき、制御盤31が激しく揺れると、例えば制御盤31内部のスイッチ(接触器)が振動によって意図しないタイミングで接続され、制御盤31の溶着、焼き付き等の故障に繋がる可能性がある。特に、建物の内部等の狭い場所で用いられ、旋回時に上部旋回体12の後端側が下部走行体2の車幅内または車幅内から大きくはみ出さない油圧ショベル(例えば、後方小旋回型の中型油圧ショベル)の場合は、上部旋回体12の後端が短く、上部旋回体12の配置空間が制限される。このため、制御盤が車体の高い位置に配置され、振動が大きくなる傾向がある。そこで、第1の実施の形態では、発電機30が発電しているとき、即ち、発電機30の発電電力が制御盤31に供給されているときは、油圧ショベル1の走行速度を制限する構成としている。
即ち、第1の実施の形態では、モード切換えスイッチ32がON位置のときは、発電機30による発電を行い、モード切換えスイッチ32がOFF位置のときは、発電機30による発電を停止する発電停止制御装置(発電停止装置)を備えている。このために、第1の実施の形態では、発電用油圧ポンプ28と発電用油圧モータ29との間に発電用切換弁36が設けられている。発電用切換弁36は、発電用油圧モータ29に対する圧油の供給の許可と禁止、即ち、圧油の導通と遮断とを切換えるものである。発電用切換弁36は、本発明による発電停止制御装置(発電停止装置)を構成している。
発電用切換弁36は、例えば電磁パイロット式の3ポート2位置切換弁により構成されている。発電用切換弁36は、コントローラ35を介してモード切換えスイッチ32と接続された電磁パイロット部36Aと、戻しばね36Bとを有している。発電用切換弁36は、モード切換えスイッチ32がOFF位置であるかON位置であるかに応じて、遮断位置(D)と供給位置(E)との間で切換えられる。
モード切換えスイッチ32がOFF位置のときは、図2に示すように、電磁パイロット部36Aに対する通電が停止され、発電用切換弁36が戻しばね36Bによって遮断位置(D)となる。この場合は、発電用油圧ポンプ28から吐出した圧油は、発電用油圧モータ29を介することなく発電用切換弁36から作動油タンク24に戻る。これにより、発電用油圧モータ29は回転せず、発電機30による発電が行われない。
これに対して、モード切換えスイッチ32がON位置のときは、図3に示すように、電磁パイロット部36Aに通電が行われ、発電用切換弁36が供給位置(E)となる。この場合は、発電用油圧ポンプ28から吐出した圧油が発電用切換弁36を通じて発電用油圧モータ29に供給される。これにより、発電用油圧モータ29が回転し、発電機30による発電が行われる。
さらに、第1の実施の形態では、モード切換えスイッチ32がON位置のときは、OFF位置のときよりも、下部走行体2の走行速度を制限する速度制限装置を備えている。この場合、速度制限装置は、モード切換えスイッチ32がON位置のときは、走行用レバー・ペダル装置27が操作されても、下部走行体2の走行を禁止する構成としている。このために、第1の実施の形態では、パイロット油圧ポンプ26と走行用レバー・ペダル装置27との間に走行用パイロット圧切換弁37が設けられている。走行用パイロット圧切換弁37は、走行用方向制御弁25に対するパイロット圧の供給の許可と禁止、即ち、パイロット圧の導通と遮断とを切換えるものである。走行用パイロット圧切換弁37は、本発明による速度制限装置を構成している。
走行用パイロット圧切換弁37は、例えば電磁パイロット式の3ポート2位置切換弁により構成されている。走行用パイロット圧切換弁37は、コントローラ35を介してモード切換えスイッチ32と接続された電磁パイロット部37Aと、戻しばね37Bとを有している。走行用パイロット圧切換弁37は、モード切換えスイッチ32がON位置であるかOFF位置であるかに応じて、遮断位置(G)と供給位置(H)との間で切換えられる。
モード切換えスイッチ32がOFF位置のときは、図2に示すように、電磁パイロット部37Aに通電が行われ、走行用パイロット圧切換弁37が供給位置(H)となる。この場合は、パイロット油圧ポンプ26から吐出された圧油が走行用パイロット圧切換弁37を介して走行用レバー・ペダル装置27に供給される。このため、オペレータは、走行用レバー・ペダル装置27の操作レバー27Aまたはペダルを操作することにより、走行用方向制御弁25を中立位置(A)から切換位置(B)または切換位置(C)に切換えることができる。これにより、走行用油圧モータ4を正転または逆転させることができ、下部走行体2を走行させることができる。
これに対して、モード切換えスイッチ32がON位置のときは、図3に示すように、電磁パイロット部37Aに対する通電が停止され、走行用パイロット圧切換弁37が戻しばね37Bによって遮断位置(G)となる。この場合は、パイロット油圧ポンプ26から吐出された圧油は、走行用レバー・ペダル装置27に供給されずに走行用パイロット圧切換弁37から作動油タンク24に戻る。このため、オペレータは、走行用レバー・ペダル装置27の操作レバー27Aまたはペダルを操作しても、走行用方向制御弁25を中立位置(A)から切換位置(B)または切換位置(C)に切換えることができなくなる。これにより、走行用油圧モータ4を正転または逆転させることができなくなり、下部走行体2の走行を禁止することができる。
次に、コントローラ35で行われる処理、即ち、モード切換えスイッチ32のON/OFFに応じて発電用切換弁36と走行用パイロット圧切換弁37とを切換える制御処理について、図4の流れ図を用いて説明する。ここで、図4の制御処理を行うためのプログラムは、例えば、コントローラ35のメモリ(図示せず)に格納されている。また、図4の処理は、所定の制御周期で繰り返し実行される。なお、コントローラ35で行われる処理を、リレーを含む回路で行うようにしてもよい。
コントローラ35への通電等により図4の処理がスタートすると、S1(ステップ1)では、モード切換えスイッチ32がON位置であるか否かを判定する。S1で「YES」、即ち、モード切換えスイッチ32がONであると判定された場合は、S2に進む。S2では、発電用切換弁36をONにする。即ち、図3に示すように、発電用切換弁36の電磁パイロット部36Aに通電することにより、発電用切換弁36を供給位置(E)にする。この場合は、発電用油圧ポンプ28から吐出した圧油が発電用油圧モータ29に供給され、発電機30による発電が行われる。
続くS3では、走行用パイロット圧切換弁37をOFFにする。即ち、図3に示すように、走行用パイロット圧切換弁37の電磁パイロット部37Aに対する通電を停止することにより、走行用パイロット圧切換弁37を遮断位置(G)にする。この場合は、パイロット油圧ポンプ26から吐出された圧油が、走行用レバー・ペダル装置27に供給されることなく作動油タンク24に戻る。このため、オペレータが走行用レバー・ペダル装置27の操作レバー27Aまたはペダルを操作しても、走行用方向制御弁25を切換えることができなくなり、下部走行体2の走行が禁止される。S3で走行用パイロット圧切換弁37をOFFにしたら、リターンする(スタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す)。
一方、S1で「NO」、即ち、モード切換えスイッチ32がOFF位置であると判定された場合は、S4に進む。S4では、リフティングマグネット11により吸着物を吸着しているか否かを判定する。S4で「NO」、即ち、リフティングマグネット11により吸着物を吸着していないと判定されると、S5に進む。S5では、発電用切換弁36をOFFにする。即ち、図2に示すように、発電用切換弁36の電磁パイロット部36Aに対する通電を停止することにより、発電用切換弁36を遮断位置(D)にする。この場合は、発電用油圧ポンプ28から吐出した圧油が発電用油圧モータ29に供給されず、発電機30による発電が行われなくなる。
続くS6では、走行用パイロット圧切換弁37をONにする。即ち、図2に示すように、走行用パイロット圧切換弁37の電磁パイロット部37Aに通電することにより、走行用パイロット圧切換弁37を供給位置(H)にする。この場合は、パイロット油圧ポンプ26から吐出された圧油が、走行用レバー・ペダル装置27に供給される。即ち、オペレータが走行用レバー・ペダル装置27の操作レバー27Aまたはペダルを操作することで、走行用方向制御弁25を切換えることができ、下部走行体2を走行させることができる。S6で走行用パイロット圧切換弁37をONにしたら、リターンする。
一方、S4で「YES」、即ち、リフティングマグネット11により吸着物を吸着していると判定されると、S2に進む。この理由は、リフティングマグネット11により吸着物を吸着している状態で、モード切換えスイッチ32がON位置からOFF位置に操作されたときにS5に進むと、リフティングマグネット11から吸着物が釈放されるためである。即ち、釈放スイッチ34の操作に起因せずに、吸着物の釈放が行われる。これは、オペレータの意図しない釈放になる可能性がある。そこで、リフティングマグネット11に吸着物が吸着されているときは、吸着物が釈放されないように、S2に進む。この場合には、リフティングマグネット11に吸着物が吸着されており、発電機30による発電が継続されている旨をオペレータに報知する構成とすることが好ましい。
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
キャブ15に搭乗したオペレータは、モード切換えスイッチ32がOFF位置の状態で、エンジン22を起動させる。エンジン22の起動により、メイン油圧ポンプ23、パイロット油圧ポンプ26、および、発電用油圧ポンプ28が駆動する。このとき、コントローラ35による図4のS1、S4、S5、S6の処理により、図2に示すように、発電用切換弁36は遮断位置(D)となり、走行用パイロット圧切換弁37は供給位置(H)となる。
これにより、発電用油圧モータ29には、発電用油圧ポンプ28からの圧油が供給されず、発電機30による発電が行われない発電停止状態となる。一方、走行用レバー・ペダル装置27には、パイロット油圧ポンプ26からの圧油が供給されるため、走行用レバー・ペダル装置27のレバー操作、ペダル操作に応じて、走行用油圧モータ4にメイン油圧ポンプ23からの圧油が供給される。これにより、油圧ショベル1は、下部走行体2による走行動作を行うことができる。
次に、オペレータがモード切換えスイッチ32をON位置にすると、コントローラ35による図4のS1、S2、S3の処理により、図3に示すように、発電用切換弁36は供給位置(E)となり、走行用パイロット圧切換弁37は遮断位置(G)となる。これにより、発電用油圧モータ29には、発電用油圧ポンプ38からの圧油が供給され、発電機30による発電が行われる発電状態となる。このとき、オペレータが吸着スイッチ33と釈放スイッチ34とを操作することで、リフティングマグネット11を用いて吸着物の吸着と釈放を行うことができる。一方、走行用レバー・ペダル装置27には、パイロット油圧ポンプ26からの圧油が供給されなくなるため、走行用レバー・ペダル装置27を操作しても、メイン油圧ポンプ23からの圧油を走行用油圧モータ4に供給することができなくなる。これにより、モード切換えスイッチ32がON位置のときは、下部走行体2の走行が禁止される。
かくして、第1の実施の形態によれば、モード切換えスイッチ32がON位置(電動作業ONモード)のときは、発電用切換弁36が供給位置(E)となることにより、発電機30による発電が行われる。このとき、下部走行体2の走行速度は、走行速度制限装置を構成する走行用パイロット圧切換弁37によって、モード切換えスイッチ32がOFF位置(電動作業OFFモード)のときよりも制限される。
より具体的には、モード切換えスイッチ32がON位置のときは、走行用パイロット圧切換弁37が遮断位置(G)となる。これにより、走行用レバー・ペダル装置27が操作されても、下部走行体2の走行が禁止される。このため、発電機30が発電しているとき(発電機30から制御盤31に発電電力が供給されているとき)は、下部走行体2の走行速度がゼロ(0km/h)に制限され、下部走行体2を走行させることができなくなる。これにより、電力が供給される制御盤31内部の接触器(スイッチ)が走行中に不必要に接続(開閉)されることがなくなり、制御盤31の溶着、焼き付き等の故障を高い次元で抑制することができる。
一方、モード切換えスイッチ32がOFF位置(電動作業OFFモード)のときは、発電用切換弁36が遮断位置(D)となることにより、発電機30による発電が停止する。このとき、走行用パイロット圧切換弁37は供給位置(H)となり、下部走行体2の走行速度は、ON位置のときのように制限されなくなるが、発電機30から制御盤31には発電電力が供給されない。このため、下部走行体2が走行することにより制御盤31が振動したとしても、制御盤31の溶着、焼き付き等の故障を抑制することができる。この結果、下部走行体2の走行速度の確保と制御盤31の溶着、焼き付き等の故障の抑制とを両立することができる。
次に、図5および図6は、第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、モード切換えスイッチが電動作業ONモードのときは高速走行を禁止する構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2の実施の形態では、第1の実施の形態で用いた走行用パイロット圧切換弁37を備えていない。一方、第2の実施の形態では、走行用油圧モータ41は、低速と高速とに切換えが可能な可変容量式の油圧モータによって構成している。走行用油圧モータ41は、モータ容量を調整するレギュレータ(容量可変部、傾転アクチュエータ)41Aを有している。レギュレータ41Aは、コントローラ43により制御される。走行用油圧モータ41は、メイン油圧ポンプ23からの圧油により、モータ容量が大容量のときは、高トルクで低速回転され、油圧ショベル1は相対的に遅い速度(低速)で走行する。一方、モータ容量が小容量のときは、メイン油圧ポンプ23からの圧油により走行用油圧モータ41は低トルクで高速回転され、油圧ショベル1は相対的に速い速度(高速)で走行する。
速度切換えスイッチ42は、コントローラ43に接続されている。速度切換えスイッチ42は、油圧ショベル1(下部走行体2)を低速走行させる低速モードと高速走行させる高速モードとのいずれか一方に切換えるものである。即ち、速度切換えスイッチ42は、低速モードに対応する低速位置と高速モードに対応する低速位置との2つの選択位置を有している。速度切換えスイッチ42が低速位置のときは、走行用油圧モータ41が大容量となり、下部走行体2を低速走行させることができる。一方、速度切換えスイッチ42が高速位置のときは、走行用油圧モータ41が小容量となり、下部走行体2を高速走行させることができる。
コントローラ43は、速度切換えスイッチ42の切換え位置(選択位置)に応じて、走行用油圧モータ41のレギュレータ41Aを制御する。即ち、コントローラ43は、速度切換えスイッチ42が低速位置のときは、走行用油圧モータ41が大容量となるようにレギュレータ41Aを制御し、速度切換えスイッチ42が高速位置のときは、走行用油圧モータ41が小容量となるようにレギュレータ41Aを制御する。
この場合、走行用油圧モータ41のレギュレータ41Aは、本発明による速度制限装置を構成している。即ち、コントローラ43は、モード切換えスイッチ32がON位置のときは、OFF位置のときよりも、下部走行体2の走行速度を制限する構成としている。具体的には、コントローラ43は、モード切換えスイッチ32がON位置のときは、速度切換えスイッチ42が高速位置に切換えられても、レギュレータ41Aを大容量に維持することにより、下部走行体2の高速走行を禁止する構成としている。即ち、コントローラ43は、モード切換えスイッチ32がOFF位置のときは、下部走行体2の低速走行と高速走行との両方を許可し、モード切換えスイッチ32がON位置のときは、下部走行体2の低速走行のみを許可する構成としている。
次に、コントローラ43で行われる処理について、図6の流れ図を用いて説明する。なお、コントローラ43で行われる処理を、リレーを含む回路で行うようにしてもよい。
コントローラ43への通電等により図6の処理がスタートすると、S11では、モード切換えスイッチ32がON位置であるか否かを判定する。S11で「YES」、即ち、モード切換えスイッチ32がON位置であると判定された場合は、S12に進み、発電用切換弁36をONにし、S13で、高速走行を不許可とする。この場合は、速度切換えスイッチ42が高速位置に切換えられても、走行用油圧モータ41は大容量が維持され、下部走行体2の高速走行が禁止される。
一方、S11およびS12で「NO」、即ち、モード切換えスイッチ32がOFF位置であり、かつ、リフティングマグネット11が吸着中でないと判定された場合は、S15に進み、発電用切換弁36をOFFにし、S16で、高速走行を許可する。即ち、S16では、高速走行と低速走行との両方を許可する。この場合は、速度切換えスイッチ42が高速位置に切換えられると、走行用油圧モータ41が小容量となり、下部走行体2を高速走行させることができる。
第2の実施の形態は、上述のようにモード切換えスイッチ32がON位置のときは高速走行を禁止するもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。即ち、第2の実施の形態では、発電機30から制御盤31に発電電力が供給されているときは、低速走行することができても、高速走行することができない。このため、走行時の上部旋回体12の振動、延いては、制御盤31の振動を抑制することができる。これにより、例えば制御盤31が上部旋回体12の高い位置に配置されていても、電力が供給される制御盤31内部のスイッチが、走行中に不必要に接続(開閉)されることを抑制できる。この結果、制御盤31の溶着、焼き付き等の故障を抑制することができる。
次に、図7および図8は、第3の実施の形態を示している。第3の実施の形態の特徴は、モード切換えスイッチが電動作業ONモードのときは、走行用方向制御弁に供給されるパイロット圧を低くし、走行用油圧モータに供給される圧油の流量を抑えることにより、走行速度を制限する構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第3の実施の形態では、第1の実施の形態で用いた走行用パイロット圧切換弁37を備えていない。一方、第3の実施の形態では、パイロット油圧ポンプ26と走行用レバー・ペダル装置27との間に、電磁リリーフ弁51が設けられている。電磁リリーフ弁51は、例えば、電磁比例パイロットリリーフ弁、電磁比例リリーフ弁等により構成されている。電磁リリーフ弁51は、コントローラ52を介してモード切換えスイッチ32と接続されている。電磁リリーフ弁51は、モード切換えスイッチ32の操作に応じて、走行用方向制御弁25に対するパイロット圧(走行用パイロット圧)を可変に制御するものである。電磁リリーフ弁51は、本発明による速度制限装置を構成している。
コントローラ52は、モード切換えスイッチ32の操作に応じて電磁リリーフ弁51の設定圧を可変に制御する。即ち、コントローラ52は、モード切換えスイッチ32がOFF位置のときは、電磁リリーフ弁51の設定圧を高くする。一方、コントローラ52は、モード切換えスイッチ32がON位置のときは、電磁リリーフ弁51の設定圧を、モード切換えスイッチ32がOFF位置のときよりも低くする。
例えば、モード切換えスイッチ32がOFF位置のときの電磁リリーフ弁51の設定圧を所定値Rとした場合、モード切換えスイッチ32がON位置のときの電磁リリーフ弁51の設定圧は、所定値Rよりも小さくする。これにより、モード切換えスイッチ32がON位置のときは、走行用方向制御弁25に供給されるパイロット圧を低くすることができ、走行用方向制御弁25のスプールの変位量が小さくなる。この結果、走行用油圧モータ4に供給される圧油の流量を抑えることができ、下部走行体2の走行速度を低くすることができる。
次に、コントローラ52で行われる処理について、図8の流れ図を用いて説明する。なお、図8中のS21、S22、S24、S25は、第1の実施の形態の図4中のS1、S2、S4、S5と同様であるため、その説明を省略する。
S23では、モード切換えスイッチ32がON位置であるため、電磁リリーフ弁51の設定圧を、モード切換えスイッチ32がOFF位置のときの設定圧(所定値R)よりも低くする。これにより、走行用方向制御弁25に供給されるパイロット圧(走行用パイロット圧)を、所定値Rよりも低くする。これにより、走行用油圧モータ4に供給される圧油の流量を抑えることができ、下部走行体2の走行速度を低くすることができる。
一方、S26では、モード切換えスイッチ32がOFF位置であるため、電磁リリーフ弁51の設定圧を、モード切換えスイッチ32がON位置のときよりも高い設定圧(所定値R)にする。これにより、走行用方向制御弁25に供給されるパイロット圧を、モード切換えスイッチ32がON位置のときよりも高い所定値Rとする。これにより、下部走行体2の走行速度の制限を解除することができる。
第3の実施の形態は、上述のようにモード切換えスイッチ32がON位置のときは走行用方向制御弁25に供給されるパイロット圧を低くするもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。即ち、第3の実施の形態も、第1の実施の形態と同様に、制御盤31の溶着、焼き付等の故障を抑制することができる。
次に、図9および図10は、第4の実施の形態を示している。第4の実施の形態の特徴は、モード切換えスイッチが電動作業ONモードのときは、電動作業OFFモードのときよりも、車体が加速するときの加速度、または、車体が減速するときの減速度を小さくする構成としたことにある。なお、第4の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第4の実施の形態では、第1の実施の形態で用いた走行用パイロット圧切換弁37を備えていない。一方、第4の実施の形態では、走行用レバー・ペダル装置27と走行用方向制御弁25のパイロット部25A,25Bとの間にそれぞれ比例電磁弁61を設けている。比例電磁弁61は、コントローラ63と接続され、本発明による速度制限装置を構成している。また、走行用レバー・ペダル装置27と比例電磁弁61との間には、それぞれ圧力センサ62を設けている。圧力センサ62は、走行用レバー・ペダル装置27と比例電磁弁61との間のパイロット圧、即ち、走行用レバー・ペダル装置27の操作量に対応するパイロット圧を検出するものである。圧力センサ62は、コントローラ63と接続されている。
コントローラ63は、モード切換えスイッチ32がON位置のときに、圧力センサ62の検出値に応じて比例電磁弁61を制御することにより、走行用方向制御弁25のパイロット部25A,25Bに供給されるパイロット圧を制御する。例えば、モード切換えスイッチ32がOFF位置のときと比較して、パイロット圧の最大値を小さくし、かつ、パイロット圧の変化の傾きを小さくする。これにより、走行用油圧モータ4に供給される圧油の流量を抑えることができ、下部走行体2の走行速度を低くする(制限する)ことができる。これと共に、下部走行体2の走行開始時または走行停止時に、走行用油圧モータ4に供給される圧油の流量の変化を緩やかにすることができ、下部走行体2が加速するときの加速度、または、減速するときの減速度を小さくすることができる。
次に、コントローラ63で行われる処理について、図10の流れ図を用いて説明する。なお、図10中のS31、S32、S34、S35は、第1の実施の形態の図4中のS1、S2、S4、S5と同様であるため、その説明を省略する。
S33では、モード切換えスイッチ32がON位置であるため、比例電磁弁61によりパイロット圧を制限(調整)する。これにより、モード切換えスイッチ32がOFF位置のときよりも、下部走行体2の走行速度が低くなり、かつ、下部走行体2の加速度または減速度を小さくすることができる。一方、S36では、モード切換えスイッチ32がOFF位置であるため、比例電磁弁61によりパイロット圧の制限(調整)を行わない。例えば、比例電磁弁61を最大開位置とする。これにより、下部走行体2の走行速度の制限を解除することができる。
第4の実施の形態は、上述のようにモード切換えスイッチ32がON位置のときは、走行用方向制御弁25に供給されるパイロット圧を比例電磁弁61により制御(調整)するもので、その基本的作用については、上述した第1の実施の形態によるものと格別差異はない。
特に、第4の実施の形態では、モード切換えスイッチ32がON位置(電動作業ONモード)のときは、OFF位置(電動作業OFFモード)のときよりも、下部走行体2が加速するときの加速度を小さくする。また、モード切換えスイッチ32がON位置のときは、OFF位置のときよりも、下部走行体2が減速するときの減速度を小さくする。このため、下部走行体2が加速するときの制御盤31の振動を抑制することができる。また、下部走行体2が減速するときの制御盤31の振動を抑制することができる。これにより、制御盤31の溶着、焼き付き等の故障を抑制することができる。
次に、図11および図12は、第5の実施の形態を示している。第5の実施の形態の特徴は、リフティングマグネットにより吸着物を吸着しているときは、吸着物を吸着していないときよりも、車体の走行速度を制限する構成としたことにある。なお、第5の実施の形態では、上述した第2の実施の形態および第3の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第5の実施の形態では、リフティングマグネット11により吸着物を吸着しているときは、吸着物を吸着していないときよりも、下部走行体2の走行速度を制限する吸着時走行速度制限装置を備えている。この場合、吸着時走行速度制限装置は、電磁リリーフ弁51により構成している。即ち、コントローラ71は、リフティングマグネット11により吸着物を吸着しているときは、吸着物を吸着していないときよりも、電磁リリーフ弁51の設定圧を低くする。これにより、下部走行体2の走行速度を、吸着物を吸着していないときよりも低くする構成としている。
次に、コントローラ71で行われる処理について、図12の流れ図を用いて説明する。なお、図12中のS41〜S46は、第2の実施の形態の図6中のS11〜S16と同様であるため、その説明を省略する。
S43に続くS47では、リフティングマグネット11を用いて吸着物を吸着しているか否かを判定する。この判定は、吸着スイッチ33と釈放スイッチ34の操作から判定することができる。S47で「YES」、即ち、吸着中であると判定されると、S48に進む。S48では、電磁リリーフ弁51の設定圧を、吸着物を吸着していないときの設定圧(例えば、所定値R)よりも低くする。これにより、走行用方向制御弁25に供給されるパイロット圧(走行用パイロット圧)を、所定値Rよりも低くする。これにより、走行用油圧モータ4に供給される圧油の流量を抑えることができ、吸着物を吸着していないときよりも下部走行体2の走行速度を低くすることができる。一方、S47で「NO」、即ち、吸着中でないと判定されると、S48に進むことなくリターンする。
第5の実施の形態は、上述のようにリフティングマグネット11により吸着物を吸着しているときに下部走行体2の走行速度を低くするもので、その基本的作用については、上述した第1ないし第3の実施の形態によるものと格別差異はない。
特に、第5の実施の形態では、リフティングマグネット11により吸着物を吸着しているときに、下部走行体2の走行速度が制限され、下部走行体2の振動、延いては、制御盤31の振動をより抑制することができる。これにより、制御盤31の溶着、焼き付き等の故障を抑制することができることに加えて、走行中にリフティングマグネット11から吸着物が落下することを抑制することができる。
なお、上述した各実施の形態では、電力の供給により作動する電動作業具を、給電によって磁力が発生するリフティングマグネット11とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、電力の供給により作動する各種の電動作業具を用いることができる。
上述した各実施の形態では、発電機30による発電とその停止とを発電用切換弁36により切換える構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、発電機と発電用油圧モータとの間にクラッチを設け、該クラッチを用いて発電機による発電とその停止とを切換える構成としてもよい。
上述した各実施の形態では、走行用方向制御弁25に供給されるパイロット圧を調整する(ゼロにする、ないし、小さくする)ことにより、下部走行体2の走行速度を制限する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、走行用油圧モータに圧油を供給する油圧ポンプ(メイン油圧ポンプ、走行用油圧ポンプ)の容量を調整する(例えば、容量を小さくする)ことにより、下部走行体2の走行速度を制限する構成としてもよい。
上述した各実施の形態では、走行用レバー・ペダル装置27をパイロット弁により構成した場合、即ち、走行用操作装置のパイロット信号としてパイロット圧を出力する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、走行用操作装置を電気レバーにより構成し、電気的なパイロット信号を出力する構成としてもよい。
さらに、各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。