JP6572591B2 - ペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造方法 - Google Patents

ペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明はペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造方法に関するものであり、さらに詳細には、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を可塑剤に分散させて調製したペースト加工用塩化ビニル系樹脂ゾルの粘度の経時変化が少なく、低温での機械的強度に優れ、コート剤、特に自動車アンダーボディコート用、自動車シーラント用として優れた特性を有するペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造方法に関するものである。
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂(以下、ペースト塩ビと略記する場合もある。)は、一般に可塑剤、充填剤、安定剤又はその他の配合剤などと共に混練することにより、ペースト塩ビゾルを調製し、該ペースト塩ビゾルを使用し種々の成形加工法により壁紙、タイルカーペット、手袋などの様々な成形加工品に用いられている。また、加工温度の低い用途用として、比較的低温でも機械的強度が得られるゲル化溶融性に優れた特性を持つペースト塩ビとして、塩化ビニルに酢酸ビニルを共重合させた塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂が知られており、さらに、ペースト塩ビゾル調製後から加工までの長期の保存安定性に対する対策として、粘度の経時変化が少ないペースト塩ビゾルを提供可能とするペースト塩ビが求められている。
粘度の経時変化の少ないペースト塩ビゾルを提供できるペースト塩ビとして、特定の界面活性剤を使用したシードミクロ懸濁重合によるペースト加工用ポリ塩化ビニル樹脂の製造方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
また、粘度の経時変化の少ないペースト塩ビゾルを提供できる方法として、ペースト塩ビゾルに特定の化合物を配合するポリ塩化ビニル系樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献2参照。)。
また、重合時間を大幅に短縮化する方法として、特定重量比の単量体を仕込み重合を開始後、残りの単量体を2段階以上に分割して追加仕込みし、それぞれの追加仕込みは、仕込まれた単量体の重合転化率が特定の重合転化率となった時期に開始する、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法が提案されている(例えば特許文献3参照。)。
特開平06−056915号公報 特開2010−241977号公報 特開2009−221335号公報
しかし、特許文献1に提案の方法において、粘度の経時変化が比較的少ないペースト塩ビゾルを提供することが可能なペースト塩ビを得ることができるものの、特にペースト塩ビゾルの粘度の経時変化に対する安定性を要求される用途、例えば自動車用アンダーコート、自動車用シーラント等の用途に用いる場合には、満足できるものではなかった。
一方、特許文献2に提案の方法において、粘度の経時変化が比較的少ないペースト塩ビゾルを提供することが可能なものの、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂の提供を目的としたものではなく、また長期の粘度安定性については検討されていないものであった。
また、特許文献3に提案の方法においては、重合時間の短縮化は可能なものであるが得られるペースト加工用塩化ビニル系樹脂の品質、特にペースト塩ビゾルの粘度の経時変化に対する安定性等については何ら検討されていないものであった。
そこで、本発明は、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が極めて少なく、低温加工時の機械的強度にも優れ、コート剤、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れた特性を有するペースト塩ビゾルとすることが可能なペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、特定の重合度と特定量の酢酸ビニル残基を有する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、特定の化合物及びアルキル硫酸エステル塩を含有するペースト加工用塩化ビニル系樹脂が、機械的強度に優れ、粘度の経時変化が極めて少ないものとなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、平均重合度が1500を越えて2500以下、酢酸ビニル残基単位を6〜10重量%有する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、下記一般式(I)で表される化合物100〜3000ppm及びアルキル硫酸エステル塩2000〜10000ppmを含有することを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂に関するものである。
(式中、Rは炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を示し、Rは水素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を示し、Rは水素又はプロペニル基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは1〜200の整数を示し、Mはアルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を示す。)
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、平均重合度が1500を越えて2500以下、酢酸ビニル残基単位を6〜10重量%有する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、上記一般式(I)で表される化合物100〜3000ppm及びアルキル硫酸エステル塩2000〜10000ppmを含有するものである。
該塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、平均重合度が1500を越えて2500以下であり、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れたものとなることから、平均重合度1600〜2400であることが好ましい。ここで、平均重合度が、1500以下である場合、低温加工での機械的強度に劣るものとなる。一方、平均重合度が2500を越える場合、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が大きなものとなる。なお、本発明における平均重合度は、例えばJIS−K6721に準拠した方法により求めることができる。
また、該塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル残基を6〜10重量%共重合したものであり、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れたものとなることから6〜8重量%であることが好ましい。ここで、酢酸ビニル残基含有量が6重量%未満のものである場合、ペースト塩ビを低温加工に供した際の成形品は機械的強度の低いものとなる。一方、酢酸ビニル残基含有量が10重量%を超えるものである場合、ゾルとした際の粘度の経時変化が大きいものとなる。
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、上記一般式(I)で示される化合物を100〜3000ppmで含有するものである。なお、該化合物の含有量が100ppm未満である場合、ペースト塩ビゾルを調製した際の粘度の経時変化が大きいものとなる。一方、3000ppmを超える場合、製造時の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の重合反応が遅くなり、実質上本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得ることが困難となる。
ここで、Rは炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を示し、Rは水素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を示し、Rは水素又はプロペニル基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは1〜200の整数を示し、Mはアルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を示し、中でも、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れたものとなることから、Rの炭素数は7〜11、R及びRは水素、Aは炭素数2〜3のアルキレン基、nは1〜40であることが好ましい。そして、該一般式(1)で示される化合物としては、例えばノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モルランダム付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールプロピレンオキシド10モルランダム付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールブチレンオキシド4モルブロック付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールエチレンオキシド30モルブロック付加体硫酸エステルナトリウム塩等が挙げられ、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れたものとなることから、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩であることが好ましい。
該一般式(I)で示される化合物は、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を製造する際には、界面活性剤としても作用するものであるが、本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂においては、ペースト塩ビゾルとした際の保存安定性、粘度経時変化の抑制にもその効果を発現するものであり、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れたものとなることから、500〜2000ppmを含有するものであることが好ましい。
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、アルキル硫酸エステル塩を2000〜10000ppm含有するものであり、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れたものとなることから、2000〜8000ppmであることが好ましい。また、炭素数が10〜14のアルキル硫酸エステル塩であることが好ましい。そして、アルキル硫酸エステル塩としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウムなどのアルキル硫酸エステル塩類等が挙げられる。ここで、アルキル硫酸エステル塩の含有量が2000ppm未満である場合、ペースト加工用塩化ビニル系重合体とする際の重合が不安定となり、安定して本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得ることが困難となる。一方、10000ppmを超える場合、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が大きいものとなる。
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、特にペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れたものとなることから、増粘率が100%未満となるペースト加工用塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。その際の増粘率の測定方法としては、例えば、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、フタル酸ジイソノニル100重量部、表面処理炭酸カルシウム70重量部、希釈剤15重量部を配合し、ペースト塩ビゾルを調製し、23℃、2時間保管後の粘度(A)とその後、40℃、7日間保管後の粘度(B)をB8H型回転粘度計を用い回転数20rpmの条件にて測定し、下記式により増粘率を求めることができる。
増粘率(%)=100×(粘度(B)−粘度(A))/粘度(A)
なお、表面処理炭酸カルシウムとしては、例えば脂肪酸ナトリウム塩又は脂肪酸カリウム塩を含む表面処理剤等で表面処理した炭酸カルシウムを挙げることができ、市販品としては、例えば(商品名)Viscolite−OS(白石カルシウム株式会社製)を挙げることができる。また、希釈剤としては、例えばノルマルパラフィン系炭化水素系溶剤、イソパラフィン系炭化水素溶剤、ナフテン系炭化水素溶剤、芳香族系炭化水素溶剤等を挙げることができ、市販品としては、例えば(商品名)Exxsol D40(東燃ゼネラル石油株式会社製)を挙げることができる。
また、本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、特に低温加工での機械的強度に優れるものとなり、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れたものとなることから、引張強度が9.0MPa以上となるペースト加工用塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。その際の引張強度の測定方法としては、例えば、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、フタル酸ジイソノニル60重量部、安定剤2重量部を配合し、ペースト塩ビゾルを調製し、0.5mm厚に塗布したシートから、JIS3号ダンベル試験片を用い、23℃、200mm/minの条件で測定し、引張強度を求めることができる。なお、安定剤としては、塩化ビニル用安定剤を挙げることができ、例えば鉛、バリウム、亜鉛、カルシウム、銅などの金属石鹸、それらの混合物を挙げることができる。そして、市販品としては、例えば(商品名)SC32(ADEKA社製)を挙げることができる。
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、平均粒子径を特に制限するものではなく、中でも、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れたものとなることから、平均粒子径0.8〜2.0μmであることが好ましく、特に1.0〜1.5μmであることがさらに好ましい。
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、本発明の目的を奏する限りペースト加工用塩化ビニル系樹脂を製造する際に用いられる連鎖移動剤、架橋剤、脂肪族高級アルコール、緩衝剤、水溶性開始剤、還元剤等を含有してもよい。
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法としては、該ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得ることが可能であれば如何なる方法であってもよく、例えば、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体=94/6〜85/15(重量%)よりなる混合単量体を、重合開始剤の存在下において水性媒体中で重合を行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を製造するに際し、重合開始前に1段目仕込みとして、酢酸ビニル単量体全量と塩化ビニル単量体うちの15〜45重量%を仕込み、重合を開始し、残りの塩化ビニル単量体を2段階以上に分割して追加仕込みを行い、それぞれの追加仕込みはそれまでに仕込まれた単量体の重合転化率が80を超えて95重量%に達する前の期間に開始し、かつ重合開始後に上記一般式(I)で示される化合物及びアルキル硫酸エステル塩を添加するペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法を挙げることができる。
該製造方法においては、酢酸ビニル残基を6〜10重量%含有する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を効率的に製造することが可能となることから、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体=94/6〜85/15(重量%)よりなる混合単量体を用いてなることが好ましく、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れるものを効率的に製造することが可能となることから、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体=92.5/7.5〜90/10(重量%)よりなることが好ましい。
重合開始剤としては、重合開始剤の範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物,ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルペルオキシピバレート、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカボネート等の過酸化物,等の油溶性重合開始剤等を挙げることができる。また、後述するシードミクロ懸濁重合法の際には、油溶性開始剤を含む種粒子(シード)であってもよい。
該製造方法は、1段目仕込みとして重合開始前の系内に、酢酸ビニル単量体全量と塩化ビニル単量体うち15〜45重量%に相当する塩化ビニル単量体を仕込むものであり、このような仕込み、特に重合開始間前に酢酸ビニル単量体の全量の仕込みを行うことにより、機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化の小さいペースト加工用塩化ビニル系樹脂を効率よく製造することが可能となるものである。
そして、該製造方法においては、重合開始後に、残りの塩化ビニル単量体を2段階以上に分割して追加仕込みを行い、それぞれの追加仕込みはそれまでに仕込まれた単量体の重合転化率が80を超えて95重量%に達する前の期間に開始するものであり、このような追加仕込みを行うことにより、機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化の小さいペースト加工用塩化ビニル系樹脂を効率よく製造することが可能となるものである。
該製造方法においては、上記一般式(I)で表される化合物を界面活性剤として添加するものであり、該一般式(I)で表される化合物の添加方法としては、機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化の小さいペースト加工用塩化ビニル系樹脂を効率よく製造することが可能となることから、重合開始前又は重合開始後の重合中に連続又は一括で仕込むことが好ましく、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れるものを効率的に製造することが可能となることから、重合開始後から重合転化率が85%に達するまでに連続又は一括で仕込むことが好ましい。
また、該製造方法においては、該アルキル硫酸エステル塩を添加するものであり、該アルキル硫酸エステル塩の添加方法は、機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化の小さいペースト加工用塩化ビニル系樹脂を効率よく製造することが可能となることから、重合開始前又は重合開始後の重合中に連続又は一括で仕込むことが好ましく、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れるものを効率的に製造することが可能となることから、重合開始後から重合転化率が85%に達するまでに連続又は一括で仕込むことが好ましい。
そして、該製造方法における重合法としては、例えば塩化ビニル系単量体、界面活性剤、油溶性重合開始剤、必要に応じて脂肪族高級アルコール等の乳化補助剤を脱イオン水に添加しホモジナイザー等で混合分散した後、緩やかな攪拌下で重合を行うミクロ懸濁重合法;ミクロ懸濁重合法で得られた油溶性重合開始剤を含む種粒子(シード)を用いて行うシードミクロ懸濁重合法;塩化ビニル系単量体を脱イオン水、界面活性剤、水溶性重合開始剤とともに緩やかな攪拌下で重合を行う乳化重合法で得られた粒子をシードとして用いて乳化重合を行うシード乳化重合法等があげられ、その際に、例えば、重合温度は30〜80℃とし、ペースト塩ビラテックスとして得ることができる。これらの重合により製造されたペースト塩ビラテックスを噴霧乾燥し、必要に応じて粉砕することにより本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得ることができる。
以下に、該製造方法のより好ましい態様としてのシードミクロ懸濁重合法による製造方法を示す。
シードミクロ懸濁重合法としては、例えば塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体よりなる混合単量体を、脱イオン水、上記一般式(I)で表される化合物、アルキル硫酸エステル塩、油溶性開始剤を含む種粒子、緩衝剤、必要に応じて油溶性開始剤を含まない種粒子、他の界面活性剤、連鎖移動剤、架橋剤としての多官能性単量体、水溶性開始剤、還元剤、脂肪族高級アルコールの存在下で、緩やかに攪拌しながら重合器内の温度を上げて重合反応を開始し、所定の転化率に達するまで重合を行う方法を挙ることができ、この際の重合温度としては、例えば30〜70℃である。また、塩化ビニル単量体の2段階以上の分割追加仕込みに合わせて、重合温度の低下を行うことが好ましい。界面活性剤としては、上記一般式(I)で表される化合物、アルキル硫酸エステル塩の他、必要に応じて他の界面活性剤等を更に用いてもよい。
また、油溶性開始剤を含む種粒子、油溶性開始剤を含まない種粒子、連鎖移動剤、架橋剤、脂肪族高級アルコール、緩衝剤、水溶性開始剤、還元剤としては、特開2014−129471号公報、特開2009−221335号公報、特開2003−012811号公報等の記載を参照することもでき、これらは単独又は2種類以上を混合しても用いることができる。
そして、得られたペースト塩ビラテックスをペースト加工用塩化ビニル系樹脂とする際に用いる乾燥機は一般的に使用されているものでよく、例えば、噴霧乾燥機等が挙げられる(具体例としては、「SPRAY DRYING HANDBOOK」(K.Masters著、3版、1979年、GeorgegodwinLimitedより出版)の121頁第4.10図に記載されている各種の噴霧乾燥機)。乾燥用空気入口温度、乾燥用空気出口温度に特に制限はなく、乾燥用空気入口温度は80〜200℃、乾燥用空気出口温度は45〜75℃が一般的に用いられる。乾燥用空気入口温度は100〜170℃、乾燥用空気出口温度は50〜70℃が更に好ましい。乾燥後に得られたペースト加工用塩化ビニル樹脂は、ペーストビラテックスを構成する粒子の集合体であり、通常10〜100μmの顆粒状である。乾燥出口温度が55℃を超える場合には、得られた顆粒状ペースト加工用塩化ビニル樹脂を粉砕した方が可塑剤への分散の点から好ましく、乾燥出口温度が55℃ 以下の場合には、顆粒状のままでも粉砕して使用してもどちらでも良い。
本発明のペースト加工用塩化ビニル樹脂は、可塑剤に分散させて調製したペースト塩ビゾルの粘度の経時変化が少なく、低温加工時の機械的強度に優れ、コート剤、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れた特性を有するものである。
以下に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に実施例より得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂の評価方法を示す。
<増粘率の測定方法>
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部、フタル酸ジイソノニル100重量部(株式会社ジェイプラス製)、脂肪酸塩表面処理炭酸カルシウム((商品名)Viscolite−OS 白石工業株式会社製)70重量部、ナフテン系炭化水素溶剤((商品名)Exxsol D40 東燃ゼネラル石油株式会社製)15重量部からなるペースト塩ビゾルの23℃にて保管した際の、混練2時間後のB8H型回転粘度計で20rpm条件にて測定した粘度をAとし、該ゾルを2時間後の測定後に40℃にて保管し混練から7日間経過後に40℃下にて測定した粘度をBとした際に、下記式にて求めた。
増粘率(%)=100×(B−A)/A
<引張強度の測定方法>
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部、フタル酸ジイソノニル60重量部(株式会社ジェイプラス製)、Ca/Zn系安定剤2重量部((商品名)SC32 ADEKA社製)からなるペースト塩ビゾルを脱泡した後、0.5mm厚に塗布し、140℃×1分間加熱して得られたシートから、JIS3号ダンベルで作製された試験片を23℃条件で200mm/minの条件で測定した。
<平均重合度の測定>
JIS−K6721に準拠し求めた。
<酢酸ビニル残基重量%の測定方法>
ペースト塩ビ中に含有する酢酸ビニル残基重量%(VAc含量)は、ペースト塩ビ100mgと臭化カリウム10mgを混合し、すりつぶして成形した測定サンプルを、赤外分光光度計(島津社製、(商品名)FTIR−8100A)を使用して、赤外吸収スペクトル測定し、下記式より算出した。
ペースト塩ビ中に含有する酢酸ビニル残基重量%(VAc含量)
=(3.73×B/A+0.024)×1.04
A:1430cm−1付近のC−H面内変角による吸収ピークトップのAbs.値。
B:1740cm−1付近のC=O伸縮による吸収ピークトップのAbs.値。
合成例1(開始剤等含有シードの製造例)
1mオートクレーブ中に脱イオン水360kg、塩化ビニル単量体300kg、過酸化ラウロイル6kg及び15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液30kgを仕込み、該重合液をホモジナイザーを用いて2時間循環し、均質化処理後、温度を45℃に上げて、重合を進めた。45℃における塩化ビニルの飽和蒸気圧より0.2MPa圧力が低下した後、未反応の塩化ビニル単量体を回収した。得られた開始剤等含有シードラテックス(以下、シード1と略記する)の平均粒子径は0.60μm、固形分濃度は32%であった。
実施例1
1mオートクレーブ中に脱イオン水325kg、1段目仕込み単量体として塩化ビニル単量体を109kg(混合単量体の全仕込み量に対して27重量%)と酢酸ビニル単量体を36kg(混合単量体の全仕込み量に対して9重量%)、ラウリル硫酸ナトリウムを1000ppm(混合単量体100重量部に対して)、シード1を63kg、ジアリルフタレートを500ppm、硫酸銅を5ppm仕込み、その後、この反応混合物の温度を45℃に上げて1段目重合を開始するとともに、0.2重量%アスコルビン酸水溶液を全重合時間を通じて、重合温度を維持するように連続的に添加した。重合転化率が85%となったところで、2段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体109kg(混合単量体の全仕込み量に対して27重量%)を15分間で1mオートクレーブに仕込み、重合温度42.5℃にて2段目重合を継続した。更に、1段目仕込み単量体と2段目仕込み単量体の合計に対して重合転化率が87%となったところで、3段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体146kg(混合単量体の全仕込み量に対して37重量%)を15分間で1mオートクレーブに仕込み、重合温度40℃にて3段目重合を継続し、混合単量体の合計に対して重合転化率が90%となったところで重合を終了した。
なお、重合開始してから重合終了までの間、ラウリル硫酸ナトリウム6000ppm(混合単量体100重量部に対して)とノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液(第一工業製薬製:(商品名)アクアロンHS−10)1000ppm(混合単量体100重量部に対して)を連続的に添加した。
そして、未反応単量体を回収してペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスとし、スプレードライヤーにて、熱風入口160℃、出口温度55℃で噴霧乾燥を行って、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、平均重合度2000、酢酸ビニル残基単位の含有量7.3重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩1111ppm、ラウリル硫酸ナトリウム7778ppmを含むものであった。また、得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてペースト塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例2
ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液1000ppmの代わりにノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液500ppmとした以外は、実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、平均重合度2000、酢酸ビニル残基単位の含有量7.5重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩556ppm、ラウリル硫酸ナトリウム7778ppmを含むものであった。また、得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてペースト塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例3
ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液1000ppmの代わりにノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液2000ppmとしたこと以外は、実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、平均重合度2000、酢酸ビニル残基単位の含有量7.2重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩2222ppm、ラウリル硫酸ナトリウム7778ppmを含むものであった。また、得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてペースト塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例4
重合を開始してから重合終了までの間に添加するラウリル硫酸ナトリウムの添加量6000ppmの代わりに3000ppmとしたこと以外は、実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、平均重合度2000、酢酸ビニル残基単位の含有量7.2重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩1111ppm、ラウリル硫酸ナトリウム4444ppmを含むものであった。また、得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてペースト塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例5
酢酸ビニル単量体の混合単量体に対する仕込み量9重量%の代わりに7.5重量%とした以外は、実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、平均重合度2100、酢酸ビニル残基単位の含有量6.5重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩1111ppm、ラウリル硫酸ナトリウム7778ppmを含むものであった。また、得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてペースト塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例6
酢酸ビニル単量体の混合単量体に対する仕込み量9重量%、1段目の重合温度45℃、2段目の重合温度42.5℃、3段目の重合温度40℃の代わりに酢酸ビニル単量体の混合単量体に対する仕込み量11.0重量%、1段目の重合温度40℃、2段目の重合温度37.5℃、3段目の重合温度35℃とした以外は、実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、平均重合度2200、酢酸ビニル残基単位の含有量8.8重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩1111ppm、ラウリル硫酸ナトリウム7778ppmを含むものであった。また、得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてペースト塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例7
ジアリルフタレートを500ppmを仕込まなかったこと以外は、実施例5と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、平均重合度1600、酢酸ビニル残基単位の含有量6.5重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩1111ppm、ラウリル硫酸ナトリウム7778ppmを含むものであった。また、得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてペースト塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
比較例1
ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液を用いなかった以外は、実施例1と同様に行い、塩化ビニル系樹脂を得た。
得られた塩化ビニル系樹脂は、平均重合度2000、酢酸ビニル残基単位の含有量7.3重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩0ppm、ラウリル硫酸ナトリウム7778ppmを含むものであった。また、得られた塩化ビニル系樹脂を用いて塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表2に示す。得られた塩ビゾルは、増粘性に劣るものであった。
比較例2
ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液1000ppmの代わりにノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液5000ppmとした以外は、実施例1と同様の方法によりペースト塩化ビニル系樹脂の製造を試みたが、重合時間が20時間以上となったため、重合を中断した。ペースト加工用塩化ビニル系樹脂が得ることは出来なかった。
比較例3
重合を開始してから重合終了までの間に添加するラウリル硫酸ナトリウムの添加量6000ppmの代わりに15000ppmとした以外は、実施例1と同様に行い、塩化ビニル系樹脂を得た。
得られた塩化ビニル系樹脂は、平均重合度2000、酢酸ビニル残基単位の含有量7.5重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩1111ppm、ラウリル硫酸ナトリウム17778ppmを含むものであった。また、得られた塩化ビニル系樹脂を用いて塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表2に示す。得られた塩ビゾルは、増粘性に劣るものであった。
比較例4
酢酸ビニル単量体の混合単量体に対する仕込み量9重量%の代わりに5重量%とした以外は、実施例1と同様に行い、塩化ビニル系樹脂を得た。
得られた塩化ビニル系樹脂は、平均重合度2100、酢酸ビニル残基単位の含有量4.2重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩1111ppm、ラウリル硫酸ナトリウム7778ppmを含むものであった。また、得られた塩化ビニル系樹脂を用いて塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表2に示す。得られた塩化ビニル系樹脂は、引張強度が低いものであった。
比較例5
酢酸ビニル単量体の混合単量体に対する仕込み量9重量%の代わりに15重量%とした以外は、実施例1と同様に行い、塩化ビニル系樹脂を得た。
得られた塩化ビニル系樹脂は、平均重合度1800、酢酸ビニル残基単位の含有量12.1重量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩1111ppm、ラウリル硫酸ナトリウム7778ppmを含むものであった。また、得られた塩化ビニル系樹脂を用いて塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表2に示す。得られた塩ビゾルは、増粘率に劣るものであった。
比較例6
酢酸ビニル単量体を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に行い、塩化ビニル樹脂を得た。
得られた塩化ビニル樹脂は、平均重合度2200、酢酸ビニル残基単位の含有量0重量%の塩化ビニル重合体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩1111ppm、ラウリル硫酸ナトリウム7778ppmを含むものであった。また、得られた塩化ビニル樹脂を用いて塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表2に示す。得られた塩化ビニル樹脂は、引張強度が低いものであった。
比較例7
ラウリル硫酸ナトリウムの代わりにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いた以外は、実施例1と同様に行い、塩化ビニル系樹脂を得た。
得られた塩化ビニル系樹脂は、平均重合度2000、酢酸ビニル残基単位の含有量7.6重量%の塩化ビニル系重合体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩1111ppmを含み、アルキル硫酸エステル塩含有量は0ppmであった。また、得られた塩化ビニル系樹脂を用いて塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表2に示す。得られた塩ビゾルは、増粘率に劣るものであった。
比較例8
酢酸ビニル単量体の混合単量体に対する仕込み量9重量%、1段目仕込み塩化ビニル単量体27重量%、2段目仕込みの塩化ビニル単量体27重量%、3段目仕込みの塩化ビニル単量体37重量%、ラウリル硫酸ナトリウムの代わりに、酢酸ビニル単量体の混合単量体の全仕込み量に対して6重量%、1段目仕込みの塩化ビニル単量体30重量%、2段目仕込みの塩化ビニル単量体34重量%、3段目仕込みの塩化ビニル単量体を30重量%とし、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムとし、ジアリルフタレートを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に行い、塩化ビニル系樹脂を得た。
得られた塩化ビニル系樹脂は、平均重合度1700、酢酸ビニル残基単位の含有量5.3重量%の塩化ビニル系重合体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩1111ppmを含み、アルキル硫酸エステル塩含有量は0ppmであった。また、得られた塩化ビニル系樹脂を用いて塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表2に示す。得られた塩化ビニル系樹脂は、引張強度の低いものであった。
比較例9
重合前に仕込むラウリル硫酸ナトリウム1000ppm、シード1を63kgの代わりに、重合前にラウリル硫酸ナトリウム857ppmとノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液143ppm、シード1を50kgとし、塩化ビニル単量体364kg(混合単量体の全仕込み量に対して91重量%)を重合前に一括して仕込んだこと、ジアリルフタレートを添加しなかったこと、反応混合物の温度を48℃に上げて重合を開始したこと以外は、実施例1と同様に行い、塩化ビニル系樹脂を得た。
得られた塩化ビニル系樹脂は、平均重合度1350、酢酸ビニル残基単位の含有量5.5重量%の塩化ビニル系重合体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩1270ppm、ラウリル硫酸ナトリウム7639ppmを含むものであった。また、得られた塩化ビニル系樹脂を用いて塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表2に示す。得られた塩化ビニル系樹脂は、増粘率に劣り、引張強度の低いものであった。
比較例10
1段目、2段目、3段目の重合温度を54℃としたこと以外は、実施例1と同様に行い、塩化ビニル系樹脂を得た。
得られた塩化ビニル系樹脂は、平均重合度1000、酢酸ビニル残基単位の含有量7.2重量%の塩化ビニル系重合体、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩1111ppm、ラウリル硫酸ナトリウム7778ppmを含むものであった。また、得られた塩化ビニル系樹脂を用いて塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表2に示す。得られた塩化ビニル系樹脂は、増粘率に劣り、引張強度の低いものであった。
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、可塑剤に分散させて調製したペースト塩ビゾルの粘度の経時変化が少なく、低温加工した際の機械的強度に優れ、コート剤、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れた特性を有するものであり、その産業上の利用価値は高いものである。

Claims (7)

  1. 平均重合度が1500を越えて2500以下、酢酸ビニル残基単位を6〜10重量%有する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、下記一般式(I)で表される化合物100〜3000ppm及びアルキル硫酸エステル塩2000〜10000ppmを含有することを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂。

    (式中、Rは炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を示し、Rは水素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を示し、Rは水素又はプロペニル基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは1〜200の整数を示し、Mはアルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を示す。)
  2. 一般式(I)で表される化合物が、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩及びオクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩からなる群より選択される化合物であることを特徴とする請求項1記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
  3. アルキル硫酸エステル塩が、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム及びラウリル硫酸アンモニウムからなる群より選択されるアルキル硫酸エステル塩であることを特徴とする請求項1又は2記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
  4. 下記方法による引張強度が9.0MPa以上となるペースト加工用塩化ビニル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂。引張強度の測定方法;ペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、フタル酸ジイソノニル60重量部、Ca/Zn系安定剤である塩化ビニル樹脂用安定剤2重量部を配合し、ペースト塩ビゾルを調製し、0.5mm厚に塗布したシートから、JIS3号ダンベル試験片を用い、23℃、200mm/minの条件で測定し、引張強度を求める
  5. 塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体=92.5/7.5〜90/10(重量%)よりなる混合単量体を、重合開始剤の存在下において水性媒体中で重合を行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を製造するに際し、重合開始前に1段目仕込みとして、酢酸ビニル単量体全量と塩化ビニル単量体うちの15〜45重量%とを仕込み、重合開始し、残りの塩化ビニル単量体を2段階以上に分割して追加仕込みし、それぞれの追加仕込みは、それまでに仕込まれた単量体の重合転化率が80重量%を越えて95重量%に達する前の期間に開始し、かつ重合開始前又は重合開始後に前記一般式(I)で示される化合物及びアルキル硫酸エステル塩を添加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  6. 塩化ビニル単量体の2段階以上の分割追加仕込みに合わせて、重合温度の低下を行うことを特徴とする請求項記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  7. 前記一般式(I)で示される化合物及びアルキル硫酸エステル塩を重合開始から終了まで連続的に添加することを特徴とする請求項又は6に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
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