JP2016186020A - エチレン系重合体組成物からなるパイプ成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形性に特に優れ、かつ長期耐久性に優れたエチレン系重合体組成物から得られるパイプ成形体、及びマット調の風合いを有するパイプ成形体及び多層パイプ成形体を提供すること。
【解決手段】本発明に係るパイプ成形体は、エチレンと炭素数4以上10以下のα‐オレフィンとの共重合体である特定のエチレン系重合体(α)と、エチレンと炭素数4以上10以下のα‐オレフィンとの共重合体である別のエチレン系重合体(β)とを含むエチレン系共重合体組成物(γ)からなり、前記組成物(γ)において、前記エチレン系重合体(α)の重量分率〔Wα〕が0.1以上0.9以下であり、前記エチレン系重合体(β)の重量分率〔Wβ〕が0.1以上0.9以下である(WαとWβの合計を1.0とする)。
【選択図】なし

Description

本発明は、従来公知のエチレン系重合体と比較して成形性に特に優れ、かつ長期耐久性及び柔軟性に優れたエチレン系重合体組成物からなるパイプ成形体に関するものである。
エチレン系重合体は、種々の成形方法により成形され、多方面の用途に供されている。例えば高圧ラジカル重合法で重合された高圧法低密度ポリエチレンは、長鎖分岐を有し、加工性に優れることが知られている。エチレンとα−オレフィンとをチーグラー・ナッタ系触媒を用いて重合した線状低密度のエチレン・α−オレフィン共重合体は、引張強度、引裂強度、耐衝撃強度などの機械的強度及び耐ストレスクラック性(ESCR)、パイプの熱間内圧クリープ特性及び耐低速亀裂伸展特性(Slow Crack Growth:SCG)等に代表される長期耐久性に優れることが知られている。エチレンとα−オレフィンとをメタロセン系触媒を用いて重合した線状低密度のエチレン−α−オレフィン共重合体は、衝撃強度及びESCRに極めて優れることが知られている。高密度ポリエチレンは、チーグラー・ナッタ系触媒、クロム系触媒、メタロセン系触媒等を用いてエチレン単独あるいはエチレンとα−オレフィンとを共重合することで得られ、剛性や耐熱性に優れていることが知られている。
一方、エチレン系重合体を用いてパイプ成形体を製造する場合には、パイプ成形法が用いられる。この成形法において成形体を得る場合、重合体の溶融張力が低いと、ダイから押し出されるパイプのたれ下がり(ドローダウン)による変形が激しくなり、パイプ上部の肉厚が下部に比べて薄くなる。また、歪み硬化性を有さない場合、偏肉が大きくなりやすく均一な厚みの成形体を得ることが困難となる事がある。
メタロセン触媒を用いて得られるエチレン系重合体は、引張強度、引裂強度、あるいは耐衝撃強度などの機械的強度及び長期耐久性には優れるが、溶融張力が小さいためドローダウンが大きくなり、パイプ上部と下部で厚みが異なる傾向があった。また、伸長粘度がひずみ速度硬化性を示さないため、パイプの厚み分布が不均一になりやすい傾向がある。
一方、高圧法低密度ポリエチレンは溶融張力が大きいため耐ドローダウン性に優れ、伸長粘度がひずみ速度硬化性を示すため均一な製品厚みのパイプ成形体が得られるが、機械的強度及び長期耐久性に劣る。現在、水道用に使用されている給水用パイプにおいては、継手を使用せず曲げて施工を実施する場合があるために高度な柔軟性が必要とされていると同時に、高圧下で使用するために耐圧性を高めることが必要とされている。また、成形時あるいは施工時に、SCG特性に代表される、パイプ表面に傷が発生しても長期耐久性に優れるポリエチレン管が望まれている。そのため、溶融張力が高く、かつ機械的強度及び長期耐久性にも優れたパイプ成形体の成形に適したエチレン重合体が望まれる。
そこで、溶融張力を改善し、かつ機械的強度を具備させたエチレン系重合体として、メタロセン触媒を用いて得られたエチレン系重合体が特許文献1〜2に、メタロセン触媒を用いて得られたエチレン系重合体と高圧法低密度ポリエチレンとの組成物が特許文献3などに提案されている。しかしながら、メタロセン触媒を用いて得られたエチレン系重合体は溶融張力の向上が十分でないためドローダウンが大きく、伸長粘度がひずみ速度硬化性を示さないため均一な製品厚みのパイプ成形体が得られないことが予想される。また、メタロセン触媒を用いて得られたエチレン系重合体と高圧法低密度ポリエチレンとの組成物は、高圧法低密度ポリエチレンの含有量が多い場合、引張強度、引裂強度あるいは耐衝撃強度などの機械的強度及び長期耐久性に劣ることが予想される。また、高圧法低密度ポリエチレンの含有量が少ない場合には溶融張力の向上が十分でないため、ドローダウンが大きいなど成形性の悪化が予想される。
このような問題を解決するため、メタロセン触媒により長鎖分岐を導入したエチレン系重合体が種々提案されている。特許文献4にはエチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリドとメチルアルミノキサンとからなる触媒の存在下で溶液重合により得られたエチレン系重合体が、特許文献5にはシリカに担持したエチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドとメチルアルミノキサンとからなる触媒の存在下で気相重合により得られたエチレン系重合体が、特許文献6には拘束幾何触媒の存在下で溶液重合により得られたエチレン系重合体が、特許文献7にはシリカに担持したジメチルシリレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリドのラセミ及びメソ異性体とメチルアルミノキサンとからなる触媒の存在下で気相重合により得られたエチレン系重合体が提案されている。特許文献7にはこのような触媒を用いた実施例があり、これらのエチレン系重合体は、長鎖分岐のない直鎖状のエチレン系重合体に比べ溶融張力が向上し、成形性に優れる旨の記載はあるが、溶融張力は依然として不十分でありパイプ成形体に適用した場合にドローダウンが大きいなど成形性の悪化が予想される。
さらに、特許文献8〜9にはゼロせん断粘度と重量平均分子量とが特定の関係を満たすエチレン系重合体も提案されている。このエチレン系重合体は、ゼロせん断粘度と重量平均分子量とが特定の関係を満たすことにより伸長粘度がひずみ速度硬化性を示すため、ドローレゾナンスの抑制等の製品厚みの均一性が改善されている。また、メタロセン触媒を用いて長鎖分岐を導入した従来のエチレン系重合体に比べ成形性が改善されており、フィルム成形体の機械的強度についても、高圧法低密度ポリエチレンに比べ優れている。
特開平6−9724号公報 特開2011−132531号公報 特開2000−355045号公報 特開平2−276807号公報 特開平4−213309号公報 国際公開第93/08221号パンフレット 特開平8−311260号公報 国際公開第2006/080578号パンフレット 特開2008−31382号公報
しかしながら、エチレン系重合体をパイプ成形体及び継手などに用いる場合には、さらなる長期耐久性の改善及び成形性の向上が望まれている。
本発明者らは、上記のような状況に鑑み鋭意研究した結果、特定の溶融特性と分子構造をもつ2種のエチレン系重合体の組成物が、パイプ成形における耐ドローダウン性に特に優れ、かつ、機械的強度及び長期耐久性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、従来公知のエチレン系重合体と比較して成形性に特に優れ、かつ長期耐久性に優れたエチレン系重合体組成物から得られるパイプ成形体を提供することを目的としている。
本発明のエチレン系重合体組成物からなるパイプ成形体は、
エチレンと炭素数4以上10以下のα‐オレフィンとの共重合体であり、且つ、下記要件(1)〜(5)を同時に満たすエチレン系重合体(α)と、
エチレンと炭素数4以上10以下のα‐オレフィンとの共重合体であり、且つ、下記要件(1')〜(3')を同時に満たすエチレン系重合体(β)とを含むエチレン系共重合体組成物(γ)からなる層を少なくとも1層含むパイプ成形体であって、
前記組成物(γ)において、前記エチレン系重合体(α)の重量分率〔Wα〕が0.1以上0.9以下であり、前記エチレン系重合体(β)の重量分率〔Wβ〕が0.1以上0.9以下であり(WαとWβの合計を1.0とする)、密度が875kg/m3以上935kg/m3以下であることを特徴とする。
エチレン系重合体(α):
(1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.01g/5分以上10g/10分以下である;
(2)密度が875kg/m3以上945kg/m3以下である;
(3)13C−NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル(Me)分岐数〔Me(/1000C)〕とエチル(Et)分岐数〔Et(/1000C)〕との和〔(Me+Et)(/1000C)〕が1.80以下である;
(4)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕と、GPC‐粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)の6.8乗(Mw6.8)の比、η0/Mw6.8が、0.03×10-30以上7.5×10-30以下である;
(5)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC‐粘度検出器法(GPC‐VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、0.90×10-4以上1.65×10-4以下である;
エチレン系重合体(β):
(1')190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1g/10分以上10g/10分以下である;
(2')13C−NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル(Me)分岐数〔Me(/1000C)〕とエチル(Et)分岐数〔Et(/1000C)〕との和〔(Me+Et)(/1000C)〕が1.80以下である;
(3')135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC‐粘度検出器法(GPC‐VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、1.90×10-4以上2.80×10-4以下である。
ここで、本発明のパイプ成形体において、エチレン系重合体組成物(γ)は、190℃における溶融張力〔MTγ(g)〕と、前記エチレン系重合体(α)の溶融張力〔MTα(g)〕、前記エチレン系重合体(β)の溶融張力〔MTβ(g)〕、前記Wα及びWβとが、下記関係式(Eq-1-1)を満たすことが好ましい。
1.2<MTγ/(MTα×Wα+MTβ×Wβ)≦3.0 …(Eq-1-1)
また、前記エチレン系重合体組成物(γ)は、前記エチレン系重合体(α)及び前記エチレン重合体(β)の他に、前記エチレン系重合体(α)及び前記エチレン重合体(β)のいずれでもない熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
本発明のパイプ成形体は、上記エチレン系重合体組成物(γ)を成形して得ることができる。
また、本発明の多層パイプ成形体は、少なくとも1層が、上記エチレン系重合体組成物(γ)からなる層から形成されている。
本発明によれば、成形性及び長期耐久性に特に優れるエチレン系重合体組成物からなるパイプ成形体及び多層パイプ成形体を製造することができる。
以下、本発明に用いるエチレン系重合体組成物(γ)について、その構成成分であるエチレン系重合体(α)及びエチレン系重合体(β)とともに具体的に説明する。
<構成成分>
エチレン系重合体(α)
本発明に係るエチレン系重合体(α)は、エチレンと炭素数4以上10以下のα‐オレフィン、好ましくはエチレンと炭素数6〜10のα‐オレフィンとの共重合体である。炭素数4のα‐オレフィンを使用する場合には、炭素数6〜10のα‐オレフィンもあわせて使用することが好ましい。エチレンとの共重合に用いられる炭素数4〜10のα‐オレフィンとしては、1‐ブテン、1‐ヘキセン、4‐メチル‐1‐ペンテン、1‐オクテン、1‐デセンなどが挙げられる。
本発明に係るエチレン系重合体(α)は下記要件(1)〜(5)に示す特性を有している。
(1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.01g/10分以上10g/10分以下である。下限は好ましくは0.05g/10分、より好ましくは0.1g/10分であり、上限は好ましくは5g/10分、より好ましくは2g/10分である。メルトフローレート(MFR)が上記下限値以上の場合、後述のエチレン系重合体(β)を含むエチレン重合体組成物(γ)においてせん断粘度が高すぎず、成形性が良好である。メルトフローレート(MFR)が上記上限値以下の場合、エチレン重合体組成物(γ)の耐ドローダウン性及び長期耐久性が良好になる。
メルトフローレート(MFR)は分子量に強く依存しており、メルトフローレート(MFR)が小さいほど分子量は大きく、メルトフローレート(MFR)が大きいほど分子量は小さくなる。また、エチレン系重合体(α)の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、曽我和雄他編、「Catalytic Olefin Polymerization」、講談社サイエンティフィク、1990年、p.376)。このため、水素/エチレンを増減させることで、エチレン系重合体(α)のメルトフローレート(MFR)を増減させることが可能である。
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238‐89に従い、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定される。
なお、エチレン系重合体(α)についての上記MFRは、後述するエチレン系重合体(β)についてのMFRとの区別のため、「MFRα」と呼ぶ場合がある。
(2)密度が875kg/m3以上945kg/m3以下である。下限は好ましくは885kg/m3、より好ましくは900kg/m3、さらに好ましくは910kg/m3あり、上限は好ましくは930kg/m3、より好ましくは927kg/m3である。密度が上記下限値以上の場合、後述のエチレン系重合体(β)を含むエチレン重合体組成物(γ)から成形されたパイプ成形体の剛性が向上することから耐圧性が向上し、密度が上記上限値以下の場合、エチレン重合体組成物(γ)から成形されたパイプ成形体の長期耐久性が良好となる。
本発明に係るエチレン系重合体(α)の密度は、エチレン系重合体(α)のα‐オレフィン含量に依存しており、α‐オレフィン含量が少ないほど密度は高く、α‐オレフィン含量が多いほど密度は低くなる。また、エチレン系重合体中のα‐オレフィン含量は、重合系内におけるα‐オレフィンとエチレンとの組成比(α‐オレフィン/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、Walter Kaminsky, Makromol.Chem. 193, p.606(1992))。このため、α‐オレフィン/エチレンを増減させることで、上記範囲の密度を有するエチレン系重合体を製造することができる。
本発明に係るエチレン系重合体(α)の密度の測定は、JIS K7112に準拠し、MFR測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定した。
(3)13C−NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル分岐数〔Me(/1000C)〕とエチル分岐数〔Et(/1000C)〕との和〔(Me+Et)(/1000C)〕が1.80以下、好ましくは1.30以下、より好ましくは1.00以下である。なお、本発明で定義したメチル分岐数及びエチル分岐数は、後述するように1000カーボン当たりの数で定義される。
エチレン系重合体中にメチル分岐、エチル分岐などの短鎖分岐が存在すると、短鎖分岐が結晶中に取り込まれ、結晶の面間隔が広がってしまうため、樹脂の機械的強度が低下することが知られている(例えば、大澤善次郎他監修、「高分子の寿命予測と長寿命化技術」、(株)エヌ・ティー・エス、2002年、p.481)。そのため、メチル分岐数とエチル分岐数との和(A+B)が1.8以下の場合、エチレン重合体組成物(γ)の機械的強度及び長期耐久性が良好である。
本発明に係るエチレン系重合体(α)中のメチル分岐数、エチル分岐数はエチレン系重合体の重合方法に強く依存し、高圧ラジカル重合により得られたエチレン系重合体は、チーグラー型触媒を用いた配位重合により得られたエチレン系重合体に比べ、メチル分岐数、エチル分岐数が多い。配位重合の場合、エチレン系重合体中のメチル分岐数、エチル分岐数は、重合系内におけるプロピレン、1−ブテンとエチレンとの組成比(プロピレン/エチレン、1−ブテン/エチレン)に強く依存する。このため、1−ブテン/エチレンを増減させることで、エチレン系重合体のメチル分岐数とエチル分岐数の和(A+B)を増減させることが可能である。
13C-NMRにより測定されたメチル分岐数及びエチル分岐数は下記のように決定される。
測定はブルカー・バイオスピン(株)製AVANCE III cryo-500型核磁気共鳴装置を用い、以下の条件にて実施した。
測定プローブ:5mmクライオプローブ(DCH型)
測定核:13C(125MHz)
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:45°(5.00μ秒)
ポイント数:64k
観測範囲:250ppm(-55〜195ppm)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:256回
測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/ベンゼン-d6(4/1 v/v)
試料濃度:60mg/0.6ml
測定温度:120℃
ウィンドウ関数:exponential(BF:1.0 Hz)
ケミカルシフト基準:δδシグナル 29.73ppm
NMRスペクトルにおける各吸収の帰属は、化学領域増刊141号 NMR−総説と実験ガイド[I]、p.132〜133に準じて行った。1,000カーボン当たりのメチル分岐数、すなわち、エチレン系重合体の重合体鎖を構成する炭素原子1000個当たりのメチル分岐数は、5〜45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対する、メチル分岐由来のメチル基の吸収(19.7ppm)の積分強度比より算出する。また、エチル分岐数は、5〜45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対するエチル分岐由来のメチル基の吸収(10.8ppm)の積分強度比より算出する。
(4)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の6.8乗(Mw6.8)の比、η0/Mw6.8が、0.03×10-30以上7.5×10-30である。すなわち、本発明で用いられるエチレン系重合体(α)では、η0とMwが下記式(Eq-2)
0.03×10-30≦η0/Mw6.8≦7.5×10-30 --------(Eq-2)
を満たす。ここで、下限値は好ましくは0.05×10‐30、より好ましくは0.08×10-30であり、上限値は好ましくは5.0×10-30、より好ましくは3.0×10-30である。
η0/Mw6.8が、0.03×10-30以上7.5×10-30以下であることは、η0とMwを両対数プロットした際に、log(η0)とlogMwが下記式(Eq-2')で規定される領域に存在することと同義である。
6.8Log(Mw)-31.523≦Log(η0)≦6.8Log(Mw)-29.125 --------(Eq-2')
重量平均分子量(Mw)に対してゼロせん断粘度〔η0(P)〕を両対数プロットしたとき、長鎖分岐がなく直鎖状で、伸長粘度がひずみ硬化性を示さないエチレン系重合体は、傾きが3.4のべき乗則に則る。一方、比較的短い長鎖分岐を数多く有し、伸長粘度がひずみ速度硬化性を示すエチレン系重合体は、べき乗則よりも低いゼロせん断粘度〔η0(P)〕を示し、さらにその傾きは3.4よりも大きな値となることが知られており(C Gabriel, H.Munstedt, J.Rheol., 47(3), 619(2003)、H. Munstedt, D.Auhl, J. Non-Newtonian Fluid Mech. 128, 62-69, (2005) )、傾き6.8は経験的に選択しうる。η0とMw6.8との比をとることについては特開2011-1545号公報にも開示されている。
本発明に係るエチレン系重合体(α)の200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕が7.5×10-30×Mw6.8以下の場合、後述のエチレン系重合体(β)を含むエチレン系重合体組成物(γ)から得られるパイプ成形体において偏肉が小さく均一な厚みの製品となる。
さらに、η0/Mw6.8が上記範囲の場合、エチレン系重合体(α)から得られるパイプ成形体、及びエチレン系重合体組成物(γ)から得られるパイプ成形体の外観がマット調になるという効果がある。外観がマット調のパイプ成形体は、引っ掻き傷・擦れ傷がパイプ成形体に発生した際に、外観が光沢であるパイプ成形体よりも傷が目立ちにくい特徴を有する。このようなマット調の効果が発現する理由は次のように推測される。
エチレン系重合体組成物(γ)などの溶融物がダイスに流入すると、伸張流によって伸張応力が発生する。この伸張応力が臨界値を越えると脆性的に破断が生じ、メルトフラクチャーと呼ばれるダイス出口での不安定流動が発生し、得られる成形体表面に微小な凹凸が形成される(F.N. Cogswell, Polymer Melt Rheology, Wiley, 1981)。一般的なメルトフラクチャーは縞状になり外観不良の原因となるが、本発明に係るエチレン系重合体組成物(γ)から得られるパイプ成形体のメルトフラクチャーは非常に微小なため、外観が高級感のあるマット調になると推測される。
η0/Mw6.8が上記範囲にあると、一般的な成形加工でのひずみ速度において伸張応力が大きくなり、メルトフラクチャーが発生する。このメルトフラクチャーによりパイプ成形体の表面に微小な凹凸が形成されるため、得られるパイプ成形体の外観がマット調となる。
伸張応力は長鎖分岐の数と長さの影響を強く受けることが知られており、数が多いほど、長さが長いほど伸張応力は大きくなる。η0/Mw6.8が上限値を超えると長鎖分岐の数が不足する傾向となり、下限値を下回ると長鎖分岐の長さが不足する傾向となっていると考えられる。
ゼロせん断粘度〔η0(P)〕と重量平均分子量(Mw)との関係は、エチレン系重合体中の長鎖分岐の含量及び長さに依存していると考えられ、長鎖分岐含量が多いほど、また長鎖分岐の長さが短いほどゼロせん断粘度〔η0(P)〕は請求範囲下限に近い値を示し、長鎖分岐含量が少ないほど、また長鎖分岐の長さが長いほどゼロせん断粘度〔η0(P)〕は請求範囲上限に近い値を示すと考えられる。
ここで、長鎖分岐とはエチレン系重合体中に含まれる絡み合い点間分子量(Me)以上の長さの分岐構造と定義され、長鎖分岐の導入によりエチレン系重合体の溶融物性、及び成形加工性は著しく変化することが知られている(例えば、松浦一雄他編、「ポリエチレン技術読本」、工業調査会、2001年、p.32, 36)。後述のように本発明に係るエチレン系重合体(α)は、例えば、後記「エチレン系重合体(α)製造用触媒」の項で後述する成分(A)、成分(B)、成分(C)を含むオレフィン重合用触媒の存在下、エチレンと、炭素数4以上10以下のα‐オレフィンとを重合することによって製造することができる。
本発明に係るエチレン系重合体(α)が生成する機構において、本発明者らは、成分(A)と成分(C)、ならびに必要に応じて、後記「エチレン系重合体(α)製造用触媒」の項で後述する固体状担体(S)を含むオレフィン重合用触媒成分の存在下で、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとを共重合させることによって数平均分子量4000以上20000以下、好ましくは4000以上15000以下の末端ビニルを有する重合体である「マクロモノマー」を生成させ、次いで、成分(B)と成分(C)、ならびに必要に応じて固体状担体(S)を含むオレフィン重合用触媒成分により、エチレン及び炭素数4以上10以下のα−オレフィンの重合と競争的に該マクロモノマーを共重合させることにより、エチレン系重合体(α)中に長鎖分岐が生成すると推定している。
重合系中のマクロモノマーとエチレンとの組成比([マクロモノマー]/[エチレン])が高いほど長鎖分岐含量が多くなる。オレフィン重合用触媒中の成分(A)の比率、すなわち、成分(A)及び成分(B)の合計に対する、成分(A)のモル比([A]/[A+B])を高くすることで[マクロモノマー]/[エチレン]を高くできることから、([A]/[A+B])を高くすることで長鎖分岐含量は多くなる。また、重合系中の水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)を高くするとマクロモノマーの分子量が小さくなる為、エチレン系重合体中に導入される長鎖分岐の長さは短くなる。
このことから、[A]/[A+B]、及び水素/エチレンを増減させることで、上記範囲のη0/Mw6.8を有するエチレン系重合体を製造することができる。
これらのほか、長鎖分岐量を制御する重合条件について例えば国際公開第2007/034920号パンフレットに開示されている。
200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕は以下のようにして求める。
測定温度200℃におけるせん断粘度(η*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.01≦ω≦100の範囲で測定する。測定にはアントンパール社製粘弾性測定装置Physica MCR301を用いる。サンプルホルダーは25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みは約2.0mmとした。測定点はω一桁当たり5点とする。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3〜10%の範囲で適宜選択する。せん断粘度測定に用いたサンプルは、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kgf/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kgf/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することで調製する。
ゼロせん断粘度η0は、下記数式(Eq-3)のCarreauモデルを非線形最小二乗法により実測のレオロジー曲線〔せん断粘度(η*)の角速度(ω)分散〕にフィッティングさせることで算出する。
η*=η0〔1+(λω)a(n-1)/a ---(Eq-3)
ここで、λは時間の次元を持つパラメーター、nは材料の冪法則係数(power law index)を表す。なお、非線形最小二乗法によるフィッティングは下記数式(Eq-4)におけるdが最小となるよう行われる。
Figure 2016186020
ここで、ηexp(ω)は実測のせん断粘度、ηcalc(ω)はCarreauモデルより算出したせん断粘度を表す。
GPC-VISCO法による重量平均分子量(Mw)は、ウォーターズ社製GC/V2000を用いて、以下のようにして測定する。
ガードカラムにはShodex AT-Gを用い、分析カラムにはAT-806MSを2本使用し、検出器として示差屈折計及び3キャピラリー粘度計を用いる。カラム温度は145℃とし、移動相には、酸化防止剤としてBHT0.3重量%含むo-ジクロロベンゼンを用い、流速を1.0ml/分とし、試料濃度は0.1重量%とする。標準ポリスチレンは、東ソー社製を用いる。分子量計算は、粘度計と屈折計から実測粘度を算出し、実測ユニバーサルキャリブレーションより重量平均分子量(Mw)を算出する。
(5)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC‐粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、0.90×10-4以上1.65×10-4以下である。すなわち、本発明で用いられるエチレン系重合体(α)では、[η]とMwが下記式(Eq-5)
0.90×10-4≦[η]/Mw0.776≦1.65×10-4 --------(Eq-5)
を満たす。ここで、下限値は好ましくは0.95×10-4、より好ましくは1.00×10-4であり、上限値は好ましくは1.55×10-4、より好ましくは1.45×10-4である。
[η]/Mw0.776が、0.90×10-4以上1.65×10-4以下であることは、[η]とMwを両対数プロットした際に、log([η])とlog(Mw)が下記式(Eq-5')で規定される領域に存在することと同義である。
0.776Log(Mw)-4.046≦Log([η])≦0.776Log(Mw)-3.783 --------(Eq-5')
エチレン系重合体中に長鎖分岐が導入されると、長鎖分岐の無い直鎖型エチレン系重合体に比べ、分子量の割に極限粘度[η](dl/g)が小さくなることが知られている(例えばWalther Burchard, ADVANCES IN POLYMER SCIENCE, 143, Branched PolymerII, p.137(1999))。
また、Mark-Houwink-桜田式に基づき、ポリエチレンの[η]は粘度平均分子量(Mv)の0.7乗、ポリプロピレンの[η]はMwの0.80乗、ポリ−4−メチル−1−ペンテンの[η]は数平均分子量(Mn)の0.81乗に比例することが報告されている(例えばR. Chiang, J. Polym. Sci., 36, 91(1959): P.94、R. Chiang, J. Polym. Sci., 28, 235 (1958): P.237、A. S. Hoffman, B. A. Fries and P. C. Condit, J. Polym. Sci. Part C, 4, 109 (1963): P.119 Fig. 4)。
そして、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体の代表的な指標としてMwの0.776乗を設定することとし、従来のエチレン系重合体に比べて分子量の割に[η]が小さいことを表したのが前記した要件(5)であり、この考え方は特許文献7に開示されている。
よって、本発明に係るエチレン系重合体(α)の[η]/Mw0.776が上記上限値以下、特に1.65×10-4以下の場合はエチレン系重合体(α)は多数の長鎖分岐を有しており、得られるエチレン系重合体組成物(γ)の成形性、流動性が優れる。
前述のようにオレフィン重合用触媒中の成分(A)の比率([A]/[A+B])を高くすることで長鎖分岐含量は多くなることから、[A]/[A+B]を増減させることで、請求範囲の極限粘度[η]を有するエチレン系重合体(α)を製造することができる。
なお、極限粘度[η] (dl/g)はデカリン溶媒を用い、以下のように測定した。
サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/C値を極限粘度[η]とした。(下式(Eq-6)参照)
[η]=lim(ηsp/C) (C→0) ----------(Eq-6)
本発明に係るエチレン系重合体(α)は、上記要件(1)〜(5)に加えて、下記要件(6)をさらに満たすことが好ましい。
(6)190℃における溶融張力〔MTα(g)〕と、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η*(P)〕との比〔MTα/η*(g/P)〕が1.0×10-4以上7.0×10-4以下である。すなわち、本発明で用いられるエチレン系重合体(α)では、MTαとη*が下記式(Eq-7)
1.0×10-4≦MTα/η*≦7.0×10-4 --------(Eq-7)
を満たすことが好ましい。ここで、上限値は好ましくは5.0×10-4、より好ましくは3.0×10-4である。
〔MTα/η*(g/P)〕は単位せん断粘度あたりの溶融張力を示し、この値が大きいと、せん断粘度の割に溶融張力が大きくなる。すなわち〔MTα/η*(g/P)〕が下限値以上の場合、得られるエチレン重合体組成物(γ)において押出特性と耐ドローダウン性が良好となる。また、〔MTα/η*(g/P)〕が上限値以下の場合、得られるエチレン重合体組成物(γ)において高速成形性が良好となる。
MT/η*はエチレン系重合体の長鎖分岐含量に依存すると考えられており、長鎖分岐含量が多いほどMT/η*は大きく、長鎖分岐含量が少ないほどMT/η*は小さくなる傾向がある。
前述のようにオレフィン重合用触媒中の成分(A)の比率([A]/[A+B])を高くすることで長鎖分岐含量は多くなることから、[A]/[A+B]を増減させることで、上記範囲のMTα/η*を有するエチレン系重合体(α)を製造することができる。
溶融張力(MT)は、溶融されたポリマーを一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定される。測定には東洋精機製作所社製キャピラリーレオメーター:キャピログラフ1Bを用いた。条件としては、樹脂温度190℃、溶融時間6分、バレル径9.55mmφ、押し出し速度15mm/分、巻取り速度24m/分(溶融フィラメントが切れてしまう場合には、巻取り速度を5m/分ずつ低下させる)、ノズル径2.095mmφ、ノズル長さ8mmで行う。
また、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度(η*)は、測定温度200℃におけるせん断粘度(η*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.01≦ω≦100の範囲で測定する。測定にはアントンパール社製粘弾性測定装置Physica MCR301を用いる。サンプルホルダーは25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みは約2.0mmとする。測定点はω一桁当たり5点とする。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3〜10%の範囲で適宜選択する。せん断粘度測定に用いたサンプルは、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kgf/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kgf/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することで調製する。
本発明に係るエチレン系重合体(α)は、さらに下記要件(7)を満たすことが好ましい。
(7)GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が1.0×104.20以上1.0×104.60以下である。下限値は好ましくは1.0×104.30、上限値は好ましくは1.0×104.50である。
エチレン系重合体の機械的強度には、低分子量成分が強く影響を及ぼすことが知られている。低分子量成分が存在すると、破壊の起点になると考えられている分子末端が増加するため、機械的強度が低下すると考えられている(松浦一雄・三上尚孝編著、「ポリエチレン技術読本」、株式会社工業調査会、2001年、p.45)。GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が1.0×104.20以上の場合、機械的強度に悪影響を及ぼす低分子量成分が少ないため、機械的強度に優れる。
GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、曽我和雄他編、「Catalytic Olefin Polymerization」、講談社サイエンティフィク、1990年、p.376)。このため、水素/エチレンを増減させることで、分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)を増減させることが可能である。
分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)は、ウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフ allianceGPC2000型(高温サイズ排除クロマトグラフ)を用い、以下のようにして算出する。
[使用装置及び条件]
解析ソフト:クロマトグラフィデータシステムEmpower(Waters社)
カラム:TSKgel GMH6- HT×2+TSKgel GMH6-HTL×2
(内径7.5mm×長さ30cm,東ソー社)
移動相:o−ジクロロベンゼン(和光純薬 特級試薬)
検出器:示差屈折計(装置内蔵)
カラム温度:140℃
流速:1.0mL/分
注入量:500μL
サンプリング時間間隔:1秒
試料濃度:0.15%(w/v)
分子量較正:単分散ポリスチレン(東ソー社)/分子量495〜分子量2060万
Z. Crubisic, P. Rempp, H. Benoit, J. Polym. Sci., B5, 753 (1967) に記載された汎用較正の手順に従い、ポリエチレン分子量換算として分子量分布曲線を作成する。この分子量分布曲線から最大重量分率での分子量(peak top M)を算出する。
エチレン系重合体(β)
本発明に係るエチレン系重合体(β)は、エチレンと炭素数4以上10以下のα‐オレフィン、好ましくはエチレンと炭素数6〜10のα‐オレフィンとの共重合体である。炭素数4のα-オレフィンを使用する場合には、炭素数6〜10のα‐オレフィンもあわせて使用することが好ましい。エチレンとの共重合に用いられる炭素数4〜10のα‐オレフィンとしては、1‐ブテン、1‐ヘキセン、4‐メチル‐1‐ペンテン、1‐オクテン、1‐デセンなどが挙げられる。
本発明に係るエチレン系重合体(β)は下記要件(1')〜(3')に示す特性を有している。
(1')190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1g/10分以上10g/10分以下である。ここで、下限値は好ましくは0.3g/10分、より好ましくは0.5g/10分であり、上限値は好ましくは8.0g/10分、より好ましくは5.0g/10分である。メルトフローレート(MFR)が上記下限値以上の場合、得られるエチレン重合体組成物(γ)から得られたパイプ成形体のブツ等の外観が良好である。メルトフローレート(MFR)が上記上限値以下の場合、得られるエチレン重合体組成物(γ)の溶融張力が高く耐ドローダウン性等の成形性及び長期耐久性が良好になる。
なお、本発明に係るエチレン系重合体(β)についての上記MFRは、上記エチレン系重合体(α)についてのMFRとの区別のため、「MFRβ」と呼ぶ場合がある。
(2')13C−NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル(Me)分岐数〔Me(/1000C)〕とエチル(Et)分岐数〔Et(/1000C)〕との和〔(Me+Et)(/1000C)〕が1.80以下、好ましくは1.30以下、より好ましくは1.00以下である。メチル分岐数とエチル分岐数との和(A+B)が上記数値以下の場合、得られるエチレン重合体組成物(γ)の機械的強度及び長期耐久性が良好である。
(3')135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、1.90×10-4以上2.80×10-4以下である。すなわち、本発明に係るエチレン系重合体(β)では、[η]とMwが下記式(Eq-8)
1.90×10-4≦[η]/Mw0.776≦2.80×10-4 --------(Eq-8)
を満たす。
[η]/Mw0.776が、1.90×10-4以上2.80×10-4以下であることは、[η]とMwを両対数プロットした際に、log([η])とlog(Mw)が下記式(Eq-8')で規定される領域に存在することと同義である。
0.776Log(Mw)-3.721≦Log([η])≦0.776Log(Mw)-3.553 --------(Eq-8')
前述のとおり、エチレン系重合体中に長鎖分岐が存在しないと、長鎖分岐を有するエチレン系重合体と比較して分子量の割に極限粘度[η](dl/g)が大きくなることが知られている。そのため、[η]/Mw0.776が1.90×10-4以上のエチレン系重合体は実質的に長鎖分岐の存在しない直鎖状のエチレン系重合体である。このようなエチレン系重合体を含む本発明では、得られるエチレン系重合体組成物(γ)の溶融張力が向上し、成形性に優れる。
本発明に係るエチレン系重合体(β)は、上記要件(1')〜(3')に加えて、下記要件(4')をさらに満たすことが好ましい。
(4')密度が875kg/m3以上970kg/m3以下である。ここで、下限値は好ましくは885kg/m3であり、上限値は好ましくは950kg/m3、より好ましくは940kg/m3、さらに好ましくは930kg/m3である。密度が上記下限値以上の場合、本発明に係るエチレン系重合体(β)を含むエチレン重合体組成物(γ)から成形されたパイプ成形体の剛性が向上することから耐圧性が向上し、密度が上記上限値以下の場合、エチレン重合体組成物(γ)から成形されたパイプ成形体の長期耐久性が良好となる。
<エチレン系重合体組成物(γ)>
本発明に係るエチレン系重合体組成物(γ)は、
上記エチレン系重合体(α)と、上記エチレン系重合体(β)を含み、
前記エチレン系重合体(α)の重量分率〔Wα〕と前記エチレン系重合体(β)の重量分率〔Wβ〕との合計を1.0として、Wαが0.1以上0.9以下であり、Wβが0.1以上0.9以下である。ここで、Wαは、好ましくは0.2以上0.8以下、より好ましくは0.3以上0.7以下である。該範囲内において、エチレン系重合体組成物(γ)の成型加工性とパイプ成形体の長期耐久性のバランスが優れる。
なお、本発明に係るエチレン系重合体組成物(γ)は、二種以上の上記エチレン系重合体(α)あるいは二種以上の上記エチレン系重合体(β)のエチレン系重合体を含んでいてもよい。
また、本発明に係るエチレン系重合体組成物(γ)の190℃における溶融張力〔MTγ(g)〕と、前記エチレン系重合体(α)の溶融張力〔MTα(g)〕、前記エチレン系重合体(β)の溶融張力〔MTβ(g)〕、前記Wα及びWβとが、下記式(Eq-1-1)を満たすことが好ましい。
1.2<MTγ/(MTα×Wα+MTβ×Wβ)≦3.0 …(Eq-1-1)
ここで、前記Wα及びWβは、下記式(Eq-1-2)を満たすことが、より好ましく、
1.2<MTγ/(MTα×Wα+MTβ×Wβ)≦2.8 …(Eq-1-2)
下記式(Eq-1-3)を満たすことが、さらに好ましい。
1.2<MTγ/(MTα×Wα+MTβ×Wβ)≦2.5 …(Eq-1-3)
上記式(Eq-1-1)〜(Eq-1-3)は、いずれも、本発明の好適な態様において、エチレン系重合体組成物(γ)の溶融張力(MTγ)は、溶融張力(MT)について重量分率による加成性が成立すると仮定して各構成成分のMTから求められる値の1.2倍よりも大きくなることを示している。MTγが大きいと耐ドローダウン性に優れる傾向がある。一方、MTγが上記上限値を超すと、得られたパイプ成形体の長期耐久性が悪化する傾向がある。
また、成分βのMFRが成分αのMFRに対して小さいほど、すなわち、MFRβ/MFRαが小さいほど、(MTα×Wα+MTβ×Wβ)に対するMTγの値が大きくなる傾向が認められる。MFRβ/MFRαは0.01以上30以下であることが好ましい。ここで、下限値はより好ましくは0.1、さらに好ましくは0.2、上限値はより好ましくは16、さらに好ましくは10である。
MFRβ/MFRαが上記下限値以上の場合、エチレン重合体組成物(γ)から得られたパイプ成形体のブツが少なく外観が良好である。MFRβ/MFRαが上記上限値以下の場合、エチレン重合体組成物(γ)の溶融張力が高く耐ドローダウン性などの成形性が良好になる。
MTは伸張変形における分子鎖の緩和に強く影響を受けることが知られており、分子鎖が緩和しにくいほどMTは大きくなる傾向となる。
前述のとおり、本発明に係るエチレン系重合体(α)は、[η]とMwとが特定の関係を満たし、長鎖分岐を有していると考えられる。本願発明者らは、本発明に係るエチレン系重合体(α)が本発明に係るエチレン系重合体(β)と共存することなく単独で存在している場合、エチレン系重合体(α)において長鎖分岐を有する分子鎖同士の強固な絡み合いは立体的障害のため形成されないと考えている。代わりに、長鎖分岐を有する分子鎖同士の緩い絡み合いや、長鎖分岐を有する分子鎖と当該長鎖分岐を有する分子鎖と共に含まれているであろう長鎖分岐を有さない低分子量体(MFR≧100g/10分)との絡み合いが主として形成され、これらがエチレン系重合体(α)において最も緩和しにくい成分になっていると考えている。
そして、本発明に係るエチレン系重合体(α)に特定のMFRを有するエチレン系重合体(β)をブレンドすると、エチレン系重合体(α)の長鎖分岐を有する分子鎖と、エチレン系重合体(β)の直鎖状の分子鎖との絡み合いが新たに形成され、これが最も緩和しにくい成分となり、このため、エチレン系重合体組成物(γ)のMTは、驚くべきことに、溶融張力についての加成性に基づいてエチレン系重合体(α)のMTとエチレン系重合体(β)のMTから求められる値よりも著しく大きくなると考えられる。エチレン系重合体(α)にも、エチレン系重合体(β)を構成する直鎖状の重合体成分と同様の成分が共存している可能性を否定するには到らないものの、その割合は比較的低く、長鎖分岐を有する分子鎖と直鎖状の分子鎖との絡み合いによる上記の効果が顕在化しにくいと考えられる。
さらに驚くべきことには、本発明に係るエチレン系重合体(α)に本発明に係るエチレン系重合体(β)をブレンドしたエチレン系重合体組成物(γ)から得られるパイプ成形体はマット調の外観となる。これは、特定の構造を有するエチレン系重合体(α)とエチレン系重合体(β)の分子鎖同士の絡み合いが影響していると考えられる。
また、本発明に係るエチレン系重合体組成物(γ)は密度が875kg/m3以上935kg/m3以下である。密度の下限は好ましくは885kg/m3、より好ましくは900kg/m3、さらに好ましくは910kg/m3あり、密度の上限は好ましくは930kg/m3である。密度が上記下限値以上の場合、エチレン重合体組成物(γ)から成形されたパイプ成形体の剛性が向上することから耐圧性が向上し、密度が上記上限値以下の場合、エチレン重合体組成物(γ)から成形されたパイプ成形体の長期耐久性が良好となる。
本発明に係るエチレン系重合体組成物(γ)は、さらに下記要件(4')を満たすことが好ましい。
(4') 全周ノッチ式引張クリープ試験の破壊時間が200時間以上、好ましくは300時間以上である。全周ノッチ式引張クリープ試験はSCG特性の指標のひとつであり、全周ノッチ式引張クリープ試験の破壊時間が上記範囲を満たさない場合、パイプ成形体における耐久性が劣る恐れがあるので好ましくない。
また、本発明に係るエチレン系重合体組成物(γ)は、実質的に上記エチレン系重合体(α)及び上記エチレン系重合体(β)のみからなるものであっても良いが、これに限られるものではなく、上記エチレン系重合体(α)及び上記エチレン系重合体(β)に加えて、上記エチレン系重合体(α)及び上記エチレン重合体(β)のいずれでもない熱可塑性樹脂(以下、「他の熱可塑性樹脂」)を含むことができる。上記エチレン系重合体(α)及び上記エチレン系重合体(β)に対して「他の熱可塑性樹脂」をブレンドすることにより熱可塑性樹脂組成物として得られるエチレン系重合体組成物(γ)は、成形性に優れ、かつ機械的強度に優れる。上記エチレン系重合体(α)及び上記エチレン系重合体(β)の合計と、「他の熱可塑性樹脂」とのブレンド比率は、99.9/0.1〜0.1/99.9、好ましくは90/10〜10/90、さらに好ましくは70/30〜30/70である。
他の熱可塑性樹脂
上記エチレン系重合体組成物(γ)においてブレンドしうる「他の熱可塑性樹脂」としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリアセタールなどの結晶性熱可塑性樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアクリレートなどの非結晶性熱可塑性樹脂が用いられる。また、ポリ塩化ビニルも好ましく用いられる。
上記ポリオレフィンとして具体的には、上記エチレン系重合体(α)及びエチレン系重合体(β)以外のエチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、4‐メチル‐1‐ペンテン系重合体、3‐メチル‐1‐ブテン系重合体、ヘキセン系重合体などが挙げられる。なかでも、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、4‐メチル‐1‐ペンテン系重合体が好ましく、エチレン系重合体である場合は従来のエチレン系重合体であってもよく、エチレン・極性基含有ビニル共重合体であってもよいが、従来のエチレン系重合体がより好ましい。
上記ポリエステルとして具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステル;ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートなどが挙げられる。
上記ポリアミドとして具体的には、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−10、ナイロン−12、ナイロン−46などの脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンより製造される芳香族ポリアミドなどが挙げられる。
上記ポリアセタールとして具体的には、ポリホルムアルデヒド(ポリオキシメチレン)、ポリアセトアルデヒド、ポリプロピオンアルデヒド、ポリブチルアルデヒドなどを挙げることができる。中でも、ポリホルムアルデヒドが特に好ましい。
上記ポリスチレンは、スチレンの単独重合体であってもよく、スチレンとアクリロニトリル、メタクリル酸メチル、α‐メチルスチレンとの二元共重合体であってもよい。
上記ABSとしては、アクリロニトリルから誘導される構成単位を20〜35モル%の量で含有し、ブタジエンから誘導される構成単位を20〜30モル%の量で含有し、スチレンから誘導される構成単位を40〜60モル%の量で含有するABSが好ましく用いられる。
上記ポリカーボネートとしては、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)メタン、1,1‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)エタン、2,2‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)ブタンなどから得られるポリマーが挙げられる。なかでも、2,2‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)プロパンから得られるポリカーボネートが特に好ましい。
上記ポリフェニレンオキシドとしては、ポリ(2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレンオキシド)を用いることが好ましい。
上記ポリアクリレートとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレートを用いることが好ましい。
上記のような熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。特に好ましい熱可塑性樹脂はポリオレフィンであって、エチレン系重合体がより特に好ましい。
その他の配合成分
本発明に係るエチレン系重合体組成物(γ)において、上記「他の熱可塑性樹脂」に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、核剤、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤などの添加剤やカーボンブラック、酸化チタン、チタンイエロー、フタロシアニン、イソインドリノン、キナクリドン化合物、縮合アゾ化合物、群青、コバルトブルー等の顔料が必要に応じて配合されていてもよい。
次に、本発明におけるエチレン系重合体(α)、エチレン系重合体(β)及びエチレン系重合体組成物(γ)の製造方法に関して説明する。
<エチレン系重合体(α)の製造方法>
本発明に係るエチレン系重合体(α)は、後述するエチレン系重合体製造用触媒の存在下、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとを重合することにより製造することができる。
本発明では、溶解重合や懸濁重合などの液相重合法、または気相重合法などの重合方法が用いられるが、好ましくは懸濁重合法や気相重合法が用いられる。
液相重合法で用いられる不活性炭化水素媒体としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン及び灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン及びメチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素;ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼン及びジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などが挙げられる。また、α−オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
エチレン系重合体(α)製造用触媒
本発明のエチレン系重合体(α)は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含む触媒の存在下、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとを重合することによって効率的に製造することができる。
本発明で用いられるエチレン系重合体(α)製造用触媒は、以下に述べる成分(A)、成分(B)及び成分(C)に加えて、固体状担体(S)ならびに成分(G)を含んでもよい。
上記エチレン系重合体(α)製造用触媒で用いられる各成分について説明する。
成分(A)
本発明で用いることができる成分(A)は、下記一般式(I)で表される架橋型メタロセン化合物である。
Figure 2016186020
一般式(I)中、Mは周期表第4族遷移金属原子を示し、具体的には、チタン、ジルコニウム及びハフニウムから選ばれる遷移金属原子であり、好ましくはジルコニウムである。
1〜R8は、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、及びスズ含有基から選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよいが、すべてが同時に水素原子ではない。また、R1〜R8は、隣接する基が互いに結合して脂肪族環を形成してもよい。
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアリールアルキル基などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、ノニル基、ドデシル基及びエイコシル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基及びアダマンチル基などが挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基及びシクロヘキセニル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、α−またはβ−ナフチル、メチルナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ベンジルフェニル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル及びビフェニリルが挙げられる。アリールアルキル基としては、ベンジル、フェニルエチル及びフェニルプロピルなどが挙げられる。
1〜R8に好ましい基は、水素原子または炭素数1〜15のアルキル基であり、さらに好ましくは、R1〜R8の置換基のうち6つ以上が水素原子であり、特に好ましくは、R1〜R8の置換基のうち7つが水素原子であり、残りの1つが炭素数3〜15のアルキル基である。
1は二つの配位子を結合する二価の基であって、アルキレン基、置換アルキレン基及びアルキリデン基などの炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基及びスズ含有基から選ばれる基であり、特に好ましくはケイ素含有基である。
アルキレン基、置換アルキレン基及びアルキリデン基の具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン及びブチレンなどのアルキレン基;イソプロピリデン、ジエチルメチレン、ジプロピルメチレン、ジイソプロピルメチレン、ジブチルメチレン、メチルエチルメチレン、メチルブチルメチレン、メチル−t−ブチルメチレン、ジヘキシルメチレン、ジシクロヘキシルメチレン、メチルシクロヘキシルメチレン、メチルフェニルメチレン、ジフェニルメチレン、ジトリルメチレン、メチルナフチルメチレン、ジナフチルメチレン、1−メチルエチレン、1,2−ジメチルエチレン及び1−エチル−2−メチルエチレンなどの置換アルキレン基;シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン、ノルボルニリデン、アダマンチリデン、テトラヒドロナフチリデン及びジヒドロインダニリデンなどのシクロアルキリデン基ならびにエチリデン、プロピリデン及びブチリデンなどのアルキリデン基などが挙げられる。
ケイ素含有基としては、シリレン、メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジイソプロピルシリレン、ジブチルシリレン、メチルブチルシリレン、メチル−t−ブチルシリレン、ジシクロヘキシルシリレン、メチルシクロヘキシルシリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジトリルシリレン、メチルナフチルシリレン、ジナフチルシリレン、シクロジメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロペンタメチレンシリレン、シクロヘキサメチレンシリレン及びシクロヘプタメチレンシリレンなどが挙げられ、特に好ましくは、ジメチルシリレン基及びジブチルシリレン基などのジアルキルシリレン基が挙げられる。
Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基及びリン含有基から選ばれる原子または基であり、好ましくはハロゲン原子または炭化水素基である。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられ、特に好ましくは塩素が挙げられる。炭化水素基としては、上述したR1〜R8の炭化水素基と同様のものが挙げられ、炭素数1〜20のアルキル基が特に好ましい。
一般式(I)で表される成分(A)の好ましい化合物の具体例として、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(3-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、トリフルオロメチルブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、トリフルオロメチルブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、トリフルオロメチルブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられ、より好ましい具体例として、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド及びジメチルシリレン(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
成分(B)
本発明で用いることができる成分(B)は、下記一般式(II)で表される架橋型メタロセン化合物である。
Figure 2016186020
一般式(II)中、Mは周期表第4族遷移金属原子を示し、具体的には、チタン、ジルコニウム及びハフニウムから選ばれる遷移金属原子であり、好ましくはジルコニウムである。
9〜R20は、水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基及びスズ含有基から選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよく、また隣接する2個の基が互いに連結して環を形成してもよい。R9〜R20に好ましい基は、水素原子及び炭化水素基であり、より好ましくはR9〜R12が水素原子であり、R13〜R20が水素原子または炭素数1〜20のアルキル基である。
2は、二つの配位子を結合する二価の基であって、アルキレン基、置換アルキレン基及びアルキリデン基などの炭素数1〜20の炭化水素基ならびにハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基及びスズ含有基から選ばれる基であり、好ましくは、アルキレン基、置換アルキレン基及びアルキリデン基などの炭素数1〜20の炭化水素基ならびにケイ素含有基であり、特に好ましくはアルキレン基、置換アルキレン基及びアルキリデン基などの炭素数1〜10の炭化水素基である。
Xは、上記式(I)中のXと同様のものが挙げられる。
一般式(II)で表される成分(B)の好ましい化合物の具体例として、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド及びジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられ、より好ましい具体例として、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
成分(C)
本発明で用いることができる成分(C)は、下記(c−1)〜(c−3)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
(c−1)下記一般式(III)、(IV)または(V)で表される有機金属化合物、
a mAl(ORbnpq・・・(III)
〔一般式(III)中、Ra及びRbは、炭素数が1〜15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。〕
aAlRa 4・・・(IV)
〔一般式(IV)中、MaはLi、NaまたはKを示し、Raは炭素数が1〜15の炭化水素基を示す。〕
a rbb st・・・(V)
〔一般式(V)中、Ra及びRbは、炭素数が1〜15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、MbはMg、ZnまたはCdを示し、Xはハロゲン原子を示し、rは0<r≦2、sは0≦s≦1、tは0≦t≦1であり、かつr+s+t=2である。〕
(c−2)有機アルミニウムオキシ化合物、及び、
(c−3)成分(A)及び成分(B)と反応してイオン対を形成する化合物、から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
一般式(III)、(IV)または(V)で表される有機金属化合物(c−1)の中では、一般式(III)で示されるものが好ましく、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム及びトリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;ならびにジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ−n−ブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド及びジイソヘキシルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。これらは、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
有機アルミニウムオキシ化合物(c−2)としては、トリアルキルアルミニウムまたはトリシクロアルキルアルミニウムから調製された有機アルミニウムオキシ化合物が好ましく、トリメチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムから調製されたアルミノキサンが特に好ましい。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
成分(A)及び成分(B)と反応してイオン対を形成する化合物(c−3)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報及びUS5321106などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物及びカルボラン化合物や、さらにはヘテロポリ化合物及びイソポリ化合物を制限無く使用することができる。
固体状担体(S)
本発明で所要により用いることができる固体状担体(S)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状または微粒子状の固体である。
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が挙げられ、好ましくは多孔質酸化物が挙げられる。
多孔質酸化物としては、SiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO及びThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物、具体的には、天然または合成ゼオライト、SiO2−MgO、SiO2−Al23、SiO2−TiO2、SiO2−V25、SiO2−Cr23及びSiO2−TiO2−MgOなどが用いられる。これらのうち、SiO2を主成分とするものが好ましい。
このような多孔質酸化物は、種類及び製法によりその性状は異なるが、本発明で用いられる固体状担体としては、粒径が通常0.2〜300μm、好ましくは1〜200μmであって、比表面積が通常50〜1200m2/g、好ましくは100〜1000m2/gの範囲にあり、細孔容積が通常0.3〜30cm3/gの範囲にあるものが好ましい。このような担体は、必要に応じて、例えば、100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して用いられる。
成分(G)
本発明で所要により用いることができる成分(G)として、下記(g−1)〜(g−6)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
(g−1)ポリアルキレンオキサイドブロック、
(g−2)高級脂肪族アミド、
(g−3)ポリアルキレンオキサイド、
(g−4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、
(g−5)アルキルジエタノールアミン、及び
(g−6)ポリオキシアルキレンアルキルアミン。
本願発明において、このような成分(G)は、反応器内でのファウリングを抑制し、あるいは生成重合体の粒子性状を改善する目的で、エチレン系重合体(α)製造用触媒中に共存させることができる。成分(G)の中では、(g−1)、(g−2)、(g−3)及び(g−4)が好ましく、(g−1)及び(g−2)が特に好ましい。ここで、(g−2)の例として、高級脂肪酸ジエタノールアミドなどが挙げられる。
エチレン系重合体(α)製造用触媒の調製方法
本発明で用いられるエチレン系重合体(α)製造用触媒の調製方法について記載する。
上記エチレン系重合体(α)製造用触媒は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を不活性炭化水素中または、不活性炭化水素を用いた重合系中に添加することにより調製することができる。
各成分の添加順序は任意であるが、好ましい順序としては、例えば、
i)成分(A)と成分(B)を混合接触させた後に、成分(C)を接触させ、重合系中に添加する方法
ii)成分(A)と成分(C)を混合接触させた接触物及び成分(B)と成分(C)を混合接触させた接触物を重合系内に添加する方法
iii)成分(A)、成分(B)及び成分(C)それぞれを連続的に重合系中に添加する方法、
などが挙げられる。
また固体状担体(S)を含む場合、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の少なくとも1つの成分と、固体状担体(S)とを不活性炭化水素中で接触させ、固体触媒成分(X)を調製することができる。各成分の接触順序は任意であるが、好ましい順序としては、例えば、
iv)成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(A)及び成分(B)を接触させて固体触媒成分(X)を調製する方法
v)成分(A)、成分(B)及び成分(C)を混合接触させた後に、固体状担体(S)を接触させて調製する方法
vi)成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(A)と接触させて調製した固体触媒成分(X1)と、成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(B)と接触させて調製した固体触媒成分(X2)とを用いる方法、
などが挙げられ、より好ましいのはiv)である。
不活性炭化水素として、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン及び灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン及びメチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素;ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼン及びジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などが挙げられる。
成分(C)と固体状担体(S)との接触時間は、通常0〜20時間、好ましくは0.01〜10時間であり、接触温度は、通常−50〜200℃、好ましくは−20〜120℃である。また、成分(C)と固体状担体(S)との接触のモル比(成分(C)/固体状担体(S))は、通常0.2〜2.0、特に好ましくは0.4〜2.0である。
成分(C)及び固体状担体(S)の接触物と、成分(A)及び成分(B)との接触時間は、通常0.01〜5時間、好ましくは0.01〜2時間であり、接触温度は、通常−50〜200℃、好ましくは−50〜100℃である。成分(A)と成分(B)との接触量は、成分(C)の種類と量に大きく依存し、成分(c−1)を使用する場合は、成分(A)及び成分(B)中の全遷移金属原子(M)と、成分(c−1)とのモル比[(c−1)/M]が、通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となる量で用いられ、成分(c−2)を使用する場合は、成分(c−2)中のアルミニウム原子と、成分(A)及び成分(B)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(c−2)/M]が、通常10〜500000、好ましくは20〜100000となる量で用いられ、成分(c−3)を使用する場合は、成分(c−3)と、成分(A)及び成分(B)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(c−3)/M]が、通常1〜10、好ましくは1〜5となる量で用いられる。なお、成分(C)と、成分(A)及び成分(B)中の全遷移金属原子(M)との比は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により求められる。
成分(A)及び成分(B)の使用量比は、エチレン系重合体の分子量及び分子量分布から任意に決定できるが、好ましい範囲として、成分(A)から生成するポリマーと成分(B)から生成するポリマーとの比率(以下、「成分(A)及び成分(B)由来のポリマー生成比率」ともいう。)[=成分(A)の生成ポリマー量/成分(B)の生成ポリマー量]が、通常40/60〜95/5、好ましくは50/50〜95/5、より好ましくは60/40〜95/5である。
成分(A)及び成分(B)由来のポリマー生成比率の算出方法について説明する。
GPC測定により得られる、エチレン系重合体(α)の分子量分布曲線は、実質的に3つのピークから構成される。この3つのピークのうち、1番低分子量側のピークは成分(A)由来ポリマーに起因するピークであり、2番目のピークは成分(B)由来ポリマーに起因するピークであり、3番目のピーク、すなわち最も高分子側にあるピークは成分(A)及び成分(B)の両方用いたときのみに生成するピークである。そして、成分(A)由来ポリマーに起因するピーク(すなわち、上記1番低分子量側のピーク)と成分(B)由来ポリマーに起因するピーク(すなわち、上記2番目のピーク)との比率[=成分(A)由来ポリマーに起因するピーク/成分(B)由来ポリマーに起因するピーク]を、成分(A)及び成分(B)由来のポリマー生成比率[=成分(A)の生成ポリマー量/成分(B)の生成ポリマー量]として定義する。
各ピークの比率は、
エチレン系重合体(α)の分子量分布曲線(G1)と、
成分(A)、成分(C)、固体状担体(S)からなる触媒(すなわち、成分(B)を含まない触媒)を用いたことを除き、エチレン系重合体(α)を得るときと同様の重合条件にて重合して得られたエチレン系重合体の分子量分布曲線(G2)と、
成分(B)、成分(C)、固体状担体(S)からなる触媒(すなわち、成分(A)を含まない触媒)を用いたことを除き、エチレン系重合体(α)を得るときと同様の重合条件にて重合して得られたエチレン系重合体の分子量分布曲線(G3)と
を用いて、下記の方法により実施した。なお、本明細書において、「分子量分布曲線」というときは、特に別の記載がない限り、微分分子量分布曲線を指していい、また、分子量分布曲線について「面積」というときは、分子量分布曲線とベースラインとの間に形成される領域の面積をいう。
[1](G1)、(G2)、(G3)の各数値データにおいて、Log(分子量)を0.02間隔に分割し、さらに(G1)、(G2)、(G3)のそれぞれについて、面積が1となるように強度[dwt/d(log分子量)]を正規化する。
[2](G2)と(G3)との合成曲線(G4)を作成する。このとき、各分子量における(G1)の強度と(G4)の強度との差の絶対値が概ね0.0005以下となるように、(G2)及び(G3)の各分子量における強度を一定の比率で任意に変更する。なお、高分子量側では生成する第3ピークの影響により、(G1)の強度と(G4)の強度との差の絶対値が0.0005より大きくなってしまうため、より低分子量側で(G1)の強度と(G4)の強度との差の絶対値が0.0005以下となるように、(G2)及び(G3)の強度を変更していく。
[3](G1)における最大重量分率での分子量をピークトップとしたときに、当該ピークトップより高分子量側における(G1)と(G4)との重なり合わない部分、すなわち、(G1)と(G4)との差分曲線(G5)を作成したときに、当該差分曲線(G5)において、(G1)における最大重量分率での分子量より高分子量側に現れるピーク部分(P5)[(G1)−(G4)]を第3ピーク(すなわち、上記「3番目のピーク」)とする。
[4]成分(A)由来ポリマーに起因するピークの比率Wa、成分(B)由来ポリマーに起因するピークの比率Wbを以下の通り算出する。
Wa=S(G2)/S(G4)
Wb=S(G3)/S(G4)
ここで、S(G2)、S(G3)はそれぞれ強度を変更した後の(G2)、(G3)の面積であり、S(G4)は(G4)の面積である。
たとえば、(G4)が、(G2)の強度をx倍したものに、(G3)の強度をy倍したものを加算することにより得られた場合、上記[1]で上述した正規化によって元の(G2)及び(G3)の面積が共に1とされていることから、S(G2)、S(G3)、S(G4)は、それぞれx、y、(x+y)となる。したがって、上記Wa及びWbは、上記x及びyを用いて、それぞれ以下のように表すことができる。
Wa=x/(x+y)
Wb=y/(x+y)
成分(A)由来のポリマーの生成量が多い方が長鎖分岐を生成するのに有利であり、成分(A)及び成分(B)の遷移金属化合物当たりのモル比は、生成ポリマーが上記の比率を満たす範囲内において任意に選ぶことができる。
エチレン系重合体(α)の製造には、上記のような固体触媒成分(X)をそのまま用いることができるが、この固体触媒成分(X)にオレフィンを予備重合させ、予備重合触媒成分(XP)を形成してから用いることもできる。
予備重合触媒成分(XP)は、上記固体触媒成分(X)の存在下、通常、不活性炭化水素溶媒中、オレフィンを導入させることにより調製することができ、回分式、半連続式及び連続式のいずれの方法でも使用することができ、また減圧、常圧または加圧下のいずれでも行うことができる。この予備重合によって、固体状触媒成分(X)1g当たり、通常0.01〜1000g、好ましくは0.1〜800g、より好ましくは0.2〜500gの重合体を生成させる。
不活性炭化水素溶媒中で調製した予備重合触媒成分は、懸濁液から分離した後、再び不活性炭化水素中に懸濁させ、得られた懸濁液中にオレフィンを導入してもよく、また、乾燥させた後オレフィンを導入してもよい。
予備重合に際して、予備重合温度は、通常−20〜80℃、好ましくは0〜60℃であり、また予備重合時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜50時間である。
予備重合に使用する固体触媒成分(X)の形態としては、すでに述べたものを制限無く利用することができる。また、必要に応じて成分(C)が用いられ、特に(c−1)中の上記式(III)に示される有機アルミニウム化合物が好ましく用いられる。成分(C)が用いられる場合は、該成分(C)中のアルミニウム原子(Al−C)と遷移金属化合物とのモル比(成分(C)/遷移金属化合物)で、通常0.1〜10000、好ましくは0.5〜5000の量で用いられる。
予備重合系における固体触媒成分(X)の濃度は、固体触媒成分(X)/重合容積1リットル比で、通常1〜1000グラム/リットル、好ましくは10〜500グラム/リットルである。
成分(G)は、上記エチレン系重合体(α)製造用触媒の調製におけるいずれの工程に共存させてもよく、接触順序も任意である。また予備重合によって生成した予備重合触媒成分(XP)に接触させてもよい。
上記、エチレン系重合体(α)製造用触媒を用いて、エチレン、または、エチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの重合を行うに際して、成分(A)及び成分(B)は、反応容積1リットル当たり、通常10-12〜10-1モル、好ましくは10-8〜10-2モルになる量で用いられる。
また、重合温度は、通常−50〜200℃、好ましくは0〜170℃、特に好ましくは60〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常、常圧〜100kgf/cm2、好ましくは常圧〜50kgf/cm2の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式及び連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うこともできる。
得られるエチレン系重合体(α)の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに重合系には、ファウリング抑制あるいは粒子性状改善を目的として、前記の成分(G)を共存させることができる。
物性値のばらつきを抑制するため、重合反応により得られたエチレン系重合体(α)粒子及び所望により添加される他の成分は、任意の方法で溶融され、混練、造粒などを施される。
<エチレン系重合体(β)の製造方法>
本発明に係るエチレン系重合体(β)は、エチレンと炭素数4以上10以下のα-オレフィンとを重合することによって得ることができるが、上記要件を満たすものが得られる限りにおいて、用いる重合触媒や重合条件は特に限定されない。本発明に係るエチレン系重合体(β)としては、例えば、直鎖低密度ポリエチレンやエチレン・α‐オレフィン共重合体や高密度ポリエチレン等の市販品を用いることができる。具体的な例としては、プライムポリマー製LLDPEであるエボリュー(登録商標)やウルトゼックス(登録商標)等から要件を満たすものを選択することができる。
<エチレン系重合体組成物(γ)の製造方法>
本発明に係るエチレン系重合体組成物(γ)は、上記エチレン系重合体(α)と上記エチレン系重合体(β)とから得られ、たとえば上記エチレン系重合体(α)と上記エチレン系重合体(β)とを溶融混練することによって製造することができるし、あるいはエチレン系重合体(α)を造粒したペレットと、エチレン系重合体(β)のペレットとをドライブレンドすることによっても製造することができる。好適には、溶融混練により製造する方法を用いることができ、このとき、連続式押出機や密閉式混練機を用いることができる。例えば、一軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の装置を挙げることができる。これらのうち、経済性、処理効率等の観点から一軸押出機及び/または二軸押出機を用いることが好ましい。
ここで、上記溶融混練及びドライブレンドを行う際、上記エチレン系重合体(α)及び上記エチレン系重合体(β)に加えて、上記「他の熱可塑性樹脂」をブレンドすることができる。また、「他の熱可塑性樹脂」に加えて、あるいは、「他の熱可塑性樹脂」に代えて、上記「その他の配合成分」をさらに配合してもよい。
上記「他の熱可塑性樹脂」及び上記「その他の配合成分」を加える順序は、特に限定されない。例えば、上記「他の熱可塑性樹脂」及び上記「その他の配合成分」を、上記エチレン系重合体(α)及び上記エチレン系重合体(β)のうちの一方または両方と同時にブレンドしてもよいし、あるいは、上記エチレン系重合体(α)と上記エチレン系重合体(β)とを混練してから加えてもよい。
<パイプ成形体、多層パイプ成形体>
本発明に係るエチレン系重合体組成物(γ)を加工することにより、成形性に優れ、かつ長期耐久性に優れたパイプ成形体、及び多層パイプ成形体が得られる。ここで、この多層パイプ成形体は、少なくとも一層が上記エチレン系重合体組成物(γ)からなる層から形成されている。この多層パイプ成形体において、エチレン系重合体組成物(γ)からなる層は、片面のみに形成されていてもよく、両面に形成されていてもよく、両面に形成されているうちの片面に上記「その他の配合成分」の顔料が配合されていてもよい。この多層パイプ成形体を構成する基材は、エチレン系重合体組成物(γ)からなるものであってもよく、あるいは、エチレン系重合体組成物(γ)以外の材料からなるものであってもよい。
パイプ成形体が多層である場合の前記他の樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、結晶性樹脂、ゴム、接着性樹脂、バリア性樹脂などが挙げられ、具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、極低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物、エチレン−スチレン共重合体、エチレン−ビニルシクロヘキサン共重合体、エチレン−ノルボルネン共重合体、ポリオレフィンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン-−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、イソプレンゴム、スチレン−イソプレンゴム、イソブチレンゴム、等とこれら樹脂の酸変性体や水添物等が挙げられる。
本発明に係るエチレン系重合体組成物(γ)は、公知のパイプ成形方法を用いて成形される。例えば、前記エチレン系重合体組成物(γ)をパイプ製造装置の押出機を用いて、150℃〜210℃、好ましくは160℃〜200℃の温度で溶解した後、ダイスから筒状に押出した後、水で冷却することにより得られる。
本発明のパイプの形状は、パイプの用途に応じて適宜決め得る。例えば、ISO4427、4437、JIS K6762、JIS K6774、あるいは、JIS K6761に記載の外径、肉厚に成形されるポリエチレンパイプが含まれる。また、これらの成形体には、エチレン系重合体組成物(γ)からなる部分と、他の樹脂からなる部分とを含む成形体( 積層体等) が含まれる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[エチレン系重合体及びエチレン系重合体組成物の測定]
エチレン系重合体及びエチレン系重合体組成物の物性の測定方法を以下に示す。
<メルトフローレート(MFR)>
ASTM D1238‐89に準拠し、190℃、2.16kg荷重及び190℃、21.6kg荷重の条件下で測定した。
<密度(d)>
JIS K7112(1999)に準拠し、MFR測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定した。
<溶融張力(MT)>
190℃における溶融張力(MT)(単位;g)は、一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定した。測定には東洋精機製作所社製キャピラリーレオメーター:キャピログラフ1Bを用いた。条件は樹脂温度190℃、溶融時間6分、バレル径9.55mmφ、押し出し速度15mm/分、巻取り速度24m/分(溶融フィラメントが切れてしまう場合には、巻取り速度を5m/分ずつ低下させる)、ノズル径2.095mmφ、ノズル長さ8mmとした。この値が大きいほど、パイプ成形時のドローダウンが抑制され、成形性がよいといえる。
<せん断粘度(η*)>
200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η*(1.0)〕(P)は以下の方法により測定した。
せん断粘度(η*)は、測定温度200℃におけるせん断粘度(η*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.01≦ω≦100の範囲で測定する。測定にはアントンパール社製粘弾性測定装置Physica MCR301を用い、サンプルホルダーとして25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みを約2.0mmとした。測定点はω一桁当たり5点とした。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3〜10%の範囲で適宜選択した。
せん断粘度測定に用いたサンプルは、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kgf/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kgf/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することにより作製した。
<メチル分岐数及びエチル分岐数>
13C-NMRにより測定されたメチル分岐数及びエチル分岐数は下記のように決定される。
測定はブルカー・バイオスピン(株)製AVANCE III cryo-500型核磁気共鳴装置を用い、以下の条件にて実施した。
測定プローブ:5mmクライオプローブ(DCH型)
測定核:13C(125MHz)
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:45°(5.00μ秒)
ポイント数:64k
観測範囲:250ppm(-55〜195ppm)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:256回
測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/ベンゼン-d6(4/1 v/v)
試料濃度:60mg/0.6ml
測定温度:120℃
ウィンドウ関数:exponential(BF:1.0 Hz)
ケミカルシフト基準:δδシグナル 29.73ppm
NMRスペクトルにおける各吸収の帰属は、化学領域増刊141号 NMR−総説と実験ガイド[I]、p.132〜133に準じて行った。1,000カーボン当たりのメチル分岐数、すなわち、エチレン系重合体の重合体鎖を構成する炭素原子1000個当たりのメチル分岐数は、5〜45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対する、メチル分岐由来のメチル基の吸収(19.7ppm)の積分強度比より算出する。また、エチル分岐数は、5〜45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対するエチル分岐由来のメチル基の吸収(10.8ppm)の積分強度比より算出する。
<ゼロせん断粘度(η0)>
200℃におけるゼロせん断粘度(η0)(P)は以下の方法により求めた。
測定温度200℃にて、せん断粘度(η*)の角速度ω(rad/秒)分散を0.01≦ω≦100の範囲で測定する。測定にはアントンパール社製粘弾性測定装置Physica MCR301を用い、サンプルホルダーとして25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みを約2.0mmとした。測定点はω一桁当たり5点とした。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3〜10%の範囲で適宜選択した。
せん断粘度測定に用いたサンプルは、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kgf/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kgf/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することにより作製した。
ゼロせん断粘度(η0)は、下記式(Eq-3)のCarreauモデルを非線形最小自乗法により実測のレオロジー曲線〔せん断粘度(η*)の角速度(ω)分散〕にフィッティングさせることで算出した。
η*=η0〔1+(λω)a(n-1)/a (Eq-3)
ここで、λは時間の次元を持つパラメーター、nは材料の冪法則係数(power law index)を表す。なお、非線形最小自乗法によるフィッティングは下記式(Eq-4)におけるdが最小となるように行った。
Figure 2016186020
上記式(Eq-4)中、ηexp(ω)は実測のせん断粘度を表し、ηcalc(ω)はCarreauモデルより算出したせん断粘度を表す。
<重量平均分子量(Mw)>
ウォーターズ社製GPC−粘度検出器(GPC−VISCO)GPC/V2000を用い、以下のように測定した。
ガードカラムにはShodex AT−Gを用い、分析カラムにはAT−806MSを2本用い、検出器には示差屈折計及び3キャピラリー粘度計を用い、カラム温度は145℃とし、移動相としては、酸化防止剤としてBHTを0.3重量%含むo−ジクロロベンゼンを用い、流速を1.0ml/分とし、試料濃度は0.1重量%とした。標準ポリスチレンには、東ソー社製のものを用いた。分子量計算は、粘度計及び屈折計から実測粘度を計算し、実測ユニバーサルキャリブレーションより重量平均分子量(Mw)を求めた。
<分子量分布曲線>
分子量分布曲線は、ウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフ alliance GPC2000型(高温サイズ排除クロマトグラフ)を用い、以下のように測定した。
解析ソフト:クロマトグラフィデータシステムEmpower(Waters社)
カラム:TSKgel GMH6− HT×2+TSKgel GMH6−HTL×2(内径7.5mm×長さ30cm,東ソー社)
移動相:o−ジクロロベンゼン(和光純薬 特級試薬)
検出器:示差屈折計(装置内蔵)
カラム温度:140℃
流速:1.0mL/分
注入量:500μL
サンプリング時間間隔:1秒
試料濃度:0.15%(w/v)
分子量較正:単分散ポリスチレン(東ソー社)/分子量495〜2060万
Z. Crubisic, P. Rempp, H. Benoit, J. Polym. Sci., B5, 753 (1967)に記載された汎用較正の手順に従い、標準ポリエチレン分子量換算として分子量分布曲線を作成した。この分子量分布曲線から成分(A)及び成分(B)から生成するポリマー比率ならびに最大重量分率での分子量(peak top M)を算出した。
<極限粘度[η]>
測定サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、下記式(Eq-6)に示すように濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位;dl/g)として求めた。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0) --------(Eq-6)
[エチレン系重合体組成物の成形方法、パイプ成形体の測定]
<曲げ弾性率>
JIS K7151(1995)に準拠して成型した厚さ4mmの圧縮シートから試験片を切出し、JIS K7171(2008)に準拠して測定した。
<全周ノッチ式引張クリープ試験>
JIS K7151(1995)に準拠して成型した厚さ6mmの圧縮シートからタテ5〜6mm×ヨコ6mm×長さ60mmの角柱を切削し、JIS K6774に準じて試験を行った。(全周ノッチ式、ノッチ深さ1mm)但し、加える応力は5.0MPaであり、測定温度は80℃の条件で行った。
<パイプ成形条件>
エチレン系重合体組成物のペレットを用いて下記の成形条件でパイプ成形を行い、外径32mmφ、肉厚3mmの単層のパイプを成形した。
・成形機:株式会社池貝社製
・押出機のシリンダー温度:160℃
・ダイ温度:160℃
・引取速度:1m/分
<溶融樹脂安定性>
パイプ成形時に、溶融樹脂がサイジングに入るまでの安定性を目視にて確認し、
a)溶融樹脂の垂れ下がりが非常に少なく安定しているものを◎
b)溶融樹脂の垂れ下がりが少なく安定しているものを○
c)溶融樹脂の垂れ下がりが発生するが成形は可能であるものを△
d)溶融樹脂の垂れ下がりが大きく、成形が出来ないものを×
とした。×から◎に近づくほど溶融樹脂の安定性がよく、好ましいことを示す。
<製品肌>
パイプの製品肌を目視にて確認し、マット感の有り/無しを判定した。
[エチレン系重合体(α−1)]
固体触媒成分(X−1)の調製
内容積270リットルの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、固体状担体(S)として、富士シリシア株式会社製シリカ(SiO2:平均粒径70μm、比表面積340m2/g、細孔容積1.3cm3/g、250℃焼成)10kgを77リットルのトルエンに懸濁させた後0〜5℃に冷却した。この懸濁液に成分(C)として、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.5mmol/mL)19.4リットルを30分間かけて滴下した。この際、系内の温度を0〜5℃に保った。引き続き0〜5℃で30分間反応させた後、約1.5時間かけて95〜100℃まで昇温して、引き続き95〜100℃で4時間反応させた。その後常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにトルエンで2回洗浄した後、全量115リットルのトルエンスラリーを調製した。得られたスラリー成分の一部を採取し濃度を調べたところ、スラリー濃度:122.6g/L、Al濃度:0.62mol/Lであった。
この内、12.2リットルを内容積114リットルの撹拌機付き反応器に、窒素雰囲気下で装入し、全量が28リットルになるようトルエンを添加した。次に、5リットルのガラス製反応器に窒素雰囲気下、成分(A)として、ジメチルシリレン(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド2.58g(Zr原子換算で6.61mmol)及び、成分(B)として、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド16.40g(Zr原子換算で30.10mmol)を採取し(成分(A)/成分(B)のモル比=14/86)、トルエン5.0リットルに溶解させ、上記反応器に圧送した。圧送後、内温20〜25℃で1時間反応させ、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにヘキサンを用いて3回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量30リットルとし、固体触媒成分(X−1)のヘキサンスラリーを調製した。
予備重合触媒成分(XP−1)の調製
引き続き、上記で得られた固体触媒成分(X−1)のヘキサンスラリーを10℃まで冷却した後、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl−H)3.7molを添加した。さらに常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給した。この間系内の温度は10〜15℃に保持し、次いで1−ヘキセン0.10リットルを添加した。1−ヘキセン添加後、1.4kg/hでエチレン供給を開始し、系内温度32〜37℃にて予備重合を行った。予備重合を開始してから30分毎に計5回、1−ヘキセン0.06リットルを添加し、予備重合開始から190分後にエチレン供給が4.3kgに到達したところで、エチレン供給を停止した。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量を50リットルとした。
次に、系内温度を34〜36℃にて、成分(G)として、三洋化成工業株式会社製ケミスタット2500(ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド:60.8g)のヘキサン溶液を上記反応器に圧送し、引き続き、34〜36℃で2時間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した。
次に、内容積43リットルの撹拌機付き蒸発乾燥機に、窒素雰囲気下、ヘキサンスラリーを挿入した後、乾燥機内を約60分かけて−68kPaGまで減圧し、−68kPaGに到達したところで約4.3時間真空乾燥しヘキサンならびに予備重合触媒成分中の揮発分を除去した。さらに−100kPaGまで減圧し、−100kPaGに到達したところで8時間真空乾燥し、予備重合触媒成分(XP−1)6.1kgを得た。得られた予備重合触媒成分の一部を採取し、組成を調べたところ、予備重合触媒成分1g当たりZr原子が0.52mg含まれていた。
エチレン系重合体(α−1)の製造
内容積1.7m3の流動層型気相重合反応器において、予備重合触媒成分(XP−1)を用いて、エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造を行った。
表1に示す条件に従い、連続的に反応器内に予備重合触媒成分(XP−1)、エチレン、窒素、1−ヘキセンなどを供給した。重合反応物は反応器より連続的に抜き出し、乾燥装置にて乾燥し、エチレン系重合体(α−1)パウダーを得た。
得られたエチレン系重合体(α−1)パウダーに耐熱安定剤としてスミライザーGP(住友化学社製)850ppm、ステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)210ppmを加え、株式会社池貝社製の二軸同方向46mmφ押出機を用い、設定温度200℃、スクリュー回転数300rpmの条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてエチレン系重合体(α−1)のペレットを得た。得られたペレットを測定用試料として物性測定を行った。
結果を表2に示す。
[エチレン系重合体(α−2)]
固体触媒成分(X−2)の調製
固体触媒成分(X−1)の調製において、成分(A)及び成分(B)のモル比を(A)/(B)=20/80に変更し、固体状担体との反応を、内温を73〜76℃で2時間に変更した以外は、固体触媒成分(X−1)の調製と同様にして固体触媒成分(X−2)のヘキサンスラリーを調製した。
予備重合触媒成分(XP−2)の調製
予備重合触媒成分(XP−1)の調製において、固体触媒成分(X−1)の代わりに固体触媒成分(X−2)を用いた以外は、予備重合触媒成分(XP−1)の調製と同様の方法にて予備重合触媒成分(XP−2)を得た。得られた予備重合触媒成分(XP−2)の組成を調べたところ、固体触媒成分1g当たり、Zr原子が0.54mg含まれていた。
エチレン系重合体(α−2)の製造
エチレン系重合体(α−1)の製造において、予備重合触媒成分及び重合条件を表1に示す条件に変更した以外は、エチレン系重合体(α−1)の場合と同様にしてエチレン系重合体(α−2)パウダーを得た。
得られたエチレン系重合体(α−2)パウダーを用い、エチレン系重合体(α−1)の場合と同様の方法で測定用試料を作製し、物性測定を行った。
結果を表2に示す。
[エチレン系重合体(α−3)]
固体触媒成分(X−3)の調製
固体触媒成分(X−1)の調製において、成分(A)及び成分(B)のモル比を(A)/(B)=14/86に変更した以外は、固体触媒成分(X−2)の調製と同様にして固体触媒成分(X−3)のヘキサンスラリーを調製した。
予備重合触媒成分(XP−3)の調製
予備重合触媒成分(XP−1)の調製において、固体触媒成分(X−1)の代わりに固体触媒成分(X−3)を用いた以外は、予備重合触媒成分(XP−1)の調製と同様の方法にて予備重合触媒成分(XP−3)を得た。得られた予備重合触媒成分(XP−3)の組成を調べたところ、固体触媒成分1g当たり、Zr原子が0.52mg含まれていた。
エチレン系重合体(α−3)の製造
エチレン系重合体(α−1)の製造において、反応器の内容積を1.0m3、予備重合触媒成分及び重合条件を表1に示す条件に変更した以外は、エチレン系重合体(α−1)の場合と同様にしてエチレン系重合体(α−3)パウダーを得た。
得られたエチレン系重合体(α−3)パウダーを用い、エチレン系重合体(α−1)の場合と同様の方法で測定用試料を作製し、物性測定を行った。
結果を表2に示す。
[エチレン系重合体(α−4)]
エチレン系重合体(α−4)の製造
エチレン系重合体(α−1)の製造において、予備重合触媒成分及び重合条件を表1に示す条件に変更した以外は、エチレン系重合体(α−3)の場合と同様にしてエチレン系重合体(α−4)パウダーを得た。
得られたエチレン系重合体(α−4)のパウダーを用い、エチレン系重合体(α−1)の場合と同様の方法で測定用試料を作製し、物性測定を行った。
結果を表2に示す。
Figure 2016186020
[エチレン系重合体(α−5)、エチレン系重合体(β−1)]
株式会社プライムポリマーより市販されているエチレン・1−ヘキセン共重合体(商品名:エボリュー SP1510)を用いた。製品ペレットを測定試料とし、物性測定を行った結果を表2、表3に示す。
[エチレン系重合体(α−6)]
株式会社プライムポリマーより市販されているエチレン・1−ブテン共重合体(商品名:ネオゼックス 2015M)を用いた。製品ペレットを測定試料とし、物性測定を行った結果を表2に示す。
[エチレン系重合体(α−7)]
日本ポリエチレン株式会社より市販されているリニア低密度ポリエチレン(商品名:ノバテック UE230)を用いた。製品ペレットを測定試料とし、物性測定を行った結果を表2に示す。
Figure 2016186020
[エチレン系重合体(β−1)]
株式会社プライムポリマーより市販されているエチレン・1−ヘキセン共重合体(商品名:エボリュー SP1510)を用いた。製品ペレットを測定試料とし、物性測定を行った結果を表3に示す。
[エチレン系重合体(β−2)]
株式会社プライムポリマーより市販されているエチレン・1−ヘキセン共重合体(商品名:エボリュー SP2540)を用いた。製品ペレットを測定試料とし、物性測定を行った結果を表3に示す。
[エチレン系重合体(β−3)]
内容積1Lの完全攪拌混合型連続重合反応容器に、乾燥したn−ヘキサンを5.5リットル/時間、ジ(p-トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリドのヘキサン溶液(0.16ミリモル/L)を0.0104ミリモル/時間、メチルアルミノキサン(MMAO−3A:東ソー・ファインケム社製)のトルエン溶液(80ミリモル/L)を5.2ミリモル/時間、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(12ミリモル/L)を1.8ミリモル/時間の割合で導入した。水素は導入しなかった。同時に重合反応容器内にエチレンを480g/時間、1−オクテンを0.87kg/hで連続供給し、重合器内が反応圧力6.9MPaとなるように重合器上部から重合溶液を連続的に抜き出し、重合温度150℃、で重合反応を行った。重合器から連続的に抜き出された重合溶液に失活剤として少量のイソプロピルアルコールを添加し、耐熱安定剤としてIrganox1076(チバスペシャリティケミカルズ社製)を500ppm加えた後、大気圧までフラッシュしてポリマーを析出させた。その後、N2流通下で真空乾燥器にて120℃で8時間乾燥した。この重合のエチレン転化率は87.1%、エチレン系重合体収量は0.546kg/hであった。
得られたエチレン系重合体を凍結粉砕した後、耐熱安定剤としてスミライザー(登録商標)GP(住友化学株式会社製)850ppm、ステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)210ppmを加え、株式会社池貝社製の二軸同方向46mmφ押出機を用い、設定温度200℃、スクリュー回転数300rpmの条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてエチレン系重合体(β−3)のペレットを得た。得られたペレットを測定用試料として物性測定を行った。結果を表3に示す。
[エチレン系重合体(β−4)]
株式会社プライムポリマーより市販されているエチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体(商品名:ウルトゼックス 15150J)を用いた。製品ペレットを測定試料とし、物性測定を行った結果を表3に示す。
Figure 2016186020
[実施例1]
スミライザー(登録商標)GP(住友化学株式会社製)850ppm、ステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)210ppmを添加したエチレン系重合体(α−1)パウダーとエチレン系重合体(β−1)とを80:20の重量比でブレンドし、株式会社池貝社製の二軸同方向46mmφ押出機を用い、設定温度200℃、スクリュー回転数300rpmの条件で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カットしてエチレン系重合体組成物(γ−1)のペレットを得た。得られたペレットを測定用試料として物性測定を行った結果を表4に示す。さらに、得られたペレットを用いてパイプ成形を実施した。成形時の溶融樹脂の安定性、及び製品肌を表4に示す。
[実施例2〜8]
実施例1において、エチレン系重合体(α)とエチレン系重合体(β)の種類、及びブレンド比を第4表に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様の方法にてエチレン系重合体組成物(γ)のペレット、及びパイプ成形体を得た。得られたペレットの物性、成形時の溶融樹脂の安定性、製品肌を表4に示す。
Figure 2016186020
[比較例1]
実施例1において、エチレン系重合体(α)とエチレン系重合体(β)の種類、及びブレンド比を表5に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様の方法にてエチレン系重合体組成物(γ−9)のペレット、及びパイプ成形体を得た。得られたペレットの物性、成形時の溶融樹脂の安定性、製品肌を表5に示す。比較例1は、エチレン系重合体(β−4)のMFRが要件(1')の上限値より大きい。このため、溶融樹脂の安定性、長期耐久性に劣る。
[比較例2]
実施例1において、エチレン系重合体(α)とエチレン系重合体(β)の種類、及びブレンド比を表5に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様の方法にてエチレン系重合体組成物(γ−10)のペレット、及びパイプ成形体を得た。得られたペレットの物性、成形時の溶融樹脂の安定性、製品肌を表5に示す。比較例2は、エチレン系重合体(α−6)のη0/Mw6.8及び[η]/Mw0.776がそれぞれ要件(4)及び要件(5)の上限値よりも大きい。このため、成形性が劣り、パイプ外観も平滑であった。
[比較例3]
エチレン系重合体組成物(γ−5)のペレットを用いて、パイプ成形体を得た。ペレットの物性、成形時の溶融樹脂の安定性、製品肌を表5に示す。比較例4は、エチレン系重合体(β)の重量分率〔Wβ〕を満たさず、[η]/Mw0.776が要件(5)の上限値よりも大きい。このため、成形性に劣る。
[比較例4]
エチレン系重合体組成物(γ−6)のペレットを用いて、パイプ成形体を得た。ペレットの物性、成形時の溶融樹脂の安定性、製品肌を表5に示す。比較例4は、エチレン系重合体(α−6)のメチル分岐とエチル分岐の和,η0/Mw6.8及び[η]/Mw0.776がそれぞれ要件(3),(4)及び要件(5)の上限値よりも大きい。このため、長期耐久性,成形性が劣り、パイプ外観も平滑であった。
[比較例5]
エチレン系重合体組成物(γ−7)のペレットを用いて、パイプ成形体を得た。ペレットの物性、成形時の溶融樹脂の安定性、製品肌を表5に示す。比較例5は、エチレン系重合体(α−7)のη0/Mw6.8及び[η]/Mw0.776がそれぞれ要件(4)及び要件(5)の上限値よりも大きい。このため、成形性が劣り、パイプ外観も平滑であった。
[比較例6]
エチレン系重合体組成物(α−2)のペレットを用いて、パイプ成形体を得た。ペレットの物性、成形時の溶融樹脂の安定性、製品肌を表5に示す。比較例6は、エチレン系重合体(β)の重量分率〔Wβ〕を満たさないため、長期耐久性に劣る。
Figure 2016186020

Claims (4)

  1. エチレンと炭素数4以上10以下のα‐オレフィンとの共重合体であり、且つ、下記要件(1)〜(5)を同時に満たすエチレン系重合体(α)と、
    エチレンと炭素数4以上10以下のα‐オレフィンとの共重合体であり、且つ、下記要件(1')〜(3')を同時に満たすエチレン系重合体(β)とを含むエチレン系共重合体組成物(γ)からなる層を少なくとも1層含むパイプ成形体であって、
    前記組成物(γ)において、前記エチレン系重合体(α)の重量分率〔Wα〕が0.1以上0.9以下であり、前記エチレン系重合体(β)の重量分率〔Wβ〕が0.1以上0.9以下であり(WαとWβの合計を1.0とする)、密度が875kg/m3以上935kg/m3以下であることを特徴とするパイプ成形体。
    エチレン系重合体(α):
    (1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.01g/10分以上10g/10分以下である;
    (2)密度が875kg/m3以上945kg/m3以下である;
    (3)13C−NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル(Me)分岐数〔Me(/1000C)〕とエチル(Et)分岐数〔Et(/1000C)〕との和〔(Me+Et)(/1000C)〕が1.80以下である;
    (4)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の6.8乗(Mw6.8)の比、η0/Mw6.8が、0.03×10-30以上7.5×10-30以下である;
    (5)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、0.90×10-4以上1.65×10-4以下である;
    エチレン系重合体(β):
    (1')190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1g/10分以上10g/10分以下である;
    (2')13C−NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル(Me)分岐数〔Me(/1000C)〕とエチル(Et)分岐数〔Et(/1000C)〕との和〔(Me+Et)(/1000C)〕が1.80以下である;
    (3')135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、1.90×10-4以上2.80×10-4以下である。
  2. 前記エチレン系重合体組成物(γ)の190℃における溶融張力〔MTγ(g)〕と、前記エチレン系重合体(α)の溶融張力〔MTα(g)〕、前記エチレン系重合体(β)の溶融張力〔MTβ(g)〕、前記Wα及びWβとが、下記関係式(Eq-1-1)を満たすことを特徴とする、請求項1に記載のパイプ成形体。
    1.2<MTγ/(MTα×Wα+MTβ×Wβ)≦3.0 …(Eq-1-1)
  3. 前記エチレン系重合体組成物(γ)が、前記エチレン系重合体(α)及び前記エチレン重合体(β)のいずれでもない熱可塑性樹脂を、さらに含む請求項1または2に記載のパイプ成形体。
  4. 前記エチレン系重合体組成物(γ)からなる層を少なくとも2層含むパイプ成形体であって、外層にカーボンブラックが添加されている請求項1〜3のいずれかに記載のパイプ成形体。
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JP2015010106A (ja) * 2013-06-26 2015-01-19 三井化学株式会社 ポリエチレン系樹脂からなるチューブ成形体

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