[第1実施形態の説明]
本発明の実施形態に係る被加工物の加工機(工作機械)1は、工具(加工工具;たとえばボールエンドミル)3を用いて被加工物(ワーク)5を加工するものであり、図1や図17で示すように、被加工物保持部7と工具保持部9と移動部11と制御部13(制御装置)とを備えて構成されている。
ここで、空間における所定の一方向をX方向(X軸方向;横方向)とし、空間における所定の他の一方向であってX方向に対して直交する方向をY方向(Y軸方向;前後方向)とし、X方向とY方向とに対して直交する方向をZ方向(Z軸方向;上下方向)する。なお、この定義では、X方向とY方向とが水平方向であってZ方向が上下方向になるがこれに限定されるものではなく、X方向もしくはY方向が上下方向となってもよいし、X方向、Y方向、Z方向が、水平方向や上下方向に対して斜めになっていてもよい。
被加工物保持部7は、被加工物5を保持するように構成されており、工具保持部9は、工具3を保持するように構成されている。工具保持部9で保持されている保持済み工具3(以下、単に「工具3」という)は、被加工物保持部7で保持されている保持済み被加工物5(以下、単に「被加工物5」という)を加工(切削加工)するようになっている。
工具3としての(ボールエンドミル)は、外周に切れ刃部が設けられている。さらに説明すると、ボールエンドミル3は、円柱状の基端部15(図1)と半球状の先端部17とを備えて構成されている。基端部15の外径と先端部17の直径とはお互いが一致しており、基端部15の中心軸C1の延伸方向の一方の端に、先端部17がくっついた形状になっている。なお、先端部17の中心軸と基端部15の中心軸C1とはお互いが一致している。
ここで、先端部17の円形の端面(基端部15の円形の端面にくっついている端面)の中心を、先端部17の中心C2とする。この中心C2は、工具3の中心軸C1上に存在している。
ボールエンドミル3の切れ刃は、先端部17の外周と基端部15の端部(先端部17側の端部)とに形成されている。ボールエンドミル3は、基端部15の他方の端部が工具保持部9に係合して工具保持部で保持されるようになっている。
そして、工具保持部9で保持されている工具3は、回転(中心軸C1を回転中心にして自転)することで、切れ刃で被加工物5を切削加工するようになっている。
移動部11は、被加工物5を保持済み工具3で加工するために、被加工物5に対して工具3を相対的に移動するように構成されている。すなわち、被加工物5に対して工具3が移動するように構成されていてもよいし、工具3に対して被加工物5が移動するように構成されていてもよい。
制御部13は、NCプログラムに基づいて移動部11を制御し、被加工物5に対し工具3を移動するように構成されている。
さらに説明すると、図17で示すように、被加工物5の加工機1は、ベッド19とテーブル21とコラム23と主軸支持体25と主軸筐体27とスピンドル29と備えて構成されている。
テーブル21は、図示しないリニアガイドベアリングを介してベッド19に支持されており、図示しないリニアモータ等のアクチュエータにより、X方向でベッド19に対して相対的に移動する(移動位置決めされる)ようになっている。
コラム23はベッド19に一体的に設けられている。主軸支持体25は、図示しないリニアガイドベアリングを介してコラム23に支持されており、図示しないリニアモータ等のアクチュエータにより、Y方向でコラム23に対して相対移動されるようになっている。
主軸筐体27は、図示しないリニアガイドベアリングを介して主軸支持体25に支持されており、図示しないリニアモータ等のアクチュエータにより、Z方向で主軸支持体25に対して相対移動されるようになっている。
スピンドル29は、ベアリングを介して主軸筐体27に支持されており、図示しないモータ等のアクチュエータにより、中心軸(Z方向に延びている工具3と共通の中心軸)C1を回転中心にして主軸筐体27に対し回転自在になっている。
スピンドル29には、工具保持部9が設けられており、テーブル21の上面には、被加工物保持部7が設けられている。これにより、被加工物5に対し保持済み工具3がX方向、Y方向、Z方向で相対的に移動するようになっている。
NCプログラムには、工具3の位置(被加工物5に対する座標)を算出するための演算式(たとえば、四則演算等を用いた数式式)が組み込まれている。すなわち、保持済み工具3が移動するときの位置座標は、演算式の解によって決定されるようになっている。
また、NCプログラムは、工具3の輪郭誤差による被加工物5の加工誤差の発生を抑えるために、演算式を用いて、工具3の位置を補正するように構成されている。
工具3の位置の補正は、該工具3の加工点T1(詳細は後述する)における加工面に対する法線ベクトルV1と、工具3との輪郭誤差とを用いてなされる。これにより、X方向、Y方向、Z方向のうちの少なくともいずれかの方向(法線ベクトルV1の形態で決まる)で、工具3の三次元的な位置が補正される。
さらに説明すると、工具3の輪郭誤差は、図17に示す工具形状測定装置31によって、被加工物5を実際に加工する前に、事前に求められる。
工具形状測定装置31は、被加工物の加工機1の所定の位置に設置されている。そして、保持済み工具3の形状を工具形状測定装置31(レーザやカメラなど)で測定可能な位置に保持済み工具3を位置させて、保持済み工具3を回転(中心軸C1まわりで自転)させておくことで、保持済み工具3の外形を機上(被加工物の加工機1の機上)で測定するようになっている。
この測定した保持済み工具3の外形と、理想的な形状の(形状誤差の無い)保持済み工具の外形との差(工具3の部位毎の差)を、工具3の「輪郭誤差」とする。なお、以下では、「工具形状測定装置31」を用いて初期的に工具3の輪郭誤差を算出する処理を、「初期校正処理」という。
図2(a)に破線で示すものは、理想的な形状の工具の外形形状であり、図2(a)に実線で示すものは、形状誤差のある実際の工具3の外形形状である。図2(a)では、中心軸C1まわりで工具の回転をしていない。また、図2(a)に実線で示す保持済み工具3は、中心軸C1に対してごく僅かに右側に偏って位置している。
図2(b)に破線で示すものは、理想的な形状の工具の外形形状であり、図2(b)に実線で示すものは、形状誤差のある実際の工具3(図2(a)に実線で示した工具3)を中心軸C1のまわりで回転させたときの外形形状である。
図2(b)に実線で示す工具3の形状は、当然のことであるが中心軸C1に対して線対称になっている。被加工物5の加工が、ボールエンドミル3の先端部17でされるとすれば、ボールエンドミル3の輪郭誤差は、図3で示すように、先端部17の1/4の円弧(即ち、角度が90°の範囲)で求めればよいことになる。
なお、工具形状測定装置として、たとえば、特開昭63−233403号公報で示されているものを掲げることができる。
ここで、工具(ボールエンドミル)3の輪郭誤差を、図3を参照しつつさらに詳しく説明する。
図3に二点鎖線で示す半円弧状のものは、形状誤差の無い工具の外形形状である。図3に実線で示すものは、工具形状測定装置31で測定された工具3の先端部17の外形形状である。なお、図では理解を容易にするために、輪郭誤差を誇張して記載している。
工具3の半球状の先端部17の中心C2から工具3の、1/4円弧状の外形に向かって延びる複数本の半直線L00〜L90を、角度10°間隔で引く。工具3の中心軸C1と半直線L00と交差角度は「0°」になっている。保持済み工具3の中心軸C1と半直線L10と交差角度は「10°」になっている。同様にして、保持済み工具3の中心軸C1と半直線L20〜半直線L90と交差角度は「20°」〜「90°」になっている。
ここで、半直線L00と理想形状の工具の外形との交点を交点Q00aとする。同様に、半直線L10、L20、・・L90と、理想形状の工具の外形との交点を交点Q10a、Q20a・・Q90aとする。一方、半直線L00、L10、L20、・・L90と、工具形状測定装置31で測定した実際の工具3の外形との交点を交点Q00b、Q10b、Q20b・・Q90bとする。
そして、それぞれの差分を参照符号「#500〜#590」としてメモリなどに記憶する。具体的に、「#500=Q00b−Q00a」とし、「#510=Q10b−Q10a」とし、以下同様にして、「#590=Q90b−Q90a」とする。
参照符号(プログラム変数番号になる)#500〜#590で示す寸法の値は、半直線L00〜L90において、理想形状の工具の外形との交点Q00a〜Q90aと、実際の工具3の外形との交点Q00b〜Q90bとの間の距離であり、それぞれの半直線における工具3の輪郭誤差の値を示している。
なお、図3では、工具3の中心軸C1に対する半直線L00〜L90の交差角度が10°の間隔で刻まれていることで、工具3の輪郭誤差が10カ所で求められて存在していることになるが、交差角度がさらに細かい間隔(たとえば、1°の間隔)で刻まれていてもよい。
すなわち、たとえば、工具3の中心軸C1との交差角度が「64°」になっている半直線L64のところにおける工具3の輪郭誤差(交点Q64aと交点Q64bとの間の距離;#564)という具合に、工具3の輪郭誤差が91カ所で求められて存在していてもよい。
これらの各輪郭誤差の値は、工具形状測定装置31を用いて上述した「初期校正処理」を実施することにより、工具3の輪郭誤差を示すデータとして、工具3による被加工物5の加工がされる前に、予め、図17で示すPC33aのメモリ(PC33や制御部13のメモリ35でもよい)に記憶されている。なお、図17に符号47で示すものは、工具3の輪郭誤差を示すデータである。
ここで、工具3の輪郭誤差による被加工物5の加工精度の悪化を防ぐためのNCプログラム(補正有NCプログラム)について説明する。
図17で示すように、CADデータ(完成品として被加工物の形状を示すデータ)37と、CAM39で作成された加工パス(工具の輪郭誤差が「0」であるとするCADデータに基づいたNCプログラム)とから、工具3の加工点T1(図4参照)における法線ベクトル(単位法線ベクトル)V1を、たとえば、PC33(PC33aでもよい。)で求める。
工具3の半球状の先端部17の切れ刃部が被加工物5を切削加工しているときに、工具3と被加工物5との接触点が加工点T1になる。
さらに説明すると、被加工物5を工具3を用い所定の切り込み量で切削加工しているときに、被加工物5に対して工具3がX方向やY方向やZ方向に移動しているのであるが、この加工をしているときに、たとえば、工具3がこの移動方向の最も後端で、被加工物5に接している点(加工後に被加工物の外形形状を決める箇所)が加工点T1になる。
加工点T1を中心とした加工点T1の近傍は曲面であるが、平面とみなせるごく微小な面が存在しているとみなすこともできる。法線ベクトルV1は、上記ごく微小な曲面に対して直交しているベクトルであり、X方向の成分とY方向の成分とZ方向の成分とを備えている。また、法線ベクトルV1は、このスカラー量が「1」になっている。即ち、法線ベクトルV1は単位ベクトルである。そして、本実施形態では、初期校正処理により、工具3のずれ量(スカラー量)を演算する。更に、法線ベクトルV1を演算する。そして、後述するように、法線ベクトルV1をX方向、Y方向、Z方向のそれぞれの方向に分解し、更に、ずれ量を乗算して、X方向、Y方向、Z方向のずれ量を演算する。
被加工物5を切削加工するときの保持済み工具3の位置の補正についてさらに説明する。
図4に示すように、被加工物5を切削加工するとき、工具3は、X方向、Y方向、Z方向のうちの少なくともいずれかの方向で、保持済み被加工物5に対して移動する。このときの工具3の座標値は、たとえば、図5で示すように、座標値f51(X−1.60657 Y−0.42583 Z−1.09809)から、座標値f52(X−1.62951 Y−0.6141 Z−1.09809)に所定の僅かな時間をかけてたとえば直線的に移動する。同様にして、座標値f52から座標値f53に移動し、さらに、座標値f53から座標値f54に、座標値f54から座標値f55に・・・・移動する。また、加工点T1も当然に移動する。
なお、図5で示すものは、工具3の輪郭誤差に対する補正がされていないときの(理想的な工具で切削加工するときに)工具3の座標値(NCプログラムの一部)を示している。
図6は、図5に示した座標値f51〜f55に、補正値を加算した座標値f61〜f65を示している。工具3の輪郭誤差に対する補正がされることで、図6で示すような、・・・座標値f61、座標値f62、座標値f63、座標値f64、座標値f65・・・を、この順に工具3が通って、被加工物5の切削加工がなされる。なお、座標値f61、座標値f62・・・は、演算式を備えており、PC33で作成され、被加工物の加工機1の制御部13に送られる。そして、制御部13で演算式の計算が行われるようになっている。なお、PC33を用いることなく、制御部13で、演算式を備えている座標値f61、座標値f62・・・が作成される構成であってもよい。
工具3の輪郭誤差に対する補正をするときの保持済み工具3の座標値を、座標値f61を例に掲げて説明する。
座標値f61におけるX座標の「−1.60657」は、補正がされる前の(輪郭誤差の補正の無い)保持済み工具3のX方向の座標値である。座標値f61における「−0.89101」は、加工点T1における法線ベクトルV1のX方向成分である。座標値f61における「*」は、掛け算の記号(×)である。座標値f61における参照符号「#564」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T1における輪郭誤差(スカラー量)である。
座標値f61におけるY座標の「−0.42583」は、補正がされる前の(輪郭誤差の補正の無い)工具3のY方向の座標値である。座標値f61における「0.11528」は、加工点T1における法線ベクトルV1のY方向成分である。座標値f61における参照符号「#564」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T1における輪郭誤差(スカラー量)である。
座標値f61におけるZ座標の「−1.09809」は、補正がされる前の(輪郭誤差の補正の無い)工具3のZ方向の座標値である。座標値f61における「−0.4391」は、加工点T1における法線ベクトルV1のZ方向成分である。座標値f61における参照符号「#564」は、図3を用いて説明したような、保持済み工具3の加工点T1における輪郭誤差(スカラー量)である。
なお、座標値f61におけるX方向成分とY方向成分とZ方向成分とを有する法線ベクトルV1の大きさは「1」になる。すなわち、「((−0.89101・・・)2+(0.11528・・・)2+(−0.4391・・・)2)1/2=1」になる。
ここで、図17で示すような、被加工物5の加工機1、PC33、CAM39を備えた被加工物の加工システムの動作について説明する。
初期状態では、工具3が工具保持部9で保持されており、被加工物5が被加工物保持部7で保持されており、保持済み工具3の輪郭誤差が測定されている。
上記初期状態で、CAM39で加工パス41を作成し、CADデータ37と加工パス41とで、PC33により工具3の輪郭誤差に基づいた補正がされた加工パス(補正済み加工パス)43を作成し、補正済み加工パス43を被加工物の加工機1の制御装置(制御部13)に送る。
被加工物の加工機1は、制御部13の制御の下、補正済み加工パス43に基づき移動部11を制御して、保持済み工具3を回転させつつ保持済み被加工物5に対して適宜移動し、保持済み被加工物5の切削加工を行う。
以下、図29に示すフローチャートを参照して、上述した第1実施形態に係る被加工物の加工機の処理手順について説明する。初めに、図29のステップS11において、市販のCAMに基づいて、被加工物5を加工する際のNCプログラム、即ち、工具3による加工パスの3次元座標を生成する。
ステップS12において、NCプログラムに、前述した補正ベクトル(法線ベクトル)を付加する。
ステップS13において、加工機1の制御部13にNCプログラムを読み込ませる。
ステップS14において、被加工物5を加工する工具3の形状を、レーザなどを用いた工具形状測定器で測定し、工具形状を採取する。
ステップS15において、ステップS14の処理で採取した工具形状に基づいて、NCプログラムの補正量を算出し、制御部13のメモリにセットする。
その後、ステップS16において、工具3による加工を開始する。
こうして、工具3の輪郭誤差を補正して工具3を作動させ、被加工物5の加工を実施することができるのである。
被加工物の加工機1によれば、NCプログラムに、工具3の位置(座標値)を算出するための演算式が組み込まれているので、工具を交換したり、工具が摩耗したとき等に、その都度、NCプログラムを作り直す必要を無くすことができる。
すなわち、具体的な数字を使うと、工具を交換したり工具が摩耗したりしたとき等に、その都度、NCプログラムを作り直さなければいけないが、演算式にすることで、その時々に変化する工具輪郭誤差に随時対処することができる。また、演算式を用いることで、測定した工具輪郭値を変数に格納しておき、加工時に計算(演算)が行われるので、NCプログラムを一度作成すればその後ずっと利用することができる。また、NCプログラムの演算式の演算を制御部13で行うので、専用の装置が不要になる。
また、被加工物の加工機1によれば、NCプログラムが、工具3の輪郭誤差による被加工物5の加工誤差の発生を抑えるために、演算式を用いて、工具3の位置を補正するように構成されているので、NCプログラムの構成を簡素化することができる。
また、被加工物の加工機1によれば、CADデータ37と加工パス41とを用いて工具3の加工点T1における法線ベクトルV1を求め、この法線ベクトルV1と加工点T1における工具3の輪郭誤差とを含む演算式を用いて工具3の位置を補正しているので、保持済み工具3の位置を確実に精度良く補正をすることができる。
なお、被加工物5の加工をすることで工具3は摩耗する。したがって、工具3の輪郭誤差の測定は、被加工物5の加工を所定時間行う毎にされることが望ましい。
また、工具3の輪郭誤差の測定を被加工物5の加工を所定時間行う毎に行い、この測定結果に応じて工具3の位置の補正をすると、補正の前後で被加工物5の表面に段差が形成されてしまうおそれがある。そこで、工具3の輪郭誤差の測定を行った直後に補正量を変更するのではなく、加工の進行に伴い徐々に補正量を変化させてもよい。
すなわち、制御部13が、保持済み工具3の輪郭誤差の測定を保持済み被加工物5の加工を所定時間行う毎に工具形状測定装置31に行わせ、この測定結果に応じて保持済み工具3の位置の補正をするときにこの補正の前後で保持済み被加工物5の表面に段差が形成されてしまうことを防止するために、保持済み工具3の輪郭誤差の測定を行った直後に保持済み工具3の補正量を変更するのではなく、保持済み工具3による保持済み被加工物5の加工の進行に伴い保持済み工具3の位置を補正する(保持済み工具の位置の補正を「0」から開始し、この後補正量を、たとえば増やすようにして徐々に変化させる)ようにしてもよい。
図35を参照してさらに説明する。図35(a)は、時刻t1、t2、t3において工具形状測定装置31で測定した保持済み工具3の外形を模式的に示す図である。図35で示す時刻t2は、時刻t1より遅い時刻であり(時刻t1から「時刻t2−時刻t1」の時間が経過した時刻であり)、時刻t3は、時刻t2より遅い時刻である。
また、時刻t1は、保持済み工具3で保持済み被加工物5の加工を開始する時刻である。図35(a)で示すように、時刻t1から時刻t3にわたって保持済み被加工物5を保持済み工具3で加工することで、保持済み工具3が次第に摩耗している。
なお、上記説明では、時刻t2や時刻t3を、一瞬の時刻として受け取られてしまうが、実際には、時刻t2等はある程度の時間幅を備えている。すなわち、時刻t2等は、保持済み工具3による保持済み被加工物5の加工が終わった時から保持済み工具3の測定を経て保持済み工具3による保持済み被加工物5の次の加工を開始するときまでの時間幅を備えているものとする。
図35(b)は、保持済み工具3の輪郭誤差の測定を行った直後に保持済み工具3の位置の補正(段差の発生を許容する補正)をして、保持済み被加工物5を保持済み工具3で加工したときにおける保持済み被加工物5の表面の形状(ワーク形状)を示している。図35(b)で示すものでは、時刻t2、t3で段差49が形成される。
これに対して、保持済み工具3による保持済み被加工物5の加工の進行に伴い補正量を適宜変化させることで、保持済み被加工物5の表面の形状(ワーク形状)が、段差が形成されていない図35(c)で示すような形状になる。なお、図35(c)で示す加工後の保持済み被加工物5の形状の誤差は、許容値内に収まっている。
さらに説明すると、図35(c)で示す態様では、時刻t1から時刻t2までは、たとえば、保持済み工具3で保持済み被加工物5の加工をする。続いて、時刻t2で保持済み工具3の輪郭誤差の測定をする。このときに、値CA1だけ保持済み工具3が摩耗しているものとする。
時刻t2では、保持済み被加工物5の表面に段差が形成されないようにするために、時刻t2で測定した保持済み工具3の輪郭誤差に応じて保持済み工具3の位置を適宜補正しつつ、保持済み被加工物5の加工を開始する。なお、時刻t2では、直ちに値CA1に基づく補正をすることなく、加工を開始する。
時刻t2から時刻t3にかけては、保持済み被加工物5の加工の進行に伴い保持済み工具3の補正量を徐々に変化させる。さらに、時刻t2から時刻t3にかけては、時刻t3における保持済み工具3の摩耗量を時刻t1から時刻t2の摩耗量に基づき(たとえば摩耗量を予想して)、保持済み工具3の位置を適宜補正しつつ保持済み被加工物5の加工をしてもよい。保持済み工具3の輪郭誤差の測定をする次の時刻である時刻t3では、保持済み被加工物5の形状が目標形状と一致するか、目標形状よりもごく僅かに大きいプラス形状になるか、もしくは、目標形状よりもごく僅かに大きいマイナス形状になる。図35(c)では、マイナス形状になっている。
時刻t3以後の時刻においても、時刻t1〜時刻t3の場合と同様にして、保持済み工具3による保持済み被加工物5の加工を行う。
ところで、上記説明では、被加工物の加工機1へのNCプログラムの供給を外部のPC33から送信で行っているが、被加工物の加工機1へのNCプログラムの供給をメモリカード等のメディアを介して行ってもよい。
また、上記説明では、加工点が1つである場合の補正について述べているが、加工点が複数存在する場合もある(複数の加工点が同時に存在する場合もある)。
すなわち、工具3の輪郭誤差に基づく工具3の位置の補正が、被加工物5を加工するときの、工具3の複数の加工点についてなされる場合がある。
ここで、加工点が同時に2つ存在する場合を例に掲げて詳しく説明する。
図10(a)に二点鎖線で示すものは、理想形状の工具(形状誤差の無い工具)の輪郭である。図10(a)に実線で示すものは、実際の形状誤差のある工具3の輪郭である。
工具の輪郭誤差に基づく工具3の位置の補正を、図10(b)で示すように、加工点T1のみに合せて行うと、図10(b)で示すようになる。図10(b)で示す状態では、加工点T2とこの近傍で、工具3の被加工物5への食い込み45が発生する。この状態で切削加工をすると、被加工物5を削りすぎてこれにより被加工物5に形状誤差が発生する。
そこで、工具の輪郭誤差に基づく工具3の位置の補正(干渉の回避)を、加工点T2についても合せて行うと、図10(c)で示すようになる。図10(c)では、図10(b)で示す状態から、たとえば、回避ベクトル(加工点T1と加工点T2との法線ベクトルによって規定される平面に存在し加工点T1の法線ベクトルVBに対して直交するベクトル)を用いて、工具3の位置の補正を行っている(図10(d)参照)。
すなわち、加工点T1の法線と直交する方向に回避量(加工点T1の補正量×tanθ)VAだけ工具3を逃がす補正を行っている(図10(d)参照)。「θ」は、加工点T1の法線と、加工点T2に接する平面(加工点T2を含み加工点T2の法線と直交する平面)との交差角度である。
なお、図10(c)に破線で示すものは、図10(b)における工具3の位置である。また、加工点T1における法線と、加工点T2における法線とは、工具3の先端部17の中心C2でお互いが交わっている。
さらに説明すると、X方向、Y方向、Z方向における補正済みの工具3の座標は、図11(a)に(1)、(2)、(3)、(4)の記載で示すものの和で表される。
工具3のX方向における補正済みの工具3の座標値は、図11(b)の座標値(演算式)f111で表される。
座標値f111における「0.123」は、補正がされる前の(輪郭誤差の補正の無い)工具3のX方向の座標値である。座標値f111における参照符号「#513」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T1における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f111における「0.216」は、加工点T1における法線ベクトルのX方向成分である。
座標値f111における「参照符号#572」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T2における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f111における「0.808」は、加工点T2における法線ベクトルのX方向成分である。
座標値f111における参照符号「#513」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T1における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f111における「−0.816」は、加工点T1における回避ベクトル(単位ベクトル)のX方向成分である。座標値f111における「0.613」は、上述したtanθの値である。
座標値f111における参照符号「#572」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T2における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f111における「0.243」は、加工点T2における回避ベクトル(単位ベクトル)のX方向成分である。座標値f111における「0.613」は、上述したtanθの値である。
工具3のY方向における補正済みの座標は、図11(b)の座標値f112で表される。
座標値f112における「0.234」は、補正がされる前の(輪郭誤差の補正の無い)工具3のY方向の座標値である。座標値f112における参照符号「#513」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T1における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f112における「0.108」は、加工点T1における法線ベクトルのY方向成分である。
座標値f112における参照符号「#572」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T2における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f112における「0.505」は、加工点T2における法線ベクトルのY方向成分である。
座標値f112における参照符号「#513」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T1における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f112における「−0.526」は、加工点T1における回避ベクトル(単位ベクトル)のY方向成分である。座標値f112における「0.613」は、上述したtanθの値である。
座標値f112における参照符号「#572」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T2における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f112における「0.183」は、加工点T2における回避ベクトル(単位ベクトル)のY方向成分である。座標値f112における「0.613」は、上述したtanθの値である。
工具3のZ方向における補正済みの座標は、図11(b)の座標値f113で表される。
座標値f113における「0.345」は、補正がされる前の(輪郭誤差の補正の無い)工具3のZ方向の座標値である。座標値f113における参照符号「#513」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T1における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f113における「0.97」は、加工点T1における法線ベクトルのZ方向成分である。
座標値f113における参照符号「#572」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T2における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f113における「0.303」は、加工点T2における法線ベクトルのZ方向成分である。
座標値f113における参照符号「#513」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T1における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f113における「0.24」は、加工点T1における回避ベクトル(単位ベクトル)のZ方向成分である。座標値f113における「0.613」は、上述したtanθの値である。
座標値f113における参照符号「#572」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T2における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f113における「−0.953」は、加工点T2における回避ベクトル(単位ベクトル)のZ方向成分である。座標値f113における「0.613」は、上述したtanθの値である。
なお、加工点T1の法線ベクトルと回避ベクトルとはお互いが直交するので、図11(b)の加工点T1の法線ベクトルの成分(0.216、0.108、0.97)と、図11(b)の加工点T1の回避ベクトルの成分(−0.816、−0.526、0.24)とは次の関係(内積=0)の関係になっている。
すなわち、(0.216)×(−0.816)+(0.108)×(−0.526)+(0.97)×(0.24)≒0になっている。同様にして、加工点T2についても、(0.808)×(0.243)+(0.505)×(0.183)+(0.303)×(−0.953)≒0になっている。
なお、図12に示す演算式は、図11(b)で示した演算式を整理したもので、これによりプログラム実行時の処理速度が速くなる。
なお、図11、図12では、具体的な数字を掲げているが、図11で示す態様を一般化すると図14で示すようになり、図12で示す態様を一般化すると図15で示すようになる。
被加工物の加工機1によれば、工具の輪郭誤差に基づく保持済み工具3の位置の補正が、被加工物5を加工するときの複数の加工点についてなされるので、被加工物5への工具3の食い込みが防止され(図10(b)で示す事態の発生が防止され)、より形状精度のよい被加工物5を得ることができる。
なお、加工点が3つ以上同時に存在する場合も、加工点が2つ同時に存在する場合と同様に考えることができる。
ところで、図3で示す態様では、工具3の輪郭誤差が1°単位で求められている。すなわち、輪郭誤差が求められている工具3の部位は、非連続(連続していない)、たとえば1°毎のとびとびの状態で存在している。
そこで、加工点T1(T2)が、輪郭誤差が存在していない工具3の部位になっている場合には、加工点T1(T2)を間にしてお互いが隣接している2つの部位の輪郭誤差を用いて、加工点T1(T2)の輪郭誤差を算出し、この算出した輪郭誤差を用いて、工具3の位置の補正をするようになっている。
詳しく説明すると、工具3の輪郭誤差は、図3を用いて説明したように、工具3の回転中心軸C1に対する交差角度を1°毎の間隔にして求められている。しかし、実際には、工具3の加工点T1が、図7で示すように、たとえば、63.9°の角度のところになる事態が当然に発生する。
この場合、63.9°の角度(中途の角度)のところの工具3の輪郭誤差は、中途の角度に隣接している一方の角度63°のところの工具3の輪郭誤差を示す参照符号「#563」と、中途の角度に隣接している他方の角度64°のところの工具3の輪郭誤差を示す参照符号「#564」とを用いて求められる。この場合、一方の角度63°、他方の角度64°のうちで、上記中途の角度63.9°に近い角度64°のところにおける輪郭誤差を示す参照符号「#564」を偏重して用いる。
具体例を掲げて説明すると、中途の角度63.9°と一方の角度63°との第1の差0.9°を求め、他方の角度64°と中途の角度63.9°と第2の差0.1°を求める。
また、他方の角度64°と一方の角度63°との差である1°に対する第1の差0.9°の第1の割合である「0.9」と、他方の角度64°と一方の角度63°との差である1°に対する第2の差0.1°の第2の割合である「0.1」とを求める。
中途の角度63.9°のところにおける工具の輪郭誤差は、第1の割合0.9×他方の角度64°のところの工具の輪郭誤差を示す参照符号「#564」と、第2の割合0.1×一方の角度63°のところの工具の輪郭誤差を示す参照符号「#563」との和で求められる。
中途の角度63.9°のところの工具の輪郭誤差で補正をするときの保持済み工具3の座標値を、図8に示す座標値f81を例に掲げて説明する。
座標値f81における「−1.60657」は、補正がされる前の(輪郭誤差の補正の無い)保持済み工具のX方向の座標値である。座標値f81における「−0.89101」は、座標値f81の加工点T1における法線ベクトルのX方向成分である。
座標値f81における参照符号「#563」は、図3を用いて説明したような、保持済み工具3の加工点T1における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f81における「0.046」は、上述した第2の割合「0.1」に相当する値(割合)である。
座標値f81における参照符号「#564」は、図3を用いて説明したような、保持済み工具3の加工点T1における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f81における「0.954」は、上述した第1の割合「0.9」に相当する値(割合)である。
座標値f81における「−0.42583」は、補正がされる前の(輪郭誤差の補正の無い)工具3のY方向の座標値である。座標値f81における「0.11528」は、座標値f81の加工点T1における法線ベクトルのY方向成分である。
座標値f81における参照符号「#563」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T1における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f81における「0.046」は、上述した第2の割合「0.1」に相当する値(割合)である。
座標値f81における参照符号「#564」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T1における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f81における「0.954」は、上述した第1の割合「0.9」に相当する値(割合)である。
座標値f81における「−1.09809」は、補正がされる前の(輪郭誤差の補正の無い)工具3のZ方向の座標値である。座標値f81における「−0.4391」は、座標値f81の加工点T1における法線ベクトルのZ方向成分である。
座標値f81における参照符号「#563」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T1における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f81における「0.046」は、上述した第2の割合「0.1」に相当する値(割合)である。
座標値f81における参照符号「#564」は、図3を用いて説明したような、工具3の加工点T1における輪郭誤差(スカラー量)である。座標値f81における「0.954」は、上述した第1の割合「0.9」に相当する値(割合)である。
座標値f82、座標値f83、座標値f84、座標値f85・・・も座標値f81と同様に解釈される。
工具3の輪郭誤差に対する補正(中途の角度のところの工具3の輪郭誤差で補正)がされることで、図8で示すような、・・・座標値f81、座標値f82、座標値f83、座標値f84、座標値f85・・・をこの順に工具3が通って、被加工物5の切削加工がなされる。
なお、図7、図8では、具体的な数字を掲げているが、図7で示す態様を一般化すると図9(a)で示すようになり、図8で示す態様を一般化すると図9(b)で示すようになる。また、加工点が2つ存在する場合には、図13で示すようになる。図13で示す態様を一般化すると図16で示すようになる。
被加工物の加工機1によれば、輪郭誤差が求められている保持済み工具3の部位が非連続のとびとびの状態で存在しており、加工点T1(T2)が、輪郭誤差が存在していない工具3の部位になっていても、加工点T1(T2)を間にしてお互いが隣接している2つの部位の輪郭誤差を用いて、加工点T1(T2)の輪郭誤差を算出し、この算出した輪郭誤差を用いて、工具3の位置の補正をするので、被加工面における段差等の発生が防止され、より形状精度のよい被加工物5を得ることができる。
ところで、被加工物の加工機1において、フィルタリング済みの輪郭誤差に基づいて、工具3の位置の補正をするようにしてもよい。
すなわち、工具3の円弧部の半径に対する被加工物5の被加工面の半径に応じ、工具3の輪郭誤差の遮断周波数(カットオフ値)を変えて工具3の輪郭誤差を示す曲線(実際に測定されたままの輪郭誤差を示す曲線)についてたとえば高周波成分を除くフィルタリングをし、このフィルタリング済みの輪郭誤差に基づいて、工具3の位置の補正をするようにしてもよい。
これについて詳しく説明する。図3を用いた説明では、1°毎に保持済み工具3の輪郭誤差を得ている。ところで、たとえばさらに細かい角度である0.1°毎に保持済み工具3の輪郭誤差を測定したとすると、図19(a)に曲線CV1で示すような細かく波打った輪郭誤差を得ることができる。
図19(a)に示す曲線CV1に関して高周波数成分を除くフィルタリングをすると、図19(b)に曲線CV2で示すようなある程度波打った輪郭誤差を得ることができる。
また、図19(b)に示す曲線CV2に関して、上記高周波数成分よりも波長の長い高周波数成分(中周波数成分)を除くフィルタリングをすると、図3、図19に曲線CV3で示すようなほとんど波打っていない輪郭誤差を得ることができる。
なお、図3、図19に示す円弧状の曲線CV0は、誤差の無い保持済み工具3の輪郭形状を示している。また、図3、図10、図19等で示す輪郭誤差の形態は、当然例示であり、しかも、輪郭誤差を誇張して描いている。
図18(a)で示すように、工具3の円弧の半径と被加工物5の被加工面の半径との差の値が大きい場合には、被加工物5と工具3との接触長さ(接触面積)CT1の値が小さくなるので、図19(a)に曲線CV1で示す輪郭誤差を用いて補正をする。
図18(b)で示すように、工具3の円弧の半径と被加工物5の被加工面の半径との差の値が中くらいの場合には、被加工物5と保持済み工具3との接触長さ(接触面積)CT2の値が中くらいになるので、図19(b)に曲線CV2で示す輪郭誤差を用いて補正をする。
また、図18(c)で示すように、工具3の円弧の半径と被加工物5の被加工面の半径との差の値が小さい場合には、被加工物5と保持済み工具3との接触長さ(接触面積)CT3の値が大きくなるので、図19(c)に曲線CV3で示す輪郭誤差を用いて補正をする。
ここで、工具3の円弧の半径と被加工物5の被加工面の半径との差の値について説明する。工具3の先端部17の円弧は一定の半径の凸状になっている。これに対して、被加工物5の被加工面は凸状になったり、平面状になったり、凹状になったりする。
被加工物5の被加工面が凸状になっている場合、凸の半径(半径の絶対値)が小さいほど、工具3の円弧の半径(半径の絶対値)と被加工物5の被加工面の半径との差の値が大きくなる。
被加工物5の被加工面が平面状になっている場合、工具3の円弧の半径と保持済み被加工物5の被加工面の半径との差の値は、被加工物5の被加工面が凸状になっている場合よりも小さくなる。
被加工物5の被加工面が凹状になっている場合、工具3の円弧の半径と保持済み被加工物5の被加工面の半径との差の値は、被加工物5の被加工面が平面状になっている場合よりも小さくなる。
さらに、被加工物5の被加工面が凹状になっている場合、凹の半径が小さくなって工具3の円弧の半径に近づくほど、工具3の円弧の半径と被加工物5の被加工面の半径との差の値が小さくなる。
このような被加工物の加工機1によれば、工具3の円弧部の半径に対する被加工物5の被加工面の半径に応じて、工具3の輪郭誤差の遮断周波数を変えて工具3の輪郭誤差を示す曲線についてフィルタリングをし、このフィルタリング済みの輪郭誤差に基づいて、保持済み工具3の位置の補正をするので、工具3の加工点T1(T2)の隣接部の摩耗まで考慮した補正をすることができる。
なお、フィルタリング以外に、曲率によって平均化範囲を変え、凹凸の除去幅を可変する方式としてもよい。
すなわち、工具3の円弧部の半径に対する保持済み被加工物5の被加工面の半径に応じ、工具3の輪郭誤差を平均化するときにおける平均化の範囲を変えて、工具3の輪郭誤差を示す曲線を平均化し、この平均化済みの輪郭誤差に基づいて、工具3の位置の補正をするようにしてもよい。
さらに詳しく説明する。図18(a)で示す点T1は加工点を示しており、工具3は、加工点(一方の端点)T1と点(他方の端点)Taとの間(小さい値CT1の範囲)で被加工物5に接している。図18(a)で示す状態では、加工点T1と工具3の先端部17の中心C2と点Taとによって規定される角度∠ABC(ψ1)の範囲CT1で、工具3の円弧の輪郭誤差を平均化する。
角度∠ABCの範囲における平均化によって、工具3の先端部17の円弧の半径の平均値Rav(角度∠ABCの範囲における平均値)が求められる。平均値Ravは、たとえば、輪郭誤差が求められている工具の部位が連続した状態で存在しているとすると、「Rav={∫rdψ}/ψ1」によって求められる。そして、工具3の平均値Ravを用いて、被加工物5を加工する。
図18(a)で示す場合と同様にして、図18(b)で示す点T1は加工点を示しており、工具3は、加工点T1と点Taとの間(中くらいの値CT2の範囲)で被加工物5に接している。図18(b)で示す状態では、加工点T1と工具3の先端部17の中心C2と点Taとによって規定される角度∠ABC(ψ2)の範囲CT2で、工具3の円弧の輪郭誤差を平均化する。
角度∠ABCの範囲における平均化によって、工具3の先端部17の円弧の半径の平均値Rav(角度∠ABCの範囲における平均値)が求められる。平均値Ravは、上述したように、たとえば、「Rav={∫rdψ}/ψ2」によって求められる。そして、工具3の平均値Ravを用いて、保持済み被加工物5を加工する。
また、図18(a)で示す場合と同様にして、図18(c)で示す点T1は加工点を示しており、工具3は、加工点T1と点Taとの間(大きい値CT3の範囲)で被加工物5に接している。図18(c)で示す状態では、加工点T1と工具3の先端部17の中心C2と点Taとによって規定される角度∠ABC(ψ3)の範囲CT3で、工具3の円弧の輪郭誤差を平均化する。
角度∠ABCの範囲における平均化によって、工具3の先端部17円弧の半径の平均値Rav(角度∠ABCの範囲における平均値)が求められる。平均値Ravは、上述したように、たとえば、「Rav={∫rdψ}/ψ3」によって求められる。そして、工具3の平均値Ravを用いて、被加工物5を加工する。
なお、上記説明から理解されるように、工具3の輪郭誤差を平均化するときにおける平均化の範囲は、被加工物5と保持済み工具3との接触長さの値が大きくなるにしたがって広くなっている。
また、工具3の輪郭誤差を平均化するときにおける平均化をする箇所は、加工点T1を含む加工点T1の近傍の部位になる。たとえば、加工点T1を一端とする部位になるが、加工点T1を中間とする部位であってもよい。
さらに、工具3の円弧の輪郭誤差を平均化する範囲は、被加工物5と工具3とが接触している範囲に一致しているが、被加工物5と工具3とが接触している範囲と異なっていてもよい。
たとえば、工具3の円弧の輪郭誤差を平均化する範囲が、被加工物5と工具3とが接触している範囲よりも狭くなっていてもよいし、広くなっていてもよい。
さらに、図18(a)における輪郭誤差の平均化の範囲は、たとえばα1=20°、β1=25°で規定される範囲になっており、図18(b)における輪郭誤差の平均化の範囲は、たとえばα1=10°、β1=30°で規定される範囲になっており、図18(c)における輪郭誤差の平均化の範囲は、たとえばα1=0°、β1=45°で規定される範囲になっている。
ところで、被加工物5の被加工部の曲率半径が工具の曲率半径に近づけば、図18(c)で示すように、切削範囲が広がり、隣接部の範囲が変化する。被加工物5の被加工部の曲率半径が工具3の曲率半径から遠ざかれば、図18(a)で示すように、切削範囲が狭まり、隣接部の範囲がやはり変化する。
そこで、工具3の位置の補正をするときに、切削範囲をも判定し、適当な補正テーブルを割り当てる。すなわち、切削範囲が図18(c)で示すように、広い場合には、図3の曲線CV3で示す輪郭形状を用いて保持済み工具3の位置の補正をし、切削範囲が図18(b)で示すように中くらいの場合には、図19(b)の曲線CV2で示す輪郭形状を用いて保持済み工具3の位置の補正をし、切削範囲が図18(a)で示すように狭い場合には、図19(a)の曲線CV1で示す輪郭形状を用いて保持済み工具3の位置の補正をする。
これにより、工具3の加工点T1(T2)の隣接部まで考慮した態様で、工具3の補正をすることができ、形状精度のよい被加工物5を得ることができる。
また、被加工物の加工機1において、加工点T1(T2)における被加工物5の形状公差に応じて、加工点T1(T2)における工具3の輪郭誤差もしくは加工点T1(T2)の近傍における工具3の輪郭誤差を用い、工具3の位置の補正をするようにしてもよい。
これについて詳しく説明する。図20では工具3の理想形状を円弧CV200で示してあり、輪郭誤差を伴う保持済み工具3の形状を曲線CV201で示してある。加工点をP201とする。この加工点P201では、保持済み工具3の輪郭誤差がたとえば「0」になっている。
加工点P201の一方の側(参照符号UPで示す側)では、工具3の輪郭誤差がプラスの値になっている(工具3の輪郭が理想形状のものより突出している)。加工点P201の他方の側(参照符号DNで示す側)では、工具3の輪郭誤差がマイナスの値になっている(工具3の輪郭が理想形状のものより凹んでいる)。
図21(a)で示すように、被加工物5がマイナス公差で形成される場合には、加工点P201の他方の側の近傍における工具3の輪郭誤差を用いて(たとえばもっとも凹んでいる点P203を用いて)工具3の位置の補正をし、被加工物5の切削加工をする。
すなわち、図21(b)で示すように、点P203が被加工物5の被加工面(目標とする被加工面CVA)に接するようにして、被加工物5の切削加工をする。これにより、工具3の被加工物5への切り込み量が、工具3の輪郭誤差が非存在である場合よりも大きくなり、図21(a)で示すように、被加工物5がマイナス公差で形成される。
一方、図22(a)で示すように、被加工物5がプラス公差で形成される場合には、加工点P201の一方の側の近傍における工具3の輪郭誤差を用いて(たとえばもっとも突出している点P202を用いて)工具3の位置の補正をし、被加工物5の切削加工をする。
すなわち、図22(b)で示すように、点P202が被加工物5の被加工面(目標とする被加工面CVA)に接するようにして、被加工物5の切削加工をする。これにより、工具3の被加工物5への切り込み量が、工具3の輪郭誤差が非存在である場合よりも小さく、図22(a)で示すように、被加工物5がプラス公差で形成される。
このような被加工物の加工機1によれば、被加工物5の形状公差に応じて、加工点における工具3の輪郭誤差もしくは加工点の近傍における工具3の輪郭誤差を用い、工具3の位置の補正をするので、たとえば、工具3の摩耗が均等に進行していなくても(工具3の部位によって工具3の摩耗量が異なっていても)、的確な形状精度のよい被加工物を得ることができる。
すなわち、被加工物の加工による工具の間の摩耗は均等に進行するのではなく、角度毎に切削量によって異なり、また、エンドミル3の特性として中心部は摩耗しにくいなど、使用によって形状がくずれていく。
エンドミル3の摩耗形状によらず摩耗量のみで補正量を決定すると、異形となった工具3で単純な切り込み量の追加を行うことになり、加工点の隣接部分に余分な切り込みが発生し、被加工物5の形状精度が悪化するおそれがある。
そこで、求める加工精度がマイナス公差(図21(a)参照)であれば、切り込み優先とし(図21(b)参照)、求める加工精度がプラス公差(図22(a)参照)であれば、切り残し優先とし(図22(b)参照)、絶対精度が必要であれば、近辺の補正量を平均化して、補正量を決定すれば、隣接補正量微調整機能を得ることができる。
ところで、一つの被加工物5の加工途中において工具3を交換したり、ツルーイングを行うと、工具3の形状が変化して被加工物5の表面に段差を生じる場合がある。そこで、工具3の交換前やツルーイング前に工具3の形状を測定し、交換やツルーイングをした工具3の形状も測定し、両者の形状差を求め、交換前の摩耗をシミュレートするようにして補正量を決定し、段差の発生を防いでもよい。
すなわち、制御部13が、保持済み工具3の輪郭誤差の測定を、保持済み工具3を交換する直前と交換した直後に、工具形状測定装置31に行わせて、上記直前直後における保持済み工具形状差をもとめてもよい。
もしくは、制御部13が、保持済み工具3の輪郭誤差の測定を、保持済み工具3のツルーイングの直前と保持済み工具3のツルーイングをした直後に、工具形状測定装置31に行わせて、上記直前直後における前持済み工具形状差をもとめてもよい。
そして、制御部13が、保持済み工具3の交換もしくは保持済み工具3のツルーイングをしたことで保持済み被加工物5の表面に段差が形成されてしまうことを防止するために、上記もとめた保持済み工具形状差に応じて、保持済み工具3の位置を補正する(保持済み工具の位置の補正を「0」から開始し、この後補正量を、たとえば増やすようにして徐々に変化させる)するように構成されていてもよい。
さらに説明すると、保持済み工具3を交換する直前とは、保持済み工具3が保持済み被加工物5を加工し終えて、これ以後、上記保持済み工具3が保持済み被加工物5を加工しない状態をいう。保持済み工具3の交換した直後とは、保持済み工具3が交換されて、これ以前に、上記保持済み工具3が保持済み被加工物5を加工していない状態をいう。
保持済み工具3のツルーイングの直前とは、保持済み工具3が保持済み被加工物5を加工し終えて、これ以後、上記保持済み工具3が保持済み被加工物5を加工しない状態をいう。保持済み工具3のツルーイングをした直後とは、保持済み工具3がツルーイングされて、これ以前に、上記保持済み工具3が保持済み被加工物5を加工していない状態をいう。
保持済み工具3を交換する場合について、図35を参照してさらに説明する。
図35(a)に参照符号t1で示すものは、交換した直後における保持済み工具(たとえば、未使用もしくは新品の保持済み工具)3の形状を示している。図35(a)に参照符号t2で示すものは、交換直前の保持済み工具3の形状を示している。参照符号t2で示す保持済み工具3は保持済み被加工物5の加工をしたことで、図35(a)に参照符号t1で示すものに比べて摩耗しており、工具形状差CA1が生成されている。
なお、上記説明でも、時刻t2や時刻t3を、一瞬の時刻として受け取られてしまうが、実際には、時刻t2等はある程度の時間幅を備えている。
図35(b)は、保持済み工具3の交換に応じた保持済み工具3の位置の補正をすることなく、保持済み被加工物5を保持済み工具3で加工したときにおける保持済み被加工物5の表面の形状(ワーク形状)を示している。
なお、説明の便宜のために、図35(b)で示す態様では、時刻t1と時刻t2と時刻t3とで、保持済み工具3が新品交換されている。また、時刻t1で新品に交換された保持済み工具3と時刻t2で新品交換された保持済み工具3と時刻t3で新品交換された保持済み工具3とは、お互いの形状誤差が無いものとしている。図35(b)で示す態様では、保持済み工具3の交換がされた時刻t2、t3で段差49が形成される。
これに対して、保持済み工具3の工具形状差に応じて、保持済み工具3の位置の補正を適宜することで、保持済み被加工物5の表面の形状(ワーク形状)が、段差が形成されていない図35(c)で示すような形状になる。なお、図35(c)で示す加工後の保持済み被加工物5の形状の誤差は、許容値内に収まっている。
さらに説明すると、図35(c)で示す態様では、時刻t1から時刻t2までは、たとえば、保持済み工具3で保持済み被加工物5の加工をする。続いて、時刻t2で、加工に使用された保持済み工具3の輪郭誤差の測定をし、保持済み工具3を交換し、この交換した保持済み工具3の輪郭誤差の測定をする。これにより、工具形状差CA1がもとめられる。
時刻t2では、保持済み被加工物5の表面に段差が形成されないようにするために、時刻t2でもとめた保持済み工具3の輪郭誤差に応じて保持済み工具3の位置を適宜補正しつつ、保持済み被加工物5の加工を開始する。なお、時刻t2では、直ちに値CA1に基づく補正をすることなく、加工を開始する。
時刻t2から時刻t3にかけては、保持済み被加工物5の加工の進行に伴い保持済み工具3の補正量を徐々に変化させる。さらに、時刻t2から時刻t3にかけては、時刻t3における保持済み工具3の摩耗量を時刻1から時刻t2の摩耗量に基づき(たとえば予想して)、保持済み工具3の位置を適宜補正しつつ保持済み工具3で保持済み被加工物5の加工をしてもよい。保持済み工具3の交換等をする次の時刻である時刻t3では、保持済み被加工物5の形状が目標形状と一致するか、目標形状よりもごく僅かに大きいプラス形状になるか、もしくは、目標形状よりもごく僅かに大きいマイナス形状になる。図35(c)では、マイナス形状になっている。
時刻t3以後の時刻においても、時刻t1〜時刻t3の場合と同様にして、保持済み工具3による保持済み被加工物5の加工を行う。
次に、保持済み工具3をツルーイングする場合について、図35を参照してさらに説明する。
図35(d)に参照符号t1で示すものは、保持済み被加工物5の加工に使用されていない保持済み工具(たとえば、未使用もしくは新品の保持済み工具)3の形状を示している。図35(d)に参照符号t2aで示すものは、ツルーイング直前の保持済み工具3の形状を示している。図35(d)に参照符号t2bで示すものは、ツルーイング直後の保持済み工具3の形状を示している。
なお、上記説明でも、時刻t2(t2a、t2b)や時刻t3を、一瞬の時刻として受け取られてしまうが、実際には、時刻t2等はある程度の時間幅を備えている。
図35(b)は、保持済み工具3のツルーイングに応じた保持済み工具3の位置の補正(段差を許容する補正)をして、保持済み被加工物5を保持済み工具3で加工したときにおける保持済み被加工物5の表面の形状(ワーク形状)を示している。
なお、説明の便宜のために、図35(b)で示す態様では、時刻t2と時刻t3とで、保持済み工具3のツルーイングがされているものとする。図35(b)で示す態様では、保持済み工具3のツルーングがされた時刻t2、t3で段差49が形成される。
これに対して、保持済み工具3の工具形状差に応じて、保持済み工具3の位置の補正を適宜することで、保持済み被加工物5の表面の形状(ワーク形状)が、段差が形成されていない図35(c)で示すような形状になる。なお、図35(c)で示す加工後の保持済み被加工物5の形状の誤差は、許容値内に収まっている。
さらに説明すると、図35(c)で示す態様では、時刻t1から時刻t2までは、たとえば、保持済み工具3で保持済み被加工物5の加工をする。この加工によって、保持済み工具3には、値CA1の摩耗が発生する(図35(d)参照)。
続いて、時刻t2(t2a)で、加工に使用されツルーイングがされる前の保持済み工具3の輪郭誤差を測定する。すなわち、図35(d)に参照符号t2aで示す保持済み工具3の形状を測定する。
続いて、保持済み工具3にツルーイングを施す。このツルーイングによって、保持済み工具3には、値CA2の形状差が発生する(図35(d)参照)。
続いて、時刻t2(t2b)で、このツルーイングを施した保持済み工具3の輪郭誤差の測定をする。すなわち、図35(d)に参照符号t2bで示す保持済み工具3の形状を測定する。
そして、時刻t2では、保持済み被加工物5の表面に段差が形成されないようにするために、時刻t2でもとめた工具形状差CA2によって、ツルーイングがされた保持済み工具3の位置を適宜補正しつつ、保持済み被加工物5の加工を開始する。なお、時刻t2では、直ちに値CA2に基づく補正をすることなく、加工を開始する。
時刻t2から時刻t3にかけては、保持済み被加工物5の加工の進行に伴い保持済み工具3の補正量を徐々に変化させる。さらに、時刻t2から時刻t3にかけては、時刻t3における保持済み工具3の摩耗量を時刻1から時刻t2の摩耗量に基づき予想して、保持済み工具3で保持済み被加工物5の加工をしてもよい。保持済み工具3の交換等をする次の時刻である時刻t3では、保持済み被加工物5の形状が目標形状と一致するか、目標形状よりもごく僅かに大きいプラス形状になるか、もしくは、目標形状よりもごく僅かに大きいマイナス形状になる。図35(c)では、マイナス形状になっている。
時刻t3以後の時刻においても、時刻t1〜時刻t3の場合と同様にして、保持済み工具3による保持済み被加工物5の加工を行う。
また、交換前の工具3は摩耗が進行しており、被加工物5は削り足りない状態になる。そこで、交換前の工具3が加工した範囲(加工パス)を一定量さかのぼり、最初は補正量を小さくして切り込みを制御し(切り込み量を少なくし)、徐々に適正な補正量を移行することで、段差の発生を抑えてもよい。
すなわち、制御部13が、保持済み被加工物5の削り量が足りなくなることを防止するために(保持済み被加工物5の加工後の形状誤差を少なくするために)、保持済み工具3の輪郭誤差の測定を行った2つの時刻の間の加工パスの中間部まで遡って、前記保持済み工具の位置を補正するように構成されていてもよい。
図36を参照してさらに説明する。図36(a)は、時刻t1、t12、t2における保持済み工具3の外形を模式的に示す図である。図36で示す時刻t2は、時刻t1より遅い時刻であり、時刻t3は、時刻t2より遅い時刻である。また、時刻t12は、時刻t1と時刻t2との間に存在する時刻である。時刻t12は、加工パスの中間部における時刻であるが、時刻t12と加工パスの中間部のおける時刻とがお互いに若干異なっていてもよい。
図36(b)は、図35(c)で示す場合と同様な加工をしたときの被加工物5の形状誤差を示している。図36(b)では、時刻t2で、値がCA1(CA2)である形状誤差が発生している。
図35(c)で示す場合と同様な加工をした後に、時刻t1〜時刻t2の間では、保持済み被加工物5の削り量が足りなくなることを防止するために、保持済み工具3の輪郭誤差の測定を行った2つの時刻t1、t2の間の加工パスの中間部(たとえば時刻t12で示す部位)まで遡って、保持済み工具3の位置を補正して別途加工をする。これにより、図36(c)で示すように、保持済み被加工物5の加工精度が向上する。これにより、時刻t12で、値がCA3(値CA3<値CA2)である形状誤差が発生している。
さらに説明すると、図36(c)で示す保持済み被加工物5の形状では、時刻t1〜時刻t12に相当する加工パスの箇所では、図36(b)で示すものに対して加工をしておらず、時刻t12〜時刻t2に相当する加工パスの箇所では、図36(b)で示すものに対して加工をしている。
図35(c)で示す場合と同様な加工をした後に、時刻t2〜時刻t3の間では、保持済み被加工物5の削り量が足りなくなることを防止するために、保持済み工具3の輪郭誤差の測定を行った2つの時刻t2、t3の間の加工パスの中間部(たとえば時刻t23で示す部位)まで遡って、保持済み工具3の位置を補正して別途加工をする。この加工は、時刻t2で段差が発生しないようにして、時刻t2〜時刻t23に相当する部位でなされる。これにより、図36(c)で示すように、保持済み被加工物5の加工精度が向上する。
時刻t3以後の時刻においても、時刻t1〜時刻t3の場合と同様にして、保持済み工具3による保持済み被加工物5の加工を行う。
また、工具3として、ボールエンドミルに代えて、図23で示すようなラジアスエンドミルを使用してもよい。
ラジアスエンドミル3は、概ね円柱状に形成されているが、この円柱の中心軸C1の延伸方向の一方の端で、円柱の側面と円柱の底面(円形状の底面)との境界が所定の半径の円弧状に丸められている。この円弧の半径は、上記円柱の半径よりも小さくなっている。なお、上記境界の円弧の半径が、上記円柱の半径と等しくなれば、ボールエンドミルの形状になる。
ラジアスエンドミル3の切れ刃は、円柱の中心軸の延伸方向の一方の端部(一方の端面と円弧のところと円弧近傍の円柱の側面の部位)の外周に形成されている。ラジアスエンドミル3も、ボールエンドミル3と同様にして、基端部の他方の端部が工具保持部に係合して工具保持部で保持されるようになっている。
[第2実施形態の説明]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。前述した第1実施形態では、工具形状測定装置31を用いて工具3(保持済み工具)の輪郭誤差を演算して、初期構成処理を実施することにより、工具3の輪郭誤差を相殺するように加工時のNCプログラム(加工パス)を補正する処理を実行することについて説明した。
第2実施形態では、上述した工具形状測定装置31により測定される輪郭誤差の補正に加えて、工具3による被加工物5の加工を開始してから終了するまでの間の工具3の摩耗量を測定し、この摩耗量に起因して変化する工具3の形状を考慮してNCプログラムを補正し、より高精度な被加工物5の加工を実施する。
図33は工具3の先端部の形状を示す説明図であり、図33(a)は加工前の工具3の形状を示し、図33(b)は加工終了時の工具3の形状、及び摩耗量f1を示している。図33から理解されるように、工具3は、加工を継続することにより摩耗して形状が変化する。第2実施形態では、摩耗による形状の変化を考慮して、NCプログラムを補正する。
摩耗量のデータを収集する処理として、工具3を用いて実際に被加工物5を加工し、この加工時における摩耗量を測定しメモリ等に記憶する。
この処理では、任意の加工処理において、工具3が被加工物5の加工を開始してから加工が終了するまでの間の、加工パスを取得する。そして、加工パス中で、工具3が被加工物5と接触している場所、及び接触していない場所を算出し、工具3と被加工物5が接触している場所における移動距離を「切削移動距離」とする。
以下、図24、図25を参照して、「切削移動距離」の算出方法について説明する。たとえば、図24に示す如くの、表面が曲面形状を有する被加工物5を工具を用いて切削する場合には、図25(a)に示すように、工具3を第1の方向(ここでは、矢印Y1に示す方向)に向けて移動させ、更に、第1の方向に直交する方向にスライド移動させて、再度矢印Y1の方向に移動させて切削するという処理を連続的に実施する。この際、加工形状に応じて、たとえば図25(b)に示す加工点A、図25(c)に示す加工点Bのように、加工点に応じて、工具3の先端部が被加工物5に接触する部位を認識できる。
即ち、工具3による加工を開始してから終了するまでに、工具3が移動する際に、工具3の先端が被加工物5と接触して移動する距離、即ち切削移動距離を算出することができる。なお、接触、非接触の判断は、たとえば、被加工物5の表面から、工具3による加工の深さが0.5[μm]以上である場合を、工具3と被加工物5が接触しているものと判断する。或いは、他の判断基準として、工具3と被加工物5の仕上がり形状の表面との距離が一定値以下の場合に、工具3と被加工物5が接触しているものと判断する。しかし、これらに限定されるものではない。
そして、切削移動距離と工具3の摩耗量との関係を算出し、この関係を対応テーブルとしてメモリなどに記憶する。そして、実加工時において、工具3が摩耗により形状変化した量を推定し、NCプログラムを補正する。以下、詳細に説明する。
図26は、工具3を用いて被加工物5を加工する手順、及び工具3の切削移動距離を示す説明図である。図26(a)は、被加工物5の形状を示しており、表面に平面部及び曲面部を有している。図26(b)は、工具3により被加工物5を加工する際の、加工経路を示す説明図である。図26(b)に示すように、工具3を第1の方向(トラバース方向)に移動させながら被加工物5を加工し、更に、第1の方向に直交する第2の方向(ピックフィード方向)にスライドさせて、更に、第1の方向に移動させるという動作を繰り返しながら、被加工物5を加工する。
図26(c)は、工具3の先端部の領域を示す図、(d)は、NCプログラムの進捗率[%]と、工具3の先端部の各部位の切削移動距離との関係を示すグラフである。
図26(c)に示すように、工具3の軸方向を「0°」とし、工具3の軸と直交する方向を「90°」と定義し、0°付近を領域R1とし、90°付近を領域R5として、工具3の先端部を5つの領域R1、R2、R3、R4、R5に分割する。すると、NCプログラムのデータから、各領域R1〜R5により被加工物5を切削する距離を算出することができ、たとえば、図26(d)に示すグラフのようになる。なお、本実施形態では、5つの領域R1〜R5に区分する例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従って、被加工物5の加工を実施する際に、NCプログラムの進捗率に対する、各領域R1〜R5の切削移動距離のデータが得られる。即ち、第2実施形態では、実際に被加工物5を加工する際の工具3の加工パス中で、該工具3が被加工物5と接触しているときの、切削移動距離を算出する。この際、CADデータを参照して、工具3が被加工物5に接触している領域R1〜R5を特定し、更に、各領域R1〜R5の切削距離を求める。
図27は、工具3をNCプログラムに従って作動させて、被加工物5を加工したときの、切削移動距離と各領域R1〜R5の摩耗量との関係を示すグラフである。図27のグラフから理解されるように、切削移動距離が一定であることを条件とすると、工具3の先端の「0°」付近の領域R1では摩耗量が小さく、領域R2では摩耗量が大きくなり、更に、領域R5に向かうほど摩耗量が小さくなることが理解される。即ち、概して言えば、摩耗量の大きさはR2>R3>R4>R5>R1となっている。
そして、制御部13では、図26(d)に示したグラフと、図27に示したグラフに基づいて、NCプログラムの進捗率に対する各領域R1〜R5の摩耗量を推定することができる。たとえば、図28に示すグラフが得られる。
そして、図28に示すグラフを参照することにより、NCプログラムの進捗率に対する、各領域R1〜R5の摩耗量Mを推定することができる。この推定結果を用いて、工具3の形状を補正することにより、高精度な加工を行う。詳細な補正方法は、前述した第1実施形態で示した輪郭誤差を演算し、更に、上述した摩耗量Mを考慮して、NCプログラムを補正すれば良い。
具体的に、工具3の先端の0°から90°までの91個の角度についてそれぞれ、摩耗量Mを演算し、NCプログラムの進捗率が100%のときの工具3の形状(即ち、摩耗量Mを考慮した工具3の形状)を基準とした輪郭誤差を参照符号「#600〜690」として制御部13のメモリに記憶する。即ち、「#500〜#590」は摩耗量Mを考慮しない輪郭誤差による参照符号であり、「#600〜#690」は摩耗量Mを考慮した輪郭誤差による参照符号である。
そして、加工の進捗率に応じて、参照符号#500〜#590、及び参照符号#600〜#690を配分して補正値を演算し、NCプログラムを補正する。図32は、0°〜90°までの各角度毎の、参照符号#500と参照符号#600の配分率を示す説明図である。工具3による加工が開始されてから、終了するまでの配分率が設定されている。図32から理解されるように、加工開始前においては、摩耗量Mを考慮しない輪郭誤差による参照符号#500〜#590を100%、摩耗量Mを考慮した輪郭誤差による参照符号#600〜#690を0%とする。その後、進捗率が高まるにつれて参照符号#600〜#690の比率を増加させ、参照符号#500〜#590の比率を低下させる。加工終了時において、摩耗量Mを考慮しない輪郭誤差による参照符号#500〜#590を0%、摩耗Mを考慮した輪郭誤差による参照符号#600〜#690を100%とする。
たとえば、前述した図8の(f85)に記載したX成分である、[−1.68077+[−0.90974*[#565*0.227+#566*0.773]]]を例に挙げると、参照符号「#565」を「#565」と「#665」を所定の比率で配分した数値とする。同様に、参照点「#566」を「#566」と「#666」を所定の比率で配分した数値とする。
具体的に、図8の(f8)に示した「#565*0.227」を、「(0.667)*(#565)+(0.333)*(#665)」とする。この場合は、摩耗量Mを考慮しない輪郭誤差による参照符号#565の比率は「0.667」で、摩耗量Mを考慮した輪郭誤差による参照符号#665の比率は「0.333」である。
即ち、角度65°の場合には、図30の式に示すように、X座標を演算する。なお、Y座標、Z座標は記載を省略しているが、X座標と同様の演算式となる。
摩耗により変化した後の実際の工具の形状は、加工が終了して測定を実施するまで知ることができない。しかし、前述した図28に示したグラフを参照することにより、摩耗量を推定することができる。
次に、図31に示すフローチャートを参照して、第2実施形態に係る被加工物の加工機の処理手順について説明する。
初めに、図31のステップS31において、市販のCAMに基づいて、被加工物5を加工する際のNCプログラム、即ち、工具3による加工パスの3次元座標を生成する。
ステップS32において、NCプログラムと、加工機のCADデータを比較し、上述した方法を用いて工具3の各領域R1〜R5の切削移動距離を算出する。
ステップS33において、各領域R1〜R5の切削移動距離毎の摩耗量Mを予測する。具体的に、図28に示したグラフを作成し、各領域R1〜R5毎の、進捗率に応じた摩耗量Mを予測する。
ステップS34において、NCプログラムに、摩耗予測を加えたベクトル演算式を付加し、更に、加工終了時点での工具3の各角度(0°〜90°)における総摩耗量を専用のファイルなどに保存する。
ステップS35において、加工機1の制御部13にNCプログラムを読み込ませる。
ステップS36において、被加工物5を加工する工具3の形状を、レーザなどを用いた工具形状測定装置31で測定し、工具形状を採取する。
ステップS37において、ステップS14の処理で採取した工具形状に基づいて、NCプログラムの補正量を算出し、参照符号(#500〜#590)を制御部13のメモリ等にセットする。
ステップS38において、工具3の摩耗量のデータに基づいて、NCプログラムの補正量を算出し、参照符号(#600〜#690)を制御部13のメモリ等にセットする。その後、ステップS39において、工具3による加工を開始する。こうして、工具3の摩耗量Mを考慮した輪郭誤差に基づいてNCプログラムを補正して工具3を作動させ、被加工物5の加工を実施することができるのである。
このようにして、第2実施形態に係る被加工物の加工機では、被加工物5の加工が進むにつれて変動する工具3の摩耗量を予め測定し、切削移動距離に応じた摩耗量を推定する。そして、工具3による被加工物5の加工が開始されてから加工が進捗するにつれて、摩耗量Mを考慮しない輪郭誤差による参照符号「#500〜#590」と、摩耗量Mを考慮した輪郭誤差による参照符号「#600〜#690」の比率を変化させて、NCプログラムを補正している。従って、工具3の輪郭誤差、及び工具3の摩耗量に応じた適切なNCプログラムの補正が可能となり、被加工物5を高精度に加工することが可能となる。
なお、参照符号#500〜#590と、参照符号#600〜#690の比率は、一例として図32に示した比率を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、被加工物5、工具3の形状、状況に応じて適宜の変更が可能である。
[第2実施形態の変形例の説明]
次に、上述した第2実施形態の変形例について説明する。前述した第2実施形態では、図32に示したように、工具3による加工開始時から加工終了時までの間において、摩耗量を考慮しない輪郭誤差による補正値を示す参照符号#500〜#590と、摩耗量を考慮した輪郭誤差による補正値を示す参照符号#600〜#690の配分を、NCプログラムの進捗率に応じて変更することについて説明した。
変形例では、加工を開始してから終了するまでの間に、1または複数の中間点を設定し、中間点を区切りとして摩耗量を考慮しない輪郭誤差による補正値を示す参照符号「#500〜#590」と摩耗量を考慮した輪郭誤差による補正値を示す参照符号「#600〜#690」を設定し、これらの配分を変更する。
たとえば、図34に示すように、加工開始点P0と加工終了点P4の間に、3つの中間点P1、P2、P3を設定する。そして、各中間点P1〜P3において、予め予測される摩耗量のデータを取得してメモリに記憶する。そして、加工開始点P0から中間点P1、中間点P1からP2、中間点P2からP3、中間点P3から加工終了点P4、の各区間において、参照符号#500〜#590と、参照符号#600〜#690の比率を設定する。X軸、Y軸、Z軸の加工位置の演算方法は、前述した第2実施形態と同様である。
P0〜P1の区間を加工する際、中間点P1における摩耗量を考慮しない輪郭誤差による補正値を、P0〜P1の区間における参照符号#500〜#590とする。また、中間点P1において予測される摩耗量を考慮した輪郭誤差による補正値を、P0〜P1の区間における参照符号#600〜#690とする。
工具3が中間点P1に達した際に、該中間点P1において、工具3を停止させて該工具3の工具形状を測定する。そして、算出した輪郭誤差(中間点P1における工具形状の実測値)と、中間点P2における摩耗量の予測値に基づいて補正値を算出し、P1〜P2の区間における参照符号#600〜#690とする。
更に、P0〜P1の区間における参照符号#600〜#690を、P1〜P2の区間における参照符号#500〜#590に代入する。
そして、工具3が中間点P2に達した際に、該中間点P2において、工具3を停止させて該工具3の工具形状を測定し、算出した輪郭誤差(中間点P2における工具形状の実測値)と、中間点P3における摩耗量の予測値に基づいて補正値を算出し、P2〜P3の区間における参照符号#600〜#690とする。
同様に、P1〜P2の区間における参照符号#600〜#690を、P2〜P3の区間における参照符号#500〜#590に代入する。
そして、工具3が中間点3に達した際に、該中間点P3において、工具3を停止させて該工具3の工具形状を測定し、算出した輪郭誤差(中間点P3における工具形状の実測値)と、加工終了点P4における摩耗量の予測値に基づいて補正値を算出し、P3〜P4の区間における参照符号#600〜#690とする。
更に、P2〜P3の区間における参照符号#600〜#690を、P3〜P4の区間における参照符号#500〜#590に代入する。
このように、中間点P1〜P3に達する毎に、工具3の工具形状を測定して、予測される摩耗量を考慮した輪郭誤差による補正値を示す参照符号#600〜#690を設定するので、より一層加工の精度を高めることができる。
即ち、前述した第2実施形態では、加工終了時における摩耗量のみを考慮して、摩耗量を考慮した輪郭誤差による補正値を示す参照符号#600〜690を設定したが、変形例では、加工の開始から加工の終了までの加工パスを4つの区間に分割し、各区間毎に摩耗量を考慮しない輪郭誤差による補正値を示す参照符号#500〜590、及び摩耗量を考慮した輪郭誤差による補正値を示す参照符号#600〜#690を設定するので、より加工の精度を向上させることが可能となる。
更に、各中間点P1、P2、P3において、区間終了時の「#600の比率が100%」の数値と、次の区間開始時の「#500の比率が100%」の数値が一致するので、工具3の急激な変動を回避することができる。また、工具3を停止させてから再度加工を開始する際に、段差が生じることを回避できる。
このようにして、第2実施形態の変形例では、工具3による加工パスを、複数に分割して(たとえば、4分割)摩耗による参照符号を設定するので、より高精度に工具3の加工位置を設定することが可能となる。
ところで、上記記載内容を、被加工物の加工方法として把握してもよい。
すなわち、被加工物を保持する被加工物保持段階と、前記被加工物保持段階で保持された保持済み被加工物を加工する工具を保持する工具保持段階と、前記保持済み被加工物を前記工具保持段階で保持された保持済み工具で加工するために、前記保持済み被加工物に対し前記保持済み工具を移動する移動段階とを有し、前記移動段階は、NCプログラムに基づいて、前記保持済み被加工物に対し前記保持済み工具を移動する段階であり、前記NCプログラムには、前記保持済み工具の位置を算出するための演算式が組み込まれている被加工物の加工方法として把握してもよい。
上記被加工物の加工方法において、前記NCプログラムは、前記保持済み工具の輪郭誤差による前記保持済み被加工物の加工誤差の発生を抑えるために、前記演算式を用いて、前記保持済み工具の位置を補正するようにしてもよい。
また、上記被加工物の加工方法において、前記保持済み工具の輪郭誤差に基づく前記保持済み工具の位置の補正は、前記保持済み被加工物を加工するときの、前記保持済み工具の1つの加工点もしくは複数の加工点についてなされるようにしてもよい。
また、上記被加工物の加工方法において、前記輪郭誤差が求められている前記保持済み工具の部位は、非連続のとびとびの状態で存在しており、前記加工点が、前記輪郭誤差が存在していない前記保持済み工具の部位になっている場合には、前記加工点を間にしてお互いが隣接している2つの部位の輪郭誤差を用いて、前記加工点の輪郭誤差を算出し、この算出した輪郭誤差を用いて、前記保持済み工具の位置の補正をするようにしてもよい。
また、上記被加工物の加工方法において、前記保持済み工具の円弧部の半径に対する前記保持済み被加工物の被加工面の半径に応じ、前記保持済み工具の輪郭誤差の遮断周波数を変えて前記保持済み工具の輪郭誤差を示す曲線についてフィルタリングをし、このフィルタリング済みの輪郭誤差に基づいて、前記保持済み工具の位置の補正をするようにしてもよい。
また、上記被加工物の加工方法において、前記保持済み工具の円弧部の半径に対する前記保持済み被加工物の被加工面の半径に応じ、前記保持済み工具の輪郭誤差を平均化するときにおける平均化の範囲を変えて、前記保持済み工具の輪郭誤差を示す曲線を平均化し、この平均化済みの輪郭誤差に基づいて、前記保持済み工具の位置の補正をするようにしてもよい。
また、上記被加工物の加工方法において、前記加工点における前記保持済み被加工物の形状公差に応じて、前記加工点における前記保持済み工具の輪郭誤差もしくは前記加工点の近傍における前記保持済み工具の輪郭誤差を用い、前記保持済み工具の位置の補正をするようにしてもよい。
また、上記被加工物の加工方法において、前記保持済み工具の輪郭誤差の測定を前記保持済み被加工物の加工を所定時間行う毎に行う輪郭誤差測定段階と、前記輪郭誤差測定段階での測定結果に応じて前記保持済み工具の位置の補正をするときにこの補正の前後で前記保持済み被加工物の表面に段差が形成されてしまうことを防止するために、前記保持済み工具による前記保持済み被加工物の加工の進行に伴い前記保持済み工具の位置を補正するようにしてもよい。
また、上記被加工物の加工方法において、前記保持済み工具の輪郭誤差の測定を、前記保持済み工具を交換する直前と交換した直後に行い、前記直前直後における前記保持済み工具形状差をもとめるか、もしくは、前記保持済み工具の輪郭誤差の測定を、前記保持済み工具のツルーイングの直前と前記保持済み工具のツルーイングをした直後に行って、前記直前直後における前記保持済み工具形状差をもとめる工具形状差測定段階と、前記保持済み工具の交換もしくは前記保持済み工具のツルーイングをしたことで前記保持済み被加工物の表面に段差が形成されてしまうことを防止するために、前記工具形状差測定段階でもとめた工具形状差に応じて、前記保持済み工具の位置を補正するようにしてもよい。
また、上記被加工物の加工方法において、前記保持済み被加工物の削り量が足りなくなることを防止するために、前記保持済み工具の輪郭誤差の測定を行った2つの時刻の間の加工パスの中間部まで遡って、前記保持済み工具の位置を補正するようにしてもよい。
また、上記被加工物の加工方法において、前記NCプログラムに基づいて、前記保持済み工具が前記被加工物の加工を開始してから加工が終了するまでの間に、前記被加工物に対して移動する経路である加工パスを演算し、前記保持済み工具における各部位が、前記被加工物を切削する距離である切削移動距離を算出し、且つ、前記保持済み工具による加工が終了したときの、前記各部位の摩耗量に応じて、前記各部位毎の切削移動距離と摩耗量との関係を取得し、前記保持済み工具の輪郭誤差に加え、前記切削移動距離と摩耗量との関係に基づいて、前記NCプログラムを補正するようにしてもよい。
また、上記被加工物の加工方法において、前記摩耗量を考慮しない輪郭誤差による補正量と前記摩耗量を考慮した輪郭誤差による補正量の比率を設定し、前記加工パスが、前記加工の開始から加工の終了に向かうにつれて、前記摩耗量を考慮しない輪郭誤差による補正量の比率を低下させ、且つ、前記摩耗量を考慮した輪郭誤差による補正量の比率を増加させるようにしてもよい。
また、上記被加工物の加工方法において、前記加工パスを複数のパスに区分し、区分した各パスごとに前記保持済み工具の摩耗量を取得し、前記各パスの開始からパスの終了までの間において、前記摩耗量を考慮しない輪郭誤差による補正量と、前記摩耗量を考慮した輪郭誤差による補正量の比率を設定するようにしてもよい。
また、上記記載内容を、プログラム(NCプログラム;被加工物の加工プログラム)として把握してもよい。
すなわち、被加工物保持部で保持されている保持済み被加工物を、工具保持部で保持されている保持済み工具で加工するために、前記保持済み被加工物に対し前記保持済み工具を移動する移動手順を、被加工物の加工機に実行させるためのプログラムであって、前記プログラムには、前記保持済み工具の位置を算出するための演算式が組み込まれているプログラムとして把握してもよい。
上記プログラムにおいて、前記保持済み工具の輪郭誤差による前記保持済み被加工物の加工誤差の発生を抑えるために、前記演算式を用いて、前記保持済み工具の位を補正するようにしてもよい。
また、上記プログラムにおいて、前記保持済み工具の輪郭誤差に基づく前記保持済み工具の位置の補正は、前記保持済み被加工物を加工するときの、前記保持済み工具の1つの加工点もしくは複数の加工点についてなされるようにしてもよい。
また、上記プログラムにおいて、前記輪郭誤差が求められている前記保持済み工具の部位は、非連続のとびとびの状態で存在しており、前記加工点が、前記輪郭誤差が存在していない前記保持済み工具の部位になっている場合には、前記加工点を間にしてお互いが隣接している2つの部位の輪郭誤差を用いて、前記加工点の輪郭誤差を算出し、この算出した輪郭誤差を用いて、前記保持済み工具の位置の補正をするようにしてもよい。
また、上記プログラムにおいて、前記保持済み工具の円弧部の半径に対する前記保持済み被加工物の被加工面の半径に応じ、前記保持済み工具の輪郭誤差の遮断周波数を変えて前記保持済み工具の輪郭誤差を示す曲線についてフィルタリングをし、このフィルタリング済みの輪郭誤差に基づいて、前記保持済み工具の位置の補正をするようにしてもよい。
また、上記プログラムにおいて、前記保持済み工具の円弧部の半径に対する前記保持済み被加工物の被加工面の半径に応じ、前記保持済み工具の輪郭誤差を平均化するときにおける平均化の範囲を変えて、前記保持済み工具の輪郭誤差を示す曲線を平均化し、この平均化済みの輪郭誤差に基づいて、前記保持済み工具の位置の補正をするようにしてもよい。
また、上記プログラムにおいて、加工点における前記保持済み被加工物の形状公差に応じて、前記加工点における前記保持済み工具の輪郭誤差もしくは前記加工点の近傍における前記保持済み工具の輪郭誤差を用い、前記保持済み工具の位置の補正をするようにしてもよい。
また、上記プログラムにおいて、前記保持済み工具の輪郭誤差の測定を前記保持済み被加工物の加工を所定時間行う毎に行い、前記輪郭誤差の測定の測定結果に応じて前記保持済み工具の位置の補正をするときにこの補正の前後で前記保持済み被加工物の表面に段差が形成されてしまうことを防止するために、前記保持済み工具による前記保持済み被加工物の加工の進行に伴い前記保持済み工具の位置を補正するようにしてもよい。
また、上記プログラムにおいて、前記保持済み工具の輪郭誤差の測定を、前記保持済み工具を交換する直前と交換した直後に行い、前記直前直後における前記保持済み工具形状差をもとめるか、もしくは、前記保持済み工具の輪郭誤差の測定を、前記保持済み工具のツルーイングの直前と前記保持済み工具のツルーイングをした直後に行って、前記直前直後における前記保持済み工具形状差をもとめ、前記保持済み工具の交換もしくは前記保持済み工具のツルーイングをしたことで前記保持済み被加工物の表面に段差が形成されてしまうことを防止するために、前記もとめた工具形状差に応じて、前記保持済み工具の位置を補正するようにしてもよい。
また、上記プログラムにおいて、前記保持済み被加工物の削り量が足りなくなることを防止するために、前記保持済み工具の輪郭誤差の測定を行った2つの時刻の間の加工パスの中間部まで遡って、前記保持済み工具の位置を補正するようにしてもよい。
また、上記プログラムにおいて、NCプログラムに基づいて、前記保持済み工具が前記被加工物の加工を開始してから加工が終了するまでの間に、前記被加工物に対して移動する経路である加工パスを演算し、前記保持済み工具における各部位が、前記被加工物を切削する距離である切削移動距離を算出し、且つ、前記保持済み工具による加工が終了したときの、前記各部位の摩耗量に応じて、前記各部位毎の切削移動距離と摩耗量との関係を取得し、前記保持済み工具の輪郭誤差に加え、前記切削移動距離と摩耗量との関係に基づいて、前記NCプログラムを補正するようにしてもよい。
また、上記プログラムにおいて、前記摩耗量を考慮しない輪郭誤差による補正量と、前記摩耗量を考慮した輪郭誤差による補正量の比率を設定し、前記加工パスが、前記加工の開始から加工の終了に向かうにつれて、前記摩耗量を考慮しない輪郭誤差による補正量の比率を低下させ、且つ、前記摩耗量を考慮した輪郭誤差による補正量の比率を増加させるようにしてもよい。
また、上記プログラムにおいて、前記加工パスを複数のパスに区分し、区分した各パスごとに前記保持済み工具の摩耗量を取得し、前記各パスの開始からパスの終了までの間において、前記摩耗量を考慮しない輪郭誤差による補正量と、前記摩耗量を考慮した輪郭誤差による補正量の比率を設定するようにしてもよい。