以下に、実施形態に係る階床設定システムを図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれ、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る階床設定システムを含むエレベータの一例の構成を説明するための模式図である。第1の実施形態に係る階床設定システム1は、エレベータ10の制御を行う中央制御装置としての制御装置20と、各階床毎の制御を行うホール制御装置としてのホールコントロール基板30と、を含む。
図1において、エレベータ10は、建物(ビル、マンション、展望台などの高層建造物)などに設置される昇降路11を乗りかご12が昇降し、当該乗りかご12が停止可能な各階の階床15に設けられた乗り場(ホール)の間を移動する。図1の例では、最も上部の階床15が最上階の階床、最も下部の階床15が最下階の階床となっている。図1に示すエレベータ10は、乗りかご12と、カウンターウェイト13とをロープで連結した、いわゆる「つるべ式のエレベータ」として構成されている。なお、エレベータ10は、一例として昇降路11の上部に機械室を備えないタイプであり、ホールコントロール基板30などは、例えば昇降路11の側壁などに固定されている。
図1において、制御装置20がエレベータ10の昇降路11の上端側に設置される。ここで、複数の階床15において、制御装置20に最も近い位置の階床15を最上階とし、制御装置20に最も遠い位置の階床15を最下階とする。制御装置20は、各階床15のホールに1対1に設置される各ホールコントロール基板30に電源供給線40を介して電源を供給する。電源供給線40は、各階床15毎に分岐して各ホールコントロール基板30に接続される。また、第1の実施形態では、各ホールコントロール基板30は、例えば出荷時点において、通信可能で他と重複しない通信アドレスが設定されているものとする。
制御装置20は、階床自動設定スイッチ21が接続されると共に、階床特定部22を含む。また、各階床15のホールコントロール基板30は、電圧測定部31を含む。すなわち、第1の実施形態に係る階床設定システム1は、複数のホールコントロール基板30に1対1に複数の電圧測定部31を含んでいる。制御装置20は、階床自動設定スイッチ21に対するON(オン)操作に応じて、階床設定システム1の動作モードを階床設定モードに切り替える。また、制御装置20は、階床自動設定スイッチ21に対するOFF(オフ)操作に応じて、階床設定モードを終了させる。
階床設定モードにおいて、各ホールコントロール基板30と制御装置20は、データを伝送信号に変換する通信部(後述する)を介して階床15の設定を行う。また、表示灯群23は、階床設定モードの開始、終了および異常といった各状態を示す表示を行う。制御装置20は、作業員14が、階床自動設定スイッチ21の操作と、表示灯群23による階床設定モードの状態の確認と、を実行可能なように構成されている。
図2は、第1の実施形態に係る階床設定システム1の機能を説明するための一例の機能ブロック図である。図2において、図1と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。また、図2において、複数のホールコントロール基板30を1つのホールコントロール基板30で代表させて示している。制御装置20は、階床特定部22と、通信部24とを含む。ホールコントロール基板30は、電圧測定部31と、通信部32とを含む。
制御装置20に対して、階床自動設定スイッチ21が接続される。制御装置20は、階床自動設定スイッチ21に対するON操作に応じて、通信部24によりホールコントロール基板30内の通信部32と通信を行い、ホールコントロール基板30との間で信号の授受を行う。上述したように、各ホールコントロール基板30の通信部32は、通信可能で他と重複しない通信アドレスが予め設定されている。また、通信部32は、一斉同報通信に対応しているものとする。
各ホールコントロール基板30は、階床自動設定スイッチ21に対するON操作に応じた信号を制御装置20から受信すると、最初に、電圧測定部31により電源電圧を測定する。電圧測定部31は、電源供給線40がホールコントロール基板30内の回路に接続される前の電圧を測定する。例えば、ホールコントロール基板30が電源供給線40から供給された電源の電圧を内部の回路が使用する電圧に変換するDC/DCコンバータを有する場合、DC/DCコンバータの電源供給側において電圧を測定する。各ホールコントロール基板30は、電圧測定部31で測定された電源電圧値を、通信部32により制御装置20に送信する。
制御装置20は、各ホールコントロール基板30から送信された電源電圧値を通信部24により受信し、階床特定部22に渡す。階床特定部22は、各ホールコントロール基板30から送信された電源電圧値に基づき、各ホールコントロール基板30が設置される階床15を特定し、特定された階床15を通信部32の通信アドレスに割り当てて管理する。なお、図2および上述の図1では、階床特定部22が制御装置20に含まれるように示されているが、これはこの例に限定されず、階床特定部22を制御装置20の外部に設けてもよい。
次に、第1の実施形態に係る階床設定処理について、より詳細に説明する。第1の実施形態に係る階床設定システム1は、階床特定部22により、各階床15のホールコントロール基板30において電圧測定部31にて測定された電源電圧値の、各階床15間での電圧降下に基づき、各階床15を特定する。図3は、第1の実施形態に係る、各ホールコントロール基板30が設置される階床15に伴う電源電圧の電圧降下を説明するための図である。
図3(a)は、制御装置20と、各階床15のホールコントロール基板30と、の電源供給線40による接続を模式的に示す。図3(a)に示されるように、各ホールコントロール基板30は、制御装置20に対し、電源供給線40により並列に接続される。換言すれば、電源供給線40は、各階床15で分岐して、それぞれの階のホールコントロール基板30に接続される。
このように、制御装置20に対して各ホールコントロール基板30が電源供給線40により並列に接続されているため、各ホールコントロール基板30に対して、理論的には同一電圧にて電源が供給される。しかしながら、実際には、電源供給線40は、導体抵抗を有しているため、必ず電圧降下が発生する。図3(b)は、電圧降下を考慮した図3(a)の等価回路を示す。
なお、図3(b)において、説明の簡略化のため、マイナスライン側の導体抵抗の表現を省略する。また、図3(b)では、最上階から下階に向けて5階分の接続に関する等価回路を示している。図3(b)において、電源供給線40の各階床15間の導体抵抗を抵抗Rnとし、各導体抵抗に流れる電流値を電流値inとする(n=1,2,3,4,5)。また、制御装置20は、直流(DC)24Vの電源を、電源供給線40を介して各ホールコントロール基板30に供給するものとする。
隣接する階床15に設置されるホールコントロール基板30間の距離が、各階床15で等しい場合、各階床15間の導体抵抗値も同一となる。すなわち、R1=R2=R3=R4=R5となる。一方、各ホールコントロール基板30に供給される電流の電流値i1’、i2’、…は、制御装置20から出力される電流の電流値Iが並列接続により分流されたものとなる。
より具体的には、例えば各抵抗R1〜R5に流れる電流の各電流値i1〜i5は、下記の式(1)〜式(5)にて求められる。なお、式(1)〜式(5)において、電流値i1’、i2’、…は、各ホールコントロール基板30に流れる電流の電流値を示す。
i1=I …(1)
i2=i1−i1’=I−i1’ …(2)
i3=i2−i2’=I−i1’−i2’ …(3)
i4=i3−i3’=I−i1’−i2’−i3’ …(4)
i5=i4−i4’=I−i1’−i2’−i3’−i4’ …(5)
なお、上述では、説明のため、階床15の数が5である例について式(1)〜式(5)を用いて示しているが、階床15の数が6以上であっても、各導体抵抗に流れる電流値inは、同様にして求められる。
上述の式(1)〜式(5)から、各抵抗R1、R2、…、R5を流れる電流値i1、i2、…、i5は、下記の式(6)の関係が成り立つ。
i1>i2>i3>i4>i5 …(6)
したがって、各抵抗R1、R2、…、R5における電圧降下は、電圧降下値vdn=in×Rnより、下記の式(7)に示す関係が成り立つ。
vd1>vd2>vd3>vd4>vd5 …(7)
各ホールコントロール基板30には、制御装置20から出力される電源の電圧値V0から、各電圧降下値vdnを減じた電圧値の電源が供給されることになる。すなわち、最上階の階床15に設置されるホールコントロール基板30に供給される電源の電圧値を電圧値v1とし、最上階より下階の各階床15に設置されるホールコントロール基板30に供給される電源の電圧値を電圧値v2、v3、…とした場合、電圧値v1、v2、…は、v5は、下記の式(8)〜式(12)によって求められる。
v1=V0−vd1 …(8)
v2=V0−vd1−vd2 …(9)
v3=V0−vd1−vd2−vd3 …(10)
v4=V0−vd1−vd2−vd3−vd4 …(11)
v5=V0−vd1−vd2−vd3−vd4−vd5 …(12)
図3(c)は、上述の式(8)〜式(12)で求めた、各ホールコントロール基板30に供給される電源の電圧値v1〜v5を各階床15についてプロットした一例のグラフである。図3(c)において、横軸は階床15の階数を示し、縦軸は、各階床15のホールコントロール基板30に供給される電源電圧の理論値を示す。図3(c)は、最上階の階床15が5階、最下階の階床15が1階であるものとして示している。昇降路11の上端側に設置される制御装置20から出力される電源の電源電圧値24[V]に対して、階床15の階が下がる毎に、その階床15のホールコントロール基板30に供給される電源の電圧値が下がっていくことが分かる。
すなわち、図3(b)を用いて説明したように、各ホールコントロール基板30に接続される電源供給線40が持つ導体抵抗により、各階床15において微小でも電圧降下が発生し、各ホールコントロール基板30に供給される電源は、階床15毎に電圧値が異なる。そのため、各ホールコントロール基板30において供給される電源の電圧値vnを測定することで、各ホールコントロール基板30が設置された階床15を特定することができる。
一例として、ホールコントロール基板30の消費電流値を120[mA]、電源供給線40が持つ電気抵抗値を25[Ω/Km]、階高を4[m]とすると、1階床あたりの電圧降下の最小の電圧値である最小電圧降下値vdminは、下記の式(13)により計算できる。
vdmin=120×10−3[A]×4[m]×2×25×10−3[Ω/m]=24[mV] …(13)
各ホールコントロール基板30の各電圧測定部31は、当該電圧測定部31を含むホールコントロール基板30に供給される電源の電圧値vnを測定する。電圧測定部31は、測定した電源の電圧値vnを、通信部32により制御装置20に送信する。
制御装置20は、各階床15のホールコントロール基板30からそれぞれ送信された電圧値vnを、各ホールコントロール基板30の通信部32に予め設定される通信アドレスと関連付けて、例えば制御装置20が有するメモリに記憶する。制御装置20において、階床特定部22は、各ホールコントロール基板30について記憶された電圧値vnおよび通信アドレスの組に基づき、各ホールコントロール基板30が設置される階床15を特定する。
図4は、第1の実施形態に係る階床特定部22による階床特定処理を説明するための模式図である。図4(a)において、通信部32の通信アドレスがそれぞれアドレスA、B、C、DおよびEのホールコントロール基板30を、それぞれホールコントロール基板30A、30B、30C、30Dおよび30Eとして示している。また、図4(a)において、各ホールコントロール基板30A、30B、30C、30Dおよび30Eが1階〜5階のうち何れの階床15に設置されているかは、未特定であるものとする。
図4(a)に示すように、ホールコントロール基板30Aから、電圧測定部31で測定された電圧値v1が制御装置20に送信される。同様に、各ホールコントロール基板30B、30C、30Dおよび30Eから、それぞれの電圧測定部31で測定された電圧値v2、v3、v4およびv5が制御装置20に送信される。図4(a)の例では、電圧値v1=22.3[V]、電圧値v2=22.1[V]、電圧値v3=23.0[V]、電圧値v4=22.6[∨]、電圧値v5=22.0[V]となっている。
制御装置20において、階床特定部22は、各ホールコントロール基板30A、30B、30C、30Dおよび30Eから送信された各電圧値v1、v2、v3、v4およびv5を、各ホールコントロール基板30A、30B、30C、30Dおよび30Eの通信アドレスと関連付けて記憶する。次に、階床特定部22は、記憶した各通信アドレスを、各電圧値v1、v2、v3、v4およびv5に基づき並び替える。
図4(b)は、階床特定部22により記憶される、並び替え前の各ホールコントロール基板30A、30B、30C、30Dおよび30Eと、各ホールコントロール基板30A、30B、30C、30Dおよび30Eに関連付けられた電圧値v1、v2、v3、v4およびv5と、の例を示す。なお、図4(b)および後述する図4(c)において、ホールコントロール基板30A、30B、30C、30Dおよび30Eは、それぞれ、各ホールコントロール基板30A、30B、30C、30Dおよび30Eを示す情報として基板A、基板B、基板C、基板Dおよび基板Eを用いて示されている。また、アドレスA、B、C、DおよびEは、それぞれ、各ホールコントロール基板30A、30B、30C、30Dおよび30Eの通信部32の通信アドレスを示す。
図4(b)において、各基板A〜EおよびアドレスA〜Eに対して、これら各基板A〜Eから送信された各電圧値v1〜v5と、階床情報x1、x2、x3、x4およびx5と、が関連付けられている。図4(b)では、各基板A〜Eが設置される階床15が未特定であって、各基板A〜Eに関連付けられる階床情報x1〜x5は、仮の値が用いられる。
図4(c)は、階床特定部22により、各基板A〜EおよびアドレスA〜Eが各電圧値v1〜v5に基づき並び替えられた例を示す。図4(c)の例では、図中に矢印で示されるように、各基板A〜EおよびアドレスA〜Eが、各電圧値v1〜v5に応じて降順に並び替えられ、基板C(アドレスC)、基板D(アドレスD)、基板A(アドレスA)、基板B(アドレスB)、基板E(アドレスE)の順となっている。
階床特定部22は、このように並び替えられた各基板A〜EおよびアドレスA〜Eに対して、降順に階床情報5F(5階)、4F(4階)、3F(3階)、2F(2階)および1F(1階)を関連付ける。これにより、各ホールコントロール基板30A〜30Eが設置される階床15が特定され、各ホールコントロール基板30A〜30Eの各通信部32の通信アドレスに対して、階床15がそれぞれ割り当てられる。
図4(c)の例では、基板CのアドレスCに対して5階の階床15が、基板DのアドレスDに対して4階の階床15が、それぞれ割り当てられている。また、基板AのアドレスAに対して3階の階床15が、基板BのアドレスBに対して2階の階床が、基板EのアドレスEに対して1階の階床15が、それぞれ割り当てられている。制御装置20は、通信部24によりこれらアドレスA〜Eを用いて各ホールコントロール基板30と通信を行う。これにより、制御装置20は、所望の階の階床15に設置されたホールコントロール基板30を指定して通信を行うことができる。
図5は、第1の実施形態に係る制御装置20における階床設定処理を示す一例のフローチャートである。なお、図5および以降の同様の図において、ホールコントロール基板30を、「基板」として示している。
ステップS100で、制御装置20は、階床自動設定スイッチ21がON操作されたか否かを判定する。制御装置20は、ON操作されていないと判定した場合(ステップS100、「No」)、図5のフローチャートによる一連の処理が終了される。一方、制御装置20は、階床自動設定スイッチ21がON操作されたと判定した場合(ステップS100、「Yes」)、処理をステップS101に移行させる。
ステップS101で、制御装置20は、制御装置20自身の動作モードを、階床設定を自動で実行する階床設定モードに切り換えると共に、通信部24により、各ホールコントロール基板30に対して一斉同報通信を行い、各ホールコントロール基板30の動作モードを階床設定モードに切り換える。また、制御装置20は、制御装置20内に設置された表示灯群23に含まれるアドレス設定表示灯を点灯させる。
各ホールコントロール基板30は、動作モードが階床設定モードに切り替わると、電圧測定部31により電源の電圧値vnを測定する。また、制御装置20は、動作モードが階床設定モードに切り替わると、階床特定部22により、通信部24を介して各ホールコントロール基板30に対して電圧測定部31により測定した電源の電圧値vnを要求する。各ホールコントロール基板30は、制御装置20からの要求に応じて、測定した電圧値vnを通信部32を介して制御装置20に送信する。
制御装置20は、各ホールコントロール基板30から送信された電圧値vnと、電圧値vnを送信したホールコントロール基板30の通信アドレスと、を通信部24を介して取得する。制御装置20において、階床特定部22は、取得した各電圧値vnと、各ホールコントロール基板30の通信アドレスと、を関連付けて記憶する。
次のステップS102で、制御装置20は、階床特定部22により、各ホールコントロール基板30から電圧値vnを取得したか否かを判定する。階床特定部22は、各ホールコントロール基板30から電圧値vnを取得できないと判定した場合(ステップS102、「No」)、処理をステップS110に移行させる。例えば、階床特定部22は、制御装置20に接続される全てのホールコントロール基板30のうち少なくとも1のホールコントロール基板30から電圧値vnが取得できない場合に、各ホールコントロール基板30から電圧値vnを取得できないと判定する。
ステップS110で、階床特定部22は、異常を発報して処理をステップS105に移行させる。階床特定部22は、例えば、表示灯群23に含まれる異常表示灯を点灯させて、異常の発報を行う。
一方、階床特定部22は、ステップS102で各ホールコントロール基板30から電圧値vnを取得できたと判定した場合、処理をステップS103に移行させる。ステップS103で、階床特定部22は、図4(b)および図4(c)を用いて説明したように、各ホールコントロール基板30および各通信アドレスを示す情報を電圧値vnに基づき並び替えて、各ホールコントロール基板30が設置されている階床15をそれぞれ特定する。
次のステップS104で、階床特定部22は、各ホールコントロール基板30に予め設定されている通信アドレスに、特定した階床15を示す情報を割り当てる。このように、階床特定部22は、各ホールコントロール基板30の通信アドレスを階床15に応じて設定する設定部としての機能も有する。また、階床設定モードは、換言すれば、制御装置20において階床特定部22が階床の特定を行う動作モードであるといえる。階床特定部22は、各ホールコントロール基板30の通信アドレスに対する階床15を示す情報の割り当てが完了すると、階床設定処理が完了したとして、例えば表示灯群23に含まれる設定完了表示灯を点灯させる。
ステップS104で階床設定処理が完了するか、あるいは、上述したステップS110で異常が発報されると、処理がステップS105に移行される。ステップS105で、制御装置20は、ステップS104またはステップS110の処理から一定時間以内に階床自動設定スイッチ21に対してOFF操作されたか否かを判定する。制御装置20は、一定時間以内にOFF操作されたと判定した場合(ステップS105、「Yes」)、処理をステップS106に移行する。ステップS106で、制御装置20は、階床設定モードを終了させ、例えば表示灯群23を消灯させる。階床設定モードが終了されると、図5のフローチャートによる一連の処理が終了される。
一方、制御装置20は、ステップS105で階床自動設定スイッチ21に対して一定時間以内にOFF操作されていないと判定した場合(ステップS105、「No」)、処理をステップS120に移行させる。ステップS120で、制御装置20は、報知器などにより階床設定モードが終了した旨を報知する。制御装置20は、ステップS120の処理の後、処理をステップS105に戻す。
第1の実施形態に係る階床設定システム1によれば、各階床15に設置された各ホールコントロール基板30において、供給される電源の電圧値vnを測定し、測定された各電圧値vnに基づき各ホールコントロール基板30が設置される階床15を特定している。これにより、制御装置20は、各ホールコントロール基板30の通信部32の通信アドレスに対応する階を判別可能となる。
したがって、第1の実施形態に係る階床設定システム1は、作業員14は、制御装置20に設けられる階床自動設定スイッチ21を操作するだけで、各階床に赴くこと無く、各ホールコントロール基板30に対する階床設定を完了させることができ、階床設定における作業員の負担を軽減することが可能である。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。図6は、第2の実施形態に係る階床設定システム1aの機能を説明するための一例の機能ブロック図である。なお、図6において、上述した図2と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。第2の実施形態に係る階床設定システム1aは、各ホールコントロール基板30aの初期状態(例えば出荷時点)における通信アドレスを、各ホールコントロール基板30aで共通とすることを可能としている。
図6に示すように、第2の実施形態に係るホールコントロール基板30aは、図2に示した第1の実施形態に係るホールコントロール基板30に対して基板制御部33が追加されている。基板制御部33は、アドレス設定部330とアドレス記憶部331とを含む。アドレス設定部330は、アドレス記憶部331に記憶される通信アドレスを、ホールコントロール基板30aのアドレスとして通信部32aに設定する。通信アドレスは、例えば16進数の数値により表されるものとする。アドレス記憶部331は、出荷時点など初期状態において、各ホールコントロール基板30aに共通の通信アドレスが初期アドレスとして記憶されている。
ホールコントロール基板30aは、階床設定システム1aの動作モードが自動階床設定モードに切り替わると、電圧測定部31により供給される電源の電圧値vnを測定する。電圧測定部31は、測定した電圧値vnを基板制御部33に渡す。基板制御部33において、アドレス設定部330は、電圧測定部31から渡された電圧値vnを、例えば16進数の値に変換し、変換した値と、アドレス記憶部331に記憶される初期アドレスとを足し合わせて新たな通信アドレスを生成する。アドレス設定部330は、生成した新たな通信アドレスによりアドレス記憶部331に記憶される初期アドレスを書き換える。
図3(a)〜図3(c)を用いて説明したように、各ホールコントロール基板30a供給される電源の電圧値は、各ホールコントロール基板30aが設置される階床15によって異なる。そのため、各ホールコントロール基板30aにおいて電圧測定部31により測定された電源の電圧値を、各ホールコントロール基板30aに共通の初期アドレスに足し合わせることで、各ホールコントロール基板30aに固有の通信アドレスを生成することができる。各ホールコントロール基板30aにおいて、こうして生成された通信アドレスを通信部32に設定することで、階床自動設定が可能となる。
図7は、第2の実施形態に係る制御装置20における階床設定処理を示す一例のフローチャートである。なお、図7において、上述した図5のフローチャートと共通する処理には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
ステップS100およびステップS101の処理は、図5のフローチャートにおけるステップS100およびステップS101の処理と同様である。すなわち、制御装置20は、ステップS100で階床自動設定スイッチ21がON操作されたと判定した場合(ステップS100、「Yes」)、処理をステップS101に移行させる。ステップS101で、制御装置20は、制御装置20自身の動作モードを階床設定モードに切り換えると共に、通信部24により、各ホールコントロール基板30に対して一斉同報通信を行い、各ホールコントロール基板30の動作モードを階床設定モードに切り換える。各ホールコントロール基板30aは、動作モードが階床設定モードに切り替えられると、電圧測定部31により電源の電圧値vnを測定する。
各ホールコントロール基板30aにおいて、アドレス設定部330は、電圧測定部31により測定された電圧値vnを16進数の値に変換し、変換した値と、アドレス記憶部331に初期アドレスとして記憶される通信アドレスと、を足し合わせて、各ホールコントロール基板30aに固有の通信アドレスを生成する。アドレス設定部330は、生成した通信アドレスにより、アドレス記憶部331に記憶される通信アドレスを書き換える。これにより、通信部32aに対して、各ホールコントロール基板30aに固有の通信アドレスが設定される。
アドレス設定部330は、アドレス記憶部331に記憶される通信アドレスの書き換えが完了すると、その旨示すアドレス書き換え完了通知と、電圧測定部31により測定された電圧値vnと、を通信部32aにより制御装置20に送信する。
次のステップS200で、制御装置20は、各ホールコントロール基板30aの通信部32aにより、各ホールコントロール基板30aに固有の通信アドレスから送信されたアドレス書き換え完了通知および電圧値vnを、通信部24により受信する。制御装置20において、階床特定部22は、各ホールコントロール基板30aに固有の通信アドレスを取得し、取得した通信アドレスと、受信した各電圧値vnと、を関連付けて記憶する。
次のステップS201で、制御装置20は、階床特定部22により、各ホールコントロール基板30aから受信したアドレス書き換え完了通知に基づき、各ホールコントロール基板30aにおいて通信アドレスの書き換えが完了したか否かを判定する。階床特定部22は、各ホールコントロール基板30aにおいてアドレスの書き換えが完了していないと判定した場合(ステップS201、「No」)、処理をステップS110に移行して異常を発報し、処理をステップS105に移行させる。
例えば、階床特定部22は、制御装置20に接続される全てのホールコントロール基板30aのうち少なくとも1のホールコントロール基板30aから通信アドレス書き換え完了通知を受信できなかった場合に、各ホールコントロール基板30aにおいてアドレスの書き換えが完了していないと判定する。
一方、制御装置20は、ステップS201で各ホールコントロール基板30aにおいて通信アドレスの書き換えが完了したと判定した場合(ステップS201、「Yes」)、処理をステップS102に移行させる。ステップS102以降の処理は、図5のフローチャートにおけるステップS102以降の処理と同様であるので、ここでの説明を省略する。
第2の実施形態に係る階床設定システム1aでは、各ホールコントロール基板30aの通信アドレスを、初期アドレスと、各ホールコントロール基板30aにおいて測定された電源の電圧値vnと、を用いて生成している。そのため、各ホールコントロール基板30aの初期アドレスを共通化することができ、各ホールコントロール基板30aのコストを抑制することが可能である。
また、第2の実施形態に係る階床設定システム1aでも、上述した第1の実施形態に係る階床設定システム1と同様に、各階床15に設置された各ホールコントロール基板30aにおいてそれぞれ測定した電源の電圧値vnに基づき、各ホールコントロール基板30aが設置される階床15を特定している。これにより、制御装置20は、各ホールコントロール基板30aの通信アドレスに対応する階を判別可能となる。
したがって、第2の実施形態に係る階床設定システム1aにおいても、上述した第1の実施形態に係る階床設定システム1と同様に、作業員14は、階床自動設定スイッチ21を操作するだけで、各階床に赴くこと無く、各ホールコントロール基板30に対する階床設定を完了させることができ、階床設定における作業員の負担を軽減することが可能となる。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。図8は、第3の実施形態に係る階床設定システム1bの機能を説明するための一例の機能ブロック図である。なお、図8において、上述した図2と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。第3の実施形態に係る階床設定システム1bは、各ホールコントロール基板30が有する電圧測定部31が正常に動作しているか否かを確認するようにしている。
図8に示すように、第3の実施形態に係る制御装置20bは、図2に示した第1の実施形態に係る制御装置20に対して電圧値確認部25が追加されている。電圧値確認部25は、通信部24bを介してホールコントロール基板30と通信を行うことができる。
電圧値確認部25は、各階床15に設置されたホールコントロール基板30の数と、隣接する階床15に設置されるホールコントロール基板30間の距離と、電源供給線40の導体抵抗と、に基づき電源供給線40の導体抵抗による階床15毎の電圧降下を計算し、計算した電圧降下の階床15による変化を示す曲線を求める。この曲線を、電圧降下理論曲線と呼ぶ。電圧値確認部25は、各ホールコントロール基板30において電圧測定部31により測定され制御装置20bに送信された電圧値vnと、電圧降下理論曲線と、を比較して、各ホールコントロール基板30の電圧測定部31の故障を検知する。
図9は、第3の実施形態に係る電圧降下理論曲線の例を示す図である。図9を用いて、電圧値確認部25による処理について説明する。図9において、横軸は階床15の階数を示し、縦軸は、各階床15のホールコントロール基板30に供給される電源電圧の理論値を示す。また、図9は、説明のため、最上階の階床15が3階、最下階の階床15が1階であるものとして示している。電圧値確認部25は、各ホールコントロール基板30において電圧測定部31により測定された電圧値vnが適切な値であるか否かを、電圧降下理論曲線200に基づき確認する。
各ホールコントロール基板30に供給される電源の電圧値に対する電圧降下値は、図3(a)〜図3(c)を用いて説明したように、接続される電源供給線40の導体抵抗Rnと、電源供給線40を流れる電流の電流値inと、ホールコントロール基板30の数と、により決定される。そのため、各ホールコントロール基板30に供給される電源の電圧値vnに対する電圧降下値は、理論的に算出することが可能である。
電圧値確認部25は、算出した電圧降下値に基づく電圧降下理論曲線200に対して閾値201aおよび201bを設ける。閾値201aおよび201bは、1階床当たりの最小の電圧降下値である最小電圧降下値vdminにより決定する。最小電圧降下値vdminは、例えば最下階の階床15と、当該最下階の1階上の階床15との間の電圧降下値である。図9の例では、1階と2階との間における電圧降下値が、最小電圧降下値vdminとなる。
一例として、ホールコントロール基板30の消費電流値を120[mA]、電源供給線40が持つ電気抵抗値を25[Ω/Km]、階高を4[m]とすると、上述した式(13)を参照し、1階床当たり最小電圧降下値vdminは、24[mV]と算出される。そのため、電圧降下理論曲線200に対して、±12[mV]の閾値201aおよび201bを設定する。
電圧値確認部25は、各ホールコントロール基板30から送信された各電圧値vnが、設定した閾値201aおよび201bによる範囲の範囲外であるか否かを判定する。電圧値確認部25は、各電圧値vnが閾値201aおよび201bによる範囲外の電圧値を含む場合、各ホールコントロール基板30のうち何れかのホールコントロール基板30の電圧測定部31が異常(故障)であると判定する。一方、電圧値確認部25は、各電圧値vnが電圧降下理論曲線200から大きく外れた電圧値を含まない、すなわち、各電圧値vnが何れも閾値201aおよび201bの範囲内にある場合、各電圧測定部31が正常に動作していると判定する。
図10は、第3の実施形態に係る制御装置20bにおける階床設定処理を示す一例のフローチャートである。なお、図10において、上述した図5のフローチャートと共通する処理には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
図10のフローチャートによる処理の開始に先んじて、制御装置20bにおいて、電圧値確認部25は、電圧降下理論曲線200と、電圧降下理論曲線200に対する閾値201aおよび201bとを求めておく。これら電圧降下理論曲線200と、閾値201aおよび201bとを求めるために用いる、設置される各ホールコントロール基板30の数、電源供給線40の導体抵抗値、および、階高は、例えば、作業員14により予め制御装置20bに対して設定されるものとする。
図10のフローチャートにおいて、ステップS100〜ステップS103の処理は、上述した図5のフローチャートにおけるステップS100〜ステップS103の処理と同様であるので、ここでの説明を省略する。
制御装置20bは、ステップS103で階床特定部22により各ホールコントロール基板30が設置されている階床15が特定されると、処理をステップS300に移行させる。ステップS300で、制御装置20bは、電圧値確認部25により、各ホールコントロール基板30から取得した各電圧値vnと、予め求めた電圧降下理論曲線200と、を比較する。より具体的には、電圧値確認部25は、階床15に関連付けられた電圧値vnと、電圧降下理論曲線200の当該階床15における値と、を比較する。
次のステップS301で、電圧値確認部25は、ステップS300の比較の結果に基づき、各電圧値vnに異常な電圧値が含まれるか否かを判定する。すなわち、電圧値確認部25は、各電圧値vnと、対応する階床15における閾値201aおよび201bとを比較し、各電圧値vnのうち閾値201aおよび201bによる範囲の範囲外の電圧値vを、異常な電圧値であると判定する。
図9の例では、電圧値v1およびv3は、対応する1階および3階の階床15において、閾値201aおよび201bによる範囲の範囲内の値である。そのため、電圧値確認部25は、これら電圧値v1およびv3を、異常では無い、すなわち正常な電圧値であると判定する。一方、電圧値v2は、閾値201aおよび201bによる範囲の範囲外の値である。そのため、電圧値確認部25は、この電圧値v2を異常な電圧値であると判定する。
制御装置20bは、電圧値確認部25により、各電圧値vnが異常な電圧値を含むと判定した場合(ステップS301、「Yes」)、処理をステップS110に移行させ、異常を発報する。一方、制御装置20bは、電圧値確認部25により、各電圧値vnが異常な電圧値を含まないと判定した場合(ステップS301、「No」)、処理をステップS104に移行させる。
ステップS104以降の処理は、図5のフローチャートにおけるステップS104以降の処理と同様であるので、ここでの説明を省略する。
なお、ステップS301では、各電圧値vnに異常な電圧値が含まれるか否かを判定し、異常な電圧値vnが測定されたホールコントロール基板30の特定は、行わない。これは、ステップS103において電圧値vnに基づき並べ替えを行うので、異常な電圧値が存在することにより特定される階床15が入れ替わってしまう可能性があり、これにより誤判定されてしまうおそれがあるためである。
この点について、図9を参照して説明する。一例として、2階に設置されるホールコントロール基板30において、3階に設置されるホールコントロール基板で測定された電圧値v3より高い電圧値v2’が測定された場合について考える。
この場合、ステップS103の並べ替えにより、2階と特定されるべきホールコントロール基板30の階床15が電圧値v2’に基づき3階と特定され、3階と特定されるべきホールコントロール基板30の階床15が電圧値v3に基づき2階と特定されることになる。電圧値v3は、最小電圧降下値vdminに基づく閾値201aおよび201bの範囲外の値となるため、異常な電圧値であると判定される。したがって、電圧値v3が測定された、2階に設置されるホールコントロール基板30の電圧測定部31が異常であると誤判定されてしまうことになる。
第3の実施形態に係る階床設定システム1bでも、上述した第1の実施形態に係る階床設定システム1と同様に、各階床15に設置された各ホールコントロール基板30においてそれぞれ測定した電源の電圧値vnに基づき、各ホールコントロール基板30が設置される階床15を特定している。これにより、制御装置20は、各ホールコントロール基板30の通信アドレスに対応する階を判別可能となる。
したがって、第3の実施形態に係る階床設定システム1bにおいても、上述した第1の実施形態に係る階床設定システム1と同様に、作業員14は、制御装置20bに設けられる階床自動設定スイッチ21を操作するだけで、各階床に赴くこと無く、各ホールコントロール基板30に対する階床設定を完了させることができ、階床設定における作業員の負担を軽減することが可能である。
このとき、第3の実施形態に係る階床設定システム1bでは、各ホールコントロール基板30で測定された電源の電圧値vnを、予め求めた電圧降下理論曲線200と比較することで、各ホールコントロール基板30が備える電圧測定部31の異常の有無を判定している。そのため、故障している電圧測定部31の有無を判定できると共に、電圧測定部31の動作異常に伴い階床15を誤って特定してしまう事態を抑制することが可能である。
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態について説明する。図11は、第4の実施形態に係る階床設定システム1cの機能を説明するための一例の機能ブロック図である。なお、図11において、上述した図2と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。第4の実施形態に係る階床設定システム1cは、各ホールコントロール基板30が有する通信部32と、制御装置20cが有する通信部24と、の間の通信の正常性を確認可能としている。
図11に示すように、第4の実施形態に係る制御装置20cは、図2に示した第1の実施形態に係る制御装置20に対して通信確認部26が追加されている。通信確認部26は、各ホールコントロール基板30から送信された電圧値vnの数を計数する。通信確認部26は、計数された電圧値vnの数と、ホールコントロール基板30が設置される階床15の数とを比較して、各通信部32と、通信部24との間の通信の正常性を確認する。
図12は、第4の実施形態に係る制御装置20cにおける階床設定処理を示す一例のフローチャートである。なお、図12において、上述した図5のフローチャートと共通する処理には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
図12のフローチャートによる処理の開始に先んじて、制御装置20cにおいて、通信確認部26は、物件の階床数、すなわち、ホールコントロール基板30が設置される階床15の数を取得する。階床15の数は、例えば、作業員14により予め制御装置20cに対して設定されるものとする。
ステップS100およびステップS101の処理は、図5のフローチャートにおけるステップS100およびステップS101の処理と同様である。すなわち、制御装置20cは、ステップS100で階床自動設定スイッチ21がON操作されたと判定した場合(ステップS100、「Yes」)、処理をステップS101に移行させる。ステップS101で、制御装置20cは、制御装置20自身の動作モードを階床設定モードに切り換えると共に、通信部24により、各ホールコントロール基板30に対して一斉同報通信を行い、各ホールコントロール基板30の動作モードを階床設定モードに切り換える。各ホールコントロール基板30aは、動作モードが階床設定モードに切り替えられると、電圧測定部31により電源の電圧値vnを測定する。
各ホールコントロール基板30は、動作モードが階床設定モードに切り替わると、電圧測定部31により電源の電圧値vnを測定する。また、制御装置20cは、動作モードが階床設定モードに切り替わると、階床特定部22により、通信部24を介して各ホールコントロール基板30に対して電圧測定部31により測定した電源の電圧値vnを要求する。各ホールコントロール基板30は、制御装置20cからの要求に応じて、測定した電圧値vnを通信部32を介して制御装置20cに送信する。制御装置20cは、各ホールコントロール基板30から送信された電圧値vnを、通信部24により受信する。
次のステップS400で、制御装置20cにおいて、通信確認部26は、各ホールコントロール基板30から送信され通信部24により受信された各電圧値vnを取得する。次のステップS401で、通信確認部26は、ステップS400で取得した電圧値vnの数を計数し、計数した数と、物件の階床数とが一致するか否かを判定する。
通信確認部26は、計数した電圧値vnの数と、物件の階床数とが一致しないと判定した場合(ステップS401、「No」)、処理をステップS110に移行させ、異常を発報する。この場合、各ホールコントロール基板30のうち少なくとも1のホールコントロール基板30が制御装置20と正常に通信可能ではないと判断できる。ステップS110の処理の後、処理がステップS105に移行される。
一方、通信確認部26は、計数した電圧値vnの数と、物件の階床数とが一致すると判定した場合(ステップS401、「Yes」)、処理をステップS102に移行させる。この場合は、各ホールコントロール基板30の全てが制御装置20と正常に通信可能であると判断できる。
ステップS102以降の処理は、図5のフローチャートにおけるステップS102以降の処理と同様であるので、ここでの説明を省略する。
第4の実施形態に係る階床設定システム1cでも、上述した第1の実施形態に係る階床設定システム1と同様に、各階床15に設置された各ホールコントロール基板30においてそれぞれ測定した電源の電圧値vnに基づき、各ホールコントロール基板30が設置される階床15を特定している。これにより、制御装置20cは、各ホールコントロール基板30の通信アドレスに対応する階を判別可能となる。
したがって、第4の実施形態に係る階床設定システム1cにおいても、上述した第1の実施形態に係る階床設定システム1と同様に、作業員14は、制御装置20cに設けられる階床自動設定スイッチ21を操作するだけで、各階床に赴くこと無く、各ホールコントロール基板30に対する階床設定を完了させることができ、階床設定における作業員の負担を軽減することが可能である。
このとき、第4の実施形態に係る階床設定システム1cでは、制御装置20cの通信確認部26により、各ホールコントロール基板30との間の通信の正常性を確認している。そのため、例えば一部のホールコントロール基板30との間の通信の不調により、物件の実際の階床数よりも少ない階床数で各階床15が特定されてしまう事態を抑制することが可能である。
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態について説明する。図13は、第5の実施形態に係る階床設定システム1dの機能を説明するための一例の機能ブロック図である。なお、図13において、上述した図2、図6、図8および図11と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。第5の実施形態に係る階床設定システム1dは、上述した第1乃至第4の実施形態に係る階床設定システム1、1a、1bおよび1cの機能を含み、端末接続部28に接続される端末装置に対して、階床設定モードにおける各状態を提示可能としている。
図13において、第5の実施形態に係る制御装置20dは、階床特定部22と、通信部24dと、電圧値確認部25と、通信確認部26と、状態記憶部27と、を含む。状態記憶部27は、階床特定部22、電圧値確認部25および通信確認部26から通信部24dを介して取得した、階床設定モードにおける各状態を示す情報を記憶する。端末接続部28は、制御装置20dと作業員14が保持する端末装置との中継を行う中継器の役割を担う。
端末装置は、例えば携帯容易に構成され、ユーザ操作を受け付ける操作部と、情報を表示する表示部とを含む。また、端末装置は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびストレージ(フラッシュメモリやハードディスクドライブ)と、表示部に対する表示を制御する表示制御部と、をさらに含み、コンピュータとしての構成を備える。このような端末装置としては、スマートフォンやタブレット型パーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータなどを適用することができる。これに限らず、端末装置は、第5の実施形態に係る階床設定システム1dに専用の装置であってもよい。
端末接続部28は、端末装置と有線通信により接続される。これに限らず、端末接続部28と端末装置とが無線通信にて接続されてもよい。端末装置は、後述する、第5の実施形態に係る表示を行うための表示プログラムが実行可能に搭載される。
第5の実施形態に係る制御装置20dによる処理は、上述の、図5、図7、図10および図12に示した各フローチャートによる処理を含むものとなる。
例えば、制御装置20dは、図5のフローチャートにおけるステップS100で階床自動設定スイッチ21がON操作されたと判定した場合(ステップS100、「Yes」)、その旨を状態記憶部27に記憶させ、処理をステップS101に移行させる。制御装置20dは、ステップS101により階床設定システム1dの動作モードが階床設定モードに切り替わると、制御装置20dは、その旨を状態記憶部27に記憶する。制御装置20dは、各ホールコントロール基板30aにおいて測定された電源の電圧値vnを取得する。
ステップS101の処理の後、制御装置20dにより、図7のフローチャートにおけるステップS200およびステップS201の処理と、図12のフローチャートにおけるステップS400およびステップS401の処理とが実行される。
ステップS200およびステップS201の処理により、各ホールコントロール基板30aにおいて、電圧測定部31により測定された電源の電圧値vnに基づき固有の通信アドレスが生成され、アドレス書き換え完了通知が各ホールコントロール基板30aから制御装置20dに送信される。制御装置20dは、各ホールコントロール基板30aからのアドレス書き換え完了通知を受信したか否かを判定する(図7のステップS201参照)。制御装置20dは、この判定結果を示す情報を状態記憶部27に記憶する。
ステップS400およびステップS401の処理により、制御装置20dは、各ホールコントロール基板30aから取得した電源の電圧値vnの数が物件の階床数と一致するか否かを判定する(図12のステップS401参照)。制御装置20は、この判定結果を示す情報を状態記憶部27に記憶する。
制御装置20dは、ステップS201において各ホールコントロール基板30aからのアドレス書き換えが完了通知を受信したと判定し(ステップS201、「Yes」)、且つ、ステップS401において各ホールコントロール基板30aから取得した電源の電圧値vnの数が物件の階床数と一致したと判定した(ステップS401、「Yes」)場合に、処理を例えば図5のフローチャートにおけるステップS102に移行する。
制御装置20dにおいて、階床特定部22は、ステップS102およびステップS103で、各ホールコントロール基板30aから取得した電源の電圧値vnに基づき、各ホールコントロール基板30aの階床15を特定する。
ステップS103の処理の後、制御装置20dにより、図10のステップS300およびステップS301の処理が実行される。制御装置20dは、予め求めた電圧降下理論曲線200と、各ホールコントロール基板30aから取得した電源の電圧値vnとを比較して、異常な電圧値が含まれるか否かを判定する(図10のステップS301参照)。制御装置20dは、この判定結果を示す情報を状態記憶部27に記憶する。
制御装置20dは、ステップS301において、各ホールコントロール基板30aから取得した電源の電圧値vnに異常な電圧値が含まれないと判定した場合(ステップS301、「No」)、処理を例えば図5のステップS104に移行させる。
ステップS104で、制御装置20dは、階床特定部22により、各ホールコントロール基板30aに予め設定されている通信アドレスに、特定した階床15を示す情報を割り当てる。階床特定部22は、各ホールコントロール基板30aの通信アドレスに対する階床15を示す情報の割り当てが完了すると、その旨を状態記憶部27に記憶させ、例えば表示灯群23に含まれる設定完了表示灯を点灯させる。
その後、制御装置20dは、ステップS105で階床自動設定スイッチ21がOFF操作されたと判定した場合(ステップS105、「Yes」)、その旨を状態記憶部27に記憶させ、ステップS106で階床設定モードを終了させる。
次に、第5の実施形態に係る、端末装置に対する情報の表示について、より具体的に説明する。制御装置20dは、例えば、端末装置から端末接続部28を介して送信される要求に応じて、状態記憶部27に記憶される、階床設定モードにおける各状態を示す情報を読み出す。制御装置20dは、状態記憶部27から読み出した当該情報を、端末接続部28を介して端末装置に送信する。すなわち、制御装置20dは、状態記憶部27から読み出した情報を端末装置に送信する送信部の機能を含む。端末装置は、制御装置20dから送信された情報を、表示制御部の制御により表示部に表示させる。
図14は、第5の実施形態に係る、端末装置の表示部に表示される情報を説明するための図である。図14において、端末装置50は、端末接続部28を介して制御装置20dに接続される。端末装置50は、例えば作業員14の操作に応じて起動された第5の実施形態に係る表示プログラムに従い、端末接続部28を介して、制御装置20dに対して状態記憶部27に記憶される情報の読み出しを要求する。制御装置20dは、この要求に応じて状態記憶部27から情報を読み出し、端末装置50に送信する。
端末装置50は、制御装置20dから端末接続部28を介して受信した、状態記憶部27から読み出された情報に基づき、画面表示情報500を生成する。端末装置50は、生成した画面表示情報500に基づく画面を、端末装置50の表示部に表示させる。
画面表示情報500は、階床設定モードの開始および終了を示す情報510と、階床設定モードの各フロー完了状態を示す情報520と、異常状態を示す情報530とを含む。階床設定モードの開始および終了を示す情報510は、階床自動設定スイッチ21のON操作およびOFF操作を示すスイッチON/OFF通知511を含む。スイッチON/OFF通知511は、例えばステップS100およびステップS106の処理において取得される情報である。
階床設定モードの各フロー完了状態を示す情報520は、アドレス書き換え完了通知521と、電源電圧値取得完了通知522と、階床特定完了通知523と、を含む。アドレス書き換え完了通知521は、例えばステップS201において各ホールコントロール基板30aからのアドレス書き換えが完了通知を受信したと判定された場合(ステップS201、「Yes」)に取得される情報である。電源電圧値取得完了通知522は、例えばステップS301において各ホールコントロール基板30aから取得した電源の電圧値vnに異常な電圧値が含まれないと判定された場合(ステップS301、「No」)に取得される情報である。また、階床特定完了通知523は、例えばステップS104において各ホールコントロール基板30aの通信アドレスに対する階床15を示す情報の割り当てが完了した場合に取得される情報である。
異常状態を示す情報530は、アドレス書き換え異常通知531と、基板の通信異常通知532と、電源電圧値異常通知533と、を含む。アドレス書き換え異常通知531は、例えばステップS201において各ホールコントロール基板30aにおいてアドレスの書き換えが完了していないと判定された場合(ステップS201、「No」)に取得される情報である。基板の通信異常通知532は、例えばステップS401において計数した電圧値vnの数と物件の階床数とが一致しないと判定した場合(ステップS401、「No」)に取得される情報である。また、電源電圧値取得完了通知522は、例えばステップS301において各ホールコントロール基板30aから取得した電源の電圧値vnに異常な電圧値が含まれると判定された場合(ステップS301、「Yes」)に取得される情報である。
異常状態を示す情報530に含まれる各情報(アドレス書き換え異常通知531、基板の通信異常通知532および電源電圧値異常通知533)は、それぞれエラーコード化し、対応する対策マニュアル534を表示させる。対策マニュアル534は、例えば予め作成し、端末装置50のストレージに記憶しておく。端末装置に搭載される、第5の実施形態に係る表示プログラムに対策マニュアル534を含めておいてもよい。
第5の実施形態に係る階床設定システム1dは、階床設定モードの各状態を示す情報を記憶する状態記憶部27を含む。階床設定システム1dは、状態記憶部27に記憶される情報を、端末接続部28に接続される端末装置50に送信し、端末装置の表示部に画面表示情報500に基づく画面を表示させることができる。
そのため、端末装置50の表示部に表示される画面表示情報500に基づく画面を閲覧することで、階床自動設定スイッチ21のONおよびOFF状態確認、階床設定モードの開始および終了状態確認、アドレス書き換え完了や電源電圧値の取得や階床の特定などのフローの完了状態確認が可能となる。また、画面表示情報500に基づく画面を閲覧することで、アドレス書き換え異常や、基板の通信異常、電源電圧値の異常などの確認も可能となる。これにより、異常箇所の特定が端末装置50の画面を閲覧することで可能となり、エレベータの階床設定における作業員の負担を軽減することが可能である。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。