JP6588327B2 - 剥離部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は複写機やレーザービームプリンタなどの電子写真装置に設置される定着ローラや定着ベルトなどの定着部材から用紙を剥離する剥離部材の製造方法に関する。
複写機やレーザービームプリンタなどの電子写真装置には、感光ドラム上に形成された静電潜像をトナーなどの現像剤を用いて用紙上に現像し、その後定着させるために加熱定着装置が設けられている。加熱定着装置は、現像剤を加熱溶融するとともに加圧することで用紙に定着させるための定着ローラや定着ベルトなどの定着部材を有している。
定着部材や、定着部材に用紙を加圧する加圧ローラなどには、用紙がローラなどに巻き付き円滑な動作の妨げになるのを防ぐために、現像剤が定着された用紙をローラなどから剥離するシート状の剥離部材が用いられている。例えば、特許文献1の剥離部材は、金属板の先端部にシリコーン系粘着剤を介してフッ素樹脂フィルムが折り返し貼付されており、その先端をローラの外周面近傍に設置し、用紙の端をすくい上げることにより、ローラに用紙が巻き付くことを防止している。また、このような、フッ素樹脂フィルムを貼付されてなる剥離部材は、例えば、特許文献2に記載の製造方法・装置などを用いて製造されている。この製造方法・装置では、皺や気泡の存在を極力抑えつつ、定着部材に近接する金属板の先端部にフッ素樹脂フィルムを折り返し貼付することができる。
特開2001−235959号公報 特開2005−181999号公報
しかしながら、近年の電子写真装置に採用される現像剤は、発色性を向上させるため、トナーの構成要素の一つであるバインダー樹脂も、透明度の高いポリエステル系に移行している。ポリエステル系バインダー樹脂をもつトナーは、非常に粘着性が高いため、特許文献1や特許文献2のように、フッ素樹脂フィルムを皺なく貼付されてなる剥離部材であっても、用紙が剥離部材に張り付くおそれがある。特に、定着直後に接触する剥離部材の先端部において張り付きやすい。近年における電子写真装置の高解像度化、印字速度の高速化、コンパクト化、両面コピー機能の内蔵による用紙の流れの複雑化などにより、用紙と剥離部材とが僅かでも張り付く(吸着する)と、ジャミングや用紙の折れが発生して所望の動作品質を維持できないおそれがある。
これを防止する方法として、通紙側表面に凹凸形状を設けて用紙との接触面積を低下させるため、下地となる金属板の先端部に凹凸加工などを施すことが考えられる。しかし、この場合、金属板の先端部近傍の加工となり、生産性に劣るおそれや、水平精度などの品質のバラツキが大きくなるおそれがある。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、金属板にフッ素樹脂などの非粘着性樹脂フィルムを貼付してなる構成の剥離部材において、定着直後の用紙の張り付きを長期間防止できる剥離部材を、高い生産性で、また、品質のバラツキがなく製造できる製造方法を提供することを目的とする。
本発明の剥離部材の製造方法は、金属板と該金属板に貼付された非粘着性樹脂フィルムとからなる剥離シートを有し、電子写真装置の定着部材に、該剥離シートの一長辺側の端部となる先端部を接触または近接させて、定着部材から用紙を剥離させる剥離部材の製造方法であって、該製造方法は、上記金属板への貼付前の上記非粘着性樹脂フィルムの通紙側表面の少なくとも一部に、該フィルムの長手方向に沿って複数の凹溝を形成する溝形成工程と、該溝形成工程で得られた非粘着性樹脂フィルムを、上記複数の凹溝が上記金属板の少なくとも通紙側表面の上記先端部の長手方向に沿って位置するように貼付するフィルム貼付工程とを備えてなることを特徴とする。
ここで「接触する」とは、剥離シートの一辺(先端部)が、ローラなどの定着部材の軸方向に対して線接触することをいう。また「近接する」とは、用紙がローラなどに巻き付くことを防止できる程度に、剥離シートの一辺(先端部)がローラに接近配置されていることをいう。なお、定着部材とは、未定着の用紙上の現像剤を加熱と同時に加圧することで用紙上に定着させる工程において、用紙と接触可能なローラ状、フィルム状またはベルト状などの種々形状を有する部材をいう。例えば、定着ローラ、加圧ローラ、定着ベルトなどである。
上記溝形成工程は、ゴムローラと上記凹溝を転写可能な回転部材とで上記非粘着性樹脂フィルムを挟み込み、連続的に加圧して、上記複数の凹溝を形成する工程であることを特徴とする。
上記回転部材の外周面が、斜歯ギヤ形状であり、上記複数の凹溝は、該形状により転写された、通紙方向に対して一定方向に傾斜し、かつ、一定の間隔で整列した筋状の溝であることを特徴とする。
上記製造方法は、上記溝形成工程後で上記フィルム貼付工程前に、上記複数の凹溝が形成された連続するフィルム材料から、上記複数の凹溝が上記先端部の長手方向に沿って位置する形状の非粘着性樹脂フィルムを切り抜く工程を有することを特徴とする。
上記非粘着性樹脂フィルムは、反通紙側表面に粘着剤層を有し、上記フィルム貼付工程は、上記非粘着性樹脂フィルムの上記粘着剤層側に、上記金属板の先端部を、該先端部から上記非粘着性樹脂フィルムの端部が突出するように配置した後、隣接する2つの柔軟体の隙間に上記非粘着性樹脂フィルムとともに上記金属板の先端部を押し込むことで、該先端部の両面を覆うように上記非粘着性樹脂フィルムを貼付する工程であることを特徴とする。
本発明の剥離部材の製造方法は、金属板への貼付前の非粘着性樹脂フィルムの通紙側表面の少なくとも一部に、該フィルムの長手方向に沿って複数の凹溝を形成する溝形成工程と、該溝形成工程で得られた非粘着性樹脂フィルムを、上記複数の凹溝が金属板の少なくとも通紙側表面の上記先端部の長手方向に沿って位置するように貼付するフィルム貼付工程とを備えてなるので、予めフィルム側に長手方向に沿って複数の凹溝が形成され、金属板側の凹凸加工などが不要であるため、生産性に優れるとともに、剥離シート先端部の水平精度(真直精度)を高く維持でき、品質のバラツキも少ない。この製造方法で得られた剥離部材は、通紙側表面の複数の凹溝を有するので、定着直後に用紙と接触する剥離シートの先端部において、非粘着性樹脂フィルム表面と用紙との接触面積が小さくなり低摩擦特性に優れ、定着直後の用紙の張り付きを長期間防止できる。これにより用紙のジャミングや折れを防止でき、耐久性に優れる。
溝形成工程は、ゴムローラと上記凹溝を転写可能な回転部材とで非粘着性樹脂フィルムを挟み込み、連続的に加圧して、上記凹溝を形成する工程であるので、特に生産性に優れる。
回転部材の外周面が、斜歯ギヤ形状であり、上記凹溝は、該形状により転写された、通紙方向に対して一定方向に傾斜し、かつ、一定の間隔で整列した筋状の溝であるので、特に低摩擦特性に優れ、定着直後の用紙の張り付きをより防止できる。また、用紙との接触が線状接触となり、画像の光沢ムラ、光沢スジなどの画像劣化を防止できる。
溝形成工程後でフィルム貼付工程前に、上記凹溝が形成された連続するフィルム材料から、上記凹溝が先端部の長手方向に沿って位置する形状の非粘着性樹脂フィルムを切り抜く工程を有するので、高い品質の剥離部材を生産できる。
非粘着性樹脂フィルムは、反通紙側表面に粘着剤層を有し、フィルム貼付工程は、該フィルムの粘着剤層側に、金属板の先端部を、該先端部から該フィルムの端部が突出するように配置した後、隣接する2つの柔軟体の隙間に非粘着性樹脂フィルムとともに金属板の先端部を押し込むことで、該先端部の両面を覆うように非粘着性樹脂フィルムを貼付する工程であるので、樹脂フィルムにおけるシワや気泡の存在を極力抑えることができる。また、貼付面側に突起部があっても樹脂フィルムを貼付できる。さらに、高価で大掛かりな自動貼り機械を必要としないので低コストで生産できる。
本発明の製造方法で得られる剥離部材を用いた定着装置の概要図である。 本発明の製造方法で得られる剥離部材の一例を示す斜視図である。 図2の剥離部材の剥離シートの一部拡大図および断面図である。 本発明の製造方法における溝形成工程の一例を示す図である。 凹溝からなる模様部を備えた連続するフィルム材料から非粘着性樹脂フィルムを切り抜く様子を示す模式図である。 凹溝からなる模様部を備えた連続するフィルム材料のロールを示す斜視図である。 本発明の製造方法におけるフィルム貼付工程の一例を示す図である。 基材をベース台に固定する図である。 キャリアーシートで支持した樹脂フィルムをカットする図である。 樹脂フィルムのカット治具を示す図である。 樹脂フィルムを基材に貼付する図である。 折り返し治具を示す図である。 折り返し治具を用いて樹脂フィルムを金属板の先端部に貼付する工程を示す図である。 折り返した樹脂フィルムをローラで固着させる図である。
本発明の製造方法で得られる剥離部材を用いた定着装置を図1に基づいて説明する。図1は剥離部材を用いたヒートローラ方式の定着装置の概要図である。定着装置は、ヒータ6aが内蔵され、矢印A方向に回転する定着ローラ6と、定着ローラ6に接触して矢印B方向に回転する加圧ローラ7と、定着ローラ6および加圧ローラ7が接触して形成されるニップ部8の付近に配置される剥離部材1とから構成される。用紙9上に形成されたトナー像がニップ部8で定着されて定着された画像となる。ニップ部8を通過した用紙9を定着ローラ6から剥離できるように、剥離部材1が定着ローラ6に接触または近接する位置に設けられている。
本発明の製造方法で得られる剥離部材の一例を図2および図3に基づいて説明する。図2は剥離部材の斜視図である。図2に示すように、剥離部材1は、剥離シート1aと、この剥離シート1aを支持固定する支持部材1bとを備えてなる。剥離シート1aは、平面形状が略長方形である金属板2に非粘着性樹脂フィルム4が貼付されてなる。図中の黒矢印が通紙方向であり、剥離シート1aの長手方向と通紙方向とは直交している。剥離シート1aおよび金属板2において、支持部材1bに支持固定される面の反対面が通紙側表面となる。剥離部材1における剥離シート1aの通紙方向上流側の端部である先端部1cを、定着ローラに近接する位置に配置して、定着ローラから剥がれた用紙の端部を拾い取る(図1参照)。この剥離部材1は、定着直後の用紙と接触する先端部1cにおいて、非粘着性樹脂フィルム4の表面に長手方向に沿って複数の凹溝5aからなる模様部5を有する。
図3(a)は剥離部材の剥離シートの一部拡大斜視図であり、図3(b)は該剥離シートの先端部の長手方向断面図である。図3(a)および図3(b)に示すように、金属板2の表面に粘着剤3を介して非粘着性樹脂フィルム4が貼付されている。非粘着性樹脂フィルム4は、金属板2の通紙側表面において、複数の凹溝5aが少なくとも先端部2aに位置するように貼付されている。非粘着性樹脂フィルム4により、トナーなどの現像剤が溶融状態で摺接しても付着することを防止できる。図3(a)に示す態様では、非粘着性樹脂フィルム4は、定着部材に接触または近接する通紙方向上流側の先端部を覆うように(巻き込むように)折り返して金属板2の裏表面に貼付され、かつ、非粘着性樹脂フィルム4表面の複数の凹溝5aが金属板2の先端部2aに位置している。
金属板2の先端部2aは、例えば、最先端2bから通紙方向下流側に4mm幅内の部分である。この金属板2の先端部2aが、剥離シート1aの先端部1cとなる。なお、剥離シートは、定着部材に先端部を接触または近接させて用紙を剥離するものであるから、剥離シートの先端部は通紙方向上流側の端部であり、上記の「最先端2b」は、この先端部2aにおける最も先端(定着部材側)の位置である。
複数の凹溝5aは、後述の溝形成工程において、回転部材から転写させられる形状であり、上述のとおり、金属板の少なくとも通紙側表面の上記先端部の長手方向に沿って位置している。凹溝(模様部)の形状は、用紙が貼り付かない程度の接触面積が得られる形状であれば特に限定されず、通紙方向に沿った直線筋状、通紙方向に対して一定方向に傾斜した直線筋状や、通紙方向に沿って曲がった曲線筋状で、一定間隔または不定間隔で離間して整列した任意の形状(幾何学模様など)を採用できる。
これらの中でも、図3(a)および図3(b)に示すような、通紙方向に対して一定方向に傾斜し、かつ、一定の間隔で整列した筋状の溝であることが好ましい。このような凹溝形状とすることで、定着直後の用紙の張り付きを防止しやすく、さらに、画像の光沢ムラ、光沢スジなどの画像劣化を防止できる。凹溝の深さは、非粘着性樹脂フィルムの厚みの20〜80%が好ましい。凹溝の深さが非粘着性樹脂フィルムの厚みの20%未満であると定着直後の用紙の張り付きを防止できるという効果に乏しく、80%を超える場合は非粘着性樹脂フィルムの強度が小さくなりフィルムが破れたり裂けたりあるいは取り扱い性が極端に低下するため好ましくない。また、隣り合う凹溝の間隔(ピッチ)は、0.1〜2.0mmが好ましい。凹溝の間隔が0.1mm未満であると薄い用紙の貼り付きを防止できず、2.0mmを超えると用紙が凹溝に引っ掛かり、ジャミングするため好ましくない。
非粘着性樹脂フィルム4において、複数の凹溝5aからなる模様部5を形成する範囲は、金属板2の先端部2aの位置を含む範囲であれば特に限定されないが、先端部2aの最先端2bから、剥離シート1aと支持部材1bとのレーザースポット溶接部を覆う範囲とすることが好ましい。レーザースポット溶接部を覆う範囲とすることで、レーザースポット溶接痕による非粘着性樹脂フィルム4の盛り上がりによる線状画像不具合の対策が可能となる。また、必要に応じて、非粘着性樹脂フィルム4を、金属板2の先端部2aを含めた通紙側表面の略全面に貼付し、その全面に複数の凹溝5aからなる模様部5を形成してもよい。
金属板2の材質としては、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス鋼などを用いることができる。特に、ステンレス鋼であれば錆びることがなく、加工が容易であり安価なため好ましい。また、金属板の板厚さは50〜300μmの範囲が好ましい。50μm未満では剥離力が確保されないおそれや、ジャミング時に変形するおそれがある。300μmをこえると剥離すべき用紙が、剥離シートの先端部に突き当たり、ジャミングの発生原因となるおそれがある。また、金属板2は、ローラの軸方向長さと略同じ長さの接触幅L(図2参照)を有している。接触幅が大きいことによってローラに対する単位面積当たりの接触圧力が小さくなりローラ表面の局部的な摩耗が防止できる。なお、ローラの軸方向長さと略同じ長さとは、上記効果が得られる程度の長さをいい、具体的には少なくともローラの軸方向長さの半分程度以上であって、ローラの軸方向長さと同じか僅かに長ければよい。
図3(a)などに示すように、金属板2の通紙方向上流側の先端部2aの厚さ方向を、エッジのない曲面とすることが好ましい。この端部の厚さ方向を曲面とすることで、定着ローラや定着ベルトなどの定着部材に対して定圧以上の圧接状態になった場合でも定着部材の表面を傷付けることがない。また、後述する柔軟体を用いた非粘着性樹脂フィルムの貼付時に、該フィルムが損傷することなどを防止できる。上記曲面は金属板を所定形状に加工した後で機械加工してもよいが、カッティングと同時に加圧成形することができるプレスカットにより加工することが望ましい。
図2に示すように、支持部材1bは金属厚板であり、支持部材1bの長手方向の左右には、剥離部材を定着装置本体に固定する等に使用される穴1dが設けられている。剥離シート1aの金属板2と、支持部材1bとは、溶接などにより接合されている。接合方法としては、金属板2の形状変化による先端部2aの水平精度の劣化を防止するため、長手方向に平行にスポット部を設けたレーザースポット溶接により接合することが好ましい。支持部材1bの材質としては、金属板2と同様に、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス鋼などを用いることができる。金属板と同様の理由でステンレス鋼が好ましい。また、支持部材1bを構成する金属厚板の板厚さは、金属板を取付ける強度を十分に確保するために、0.8mm以上が好ましい。
本発明の剥離部材の製造方法は、上記のような金属板と該金属板に貼付された非粘着性樹脂フィルムとからなる剥離シートを有する剥離部材の製造方法であり、特に該剥離シートの製造工程に特徴がある。すなわち、本発明の製造方法は、(1)金属板への貼付前の上記非粘着性樹脂フィルムの通紙側表面の少なくとも一部に、該フィルムの長手方向に沿って複数の凹溝を形成する溝形成工程と、(2)溝形成工程で得られた非粘着性樹脂フィルムを、上記複数の凹溝が金属板の少なくとも通紙側表面の上記先端部の長手方向に沿って位置するように貼付するフィルム貼付工程と、を備えてなる。
(1)溝形成工程
この工程は、金属板への貼付前の非粘着性樹脂フィルムの通紙側表面の少なくとも一部に、該フィルムの長手方向に沿って複数の凹溝を形成する工程である。複数の凹溝を形成する方法は特に限定されないが、生産性に優れることから、ギヤやローラを用いて転写する方法が好ましい。図4に溝形成工程の一例を示す。図4は、図3に示すような凹溝の模様部を形成する手段の斜視図である。図4(a)では、ウレタンゴムローラ13と、回転部材12とで、非粘着性樹脂フィルム4を挟み込み、回転部材12をウレタンゴムローラ13に押し付けるように連続的に加圧して、模様部5を構成する凹溝5aを形成している。ここで、ゴムローラ13のゴム硬度は、例えばショアA95であり、加えた荷重は、例えば5kgf〜20kgfである。また、回転部材12は、例えば外径φ20mm幅5mmの寸法であり、その外周面が斜歯ギヤ形状である。凹溝5aは該形状により転写されるため、模様部5は、通紙方向に対して一定方向に傾斜し、かつ、一定の間隔で整列した筋状の溝から構成される形状となる。このときの非粘着性樹脂フィルムは、フィルム単品か、非粘着性樹脂フィルムに粘着剤が塗布され、その上に離型紙を有するフィルム複合品であってもかまわない。
回転部材の形状は、転写形成する凹溝(模様部)の形状に合わせたものを用いる。例えば、模様部の形状を、通紙方向に沿った直線筋状で一定間隔に整列した形状とする場合、歯が傾斜していない通常のギヤ形状を採用すればよい。
非粘着性樹脂フィルムは、現像剤の付着が防止できる程度に非粘着性を有する樹脂フィルムであり、例えば、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、および、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体樹脂、ポリビニリデンフルオライド樹脂、ポリビニルフルオライド樹脂などの公知のフッ素樹脂からなるフィルムが使用できる。特に、PTFE樹脂、PFA樹脂、FEP樹脂、またはETFE樹脂からなるフッ素樹脂フィルムは、カラートナー(ポリエステル系バインダー樹脂を用いたトナーなど)に対する非粘着性にも優れており、また、耐熱性も十分に有する。なお、トナーに対する非粘着性を確保可能な範囲であれば、非粘着性樹脂フィルムをケッチェンブラックやアセチレンブラックなどのカーボン微粉末を配合した非粘着性樹脂から形成することによって、静電気による用紙剥離性能の低下を防止することもできる。
フッ素樹脂などの非粘着性樹脂フィルムの厚さは10〜200μmの範囲が好ましく、より好ましい範囲は40〜80μmである。10μm未満の厚さでは、凹溝形成時に破断するおそれや、貼付した後も僅かな摩耗によって金属板の先端部が露出するおそれがある。また、後述のフィルム貼付工程で皺になりやすく、取り扱いが困難になる。200μmをこえる厚さになると用紙剥離性能が低下するおそれがある。
また、非粘着性樹脂フィルムの厚さが、上記範囲であっても、斜歯ギヤ形状などの回転部材と挟み込む相手ローラ(加圧ローラ)が、金属ローラなどである場合は、凹溝形成時に破断のおそれがある。これに対して、相手ローラ(加圧ローラ)として、上記のようにゴムローラを採用することで、フィルムの破断を防止できる。ゴム硬度は特に限定されないが、ショアAで50〜100の範囲であることが好ましい。また、転写時の荷重は、凹溝の深さが非粘着性樹脂フィルムの厚みの20〜80%となるような荷重が好ましい。具体的には、回転部材の寸法が外径φ20mm幅5mmであれば、例えば5kgf〜20kgfの範囲であることが好ましい。なお、凹溝形成直後の凹溝深さから経時的に凹溝深さが戻り浅くなる場合があるが、本発明に係る剥離部材の製造から48時間後の凹溝深さにおいて非粘着性樹脂フィルムの厚みの20〜80%であれば製造上および使用上に問題は生じない。
図4(a)の方法で得られる凹溝付きフィルムは、図5に示すように、このフィルム材料から剥離シート単位で非粘着性樹脂フィルムを切り抜いて使用する材料として好適に使用できる。図5は、凹溝からなる模様部を備えた連続するフィルム材料から非粘着性樹脂フィルムを切り抜く様子を示す模式図である。図5では、溝形成工程で得られた連続するフィルム材料から、凹溝5aからなる模様部5が金属板の先端部の長手方向に沿って配置される形状の非粘着性樹脂フィルム4を、金属板に貼り付ける際の2つの基準穴14aを有するプレス型14で打ち抜いている。
また、図4(b)の方法は、図4(a)の方法と同様の方法であり、回転部材12の配置のみが異なる。具体的には、所定の幅の非粘着性樹脂フィルム4の片端部に回転部材12を配置し、この片端部に凹溝5aからなる模様部5が形成されている。また、図6に示すように、フィルム材料をロール状に巻き取った材料とできる。非粘着性樹脂フィルム4は、非常に薄いフィルムであり、模様部5は形成面の反対面からも視認できる。このロールを、例えば特許文献2のような自動貼り機械に装着して、後述のフィルム貼付工程において片端部の模様部が金属板の先端部の長手方向に沿って位置するように貼付できる。
(2)フィルム貼付工程
この工程は、溝形成工程で得られた非粘着性樹脂フィルムを、上記複数の凹溝が金属板の少なくとも通紙側表面の上記先端部の長手方向に沿って位置するように貼付する。図7にフィルム貼付工程の一例を示す。まず、図7(a)に示すように、自由端部を残して支持部材1bにレーザースポット溶接により接合した金属板2を準備する。1eはレーザースポット溶接痕である。次に、図7(b)に示すように、金属板2への貼付面である反通紙側表面に粘着剤層を有し、通紙側表面に模様部5が形成された非粘着性樹脂フィルム4を、その長手方向両端部を引っ張ることなく、該フィルムの幅方向端部に未貼付部分を残して、かつ該フィルムの長手方向に加圧しながら貼付する。ここで、複数の凹溝からなる模様部5が、金属板2の通紙側表面の先端部2aの長手方向に沿って位置するように位置決めする。次に、図7(c)に示すように、非粘着性樹脂フィルム4の幅方向未貼付部分を金属板2の最先端2bから裏面に、該フィルムの長手方向両端部を引っ張ることなく、折り返し仮貼付する。最後に、図7(d)に示すように、仮貼付した部分を、非粘着性樹脂フィルム4の長さ方向の略中央部を起点として長手方向に加圧しながら貼付して、裏面に固着させる。
金属板への非粘着性樹脂フィルムの貼付は、上記のように、粘着剤、特に、シリコーン系粘着剤を貼付面に介在させて行なうことが好ましい。シリコーン系粘着剤としては、例えば、SiO単位と(CHSiO単位とからなる共重合体とジオルガノポリシロキサン生ゴムを縮合させて得た粘着剤が挙げられる。シリコーン系粘着剤を介在させることで、金属板に強固に接着され定着温度においても接着効果が維持でき、粘着剤によるクッション効果も期待できる。その他、接着効果を高めるため、金属板への貼付面に、例えば、コロナ放電処理、スパッタエッチング処理、プラズマエッチング処理、金属ナトリウムによるTOS処理、紫外線照射処理などの表面処理を施すことが望ましい。
シリコーン系粘着剤の層の厚さは5〜50μmの範囲が好ましい。5μmより薄いと接着効果が十分に得られない場合がある。また、50μmより厚いと剥離部材全体として厚さが相対的に厚くなることにより用紙剥離性能が低下するおそれがある。また、金属板への非粘着性樹脂フィルムの貼付は、粘着剤を介在させずに行なうこともできる。例えば、貼付面(金属板の表面)をプラズマエッチング処理などで粗面化した後、非粘着性樹脂フィルムを加熱圧着する方法が挙げられる。
本発明のように表面に凹溝を加圧により転写形成した非粘着性樹脂フィルムを用いる場合、僅かな波打ちなどが発生することがあり、同様の凹溝加工のない従来のフィルムを用いる場合と比較して、凹溝の位置決めや折り返し貼付が容易ではない。フィルム貼付工程としてより好適な工程を図8〜図14に基づき説明する。
まず、図8に示すように、自由端部を残して支持部材1bにレーザースポット溶接により金属板2を接合してなる基材1a’を準備する。1eはレーザースポット溶接痕である。次に、基材1a’を保持するベース台10の2つの基準ピン10aを、基材1a’の2つの穴1dに挿入する。
図9(a)に示すように、金属板への貼付面である反通紙側表面にシリコーン系粘着剤3を有し、前工程で通紙側表面に模様部5が形成された非粘着性樹脂フィルム4について、その通紙側表面に粘着剤11a付きのキャリアーシート11を貼付して、これらから構成される複合フィルム4’を準備する。4aは離型紙である。なお、図9(a)は上図が平面図であり下図が側面図である。次に、図10に示すような、カット治具19を準備する。カット治具19は、木枠19bに、金属板に貼付する非粘着性樹脂フィルムの外周形状とベース台の基準ピンに合わせた位置にトムソン刃19aを固定している。図9(b)に示すように、このカット治具を用いて、複合フィルム4’の非粘着性樹脂フィルム4側から、離型紙4aと非粘着性樹脂フィルム4に切り込みを入れ、金属板に貼付する非粘着性樹脂フィルムの外周形状の切り込み4bが形成される。その際、キャリアーシート11までは切り込みを入れないようにする。また、同時に、キャリアーシート11には、基準ピンに合わせた基準穴11bが形成される。その後、図9(c)に示すように、切り込みが入った複合フィルム4’において、非粘着性樹脂フィルム4の中央部に更に2本の切り込み4cを入れる。
複合フィルム4’の中央部の離型紙を取り除く。図11に示すように、ベース台10に保持された基材1a’に対して、切り込みを入れた複合シート4’を、その基準穴11bにベース台10の基準ピン10aが挿入されるように載置する。この時、複合フィルム4’の中央部を先に基材1a’に接着して固着させる。続いて、中央部両側の剥離紙4a’を取り除き、基材1a’に接着して固着させる。次に、ベース台10上の複合フィルム4’のキャリアーシート11を非粘着性樹脂フィルム4より剥がし、その後、ベース台10より非粘着性樹脂フィルム4を貼付した基材1a’を取り外す。
図12に示すような、基材の長手方向より長いスポンジ体15を2枚立て重ね、これを保持器16で拘束した折り返し治具17を準備する。スポンジ体15は柔軟体であり、発泡させた柔らかい樹脂等から構成される。図13に示すように、この折り返し治具17を用い、非粘着性樹脂フィルム4を貼付した基材1a’における金属板2の先端部2aを、非粘着性樹脂フィルム4とともに、スポンジ体15の2枚間の隙間切欠き部15a(スポンジ体同士の接触部の上側端面を切り欠いた形状)よりスポンジ体間の隙間に、気泡が侵入しないように押し込んで挿入する。これにより、先端部2aの両面を覆うように非粘着性樹脂フィルム4が貼付される。最後に、図14に示すように、基材1a’を折り返し治具より取り出し、ローラ18で中央部より左右に非粘着性樹脂フィルム4を加圧して固着させて、剥離シートが完成する。
このようなフィルム貼付工程を採用することで、表面に凹溝を加圧により転写形成した非粘着性樹脂フィルムを用いる場合でも、高精度で該フィルムの貼付が可能であり、非粘着性樹脂フィルムにおけるシワや気泡の存在を極力抑えることができる。
本発明の剥離部材の製造方法は、金属板にフッ素樹脂などの非粘着性樹脂フィルムを貼付してなる構成の剥離部材において、定着直後の用紙の張り付きを長期間防止できる剥離部材を、高い生産性で、また、品質のバラツキがなく製造できるので、電子写真装置に設置される定着ローラなどの各種ローラから用紙を剥離するための剥離部材の製造方法として好適に利用できる。
1 剥離部材
2 金属板
3 シリコーン系粘着剤
4 非粘着性樹脂フィルム
5 複数の凹溝から形成される模様部
6 定着ローラ
7 加圧ローラ
8 ニップ部
9 用紙
10 ベース台
11 キャリアーシート
12 回転部材
13 ウレタンゴムローラ
14 プレス型
15 スポンジ体
16 保持器
17 折り返し治具
18 ローラ
19 カット治具

Claims (5)

  1. 金属板と該金属板に貼付された非粘着性樹脂フィルムとからなる剥離シートを有し、電子写真装置の定着部材に、該剥離シートの一長辺側の端部となる先端部を接触または近接させて、定着部材から用紙を剥離させる剥離部材の製造方法であって、
    該製造方法は、前記金属板への貼付前の前記非粘着性樹脂フィルムの通紙側表面の少なくとも一部に、該フィルムの長手方向に沿って複数の凹溝を形成する溝形成工程と、
    該溝形成工程で得られた非粘着性樹脂フィルムを、前記複数の凹溝が前記金属板の少なくとも通紙側表面の前記先端部の長手方向に沿って位置するように貼付するフィルム貼付工程とを備えてなることを特徴とする剥離部材の製造方法。
  2. 前記溝形成工程は、ゴムローラと前記複数の凹溝を転写可能な回転部材とで前記非粘着性樹脂フィルムを挟み込み、連続的に加圧して、前記複数の凹溝を形成する工程であることを特徴とする請求項1記載の剥離部材の製造方法。
  3. 前記回転部材の外周面が、斜歯ギヤ形状であり、
    前記複数の凹溝は、該形状により転写された、通紙方向に対して一定方向に傾斜し、かつ、一定の間隔で整列した筋状の溝であることを特徴とする請求項2記載の剥離部材の製造方法。
  4. 前記製造方法は、前記溝形成工程後で前記フィルム貼付工程前に、前記複数の凹溝が形成された連続するフィルム材料から、前記複数の凹溝が前記先端部の長手方向に沿って位置する形状の非粘着性樹脂フィルムを切り抜く工程を有することを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の剥離部材の製造方法。
  5. 前記非粘着性樹脂フィルムは、反通紙側表面に粘着剤層を有し、
    前記フィルム貼付工程は、前記非粘着性樹脂フィルムの前記粘着剤層側に、前記金属板の先端部を、該先端部から前記非粘着性樹脂フィルムの端部が突出するように配置した後、隣接する2つの柔軟体の隙間に前記非粘着性樹脂フィルムとともに前記金属板の先端部を押し込むことで、該先端部の両面を覆うように前記非粘着性樹脂フィルムを貼付する工程であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項記載の剥離部材の製造方法。
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