JP6517645B2 - 剥離部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は複写機やレーザービームプリンタなどの電子写真装置に設置される定着ローラや定着ベルトなどの定着部材から用紙を剥離する剥離部材の製造方法に関する。
複写機やレーザービームプリンタなどの電子写真装置には、感光ドラム上に形成された静電潜像をトナーなどの現像剤を用いて用紙上に現像し、その後定着させるために加熱定着装置が設けられている。加熱定着装置は、現像剤を加熱溶融するとともに加圧することで用紙に定着させるための定着ローラや定着ベルトなどの定着部材を有している。
定着部材や、定着部材に用紙を加圧する加圧ローラなどには、用紙がローラなどに巻き付き円滑な動作の妨げになるのを防ぐために、現像剤が定着された用紙をローラなどから剥離するシート状の剥離部材が使用されている。例えば、特許文献1の剥離部材は、金属板の先端部にシリコーン系粘着剤を介してフッ素樹脂フィルムが折り返し貼付されており、その先端をローラの外周面近傍に設置し、用紙の端をすくい上げることにより、ローラに用紙が巻き付くことを防止している。
このようなフッ素樹脂フィルムが貼付されてなる剥離部材の製造方法として、特許文献2が提案されている。特許文献2では、フッ素樹脂フィルムにおけるシワや気泡の存在を極力抑えた剥離部材を得るために、平板状の基材の一辺の縁端を巻き込むように、かつ、該縁端の辺の両端に引っ張り部を有するように、フッ素樹脂フィルムにより基材の上記縁端およびその周辺部を挟み込み、引っ張りしろの両端を引っ張ることでフッ素樹脂フィルムに張力をかけつつ、該フッ素樹脂フィルムにより基材が挟み込まれた部分を加圧することで、フッ素樹脂フィルムを基材に貼付している。
しかし、この方法で得られた剥離部材は、フッ素樹脂フィルムに張力をかけた状態で貼付しているため、長期使用によって接着力が低下した場合、フッ素樹脂フィルムが縮み、露出した粘着剤にトナーが付着し用紙が汚れる懸念がある。
これに対して、特許文献3では、フッ素樹脂フィルムを張力がかからないように基材に貼付する製造方法などが提案されている。しかし、この方法では、高価で大掛かりな自動貼り機械を使用する上、貼付面側に突起などの凹凸があると貼付できず、剥離部材の設計において一部制約があった。
特開2001−235959号公報 特開2003−122174号公報 特開2005−181999号公報
定着部材としては、フッ素樹脂フィルムを貼付した剥離部材が優れた定着特性を示すと考えられるが、従来の製造技術では、それぞれ上述のような懸念点を抱えていることから製造方法の更なる改良が望まれている。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、品質のバラつきがなく長期使用に耐え得る優れた剥離部材を、安価で簡易な手段で生産性よく製造できる剥離部材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の剥離部材の製造方法は、金属板または樹脂板からなる基材と、該基材に貼付された非粘着性樹脂フィルムとからなる剥離シートを有し、電子写真装置の定着部材に、該剥離シートの一長辺側で通紙方向上流側の端部となる先端部を接触または近接させて、上記定着部材から用紙を剥離させる剥離部材の製造方法であって、上記剥離シートの上記先端部に対応する上記基材の先端部に、反通紙側表面に粘着剤層を有する非粘着性樹脂フィルムを貼付するフィルム貼付工程を備え、該フィルム貼付工程は、上記非粘着性樹脂フィルムの上記粘着剤層側に、上記基材の先端部の先端縁を、該先端縁から上記非粘着性樹脂フィルムの端部が突出するように配置した後、上記非粘着性樹脂フィルムに、該基材の長手方向一方側端部から他方側端部に向けて順に複数のローラを押し当てて、該非粘着性樹脂フィルムを上記基材の先端縁を巻き込むようにして該基材の先端部の両面に貼付する工程であることを特徴とする。
ここで「接触する」とは、剥離シートの一辺(先端部)が、ローラなどの定着部材の軸方向に対して線接触することをいう。また「近接する」とは、用紙がローラなどに巻き付くことを防止できる程度に、剥離シートの一辺(先端部)がローラに接近配置されていることをいう。なお、定着部材とは、未定着の用紙上の現像剤を加熱と同時に加圧することで用紙上に定着させる工程において、用紙と接触可能なローラ状、フィルム状またはベルト状などの種々形状を有する部材をいう。例えば、感光ドラム、定着ローラ、加圧ローラなどである。
上記フィルム貼付工程において、上記ローラとして順に第1〜第5のローラを用い、(1)上記第1のローラで上記非粘着性樹脂フィルムを上記基材の表面に対して10°以上50°未満の角度となるように折り曲げ、(2)上記第2のローラで上記非粘着性樹脂フィルムを上記基材の表面に対して50°以上85°未満の角度となるように折り曲げ、(3)上記第3のローラで上記非粘着性樹脂フィルムを上記基材の先端縁を巻き込むようにして上記基材の表面に対して100°以上165°未満の角度となるように折り曲げ、(4)上記第4のローラおよび上記第5のローラで上記基材の先端部を挟み込んで、上記非粘着性樹脂フィルムを該基材の先端部の両面に貼付することを特徴とする。
上記ローラが、ローラ本体と該ローラ本体を回転自在に支持するローラ軸とからなり、該ローラ本体が、ゴム材、発泡材、または樹脂材からなることを特徴とする。また、上記ローラ本体の硬度が、ショアA10〜ショアA90の範囲内であることを特徴とする。ここで、ショアAは、JIS K6253に準拠したデュロメータA硬度である。
本発明の剥離部材の製造方法は、フィルム貼付工程として、非粘着性樹脂フィルムの粘着剤層側に、基材の先端部の先端縁を、該先端縁から非粘着性樹脂フィルムの端部が突出するように配置した後、この非粘着性樹脂フィルムに、該基材の長手方向一方側端部から他方側端部に向けて順に複数のローラを押し当てて、該非粘着性樹脂フィルムを基材の先端縁を巻き込むようにして該基材の先端部の両面に貼付する工程を有するので、非粘着性樹脂フィルムをシワの発生や気泡の含有を抑えつつ貼付でき、品質のバラつきがない剥離部材が得られる。また、貼付時に非粘着性樹脂フィルムに張力をかけないので、得られた剥離部材は、樹脂フィルムの縮みによる問題が生じず、長期使用に耐え得る。これらより、長期間にわたり、用紙へのトナー汚染が発生することがなく、高画質の記録画像を取得し続けることができる。さらに、貼付面に突起部などがあっても非粘着性樹脂フィルムを貼付できる。
また、貼付に用いるローラ装置は、ローラとリニアガイドなどから構成される簡易な装置であるので、装置コストを低く抑えられる。また、ローラ群を基材の片端部から他端部まで走らせることで、非粘着性樹脂フィルムを貼付(折り曲げ)できるので、剥離部材を短時間で量産できる。
本発明の剥離部材の製造方法の概略を示す図である。 基材などをベース台に固定する手順を示す図である。 非粘着性樹脂フィルムをカットする手順を示す図である。 非粘着性樹脂フィルムのカット治具を示す図である。 非粘着性樹脂フィルムを基材に貼付する手順を示す図である。 本発明の製造方法に用いるローラ装置を示す図である。 ローラ装置による貼付工程を示す図である。 剥離部材を用いた定着装置の概要図である。 剥離部材の一例を示す斜視図および一部拡大図である。
本発明の剥離部材の製造方法は、基材と該基材に貼付された非粘着性樹脂フィルムとからなる剥離シートを有する剥離部材の製造方法であり、特に剥離シートの製造工程に特徴がある。この製造工程の概略を図1に示す。図1に示すように、この製造工程には、(A)準備工程と、(B)フィルム貼付工程とが含まれる。ここで、(A)の準備工程は、基材2の先端部2aの先端縁2bから非粘着性樹脂フィルム4の端部が突出するように、非粘着性樹脂フィルム4が粘着剤層を介して片面に貼付された基材(複合材1’)を予め準備する工程である。(B)のフィルム貼付工程は、準備工程で用意された基材(複合材1’)に対して、突出している非粘着性樹脂フィルム4に、基材2の長手方向一方側端部から他方側端部に向けて順に複数のローラを押し当てて、非粘着性樹脂フィルム4を基材2の先端縁2bを順に巻き込むようにして先端部2aの両面に貼付する工程である。以下、図2〜図7を参照しながら、これらの工程を説明する。
(A)準備工程
まず、図2に示すように、自由端部を残して支持部材1bにレーザースポット溶接により基材2を接合してなる複合材1’を準備する。1dはレーザースポット溶接痕である。次に、複合材1’を保持するベース台10の2つの基準ピン10aを、複合材1’の2つの穴5に挿入する。
図3(a)に示すように、基材への貼付面である反通紙側表面にシリコーン系の粘着剤層3を有する非粘着性樹脂フィルム4について、その通紙側表面に粘着剤11a付きのキャリアーシート11を貼付して、これらから構成される複合フィルム4’を準備する。4aは離型紙である。なお、図3(a)は上図が平面図であり下図が側面図である。次に、図4に示すような、カット治具12を準備する。カット治具12は、木枠12bに、基材に貼付する非粘着性樹脂フィルムの外周形状とベース台の基準ピンに合わせた位置にトムソン刃12aを固定している。図3(b)に示すように、このカット治具を用いて、複合フィルム4’の非粘着性樹脂フィルム4側から、離型紙4aと非粘着性樹脂フィルム4に切り込みを入れ、基材に貼付する非粘着性樹脂フィルムの外周形状の切り込み4bが形成される。その際、キャリアーシート11までは、この外周形状の切り込みを入れないようにする。また、同時に、キャリアーシート11には、基準ピンに合わせた基準穴11bが形成される。その後、図3(c)に示すように、切り込みが入った複合フィルム4’において、非粘着性樹脂フィルム4の中央部に更に2本の切り込み4cを入れる。
複合フィルム4’の中央部の離型紙を取り除く。図5に示すように、ベース台10に保持された複合材1’に対して、切り込みを入れた複合シート4’を、その基準穴11bにベース台10の基準ピン10aが挿入されるように載置する。この時、複合フィルム4’の中央部を先に複合材1’に接着して固着させる。続いて、中央部両側の剥離紙4a’を取り除き、複合材1’に接着して固着させる。次に、ベース台10上の複合フィルム4’のキャリアーシート11を非粘着性樹脂フィルム4より剥がし、その後、ベース台10より非粘着性樹脂フィルム4を貼付した複合材1’を取り外す。
このような準備工程により、基材2の先端部2aの先端縁2bから非粘着性樹脂フィルム4の端部が突出するように、非粘着性樹脂フィルム4が粘着剤層を介して片面に貼付された基材(複合材1’)が得られる。非粘着性樹脂フィルム4における突出部分4aが、基材2に対する未貼付部分である。
なお、本発明の製造方法では、この準備工程については、上記基材(複合材1’)を準備できる手順であれば、他の公知の方法を採用してもよい。非粘着性樹脂フィルム4に腰の弱い材質を使用する場合や、フィルム表面に凹形状を形成している場合などは、特に上述の図2〜図5に示すような準備工程を採用することが好ましい。
(B)フィルム貼付工程
フィルム貼付工程を図6および図7に基づき説明する。このフィルム貼付工程では、図6に示すローラ装置20を使用する。図6に示すように、ローラ装置20は、5つのローラ21〜25と、これらのローラを基材2に対して移動させるリニアガイド26とを有する。リニアガイド26は、基材2の長手方向一方側端部(図中上側)から他方側端部(図中下側)に向けて、ローラ21〜25からなるローラ群全体を移動させるものである。各ローラは、それぞれ、円筒形状のローラ本体と、このローラ本体の円筒中心軸に配置され該ローラ本体を回転自在に支持するローラ軸とから構成されている。
これらのローラは、リニアガイド26によるローラ群の移動方向上流側から、ローラ21からローラ23の順に所定間隔を空けて横並びに配置され、ローラ23から所定間隔を空けた横並びの位置で、ローラ24とローラ25とが隙間を空けて縦並びに配置されている。このローラ群は、リニアガイド26により一体として支持されており、ローラ群の移動に際して、初期の各ローラ同士の位置関係(ローラ間隔など)は変動しない。
第1のローラ21から第3のローラ23までの3つのローラは、非粘着性樹脂フィルムの折り曲げに使用され、第4のローラ24と第5のローラ25は、非粘着性樹脂フィルムの貼付の仕上げに使用される。ローラ本体の表面(円筒面)が、基材2の上面(非粘着性樹脂フィルム4が貼付されている面)となす角度(以下、単に「傾斜角度」ともいう)は、ローラ毎に異なっている。この形態では、ローラ本体は円筒形状であり、その円筒中心軸にローラ軸が配置される構成であるため、上記の傾斜角度は、基材2の上面とローラ軸とがなす角度と同じである。
折り曲げ用のローラ21〜23における傾斜角度は、非粘着性樹脂フィルム4を段階的に折り曲げるために、リニアガイド26の移動方向上流側から順に、段階的に大きくなるように設定する。また、仕上げ用のローラ24とローラ25は、いずれも基材2の上面に対して平行であり、第4のローラ24は基材より下方の空間に位置し、第5のローラ25は基材より上方の空間に位置する。この一対のローラ24とローラ25とで、基材2を両面側から挟み込んで、非粘着性樹脂フィルム4を基材2の先端部両面のそれぞれに押圧して貼付する。5つのローラ21〜25は、このような配置関係の下、非粘着性樹脂フィルム4を貼付するに際して、非粘着性樹脂フィルム4に対してローラ本体の表面(円筒面)において接する。
基材2の真上方向からみると、各ローラのローラ軸は、進行方向(基材2の先端縁2bに沿った方向)に対して垂直または若干傾斜している。折り曲げ用のローラ21〜23においては、ローラ本体の先端側が進行方向に対して若干先行するように、ローラ軸を進行方向に対して若干傾斜(1°〜5°程度)させることが好ましい。
非粘着性樹脂フィルム4が粘着剤層を介して片面に貼付された基材(複合材1’)に対して、上記の順で配置されたローラ21〜25を、ローラ21を先頭として、基材2の長手方向一方側端部(図中上側)から導入し、先端縁2bと平行な方向にローラ群を進行させる。進行はリニアガイド26により行なう。これにより、各ローラは、21、22、23、24と25の組、の順に、基材2の長手方向一方側端部(図中上側)から導入される。折り曲げ用のローラ21〜23が、ローラの傾斜角度に応じて、非粘着性樹脂フィルム4を基材2の上面から下面の方向に次第に折り曲げつつ進行するとともに、これに後続して、ローラ24とローラ25が、基材2を下面および上面の各方向から押圧しつつ、基材2の他方側端部(図中下側)に向けて進行する。
より詳細には、図6および図7に示すように、非粘着性樹脂フィルム4における基材2の先端縁2bより突出した突出部分4aを、先端縁2bの片端部より順に、(1)第1のローラ21で基材2の上面に対して10°以上50°未満の角度となるように折り曲げ(図7(a))、(2)第2のローラ22で非粘着性樹脂フィルム4を基材2の上面に対して50°以上85°未満の角度となるように折り曲げ(図7(b))、(3)第3のローラ23で非粘着性樹脂フィルム4を基材2の先端縁2bを巻き込むようにして基材2の上面に対して100°以上165°未満の角度となるように折り曲げ(図7(c))、(4)第4のローラ24および第5のローラ25で基材2の先端部2aを挟み込んで、非粘着性樹脂フィルム4を貼付して固着させる(図7(d))。(4)の貼付は、それまでの工程において、基材2と非粘着性樹脂フィルム4との間に包含された気泡を押し出しながら行なう。そして、ローラ24とローラ25が、他方の端部までを押圧し、この端部をこえた時点で、非粘着性樹脂フィルム4を基材2に貼付する作業が完了し、図6に示すように剥離部材1が得られる。
より好ましい製造工程としては、上記(1)〜(3)について、(1)第1のローラ21で基材2の上面に対して10°〜30°の角度となるように折り曲げ、(2)第2のローラ22で非粘着性樹脂フィルム4を基材2の上面に対して50°〜80°の角度となるように折り曲げ、(3)第3のローラ23で非粘着性樹脂フィルム4を基材2の先端縁2bを巻き込むようにして基材2の上面に対して130°〜160°の角度となるように折り曲げる。このような角度で逐次折り曲げることで、より綺麗に非粘着性樹脂フィルムを貼付できる。
また、複合材1’の最初の配置は、非粘着性樹脂フィルム4が貼付された面を鉛直方向上側として配置することが好ましい。非粘着性樹脂フィルム4の突出部分4aは、非粘着性樹脂フィルム自体の腰の強さにより、水平を保っているが、自重により巻き付け方向に若干曲がっている方が、第1のローラ21の導入が円滑となる。
各ローラのローラ本体は、ゴム材、発泡材、または樹脂材などから形成される。ローラ本体の硬度としては、ショアA10〜ショアA90の範囲内であることが好ましい。
また、各ローラのローラ本体の硬度について、第1のローラ21を軟らかく、第2のローラ22を硬く、第3のローラ23を軟らかく、第4のローラと第5のローラ25を硬くすることが好ましい。すなわち、最初に導入されるローラ(第1のローラ21)と、基材の先端縁で折り返し大きく曲げることになるローラ(第3のローラ23)は、柔らかくして、それ以外の大きくは折り曲げないローラ(第2のローラ22、第4のローラ24、第5のローラ25)については、硬くしている。このような組み合わせとすることで、貼付工程において非粘着性樹脂フィルム4にシワを発生させることなく、また、非粘着性樹脂フィルム4の内部に気泡を残留させることなく、非粘着性樹脂フィルム4を基材2に対して綺麗に貼付できる。なお、上記「柔らかい」としたローラ本体の硬度は、ショアA10〜ショアA30の範囲内とし、「硬い」としたローラの硬度はショアA50〜ショアA90の範囲内とすることが好ましい。
以上、各図に基づきローラを5つ用いる場合を説明したが、本発明の製造方法はこれに限定されるものではない。ただし、折り曲げ用のローラは少なくとも2個以上設けることが好ましい。
基材の先端縁を回り込ませて非粘着性樹脂フィルムをシワや気泡なく貼付することは難易度が高い事項である。本発明の剥離部材の製造方法では、上述した連続したローラ群による折り曲げと押圧により、基材に対して非粘着性樹脂フィルムをシワや気泡なく貼付できる。また、貼付時に非粘着性樹脂フィルムに張力をかける必要がない。これらより、得られた剥離部材は、長期間にわたり、用紙へのトナー汚染の発生を防止できる。
本発明の製造方法で得られる剥離部材を用いた定着装置を図8に基づいて説明する。図8は剥離部材を用いたヒートローラ方式の定着装置の概要図である。定着装置は、ヒータ6aが内蔵され、矢印A方向に回転する定着ローラ6と、定着ローラ6に接触して矢印B方向に回転する加圧ローラ7と、定着ローラ6および加圧ローラ7が接触して形成されるニップ部8の付近に配置される剥離部材1とから構成される。用紙9上に形成されたトナー像がニップ部8で定着されて定着された画像となる。ニップ部8を通過した用紙9を定着ローラ6から剥離できるように、剥離部材1が定着ローラ6に接触または近接する位置に設けられている。
本発明の製造方法で得られる剥離部材の一例を図9に基づいて説明する。図9(a)は剥離部材の斜視図であり、図9(b)は剥離シートの一部拡大斜視図である。図9(a)に示すように、剥離部材1は、剥離シート1aと、この剥離シート1aを支持固定する支持部材1bとを備えてなる。剥離シート1aは、平面形状が略長方形である基材2に非粘着性樹脂フィルム4が貼付されてなる。図中の黒矢印が通紙方向であり、剥離シート1aの長手方向と通紙方向とは直交している。剥離シート1aおよび基材2において、支持部材1bに支持固定される面の反対面が通紙側表面となる。剥離部材1における剥離シート1aの一長辺側で通紙方向上流側の端部である先端部1cを、定着ローラに近接する位置に配置して、定着ローラから剥がれた用紙の端部を拾い取る(図8参照)。
図9(b)に示すように、基材2の表面に粘着剤3を介して非粘着性樹脂フィルム4が貼付されている。上述の製造方法により、非粘着性樹脂フィルム4は、基材2の先端部2aの先端縁2bを覆うように(巻き込むように)折り返して基材2の表裏両面に貼付されている。非粘着性樹脂フィルム4により、トナーなどの現像剤が溶融状態で摺接しても付着することを防止できる。
基材2の先端部2aは、例えば、先端縁2bから通紙方向下流側に4mm幅内の部分である。この基材2の先端部2aが、剥離シート1aの先端部1cとなる。なお、剥離シートは、定着部材に先端部を接触または近接させて用紙を剥離するものであるから、剥離シート1aの先端部1cは通紙方向上流側の端部であり、上記の「先端縁2b」は、基材2の先端部2aにおける最も先端(定着部材側)の位置である。
剥離シート1aには、必要に応じて、その表面に凹形状や模様を形成してもよい。これらの形状は、用紙が貼りつかない程度の接触面積が得られる形状であれば特に限定されず、通紙方向に沿った直線筋状、通紙方向に対して一定方向に傾斜した直線筋状や、通紙方向に沿って曲がった曲線筋状で、一定間隔または不定間隔で離間して整列した任意の形状(幾何学模様など)を採用できる。特に、通紙方向に対して一定方向に傾斜し、かつ、一定の間隔で整列した筋状の溝であることが好ましい。このような凹形状とすることで、定着直後の用紙の張り付きを防止しやすく、さらに、画像の光沢ムラ、光沢スジなどの画像劣化を防止できる。
基材2の材質としては、定着部材に剥離シートの先端部を安定して接触または近接できるものであれば特に限定されず、金属材や樹脂材を採用できる。金属材としては、例えば、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス鋼などを採用できる。特に、ステンレス鋼であれば錆びることがなく、加工が容易であり安価なため好ましい。樹脂材としては、例えば、液晶樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などを採用できる。樹脂材を用いる場合は、基材となる樹脂板を、これら樹脂材を用いて射出成形や押し出し成形により成形できる。
基材2とする金属板や樹脂板の板厚さは、50〜300μmの範囲が好ましい。50μm未満では剥離力が確保されないおそれや、ジャミング時に変形するおそれがある。300μmをこえると剥離すべき用紙が、剥離シートの先端部に突き当たり、ジャミングの発生原因となるおそれがある。また、基材2は、ローラの軸方向長さと略同じ長さの接触幅L(図9(a)参照)を有している。接触幅が大きいことによってローラに対する単位面積当たりの接触圧力が小さくなりローラ表面の局部的な摩耗が防止できる。なお、ローラの軸方向長さと略同じ長さとは、上記効果が得られる程度の長さをいい、具体的には少なくともローラの軸方向長さの半分程度以上であって、ローラの軸方向長さと同じか僅かに長ければよい。
図9(b)に示すように、基材2の通紙方向上流側の先端部2aの厚さ方向を、エッジのない曲面とすることが好ましい。この端部の厚さ方向を曲面とすることで、定着ローラや定着ベルトなどの定着部材に対して定圧以上の圧接状態になった場合でも定着部材の表面を傷付けることがない。また、上述のフィルム貼付工程における、ローラを用いた非粘着性樹脂フィルムの貼付時に、該フィルムが損傷することなどを防止できる。基材2を金属板とする場合、上記曲面は金属板を所定形状に加工した後で機械加工してもよいが、カッティングと同時に加圧成形することができるプレスカットにより加工することが望ましい。
図9(a)に示すように、支持部材1bは厚板であり、支持部材1bの長手方向の左右には、剥離部材を定着装置本体に固定する等に使用される穴5が設けられている。支持部材1bの材質は、上述の基材2と同様のものを採用できる。支持部材1bを構成する厚板の板厚さは、基材2を取付ける強度を十分に確保するために、0.8mm以上が好ましい。
基材2と支持部材1bとの固定方法は、特に限定されない。基材2が金属板であり、支持部材1bが金属厚板である場合は、溶接などにより接合される。溶接により接合する場合、基材2の形状変化による先端部2aの水平精度の劣化を防止するため、長手方向に平行にスポット部を設けたレーザースポット溶接により接合することが好ましい。レーザースポット溶接の溶接痕は、基材の波打ち現象の発生を抑制するために、剥離シートの先端部の辺と平行に複数個設けられていることが好ましい。また、レーザースポット溶接痕同士の間隔は、レーザースポット溶接が可能となる範囲で狭くする方が好ましい。具体的には、長手方向長さ300mm程度の剥離部材の場合、レーザースポット溶接痕同士の間隔は、略10mm程度が好ましい。
非粘着性樹脂フィルム4は、現像剤の付着が防止できる程度に非粘着性を有する樹脂フィルムであり、例えば、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、および、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)樹脂、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体樹脂、ポリビニリデンフルオライド樹脂、ポリビニルフルオライド樹脂などの公知のフッ素樹脂からなるフィルムが使用できる。特に、PTFE樹脂、PFA樹脂、FEP樹脂、またはETFE樹脂からなるフッ素樹脂フィルムは、カラートナー(ポリエステル系バインダー樹脂を用いたトナーなど)に対する非粘着性にも優れており、また、耐熱性も十分に有する。なお、トナーに対する非粘着性を確保可能な範囲であれば、非粘着性樹脂フィルムをケッチェンブラックやアセチレンブラックなどのカーボン微粉末を配合した非粘着性樹脂から形成することによって、静電気による用紙剥離性能の低下を防止することもできる。
フッ素樹脂などの非粘着性樹脂フィルムの厚さは10〜200μmの範囲が好ましく、より好ましい範囲は40〜80μmである。10μm未満の厚さでは、貼付した後に僅かな摩耗によって基材の先端部が露出するおそれがある。また、フィルム貼付工程でシワになりやすく、取り扱いが困難になる。200μmをこえる厚さになると用紙剥離性能が低下するおそれがある。
基材2への非粘着性樹脂フィルム4の貼付は、上述のとおり、粘着剤を貼付面に介在させて行なう。すなわち、基材2と非粘着性樹脂フィルム4との間に粘着剤層3を介在させる。粘着剤には、特にシリコーン系粘着剤が好ましい。シリコーン系粘着剤としては、例えば、SiO単位と(CHSiO単位とからなる共重合体とジオルガノポリシロキサン生ゴムを縮合させて得た粘着剤が挙げられる。シリコーン系粘着剤を介在させることで、基材に強固に接着され定着温度においても接着効果が維持でき、粘着剤によるクッション効果も期待できる。その他、接着効果を高めるため、金属板への貼付面に、例えば、コロナ放電処理、スパッタエッチング処理、プラズマエッチング処理、金属ナトリウムによるTOS処理、紫外線照射処理などの表面処理を施すことが望ましい。
シリコーン系粘着剤層の厚さは5〜50μmの範囲が好ましい。5μmより薄いと接着効果が十分に得られない場合がある。また、50μmより厚いと剥離部材全体として厚さが相対的に厚くなることにより用紙剥離性能が低下するおそれがある。
本発明の製造方法で得られた剥離部材1は、基材2に、その先端縁2bを巻き込むように非粘着性樹脂フィルム4が貼付されている。非粘着性樹脂フィルム4は、基材2の長手方向長さより僅かに短く貼付されている。このため、基材2の長手方向両端面に下地金属などが露出する。また、貼付するときに非粘着性樹脂フィルム4の長手方向両端部を引っ張ることがないために、接着力が不均一な場合や、貼付後に接着力が低下した場合でも、非粘着性樹脂フィルム4が縮むことがなく、粘着剤3が露出することがない。さらに、この剥離部材1は、定着ローラに対して充分に線接触することができ、また、その接触部において定着ローラ等の定着部材を傷付けることがないため、優れた剥離性能を長期間維持できる。
本発明の剥離部材の製造方法は、上述した工程を備えてなるので、製造工程において、基材に貼付する樹脂フィルムにシワや気泡が発生することを抑制でき、剥離部材の表裏両面における平滑性も高い。したがって、記録画像の画質を高い水準で確保できる剥離部材の製造方法として適用できる。
1 剥離部材
2 基材
3 粘着剤層
4 非粘着性樹脂フィルム
5 穴
6 定着ローラ
7 加圧ローラ
8 ニップ部
9 用紙
10 ベース台
11 キャリアーシート
12 カット治具
20 ローラ装置
21〜25 ローラ
26 リニアガイド

Claims (4)

  1. 金属板または樹脂板からなる基材と、該基材に貼付された非粘着性樹脂フィルムとからなる剥離シートを有し、電子写真装置の定着部材に、該剥離シートの一長辺側で通紙方向上流側の端部となる先端部を接触または近接させて、前記定着部材から用紙を剥離させる剥離部材の製造方法であって、
    前記剥離シートの前記先端部に対応する前記基材の先端部に、反通紙側表面に粘着剤層を有する非粘着性樹脂フィルムを貼付するフィルム貼付工程を備え、
    該フィルム貼付工程は、前記非粘着性樹脂フィルムの前記粘着剤層側に、前記基材の先端部の先端縁を、該先端縁から前記非粘着性樹脂フィルムの端部が突出するように配置した後、前記非粘着性樹脂フィルムに、該基材の長手方向一方側端部から他方側端部に向けて順に複数のローラを押し当てて、該非粘着性樹脂フィルムを前記基材の先端縁を巻き込むようにして該基材の先端部の両面に貼付する工程であることを特徴とする剥離部材の製造方法。
  2. 前記フィルム貼付工程において、前記ローラとして順に第1〜第5のローラを用い、(1)前記第1のローラで前記非粘着性樹脂フィルムを前記基材の表面に対して10°以上50°未満の角度となるように折り曲げ、(2)前記第2のローラで前記非粘着性樹脂フィルムを前記基材の表面に対して50°以上85°未満の角度となるように折り曲げ、(3)前記第3のローラで前記非粘着性樹脂フィルムを前記基材の先端縁を巻き込むようにして前記基材の表面に対して100°以上165°未満の角度となるように折り曲げ、(4)前記第4のローラおよび前記第5のローラで前記基材の先端部を挟み込んで、前記非粘着性樹脂フィルムを該基材の先端部の両面に貼付することを特徴とする請求項1記載の剥離部材の製造方法。
  3. 前記ローラが、ローラ本体と該ローラ本体を回転自在に支持するローラ軸とからなり、該ローラ本体が、ゴム材、発泡材、または樹脂材からなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の剥離部材の製造方法。
  4. 前記ローラ本体の硬度が、ショアA10〜ショアA90の範囲内であることを特徴とする請求項3記載の剥離部材の製造方法。
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