JP6574589B2 - エチレン系重合体およびこれから得られる成形体 - Google Patents

エチレン系重合体およびこれから得られる成形体 Download PDF

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Description

本発明は、従来公知のエチレン系重合体と比較して成形性に特に優れ、かつ機械的強度に優れたエチレン系重合体、並びに、このエチレン系重合体からなる成形体に関するものである。
エチレン系重合体は、様々な成形方法により成形され、多方面の用途に使用されている。例えば、食料品、液体物および日用雑貨などの包装に用いられるフィルムやシートは、エチレン系重合体の押出成形体が用いられている。
成形方法や用途に応じて、エチレン系重合体に要求される特性は異なってくるが、例えば、Tダイ成形を行う際、高速においても安定的に成形が可能であり(高速成膜加工性)、ネックインが小さいなどの加工性能を有することが求められている。また、インフレーション成形を行う際、バブル安定性に優れるなどの加工性能を有することが求められている。
チーグラー触媒やメタロセン触媒で得られるエチレン・α-オレフィン共重合体は、線状の分子構造を有し、機械的強度に優れ、高密度ポリエチレンにおいてはさらに剛性や耐熱性に優れることが知られている。しかし、溶融張力が小さく、高圧法ラジカル重合により製造される低密度ポリエチレン(LDPE)よりも成形加工性に劣るといった問題点がある。
これらの問題を解決するために、多段重合により分子量分布を広げる方法(特許文献1)や、クロム触媒を用いた長鎖分岐型のエチレン系重合体や、メタロセン触媒により長鎖分岐を導入したエチレン系重合体が種々開示されている。また、特許文献2には、エチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリドとメチルアルミノキサンとからなる触媒の存在下で溶液重合により得られたエチレン系重合体が開示され、特許文献3には、シリカに担持したエチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドとメチルアルミノキサンとからなる触媒の存在下で気相重合により得られたエチレン系重合体が開示され、特許文献4には、拘束幾何触媒の存在下で溶液重合により得られたエチレン系重合体が開示され、特許文献5には、シリカに担持したジメチルシリレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリドのラセミおよびメソ異性体とメチルアルミノキサンとからなる触媒の存在下で気相重合により得られたエチレン系重合体が開示され、特許文献6には、特定のメタロセン触媒を用いてマクロモノマーを共重合させた長鎖分岐型のエチレン系重合体が開示されている。これらのエチレン系重合体は、長鎖分岐のない直鎖状のエチレン系重合体に比べ溶融張力が向上し、成形性に優れる旨の記載はあるが、成形加工性および強度の両立は十分とは言い難い。
また、特許文献7には、メタロセン触媒を用いて特定の溶融特性と分子構造とをポリマー中に付与し、エチレン系重合体の成形加工性と強度を両立する旨の記載があるが、高分子量成分量の割合が高いため、重合体の均一性が悪化し、エチレン系重合体から得られる成形体の外観が悪化する問題が生じた。
特許平2−53811号公報 特開平2−276807号公報 特開平4−213309号公報 国際公開第93/08221号パンフレット 特開平8−311260号公報 特許第4491669号 特許第5587556号
本発明は、従来公知のエチレン系重合体と比較して成形性および機械的強度に優れるとともに、成形体の外観が良好となるエチレン系重合体ならびに該エチレン系重合体から得られる成形体を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の溶融特性と分子構造をもつエチレン系重合体において高分子量成分量を制御することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明のエチレン系重合体は、エチレンと炭素数4以上10以下のα-オレフィンとの共重合体であり、且つ、下記要件(1)〜(5)を同時に満たすことを特徴とする:
(1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.01g/10分以上30g/10分以下である;
(2)密度が945kg/m3以上975kg/m3以下である;
(3)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の6.8乗(Mw6.8)との比、η0/Mw6.8が、0.005×10-30以上17×10-30以下である;
(4)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)との比、[η]/Mw0.776が、0.48×10-4以上2.55×10-4以下である;
(5)GPC−粘度検出器法(GPC−VISCO)により測定されたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比、Mz/Mnが5以上、−20×log(MFR)+95以下である。
本発明のエチレン系重合体は、成形性に特に優れ、かつ機械的強度に優れており、該エチレン系重合体を用いれば、ブツやフィッシュアイ(FE)などが無く外観に優れた成形体を製造することができる。
以下、本発明に係るエチレン系重合体、該エチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂組成物、および該エチレン系重合体または該熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体について具体的に説明する。
[エチレン系重合体]
本発明のエチレン系重合体は、エチレンと炭素数4以上10以下のα-オレフィン、好ましくはエチレンと炭素数6〜10のα−オレフィンとの共重合体である。炭素数4のα−オレフィンを使用する場合には、炭素数6〜10のα−オレフィンもあわせて使用することが好ましい。エチレンとの共重合に用いられる炭素数4〜10のα−オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンなどが挙げられる。
本発明のエチレン系重合体は下記要件(1)〜(5)を同時に満たし、さらに下記要件(6)および(7)を満たすことが好ましい。
(1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.01g/10分以上30g/10分以下である。下限は好ましくは0.1g/10分、より好ましくは0.3g/10分であり、上限は好ましくは10g/10分、より好ましくは5.0g/10分である。MFRが上記下限値以上の場合、エチレン重合体においてせん断粘度が高すぎず、成形性が良好である。MFRが上記上限値以下の場合、エチレン系重合体の引張強度やヒートシール強度などの機械的強度が良好になる。
MFRは分子量に強く依存しており、MFRが小さいほど分子量は大きく、MFRが大きいほど分子量は小さくなる。また、エチレン系重合体の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、曽我和雄他編、「Catalytic Olefin Polymerization」、講談社サイエンティフィク、1990年、p.376)。このため、水素/エチレンを増減させることで、エチレン系重合体のMFRを増減させることが可能である。
MFRは、ASTM D1238−89に従い、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定される。
(2)密度が945kg/m3以上975kg/m3以下である。下限は好ましくは950kg/m3、より好ましくは952kg/m3、上限は好ましくは970kg/m3、より好ましくは965kg/m3である。密度が上記下限値以上の場合、エチレン重合体から成形された成形体の剛性に優れ、密度が上記上限値以下の場合、エチレン重合体から成形された成形体の衝撃強度が良好となり、例えばフィルム成形時のヒートシール強度、破袋強度などの機械的強度が良好である。
密度はエチレン系重合体のα−オレフィン含量に依存しており、α−オレフィン含量が少ないほど密度は高く、α−オレフィン含量が多いほど密度は低くなる。また、エチレン系重合体中のα−オレフィン含量は、重合系内におけるα−オレフィンとエチレンとの組成比(α−オレフィン/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、Walter Kaminsky, Makromol.Chem. 193, p.606(1992))。このため、α−オレフィン/エチレンを増減させることで、上記範囲の密度を有するエチレン系重合体を製造することができる。
密度の測定は、JIS K7112に準拠し、MFR測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定した。
(3)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の6.8乗(Mw6.8)の比、η0/Mw6.8が、0.005×10-30以上17×10-30以下である。すなわち、本発明で用いられるエチレン系重合体では、η0とMwが下記式(Eq-1)を満たす。
0.005×10-30≦η0/Mw6.8≦17×10-30 --------(Eq-1)
ここで、下限値は好ましくは0.05×10-30、より好ましくは0.65×10-30であり、上限値は好ましくは12×10-30、より好ましくは8.0×10-30である。
η0/Mw6.8が、0.005×10-30以上17×10-30以下であることは、η0とMwを両対数プロットした際に、log(η0)とlogMwが下記式(Eq-1')で規定される領域に存在することと同義である。
6.8Log(Mw) -32.301≦Log(η0)≦6.8Log(Mw) -28.770--------(Eq-1')
Mwに対してη0を両対数プロットしたとき、長鎖分岐がなく直鎖状で、伸長粘度がひずみ硬化性を示さないエチレン系重合体は、傾きが3.4のべき乗則に則る。一方、比較的短い長鎖分岐を数多く有し、伸長粘度がひずみ硬化性を示すエチレン系重合体は、べき乗則よりも低いη0を示し、さらにその傾きは3.4よりも大きな値となることが知られており(C Gabriel, H.Munstedt, J.Rheol., 47(3), 619(2003)、H. Munstedt, D.Auhl, J. Non-Newtonian Fluid Mech. 128, 62-69, (2005) )、傾き6.8は経験的に選択しうる。η0とMw6.8との比をとることについては特開2011-1545号公報にも開示されている。
エチレン系重合体の200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕が17×10-30×Mw6.8以下の場合、例えばTダイ成形時の引取サージングの発生が抑制される。
さらに、η0/Mw6.8が上記範囲の場合、エチレン系重合体から得られるフィルムの耐ブロッキング性が極めて優れるという効果がある。このような効果が発現する理由は次のように推測される。
フィルム表面に微小な凹凸を形成することで、耐ブロッキング性は著しく向上することが知られている。溶融樹脂がダイスに流入すると、伸張流によって伸張応力が発生する。この伸張応力が臨界値を越えると脆性的に破断が生じ、メルトフラクチャーと呼ばれるダイス出口での不安定流動が発生し、成形体表面に微小な凹凸が形成される(F.N. Cogswell, Polymer Melt Rheology, Wiley, 1981)。
η0/Mw6.8が上記範囲にあると、一般的な成形加工でのひずみ速度において伸張応力が大きくなり、メルトフラクチャーが発生する。このメルトフラクチャーによりフィルム表面に微小な凹凸が形成されるため、得られるフィルムの耐ブロッキング性が極めて優れる。
伸張応力は長鎖分岐の数と長さの影響を強く受けることが知られており、数が多いほど、長さが長いほど伸張応力は大きくなる。η0/Mw6.8が上限値を超えると長鎖分岐の数が不足する傾向となり、下限値を下回ると長鎖分岐の長さが不足する傾向となっていると考えられる。
η0とMwとの関係は、エチレン系重合体中の長鎖分岐の含量および長さに依存していると考えられる。すなわち、長鎖分岐含量が多いほど、また長鎖分岐の長さが短いほど、η0/Mw6.8は上記範囲の下限に近い値を示し、長鎖分岐含量が少ないほど、また長鎖分岐の長さが長いほどη0/Mw6.8は上記範囲の上限に近い値を示すと考えられる。
ここで、長鎖分岐とはエチレン系重合体中に含まれる絡み合い点間分子量(Me)以上の長さの分岐構造と定義され、長鎖分岐の導入によりエチレン系重合体の溶融物性及び成形加工性は著しく変化することが知られている(例えば、松浦一雄他編、「ポリエチレン技術読本」、工業調査会、2001年、p.32, 36)。後述のように本発明に係るエチレン系重合体は、例えば、後述する成分(A)、成分(B)、成分(C)を含むエチレン系重合体製造用触媒の存在下、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとを共重合することによって製造することができる。
本発明者らは、本発明のエチレン系重合体が生成する機構において、成分(A)および成分(C)、ならびに必要に応じて、後述する固体状担体(S)を含むエチレン系重合体製造用触媒成分の存在下で、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとを共重合させることによって数平均分子量4000以上20000以下、好ましくは4000以上15000以下の末端ビニルを有する重合体である「マクロモノマー」を生成させ、次いで、成分(B)および成分(C)、ならびに必要に応じて固体状担体(S)を含むエチレン系重合体製造用触媒成分により、エチレンおよび炭素数4以上10以下のα−オレフィンの重合と競争的に該マクロモノマーを共重合させることにより、エチレン系重合体中に長鎖分岐が生成すると推定している。
重合系中のマクロモノマーとエチレンとの組成比([マクロモノマー]/[エチレン])が高いほど長鎖分岐含量が多くなる。オレフィン重合用触媒中の成分(A)の比率、すなわち、成分(A)および成分(B)の合計に対する、成分(A)のモル比([A]/[A+B])を高くすることで[マクロモノマー]/[エチレン]を高くできることから、([A]/[A+B])を高くすることで長鎖分岐含量は多くなる。また、重合系中の水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)を高くするとマクロモノマーの分子量が小さくなる為、エチレン系重合体中に導入される長鎖分岐の長さは短くなる。
このことから、[A]/[A+B]、及び水素/エチレンを増減させることで、上記範囲のη0/Mw6.8を有するエチレン系重合体を製造することができる。
これらのほか、長鎖分岐量を制御する重合条件については、例えば国際公開第2007/034920号パンフレットに開示されている。
200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕は以下のようにして求める。
測定温度200℃におけるせん断粘度(η*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.01≦ω≦100の範囲で測定する。測定にはアントンパール社製粘弾性測定装置Physica MCR301を用いる。サンプルホルダーは25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みは約2.0mmとした。測定点はω一桁当たり5点とする。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3〜10%の範囲で適宜選択する。せん断粘度測定に用いたサンプルは、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kgf/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kgf/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することで調製する。
η0は、下記数式(Eq-2)のCarreauモデルを非線形最小二乗法により実測のレオロジー曲線〔せん断粘度(η*)の角速度(ω)分散〕にフィッティングさせることで算出する。
η*=η0〔1+(λω)a(n-1)/a --- (Eq-2)
ここで、λは時間の次元を持つパラメーター、nは材料の冪法則係数(power law index)を表す。なお、非線形最小二乗法によるフィッティングは下記数式(Eq-3)におけるdが最小となるよう行われる。
Figure 0006574589
ここで、ηexp(ω)は実測のせん断粘度を表し、ηcalc(ω)はCarreauモデルより算出したせん断粘度を表す。
GPC-VISCO法による重量平均分子量(Mw)は、ウォーターズ社製GPC/V2000を用いて、以下のようにして測定する。
ガードカラムにはShodex AT-Gを用い、分析カラムにはAT-806を2本使用し、検出器として示差屈折計および3キャピラリー粘度計を用いる。カラム温度は145℃とし、移動相には、酸化防止剤としてBHT0.3重量%含むo-ジクロロベンゼンを用い、流速を1.0ml/分とし、試料濃度は0.1重量%とする。標準ポリスチレンは、東ソー社製を用いる。分子量計算は、粘度計と屈折計から実測粘度を算出し、実測ユニバーサルキャリブレーションより重量平均分子量(Mw)を算出する。
(4)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、0.48×10-4以上2.55×10-4以下である。すなわち、本発明で用いられるエチレン系重合体では、[η]とMwが下記式(Eq-4) を満たす。
0.48×10-4≦[η]/Mw0.776≦2.55×10-4 --------(Eq-4)
ここで、下限値は好ましくは0.98×10-4、より好ましくは1.75×10-4であり、上限値は好ましくは2.45×10-4、より好ましくは2.35×10-4である。
[η]/Mw0.776が、0.48×10-4以上2.55×10-4以下であることは、[η]とMwを両対数プロットした際に、log([η])とlog(Mw)が下記式(Eq-4')で規定される領域に存在することと同義である。
0.776Log(Mw) -4.319≦Log([η])≦0.776Log(Mw) -3.593 --------(Eq-4')
エチレン系重合体中に長鎖分岐が導入されると、長鎖分岐の無い直鎖型エチレン系重合体に比べ、分子量の割に[η]が小さくなることが知られている(例えばWalther Burchard, ADVANCES IN POLYMER SCIENCE, 143, Branched PolymerII, p.137(1999))。
また、Mark-Houwink-桜田式に基づき、ポリエチレンの[η]はMvの0.7乗、ポリプロピレンの[η]はMwの0.80乗、ポリ−4−メチル−1−ペンテンの[η]はMnの0.81乗に比例することが報告されている(例えばR. Chiang, J. Polym. Sci., 36, 91 (1959): P.94、R. Chiang, J. Polym. Sci., 28, 235 (1958): P.237、A. S. Hoffman, B. A. Fries and P. C. Condit, J. Polym. Sci. Part C, 4, 109 (1963): P.119 Fig. 4)。
そして、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体の代表的な指標としてMwの0.776乗を設定することとし、従来のエチレン系重合体に比べて分子量の割に[η]が小さいことを表したのが前記要件(4)であり、この考え方は国際公開第2006/080578号パンフレットに開示されている。
よって、エチレン系重合体の[η]/Mw0.776が上記上限値以下、特に2.55×10-4以下の場合は多数の長鎖分岐を有しており、エチレン系重合体の成形性、流動性が優れる。
前述のようにエチレン系重合体製造用触媒中の成分(A)の比率([A]/[A+B])を高くすることで長鎖分岐含量は多くなることから、[A]/[A+B]を増減させることで、上記範囲の[η] /Mw0.776を有するエチレン系重合体を製造することができる。
なお、極限粘度[η] (dl/g)はデカリン溶媒を用い、以下のように測定した。
サンプル約20 mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/C値を極限粘度[η]とした。(下式(Eq-5)参照)
[η]=lim(ηsp/C) (C→0) ---------- (Eq-5)
(5)GPC−粘度検出器法(GPC−VISCO)により測定されたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)の比、Mz/Mnが5以上、−20×log(MFR)+95以下である。すなわち、本発明で用いられるエチレン系重合体では、Mz/MnとMFRが下記式(Eq-6)を満たす。
5≦Mz/Mn≦-20×log(MFR)+95 --------(Eq-6)
ここで、下限値は好ましくは10、より好ましくは15であり、上限値は好ましくは-20×log(MFR)+75、より好ましくは-20×log(MFR)+55の範囲である。
エチレン系重合体の分子量分布が狭いとMz/Mnが小さく、分子量分布が広くなるとMz/Mnが大きくなる。分子量分布が同一の場合、高分子量成分量が多い場合にはMz/Mnの値が増加する。エチレン系重合体の粘度に対して高粘度の高分子量成分が少量存在すると、溶融混練時に溶融したポリマーが海島構造を形成しエチレン系重合体の溶融状態での均一性が悪化する。海島構造を形成すると島となった高分子量成分が混ざりにくくなり成形体の外観不良が発生する。
エチレン系重合体のMz/Mnが5以上、-20×log(MFR)+95以下である場合、エチレン系重合体に対する高分子量成分量が少なく、例えばフィルム成形時のFEが良好である。
(6)190℃における溶融張力〔MT(g)〕と、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η*(P)〕との比〔MT/η*(g/P)〕が7.0×10-5以上1.0×10-3以下である。すなわち、本発明で用いられるエチレン系重合体では、MTとη*が下記式(Eq-7) を満たすことが好ましい。
7.0×10-5≦MT/η*≦1.0×10-3 --------(Eq-7)
ここで、下限値は好ましくは1.0×10-4、より好ましくは1.3×10-4であり、上限値は好ましくは6.0×10-4、より好ましくは4.0×10-4である。
〔MT/η*(g/P)〕は単位せん断粘度あたりの溶融張力を示し、この値が大きいと、せん断粘度の割に溶融張力が大きくなる。すなわち〔MT/η*(g/P)〕が下限値以上の場合、エチレン重合体において押出特性とバブル安定性あるいはネックインとのバランスが良好となる。また、〔MT/η*(g/P)〕が上限値以下の場合、エチレン重合体において高速成形性が良好となる。
MT/η*はエチレン系重合体の長鎖分岐含量に依存すると考えられており、長鎖分岐含量が多いほどMT/η*は大きく、長鎖分岐含量が少ないほどMT/η*は小さくなる傾向がある。
前述のようにエチレン系重合体製造用触媒中の成分(A)の比率([A]/[A+B])を高くすることで長鎖分岐含量は多くなることから、[A]/[A+B]を増減させることで、上記範囲のMT/η*を有するエチレン系重合体を製造することができる。
溶融張力(MT)は、以下の方法で測定したときの値である。
溶融張力(MT)は、溶融されたポリマーを一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定される。測定には東洋精機製作所社製キャピラリーレオメーター:キャピログラフ1Bを用いた。条件としては、樹脂温度190℃、溶融時間6分、バレル径9.55mmφ、押し出し速度15mm/分、巻取り速度24m/分(溶融フィラメントが切れてしまう場合には、巻取り速度を5m/分ずつ低下させる)、ノズル径2.095mmφ、ノズル長さ8mmで行う。
また、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度(η*)は、測定温度200℃におけるせん断粘度(η*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.01≦ω≦100の範囲で測定する。測定にはアントンパール社製粘弾性測定装置Physica MCR301を用いる。サンプルホルダーは25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みは約2.0mmとする。測定点はω一桁当たり5点とする。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3〜10%の範囲で適宜選択する。せん断粘度測定に用いたサンプルは、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kgf/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kgf/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することで調製する。
(7)GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が1.0×104.20以上1.0×104.60以下である。下限値は好ましくは1.0×104.22、上限値は好ましくは1.0×104.50である。
エチレン系重合体の機械的強度には、低分子量成分が強く影響を及ぼすことが知られている。低分子量成分が存在すると、破壊の起点になると考えられている分子末端が増加するため、機械的強度が低下すると考えられている(松浦一雄・三上尚孝編著、「ポリエチレン技術読本」、株式会社工業調査会、2001年、p.45)。GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が1.0×104.20以上の場合、機械的強度に悪影響を及ぼす低分子量成分が少ないため、機械的強度に優れる。
GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、曽我和雄他編、「Catalytic Olefin Polymerization」、講談社サイエンティフィク、1990年、p.376)。このため、水素/エチレンを増減させることで、分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)を増減させることが可能である。
分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)は、ウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフ alliance GPC2000型(高温サイズ排除クロマトグラフ)を用い、以下のようにして算出する。
[使用装置および条件]
解析ソフト:クロマトグラフィデータシステムEmpower(Waters社)
カラム:TSKgel GMH6- HT×2+TSKgel GMH6-HTL×2
(内径7.5mm×長さ30cm,東ソー社)
移動相:o−ジクロロベンゼン(和光純薬 特級試薬)
検出器:示差屈折計(装置内蔵)
カラム温度:140℃
流速:1.0mL/分
注入量:500μL
サンプリング時間間隔:1秒
試料濃度:0.15%(w/v)
分子量較正:単分散ポリスチレン(東ソー社)/分子量495〜分子量2060万
Z. Crubisic, P. Rempp, H. Benoit, J. Polym. Sci., B5, 753 (1967) に記載された汎用較正の手順に従い、ポリエチレン分子量換算として分子量分布曲線を作成する。この分子量分布曲線から最大重量分率での分子量(peak top M)を算出する。
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明に係る成形体は、実質的に上記エチレン系重合体のみからなるものであってもよいが、これに限られるものではなく、上記エチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂組成物からなるものであってもよい。熱可塑性樹脂組成物は、上記エチレン系重合体とは異なる熱可塑性樹脂(以下、「他の熱可塑性樹脂」)をさらに含むことができる。上記エチレン系重合体に対して「他の熱可塑性樹脂」をブレンドすることにより得られる熱可塑性樹脂組成物は、成形性および機械的強度に優れる。上記エチレン系重合体と、「他の熱可塑性樹脂」とのブレンド比率は、99.9/0.1〜0.1/99.9、好ましくは90/10〜10/90、さらに好ましくは70/30〜30/70である。
<他の熱可塑性樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂組成物においてブレンドしうる「他の熱可塑性樹脂」としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルおよびポリアセタールなどの結晶性熱可塑性樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアクリレートなどの非結晶性熱可塑性樹脂が挙げられる。また、ポリ塩化ビニルも好ましく用いられる。
上記ポリオレフィンとして具体的には、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、4-メチル-1-ペンテン系重合体、3-メチル-1-ブテン系重合体、ヘキセン系重合体などが挙げられる。なかでも、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、4-メチル-1-ペンテン系重合体が好ましく、エチレン系重合体である場合は本発明に係るエチレン系重合体であっても従来のエチレン系重合体であってもよく、エチレン・極性基含有ビニル共重合体であってもよいが、従来のエチレン系重合体がより好ましい。
上記ポリエステルとして具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステル;ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートなどが挙げられる。
上記ポリアミドとして具体的には、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−10、ナイロン−12、ナイロン−46などの脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンより製造される芳香族ポリアミドなどが挙げられる。
上記ポリアセタールとして具体的には、ポリホルムアルデヒド(ポリオキシメチレン)、ポリアセトアルデヒド、ポリプロピオンアルデヒド、ポリブチルアルデヒドなどを挙げることができる。中でも、ポリホルムアルデヒドが特に好ましい。
上記ポリスチレンは、スチレンの単独重合体であってもよく、スチレンとアクリロニトリル、メタクリル酸メチル、α-メチルスチレンとの二元共重合体であってもよい。
上記ABSとしては、アクリロニトリルから誘導される構成単位を20〜35モル%の量で含有し、ブタジエンから誘導される構成単位を20〜30モル%の量で含有し、スチレンから誘導される構成単位を40〜60モル%の量で含有するABSが好ましく用いられる。
上記ポリカーボネートとしては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタンなどから得られるポリマーが挙げられる。なかでも、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから得られるポリカーボネートが特に好ましい。
上記ポリフェニレンオキシドとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)を用いることが好ましい。
上記ポリアクリレートとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレートを用いることが好ましい。
上記のような熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。特に好ましい熱可塑性樹脂はポリオレフィンであって、エチレン系重合体がより特に好ましい。
<その他の配合成分>
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、上記エチレン系重合体および「他の熱可塑性樹脂」以外のその他の配合成分として、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、核剤、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに配合してもよい。
これら「その他の配合成分」の総配合量は、エチレン系重合体100重量部に対して、一般的には10重量部以下、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下である。
[エチレン系重合体の製造方法]
本発明のエチレン系重合体は、後述するエチレン系重合体製造用触媒の存在下、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとを共重合することにより製造することができる。
本発明では、溶解重合や懸濁重合などの液相重合法、または気相重合法などの重合方法が用いられるが、好ましくは懸濁重合法が用いられる。
液相重合法で用いられる不活性炭化水素媒体としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼンおよびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などが挙げられる。また、α−オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
<エチレン系重合体製造用触媒>
本発明のエチレン系重合体は、成分(A)、成分(B)および成分(C)を含む触媒の存在下、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとを共重合することによって効率的に製造することができる。
本発明で用いられるエチレン系重合体製造用触媒は、以下に述べる成分(A)、成分(B)および成分(C)に加えて、固体状担体(S)ならびに成分(G)を含んでもよい。
成分(A)
成分(A)は、下記一般式(I)で表される架橋型メタロセン化合物である。
Figure 0006574589
一般式(I)中、R1は一価の基であり、水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基から選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよいが、全てが同時に水素原子ではなく、隣接する基が互いに結合して脂肪族環を形成していてもよい。
一価の炭化水素基とは、好ましくは炭素数1以上20以下の炭素と水素からなるアルキル基、炭素数3以上20以下の炭素と水素からなるシクロアルキル基、炭素数2以上20以下の炭素と水素からなるアルケニル基、炭素数6以上20以下の炭素と水素からなるアリール基または炭素数7以上20以下の炭素と水素からなるアリールアルキル基を示す。該炭素数1以上20以下の炭素と水素からなるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、ノニル、ドデシル、アイコシル基などが挙げられる。該炭素数3以上20以下の炭素と水素からなるシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチル基などが挙げられる。該炭素数2以上20以下の炭素と水素からなるアルケニル基としては、例えば、ビニル、プロペニル、シクロヘキセニル基などが挙げられる。該炭素数6以上20以下の炭素と水素からなるアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、α−またはβ−ナフチル、メチルナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ベンジルフェニル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニリル基などが挙げられる。該炭素数7以上20以下の炭素と水素からなるアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル基などが挙げられる。
一価のハロゲン含有基としては、ハロゲン原子および上記炭化水素基中の水素原子の1個以上が適当なハロゲン原子で置換された基、例えばトリフルオロメチル基などが挙げられる。
なお、隣接する基が互いに結合して脂肪族環を形成する場合の例としては、テトラヒドロインデニル、2−メチルテトラヒドロインデニル、2,2,4−トリメチルテトラヒドロインデニル、4−フェニルテトラヒドロインデニル、4−シクロヘキシルテトラヒドロインデニル、2−メチル−4−フェニルテトラヒドロインデニル、2−メチル−4−シクロヘキシルテトラヒドロインデニルなどが挙げられる。
1の好ましい基としては、水素原子、炭化水素基およびハロゲン含有基から選ばれる基であり、より好ましくは、少なくとも1つが炭化水素基であり、さらに好ましくは、少なくとも1つが炭素数1以上15以下の炭化水素基であり、残りが炭化水素基または水素原子であり、特に好ましくは、少なくとも1つが炭素数3以上8以下の炭化水素基であり、残りが炭化水素基または水素原子である。
1は、二つの配位子を結合する二価の基であって、アルキレン基、置換アルキレン基、アルキリデン基などの炭素数1以上20以下の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基から選ばれる基である。
二価の炭素数1以上20以下のアルキレン基、置換アルキレン基、アルキリデン基の具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのアルキレン基;イソプロピリデン、ジエチルメチレン、ジプロピルメチレン、ジイソプロピルメチレン、ジブチルメチレン、メチルエチルメチレン、メチルブチルメチレン、メチル−t−ブチルメチレン、ジヘキシルメチレン、ジシクロヘキシルメチレン、メチルシクロヘキシルメチレン、メチルフェニルメチレン、ジフェニルメチレン、ジトリルメチレン、メチルナフチルメチレン、ジナフチルメチレン、1−メチルエチレン、1,2−ジメチルエチレン、1−エチル−2−メチルエチレンなどの置換アルキレン基;シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン、ノルボルニリデン、アダマンチリデン、テトラヒドロナフチリデン、ジヒドロインダニリデンなどのシクロアルキレン基;エチリデン、プロピリデン、ブチリデンなどのアルキリデン基などが挙げられる。
二価のケイ素含有基としては、シリレン、メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジイソプロピルシリレン、ジブチルシリレン、メチルブチルシリレン、メチル−t−ブチルシリレン、ジシクロヘキシルシリレン、メチルシクロヘキシルシリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジトリルシリレン、メチルナフチルシリレン、ジナフチルシリレン、シクロジメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロペンタメチレンシリレン、シクロヘキサメチレンシリレン、シクロヘプタメチレンシリレン基などが挙げられる。
二価のハロゲン含有基としては、上記アルキレン基、置換アルキレン基、アルキリデン基中やケイ素含有基中の水素原子の1個以上が適当なハロゲン原子で置換された基が選ばれ、例えばビス(トリフルオロメチル)メチレン、4,4,4−トリフルオロブチルメチルメチレン、ビス(トリフルオロメチル)シリレン、4,4,4−トリフルオロブチルメチルシリレン基などが挙げられる。
このうち、Q1の好ましい基としては、炭素数1以上20以下のアルキレン基、置換アルキレン基、アルキリデン基、ハロゲン含有アルキレン基、ハロゲン含有置換アルキレン基、ハロゲン含有アルキリデン基、ケイ素含有基およびハロゲン含有ケイ素含有基から選ばれる基であり、より好ましい基は、ケイ素含有基またはハロゲン含有ケイ素含有基である。
Xは、一価の基であり、好ましくは、ハロゲン原子、炭化水素基である。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、炭化水素基としては上記R1として例示したものと同様のものが挙げられる。
Mは、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子であり、好ましくはジルコニウム原子である。
一般式(I)で表される架橋型メタロセン化合物およびその製造方法は特に限定されないが、その具体例としては、特開2006−233208号公報、特開2009−143901号公報、特開2009−144148号公報などに例示したものが挙げられる。
本発明においては、一般式(I)で表される化合物のうち、化学構造の異なるメタロセン化合物を二種類以上用いてもよい。また、化学構造が同一である光学異性体を1種単独で用いてもよいし、化学構造が同一である光学異性体混合物(例えば、メソ体混合物またはラセミ体混合物)で用いてもよい。
一般的に、オレフィン重合用触媒のエチレン系重合体に対する反応性は、エチレン系重合体の分子量が小さくなるにつれて、また末端ビニル基の数が大きくなるにつれて高まり、多くの長鎖分岐を生成することができる。成分(A)は、分子量が比較的低く、また末端ビニル基数の多い重合体を生成できるため、成分(B)により効率的に取り込まれ、従来公知の重合体に対し数多くの長鎖分岐を有する重合体を製造できる。また、成分(A)の重合活性に由来して、高い生産性で長鎖分岐を有する重合体を製造できる。
成分(B)
成分(B)としては、フェニル−3−ブテニルメチレン(η5−シクロペンタジエニル){η5−(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)}ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
Figure 0006574589
成分(C)
成分(C)は、
(c−1)下記一般式(III)、(IV)または(V)で表される有機金属化合物、
(c−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および、
(c−3)成分(A)および成分(B)と反応してイオン対を形成する化合物、
から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
a mAl(ORbnpq・・・(III)
一般式(III)中、RaおよびRbは、炭素数が1〜15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。
aAlRa 4・・・(IV)
一般式(IV)中、MaはLi、NaまたはKを示し、Raは炭素数が1〜15の炭化水素基を示す。
a rbb st・・・(V)
一般式(V)中、RaおよびRbは、炭素数が1〜15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、MbはMg、ZnまたはCdを示し、Xはハロゲン原子を示し、rは0<r≦2、sは0≦s≦1、tは0≦t≦1であり、かつr+s+t=2である。
一般式(III)、(IV)または(V)で表される有機金属化合物(c−1)の中では、一般式(III)で示されるものが好ましく、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムおよびトリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;ならびにジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ−n−ブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドおよびジイソヘキシルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。これらは、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
有機アルミニウムオキシ化合物(c−2)としては、トリアルキルアルミニウムまたはトリシクロアルキルアルミニウムから調製された有機アルミニウムオキシ化合物が好ましく、トリメチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムから調製されたアルミノキサンが特に好ましい。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
成分(A)および成分(B)と反応してイオン対を形成する化合物(c−3)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報およびUS5321106などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物や、さらにはヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物を制限無く使用することができる。
固体状担体(S)
本発明で必要により用いることができる固体状担体(S)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状または微粒子状の固体である。
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が挙げられ、好ましくは多孔質酸化物が挙げられる。
多孔質酸化物としては、SiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaOおよびThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物、具体的には、天然または合成ゼオライト、SiO2−MgO、SiO2−Al23、SiO2−TiO2、SiO2−V25、SiO2−Cr23およびSiO2−TiO2−MgOなどが用いられる。これらのうち、SiO2を主成分とするものが好ましい。
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明で用いられる固体状担体としては、粒径が通常0.2〜300μm、好ましくは1〜200μmであって、比表面積が通常50〜1200m2/g、好ましくは100〜1000m2/gの範囲にあり、細孔容積が通常0.3〜30cm3/gの範囲にあるものが好ましい。このような担体は、必要に応じて、例えば、100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して用いられる。
成分(G)
本発明で必要により用いることができる成分(G)は、
(g−1)ポリアルキレンオキサイドブロック、
(g−2)高級脂肪族アミド、
(g−3)ポリアルキレンオキサイド、
(g−4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、
(g−5)アルキルジエタノールアミン、および
(g−6)ポリオキシアルキレンアルキルアミン
からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
本発明において、このような成分(G)は、反応器内でのファウリングを抑制し、あるいは生成重合体の粒子性状を改善する目的で、エチレン系重合体製造用触媒中に共存させることができる。成分(G)の中では、(g−1)、(g−2)、(g−3)および(g−4)が好ましく、(g−1)および(g−2)が特に好ましい。ここで、(g−2)の例として、高級脂肪酸ジエタノールアミドなどが挙げられる。
<エチレン系重合体製造用触媒の調製方法>
上記エチレン系重合体製造用触媒は、成分(A)、成分(B)および成分(C)から選ばれる少なくとも1つの成分と固体状担体(S)とを不活性炭化水素中で接触させることにより、固体触媒成分(Y)として調製することができる。各成分の接触順序は任意であるが、固体触媒成分(Y)の好ましい調製方法としては、例えば、
iv)成分(C)と固体状担体(S)とを接触させて固体触媒前駆体(X)を得て、次いで該前駆体(X)と成分(A)および成分(B)とを接触させて固体触媒成分(Y)を調製する方法、
v)成分(A)、成分(B)および成分(C)を混合接触させた後に、固体状担体(S)を接触させて固体触媒成分(Y)を調製する方法、
vi)成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(A)と接触させて調製した固体触媒成分(Ya)と、成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(B)と接触させて調製した固体触媒成分(Yb)とを用いる方法
などが挙げられ、より好ましいのは方法iv)である。
不活性炭化水素として、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼンおよびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などが挙げられる。
成分(C)と固体状担体(S)との接触時間は、通常0〜20時間、好ましくは0〜10時間であり、接触温度は、通常−50〜200℃、好ましくは−20〜120℃である。また、成分(C)と固体状担体(S)との接触のモル比(成分(C)/固体状担体(S))は、通常0.2〜2.0、特に好ましくは0.4〜2.0である。
成分(C)および固体状担体(S)の接触物である固体触媒前駆体(X)と、成分(A)および成分(B)との接触時間は、通常0〜5時間、好ましくは0〜2時間であり、接触温度は、通常−50〜200℃、好ましくは−50〜100℃である。成分(A)と成分(B)との接触量は、成分(C)の種類と量に大きく依存し、成分(c−1)を使用する場合は、成分(A)および成分(B)中の全遷移金属原子(M)と、成分(c−1)とのモル比[(c−1)/M]が、通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となる量で用いられ、成分(c−2)を使用する場合は、成分(c−2)中のアルミニウム原子と、成分(A)および成分(B)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(c−2)/M]が、通常10〜500000、好ましくは20〜100000となる量で用いられ、成分(c−3)を使用する場合は、成分(c−3)と、成分(A)および成分(B)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(c−3)/M]が、通常1〜10、好ましくは1〜5となる量で用いられる。なお、成分(C)と、成分(A)および成分(B)中の全遷移金属原子(M)との比は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により求められる。
成分(A)および成分(B)の使用量比は、エチレン系重合体の分子量および分子量分布から任意に決定できるが、好ましい範囲として、成分(A)から生成するポリマーと成分(B)から生成するポリマーとの比率(以下、「成分(A)および成分(B)由来のポリマー生成比率」ともいう。)[=成分(A)の生成ポリマー量/成分(B)の生成ポリマー量]が、通常40/60〜95/5、好ましくは50/50〜95/5、より好ましくは60/40〜95/5である。
成分(A)および成分(B)由来のポリマー生成比率の算出方法について説明する。
GPC測定により得られる、エチレン系重合体の分子量分布曲線は、実質的に3つのピークから構成される。この3つのピークのうち、1番低分子量側のピークは成分(A)由来ポリマーに起因するピークであり、2番目のピークは成分(B)由来ポリマーに起因するピークであり、3番目のピーク、すなわち最も高分子側にあるピークは成分(A)および成分(B)の両方用いたときのみに生成するピークである。そして、成分(A)由来ポリマーに起因するピーク(すなわち、上記1番低分子量側のピーク)と成分(B)由来ポリマーに起因するピーク(すなわち、上記2番目のピーク)との比率[=成分(A)由来ポリマーに起因するピーク/成分(B)由来ポリマーに起因するピーク]を、成分(A)および成分(B)由来のポリマー生成比率[=成分(A)の生成ポリマー量/成分(B)の生成ポリマー量]として定義する。
各ピークの比率は、
エチレン系重合体の分子量分布曲線(G1)と、
成分(A)、成分(C)、固体状担体(S)からなる触媒(すなわち、成分(B)を含まない触媒)を用いたことを除き、エチレン系重合体を得るときと同様の重合条件にて重合して得られたエチレン系重合体の分子量分布曲線(G2)と、
成分(B)、成分(C)、固体状担体(S)からなる触媒(すなわち、成分(A)を含まない触媒)を用いたことを除き、エチレン系重合体を得るときと同様の重合条件にて重合して得られたエチレン系重合体の分子量分布曲線(G3)と
を用いて、下記[1]〜[4]の方法により算出される。なお、本明細書において、「分子量分布曲線」というときは、特に別の記載がない限り、微分分子量分布曲線をいい、また、分子量分布曲線について「面積」というときは、分子量分布曲線とベースラインとの間に形成される領域の面積をいう。
[1](G1)、(G2)、(G3)の各数値データにおいて、Log(分子量)を0.02間隔に分割し、さらに(G1)、(G2)、(G3)のそれぞれについて、面積が1となるように強度[dwt/d(log分子量)]を正規化する。
[2](G2)と(G3)との合成曲線(G4)を作成する。このとき、各分子量における(G1)の強度と(G4)の強度との差の絶対値が概ね0.0005以下となるように、(G2)および(G3)の各分子量における強度を一定の比率で任意に変更する。なお、高分子量側では生成する第3ピークの影響により、(G1)の強度と(G4)の強度との差の絶対値が0.0005より大きくなってしまうため、より低分子量側で(G1)の強度と(G4)の強度との差の絶対値が0.0005以下となるように、(G2)および(G3)の強度を変更していく。
[3](G1)における最大重量分率での分子量をピークトップとしたときに、当該ピークトップより高分子量側における(G1)と(G4)との重なり合わない部分、すなわち、(G1)と(G4)との差分曲線(G5)を作成したときに、当該差分曲線(G5)において、(G1)における最大重量分率での分子量より高分子量側に現れるピーク部分(P5)[(G1)−(G4)]を第3ピーク(すなわち、上記「3番目のピーク」)とする。
[4] 成分(A)由来ポリマーに起因するピークの比率Wa、成分(B)由来ポリマーに起因するピークの比率Wbを以下の通り算出する。
Wa=S(G2)/S(G4)
Wb=S(G3)/S(G4)
ここで、S(G2)、S(G3)はそれぞれ強度を変更した後の(G2)、(G3)の面積であり、S(G4)は(G4)の面積である。
たとえば、(G4)が、(G2)の強度をx倍したものに、(G3)の強度をy倍したものを加算することにより得られた場合、上記[1]で述べた正規化によって元の(G2)および(G3)の面積が共に1とされていることから、S(G2)、S(G3)、S(G4)は、それぞれx、y、(x+y)となる。したがって、上記WaおよびWbは、上記xおよびyを用いて、それぞれ以下のように表すことができる。
Wa=x/(x+y)
Wb=y/(x+y)
成分(A)由来のポリマーの生成量が多い方が長鎖分岐を生成するのに有利であり、成分(A)および成分(B)の遷移金属化合物当たりのモル比は、生成ポリマーが上記の比率を満たす範囲内において任意に選ぶことができる。
エチレン系重合体の製造には、上記のような固体触媒成分(Y)をそのまま用いることができるが、この固体触媒成分(Y)にオレフィンを予備重合させ、予備重合触媒成分(YP)を形成してから用いることもできる。
予備重合触媒成分(YP)は、上記固体触媒成分(Y)の存在下、通常、不活性炭化水素溶媒中、オレフィンを導入させることにより調製することができ、回分式、半連続式および連続式のいずれの方法でも使用することができ、また減圧、常圧または加圧下のいずれでも行うことができる。この予備重合によって、固体触媒成分(Y)1g当たり、通常0.01〜1000g、好ましくは0.1〜800g、より好ましくは0.2〜500gの重合体を生成させる。
不活性炭化水素溶媒中で調製した予備重合触媒成分(YP)は、懸濁液から分離した後、再び不活性炭化水素中に懸濁させ、得られた懸濁液中にオレフィンを導入してもよく、また、乾燥させた後オレフィンを導入してもよい。
予備重合に際して、予備重合温度は、通常−20〜80℃、好ましくは0〜60℃であり、また予備重合時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜50時間である。
予備重合に使用する固体触媒成分(Y)の形態としては、すでに述べたものを制限無く利用することができる。また、必要に応じて成分(C)がさらに用いられ、特に(c−1)中の上記式(III)に示される有機アルミニウム化合物が好ましく用いられる。成分(C)が用いられる場合は、該成分(C)中のアルミニウム原子(Al−C)と遷移金属化合物とのモル比(成分(C)/遷移金属化合物)で、通常0.1〜10000、好ましくは0.5〜5000の量で用いられる。
予備重合系における固体触媒成分(Y)の濃度は、固体触媒成分(Y)/重合容積1リットル比で、通常1〜1000グラム/リットル、好ましくは10〜500グラム/リットルである。
成分(G)は、上記エチレン系重合体製造用触媒の調製におけるいずれの工程に共存させてもよく、接触順序も任意である。また予備重合によって生成した予備重合触媒成分(YP)に接触させてもよい。
上記エチレン系重合体製造用触媒を用いて、エチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの共重合を行うに際して、成分(A)および成分(B)は、反応容積1リットル当たり、通常10-12〜10-1モル、好ましくは10-8〜10-2モルになる量で用いられる。
また、重合温度は、通常−50〜200℃、好ましくは0〜170℃、特に好ましくは60〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常、常圧〜100kgf/cm2、好ましくは常圧〜50kgf/cm2の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式および連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うこともできる。
得られるエチレン系重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに重合系には、ファウリング抑制あるいは粒子性状改善を目的として、前記の成分(G)を共存させることができる。
物性値のばらつきを抑制するため、重合反応により得られたエチレン系重合体粒子および所望により添加される他の成分は、任意の方法で溶融され、混練、造粒などを施される。
ここで、上記溶融混練を行う際、上記「他の熱可塑性樹脂」をブレンドすることができる。また、「他の熱可塑性樹脂」に加えて、あるいは、「他の熱可塑性樹脂」に変えて、上記「その他の配合成分」をさらに配合してもよい。上記「他の熱可塑性樹脂」および上記「その他の配合成分」を加える順序は特に限定されない。
[成形体]
本発明に係るエチレン系重合体または熱可塑性樹脂組成物を加工することにより、成形性に優れかつ、剛性および機械的強度に優れた成形体、好ましくはブロー成形体、発泡成形体、シート成形体が得られる。
本発明のエチレン系重合体は一般のフィルム成形やシート成形、ブロー成形、インジェクション成形および押出成形等により加工される。フィルム成形では押出ラミネ−ト成形、Tダイフィルム成形、インフレ−ション成形(空冷、水冷、多段冷却、高速加工)などが挙げられる。得られたフィルムは単層でも使用することができるが、多層とすることでさらに様々な機能を付与することができる。その場合に用いられる方法として、前記各成形法における共押出法が挙げられる。一方押出ラミネ−ト成形やドライラミネ−ト法のような貼合ラミネ−ト成形法によって、共押出が困難な紙やバリアフィルム(アルミ箔、蒸着フィルム、コ−ティングフィルムなど)との積層が挙げられる。要するに、少なくとも一方の表面層が上記エチレン系重合体からなる層から形成されている多層フィルムを得るにあたり、上記エチレン系重合体からなる層を基材に積層する手段として、これらのような方法を用いうる。
ブロー成形やインジェクション成形、押出成形での、共押出法による多層化での高機能製品の作製については、フィルム成形と同様に可能である。
本発明のエチレン系重合体または熱可塑性樹脂組成物を加工することにより得られる成形体としては、フィルム、シート、ブロー輸液バック、ブローボトル、ガソリンタンク、押出成形によるチューブ、パイプ、引きちぎりキャップ、日用雑貨品など射出成形物、繊維、回転成形による大型成形品などが挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[物性の測定]
エチレン系重合体の物性の測定方法を以下に示す。
<メルトフローレート(MFR)>
ASTM D1238−89に従い、190℃、2.16kg荷重(kgf)の条件下で測定した。
<密度(D)>
JIS K7112に準拠し、MFR測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定した。
<溶融張力(MT)>
190℃における溶融張力(MT)(単位;g)は、一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定した。測定には東洋精機製作所社製キャピラリーレオメーター:キャピログラフ1Bを用いた。条件は樹脂温度190℃、溶融時間6分、バレル径9.55mmφ、押し出し速度15mm/分、巻取り速度24m/分(溶融フィラメントが切れてしまう場合には、巻取り速度を5m/分ずつ低下させる)、ノズル径2.095mmφ、ノズル長さ8mmとした。
<せん断粘度(η*)>
200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η*(1.0)〕(P)は以下の方法により測定した。
せん断粘度(η*)は、測定温度200℃におけるせん断粘度(η*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.01≦ω≦100の範囲で測定する。測定にはアントンパール社製粘弾性測定装置Physica MCR301を用い、サンプルホルダーとして25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みを約2.0mmとした。測定点はω一桁当たり5点とした。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3〜10%の範囲で適宜選択した。
せん断粘度測定に用いたサンプルは、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kgf/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kgf/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することにより作製した。
<ゼロせん断粘度(η0)>
200℃におけるゼロせん断粘度(η0)(P)は以下の方法により求めた。
測定温度200℃にて、せん断粘度(η*)の角速度ω(rad/秒)分散を0.01≦ω≦100の範囲で測定する。測定にはアントンパール社製粘弾性測定装置Physica MCR301を用い、サンプルホルダーとして25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みを約2.0mmとした。測定点はω一桁当たり5点とした。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3〜10%の範囲で適宜選択した。
せん断粘度測定に用いたサンプルは、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kgf/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kgf/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することにより作製した。
ゼロせん断粘度(η0)は、下記式(Eq-2)のCarreauモデルを非線形最小自乗法により実測のレオロジー曲線〔せん断粘度(η*)の角速度(ω)分散〕にフィッティングさせることで算出した。
η*=η0〔1+(λω)a(n-1)/a (Eq-2)
ここで、λは時間の次元を持つパラメーター、nは材料の冪法則係数(power law index)を表す。なお、非線形最小自乗法によるフィッティングは下記式(Eq-3)におけるdが最小となるように行った。
Figure 0006574589
上記式(Eq-3)中、ηexp(ω)は実測のせん断粘度を表し、ηcalc(ω)はCarreauモデルより算出したせん断粘度を表す。
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mn)>
ウォーターズ社製GPC−粘度検出器(GPC−VISCO)GPC/V2000を用い、以下のように測定した。
ガードカラムにはShodex AT−Gを用い、分析カラムにはAT−806を2本用い、検出器には示差屈折計および3キャピラリー粘度計を用い、カラム温度は145℃とし、移動相としては、酸化防止剤としてBHTを0.3重量%含むo−ジクロロベンゼンを用い、流速を1.0mL/分とし、試料濃度は0.1重量%とした。標準ポリスチレンには、東ソー社製のものを用いた。分子量計算は、粘度計および屈折計から実測粘度を計算し、実測ユニバーサルキャリブレーションより数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mn)を求めた。
<分子量分布曲線>
分子量分布曲線は、ウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフ alliance GPC2000型(高温サイズ排除クロマトグラフ)を用い、以下のように測定した。
解析ソフト:クロマトグラフィデータシステムEmpower(Waters社)
カラム:TSKgel GMH6− HT×2+TSKgel GMH6−HTL×2(内径7.5mm×長さ30cm,東ソー社)
移動相:o−ジクロロベンゼン(和光純薬 特級試薬)
検出器:示差屈折計(装置内蔵)
カラム温度:140℃
流速:1.0mL/分
注入量:500μL
サンプリング時間間隔:1秒
試料濃度:0.15%(w/v)
分子量較正:単分散ポリスチレン(東ソー社)/分子量495〜2060万
Z. Crubisic, P. Rempp, H. Benoit, J. Polym. Sci., B5, 753 (1967)に記載された汎用較正の手順に従い、標準ポリエチレン分子量換算として分子量分布曲線を作成した。この分子量分布曲線から成分(A)および成分(B)から生成するポリマー比率ならびに最大重量分率での分子量(peak top M)を算出した。
<極限粘度[η]>
測定サンプル約20mgをデカリン15mLに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5mL追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、下記式(Eq-5)に示すように濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位;dl/g)として求めた。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0) -------- (Eq-5)
<外観(FE)の評価>
エチレン系重合体のペレット、および、エチレン系重合体を溶融混練しプレス成形機で冷却した測定用試料を用いて、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Bに取り付けた小型キャストフィルム成形機にてフィルムを成形して外観を評価した。キャストフィルムは以下の方法で成形した。
キャピログラフ1Bの本体バレル下部に、ダイ幅40mm、リップ幅0.3mmのダイスおよびフィルム冷却用のロールを取り付けた。ダイスと冷却用ロールの距離を10mmとし、フィルム冷却用のロール内部には冷却用空気(室温)を50NL/分の流量で流した。ペレットおよび測定用試料を、200℃、予熱時間6分間で溶融した。予熱終了後、ピストンを50mm/分の速度で降下させ、ダイスより出る溶融ポリマーを冷却ロールに沿わせて巻取機で4.5m/分の速度で巻き取った。ピストンが50mmの位置まで降下したところで外観評価用のサンプルを採取した。
外観評価用のサンプルを目視にて確認し、下記の基準に基づいて評価した。
○:明らかなFEがほとんど見られない
×:明らかなFEが非常に多い
なお、○は外観が良好で好ましいことを示す。
〔合成例1〕成分(A)の合成
下記式(A−1)で示されるジメチルシリレン−1−(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)−1−(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(以下「成分(A−1)」という。)を、特許第5455354号公報記載の方法によって合成した。
Figure 0006574589
〔合成例2〕成分(B)の合成
下記式(B−1)で示されるフェニル−3−ブテニルメチレン(η5−シクロペンタジエニル){η5−(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)}ジルコニウムジクロリド(以下「成分(B−1)」という。)を、J. Mol. Catal. A: Chem. 2001, 165, 23.記載の方法、および特許第5119160号公報記載の方法によって合成した。
Figure 0006574589
〔合成例3〕固体触媒前駆体(X−1)の調製
250℃で10時間乾燥したシリカ(平均粒径=13.4μm、比表面積=781m2/g、細孔容積=1.31mL/g、SiO2=99.7%)5.0kgを112.4Lのトルエンで懸濁状にした後、メチルアルミノキサン溶液(Al=0.74mol/L)25.5Lを30分かけて滴下した。次いで100℃まで昇温し、その温度で2時間反応させた後、60℃まで降温した。次いで、上澄み液をデカンテーション法によって除去し、固体成分をトルエンで3回洗浄した後、トルエンで再懸濁化して固体触媒前駆体(X−1)のトルエンスラリーを得た(全容積65L)。
〔合成例4〕メタロセン化合物の担持による固体触媒成分(Y−1)の調製
充分に窒素置換した反応容器中に、トルエンに懸濁させた合成例3にて調製した固体触媒前駆体(X−1)をアルミニウム原子換算で3.70molを入れ、その懸濁液を撹拌しながら、室温下、(20〜25℃)でジメチルシリレン−1−(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)−1−(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(成分(A−1))7.88(mmol/L)溶液を1L(7.88mmol)加えた。15分後、フェニル−3−ブテニルメチレン(η5−シクロペンタジエニル){η5−(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)}ジルコニウムジクロリド(成分(B−1))4.43(mmol/L)溶液を1リットル(4.43mmol)加えて、さらに60分間撹拌した。次いで、上澄み液をデカンテーション法によって除去し、固体成分をヘキサンで3回洗浄した後、ヘキサンで再懸濁化して固体触媒成分(Y−1)スラリーを得た。
[実施例1]エチレン系重合体(α−1)の合成
内容積340Lの攪拌機付き重合槽に、ヘキサン52(L/hr)、固体触媒成分(Y−1)をジルコニウム原子換算で0.0106(mmol/hr)、エチレン12.2(kg/hr)、水素3.4(N−L/hr)、トリイソブチルアルミニウム11.4(mmol/hr)、アデカプロニックL−71(ADEKA株式会社製、以下「L−71」という。)0.70(g/hr)を連続的に供給し、かつ重合槽内の液レベルが一定になるように重合漕内容物を連続的に抜出しながら、重合温度80℃、反応圧0.65(MPaG)、平均滞留時間2.5hrという条件で重合を行った。
重合槽から抜き出した内容物に対してはメタノールを2(L/hr)で供給し、その後、該内容物中の溶媒および未反応モノマーを溶媒分離装置で除去、乾燥しエチレン系重合体(α−1)を得た。
得られたエチレン系重合体(α−1)パウダーに、エチレン系重合体100重量部に対して、耐熱安定剤としてイルガノックス1010(BASFジャパン株式会社製)0.13重量部、イルガフォス168(BASFジャパン株式会社製)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)0.1重量部を加え、株式会社プラコー製の単軸40mmφ押出機を用い、設定温度190℃、スクリュー回転数80rpmの条件で溶融混練した。その後、ストランド状に押し出し、カットしてエチレン系重合体(α−1)のペレットを得た。得られたペレットを測定用試料として物性測定を行った。また、上述した方法に従って、外観(FE)の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2]エチレン系重合体(α−2)の合成
重合槽に供給する水素を5.4(N−L/hr)に変更したこと以外は、実施例1と同様の条件にて重合を行ない、エチレン系重合体(α−2)を得た。得られたエチレン系重合体(α−2)は実施例1と同様の条件にて溶融混練し、ペレットを得た。得られたペレットの物性測定結果、および外観(FE)の評価結果を表1に示す。
[実施例3]エチレン系重合体(α−3)の合成
重合槽に供給する水素を6.0(N−L/hr)に変更したこと以外は、実施例1と同様の条件にて重合を行ない、エチレン系重合体(α−3)を得た。得られた重合体(α−3)は実施例1と同様の条件にて溶融混練し、ペレットを得た。得られたペレットの物性測定結果、および外観(FE)の評価結果を表1に示す。
[実施例4]エチレン系重合体(α−4)の合成
重合槽に供給する水素を12.0(N−L/hr)に変更したこと以外は、実施例1と同様の条件にて重合を行ない、エチレン系重合体(α−4)を得た。得られた重合体(α−4)は実施例1と同様の条件にて溶融混練し、ペレットを得た。得られたペレットの物性測定結果、および外観(FE)の評価結果を表1に示す。
[実施例5]エチレン系重合体(α−5)の合成
重合槽に供給する水素を12.0(N−L/hr)、L−71を3.50(g/hr)に変更したこと以外は、実施例1と同様の条件にて重合を行ない、エチレン系重合体(α−5)を得た。得られた重合体(α−5)は実施例1と同様の条件にて溶融混練し、ペレットを得た。得られたペレットの物性測定結果、および外観(FE)の評価結果を表1に示す。
〔合成例5〕固体触媒前駆体(X−2)の調製
固体触媒前駆体(X−2)の調製は、国際公開第2010/055652号パンフレットに記載の方法(予備実験1および実施例5)に準じて実施した。ただし、トリメチルアルミニウムの発火等の安全性に配慮して、当該文献に開示されている条件の約1/6倍の濃度で実施した。
具体的には、攪拌装置を有するガラス製反応器に、0.5mol/Lに調整したトリメチルアルミニウムのトルエン溶液100mLを装入した。この溶液を15℃になるまで冷却し、これに安息香酸2.18gを溶液の温度が25℃以下になるような速度でゆっくりと添加した。その後50℃で加熱熟成を1時間行った。この時、トリメチルアルミニウムと安息香酸の酸素原子のモル比は、1.40であった。反応液を70℃で4時間加熱し、さらに60℃で6時間加熱した後、一度室温まで冷却した。次いで100℃で8時間加熱し、固体成分を析出させた。溶液を30℃以下まで冷却した後、洗浄のためにヘキサン100mLを攪拌下に添加した。30分間静置した後、上澄み液150mLを除去し、さらにヘキサン150mLを攪拌下に添加した。15分間静置した後、上澄み液150mLを除去し、さらにヘキサン150mLを攪拌下に添加した。最後に15分間静置した後、上澄み液180mLを除去し、ヘキサンを総量が14.6mLになるように添加し、固体触媒前駆体(X−2)のヘキサンスラリーを得た。得られたスラリーの一部を採取し、濃度を調べたところ、スラリー濃度:41.0g/L、Al濃度:0.583mol/Lであった。また、得られた固体触媒前駆体(X−2)を走査型電子顕微鏡により粒子を観察したところ平均粒子径は6.8μm、比表面積は18.1m2/mmol−Alであった。
〔合成例6〕メタロセン化合物の担持による固体触媒成分(Y−2)の調製
磁気攪拌子を備え、充分に窒素置換した40mLガラス容器に脱水トルエン8.74mLを装入し、合成例5で調製した固体触媒前駆体(X−2)のヘキサンスラリーを6.04mL(Al原子換算で3.54mmol)装入した。次いで、成分(A−1)のトルエン溶液0.62mL(Zr原子換算で0.0083mmol)を滴下装入し、15分後、成分(B−1)のトルエン溶液0.96mL(Zr原子換算で0.0035mmol)を滴下装入した。その後、室温で1時間反応させ、固体触媒成分(Y−2)スラリーを得た。
[実施例6]エチレン系重合体(α−6)の合成
充分に窒素置換した内容積1LのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン500mLを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。ここに、トリイソブチルアルミニウムのデカン溶液(アルミニウム濃度1.0 mol/L)0.15mL、固体触媒成分(Y−2)を固体成分換算で10.0mg装入した後、80℃に昇温して、0.65MPa・Gとなるようにエチレンを連続的に供給し、60分間重合を行った。オートクレーブを冷却および残留ガスをパージして重合を停止した。濾過によりポリマーを回収し、減圧下、80℃で10時間乾燥することにより、エチレン系重合体(α−6)を得た。
得られたエチレン系重合体に、エチレン系重合体100重量部に対して、耐熱安定剤としてイルガノックス1010(BASFジャパン株式会社製)0.13重量部、イルガフォス168(BASFジャパン株式会社製)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)0.1重量部を加え、ラボプラストミル(株式会社東洋精機製作所製)を用い、樹脂温度180℃、回転数50rpm.で5分間溶融混練した。さらに、この溶融ポリマーを、プレス成形機(株式会社神藤金属工業所製)を用い、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kg/cm2の条件にて冷却した。該試料を測定用試料として物性測定を行った。また、上述した方法に従って、外観(FE)の評価を行った。結果を表1に示す。
〔合成例7〕メタロセン化合物の担持による固体触媒成分(Y−3)の調製
磁気攪拌子を備え、充分に窒素置換した40mLガラス容器に脱水トルエン8.74mLを装入し、合成例5で調製した固体状担体(X−2)のヘキサンスラリーを6.02mL(Al原子換算で3.52mmol)装入した。次いで、成分(A−1)のトルエン溶液0.45mL(Zr原子換算で0.0060mmol)を滴下装入し、15分後、成分(B−1)のトルエン溶液1.57mL(Zr原子換算で0.0058mmol)を滴下装入した。その後、室温で1時間反応させ、固体触媒成分(Y−3)スラリーを得た。
[実施例7]エチレン系重合体(α−7)の合成
装入する固体触媒成分として固体触媒成分(Y−3)を固体成分換算で4.0mgに変更したこと以外は、実施例6と同様の条件にて重合を行ない、エチレン系重合体(α−7)を得た。得られたエチレン系重合体(α−7)は実施例6と同様の方法で溶融混練し、測定用試料を得た。該試料の物性測定結果、および外観(FE)の評価結果を表1に示す。
[比較例1]
<固体触媒前駆体(X−3)の調製>
内容積260Lの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、250℃で10時間乾燥したシリカ(SiO2:平均粒子径12μm)10kgを90.5Lのトルエンに懸濁した後、0〜5℃まで冷却した。この懸濁液にメチルアルモキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.0mmol/mL)45.5Lを30分間かけて滴下した。この際、系内の温度を0〜5℃に保った。引き続き0〜5℃で30分間反応させた後、約1.5時間かけて95〜100℃まで昇温して、引き続き95〜100℃で4時間反応させた。その後常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去した。このようにして得られた固体成分をトルエンで2回洗浄した後、トルエンを加えて全量129Lとし、固体触媒前駆体(X−3)のトルエンスラリーを調製した。得られたスラリーの一部を採取し、濃度を調べたところ、スラリー濃度:137.5g/L、Al濃度:1.1mol/Lであった。
<メタロセン化合物の担持による固体触媒成分(Y−4)の調製>
内容積114Lの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン18.6Lと上記で調製した固体触媒前駆体(X−3)のトルエンスラリー7.9L(固体成分で1200g)を添加した。一方、内容積100Lの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン14.5Lを張り込み、攪拌下、前記メタロセン化合物(A−1)のトルエン溶液(Zr原子換算で7.81mmol/L)5.0Lを投入し、続いて下記式(B−2)で示されるメタロセン化合物(B−2)のトルエン溶液(Zr原子換算で2.17mmol/L)2.0Lを投入し、数分間混合した((A−1)/(B−2)のモル比=85/15)。続いて、調製した混合溶液を予め固体触媒前駆体(X−3)のトルエンスラリーを張り込んだ上記反応器に圧送した。圧送後、内温20〜25℃で1時間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去した。このようにして得られた固体成分をヘキサンで3回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量30Lとし、固体触媒成分(Y−4)のヘキサンスラリーを調製した。
Figure 0006574589
<予備重合触媒成分(YP−4)の調製>
引き続き、上記で得られた固体触媒成分(Y−4)のヘキサンスラリーを10℃まで冷却した後、常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給した。この間、系内の温度は10〜15℃に保持した。その後、トリイソブチルアルミニウム1.6molと1−ヘキセン80mLを添加した。1−ヘキセン添加後にエチレンを1.8kg/hで再度供給し予備重合を開始した。予備重合を開始してから25分後に系内温度は24℃まで上昇し、それ以降の系内温度は24〜26℃に保持した。予備重合を開始してから35分後に1−ヘキセン39.0mLを添加、60分後にも1−ヘキセン39.0mLを添加した。
予備重合開始から85分後に、エチレン供給を停止して系内を窒素により置換し、予備重合を停止した。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去した。このようにして得られた固体成分をヘキサンで4回洗浄し、固体触媒成分1g当り2.93gのポリマーが重合された予備重合触媒(YP−4)を得た。得られた予備重合触媒成分の一部を乾燥し、組成を調べたところ、固体触媒成分1g当たりZr原子が0.72mg含まれていた。
<重合>
内容積290Lの完全攪拌混合型重合槽において、上記予備重合触媒成分(YP−4)を用いて、エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造を行った。
重合槽内に、溶媒ヘキサンを45L/hr、予備重合触媒成分(YP−4)をZr原子に換算して0.36mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムを20.0mmol/hr、エチレンを8kg/hr、1−ヘキセンを650g/hrの割合となる様に連続的に供給した。また、重合槽内の溶媒量が一定となる様に重合槽より重合体スラリーを連続的に抜き出し、全圧0.8MPa−G、重合温度80℃、滞留時間2.5hrという条件で重合を行った。重合槽から連続的に抜き出された重合体スラリーは、フラッシュドラムで未反応エチレンが実質的に除去される。その後、重合体スラリー中のヘキサンを溶媒分離装置で除去し、乾燥し、エチレン系重合体(α−8)を5.5kg/hrで得た。なお、比較例1で得られた重合体の製造条件については表2に記載した。
得られたエチレン系重合体(α−8)に、エチレン系重合体100重量部に対して、耐熱安定剤としてIrganox1076(チバスペシャリティケミカルズ)0.1重量部、Irgafos168(チバスペシャリティケミカルズ)0.1重量部を加え、株式会社プラコー社製の単軸65mmφ押出機を用い、設定温度180℃、スクリュー回転数50rpmの条件にて溶融混練した後、ストランド状に押出し、カッターにてペレットとしたものを測定試料とした。該試料を用いて物性測定した結果、および外観(FE)の評価結果を表1に示す。
比較例1は、エチレン系重合体(α−8)のMz/Mnが上記要件(5)の上限値より高いため高分子量成分量が多く、成形体の外観に劣る結果であった。
[比較例2]
<固体触媒成分(Y−5)の調製>
窒素置換した200mLのガラス製フラスコにトルエン50mLを入れ、攪拌下、比較例1で調製した固体触媒前駆体(X−3)のトルエンスラリー(固体部換算で2.0g)を装入した。次に、あらかじめ混合したメタロセン化合物(A−1)のトルエン溶液(Zr原子換算で0.0015mmol/mL)44.0mLとメタロセン化合物(B−2)のトルエン溶液(Zr原子換算で0.0015mmol/mL)1.83mLの混合液を滴下し、室温で1時間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、固体成分をデカンで2回洗浄し、固体触媒成分(Y−5)のデカンスラリーを調製した。固体触媒成分調製時のメタロセン化合物(A−1)と(B−2)の混合モル比は、(A−1)/(B−2)=96/4であった。また、得られた固体触媒成分(Y−5)のデカンスラリーの一部を採取して濃度を調べたところ、Zr濃度0.061mg/mL、Al濃度3.71mg/mLであった。
<重合>
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン500mLを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。次に、水素−エチレン混合ガス(水素濃度:0.1vol%)を用いて系内を置換した後、1−ヘキセン10mL、トリイソブチルアルミニウム0.375mmol、ジルコニウム換算で0.0025ミリモルの固体触媒成分(Y−5)をこの順に装入した。80℃に昇温して、0.78MPa・Gにて90分間重合を行った。得られたポリマーを10時間、真空乾燥し、エチレン系重合体(α−9)46.2gを得た。なお、比較例2で得られた重合体の製造条件に関しては、表3に記載した。
得られたエチレン系重合体(α−9)に、エチレン系重合体100重量部に対して、耐熱安定剤としてIrganox1076(チバスペシャリティケミカルズ)0.1重量部、Irgafos168(チバスペシャリティケミカルズ)0.1重量部を加え、東洋精機製作所製ラボプラストミルを用い、樹脂温度180℃、回転数50rpm.で5分間溶融混練した。さらに、この溶融ポリマーを、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kg/cm2の条件にて冷却した。該試料を用いて物性測定を行った結果、および外観(FE)の評価結果を表1に示す。
比較例2は、エチレン系重合体(α−9)のMz/Mnの値が上記要件(5)の上限値より高いため高分子量成分量が多く、成形体の外観が劣る結果であった。
[比較例3]
<固体触媒成分(Y−6)の調製>
比較例2の固体触媒成分(Y−5)の調製において、固体成分(S−1)のトルエンスラリーの装入量を固体部換算で1.0gとし、かつ、メタロセン化合物(A−1)のトルエン溶液(Zr原子換算で0.002mmol/mL)16.6mL、メタロセン化合物(B−2)のトルエン溶液(Zr原子換算で0.001mmol/mL)2.89mLを使用したこと以外は、比較例2と同様の方法で固体触媒成分(Y−6)のデカンスラリーを調製した。固体触媒成分調製時のメタロセン化合物(A−1)と(B−2)の混合モル比は、(A−1)/(B−2)=92/8であった。また、得られた固体触媒成分(Y−6)のデカンスラリーの一部を採取して濃度を調べたところ、Zr濃度0.058mg/mL、Al濃度3.52mg/mLであった。
<重合>
比較例2の重合において、水素−エチレン混合ガス(水素濃度:0.65vol%)を用い、1−ヘキセン量を3mLに変更し、ジルコニウム換算で0.0026ミリモルの固体触媒成分(Y−6)を用いたこと以外は、比較例2と同様の方法で行った。得られたポリマーを10時間、真空乾燥し、エチレン系重合体(α−10)63.9gを得た。なお、比較例3で得られた重合体の製造条件に関しては、表3に記載した。得られたエチレン系重合体(α−10)を用い、比較例2と同様の方法にて測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定を行った結果、および外観(FE)の評価結果を表1に示す。
比較例3は、エチレン系重合体(α−10)のMz/Mnの値が上記要件(5)の上限値より高いため高分子量成分量が多く、成形体の外観が劣る結果であった。
[比較例4]
日本ポリエチレン株式会社より市販されている高密度ポリエチレン(商品名:ノバテックHB332R)の製品ペレットを測定試料とした。該試料を用いて物性測定を行った結果を表1に示す。比較例4はη0/Mw6.8が上記要件(3)の上限値よりも高いため、成形性に劣る結果であった。
Figure 0006574589
Figure 0006574589
Figure 0006574589

Claims (4)

  1. エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であり、且つ、下記要件(1)〜(5)を同時に満たすエチレン系重合体:
    (1)190℃における2.6kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.01g/10分以上30g/10分以下である;
    (2)密度が945kg/m3以上975kg/m3以下である;
    (3)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の6.8乗(Mw6.8)との比、η0/Mw6.8が、0.005×10-30以上17×10-30以下である;
    (4)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)との比、[η]/Mw0.776が、0.48×10-4以上2.55×10-4以下である;
    (5)GPC−粘度検出器法(GPC−VISCO)により測定されたZ平均分子量(Mz)と数平均分子量(Mn)との比、Mz/Mnが5以上、−20×logMFR+75以下である。
  2. 請求項1に記載のエチレン系重合体を含む熱可塑性樹脂組成物。
  3. 請求項1に記載のエチレン系重合体から得られる成形体。
  4. 請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体。
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