JP6577291B2 - インクジェット記録用シート - Google Patents
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Description
このようなインクジェット記録用シートには、インクの定着性を向上させるため、インク吸収性を向上させた加工が施されることが多い。
しかしながら、特許文献1のインクジェット記録用シートは、インク吸水性に優れる一方で、シートに水滴が付着した際に樹脂が溶解することにより、乾燥した後で、水滴が付着した部分に輪染みが発生するという問題があった。
しかしながら、特許文献2のインクジェット被記録材は、アジリジン架橋剤を使用するものであり、アジリジン架橋剤は有害物質であるため実用的でなく、アジリジン架橋剤は常温で反応が進むほど反応性が高く、加工安定性の面で問題があるなど、生産面において課題の残るものであった。また、特許文献2に記載のインクジェット被記録材であっても、輪染み発生を完全に解消することはできないものであった。
輪染みが発生するとインクジェット記録用シート自体およびインクジェット記録後の記録物の品位が損なわれることから、現在もなお、輪染み防止性に優れるインクジェット記録用シートの開発が求められている。
また、輪染み防止性とインク定着性の両立という点での課題も多く、これらを満足させるようなインクジェット記録用シートは未だ確立されていないのが現状である。
前記両イオン性ポリマーが2級アミン基を有するものであり、
前記インクジェット記録用シート上に水40μlを滴下した際の、水滴の接触角が、下記式(1)で表されることを特徴とするものである。
θ60/θ0≧1.00 ・・・・・(1)
θ60:水40μlを滴下して60秒後の水滴の接触角(°)
θ0:水40μlを滴下した直後の水滴の接触角(°)
前記両イオン性ポリマーが2級アミン基を有するものであり、
前記インクジェット記録用シート上に水40μlを滴下した際の、水滴の接触角が、下記式(1)で表されることを特徴とするものである。
θ60/θ0≧1.00 ・・・・・(1)
θ60:水40μlを滴下して60秒後の水滴の接触角(°)
θ0:水40μlを滴下した直後の水滴の接触角(°)
なお、上記接触角は、任意の接触角計を用いることにより測定可能である。
水滴の接触角が上記式(1)を満たす場合、布帛に付与された両イオン性ポリマーや樹脂の、水滴への溶解が抑制されていると判断でき、結果、シートに水滴が付着した場合に、乾燥後の輪染み発生を抑制することができる。
一方、水滴の接触角が上記式(1)を満たさない場合、布帛に付与された両イオン性ポリマーや樹脂の、水滴への溶解性が高いと判断でき、結果、シートに水滴が付着した場合、乾燥後に輪染みが発生するおそれがある。
なお、両イオン性ポリマーとして4級アミン基を有するものも知られているが、4級アミン基を有する両イオン性ポリマーは水溶性が高いという傾向がある。そのため、両イオン性ポリマーとして4級アミン基を有するものを使用した場合、インク定着性については満足できる結果が得られるものの、両イオン性ポリマーが水に溶解することにより、水滴の付着によって輪染みが発生するおそれがあり、本発明においては好ましくない。
ここで、本発明において難水溶性樹脂とは、皮膜化した樹脂を常温水に24時間浸漬した場合の、浸漬前樹脂皮膜の乾燥重量を基準とした浸漬前後の重量変化率が−5%〜0%となる樹脂を意味する。なお、浸漬前および後の樹脂皮膜の重量測定は、樹脂皮膜を乾燥させた状態でおこなうものとする。
浸漬前後の重量変化率の算出方法を式で表わすと下記式(2)のようになる。
浸漬前後の重量変化率[%]=
{(24時間浸漬後樹脂皮膜の乾燥重量−浸漬前樹脂皮膜の乾燥重量)/浸漬前樹脂皮膜の乾燥重量}×100 ・・・・・(2)
前記カチオン性樹脂エマルションとしては、例えばアクリル系では、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、アクリル−塩化ビニル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂等のエマルションがあげられる。そのほかには、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等のエマルションなどがあげられる。なかでも、より疎水性の高い、アクリル−スチレン樹脂エマルションや、アクリル−塩化ビニル樹脂エマルションが好ましい。
これらの中でも、布帛としての風合いが良く、プリント搬送性に優れ、安価である点で、有機繊維類が好ましく、さらには、ポリエステル繊維であることが好ましい。
前記布帛の目付量等については特に限定するものではなく、インクジェット記録用シートとして使用できる範囲で適宜設定すればよい。
前記処理液の付与方法としては、特に限定するものではないが、なかでも、パディング法が好ましい。パティング法を用いることにより、布帛の表面だけでなく内部にまで処理液を行き渡らせることができ、特にインク定着性を向上させることができる。
前記処理液を付与した後の乾燥工程については、熱風乾燥、送風乾燥、ヒーターによる乾燥、ホットプレートによる乾燥などによりおこなうことができ、特には限定されない。なお、乾燥温度および時間についても適宜決定されうるが、生産面を考慮し、乾燥温度100〜150℃、乾燥時間30秒〜120秒であることが好ましい。
消泡剤としては、シリコーン系、鉱物油系、アセチレングリコール系などから適宜選択できる。
粘性調整剤としては、アルカリ可溶タイプ、会合型アルカリ可溶タイプ、ウレタン会合タイプなどから適宜選択できる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系などから適宜選択できる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系が選択できる。
あらかじめ重量を測定したガラス板に、アプリケーター(500μ)にて樹脂を塗工した後、乾燥機にて130℃で丸一日乾燥させた。樹脂皮膜が形成されたガラス板の重量を測定し、浸漬前の樹脂皮膜重量を算出した。
次いで、樹脂皮膜が形成されたガラス板を、常温水に24時間浸漬した後、乾燥機にて130℃で丸一日乾燥させた。その後、浸漬前と同様にして重量を測定し、浸漬後の樹脂皮膜重量を算出した。
次いで、浸漬前後の重量変化率を式(2)により求めた。
浸漬前後の重量変化率[%]=
{(24時間浸漬後樹脂皮膜の乾燥重量−浸漬前樹脂皮膜の乾燥重量)/浸漬前樹脂皮膜の乾燥重量}×100 ・・・・・(2)
下記処方にしたがって材料を加え、10分間撹拌し、処理液1を調製した。
<処理液1>
・両イオン性ポリマー:PAS410C 4.6重量部
(2級アミン、両性、有効成分40%、ニットーボーメディカル(株)製)
・樹脂:IC6985 16.0重量部
(カチオン性樹脂エマルション、固形分25%、星光PMC(株)製)
※浸漬前後の重量変化率−4.5%:難水溶性(浸漬前0.66g、浸漬後0.63g)
・水 129.4重量部
このときの、両イオン性ポリマーと樹脂との比率は1:2であった。
次いで、θ60/θ0の値を求めた。
その結果、θ60/θ0=1.02であった。
得られたインクジェット記録用シートに対し、水50mlをマイクロピペットにて滴下し、常温にて24時間放置した後の外観を、目視にて確認し、下記基準にしたがい評価した。
○:輪染みが確認されない/目視でほとんど確認されない
×:輪染みが目視で視認される
得られたインクジェット記録用シートに対し、市販のインクジェット記録装置(iPF6300、キヤノン(株)製)を用い、顔料インクによる100%のベタ印字印刷をおこない、印刷物を作成した。
24時間室温放置後、JIS L0849の規定に従い、摩擦試験機II形(学振)を用いて、荷重200gf、回数10回の摩擦試験を実施した後、印刷物のインク定着性を、下記評価基準に従い評価した。結果を表1に示す。
○:変褪色用グレースケールが「4級」以上
×:変褪色用グレースケールが「3−4級」以下
なお、変退色用グレースケールの数値は1級から5級までを半階級刻みで表し、数値が大きいほど良い結果を表す。(5、4−5、4、3−4、3、2−3、2、1−2、1の順で低くなる。)
実施例1における処理液1を、下記処方からなる処理液2に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2のインクジェット記録用シートを得た。
<処理液2>
・両イオン性ポリマー:PAS410C 4.6重量部
(2級アミン、両性、有効成分40%、ニットーボーメディカル(株)製)
・樹脂:IC6985 39.0重量部
(カチオン性樹脂エマルション、固形分25%、星光PMC(株)製)
※浸漬前後の重量変化率 −4.5%:難水溶性(浸漬前0.66g、浸漬後0.63g)
・水 106.4重量部
このときの、両イオン性ポリマーと樹脂との比率は1:5であった。
また、得られた実施例2のインクジェット記録用シートの接触角は、θ60/θ0=1.05であった。
実施例1における処理液1を、下記処方からなる処理液3に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1のインクジェット記録用シートを得た。
<処理液3>
・両イオン性ポリマー:PAS410C 4.6重量部
(2級アミン、両性、有効成分40%、ニットーボーメディカル(株)製)
・樹脂:IC6985 8.0重量部
(カチオン性樹脂エマルション、固形分25%、星光PMC(株)製)
※浸漬前後の重量変化率 −4.5%:難水溶性(浸漬前0.66g、浸漬後0.63g)
・水 137.4重量部
このときの、両イオン性ポリマーと樹脂との比率は1:1であった。
また、得られた比較例1のインクジェット記録用シートの接触角は、θ60/θ0=0.95であった。
実施例1における処理液1を、下記処方からなる処理液4に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2のインクジェット記録用シートを得た。
<処理液4>
・両イオン性ポリマー:PAS−2451 6.5重量部
(4級アミン、有効成分30%、ニットーボーメディカル(株)製)
・樹脂:IC6985 16.0重量部
(カチオン性樹脂エマルション、固形分25%、星光PMC(株)製)
※浸漬前後の重量変化率 −4.5%:難水溶性(浸漬前0.66g、浸漬後0.63g)
・水 129.4重量部
このときの、両イオン性ポリマーと樹脂との比率は1:2であった。
また、得られた比較例2のインクジェット記録用シートの接触角は、θ60/θ0=0.75であった。
実施例1における処理液1を、下記処方からなる処理液5に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3のインクジェット記録用シートを得た。
<処理液5>
・カチオン性ポリマー:PAS−21CL 8.0重量部
(2級アミン、有効成分:25%、ニットーボーメディカル(株)製)
・樹脂:IC6985 16.0重量部
(カチオン性樹脂エマルション、固形分25%、星光PMC(株)製)
※浸漬前後の重量変化率 −4.5%:難水溶性(浸漬前0.66g、浸漬後0.63g)
・水 126.0重量部
このときの、カチオン性ポリマーと樹脂との比率は1:2であった。
また、得られた比較例3のインクジェット記録用シートの接触角は、θ60/θ0=0.85であった。
実施例1における処理液1を、下記処方からなる処理液6に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例4のインクジェット記録用シートを得た。
<処理液6>
・両イオン性ポリマー:PAS410C 4.6重量部
(2級アミン、両性、有効成分40%、ニットーボーメディカル(株)製)
・樹脂:WS4030 16.0重量部
(カチオン性水溶性樹脂、固形分25%、星光PMC(株)製)
※浸漬前後の重量変化率 −34.5%(浸漬前0.44g、浸漬後0.29g)
・水 129.4重量部
このときの、両イオン性ポリマーと樹脂との比率は1:2であった。
また、得られた比較例5のインクジェット記録用シートの接触角は、θ60/θ0=0.66であった。
一方、比較例1〜4のインクジェット記録用シートは、インク定着性は良好であるものの、輪染み防止性については満足する結果は得られなかった。
Claims (5)
- 布帛に、アニオン性モノマーとカチオン性モノマーの両方を構成単位として含むポリマーである両イオン性ポリマーと、難水溶性樹脂が、少なくとも付与されてなるインクジェット記録用シートであって、 前記両イオン性ポリマーが2級アミン基を有するものであり、
前記インクジェット記録用シート上に水40μlを滴下した際の、水滴の接触角が、下記式(1)で表されることを特徴とする、インクジェット記録用シート。
θ60/θ0≧1.00 ・・・・・(1)
θ60:水40μlを滴下して60秒後の水滴の接触角(°)
θ0:水40μlを滴下した直後の水滴の接触角(°) - 前記難水溶性樹脂が、カチオン性樹脂エマルションであることを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記カチオン性樹脂エマルションが、アクリル系、ウレタン系、塩化ビニル系より選択されることを特徴とする、請求項2に記載のインクジェット記録用シート。
- 前記両イオン性ポリマーと前記難水溶性樹脂とが、1:2〜1:5の比率で付与されてなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
- 前記布帛が、ポリエステル繊維からなる布帛であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
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