つぎに、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
本発明の圧縮成形装置は、例えば、前記下型側面部材及び前記下型底面部材の少なくとも一方が、その内面(下型キャビティ側)から外面(外部空間側)まで貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔の前記下型内面側は、前記下型キャビティによる樹脂封止の際に、前記下型キャビティ内面に対して閉じており、前記樹脂封止品を前記下型キャビティから離型させる際に、前記下型キャビティ内面に対して開口しても良い。また、そのような本発明の圧縮成形装置を用いた前記本発明の圧縮成形方法は、例えば、前記樹脂封止工程において、前記貫通孔の前記下型内面側が、前記下型キャビティ内面に対して閉じられた状態で、前記下型キャビティにより前記基板の一方の面を樹脂封止し、前記離型工程において、前記樹脂封止品を前記下型キャビティから離型させる際に、前記貫通孔の前記下型内面側を前記下型キャビティ内面に対して開口させても良い。
本発明の圧縮成形装置は、例えば、前記下型側面部材が、その内側面から外側面まで貫通する前記貫通孔を有し、前記下型キャビティによる樹脂封止の際に、前記貫通孔の前記下型側面部材内側面側は、前記下型底面部材により閉じられ、前記樹脂封止品を前記下型キャビティから離型させる際に、前記下型底面部材を前記下型側面部材に対し相対的に下降させることで、前記下型側面部材の貫通孔の内側面側が、前記下型キャビティに対して開口しても良い。また、そのような本発明の圧縮成形装置を用いた前記本発明の圧縮成形方法は、例えば、前記樹脂封止工程において、前記貫通孔の前記下型側面部材内側面側が、前記下型底面部材により閉じられた状態で、前記下型キャビティにより前記基板の一方の面を樹脂封止し、前記離型工程において、前記樹脂封止品を前記下型キャビティから離型させる際に、前記下型底面部材を前記下型側面部材に対し相対的に下降させることで、前記下型側面部材の貫通孔の内側面側を、前記下型キャビティに対して開口させても良い。
本発明の圧縮成形装置は、例えば、前記貫通孔の内部に、柱状部材を有し、前記柱状部材は、前記貫通孔の前記下型内面側への挿入により、前記下型内面側を閉じることが可能であり、かつ、前記柱状部材は、前記貫通孔の前記下型内面側から引き出されることで、前記下型内面側を開くことが可能であっても良い。また、そのような本発明の圧縮成形装置を用いた前記本発明の圧縮成形方法は、例えば、前記樹脂封止工程において、前記柱状部材が前記貫通孔の前記下型内面側に挿入されて前記下型内面側が閉じられた状態で、前記下型キャビティにより前記基板の一方の面を樹脂封止し、前記離型工程において、前記柱状部材を、前記貫通孔の前記下型内面側から引き出すことで、前記下型内面側を開いても良い。
また、例えば、前記貫通孔が、前記下型底面部材に設けられ、前記下型底面部材の貫通孔は、前記下型底面部材の上面から下面まで貫通し、さらに、前記下型底面部材の貫通孔内に挿入された柱状部材を有し、前記下型キャビティによる樹脂封止する際には、前記下型底面部材の貫通孔の上面側が、前記柱状部材により閉じられており、樹脂封止された前記基板を前記下型キャビティから離型させる際に、前記柱状部材を前記下型底面部材に対し相対的に下降させることで、前記下型底面部材の貫通孔の上面側が、前記下型キャビティ内面に対して開口しても良い。
本発明の圧縮成形装置は、例えば、前記下型側面部材が、フレームフローティングピンを有し、前記フレームフローティングピンは、基板を載置可能であるとともに、前記下型側面部材上面から出し入れ可能であっても良い。また、そのような本発明の圧縮成形装置を用いた前記本発明の圧縮成形方法は、例えば、前記離型工程において、前記樹脂封止品を前記下型キャビティから離型させる際に、前記樹脂封止品が前記フレームフローティングピン上に載置された状態で、前記フレームフローティングピンを前記下型側面部材上面から出しても良い。
本発明の圧縮成形装置において、例えば、前記フレームフローティングピンは、前記下型側面部材上面から上方に向かって突き出すように設けられており、前記フレームフローティングピンは、前記基板を、前記下型側面部材上面から遊離した状態で載置可能であっても良い。また、例えば、前記フレームフローティングピンは、その先端に突起状の基板位置決め部を含み、前記基板位置決め部が、前記基板に設けられた貫通孔に挿入されることにより、前記フレームフローティングピンは、前記基板を載置可能であっても良い。
本発明の圧縮成形方法は、例えば、前記圧縮成形工程が、前記上型キャビティ及び前記下型キャビティに流動性樹脂を満たす工程と、前記成形型を型締めする工程と、前記成形型を型締めした状態において前記両キャビティにおける前記流動性樹脂を硬化させることによって硬化樹脂(封止樹脂)を形成する工程とを含んでいても良い。
本発明の圧縮成形装置は、例えば、さらに、下部基台と、前記下部基台に立てて設けられた支持部材と、前記支持部材の上部に設けられ前記下部基台に相対向する上部基台と、前記支持部材の中間部において昇降できるようにして取り付けられた昇降盤と、前記下部基台に取り付けられた第1の駆動機構と、前記昇降盤に取り付けられた第2の駆動機構と、前記第1の駆動機構と前記昇降盤とを接続する主接続部材と、前記下型側面部材に接続された第1の副接続部材と、前記下型底面部材に接続された第2の副接続部材とを備え、前記上型は前記上部基台に取り付けられ、前記第1の副接続部材は前記昇降盤に接続され、前記第2の副接続部材は前記第2の駆動機構に接続され、前記下型側面部材は、前記第1の駆動機構によって上下に駆動される前記昇降盤によって上下に駆動され、前記下型底面部材は、前記第2の駆動機構によって上下に駆動されても良い。また、そのような圧縮成形装置を用いた本発明の圧縮成形方法は、例えば、前記第1の副接続部材に接続された前記下型側面部材と前記第2の副接続部材に接続された前記下型底面部材との双方を上昇させる工程と、前記下型側面部材を上型側に存在する部材に付き当てた後に引き続き前記下型底面部材を上昇させる工程と、所定の位置において前記下型底面部材を停止させることによって前記下型キャビティを形成する工程と、硬化樹脂を成形する工程の後に、前記下型底面部材の上面(内底面)によって硬化樹脂の下面(頂面)が支持された状態において前記下型側面部材を下降させることによって前記下型側面部材の内側面(内周面)から前記硬化樹脂の外側面(外周面)を引き離す工程と、前記硬化樹脂を成形する工程の後に、前記下型側面部材の内側面(内周面)によって前記硬化樹脂の内側面(内周面)が支持された状態において前記下型底面部材を下降させることによって前記下型底面部材の上面(内底面)から前記硬化樹脂の下面(頂面)を引き離す工程と、前記下型側面部材と前記下型底面部材との双方を下降させる工程と、樹脂封止品を取り出す工程とを備え、前記圧縮成形装置が有する前記下部基台に設けられた前記第1の駆動機構を使用して、前記主接続部材を介して前記昇降盤を上下に駆動することによって、前記第1の副接続部材を介して前記昇降盤に接続された前記下型側面部材を昇降させ、前記昇降盤に設けられた前記第2の駆動機構を使用して、前記第2の副接続部材を介して前記第2の駆動機構に接続された下型底面部材を昇降させても良い。
本発明の圧縮成形装置は、例えば、さらに、下部基台と、前記下部基台に立てて設けられた支持部材と、前記支持部材の上部に設けられ前記下部基台に相対向する上部基台と、前記支持部材の中間部において昇降できるようにして取り付けられた昇降盤と、前記下部基台に取り付けられた第1の駆動機構と、前記昇降盤に取り付けられた第2の駆動機構と、前記第1の駆動機構と前記昇降盤とを接続する主接続部材と、前記下型側面部材に接続された第1の副接続部材と、前記下型底面部材に接続された第2の副接続部材とを備え、前記上型は前記上部基台に取り付けられ、前記第1の副接続部材は前記第2の駆動機構に接続され、前記第2の副接続部材は前記昇降盤に接続され、前記下型底面部材は、前記第1の駆動機構によって上下に駆動される前記昇降盤によって上下に駆動され、前記下型側面部材は、前記第2の駆動機構によって上下に駆動されても良い。また、そのような圧縮成形装置を用いた本発明の圧縮成形方法は、例えば、前記第1の副接続部材に接続された前記下型側面部材と前記第2の副接続部材に接続された前記下型底面部材とを上昇させる工程と、前記下型側面部材を上型側の部材に付き当てた後に引き続き前記下型底面部材を上昇させる工程と、所定の位置において前記下型底面部材を停止させることによって前記下型キャビティを形成する工程と、硬化樹脂を成形する工程の後に前記下型側面部材を下降させることによって前記下型側面部材における内側面(内周面)から前記硬化樹脂の外側面(外周面)を引き離す工程と、前記硬化樹脂の外側面(外周面)が支持された状態において前記下型底面部材を下降させることによって前記下型底面部材における上面(内底面)から前記硬化樹脂の下面(頂面)を引き離す工程と、前記下型側面部材と前記下型底面部材とを下降させる工程と、樹脂封止品を取り出す工程とを備え、前記圧縮成形装置が有する前記下部基台に設けられた前記第1の駆動機構を使用して前記主接続部材を介して前記昇降盤を上下に駆動することによって、前記第2の副接続部材を介して前記昇降盤に接続された前記下型底面部材を昇降させ、前記昇降盤に設けられた前記第2の駆動機構を使用して、前記第1の副接続部材を介して前記第2の駆動機構に接続された前記下型側面部材を昇降させることを特徴とする。
本発明の圧縮成形装置は、例えば、さらに、エジェクターピン下降抑制部材を有し、前記エジェクターピン下降抑制部材は、前記下型底面部材及び前記下型側面部材を、それぞれ別々に昇降させることで、前記樹脂封止品を、前記下型キャビティから離型させる際に、前記エジェクターピンを下降させようとする力が働くことを抑制しても良い。この場合において、例えば、前記下型が、前記エジェクターピン下降抑制部材を有し、型締め及び中間型締めの状態において、前記エジェクターピン下降抑制部材により、前記エジェクターピンに上向きの力が加わるようになっていても良い。そして、前記下型底面部材及び前記下型側面部材を、それぞれ別々に昇降させることで、前記樹脂封止品を、前記下型キャビティから離型させる際に、前記上向きの力により、前記エジェクターピンを下降させようとする力が働くことを抑制しても良い。より具体的には、例えば、後述の実施例のように、型締め及び中間型締めの状態において、前記エジェクターピンと結合した部材(エジェクタープレート及びリターンピン)の一部に前記エジェクターピン下降抑制部材が当接し、前記エジェクターピン下降抑制部材により、前記エジェクターピンと結合した部材(エジェクタープレート及びリターンピン)に上向きの力が加わることで、前記エジェクターピンと結合した部材(エジェクタープレート及びリターンピン)が押し上げられ、これにより、間接的に、前記エジェクターピンに上向きの力が加わるようになっていても良い。
また、本発明の圧縮成形装置において、前記下型が有する前記貫通孔は、例えば、前記下型に設けられ、前記下型キャビティ内面(下キャビティ型面)と前記下型の外側における外部空間とを連通する連通穴であっても良い。前記連通穴は、例えば、前記キャビティ内面において前記連通穴によって形成される開口を備えていても良い。また、そのような圧縮成形装置を用いた前記本発明の圧縮成形方法は、例えば、前記硬化樹脂を成形する工程よりも後に、前記下型に設けられ前記下型キャビティを構成する型面を、前記下型の外側における外部空間に連通する連通穴を使用して、前記下型キャビティを構成する型面に設けられ前記連通穴が有する開口を経由して前記外部空間に前記硬化樹脂の表面を連通する工程を備えていても良い。
また、本発明の圧縮成形装置において、例えば、前記連通穴は、前記下型側面部材に設けられ、前記連通穴が設けられる位置は、前記下型側面部材における型面と、前記下型キャビティ内の封止樹脂との間において間隙が形成され始めてから後に前記間隙と前記外部空間とを連通させる位置であっても良い。また、そのような圧縮成形装置を用いた前記本発明の圧縮成形方法は、例えば、前記硬化樹脂の頂面を引き離す工程において前記硬化樹脂の表面を連通する工程を行っても良い。
また、本発明の圧縮成形装置において、例えば、前記連通穴は、前記下型側面部材又は前記底面部材のうち少なくとも一方からなる連通用部材に設けられ、前記連通穴に挿入され進退できる柱状部材と、前記柱状部材に設けられ前記開口に嵌り合う頂面と、前記連通穴において前記開口から前記連通穴が伸びる方向からなる連通方向に向かって退いた位置から前記外部空間に向かって設けられ、平面視して前記柱状部材の断面形状を内包し、かつ、前記断面形状よりも拡がる部分を有する拡張部とを備え、前記頂面が前記開口に到達するまで前記柱状部材が前記下型キャビティに向かって前進することによって前記頂面が前記開口を塞ぎ、前記柱状部材が前記連通方向に向かって後退することによって前記開口と前記拡張部とを含む前記連通穴と前記外部空間とが連通しても良い。また、そのような圧縮成形装置を用いた前記本発明の圧縮成形方法は、例えば、前記上型キャビティ及び前記下型キャビティに流動性樹脂を満たす工程を開始するよりも前に、前記柱状部材の頂面が前記開口に到達するまで前記柱状部材を前記下型キャビティに向かって前進させることによって前記頂面を使用して前記開口を塞ぎ、硬化樹脂を成形する工程よりも後に、前記柱状部材を連通方向に向かって後退させることによって前記硬化樹脂の表面を連通する工程を行っても良い。
また、本発明の圧縮成形装置において、例えば、前記第1の副接続部材は、複数の成形型がそれぞれ有する前記下型側面部材に接続され、前記第2の副接続部材は、複数の成形型がそれぞれ有する前記下型底面部材に接続されていても良い。
また、本発明の圧縮成形装置は、例えば、前記上部基台と前記第1の副接続部材との間において設けられ少なくとも前記下型キャビティ及び前記上型キャビティを含む空間を外気から遮断された閉空間にするための外気遮断部材と、前記上部基台と前記第1の副接続部材との間において設けられた少なくとも1つのシール部材と、前記閉空間に接続され前記閉空間を減圧する減圧手段とを備えていても良い。また、そのような圧縮成形装置を用いた前記本発明の圧縮成形方法は、例えば、少なくとも前記下型キャビティ及び前記上型キャビティを含む空間を外気から遮断することによって閉空間を形成する工程と、少なくとも型締めする工程を完了するまでの間において前記閉空間を減圧する工程とを備えていても良い。
本発明における、「樹脂封止」とは、例えば、樹脂が硬化(固化)した状態であることを意味するが、これに限定されない。すなわち、本発明において、「樹脂封止」とは、少なくとも樹脂が型締め時における型キャビティ内に満たされている状態であればよく、樹脂が硬化(固化)しておらず、流動状態でもよい。
なお、本発明において、「載置」は、「固定」も含む。
また、一般に、「電子部品」は、樹脂封止する前のチップをいう場合と、チップを樹脂封止した状態をいう場合とがあるが、本発明において、単に「電子部品」という場合は、特に断らない限り、前記チップが樹脂封止された電子部品(完成品としての電子部品)をいう。本発明において、「チップ」は、少なくとも一部が樹脂封止されずに露出した状態のチップをいい、樹脂封止する前のチップも、一部が樹脂封止されたチップも、複数のチップのうちの少なくとも一つが樹脂封止されずに露出した状態のチップも含む。本発明における「チップ」は、具体的には、例えば、IC、半導体チップ、電力制御用の半導体素子等のチップが挙げられる。本発明において、少なくとも一部が樹脂封止されずに露出した状態のチップは、樹脂封止後の電子部品と区別するために、便宜上「チップ」という。しかし、本発明における「チップ」は、少なくとも一部が樹脂封止されずに露出した状態のチップであれば、特に限定されず、チップ状でなくてもよい。
また、本発明の樹脂封止装置又は樹脂封止方法により樹脂封止される基板(フレーム又はインターポーザともいう。)としては、特に限定されないが、例えば、リードフレーム、配線基板、ウェハー、セラミック基板等であっても良く、例えば、プリント基板等の回路基板(circuit board)であっても良い。本発明において、例えば、前記基板の一方の面のみを樹脂封止しても良いし、両面を樹脂封止しても良い。また、前記基板は、例えば、その一方の面又は両面にチップが実装された実装基板であっても良い。前記チップの実装方法は、特に限定されないが、例えば、ワイヤーボンディング、フリップチップボンディング等が挙げられる。本発明では、例えば、前記実装基板の一方の面又は両面を樹脂封止することにより、前記チップが樹脂封止された電子部品を製造しても良い。また、本発明の樹脂封止装置により樹脂封止される基板の用途は、特に限定されないが、例えば、携帯通信端末用の高周波モジュール基板、電力制御用モジュール基板、機器制御用基板等が挙げられる。なお、本発明において、「基板」は、例えば、リードフレーム、又はシリコンウエハ等であっても良い。また、基板の形状は、成形可能であればどのような形状や形態を用いても良く、例えば、平面視して矩形や円形の基板を用いても良い。
なお、本発明において、「フリップチップ」とは、ICチップ表面部の電極(ボンディングパット)にバンプと呼ばれる瘤状の突起電極を有するICチップ、あるいはそのようなチップ形態のことをいう。このチップを、例えば、下向きに(フェースダウン)してプリント基板などの配線部に実装させることができる。前記フリップチップは、例えば、ワイヤレスボンディング用のチップあるいは実装方式の一つとして用いられる。
本発明において、「樹脂封止品」は、特に限定されないが、例えば、チップを圧縮成形等により樹脂封止した電子部品であっても良い。また、本発明における「樹脂封止品」は、例えば、半導体製品、回路モジュール等の単数又は複数の電子部品を製造するための中間品であっても良い。また、本発明における「樹脂封止品」は、チップを樹脂封止した電子部品及びその中間品に限定されず、それ以外の樹脂封止製品等でも良い。
また、本発明において、樹脂封止するための樹脂としては、特に制限されず、例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。また、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂を一部に含んだ複合材料であってもよい。樹脂封止装置に供給する樹脂の形態としては、例えば、顆粒樹脂、流動性樹脂、シート状の樹脂、タブレット状の樹脂、粉状の樹脂等が挙げられる。
本発明において、「流動性樹脂」は、流動性を有する樹脂であれば、特に制限されず、例えば、液状樹脂、溶融樹脂等が挙げられる。また、本発明において、「液状」とは、常温(室温)で流動性を有し、力を作用させることにより流動することを意味し、流動性の高低、言い換えれば粘度の程度を問わない。すなわち、本発明において、「液状樹脂」は、常温(室温)で流動性を有し、力を作用させることにより流動する樹脂をいう。また、本発明において、「溶融樹脂」は、例えば、溶融により、液状又は流動性を有する状態となった樹脂をいう。前記溶融樹脂の形態は、特に限定されないが、例えば、成形型のキャビティやポット等に供給可能な形態である。
以下、本発明の具体的な実施例を図面に基づいて説明する。各図は、説明の便宜のため、適宜省略、誇張等をして模式的に描いている。
図1の断面図に、本発明の圧縮成形装置の構成の一例を、模式的に示す。なお、同図は、簡略化のため、成形型以外の部分(駆動機構等)については、図示を省略している。図示のとおり、この圧縮成形装置は、上型100と下型200とを有する成形型10を含む。上型100は、上型キャビティ131を有する。下型200は、下型キャビティ201を有する。前記下型200は、下型底面部材220と下型側面部材230とを有する。図示のとおり、下型底面部材220の上面は、下型キャビティ201の底面を構成している。また、下型側面部材230の内側面の一部が、下型キャビティ201の側面を構成している。下型底面部材220及び下型側面部材230は、それぞれ、駆動機構(図示略)に接続され、別々に昇降可能である。上型100は、上型キャビティ131上面から出し入れ可能なエジェクターピン143を有する。下型キャビティ201により、後述するように、基板の一方の面を圧縮成形で樹脂封止可能である。上型キャビティ131により、後述するように、前記基板の他方の面を圧縮成形で樹脂封止可能である。また、後述するように、下型底面部材220及び下型側面部材230を、それぞれ別々に昇降させることで、前記基板が樹脂封止された樹脂封止品を、下型キャビティ201から離型させることが可能である。また、上型キャビティ131上面からエジェクターピン143を突出させることで、前記樹脂封止品を、上型キャビティ131から離型させることができる。
図1の成形型10の構成について、さらに詳しく説明する。まず、上型100は、上型ベースブロック110、上型サイドブロック120、上型キャビティブロック130、エジェクタープレート140、及び上型外気遮断部材150により構成されている。上型ベースブロック110は、第1上型ベースブロック111、第2上型ベースブロック112、及び第3上型ベースブロック113が、下から上に前記順序で積層され、固定されて構成されている。第3上型ベースブロック113は、その下面の中心部分にのみ、第1上型ベースブロック111及び第2上型ベースブロック112が積層及び固定されている。なお、本発明において、「AにBが固定される」という場合は、「Aに別の部材(弾性体を含む)が取り付けられ、その別の部材にBが固定される」場合を含む。
エジェクタープレート140は、第1エジェクタープレート141及び第2エジェクタープレート142が、それぞれ、下から前記順序で積層され、固定されて構成されている。第2エジェクタープレート142には、エジェクターピン143及びリターンピン144が、それぞれ、第2エジェクタープレート142の下面から突出するように固定されている。エジェクターピン143及びリターンピン144は、それぞれ、上型キャビティブロック130を貫通している。エジェクターピン143は、上下移動により、上型キャビティ131の上面から出し入れ可能である。リターンピン144は上下移動により、上型キャビティブロック130下面における上型キャビティ131の外側から出し入れ可能である。
第1上型ベースブロック111及び第2上型ベースブロック112は、それぞれ、貫通孔を有している。図示のとおり、第1上型ベースブロック111の貫通孔には、カラー116が挿入され、さらに、カラー116の内部の貫通孔に、ボルト117が挿入されている。ボルト117は、カラー116の前記貫通孔内を上下に移動可能である。ボルト117の頭部(つば)は、第2上型ベースブロック112の貫通孔内に配置されている。ボルト117の、頭部と反対側の先端は、第2エジェクタープレート142内のねじ穴内に固定されている。これにより、ボルト117頭部が第1上型ベースブロック111の上面に引っかかることで、ボルト117及びエジェクタープレート140が落下しないようになっている。カラー116の外側は、上下に伸縮可能な弾性部材115で囲まれている。また、第1上型ベースブロック111の下面には、ストッパ115が設けられている。エジェクタープレート140が上昇したときに、エジェクタープレート140上面(第2エネクタープレート142上面)がストッパ115に接触することで、エジェクタープレート140のそれ以上の上昇が停止される。
上型サイドブロック120は、エジェクタープレート140の周囲を囲むように配置されている。上型サイドブロック120の上端が第1上型ベースブロック111下面に、上型サイドブロック120の下端が上型キャビティブロック130の上面に、それぞれ固定されている。これにより、上型キャビティブロック130は、上型サイドブロック120を介して上型ベースブロック110に固定されている。エジェクタープレート140は、上型ベースブロック110、上型サイドブロック120及び上型キャビティブロック130で囲まれた空間内を上下移動可能である。また、エジェクタープレート140中心部には、貫通孔が設けられ、サポート部材118が貫通している。サポート部材118は、上型キャビティブロック130と上型ベースブロック110との間に配置され、上型サイドブロック120をサポートする(上型キャビティブロック130を支える)役割をする。サポート部材118は、第1上型ベースブロック111、又は、上型キャビティブロック130の少なくとも一方に固定されていてもよい。
第3上型ベースブロック113において、第1上型ベースブロック111及び第2上型ベースブロック112が積層された部分の外側には、孔(貫通孔)114が設けられている。後述するように、貫通孔114を介して、成形型10の内部を減圧することが可能である。また、第3上型ベースブロック113において、貫通孔114のさらに外側の下面には、上型ベースブロック110、上型サイドブロック120、上型キャビティブロック130及びエジェクタープレート140の外側を囲むように、上型外気遮断部材150が固定されている。上型外気遮断部材150の下面には、Oリング150Aが取り付けられている。なお、Oリング150Aは、Oリングに代えて、同様の機能を有するシール部材であっても良い。また、Oリング(シール部材)の取付け位置は特に限定されない。例えば、上型外気遮断部材に代えて、後述する、下型外気遮断部材にOリング(シール部材)を取付けてもよい。また、Oリング(シール部材)は、外気を遮断できるのであれば、どのように取付けても構わない。
フレームフローティングピン(基板ピン)231は、下型側面部材230内部の弾性部材233に載置した状態で、下型側面部材230の上面から上方に向かって突き出すように設けられている。また、同図では、フレームフローティングピン231は、段付きピンであり、その先端に突起状の基板位置決め部232を含む。フレームフローティングピン231は、基板を、下型側面部材230上面から遊離した状態で載置可能である。具体的には、例えば、基板に設けられた貫通孔に、基板位置決め部232を挿入することにより、下型側面部材230から遊離した状態で固定することができる。ただし、本発明において、フレームフローティングピンの構造は、これに限定されず、例えば、基板位置決め部が無くても良いし、また、例えば、基板に、基板位置決め部を挿入するための穴(貫通孔)が空いていなくても良い。
なお、フレームフローティングピン231の基板位置決め部232は、上型キャビティブロック130下面の逃げ孔132に挿入可能である。これにより、後述するように、型締めの際に、基板と上型キャビティブロック130下面との間に隙間ができないようにすることができる。
さらに、下型側面部材230において、フレームフローティングピン231の外側には、プッシュピン(エジェクターピン下降抑制部材)234が、下型側面部材230内部の弾性部材235に載置した状態で、下型側面部材230の上面から上方に向かって突き出すように設けられている。プッシュピン234は、上型のリターンピン144と対向する位置に設けられ、後述するように、型締め時に、プッシュピン234とリターンピン144とが当接する。
さらに、下型側面部材230には、貫通孔236が設けられている。貫通孔236は、下型側面部材230の内側面から外側面まで貫通している。後述するように、下型キャビティ201による樹脂封止時には、下型側面部材230に設けられた貫通孔236の内側面側が、下型底面部材220により閉じられている。そして、樹脂封止品を下型キャビティ201から離型させる際に、下型底面部材220を下型側面部材230に対し相対的に下降させることで、下型側面部材230に設けられた貫通孔236の内側面側が、下型キャビティ201に対して開口する。
下型ベースブロック210は、第1下型ベースブロック211及び第2下型ベースブロック212が、上から前記順序で積層されて固定されている。そして、下型側面部材230は、第1下型ベースブロック211上に固定されている。
第2下型ベースブロック212の上面の周縁部には、第1下型ベースブロック211、下型底面部材220及び下型側面部材230を取り囲むように、下型外気遮断部材250が固定されている。下型外気遮断部材250は、上型外気遮断部材150と対向する位置に配置されている。後述するように、型締め時に、下型外気遮断部材250の上端がOリング150Aに当接する。
下型ベースブロック210は、駆動機構(図示略)に接続され、下型側面部材230及び下型外気遮断部材250とともに昇降可能である。
下型底面部材220の下面には、下型底面部材用取付部材(以下、単に「取付部材」又は「底面部材用取付部材」ということがある。)221が固定されている。取付部材221は、第1下型ベースブロック211及び第2下型ベースブロック212を貫通している。取付部材221は、駆動機構(図示略)に接続され、下型ベースブロック210、下型側面部材230及び下型外気遮断部材250とは別々に昇降可能である。
つぎに、図2〜11を用いて、図1の圧縮成形装置を用いた圧縮成形方法(樹脂封止品の製造方法)の一例について説明する。
まず、図2に示すように、下型キャビティ201内に顆粒樹脂(樹脂材料)20aを供給する。このとき、顆粒樹脂20aの供給に先立ち、あらかじめ、加熱機構(図示略)により、下型200全体を加熱しても良い。顆粒樹脂20aの供給方法は、特に限定されず、例えば、搬送機構(図示略)等を用いて顆粒樹脂20aを下型キャビティ201の位置まで搬送しても良い。また、例えば、計量機構(図示略)等を用いて、適切な量の顆粒樹脂20aを下型キャビティ201内に供給しても良い。
なお、樹脂材料20aは、本実施例では顆粒樹脂を例示しているが、これに限定されない。例えば、樹脂材料20aは、常温で固形状であれば、任意の形状(例えば、粉状、顆粒状、塊状、シート状、薄片状等)でも良い。また、樹脂材料20aは、例えば、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等)でも良いし、熱可塑性樹脂でも良い。
つぎに、図3に示すとおり、フレームフローティングピン231に基板(フレーム)1を供給(載置)する。具体的には、フレームフローティングピン231先端の基板位置決め部232を、基板1の孔3に挿入することにより、フレームフローティングピン231に基板1を供給(載置)する。なお、同図では、基板1の両面にチップ(樹脂封止されていない電子部品)2が固定され、封止前基板1Aを構成している。ただし、本発明において、基板はこれに限定されない。例えば、チップが固定されていない基板を用いても良いし、後述するように、基板に孔が空いていなくても良い。また、例えば、図示していないが、チップ2と基板(フレーム)1とを電気的に接続するためのボンディングワイヤ(ワイヤボンディング)によって、チップ2及び基板1が接続されていても良い。
また、このとき、加熱機構(図示略)により下型200を加熱することで、図3に示すとおり、下型200の熱により、顆粒樹脂20aが溶融し、流動性樹脂(溶融樹脂)20bに変化する。前述のとおり、顆粒樹脂20aの供給に先立ち、あらかじめ、前記加熱機構により、下型200全体を加熱しても良い。
つぎに、図4に示すとおり、下型200全体を、矢印X1の方向に上昇させ、中間型締めを行う。より具体的には、下型の下方に設けられ、下型ベースブロック210を介して下型側面部材230に接続された前記駆動機構(型開閉機構、図示略)によって、下型外気遮断部材250とOリング150Aとが接触する位置(中間型締め位置)まで下型200全体を上昇させる。これによって、成形型10内が外気から遮断される。図示のとおり、この中間型締めの状態では、基板1(封止前基板1A)は、下型側面部材230及び上型キャビティブロックによりクランプされて(挟まれて)おらず、フレームフローティングピン231に載置されて下型側面部材230上面から浮いたままである。また、下型のプッシュピン234の先端が、上型のリターンピン144の先端に当接することで、エジェクタープレート140全体が、プッシュピン234により若干押し上げられた状態になっている。
なお、中間型締めの状態では、例えば、Oリング(シール部材)150Aは、下型外気遮断部材250に接触し、又は、接触による圧力で変形し始めているが、完全につぶれてはいない。
つぎに、図4の状態から、図5に示すとおり、第3上型ベースブロック113の孔114から、成形型10内の空気を矢印Y1の方向に吸引して強制排出し、成形型10内を減圧する。空気の吸引には、吸引機構(図示略)を用いることができる。吸引機構は特に限定されないが、例えば、真空ポンプ等を用いることができる。
つぎに、図6に示すとおり、型締め(本締め、又は完全型締めともいう。)を行う。具体的には、図示のとおり、下型200全体を、矢印X2で示す方向に、さらに上昇させ、基板1(封止前基板1A)を、下型側面部材230及び上型キャビティブロック130によりクランプして(挟んで)保持する。このとき、エジェクタープレート140全体が、リターンピン144を介してプッシュピン234により押し上げられて上昇する。そして、図示のとおり、第2エジェクタープレート142の上面がストッパ115に当接することで、エジェクタープレート140の上昇が停止する。
なお、型締め(本締め)の状態では、前述のとおり、基板1(封止前基板1A)は、下型側面部材230及び上型キャビティブロック130によりクランプされて(挟まれて)保持されている。また、シール部材150Aは、例えば、上型外気遮断部材150と下型外気遮断部材250との間に挟まれて潰れた状態である。
つぎに、図7に示すとおり、下型底面部材220を上昇させて、基板1の両面を圧縮成形する。すなわち、図示のとおり、前記型開閉機構とは別の、下型底面部材220に接続された前記駆動機構(底面部材駆動機構、図示略)によって、下型底面部材220を矢印Z1の方向に上昇させる。下型底面部材220が上昇することで、図示のとおり、流動性樹脂(溶融樹脂)20bが、基板1の孔3から上型キャビティ131内に流入し、上型キャビティ131及び下型キャビティ201に樹脂が充填され、流動性樹脂20bが加圧される。なお、上型100は、あらかじめ加熱機構(図示略)により加熱しても良い。上型100の加熱機構は、下型200の加熱機構と同一でも良いし、別であっても良い。
そして、時間経過により、図8に示すとおり、流動性樹脂20bが硬化して樹脂封止品(樹脂成形体、パッケージ)1Bが形成される。なお、例えば、流動性樹脂20bが熱硬化性の場合、上型100及び下型200をさらに加熱することで硬化(固化)させても良い。また、例えば、流動性樹脂20bが熱可塑性の場合、上型100及び下型200の加熱を停止することで硬化させても良い。樹脂封止品1Bは、基板1(基板の孔3を含む)と、封止樹脂20と、基板1に固定され封止樹脂20により樹脂封止されたチップ2とにより形成されている。樹脂封止品1Bの形成(流動性樹脂の硬化)後、図8に示すように、下型底面部材220を矢印Z2の方向に下降させて、下型パッケージ底面(樹脂封止品1Bにおける下型キャビティ側の封止樹脂20の底面)を離型させる。このとき、下型側面部材230に設けた貫通孔236と、下型底面部材220及び下型側面部材230の摺動隙間(図示略)とが、下型キャビティ201と連通する。これにより、下型キャビティ201と下型側面部材230の外面との間に空気の通り道ができる。これによって、離型により形成される下型パッケージ底面と下型底面部材220の上面との間の空間が、下型底面部材220の下降により減圧されて下型パッケージ(下型キャビティ側の封止樹脂20)が引き込まれることを防止できる。また、このとき、図示のとおり、上型の孔114からの吸引による減圧を解除しても良い。
つぎに、図9に示すとおり、前記底面部材駆動機構により、下型底面部材220を矢印Z3の方向に上昇させて、下型パッケージ底面(樹脂封止品1Bにおける下型キャビティ側の封止樹脂20の底面)に当接させる。これは、次工程において下型パッケージ側面(樹脂封止品1Bにおける下型キャビティ側の封止樹脂20の側面)を離型させる際に、基板1が変形することを抑制するためである。
そして、図10に示すとおり、前記型開閉機構によって下型側面部材230を下降させ、下型パッケージ側面を離型させる。この時、下型底面部材220は下降しないように、前記底面部材駆動機構によって下型底面部材220を矢印Z3の方向に加圧(上昇)させておく。また、この時、図10では、下型側面部材230を下降させても、下型のプッシュピン234による、上型のリターンピン144を押し上げようとする力は解除されていない。これは、プッシュピン234の下方に配置された弾性部材235により、プッシュピン234を押し上げようとする力が働いているためである。これにより、下型側面部材230を下降させても上型のエジェクターピン143を下降させようとする力が働くことを防止又は抑制している。
なお、本発明では、プッシュピン及びリターンピンは任意であり、設けても設けなくても良い。ただし、図10において、仮に、プッシュピン234を設けず、リターンピン144と下型側面部材230とが接触するように構成した場合、下型側面部材230を下降させると、リターンピン144を押し上げようとする力が解除されることになる。この場合、第2エジェクタープレート142上方の弾性部材119による弾性力が、エジェクターピン144を介して上型パッケージ(樹脂封止品1Bにおける上型キャビティ側の封止樹脂20)に加わることになる。この力による上型パッケージの損傷等を防止するために、プッシュピンを設けることが好ましい。
さらに、図11に示すとおり、前記型開閉機構によって、下型200全体を、矢印X4の方向にさらに下降させる。この時、下型底面部材220が樹脂封止品1Bを押し上げようとする力を解除させておく。下型200を矢印X4の方向さらに下降させることで、プッシュピン234によるリターンピン144を押し上げようとする力は解除される。そして、前述の、第2エジェクタープレート142上方の弾性部材119による弾性力が、エジェクターピン144を介して上型パッケージを押し下げ、これにより、上型パッケージがエジェクターピン144によって離型される。このようにして、両面パッケージ(樹脂封止品1Bの両面の封止樹脂20)の離型が完了する。
以上、図2〜11で説明したようにして、本実施例の圧縮成形方法(樹脂封止品の製造方法)を行うことができる。ただし、本発明の圧縮成形方法及び樹脂封止品の製造方法は、これに限定されない。
本発明によれば、例えば図1〜11で説明したように、上型キャビティ上面からエジェクターピンを突出させることで樹脂封止品を上型キャビティから離型させるとともに、下型底面部材及び前記下型側面部材を、それぞれ別々に昇降させることで、樹脂封止品を下型キャビティから離型させる。これにより、離型フィルムを用いなくても、圧縮成形により基板の両面を樹脂封止して形成された樹脂封止品の両面を安定して離型できる。すなわち、本発明によれば、効率よく基板の両面を圧縮成形することができる。
また、本発明において、フレームフローティングピンは任意であり、設けても設けなくても良い。例えば、フレームフローティングピンを設けず、基板を、直接下型側面部材上面に載置(セット)しても良い。しかしながら、基板(フレーム)をフレームフローティングピンにセットすることで、基板が下型キャビティに蓋をして下型キャビティを塞ぐことを防止できるので、より安定して下型キャビティ内を減圧することができる。また、フレームフローティングピンを用いることで、例えば、減圧によって(樹脂内部から発生するガス等により)樹脂が発泡した場合でも、発泡した樹脂がフレームに触れることを抑制又は防止できる。これにより、前記樹脂がフレームをつたって樹脂漏れすることを抑制又は防止できる。
なお、図2〜11の圧縮成形方法(樹脂封止品の製造方法)では、下型パッケージの底面を先に離型させ、その後に側面を離型させた。しかし、この順序を逆にし、下型パッケージの側面を先に離型させ、その後に底面を離型させても良い。
また、図12及び13に、図1〜11の圧縮成形装置、圧縮成形方法及び樹脂封止品の製造方法の変形例を示す。この例では、基板1を、下型200に代えて上型100にセットする。また、この圧縮成形装置では、上型の構造が図1〜11と異なる。具体的には、図12に示すとおり、この圧縮成形装置における上型101は、エジェクタープレート140、リターンピン144、ストッパ115、カラー116、ボルト117、サポート118及び弾性部材119を有していない。上型キャビティブロック130は、第1上型ベースブロック111の下面に直接固定されている。また、この上型101は、図1〜11のエジェクターピン143に代えて、上型キャビティブロック130及び第1上型ベースブロック111の内部に、エジェクターピン143Aを有する。エジェクターピン143Aは、第2上型ベースブロック112及び第3上型ベースブロック113の内部に設けられたエジェクターピン駆動機構143Bによって、上型キャビティ131の上面から出し入れ可能である。また、上型キャビティブロック130における逃げ孔132は、図12では図示していない。しかし、図12の上型キャビティブロック130は、図1〜11と同様に、下型のフレームフローティングピンの基板位置決め部が挿入される逃げ孔を有していても良い。これら以外は、図12の上型101は、図1〜11の上型100と同様である。また、下型は、図12では図示していないが、例えば、図1〜11の下型200と同様でも良い。また、例えば、下型のプッシュピン234及び弾性部材235が無くても良い。図12の上型101には、プッシュピン234に当接するリターンピンが無いためである。
図12の圧縮成形装置を用いた圧縮成形方法(樹脂封止品の製造方法)は、特に限定されないが、例えば、基板1(封止前基板1A)を、下型200に代えて上型キャビティブロック130の下面にセット(固定)すること以外は、図2〜11と同様でも良い。図12は、樹脂封止品1Bが形成されて下型パッケージ(樹脂封止品1Bにおける下型キャビティ側の封止樹脂20)が離型し終わった状態を表す。図示のとおり、樹脂封止品1Bは、上型キャビティブロック130の下面にセット(固定)されている。この状態で、図示のとおり、成形型を型開きした後に、基板(フレーム)回収機構300を樹脂封止品1Bの下方に配置する。基板回収機構300は、図示のとおり、周縁部が上方に隆起しており、樹脂封止品1Bにおける基板1の、封止樹脂20で封止されていない周縁部を載置することができる。そして、図13に示すとおり、エジェクターピン駆動機構143Bによりエジェクターピンを上型キャビティ131上面から突出させて、上型パッケージ(樹脂封止品1Bにおける上型キャビティ側の封止樹脂20)を離型させる。そして、図示のとおり、基板回収機構300に樹脂封止品1Bを載置して回収する。
さらに、図14〜17に、図1〜11の圧縮成形装置、圧縮成形方法及び樹脂封止品の製造方法の別の変形例を示す。この例では、圧縮成形後に、上型を先に離型させ、その後に下型を離型させる。それ以外は、図1〜11と同様である。なお、成形型10の構造も図1〜11と同様であるが、図14〜17では、下型側面部材230のフレームフローティングピン231、基板位置決め部232、弾性部材233、プッシュピン234、及び弾性部材235は、簡略化のために図示を省略している。
図14〜17による圧縮成形方法(樹脂封止品の製造方法)について、さらに具体的に説明する。まず、図14に示すとおり、基板1(封止前基板1A)を下型にセットするとともに、下型キャビティ201内に流動性樹脂(溶融樹脂)20bが存在する状態とする。この工程は、図2〜3と同様の手順で行うことができる。
つぎに、図15に示すとおり、下型200を上昇させ、下型キャビティ201及び上型キャビティ231の両方を流動性樹脂20bで満たして、基板1の両面を樹脂封止する。この工程は、図4〜7と同様の手順で行うことができる。
つぎに、流動性樹脂が硬化し封止樹脂20となって樹脂封止品1Bが形成され、圧縮成形(樹脂封止)が完了した後に、図16に示すとおり、下型200の全体を前記型開き機構(駆動機構)により下降させて上型パッケージを離型させる。具体的には、下型200全体を下降させると、下型200が上型のリターンピン144を介してエジェクタープレート140全体を押し上げようとする力が解除される。これにより、エジェクターピン143が、エジェクタープレート140全体と共に下降するので、エジェクターピン143により上型パッケージが押し下げられて離型される。
さらに、図17に示すとおり、下型底面部材220を、前記底面部材駆動機構により上昇させて、下型パッケージ側面を離型させる。その後、下型パッケージ底面を離型させる。このようにして、図14〜17の圧縮成形方法(樹脂封止品の製造方法)を行うことができる。下型パッケージ底面を離型させる工程は図示しないが、例えば、図17の状態から再度型締めして基板1を上型キャビティ部材130及び下型側面部材230でクランプした後に、図8と同様に下型底面部材220のみを下降させれば良い。また、下型パッケージの側面及び底面の離形の順序を逆にして、底面を先に離型させた後に側面を離型させても良い。
さらに、図18に、図1〜11の圧縮成形装置、圧縮成形方法及び樹脂封止品の製造方法の別の変形例を示す。図示のとおり、この例は、基板1に孔3が空いていないこと以外は、図1〜11と同様である。図18の成形型10の構造は、図1〜11と全く同じである。図18の例では、基板1に孔3が空いていないため、下型キャビティ201内の流動性樹脂20bを上型キャビティ131側に流動させることができない。このため、図示のとおり、下型キャビティ側の樹脂とは別に、基板1の上面(上型キャビティ側)に、顆粒樹脂(樹脂材料)30aを載置する。なお、樹脂材料30aは、顆粒樹脂を例示しているが、樹脂材料20aと同様、顆粒樹脂に限定されず任意であり、また、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でも良い。
また、図18は、基板1(封止前基板1A)がフレームフローティングピン231上に載置され、かつ、下型キャビティ201内に流動性樹脂20bが充填された状態を示している。これらの工程は、例えば、図2〜3と同様の手順で行うことができる。また、基板1上の顆粒樹脂30aについては、基板1に顆粒樹脂30aを載せてから成形型にセットしてもよいし、基板1を成形型にセットしてから基板1上に顆粒樹脂30aを供給してもよい。また、基板1において、顆粒樹脂30aを載置する側のチップ2については、例えば、フリップチップを用いても良い。
つぎに、図19〜24を用いて、本発明の別の実施例について説明する。
前述のとおり、図1〜18においては、圧縮成形装置における成形型の構造及び動作を説明するために、成形型以外の部分(下型を上下させる駆動機構等)については、図示及び詳しい説明を省略した。本実施例では、本発明の圧縮成形装置における成形型以外の部分(特に、下型を上下させる駆動機構)の構造及び動作についても詳しく説明する。また、それを用いた圧縮成形方法及び樹脂封止品の製造方法についても説明する。
図19の断面図に、本実施例の圧縮成形装置の構造を模式的に示す。図示のとおり、この圧縮成形装置は、下部基台301を有する。下部基台301の四隅に、支持部材である4本のタイバー302が固定される。上方に向かって伸びる4本のタイバー302の上部に、下部基台301に相対向する上部基台303が固定される。下部基台301と上部基台303との間において、下部基台301と上部基台303のそれぞれに相対向する昇降盤304が、4本のタイバー302にはめ込まれる。昇降盤304は、後述する1つの駆動機構によって駆動されることにより、上昇又は下降する。
上部基台303の下面には、上型100が固定される。上型100の下面の中心部には、上型キャビティ131が設けられている。また、上型100には、図12及び13と同様に、上型キャビティ131の上面から出し入れ可能なエジェクターピン143A及びそれを駆動するエジェクターピン駆動機構143Bが設けられている。上型100の周縁部(上型キャビティ131の周囲)の真下には、上型100に相対向して枠状の下型側面部材230が設けられる。下型側面部材230の上面が上型100の下面に対向する。下型側面部材230の中央部には、平面視して矩形の貫通孔が設けられる。下型側面部材230の貫通孔にはめ込まれて、矩形の平面形状を有する下型底面部材220が設けられる。下型側面部材230と下型底面部材220とは、後述する2つの駆動機構によって上下に駆動される。このことによって、下型側面部材230と下型底面部材220とは互いに独立して上昇又は下降することができる。
下型側面部材230と下型底面部材220とは、併せて下型200を構成する。上型100と下型200とは、併せて1組の成形型10(以下単に「成形型10」という。)を構成する。上型100と下型200とには加熱機構(図示略)が設けられる。
なお、図19の成形型10、上型100及び下型200は、例えば、実施例1(図1〜18)における成形型10、上型100及び下型200と全く同じでも良いが、図19では、構造を簡略化して図示及び説明をしている。以下の各図における成形型10についても、同様である。
下型200の上面には、流動性樹脂によって満たされる空間からなる下型キャビティ201が形成される。以下において、下型キャビティ201の回りを取り囲む部分を、下型キャビティの「側面」と呼び、下型キャビティ201の底を構成する部分を、下型キャビティの「底面」と呼ぶ場合がある。下型キャビティ201の側面は下型側面部材230の内周面(内側面)230Aによって構成される。下型キャビティ201の底面は下型底面部材220の頂面(上面)によって構成される。また、以下において、下型底面部材220の頂面(上面)を「下型底面部材220の内底面220A」ということがある。下型キャビティ201は、下型側面部材230の内周面230Aと下型底面部材220の内底面220Aとによって囲まれた空間である。
下型キャビティ201には、顆粒樹脂(樹脂材料)20aが供給される。なお、樹脂材料20aは、実施例1と同様、顆粒樹脂に限定されず任意であり、また、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でも良い。
下部基台301の上には、第1の駆動機構としてモータ311が固定される。モータ311はボールねじ(主接続部材)312を有し、ボールねじ(主接続部材)312にはボールナット(主接続部材)313がはめ込まれる。昇降盤304の下面には昇降盤用取付板(主接続部材)314が固定され、昇降盤用取付板314にはボールナット313が固定される。
昇降盤304の上面には枠状部材(第1の副接続部材)213が固定され、枠状部材213の上面には下型ベースブロック(第1の副接続部材)210が固定される。枠状部材213は、複数個の板状部材、柱状部材等であってもよい。下型ベースブロック210の上面には、複数の弾性体(コイルばね、皿ばね等)22が配置され、それらの弾性体22の上に下型側面部材230が置かれる。これらの構成により、モータ311が回転することによって、ボールナット313と昇降盤用取付板314と昇降盤304と枠状部材213と下型ベースブロック210と複数の弾性体22とを順次介して下型側面部材230が昇降する。
昇降盤304の上における平面視して下型底面部材220の中心に対応する位置に、第2の駆動機構としてモータ224が固定される。モータ224はボールねじ(第2の副接続部材)223を有し、ボールねじ223にはボールナット(第2の副接続部材)222がはめ込まれる。ボールナット222は、下型底面部材220の下部に固定された底面部材用取付部材(第2の副接続部材)221に固定される。下型底面部材220と底面部材用取付部材221との間に弾性体(図示略)を設けてもよい。
底面部材用取付部材221は、下型ベースブロック210の中心部に設けられた貫通孔(貫通穴)225において昇降できる。貫通孔225における下型ベースブロック210の内周面と底面部材用取付部材221の外周面との間には、ふっ素ゴム等からなるシール部材226が貫通孔225の全周にわたって設けられる。これによって、下型底面部材220と下型ベースブロック210との間の空間と、下型ベースブロック210の下方であって枠状部材213の内側の空間とが、遮断される。
下型ベースブロック210の上面には、枠状の外気遮断部材150が固定される。上部基台303と下型ベースブロック210との間に存在する構成要素(上部基台303と下型ベースブロック210とを含む)同士の間において、ふっ素ゴム等からなるシール部材150Bが設けられる。例えば、外気遮断部材150の上面と上部基台303の下面との間において、外気遮断部材150の上面と上部基台303の下面との少なくとも一方にシール部材150Aが設けられる。外気遮断部材150の下面と下型ベースブロック210の上面との間においてもシール部材150Bが同様に設けられる。なお、シール部材150A及びシール部材150Bは、例えば、実施例1のOリング150Aと同様に、Oリングでも良い。また、シール部材150A及びシール部材150Bのうちいずれか1個のみを設けてもよい。下型ベースブロック210の上面と上部基台303の下面とに、それぞれ1個の枠状の外気遮断部材を相対向するように取り付けてもよい。この場合には、2個の枠状の外気遮断部材が有する相対向する面の少なくとも一方に、シール部材が設けられる。
なお、実施例1の成形型10では、上型外気遮断部材150、Oリング(シール部材)150A、及び下型外気遮断部材250を設けたが、これに代えて、例えば、本実施例のように、外気遮断部材150と、シール部材150A及びシール部材150Bの少なくとも一方とを設けても良い。
下型ベースブロック210における平面視して下型側面部材230の外側には、貫通孔(吸引用孔)321が設けられる。貫通孔321は、吸引用配管322を経由して真空ポンプ、減圧タンク等の減圧源(吸引機構)323に接続される。吸引用配管322には、貫通孔321を減圧源323と大気とのいずれかに接続するための切替弁324が設けられる。
上型100の下面には、吸着、クランプ等の周知の方法によって封止前基板1Aが仮固定される。封止前基板1Aは、基板(回路基板)1とその上に実装されたチップ2とを有する。チップ2は、例えば、半導体チップ等からなる。封止前基板1Aの接続端子とチップ2の接続端子とは、ワイヤ、バンプ等の導電性材料(図示略)によって電気的に接続される。封止前基板1Aの表面(図では下側の面)における所定の領域とチップ2とは、下型キャビティ201における流動性樹脂が硬化して成形された封止樹脂によって、樹脂封止される。下型側面部材230には、下型キャビティ201と、外気遮断部材150の内側の空間であって成形型10の外側の空間である外部空間Eとを連通する、1個又は複数個の貫通孔(連通穴)236が設けられる。貫通孔236は、成形したい封止樹脂(図21参照)の厚さに相当する位置よりも僅かな長さだけ下の位置に設けられる。
圧縮成形装置において、第1に、モータ311(第1の駆動機構)が回転又は停止することによって、ボールナット313と昇降盤用取付板314と昇降盤304と枠状部材213と下型ベースブロック210と複数の弾性体22とを順次介して下型側面部材230が昇降又は停止する。したがって、モータ311は、下型側面部材230を昇降させる。
第2に、モータ224(第2の駆動機構)が回転することによって、ボールナット222と底面部材用取付部材221とを順次介して下型底面部材220が昇降する。したがって、モータ224は、下型底面部材220を昇降させる。
第3に、モータ311が回転又は停止することにより、昇降盤304の上に固定されたモータ224が昇降又は停止する。モータ224が昇降することによって、ボールナット222と底面部材用取付部材221とを順次介して機械的に接続された下型底面部材220が昇降する。したがって、モータ311が回転することにより、下型側面部材230と下型底面部材220との双方が昇降する。
加えて、次の3つの態様によってモータ311とモータ224とを制御することにより、下型側面部材230と下型底面部材220との一方を同じ高さ位置に保ちながら他方を昇降できる。第1の態様として、モータ311が一方向に回転することによって下型側面部材230と下型底面部材220との双方を速度Vで上昇させながら、モータ224が他方向に回転することによって下型底面部材220を速度Vで下降させる。この場合には、圧縮成形装置の外部から見て、下型底面部材220が停止した状態において下型側面部材230が速度Vで上昇する。
第2の態様として、モータ311が他方向に回転することによって下型側面部材230と下型底面部材220との双方を速度Vで下降させながら、モータ224が一方向に回転することによって下型底面部材220を速度Vで上昇させる。この場合には、圧縮成形装置の外部から見て、下型底面部材220が停止した状態において下型側面部材230が速度Vで下降する。
第3の態様として、モータ311が停止した状態においてモータ224が回転することによって下型底面部材220を速度Vで昇降させる。この場合には、圧縮成形装置の外部から見て、下型側面部材230が停止した状態において下型底面部材220が速度Vで昇降する。上述した3つの態様をまとめると、モータ311とモータ224とを適当に制御することによって、下型側面部材230と下型底面部材220とを独立して昇降させることができる。
図19〜24の模式的な概略断面図を用いて、本実施例の圧縮成形方法(樹脂封止品の製造方法)について説明する。図19は、下型が上昇し始めた直後の状態を示す。図20は、シール部材が変形し始めた後に下型底面部材が上昇し始めた直後の状態を示す。図21は、下型側面部材が基板をクランプした後に下型底面部材が上昇して所定の高さ位置を保つ状態を示す。図22は、下型キャビティ及び上型キャビティにおいて硬化樹脂が形成された後に下型底面部材がその高さ位置を保ちながら下型側面部材が下降する状態を示す。図23は、下型底面部材がその高さ位置を保ちながら下型側面部材が上昇して基板を再びクランプする直前の状態を示す。図24は、下型側面部材がその高さ位置を保ちながら下型底面部材が下降する状態を示す。以下、さらに具体的に説明する。
まず、図19に示すように、上型100の下面に封止前基板1Aを固定(セット)する。固定方法は特に限定されず、例えば、クランプ(図示略)等を用いても良い。つぎに、下型キャビティ201に、例えば、顆粒状の樹脂材料20aを供給する。さらに、モータ224を停止させたままでモータ311に電源を印加してモータ311を一方向に回転させることにより、昇降盤304を矢印X5の方向に上昇させる。昇降盤304に固定された次の2つの系を、同じ速度で上昇させる。第1の系は、枠状部材213と下型ベースブロック210と複数の弾性体22と下型側面部材230と外気遮断部材150とを含む系である。第2の系は、モータ224とボールねじ223とボールナット222と底面部材用取付部材221と下型底面部材220とを含む系である。したがって、モータ311を一方向に回転させることによって、下型側面部材230と下型底面部材220と外気遮断部材150とを同じ速度で上昇させることができる。
つぎに、図20に示すように、中間型締めを行う。具体的には、図19に引き続き下型側面部材230と下型底面部材220と外気遮断部材150とを、それぞれ矢印X6及びZ4の方向に、同じ速度で上昇させる。そして外気遮断部材150の上面に設けられたシール部材150Aを上部基台303の下面に接触させる。このことによって、シール部材150Aが変形し始める。なお、中間型締めの状態は、実施例1と同様に、例えば、シール部材150A、150Bが変形し始めてからつぶれるまでの状態である。
つぎに、図20に示すように、中間型締めの状態になった後に、切替弁324を使用して、外気遮断部材150の内側の空間と減圧源323とを連通する。そして、外気遮断部材150の内側の空間から空気を矢印Y2の方向に吸引し、減圧された状態にする。この工程において、流動性樹脂20bに含まれるガスが成形型10の外部に排出される。
さらに、図21に示すように、型締め(本締め、又は完全型締めともいう。)を行う。具体的には、引き続きモータ311を一方向に回転させることによって、引き続き下型側面部材230を上昇させる。下型側面部材230の上面が回路基板1を押圧してクランプすると、下型側面部材230が一定の圧力によって回路基板1を矢印X7の方向に加圧するように、モータ311を制御する。このとき、シール部材150A、150Aをつぶれた状態になる。完全型締めの状態にすることによって、外気遮断部材150の内側の空間が、外気から遮断された空間である閉空間となる。これと並行して、樹脂材料20aを加熱することによって溶融させて、流動性樹脂(溶融樹脂)20bを生成する。完全型締めの状態になった後の適当な時点において、切替弁324を使用して外部空間Eを大気に連通する。これにより、大気中から外部空間Eに向かって矢印Y3の方向に空気が入り、外部空間Eの減圧が解除される。なお、以降、図22〜24において、同様に、矢印Y3と同方向のY4(図22)、Y5(図23)及びY6(図24)が示すとおり、外部空間Eと大気は連通したままであり、外部空間Eの減圧は解除されている。また、図面において太い破線によって示された矢印(例えば、矢印X7)は、圧縮成形装置の外部から見て、それらの矢印が付された構成要素が移動していないがそれらの構成要素を駆動するための駆動源(モータ311、224)が動作していることを意味する。以下において同様である。
つぎに、図21に示すように、モータ224に電源を印加してモータ224を一方向に回転させることによって、下型底面部材220を上昇させる。下型底面部材220の内底面220Aが下型側面部材230の上面から所定の長さだけ離れた位置(所定の位置)に到達するまで、下型底面部材220が上昇する。このことによって、その長さに等しい所定の深さを有する下型キャビティ201が形成される。下型底面部材220が所定の位置まで上昇したと判断すれば、下型底面部材220が一定の圧力によって流動性樹脂20bを矢印Z5の方向に加圧して所定の位置を保つように、モータ224を制御する。
ここまでの工程によって、成形型10を完全型締めする。この状態において、下型側面部材230の上面と下型底面部材220の上面(内底面)220Aとの間の長さが、硬化樹脂からなる封止樹脂20(図22)の厚さに相当する。
引き続き、流動性樹脂20bを一定の硬化時間だけ加熱する。このことによって、流動性樹脂20bを硬化させて、図22に示すように硬化樹脂からなる封止樹脂20を形成する。ここまでの工程によって、封止済基板1Bが完成する。封止済基板1Bが、流動性樹脂20bが硬化することによって形成された硬化樹脂(封止樹脂20)を含む樹脂封止品に相当する。
流動性樹脂20bを硬化させて封止樹脂(硬化樹脂)20を形成した後、図22に示すように、下型パッケージ側面を離型させる。具体的には、まず、下型側面部材230の上面が回路基板1を押圧してクランプした状態(図21を参照)を保ったまま、モータ311とモータ224とを、以下のように制御する。すなわち、まず、モータ224を一方向に回転させることによって、モータ224から見て下型底面部材220を速度Vで上昇させる。これと並行して、モータ311を他方向に回転させることによって、昇降盤304を速度Vで矢印X8の方向に下降させる。この2つの動作によって、圧縮成形装置の外部から見て、下型底面部材220が停止した状態において下型側面部材230が矢印X8の方向に速度Vで下降する。これにより、圧縮成形装置の外部から見て停止した状態を保つ下型底面部材220の内底面220Aが封止樹脂20の頂面(図では下面)を矢印Z6の方向に加圧して支持した状態において、下型側面部材230の内周面(内側面)から、下型キャビティ側の封止樹脂20の外周面(下型パッケージ側面)を引き離す。
次に、下型パッケージ底面(下型キャビティ側の封止樹脂20の底面)を離型させる。具体的には、まず、図22に示された状態から、モータ224を他方向に回転させる。これにより、モータ224から見て、下型底面部材220が、速度Vで矢印Z7の方向に下降しようとする。これと並行して、モータ311を一方向に回転させることによって、昇降盤304を矢印X9の方向に速度Vで上昇させる。この2つの動作によって、圧縮成形装置の外部から見て、下型底面部材220が停止した状態において下型側面部材230が上昇する。このことにより、下型側面部材230の上面によって回路基板1を再びクランプする。図23は、回路基板1を再びクランプする直前の状態を示す。図示のとおり、下型側面部材230が一定の圧力によって回路基板1を加圧するようにモータ311を制御する。
次に、図24に示すように、下型側面部材230によって一定の圧力で回路基板1を加圧させながら、引き続きモータ224を他方向に回転させる。このことによって、モータ224から見て下型底面部材220を速度Vで矢印Z8の方向に下降させる。これにより、圧縮成形装置の外部から見て停止した状態を保つ下型側面部材230の上面が回路基板1を矢印X10の方向に加圧してクランプし、かつ、下型側面部材230の内周面が下型キャビティ側の封止樹脂(硬化樹脂)20の外周面(側面)を支持した状態において、下型底面部材220の内底面から下型パッケージ底面(下型キャビティ側の封止樹脂20の底面)を引き離す。これにより、図24に示すように、下型底面部材220の内底面から封止樹脂20の頂面との間の間隙Sが、大気圧になっている外部空間Eに連通する。このことによって、下型底面部材220の内底面から封止樹脂20の頂面を引き離すことに起因して発生する、次の2つの原因による封止済基板1Bの破損を抑制できる。
前記封止済基板1Bの破損の2つの原因のうち、第1の原因は、それぞれ広い面積を有する下型底面部材220の内底面と封止樹脂20の頂面とを引き離し始めた場合に発生する、下型底面部材220の内底面が封止樹脂20の頂面を下向きに引っ張る力である。この場合には、封止樹脂20の頂面の外縁部において下型底面部材220の内底面と封止樹脂20の頂面とを引き離し始めた直後に発生する、下型側面部材230と封止樹脂20との間の間隙Sが、発生と同時に大気圧になる。このことにより、下型底面部材220の内底面と封止樹脂20の頂面とが引き離されやすくなるので、封止済基板1Bの破損を抑制できる。
第2の原因は、下型底面部材220の内底面から封止樹脂20の頂面を引き離す際に回路基板1の外縁を含む非封止面(図では上面)と上型100の下面との間に僅かな隙間ができた場合に、大気圧が封止済基板(樹脂封止品)1Bに加える下向きの力である。この場合には、間隙Sが大気圧になっているので、大気圧が封止済基板(樹脂封止品)1Bに加える下向きの力が発生しない。このことにより、封止済基板1Bの破損を防止できる。
さらに、下型パッケージ(下型キャビティ側の封止樹脂20)を離型させた後に、図12〜13と同様に、エジェクターピン駆動機構143Bによってエジェクターピン143Aを上型キャビティ131上面から突出させる。これにより、上型パッケージ(上型キャビティ側の封止樹脂20)を離型させる(図示略)。
本実施例によれば、図19〜24を用いて説明したとおり、下型側面部材230と下型底面部材220とが別々の駆動機構によって駆動される。具体的には、下型側面部材230がモータ311のみによって駆動される。また、下型底面部材220が、モータ311によって駆動され、モータ224のみによって駆動される。言い換えれば、下型底面部材220がモータ311とモータ224とによって別々に駆動される。加えて、下型底面部材220がモータ311とモータ224とによって同時に並行して駆動される。これらのことによって、下型側面部材230と下型底面部材220とが独立して移動できる。したがって、第1に、下型底面部材220の内底面220Aによって封止樹脂20の頂面が支持された状態において下型側面部材230を下降させる。このことによって、下型側面部材230の内周面230Aから封止樹脂20の外周面を引き離すことができる。第2に、下型側面部材230の内周面230Aによって封止樹脂20の外周面が支持された状態において下型底面部材220を下降させる。このことにより、下型底面部材220の内底面220Aから封止樹脂20の頂面を引き離すことができる。これらのことにより、封止済基板(樹脂封止品)1Bに大きな外力が加えられることなく、成形型10の型面から封止済基板1Bを離型できる。
本実施例の圧縮成形装置は、下型200が設けられている。下型200は、下型キャビティ201を構成する型面と下型200の外側における外部空間Eとを連通する貫通孔236を備える。そして、前述のとおり、下型キャビティ201を構成する型面から封止樹脂20を引き離す工程において、外部空間Eと封止樹脂20の表面とを連通させる。このことにより、第1に、下型底面部材220の内底面が封止樹脂20の頂面を下向きに引っ張る力に起因する封止済基板1Bの破損を抑制できる。第2に、大気圧に起因して封止済基板(樹脂封止品)1Bが間隙Sに対して押圧されることを防止できるので、封止済基板1Bの破損を防止できる。
本実施例によれば、封止済基板(樹脂封止品)1Bを製造する際に、下型側面部材230と下型底面部材220とが別々に駆動されるので、下型側面部材230と下型底面部材220とが独立して移動できる。このことによって、様々な深さを有する下型キャビティ201を容易に形成できる。したがって、1台の圧縮成形装置を使用して、封止樹脂20が様々な厚さを有する、複数の機種の封止済基板1Bを容易に製造できる。したがって、本実施例によれば、小さい厚さが要求される封止済基板1Bから大きい厚さが要求される封止済基板1Bまで、容易に製造できる。小さい厚さが要求される封止済基板1Bは、例えば、携帯電話用の半導体製品を製造するために使用される。大きい厚さが要求される封止済基板1Bは、例えば、電力制御用の半導体製品(回路モジュール等)を製造するために使用される。
なお、例えば、封止済基板1Bから1個の半導体製品を製造することができる。しかし、これに限定されず、例えば、所定の境界線に沿って区分けされた複数の領域にそれぞれチップが装着された回路基板1を樹脂封止してもよい。これにより、例えば、樹脂封止された後の封止済基板1Bを境界線に沿って個片化して、封止済基板1Bから複数個の半導体製品を製造することができる。
つぎに、図25〜27の模式的な概略断面図を用いて、本発明のさらに別の実施例について説明する。なお、本実施例の図25〜27では、図19〜24と同一の構成要素には同一の符号を付して、それらの構成要素に関する説明を適宜省略する。以下の各図及び実施例においても同様である。
図25は、下型キャビティにおいて硬化樹脂が形成された直後の状態を示す。図26は、下型底面部材がその高さ位置を保ちながら下型側面部材が下降する状態を示す。図27は、下型側面部材が上昇して基板を再びクランプした後に下型側面部材がその高さ位置を保ちながら底面部材が下降する状態を示す。
本実施例の圧縮成形装置は、実施例2の図19〜24に示した圧縮成形装置と比較して、モータ311及びモータ224と駆動される下型側面部材230及び下型底面部材220との関係が逆になっている。すなわち、下側のモータ311(図19〜24のモータ311に相当)により、昇降盤304が駆動される。昇降盤304の上にモータ224が固定される。モータ224により、下型ベースブロック(第1の副接続部材)210と弾性体22とを介して下型側面部材230が駆動される。昇降盤304の上に、底面部材用取付部材(第2の副接続部材)221Bと底面部材用取付部材(第2の副接続部材)221とを介して下型底面部材220が固定される。昇降盤304の上方において昇降盤304にそれぞれ固定された下型側面部材230と下型底面部材220とが、下側のモータ311によって同時に並行して駆動される。
本実施例によれば、下型側面部材230と下型底面部材220とが別々の駆動機構によって駆動される。具体的には、下型底面部材220が下側のモータ311によって駆動される。また、下型側面部材230がモータ311及びモータ224のみによって駆動される。言い換えれば、下型側面部材230が下側のモータ311とモータ224とによって別々に駆動される。加えて、下型側面部材230が下側のモータ311とモータ224とによって同時に並行して駆動される。これらのことによって、下型側面部材230と下型底面部材220とが独立して移動できる。そして、第1に、下型底面部材220の内底面220Aによって、下型パッケージ(下型キャビティ側の封止樹脂20)の底面が支持された状態において下型側面部材230を下降させる。このことによって、下型側面部材230の内周面230Aから封止樹脂20の外周面を引き離すことができる。第2に、下型側面部材230の内周面230Aによって封止樹脂20の外周面が支持された状態において下型底面部材220を下降させる。このことによって、下型底面部材220の内底面220Aから封止樹脂20の頂面を引き離すことができる。これらのことによって、封止済基板(樹脂封止品)1Bに大きな外力が加えられることがなく、成形型10の型面から封止済基板1Bを離型できる。したがって、本実施例は、封止済基板1Bを離型することに関して実施例1の効果と同様の効果を奏する。
また、図25〜27に示した圧縮成形装置は、図19〜24と同様、貫通孔236と減圧源323及び切替弁324とを備える。したがって、本実施例は、封止済基板1Bの破損を防止できることに関して、実施例2と同様の効果を奏する。
また、図25〜27に示した圧縮成形装置は、実施例2の場合と同様に、下型側面部材230と下型底面部材220とが独立して移動できる。したがって、本実施例は、1台の圧縮成形装置を使用して様々な厚さの封止済基板1Bを容易に製造できることに関して、実施例2と同様の効果を奏する。
つぎに、図28〜29の模式的な概略断面図を用いて、本発明のさらに別の実施例について説明する。なお、図28〜29においては、外気遮断部材150とシール部材150A、150Aと貫通孔321と吸引用配管322との図示を省略する。後述する図30〜31(実施例5)においても同様である。
図28は、2組の成形型を対象にして、キャビティにおいて硬化樹脂が形成された後に底面部材がその高さ位置を保ちながら下型側面部材が下降する状態を示す。図29は、下型側面部材が上昇して基板を再びクランプした後に下型側面部材がその高さ位置を保ちながら底面部材が下降する状態を示す。
本実施例の圧縮成形装置は、成形型10を2個有する点で、実施例2(図19〜24)の圧縮成形装置と異なる、これ以外は、実施例2の圧縮成形装置と同様である。したがって、本実施例によれば、1台の圧縮成形装置が発揮する製造能力が2倍になるという効果を奏する。加えて、本実施例は、実施例2と同様の効果を奏する。また、成形型10は、図28〜29では2個であるが、これに限定されず、3個以上でも良い。
本実施例においては、それぞれの下型底面部材220と底面部材用取付部材221との間に弾性体(図示略)を設けておくことが好ましい。このことによって、複数個(図28〜29では2個)の回路基板1の厚さがばらついた場合においても、各封止済基板1Bが有する封止樹脂20の厚さのばらつきを抑制して封止済基板1Bを製造できる。
つぎに、図30〜31の模式的な概略断面図を用いて、本発明のさらに別の実施例について説明する。図30は、2組の成形型を対象にして、キャビティにおいて硬化樹脂が形成された後に底面部材がその高さ位置を保ちながら下型側面部材が下降する状態を示す。図31は、下型側面部材が上昇して基板を再びクランプした後に下型側面部材がその高さ位置を保ちながら底面部材が下降する状態を示す。
本実施例の圧縮成形装置は、成形型10を2個有する点で、実施例3(図25〜27)の圧縮成形装置と異なる、これ以外は、実施例3の圧縮成形装置と同様である。したがって、本実施例によれば、1台の圧縮成形装置が発揮する製造能力が2倍になるという効果を奏する。加えて、本実施例は、実施例1及び2と同様の効果を奏する。また、成形型10は、図30〜31では2個であるが、これに限定されず、3個以上でも良い。
本実施例においては、それぞれの下型底面部材220と底面部材用取付部材221との間に弾性体(図示略)を設けておくことが好ましい。このことによって、複数個(図30〜31では2個)の回路基板1の厚さがばらついた場合においても、各封止済基板1Bが有する封止樹脂20の厚さのばらつきを抑制して封止済基板1Bを製造できる。
つぎに、図32〜33の模式的な概略断面図を用いて、本発明のさらに別の実施例について説明する。
本実施例は、図19〜31に示された貫通孔236を使用して、間隙Sと成形型10の外側の空間である外部空間Eとを連通させる態様に関するものである。図32〜33は、それぞれ、上型の図示を省略して連通穴に関する構成を説明する部分断面図である。
図32〜33は、図19〜31に示された貫通孔236の位置を示す。図32に示すように、下型側面部材230において、下型側面部材230の上面から、成形したい封止樹脂20(図21参照)の厚さに相当する位置よりも下の位置に、貫通孔236を設ける。下型側面部材230の内周面230A(図における太い斜線で示された内周面230Aに続いて下方に伸びる面)には、貫通孔236の開口236Aが形成される。このことにより、下型側面部材230の内周面230Aと下型底面部材220の外周面との間の間隙と開口236Aとが連通する。封止樹脂20に対して下型底面部材220が下降し始めた直後に、下型底面部材220の内底面220Aと封止樹脂20との間の間隙Sと、内周面230Aと下型底面部材220の外周面との間の間隙と、開口236Aと、貫通孔236とが連通する。したがって、図23に示した下型底面部材220の内底面220Aと封止樹脂20との間の間隙Sを、外部空間Eに連通することによって大気圧にすることができる。
下型側面部材230に貫通孔236を設ける位置としては、例えば、図32に示す2つの態様がある。第1の態様によれば、図32において実線によって示されるように、封止樹脂の厚さに相当する位置よりもある程度の長さだけ下に、貫通孔236を設ける。この場合には、貫通孔236の上端よりも上に内底面220Aを位置させて下型キャビティ201(図19参照)に樹脂材料を供給した後に、封止樹脂の厚さに相当する位置まで下型底面部材220を昇降させる。このことによって、所定の長さL以下の長さに相当する厚さを有する封止樹脂20を成形できる。所定の長さLは、下型側面部材230の上面と貫通孔236の上端との間の長さから、内底面220Aを位置させる際の精度を差し引いた長さである。したがって、1組の下型200を使用して、長さLに相当する厚さを上限にして封止樹脂20を成形できる。
第2の態様によれば、図32において破線によって示すように、成形しようとする封止樹脂20の厚さに相当する位置よりも僅かに下に、貫通孔236を設ける。このことによって、封止樹脂20に対して下型底面部材220が下降し始めた直後に、開口236Aと貫通孔236とを介して、下型底面部材220と封止樹脂20との間の間隙Sを大気圧にすることができる。
図33は、貫通孔236を下型底面部材220に設けた態様を示す。貫通孔236は、開口236Aから図の下方に向かって伸びる。貫通孔236の内部には、柱状部材241が進退できるようにして設けられる。柱状部材241は、アクチュエータ242によって貫通孔236の内部において進退する。柱状部材241が所定の位置に停止した場合に、柱状部材241の頂面243(図では上面)が下型底面部材220の内底面220Aの一部分を構成する。言い換えれば、下型底面部材220の内底面220Aにおける開口236Aを、柱状部材241の頂面(上面)243が塞ぐ。
貫通孔236の内部において、開口236Aから僅かに入り込んだ位置から貫通孔236が伸びる方向(下型底面部材220の外側(図では下側)に向かう方向)に向かって、貫通孔236の断面よりも大きい断面を有する拡張部244を形成する。拡張部244の断面形状は、図示のとおり、平面視して柱状部材241の断面形状を内包し、かつ、柱状部材241の断面形状よりも拡がる部分を有する形状にする。例えば、開口236Aと拡張部244とを同心円にして、拡張部244の直径を開口236Aの直径よりも大きくすればよい。そして、封止樹脂20が形成された後で下型底面部材220が下降し始める前に、柱状部材241を下降させる。このことによって、下型底面部材220が下降し始める前に、開口236Aと拡張部244とを有する貫通孔236を介して、開口236Aにおける封止樹脂20の表面を外部空間Eに連通する。言い換えれば、この時点において開口236Aにおける封止樹脂20の表面を大気圧に露出させることができる。したがって、封止樹脂20に対して下型底面部材220が下降し始めた直後に、開口236Aと拡張部244とを有する貫通孔236を介して、下型底面部材220と封止樹脂20との間の間隙S(図23参照)を大気圧にすることができる。
また、例えば、図32と図33とにそれぞれ示された構成を組み合わせてもよい。具体的には、例えば、図32に示された下型側面部材230において、開口236Aと拡張部244とを有する貫通孔236と、貫通孔236の内部に設けられた柱状部材241(いずれも図33参照)を進退させる。この場合には、開口236Aの位置を、図32に示された位置又は側面から見て下型底面部材220の上面に重なる位置にすることが好ましい。
本実施例によれば、封止樹脂20に対して下型底面部材220が下降し始めた直後に、又は、下型底面部材220が下降し始める前に、外部空間Eに封止樹脂20の表面を連通する。このことによって、封止樹脂20に対して下型底面部材220が下降し始めた直後に又は同時に、開口236Aと貫通孔236とを介して、下型底面部材220と封止樹脂20との間の間隙Sを大気圧にすることができる。したがって、封止済基板1Bの破損をいっそう効果的に防止できる。
つぎに、本発明のさらに別の実施例について述べる。
図34の平面図に、本実施例の樹脂封止品製造装置1000について模式的に示す。同図は、樹脂封止品製造装置1000を、上型側の部材を取り除いたと仮定して示す概略平面図である。図示のとおり、樹脂封止品製造装置1000は、1個の材料受入モジュール400と、4個の成形モジュール2000と、1個の払出モジュール500とを有する。成形モジュール2000は、その中に、本発明の圧縮成形装置を有している。前記圧縮成形装置は、例えば、実施例1〜6と同様の圧縮成形装置で良い。加えて、樹脂封止品製造装置1000は、それぞれ樹脂封止品製造装置1000全体を対象にして、電力を供給する電源401と、各構成要素を制御する制御部402とを有する。
材料受入モジュール400と、図34における最も左側の成形モジュール2000とは、互いに装着でき分離できる。また、隣り合う成形モジュール2000同士を、互いに装着でき分離できる。図34における最も右側の成形モジュール2000と払出モジュール500とを、互いに装着でき分離できる。上述した構成要素を装着する際の位置決め方法は、特に限定されないが、例えば、位置決め用穴及び位置決めピン等の周知の手段によって行うことができる。装着方法も特に限定されないが、例えば、ボルトとナットとを使用したねじ止め等からなる周知の手段によって行うことができる。
材料受入モジュール400は、基板材料受入部403と、樹脂材料受入部404と、材料移送機構405とを有する。基板材料受入部403は、樹脂封止品製造装置1000の外部から封止前基板を受け入れる。樹脂材料受入部404は、樹脂封止品製造装置1000の外部から、固形状樹脂からなる樹脂材料20aを受け入れる。図34は、樹脂材料20aとして粒状樹脂を示す。
樹脂封止品製造装置1000には、材料受入モジュール400から4個の成形モジュール2000を経由して払出モジュール500にわたって、X方向に沿ってX方向ガイドレール406が設けられる。X方向ガイドレール406には、主搬送機構407がX方向に沿って移動できるようにして設けられる。主搬送機構407には、Y方向に沿ってY方向ガイドレール408が設けられる。Y方向ガイドレール408には、主搬送機構407が有する副搬送機構501がY方向に沿って移動できるようにして設けられる。副搬送機構501は、上部に封止前基板1Aを収容し、下部に樹脂材料20aを収容して、1個の成形モジュール2000におけるX方向ガイドレール406の上方と下型200における下型キャビティ201の上方との間を往復する。副搬送機構501が、上型(図示略)の下面に封止前基板1Aを供給し、下型200の下型キャビティ201に樹脂材料20aを供給する。
樹脂封止品製造装置1000は制御部402を有する。制御部402に含まれる制御用ドライバの信号によって、モータ311、224(図19参照)の回転方向と回転数とトルクとが制御される。制御部402は、主搬送機構407と副搬送機構501との動作も制御する。
本実施例では、主搬送機構407と副搬送機構501とからなる搬送機構が、封止前基板1Aと、封止前基板1Aに装着されたチップ2(図1参照)が樹脂封止されて成形された樹脂封止品である封止済基板1Bとの双方を、搬送する。この構成によれば、主搬送機構407と副搬送機構501とからなる搬送機構が搬入機構と搬出機構とを兼用するので、樹脂封止品製造装置1000の構成が簡素化される。
払出モジュール500は、封止済基板1Bを搬送する樹脂封止品移送機構502と、封止済基板1Bを収容するマガジン503を有する。払出モジュール500は真空ポンプ(図示略)を有する。前記真空ポンプは、樹脂封止品製造装置1000全体を対象にして、封止前基板1A、封止済基板1B等を吸着するための減圧源である。前記真空ポンプは材料受入モジュール400に設けられてもよい。
前記真空ポンプは、上型(図示略)と下型200との間の空間であって下型キャビティ201を含む外気遮断空間を吸引するための減圧源としても使用される。外気遮断空間は、下型キャビティ201に樹脂材料20aが供給された後であって成形型10の型締めが完了するまでの間において、上型と下型200との間の空間であって下型キャビティ201を含む空間において形成される。具体的には、上型と下型200との間の空間であって下型キャビティ201を含む空間を、シール部材(図19〜24のシール部材150A、150B参照)を使用して外気から遮断された状態にする。外気遮断空間を吸引することによって、図21〜31に示した封止樹脂20における気泡(ボイド)の発生が抑制される。減圧源として、前記真空ポンプによって吸引され大容量を有する減圧タンクを使用してもよい。
本実施例によれば、4個の成形モジュール2000のうち隣り合う成形モジュール2000同士を、互いに装着でき分離できる。このことにより、需要の増大に応じて成形モジュール2000を増やすことができ、需要の減少に応じて成形モジュール2000を減らすことができる。例えば、工場Aが立地する地域において特定の製品の需要が増大した場合には、需要が増大していない地域に立地する工場Bが有する樹脂封止品製造装置1000から、その特定の製品の生産に使用される成形モジュール2000を分離する。分離した成形モジュール2000を工場Aに輸送して、輸送された成形モジュール2000を、工場Aが有する樹脂封止品製造装置に装着する。言い換えれば、樹脂封止品製造装置に成形モジュール2000を増設する。このことによって、工場Aが立地する地域において増大した需要に応じることができる。したがって、本実施例によれば、需要の増減に柔軟に対応できる樹脂封止品製造装置が実現する。
また、樹脂封止品製造装置1000として、例えば、次の変形例を採用できる。第1の変形例では、材料受入モジュール400と払出モジュール500とを統合して、統合された1個の受入/払出モジュール500を樹脂封止品製造装置1000の一方の端(図34においては左端又は右端)に配置する。この場合には、樹脂封止品製造装置の他方の端(図34においては右端又は左端)に1個又は複数個の成形モジュール2000が露出しているので、成形モジュール2000の装着と分離とを行いやすい。
第2の変形例では、材料受入モジュール400と成形モジュール2000を統合して、統合された1個の受入/成形モジュール2000を樹脂封止品製造装置1000の一方の端(図34においては左端又は右端)に配置する。この場合には、受入/成形モジュール2000に1個の成形モジュール2000を装着し、又は、複数個の成形モジュール2000を順次装着する。他方の端(図34においては右端又は左端)に位置する成形モジュール2000に払出モジュール500を装着して、樹脂封止品製造装置を構成する。
第3の変形例では、樹脂封止品製造装置1000において、主搬送機構407と副搬送機構501とを搬入機構にして、その搬入機構とは別に搬出機構を備える。この場合には、搬入機構と搬出機構とが独立して動作するので、樹脂封止品製造装置1000において成形動作の効率が向上する。
上述した変形例に限らず、例えば、樹脂封止品製造装置1000において、隣り合う成形モジュール2000同士を互いに装着でき分離できるように構成されていればよい。そのように構成された樹脂封止品製造装置を対象にして、本発明を適用できる。
前述のとおり、樹脂封止(圧縮成形)が完了した後に、最初に、樹脂封止品製造装置1000の外部から見て下型底面部材220が停止した状態において下型側面部材230を下降させても良い。これに限らず、樹脂封止(圧縮成形)が完了した後に、最初に、樹脂封止品製造装置1000の外部から見て下型側面部材230が停止した状態において下型底面部材220を下降させるようにしてもよい。
また、封止樹脂20を成形して型開きした後に、引き続いて下型側面部材230と下型底面部材220とを相対的に上昇又は下降させてもよい。このことにより、下型側面部材230の内周面230A(図32及び33参照)と下型底面部材220の外周面との間に形成された硬化樹脂を、下型の上方又は下方の少なくとも一方に掻き出すことができる。掻き出された硬化樹脂からなる樹脂かすを、吸引機構を有するクリーナーによって除去する。下型の下方に掻き出された樹脂かすを箱に収容して、箱に溜まった樹脂かすを廃棄してもよい。このことによって、樹脂封止品製造装置を連続的に安定して動作させることができる。
また、例えば、4本のタイバーを使用する構成に代えて、下部基台と上部基台とそれらを結合する2本の柱状部材とが一体になった、いわゆるホールドフレームを使用する構成を採用しても良い。この場合には、2本の柱状部材がそれぞれ支持部材に相当する。下部基台と上部基台とそれらを結合する2本の柱状部材とは、1個の枠状部材によって構成されてもよく、4個の部材が組み立てられて構成されてもよい。
また、2個の駆動機構(モータ311、224)の位置は、下部基台301の中央部と昇降盤304の中央部とに限定されない。下部基台301の周縁部に近い部分にモータ311を配置してもよい。昇降盤304の周縁部に近い部分にモータ224を配置してもよい。これらの場合には、例えば、モータ311、224の回転軸から中央のボールねじ312、223までを、モータ用プーリとタイミングベルトとボールねじ用プーリとを順次介して機械的に接続する。
また、例えば、モータからなる電動機構に代えて、油圧機構、空圧機構を使用してもよい。これらの機構にトグル機構を組み合わせてもよい。
また、本発明において、樹脂封止品としての封止済基板1Bは、IC(Integrated Circuit)、LED(Light Emitting Diode)等の半導体製品の製造に使用される中間品を含む。封止済基板1Bそのものが半導体製品であってもよい。封止済基板1Bは、半導体チップに抵抗、コンデンサ、インダクタ等の受動部品、センサ類、フィルタ類などの電子部品を組み合わせた回路モジュールを生産するための中間品を含む。回路モジュールは、輸送機器における内燃機関、電動機の制御、操舵系、制動系等の制御に使用される制御用回路モジュールを含む。回路モジュールは、発電及び送配電における制御に使用される、いわゆる電力制御用回路モジュールを含む。
回路基板1は、プリント基板等の回路基板(circuit board)に限定されない。回路基板は、シリコンウェーハ等の半導体ウェーハでもよく、セラミック基板(ceramic substrate)でもよく、金属製のリードフレーム(lead frame)でもよい。
また、本発明において、製造される樹脂封止品は、封止済基板1Bに限らず、電子部品、半導体に関するもの以外の一般的な樹脂封止品であってもよい。例えば、レンズ、光学モジュール、導光板などの光学部品を樹脂成形によって製造する場合や、一般的な樹脂封止品を製造する場合などに、本発明を適用することができる。言い換えれば、ここまでの説明において樹脂封止品製造装置1000について述べた内容は、一般的な樹脂封止品製造装置を対象にした場合においても適用される。
なお、本実施例では、下型底面部材220の平面形状が矩形である場合について説明した。しかし、本発明は、これに限らず、下型底面部材220の平面形状が円形でもよく、不規則な形状(円形に凹凸が付された形状、矩形に凹凸が付された形状等)でもよい。これらの場合には、下型側面部材230の中央部に形成された貫通孔の平面形状は、下型底面部材220の平面形状に対応する形状(円形、円形に凹凸が付された形状、矩形に凹凸が付された形状等)になる。
また、例えば、下型キャビティ201に供給される樹脂材料20aとして、常温でゼリー状を示す樹脂(ゼリー状樹脂)を使用してもよく、常温で液状の樹脂材料(液状樹脂)を使用してもよい。後者の場合には、下型キャビティ201に供給された液状樹脂が流動性樹脂20bそのものである。熱硬化性樹脂に代えて、熱可塑性樹脂を使用してもよい。
さらに、本発明は、上述の各実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。