JP2010096940A - 定着ベルト、および定着装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】潤滑剤の枯渇を防止する機能を備えた定着ベルト、および定着装置を提供する。
【解決手段】定着ベルトをその内面から見ると、最内層2に、回転方向に直交する方向に延びる溝61が形成されている。溝61は、最内層2を構成するシートの継ぎ目部分により形成される。溝は、少なくともその端部がベルトの軸方向に対して角度を持つように構成される。溝61には、十分な潤滑剤を長期にわたり保持することができる。これにより、長期にわたり低トルクで動作させることができ、耐久性の高い定着装置を提供することが可能となる。
【選択図】図5
【解決手段】定着ベルトをその内面から見ると、最内層2に、回転方向に直交する方向に延びる溝61が形成されている。溝61は、最内層2を構成するシートの継ぎ目部分により形成される。溝は、少なくともその端部がベルトの軸方向に対して角度を持つように構成される。溝61には、十分な潤滑剤を長期にわたり保持することができる。これにより、長期にわたり低トルクで動作させることができ、耐久性の高い定着装置を提供することが可能となる。
【選択図】図5
Description
この発明は定着ベルト、および定着装置に関し、特に、シートを筒状の形状とすることで構成される定着ベルト、および定着装置に関する。
電子写真式の画像形成装置(スキャナ機能、ファクシミリ機能、複写機能、プリンタとしての機能、データ通信機能、およびサーバ機能を備えたMFP(Multi Function Peripheral)、ファクシミリ装置、複写機、プリンタなど)には、記録媒体上の未定着トナーを加熱して定着させる定着装置が用いられている。定着装置には、定着ベルトを有するものがある。これは、押圧部材と定着ベルトとを使用するベルト定着装置である。
ベルト定着装置の例として、加熱源を有する回転可能な加熱定着ロールへ、耐熱樹脂の定着ベルトを加圧パッドによって押圧する構成が知られている。
定着ベルトの材質としては、ポリイミド樹脂が使用されていることが多い。ポリイミド樹脂をベルト形状に製作するため、ポリイミドワニスが金属等で構成される塗布型の内部や外部に塗布される。これを加熱してイミド化した後、脱型することでベルトを形成する方法が一般的である。
しかし、その工程に時間がかかる点や、所望のベルト厚さにするために、何度も製膜工程を繰り返さなければならない点などから、その方法は生産性が低く、コストがかかるという問題がある。
これに対し、ポリイミドシートのような耐熱シートを巻き回して接合し、円筒状のベルトを形成する方法が提案されている。本件発明者も、耐熱シートを複数層巻き回してなるベルト基材と、それからなる定着ベルトとを提案している(例えば、特願2007−88341号参照)。
ベルト定着装置においては、定着ベルトと加圧パッドの摺動抵抗が大きいと、トルクが増大し、周辺摺動部品の破損や摩滅が起こる可能性がある。また、モータへの負荷も増大するため、より多くの電力が必要になる。
そこで、加圧パッドをポリテトラフルオロエチレンが含浸されたガラス繊維シートで被覆するとともに、ガラス繊維シートと耐熱樹脂定着ベルトとの間の潤滑剤として、シリコーンオイルを介在させる手法が知られている。
下記特許文献1には、画像形成装置において未定着のトナーを熱定着するための耐熱樹脂からなる複合管状定着ベルトに関し、ベルト内壁面が潤滑剤を保持するために粗面化されているものが開示されている。
下記特許文献2には、未定着のトナーを熱定着するためのベルト管状体(エンドレスベルトなどの樹脂フィルム管状体)に関し、それを構成する摺動シートにおいて軸方向に角度のある溝を持たせることが記載されている。
下記特許文献3には、定着装置におけるベルトの内周面に、Ra=0.3〜1.6μmの不規則な凹凸を形成し、軸方向に計測した表面粗さを、移動方向に計測した表面粗さよりも粗くすることが記載されている。溝は回転方向に設けられる。
下記特許文献4には、定着装置におけるベルトの内周面に、Ra=1.0〜10.0μmのらせん状の凹凸を持たせることが記載されている。
特開2001−341143号公報
特開2005−91557号公報
特開2005−173441号公報
特開2005−3781号公報
しかしながら、定着装置においては潤滑剤の介在ムラにより摺動抵抗が大きく変化する。このため、長期にわたって潤滑剤の枯渇を防止する必要がある。
上記特許文献のように、潤滑剤を保持する目的で、耐熱樹脂定着ベルトの内面を粗面化させることが考えられている。
しかし、ベルト内面を粗面化するには、ポリイミドワニス塗布する金型の形状を粗面化し、それをベルトに転写し、脱型させる必要がある。このため、ベルト内面の凹凸の深さや形状に制約があった。
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、潤滑剤の枯渇を防止する機能を備えた定着ベルト、および定着装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、シートを筒状の形状とすることで構成される定着ベルトは、その最内層に、定着ベルトの移動方向とは交わる方向に向かう溝が、シートの継ぎ目により形成されている。
好ましくは定着ベルトは、シートを複数層重ねて接着または溶着することで、円筒状に形成される。
好ましくは、シートは耐熱シートである。
好ましくは溝は、少なくともその端部がベルトの軸方向に対して角度を持つように構成される。
好ましくはベルトの最内層の厚みは、50μm以上である。
好ましくは溝は、定着ベルトの回転方向に対して鋭角の方向に向かうように構成される。
好ましくは溝は、底部の幅が上部の幅よりも広く構成される。
この発明の他の局面に従うと定着装置は、上述のいずれかに記載の定着ベルトと、定着ベルトの内周面に潤滑剤を塗布する塗布部とを備える。
これらの発明に従うと、潤滑剤の枯渇を防止する機能を備えた定着ベルト、および定着装置を提供することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態における定着装置について説明する。
定着装置は、定着ベルトを有する。定着ベルトは、ポリイミドシートのような耐熱シートを巻き回して接合して形成される。ベルト最内層の継ぎ目部分の隙間と、ベルト最内層の耐熱シートの厚みとにより溝が形成される。この溝に潤滑剤を保持させることで、長期にわたり潤滑剤の介在ムラの発生を防止することが可能となる。このような溝において、耐熱シートの厚さにより凹凸が形成されるため、その溝の深さは、耐熱シートの内面を単に粗面化させる場合よりも深くなる。
また、溝としては様々な形状のものを形成することが可能であり、十分な深さを持った、回転軸方向へ連続的に続く溝を構成することができる。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態における定着装置の平面図である。
図を参照して定着装置は、内部にヒーター21を有する加熱ローラ9と、加熱ローラ9に接する定着ベルト1とを備えている。定着ベルト1は、左右の位置の範囲がガイド31a,31bにより規制されている。加熱ローラ9と定着ベルト1との間をトナー未定着の用紙が通過することで、熱と圧力とによりトナーが用紙に定着する。
図2は、定着ベルト1内の溝の形状を示す図であり、図3は、定着ベルト1の断面構造を示す図である。
定着ベルト1は円筒状であり、ベルト基材6の上にトナー離形層5を備えた構成となっている。ベルト基材6は、フィルム状の耐熱シートが2層(符号2,4)と、接着層3とが積層してなる。各層は接着または溶着により固定される。
内側の層2は、耐熱シートが平巻きに巻き回された層である。その上の接着層3は、熱可塑性樹脂のチューブが被服された層である。さらにその上の外側の層4は、耐熱シートが平巻きに巻き回された層である。
内側と外側の平巻き層2,4は、細長い耐熱シートをその長手方向を軸として、2つの長手方向の縁が隙間Aを開けて隣接するよう巻いて形成されている。縁が重なると耐熱シート厚さだけ段差が生じて、最終的に定着ベルト1の表面が平坦にならないからである。
隙間Aは、あまり大きいと定着画像として筋目が残るため、ベルト基材の強度、表面平坦性、および加工性の観点から0.5mm以下とすることが好ましく、より好ましくは、0.2mm以下である。耐熱シートの厚さは、強度的観点から、内側外側とも50μmは必要である。
内側、外側の層を形成する耐熱シートとしては、PI(ポリイミド)や、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等を使用することができる。接着層3を形成する熱可塑性樹脂としては、PFA(パーフルオロアルコキシルアルカン)や、FEP(フッ化エチレンプロピレン)を使用することができる。接着層の厚さは、10μm〜50μmが好ましく、より好ましくは30μmである。
外側の層4は、ベルト強度の観点から平巻きが必要である。これは特願2007−88341号における構成に倣っている。定着装置の動作中に定着ベルト1が軸方向に蛇行し、定着ベルト1がガイド31a,31bの側面に当たると、ガイド31a,31bからの反力により、定着ベルト1の端部に負荷が作用する。
ベルト蛇行力の方向とガイド31a,31bによる反力の方向とがぶつかったところで、ベルト1には軸方向に対して直角な方向に座屈が生じる。外側の層を螺旋巻きに構成した場合、ベルト軸方向に対して直角方向に近い角度で巻き目ができる。そこがベルト蛇行力とガイドによる反力とのぶつかる座屈部になってしまう。すなわち座屈しやすいことになる。そのため外側の層は平巻きとし、ベルト蛇行力とガイドからの反力の両方向に対して平行に近い角度に巻き目を設けることで、座屈が生じにくくしている。
本実施の形態においては、内側と外側の層2,4ともに平巻きであり、概略長方形のシートの向い合う長辺同士を近づけるようにシートを丸めることで、筒状の層となっている。シートの長辺同士は重ならないようにされている。このため、層4のシートの長辺同士が向い合う位置に、溝(隙間)7が形成されている。また、層2のシートの長辺同士が向い合う位置に、溝(隙間)61が形成されている。これら溝の幅を「A」で示す。
ベルト基材6上に設けられるトナー離形層5は、熱可塑性のフッ素樹脂チューブを基材6上に被服することでなる層である。離形層5の厚さは、10μm〜50μmが好ましく、より好ましくは30μmである。離形層5を形成する熱可塑性樹脂としては、PFA(パーフルオロアルコキシルアルカン)や、FEP(フッ化エチレンプロピレン)を使用することができる。
なお接着層は、シート状の熱可塑性樹脂を巻き回して構成してもよい。
次に、本実施の形態における定着ベルトの製造方法について説明する。
所望とする定着ベルトの内径寸法を有する、金属やセラミック等からなる円筒状の内型の表面に、基材の内側の層2をなす耐熱シートを巻き回し、前述の隙間Aを確保して仮固定する。
その上に、接着層3をなす熱可塑性樹脂のチューブを被覆する。熱可塑性樹脂のチューブは熱収縮性でも非収縮性でも良い。さらにその上に基材の外側の層4をなす耐熱シートを巻き回し、内側の層同様、隙間Aを確保して仮固定する。
最後に、トナー離形層5をなすフッ素樹脂チューブを被服する。このフッ素樹脂チューブも熱収縮性でも非収縮性でも良い。ただし、チューブの内径は、所望とする定着ベルトの内径より小さいサイズとする。このチューブを被覆することで、チューブの弾性を利用して、基材部分を含めて全ての層が内型に対して固定される(仮固定工程)。
仮固定された筒状部材を内型ごと加熱し、基材の接着とトナー離形層の溶着が同時に行なわれる(固定工程)。そして、筒状部材を所望の長さに切断して(端部切断工程)、内型から外すことで定着ベルトが完成する。
基材の耐熱シートは、あらかじめ完成したベルトの周長を計算することでカットされる。耐熱シートをカットする際に、溝(隙間)7,61が所望の形状になるようにカットすることで、容易に所望の溝(隙間)7,61の形状(ベルトの継ぎ目部分の形状)を得ることができる。
図2に示すように、溝(隙間)7はベルトの軸方向に対して斜めになるようにしてもよいし、ベルトの軸方向に平行となるようにしてもよい。溝(隙間)61も同様である。
図4は、図1〜3に示される定着ベルトを備えた定着装置の構成を示す図である。
定着ベルト1は、加圧パッド51がその内側に挿通されることで支持される。定着ベルト1は、加圧パッド51によって加熱ローラ9に押し付けられている。加圧パッド51はステイ57に支持され、ばねにより点線矢印方向に付勢される。
さらに、加圧パッド51とベルト1との間には、摺動シート53が備えられる。また、ベルト1の内面に接触するように、潤滑剤塗布部材55が備えられ、ベルト1の内面に潤滑剤を塗布するようになっている。
加熱ローラ9は、内部にヒーター21を有する。このヒーター21の代わりに、誘導加熱装置によって加熱ローラ9を加熱することもできる。加熱ローラ9の外面にはサーミスタ59が近接して設けられる。サーミスタ59によって検出した加熱ローラ9の表面の温度に基づいてヒーター21を制御することで、加熱ローラ9の表面の温度が所定温度に維持されるようになっている。
また、加熱ローラ9は、駆動部により実線矢印方向に回転駆動され、これに伴い定着ベルト1が従動回転するようになっている。加熱ローラ9と定着ベルト1との間のニップ部に、未定着トナー画像が転写された記録媒体を、未定着トナー画像側を加熱ローラ9側に向けて搬送すると、記録媒体上の未定着トナー画像が加熱・加圧されて記録媒体に定着する。
図5は、定着ベルト1をその内面から見た状態を示す図であり、図6は、図5における定着ベルト1の端部を拡大した図である。
図に示されるように、溝61をベルト内側から(軸側から)見た状態が示されている。内側の層2が観察され、その両端部が近付く部分が溝61となっている。溝61は、軸方向へ連続して存在する形状を有する。
図7は、ベルト内周の継ぎ目部分の断面(図5におけるY−Y断面)を示す図である。
定着ベルト1は、ベルト内面より外側に向けて、内側の層2、接着層3、外側の層4、およびトナー離形層5が積層された構造を有する。
内側の層2において形成される溝61は、その幅がA(図3、図6参照)であり、その深さが内側の層2の厚さと同じものとなる。
これにより溝61内に、潤滑剤塗布部材55が塗布する潤滑剤を保持することができる構造となっている。結果として、ベルト1の内面に潤滑剤を好適かつ容易に塗布することができる。また、潤滑剤を軸方向へ(例えば溝61のベルトの中央部分からベルトの両端部分へ)移動させることができる。
また図5および6に示されるように、溝61の延びる方向はベルトの両端部において角度を持っている。すなわち、溝61はベルト端部の面と接する位置で、その面からθの角度がつけられるように設置されている(回転方向に対して鋭角になる部分ができるように構成されている)。
このように溝の方向をベルト端部で変えることで、潤滑剤が端部より漏れ出すことを防止する(少なくする)ことができる。すなわち、ベルト中央部分からベルト端部側に向かう潤滑剤が、ベルト端部でベルトの外に漏れることが防止される。θの値が小さい程、この効果は大きくなる(たとえばθ<45°とすることが好ましい)。
なお、図5および6に示されるように、ベルトの回転によりシートの尖った部分がその先端方向側に移動しないようにすることで、ベルトの層が剥離することを防止することができる。すなわち図6においてθの部分は、尖った方が回転方向とは逆側を向いている(溝の方向は端部で回転方向とは逆側を向いている)。
[第2の実施の形態]
図8は、本発明の第2の実施の形態におけるベルト内周の継ぎ目部分の断面(図5におけるY−Y断面)を示す図である。
図7と比較して、溝71の形状は接着層3側で広く、ベルト内面側で狭くなっている。溝71は底の部分での幅がbであり、上部での幅がaである(a<b)。
このような構造を採用することで、潤滑剤を溝71内に保持しやすくなるという効果がある。また、このような溝の形状を作るためには、内側の層2を構成するためのシートを切り出すときに、その端部が図8に示されるように斜めになるようにカットすればよいだけである。これにより特に製造工程を増加させることなく、図8の構成を得ることができる。
[各層の厚さについて]
次に、定着ベルト1を構成する各層の厚さについて説明する。
図9は、特願2007−88341号に記載された定着ベルトの構成を示すための一部破断図であり、図10はその断面図である。
定着ベルト10は円筒状で、ベルト基材11の上に弾性層12を備えている。ベルト基材11は、内側と外側の2層からなる。ここでは内側の層は、フィルム状の耐熱シートを螺旋状に巻回した螺旋巻き層13とされる。外側の層は、フィルム状の耐熱シートを平巻きした平巻き層14である。螺旋巻き層13の上に、図示しない接着層が設けられ、両層は接着される。
内側の螺旋巻き層13は、細長い耐熱シートを縁が重ならないように隙間Sをあけて螺旋状に巻き回して形成されている。隙間Sは、あまり大きいと筋目が残るため、ベルト基材11の強度および表面の平坦性、加工性の観点から0.5mm以下とすることが好ましい。
螺旋巻き層13を形成する耐熱シートの厚さは、強度的に見て50μmは必要である。螺旋巻き層13の螺旋角度(円筒状ベルト基材の軸心に対する螺旋巻き方向の角度)θは任意である。
外側の平巻き層14は、細長い耐熱シートをその長手方向を軸として、2つの長手方向の縁が隙間Aをあけて隣接するように巻いて形成されている。縁が重なると、耐熱シートの厚さだけ段差が生じて、その上に設ける弾性層にも段差が生じ、最終表面が平坦にならないからである。平巻き層14の隙間Aは、あまり大きいと筋目が残るため、ベルト基材11の強度および表面の平坦性、加工性の観点から0.5mm以下とすることが好ましい。平巻き層14を形成する耐熱シートの厚さは、螺旋巻き層13を形成する耐熱シートの厚さ以下で、かつ50μm以下であり、好ましくは25μmである。
螺旋巻き層13と平巻き層14とを形成する耐熱シートとしては、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などを使用することができる。接着層としては、パーフルオロアルコキシルアルカン(PFA)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)などを使用することができる。
弾性層12は、ベルト基材11の上に被覆されており、好ましくは30μmの厚さである。弾性層12を形成する耐熱材としては、フッ素樹脂またはシリコンゴムを使用することができる。
特願2007−88341号に記載されたように、本発明者らは、定着ベルトの各層の厚さについて好適な数値を確認するための実験を行なっている。
図11は、定着ベルトの各層の厚さなどについての好適な数値を確認するための実験結果を示す図である。
図に示すように、内側螺旋巻き層と外側平巻き層の厚さ、外側平巻き層の隙間Aを種々変更した定着ベルトを用いた定着装置により、光沢紙、OHP紙、および普通紙に形成したイエローとマゼンダを合成したベタのトナー画像を定着させた。これにより、外側平巻き層の隙間Aの存在によってトナー画像に筋が発生するか否かを確認した。
図11中、○は筋が全く確認できなかったもの、△は筋がやや確認されたもの、×は筋が明確に確認されたものである。さらに、※はベルトの変形があったものを示す。最初の実験で△又は×であった試料については再実験を行なった。
この結果、外側平巻き層の隙間Aは0.5mm以下が好ましいことが分かった。また、試料番号6の定着ベルトのように、内側螺旋巻き層の厚さが25μmではベルトの変形(※)が生じる可能性がある。このため、強度的に内側螺旋巻き層の厚さは50μmは必要であることが分かった。さらに、外側平巻き層は、50μm以下、好ましくは25μmが好ましいことが分かった。
また、試料番号4の内側螺旋巻き層の厚さが50μm、外側平巻き層の厚さが25μm、外側平巻き層の隙間Aが0.5mmの場合が画質品質上、最も適していることが分かった。
また、最内層の厚さを厚くすると、最内層の溝61(図3)内に保持される潤滑剤が多くなる。このため、(最内層2の強度を保持する観点からも)最内層2の厚さは50μ以上とすることが好ましい。
[第3の実施の形態]
図12は、本発明の第3の実施の形態における定着ベルト1をその内面から見た状態を示す図であり、図5に対応する図である。
定着ベルト1の内側の層の溝(継ぎ目)61は、図5に示されるようにその左右端部のみにおいて、回転方向に対して斜めの角度を持たせてもよいし、図12に示されるように全体に渡って弧を描くようにし、左右端部において回転方向に対して斜めの角度を持たせてもよい。
このような形状の溝を構成することでも、潤滑剤を良好に保持することが可能となる。
図13は、図12の定着ベルト1の端部を拡大した図である。
図13のように、溝61は端部に行くにつれてその幅が細くなっている形状としてもよい。このような形状の溝を構成することで、潤滑剤が端部から漏れることがより少なくなり、潤滑剤を良好に保持することが可能となる。
[第4の実施の形態]
図14は、本発明の第4の実施の形態における定着ベルト1をその内面から見た状態を示す図であり、図5に対応する図である。
定着ベルト1の内側の層の溝(継ぎ目)61は、図14に示されるように全体に渡って回転方向と直交する方向に伸びていてもよい。また、左右端部に行くにつれてその幅が細くなっている形状としてもよい。このような形状の溝を構成することで、潤滑剤が端部から漏れることがより少なくなり、潤滑剤を良好に保持することが可能となる。
[第5の実施の形態]
図15は、本発明の第5の実施の形態における定着ベルト1をその内面から見た状態を示す図であり、図5に対応する図である。
定着ベルト1の内側の層の溝(継ぎ目)61は、図15に示されるように全体に渡って回転方向と直交する方向に伸びていてもよい。また、左右端部でその幅が極めて細くなっている形状としてもよい(または左右端部のみ、溝61がなくなっている形状としてもよい)。このような形状の溝を構成することで、潤滑剤が端部から漏れることがより少なくなり、潤滑剤を良好に保持することが可能となる。
[第6の実施の形態]
図16は、本発明の第6の実施の形態における定着ベルト1をその内面から見た状態を示す図であり、図5に対応する図である。
定着ベルト1の内側の層の溝(継ぎ目)61は、図16に示されるように中央部分において回転方向と直交する方向に伸びていてもよい。また、左右端部でジグザグとなる(または蛇行する)形状としてもよい。このような形状の溝を構成することで、潤滑剤が端部から漏れることがより少なくなり、潤滑剤を良好に保持することが可能となる。
[第7の実施の形態]
図17は、本発明の第7の実施の形態における定着ベルト1をその内面から見た状態を示す図であり、図5に対応する図である。
定着ベルト1の内側の層の溝(継ぎ目)61は、図17に示されるように全体に渡ってジグザグとなる(または蛇行する)形状としてもよい。このような形状の溝を構成することで、潤滑剤が端部から漏れることがより少なくなり、潤滑剤を良好に保持することが可能となる。
[第8の実施の形態]
図18は、本発明の第8の実施の形態における定着ベルト1をその内面から見た状態を示す図であり、図5に対応する図である。
定着ベルト1の内側の層は、図9で示したように螺旋巻きとしてもよい。この場合、溝61も螺旋状に形成されることとなる。溝61の延びる方向はベルトの両端部において軸方向に対して角度を持っている。このような形状の溝を構成することで、潤滑剤が端部から漏れることがより少なくなり、潤滑剤を良好に保持することが可能となる。
また、溝61はベルト端部の面と接する位置で、その面から角度がつけられるように設置されている。このとき溝61は、図の右隅に見られるように、ベルトの回転によりシートの尖った部分Pがその先端方向側に移動しないような形状とされている。左隅でも溝は、ベルトの回転によりシートの尖った部分がその先端方向側に移動しないような形状とされている。このような溝の形状とすることで、ベルトの層が剥離することを防止することができる。
[ベルト内側の層を形成するためのシートの形状]
図19は、図5および6に示されるベルト内側の層を作るための耐熱シートの形状を示す図である。
図6のθの形状が形成されるようにシートをカットし、それを長手方向を軸方向として巻いて筒状にすることで、第1の実施の形態の構成を得ることができる。
また、第2〜第8の実施の形態においても、それらに合ったシート形状を形成し、筒状にすることで定着ベルトを形成することが可能である。
[実施の形態における効果]
以上のように定着ベルトを形成することで、耐熱シートを複数層重ねて巻き回してなる円筒状定着ベルトの最内層の継ぎ目(溝)に、十分な潤滑剤を長期にわたり保持することができるようになる。これにより、長期にわたり低トルクで動作させることができ、耐久性の高い定着装置を提供することが可能となる。
また、定着ベルトにおいて、最内層の継ぎ目の少なくとも端部が軸方向に対して角度を持つように構成されることで、より潤滑剤を好適に保持することが可能となる。特に、定着ベルトの回転方向に対しての継ぎ目端部の角度(図6のθ)を鋭角にすると、その効果は大きくなる。
また、溝は図19に示したように、シートをカットする形状を工夫することで、容易に得ることができる。
[その他]
なお、上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 定着ベルト
2 内側の層
3 接着層
4 外側の層
5 トナー離形層
6 ベルト基材
7 溝
9 加熱ローラ
21 ヒーター
51 加圧パッド
55 潤滑剤塗布部材
59 サーミスタ
61 溝
A 溝の幅
θ 溝の角度
2 内側の層
3 接着層
4 外側の層
5 トナー離形層
6 ベルト基材
7 溝
9 加熱ローラ
21 ヒーター
51 加圧パッド
55 潤滑剤塗布部材
59 サーミスタ
61 溝
A 溝の幅
θ 溝の角度
Claims (8)
- シートを筒状の形状とすることで構成される定着ベルトであって、
その最内層に、前記定着ベルトの移動方向とは交わる方向に向かう溝が、前記シートの継ぎ目により形成されていることを特徴とする、定着ベルト。 - シートを複数層重ねて接着または溶着することで、円筒状に形成される、請求項1に記載の定着ベルト。
- 前記シートは耐熱シートである、請求項1または2に記載の定着ベルト。
- 前記溝は、少なくともその端部がベルトの軸方向に対して角度を持つように構成される、請求項1から3のいずれかに記載の定着ベルト。
- 前記最内層の厚みは、50μm以上であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の定着ベルト。
- 前記溝は、定着ベルトの回転方向に対して鋭角の方向に向かうように構成される、請求項1から5のいずれかに記載の定着ベルト。
- 前記溝は、底部の幅が上部の幅よりも広く構成される、請求項1から6のいずれかに記載の定着ベルト。
- 請求項1から7のいずれかに記載の定着ベルトと、
前記定着ベルトの内周面に潤滑剤を塗布する塗布部とを備えた、定着装置。
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---|---|---|---|
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JP2008267091A JP2010096940A (ja) | 2008-10-16 | 2008-10-16 | 定着ベルト、および定着装置 |
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2008
- 2008-10-16 JP JP2008267091A patent/JP2010096940A/ja active Pending
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