JP6580416B2 - スチレン系樹脂 - Google Patents

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Description

本発明は、溶融張力と溶融延伸倍率のバランスに優れ、成形加工時の偏肉やドローダウンが少なく、成形伸びと衝撃強度に優れるスチレン系樹脂に関する。
ポリスチレンは成形加工性に優れることから、射出成形品、ブロー成形品、シート成型品、発泡成形品等に加工され、電化製品、家庭製品、食品包装容器等に幅広く使用されている。しかしながら、これらの製品形状や成形条件によっては、成形加工時の偏肉やドローダウンといった問題が生じることがあり、その場合、製品形状の変更を余儀なくされたり、成形加工範囲が狭く、生産性が低下する問題があった。また、例え成形出来たとしても、局所的に厚みが薄い部分が生じることにより成形品強度が低下する場合があり、成形品重量を上げなければならない問題もあった。
こうした問題を解決するためには、ポリスチレンの溶融張力を上げる方法が有効と考えられるが、従来の分子量分布を調整する方法(特許文献1)や、メルトマスフローレイト(MFR)を下げ、且つ、低分子量成分の含有量を特定の範囲に抑える方法(特許文献2)、多分岐状ポリスチレンを導入する方法(特許文献3)では、溶融張力の向上に限界があり、更には、これらの手法で溶融張力を上げた場合、溶融張力の増加に応じて溶融延伸倍率(成形伸び)が低下し、成形加工性が悪化する問題があった。
一方、スチレン−メタクリル酸共重合体のメタクリル酸単位を金属化したスチレン系アイオノマーが従来より検討されており、特許文献4では、スチレン単位、メタクリル酸単位、メタクリル酸金属塩単位を特定の範囲とすることで、耐熱性や耐油性を向上させることが示されており、特許文献5には、メタクリル酸単量体の酸価と金属原子量を特定の範囲とする事で、発泡シートの成形加工性、耐熱性、耐油性が向上することが示されている。
しかしながら、これらの従来技術では、成形品の強度や成形加工時の偏肉、ドローダウンの問題については触れられておらず、得られる樹脂の溶融張力等の溶融特性についても不十分であった。
特開2009−29871号公報 特開2011−32362号号公報 特開2003−292707公報 特開昭61−278511公報 特開2000−212358公報
本発明者らは、上記に記載した成形加工時における偏肉やドローダウンが少なく、成形伸び、衝撃強度に優れる樹脂を得るという課題を達成するため、鋭意研究を進めたところ、特定の組成を持つスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の(メタ)アクリル酸単量体単位の一部を金属イオンで中和することで、成形加工時の偏肉や耐ドローダウン性、成形伸び、衝撃強度のバランスに優れるスチレン系樹脂が得られる事を見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、下記(1)〜(7)に示すところである。
(1)スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸単量体単位、及びこれらと共重合可能なビニル系単量体単位の合計を100mol%としたときに、スチレン系単量体単位の含有量が60〜99.8mol%、(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が0.1〜20mol%、ビニル系単量体単位の含有量が0.1〜20mol%であるスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の、(メタ)アクリル酸単量体単位の一部が金属イオンにより中和されたスチレン系樹脂。
(2)前記(1)に記載のスチレン系樹脂であって、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸単量体と共重合可能なビニル系単量体が(メタ)アクリル酸エステル単量体であるスチレン系樹脂。
(3)前記(1)又は(2)に記載のスチレン系樹脂であって、200℃で測定した溶融張力値(MT)が10gf以上であるスチレン系樹脂。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のスチレン系樹脂であって、200℃で測定した溶融延伸倍率(MDR)が10以上であるスチレン系樹脂。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載のスチレン系樹脂であって、(メタ)アクリル酸単量体単位の中和度が1〜90mol%であるスチレン系樹脂。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載のスチレン系樹脂であって、(メタ)アクリル酸金属塩単位の含有量が0.1〜4.0mol%であるスチレン系樹脂。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載のスチレン系樹脂であって、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の重量平均分子量(Mw)が10万〜40万であるスチレン系樹脂。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載のスチレン系樹脂であって、金属イオンがナトリウムイオンであるスチレン系樹脂。
本発明のスチレン系樹脂は成形伸びと衝撃強度、成形加工時の偏肉、耐ドローダウン性に優れるため、様々な形状の容器が成形でき、且つ、成形加工範囲を向上させることができる。また、成形品の強度に優れるため、薄肉軽量化が可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体はスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸単量体、及びこれらと共重合可能なビニル系単量体を必須成分とする。
スチレン系単量体としては、スチレン、αメチルスチレン、o−、m−、p−メチルスチレン等の置換スチレンが挙げられ、これら1種、若しくは2種以上の混合物でもよいが、好ましいのはスチレンである。
(メタ)アクリル酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、これらの混合物でもよいが、中でも製造の容易さから、メタクリル酸が好ましい。
スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物が挙げられ、これら1種、若しくは2種以上を併用して使用することもできるが、中でも、(メタ)アクリル酸エステル単量体が好ましく、機械的強度の向上性の面から、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
本発明のスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の重合方法としては塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等の公知のスチレン重合法が挙げられる。また、溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。反応器の様式としては、完全混合型反応器、プラグフロー反応器、ループ型反応器等を組み合わせた連続重合方式が好適に用いられる。
本発明のスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体は、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸単量体単位、及びこれらと共重合可能なビニル系単量体単位の合計量を100mol%としたときに、スチレン系単量体単位の含有量が60〜99.8mol%、(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が0.1〜20mol%、ビニル系単量体単位の含有量が0.1〜20mol%であり、スチレン系単量体単位の含有量が70〜99.8mol%、(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が0.1〜15mol%、ビニル系単量体単位の含有量が0.1〜15mol%であることが好ましい。(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量がこの範囲を外れる場合、耐ドローダウン性と成形性のバランスが悪化する。また、ビニル系単量体単位の含有量がこの範囲を外れる場合、機械的強度の向上効果が小さい。(メタ)アクリル酸単量体単位、ビニル系単量体単位の含有量は、重合工程における原料液の(メタ)アクリル酸単量体濃度、ビニル系単量体濃度によって調整出来る。なお、(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量は、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20mol%のうち任意の2つの値の範囲内であってもよく、ビニル系単量体単位の含有量は、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20mol%のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
本発明のスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の重量平均分子量(Mw)は10万〜40万であることが好ましく、10〜35万であることがより好ましい。Mwが10万未満では成形品の衝撃強度が不十分であり、Mwが40万を超える場合、アイオノマー化した際の流動性が低下する。スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体のMwは重合工程での反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって調整する事が出来る。なお、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、10万、11万、12万、13万、14万、15万、16万、17万、18万、19万、20万、21万、22万、23万、24万、25万、26万、27万、28万、29万、30万、31万、32万、33万、34万、35万、36万、37万、38万、39万、40万のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
本発明のスチレン系樹脂は、上記スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の、(メタ)アクリル酸単量体単位の一部が金属イオンにより中和されたものであり、(メタ)アクリル酸単量体単位は、未中和の(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸金属塩の両方を含む。
本発明のスチレン系樹脂の製造方法としては、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体を予め重合し、後から中和剤を添加し、アイオノマー化する方法の他、重合工程にて、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸単量体、(メタ)アクリル酸金属塩単量体、その他のビニル系単量体の4成分を共重合する方法、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸金属塩単量体、その他のビニル系単量体を共重合し、後からスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体とブレンドする方法等が挙げられる。また、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体を予め重合し、後から中和剤を添加する場合、重合工程後に配置した脱揮工程、若しくは押出工程において連続的に中和剤を添加する方法や、予め重合しておいたスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体をペレット状態で押出機に供給し、溶融状態で中和剤を添加しアイオノマー化する方法等が挙げられる。中和剤は固体として添加しても良いし、水溶液として添加してもよい。
本発明のスチレン系樹脂で使用される中和剤としては、1〜3価の金属イオン含有のアルカリ性物質でカルボン酸と反応するものであれば何でもよく、例えば、金属のギ酸塩、酢酸塩、酸化物、水酸化物、メトキシド、エトキシド、炭酸塩、重炭酸塩や、脂肪酸金属塩等の有機酸金属塩、カルボン酸金属塩含有ポリマー、スルホン酸金属塩含有ポリマー等の有機酸金属塩含有ポリマーが挙げられる。金属イオンとしてはリチウムや、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、鉄、コバルト、ニッケル等の遷移金属、アルミニウム、亜鉛等が挙げられるが、中でも、ナトリウム、カリウム、亜鉛が好ましく、成形伸びの面からナトリウムが特に好ましい。
本発明のスチレン系樹脂の(メタ)アクリル酸単量体単位の中和度は1〜90mol%であることが好ましく、5〜80mol%であることがより好ましく、10〜70mol%であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸単量体単位の中和度が1mol%未満では溶融張力の向上効果が十分に発揮できず、90mol%を超える場合、成形性の悪化や、中和で消費されなかった過剰の金属塩が凝集し、透明性の悪化を招く場合がある。ここでいう中和度とは、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体中の全(メタ)アクリル酸含有量に対するイオン化された(メタ)アクリル酸の比率を指し、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体中の(メタ)アクリル酸単量体の含有量と中和剤の添加量から計算によって求めることもできるし、スチレン系樹脂の中和滴定等によっても求めることができる(分析方法については、例えば、日本分析化学会編「新版 高分子分析ハンドブック」初版 P602〜603を参照)。なお、メタクリル酸単量体単位の中和度は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90mol%のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
本発明のスチレン系樹脂の(メタ)アクリル酸金属塩単位の含有量は0.1〜4.0mol%であることが好ましく、0.2〜3.8mol%であることがより好ましく、0.5〜3.5mol%であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸金属塩単位の含有量が0.1mol%未満では、溶融張力の改善効果が低く、耐ドローダウン性が十分ではない。(メタ)アクリル酸金属塩単位の含有量が4.0mol%を超える場合、溶融張力が高くなり過ぎて、成形伸びが悪化し、溶融張力を下げるために流動性を上げると、衝撃強度が低下する。なお、(メタ)アクリル酸金属塩単位の含有量は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0mol%のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
本発明のスチレン系樹脂の200℃で測定した溶融張力(MT)は10gf以上であることが好ましく、より好ましくは15gf以上であり、特に好ましくは20gf以上である。溶融張力が10gf未満では、成形性と耐ドローダウン性の改良効果が小さい。なお、溶融張力(MT)は、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200gfのうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
本発明のスチレン系樹脂の200℃で測定した溶融延伸倍率(MDR)は10以上であることが好ましく、より好ましくは15以上である。溶融延伸倍率が10未満では、成形伸びが悪化する。なお、この溶融延伸倍率(MDR)は10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200のうち任意の値以上、またはこれらのうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
本発明のスチレン系樹脂の200℃、49N荷重の条件にて測定したメルトマスフローレート(MFR)は、0.1〜7.0g/10分であることが好ましく、0.2〜5.0g/10分であることがより好ましい。メルトマスフローレイト(MFR)が0.1g/10分未満の場合、成形性が悪化するとともに、流動性の低下より成形加工時の生産性が低下する。7.0g/10分を超えると成形性、衝撃強度、耐ドローダウン性の改良が不十分となる。なお、このメルトマスフローレート(MFR)は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0g/10分のうち任意の2つの値の範囲内であってもよい。
本発明のスチレン系樹脂には、必要に応じて、別の熱可塑性樹脂やゴム補強材を本発明の効果を損なわない範囲で配合する事ができる。
熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、メタクリル酸−スチレン共重合体、メタクリル酸−メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、ノルマルブチルアクリレート−スチレン共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体、マレイミド−スチレン共重合体、αメチルスチレン−スチレン共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸、ポリD、L−乳酸等の脂肪族ポリエステル系樹脂等が挙げられ、これら1種若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ゴム補強材の具体例としては、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などのスチレン系ゴム、さらにはエチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、直鎖状低密度ポリエチレン系エラストマー等のオレフィン系ゴム、あるいはブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム、ハイインパクトポリスチレンが挙げられ、これら1種若しくは二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のスチレン系樹脂には、添加剤として、リン系、フェノール系、アミン系等の酸化防止剤、ステアリン酸等の高級脂肪酸、及びその塩やエチレンビスステアリルアミド等の滑剤、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の可塑剤、タルク、無機フィラー、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、顔料、消臭剤、防曇剤等を必要に応じて添加する事ができる。
本発明のスチレン系樹脂の成形方法については、特に制限は無くプレス成形、押出成形、射出成形、射出中空成形、ブロー成形、異形押出成形等の公知の成形法を採用することができる。また、各種発泡成形技術と組み合わせて、発泡成形体を成型する方法や、Tダイシート押出機、二軸延伸加工装置、インフレーション加工装置を用いて、シートやフィルムに成形する方法が挙げられる。成形品がシートの場合、単層であっても良いし、多層シートの最外層のうち少なくとも一方の面や内層のみに用いても良い。
本発明のスチレン系樹脂は、成形伸びと衝撃強度、耐ドローダウンに優れるため、特に、シート押出成形やブロー成形、異形押出成形、発泡押出成形等に適しており、こうして得られた成形品は、食品包装材料やOA機器、住宅関連機器、家庭電器製品など幅広い産業分野において、多岐の用途に使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体の製造>
(1)スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体S−1の製造
下記第1〜第3反応器を直列に接続して重合工程を構成した。
第1反応器:容積39Lの攪拌翼付完全混合型反応器
第2反応器:容積39Lの攪拌翼付完全混合型反応器
第3反応器:容積16Lのスタティックミキサー付プラグフロー反応器
各反応器の条件は以下の通りとした。
第1反応器:[反応温度] 120℃
第2反応器:[反応温度] 125℃
第3反応器:[反応温度] 流れ方向に132〜136℃の温度勾配がつくように調整
原料液としては、以下のものを用いた。
スチレン98.2質量%、メタクリル酸0.8質量%、メタクリル酸メチル1.0質量%のモノマー構成100質量部に対してエチルベンゼン9質量部、重合開始剤として2,2ビス(4,4−t−ブチルパーオキシシクロへキシル)プロパン0.022質量部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.040質量部をを混合した原料液
原料液を13.5kg/hrの供給速度で120℃に設定した第1反応器に連続的に供給し重合した後、次いで125℃に設定した第2反応器に連続的に装入し重合した。第2反応器出口での重合転化率は55%であった。更に132〜136℃の温度勾配がつくように調整した第3反応器にて重合転化率が70%になるまで重合を進行させた。
この重合液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、ストランド状に押し出して冷却した後切断してペレット化した。なお、1段目の予熱器の温度は200℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は66.7kPaとし、2段目の予熱器の温度は240℃に設定し、真空脱揮槽の圧力は0.9kPaとした。得られたスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体S−1の特性を表1に示す。
(2)スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体S−2の製造
以下の原料液を用い、原料液の供給速度を12.0kg/hrとし、1〜3反応器の温度条件を以下のように変更した以外はS−1の製造と同様にした。その特性を表1に示す。
<原料液>
スチレン94.8質量%、メタクリル酸3.1質量%、メタクリル酸メチル2.1質量%のモノマー構成100質量部に対してエチルベンゼン14質量部、重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.030質量部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.050質量部を混合した原料液
<条件>
第1反応器:[反応温度] 124℃
第2反応器:[反応温度] 133℃
第3反応器:[反応温度] 流れ方向に120〜125℃の温度勾配がつくように調整
(3)スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体S−3の製造
以下の原料液を用い、原料液の供給速度を12.0kg/hrとし、第1〜3反応器の温度条件を以下のように変更した以外はS−1の製造と同様にした。その特性を表1に示す。
<原料液>
スチレン87.8質量%、メタクリル酸7.0質量%、メタクリル酸メチル5.2質量%のモノマー構成100質量部に対してエチルベンゼン15質量部、重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.030質量部を混合した原料液
<条件>
第1反応器:[反応温度] 128℃
第2反応器:[反応温度] 140℃
第3反応器:[反応温度] 流れ方向に120〜125℃の温度勾配がつくように調整
(4)スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体S−4の製造
以下の原料液を用い、原料液の供給速度を12.0kg/hrとし、第1〜3反応器の温度条件を以下のように変更した以外はS−1の製造と同様にした。その特性を表1に示す。
<原料液>
スチレン85.7質量%、メタクリル酸9.3質量%、メタクリル酸メチル5.0質%のモノマー構成100質量部に対してエチルベンゼン21質量部、重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.025質量部、連鎖移動剤としてαメチルスチレンダイマー0.200質量部を混合した原料液
<条件>
第1反応器:[反応温度] 126℃
第2反応器:[反応温度] 142℃
第3反応器:[反応温度] 流れ方向に120〜125℃の温度勾配がつくように調整
Figure 0006580416
<実施例1〜6、比較例1〜2>
上記の方法で製造したスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体(S−1〜4)と中和剤を表2に示す質量部比率にて混合し、シリンダー温度180〜250℃に設定した二軸押出機(東芝機械社製、TEM26−SS)に20kg/hrの供給速度で供給し、回転数300rpm、樹脂温度270℃にて溶融混錬を行い、アイオノマー化を行った。なお、比較例1〜2には中和剤を添加しなかった。その物性を表2に示す。また、中和度はスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体に含まれるメタクリル酸含有量と中和剤の添加量より計算により求めた。
中和剤としては以下のものを用いた。
<水酸化ナトリウム>
和光純薬工業製 水酸化ナトリウム 顆粒状
<酢酸亜鉛二水和物>
純正化学社製 酢酸亜鉛二水和物 特級試薬
次に、前記の樹脂を250℃に設定したプレス成形機で加熱溶融し、金枠内で熱プレスを行い、幅250mm×250mm、厚み0.8mmのソリッドシートを得た。得られたシートにて、熱成形性、耐ドローダウン性、衝撃強度を評価した結果を表2〜3に示す。
なお、各種物性、性能評価は以下の方法で行った。
(1)スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体中のメタクリル酸含有量
室温にて、共重合体0.5gを秤量し、トルエン/エタノール=8/2(体積比)の混合溶液に溶解後、水酸化カリウム1mol/エタノール溶液にて中和滴定を行い終点を検出し、水酸化カリウムエタノール溶液の使用量より、メタクリル酸の質量基準の含有量を算出する。なお、電位差自動検出装置(京都電子工業社製、AT−510)により測定した。
(2)スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体中のメタクリル酸メチル含有量
熱分解ガスクロマトグラフィ―法によりメタクリル酸メチル含有量を定量した。
ガスクロマトグラフ機種:島津製作所社製 GC−14A
熱分解炉:島津製作所製 PYR−2A
カラム:ガラス製3.2mmφ×3.1m
充填剤:FFAP Chromosorb WAW 10%(60/80mesh)
カラム温度:120℃
熱分解炉内温度:525℃
キャリアーガス:窒素
(3)分子量
重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ―(GPC)を用いて、次の条件で測定した。
GPC機種:Waters社製 アライアンスシステム2695
カラム:東ソー社製 TSKgel−GMHXL(ID)×300mm(L)
移動相:テトラヒドロフラン 0.35ml/min
試料濃度:0.2質量%
注入量:50μL
温度:40℃
検出器:示差屈折計 Waters社製 アライアンスシステム2414
単分散ポリスチレンの溶出曲線により各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出した。
物性は以下の方法により評価した。
(4)メルトマスフローレイト
JIS K7210に基づき200℃、49N荷重の条件により求めた。
(5)ビカット軟化温度
射出成型機を用いて試験片を作成し、JIS K7206に基づき50N荷重の条件により求めた。
(6)荷重たわみ温度
射出成型機を用いて試験片を作成し、JIS K7191に基づき1.8MPa応力の条件により求めた。
(7)シャルピー衝撃強さ
射出成型機を用いて試験片を作成し、JIS K7111により求めた。
(8)引張試験
射出成型機を用いて試験片を作成し、JIS K7161により求めた。
(9)HAZE
射出成型機を用いて厚み2mmのプレートを作成し、JIS K7105により求めた。
(10)溶融張力(MT)、溶融延伸倍率(MDR)
キャピログラフ1B型(東洋精機社製)を使用し、バレル温度200℃、バレル径9.55mm、キャピラリー長さ:L=10mm、キャピラリー径:D=1mm(L/D=10)、バレル内の押出し速度10mm/分にて樹脂を押出し、荷重測定部をダイから60cm下方にセットし、キャピラリーより流出してきたストランド状の樹脂を巻き取り器にセットし、巻き取り線速度を4m/分から徐々に速度を上昇していき、ストランドが破断するまでの荷重を測定する。荷重は巻き取り線速度を上げていくと、一定値に安定するので、荷重が安定した範囲を平均化して溶融張力値(MT)とした。また、溶融延伸倍率(MDR)はストランド破断時の巻き取り線速度とキャピラリー内流速から、次式により求めた。
溶融延伸倍率(MT)=ストランド破断時の巻き取り線速度(mm/min)/キャピラリー内流速(0.9120mm/min)
シート特性は以下の方法により評価した。
(11)熱成形性
単発成形機を用いてシートを口径φ100mm、深さ60mmの深絞りカップ状容器に熱成形した。成形条件についてはヒーター温度230℃で加熱時間を一定にし、容器の亀裂発生状態を観察した。成形容器100個のうち、亀裂が観察される容器の数が0個の場合を◎、5個未満の場合を○、5個以上10個未満の場合を△、10個以上の場合を×として熱成形性を評価した。
(12)耐ドローダウン性
シートを単発真空成形機のクランプ枠(230mm×230mm)に固定し、ヒーター温度350℃一定とし、加熱秒数を1〜30秒まで1秒刻みで変化させたときの、最大ドローダウン幅を測定した。最大ドローダウン幅が3mm以下のものを◎、3〜5mmのものを○、5〜10mmのものを△、10mm以上のものを×として耐ドローダウン性を評価した。
(13)衝撃強度
シートに13.8gのステンレス球を高さを変えて垂直落下させ、20回の測定でシートに亀裂が発生する50%破壊高さを確認した。50%破壊高さが80cm以上のものを◎、60〜80cmのものを○、20〜60cmのものを△、20cm以下のものを×として評価した。
Figure 0006580416
実施例のスチレン系樹脂は比較例1〜2のアイオノマー化していないスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体と比較して溶融張力と溶融延伸倍率のバランスに優れる。また、溶融張力と溶融延伸倍率を特定の範囲とすることで、成形伸び、耐ドローダウン性、衝撃強度が大きく向上した。
本発明のスチレン系樹脂は溶融張力と溶融延伸倍率のバランスに優れるため、成形加工時の偏肉やドローダウンが少なく、食品包装材料やOA機器、住宅関連機器、家庭電器製品など幅広い分野において、成形品形状の多様化や成形加工幅の向上に寄与できる。また、成形品の偏肉が少なく、衝撃強度が大きいので製品の薄肉軽量化が可能となる。

Claims (8)

  1. スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸単量体単位、及びこれらと共重合可能なビニル系単量体単位の合計を100mol%としたときに、
    スチレン系単量体単位の含有量が60〜99.8mol%、
    (メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が0.1〜20mol%、
    ビニル系単量体単位の含有量が0.1〜20mol%である
    スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の、
    (メタ)アクリル酸単量体単位の一部が金属イオンにより中和されたスチレン系樹脂であって、
    (メタ)アクリル酸単量体単位の中和度が10〜60mol%である
    スチレン系樹脂
  2. 請求項1に記載のスチレン系樹脂であって、
    スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸単量体と共重合可能なビニル系単量体が(メタ)アクリル酸エステル単量体である
    スチレン系樹脂。
  3. 請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂であって、
    200℃で測定した溶融張力値(MT)が10gf以上である
    スチレン系樹脂。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のスチレン系樹脂であって、
    200℃で測定した溶融延伸倍率(MDR)が10以上である
    スチレン系樹脂。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂であって、
    (メタ)アクリル酸金属塩単位の含有量が0.1〜4.0mol%である
    スチレン系樹脂。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂であって、
    スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の重量平均分子量(Mw)が10万〜40万である
    スチレン系樹脂。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂であって、
    金属イオンがナトリウムイオンである
    スチレン系樹脂。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂であって、
    (メタ)アクリル酸単量体単位の中和度が10〜50mol%であり、
    (メタ)アクリル酸金属塩単位の含有量が0.6〜4.0mol%である
    スチレン系樹脂。
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