JP6570412B2 - アンカーボルト構造体 - Google Patents
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Description
アンカーボルトは、その上端部が突き出た状態で基礎躯体に埋設されている。柱脚部に略正方形のベースプレートが取り付けられ、このベースプレートの四隅に開けられた孔にアンカーボルトを挿入して柱が固定される。したがって、柱の設置精度はアンカーボルトの設置精度に依存するのであり、アンカーボルトは正確に設置されなければならない。
図1を参照して、杭打ちから柱部材の据え付けまでの工程を説明する。
まず、杭50を地中に打設する。
杭の打設方法としては、既製杭の杭頭を直接打撃する打込杭工法、既製杭の先頭部に拡翼を設け、この杭に回転力を与えて地中に貫入させる回転杭工法またはベノト杭に代表されるような場所打ち杭工法などがある。
そして、基礎躯体のコンクリート60と杭50とが一体的に定着するのを補強するため、杭50の頭部に杭頭補強筋51を取り付ける。
ここでは、先行技術(特許文献1、2、3)の構成を採用し、矩形枠状の定着プレート81を用いたアンカーボルト82の構造体を杭50を取り囲むように組み立てる。この後、地中梁の配筋や型枠の組み付けがあり(図1中では省略)、その後、コンクリート60を打ち込んで基礎躯体を作る。
基礎躯体から突き出たアンカーボルト82の頭部ネジに柱部材90に取り付けたベースプレート91を固定する。
図2において、杭50の位置が横(紙面左側)にずれた場合でもアンカーボルト82の据え付け位置は変更できないので、矩形枠状の定着プレート81は杭頭補強筋51と干渉してしまう。
したがって、矩形枠状の定着プレート81を一部溶断して杭頭補強筋51と定着プレート81とが干渉しないようにしなければならない。
図2では、枠の一辺を溶断して、コ字状の定着プレート81にしている。
しかし、この場合、別の問題が生じる。
枠状の定着プレート81の効果でアンカーボルト82同士の相対位置が拘束されていたので、この枠状定着プレート81がなくなると、4本のアンカーボルト82は頭部がテンプレート83に付いているだけになり、アンカーボルト82の相対位置が拘束されなくなる。
特に、アンカーボルト82の下端部は何らの拘束も受けなくなり、アンカーボルト82の構造体は自立しない。
アンカーボルト82には鉛直性も要求されるので、下げ振り等を用いて鉛直性を確かめる必要があり、アンカーボルト82を鉛直に固定するのに別の困難が生じる。
基礎杭を中心に前記基礎杭を取り囲むように据え付けられる4本のアンカーボルトと、
前記アンカーボルトの引き抜き抵抗となる定着プレートと、を備えたアンカーボルト構造体であって、
前記定着プレートとして、拘束型定着プレートと、孤立型定着プレートと、があり、
前記拘束型定着プレートは、前記4本のアンカーボルトのうちの3本の前記アンカーボルト間を架設するように設けられ、
前記孤立型定着プレートは、残る1本の前記アンカーボルトに取り付けられている
ことを特徴とする。
前記拘束型定着プレートは、
2枚の直線状のバー型定着プレートで構成されており、
1枚の前記バー型定着プレートは、前記3本のアンカーボルトのうちの一方の端の前記アンカーボルトと中央の前記アンカーボルトとの間を架設し、
残る一枚の前記バー型定着プレートは、前記3本のアンカーボルトのうちの他方の端の前記アンカーボルトと前記中央のアンカーボルトとの間を架設している
ことが好ましい。
前記アンカーボルトの下端に連結される下軸部と、前記アンカーボルトと前記下軸部とを連結する連結ナットと、をさらに有し、
前記アンカーボルトの下部領域には雄ネジが設けられ、
前記下軸部の上部領域には、前記アンカーボルトの前記雄ネジとは逆向きの螺旋になっている雄ネジが設けられ、
前記連結ナットは、筒状であって、その内側に螺旋方向が互いに逆向きになった雌ネジを有する
ことが好ましい。
前記アンカーボルトの設置位置は、前記基礎杭を囲む正方形または長方形の4隅である
ことが好ましい。
前記アンカーボルト構造体を設置するアンカーボルト設置方法であって、
前記基礎杭がずれた方向に、前記孤立型定着プレートが取り付けられた前記アンカーボルトがくるようにして、前記アンカーボルト構造体を設置する
ことを特徴とするアンカーボルト設置方法。
前記基礎杭の周囲に捨てコンクリートを打ち、
前記捨てコンクリートの上にアンカーボルトの設置位置を墨出しし、
墨出しした位置に台板を固定し、
前記台板の上に再度墨出しし、
この墨出しした位置に前記アンカーボルト構造体を設置する
ことが好ましい。
柱脚部の底面に略正方形であって4隅に穴を備えたベースプレートが取り付けられており、
前記アンカーボルト構造体の上端部が前記ベースプレートの前記穴に通されて柱が固定される
ことを特徴とする。
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
図4に第1実施形態を示す。
図5に第1実施形態の分解斜視図を示す。
本実施形態のアンカーボルト構造体100においては、定着プレートを一つのL字型定着プレート210と一つの孤立型プレート310とで構成した点に特徴を有する。
定着プレートは二つに分離しており、一つはL字型の拘束型定着プレート210であり、もう一つは孤立型定着プレート310である。
拘束型定着プレート210は、1枚の鋼板から切り出され、所定の幅でL字型を構成している。
孤立型定着プレート310は、所定の面積を有し、ここでは、矩形状としているが、円形、楕円形、三角形、多角形でもよい。
孤立型定着プレート310にも、アンカーボルト120を通す挿通孔が穿設されている。
3本のアンカーボルト120を拘束型定着プレート210の挿通孔に通し、上下のナット321、322で各アンカーボルト120と定着プレート210とを固定する。
同じく、残り一本のアンカーボルト120を孤立型定着プレート310の挿通孔に通し、上下のナット321、322でアンカーボルト120と定着プレート310とを固定する。
アンカーボルト120の上端をナットで仮止めしておく。
これでアンカーボルト構造体100の組み立てが完了である。
捨てコンクリート61が固まったら、捨てコンクリート61の上にアンカーボルト120の据え付け位置を墨出しする。
墨出しで位置がでたら、その位置に台板190を取り付ける。台板190は、捨てコンクリート61上にネジ191で止め付けられる。台板190の上にもう一度墨出しし、組み立てておいたアンカーボルト構造体100の各下軸部110を墨出しされた位置に載せる。
下げ振り等を用いて鉛直を確認しながら連結ナット130を回して、高さ調整を行う。調整が済んだら、下軸部110の下端を台板190に溶接して止める。再び、下げ振り等を用いて鉛直を確認し、必要があれば最終調整を行う。
これで、アンカーボルト120の据え付けは完了である。
さて、本実施形態の作用効果を図6、図7、図8を参照して説明する。
本実施形態は、L字型の拘束型定着プレート210と、孤立型定着プレート310と、を利用するものである。
図6(A)は、杭50を中心として本実施形態のアンカーボルト構造体100を据え付けた状態を示す図である。
杭50がずれていないので、杭頭補強筋51と定着プレート210、310とが干渉することはもちろんない。
本実施形態において、杭50が図中の左にずれても杭頭補強筋51と定着プレート210、310とは干渉しない。
本実施形態の場合、図6(A)のアンカーボルト構造体100を180度回転させて図6(C)のようにする。
アンカーボルト120同士の対応関係が分かりやすいように、図6(A)中のアンカーボルト120に時計回りにI〜IVの番号を付した。つまり、I、II、IIIのアンカーボルト120に拘束型定着プレート210が付いている。
図6(C)のように、アンカーボルト構造体100を図6(A)から180度回転させてもアンカーボルト120の据え付け位置は全く変わらない。そして、図6(C)の右にずれた杭50をうまく避けることができている。
もちろん、本実施形態であれば、杭50が上にずれても問題ない。
図7(E)で杭50が図中の下方向にずれた場合を示す。
本実施形態の場合、図6(A)のアンカーボルト構造体100を180度回転させて図7(E)のようにする(これは図6(C)と同じである)。
これで杭頭補強筋51と定着プレート210とが干渉しなくなる。
図8(F)において、杭50が図中の左上方向にずれても杭頭補強筋51と定着プレート210との干渉はない。
図8(G)のように、杭50が図中の右下方向にずれる場合、図6(A)のアンカーボルト構造体100を180度回転させて図8(G)のようにする(これは図6(C)と同じである)。
これで杭頭補強筋51と定着プレート210とが干渉しなくなる。
一方、L字型の定着プレート210により、アンカーボルト120は自立を保つことができる。
したがって、本実施形態のアンカーボルト構造体100によってアンカーボルト120の設置作業が効率的に行える。
対比例として、定着プレートを二本のバー201とし、矩形の対辺を構成するように平行に設けた場合を図9に例示する。
図9(A)や(B)に示すように、杭50が上下あるいは左右に変位する場合にはこの対比例でも対応可能である。
しかしながら、図9(C)に示すように杭50が斜めにずれる場合、定着プレート201と杭頭補強筋51とが干渉してしまう。この場合、定着プレート201を溶断するなどの追加の作業が生じる。
上記実施形態においては、拘束型定着プレート210を一本の板(例えば金属板(例えば厚鋼板))で構成していた。
拘束型定着プレートとしては、図10に示すように、バー型定着プレート201を利用して拘束型定着プレート210にしてもよい。
二つのバー型定着プレート201を相互に溶接して完全に一体となった拘束型定着プレート210にしてもよい。
あるいは、バー型定着プレート201をアンカーボルト120に固定するにあたり、二つのバー型定着プレート201を重ねて上下ナット321、322で挟み締めしてしまえば、重なった部分がずれなくなるのでアンカーボルト120同士の相対移動を拘束するには十分である。
上記実施形態では、拘束型定着プレート210は、引き抜き抵抗としての定着プレートであり、かつ、アンカーボルト120同士を拘束する拘束治具としての機能を持っていた。一の部材が二つの働きを持つのは構成部材を少なくするという点で利点がある。
一方で、定着プレートには、アンカーボルト120の引き抜き抵抗として十分な強度を持たねばならないなど満たすべき基準や規格があり、複数種類の定着プレートを用意しようとすると却ってコスト増になる場合もありうる。
そこで、図11に示すように、定着プレートは総て孤立型定着プレート310で統一し、L字型の拘束治具410を別途設けるようにしてもよい。
拘束治具410は、アンカーボルト構造体100の据え付け時にアンカーボルト構造体100の自立を支えることができればよい。針金のように細くては役目を果たさないが、ある程度の幅や厚みがある金属板(例えばアルミ板等)でも拘束治具410としては十分機能すると考えられる。
上記実施形態では、杭が4本のアンカーボルトの中心にあって、杭芯と柱心とが同軸になるように建築物が設計される場合を例示した。建築物の設計として杭芯と柱心とが一致しないような場合もあり、この場合、設計に従って、4本のアンカーボルトの中心からずれた位置に杭が打たれることになる。このような場合でも、本発明が有効なのはもちろんであり、杭が設計通りに打設されたか否かに関係なく、本発明は有効である。
すなわち、本発明を次のように表現してもよい。
柱設置位置に据え付けられる4本のアンカーボルトと、
前記アンカーボルトの引き抜き抵抗となる定着プレートと、を備えたアンカーボルト構造体であって、
前記定着プレートとして、拘束型定着プレートと、孤立型定着プレートと、があり、
前記拘束型定着プレートは、前記4本のアンカーボルトのうちの3本の前記アンカーボルト間を架設するように設けられ、
前記孤立型定着プレートは、残る1本のアンカーボルトに取り付けられている
ことを特徴とするアンカーボルト構造体。
60…コンクリート、61…捨てコンクリート、
81…定着プレート、82…アンカーボルト、83…テンプレート、
90…柱部材、
100…アンカーボルト構造体、
110…下軸部、120…アンカーボルト、121…上雄ネジ、122…下雄ネジ、
130…連結ナット、140…テンプレート、
190…台板、
201…バー型定着プレート、
210…拘束型定着プレート、
310…孤立型定着プレート、
410…拘束治具。
Claims (7)
- 基礎杭を中心に前記基礎杭を取り囲むように据え付けられる4本のアンカーボルトと、
前記アンカーボルトの引き抜き抵抗となる定着プレートと、を備えたアンカーボルト構造体であって、
前記定着プレートとして、拘束型定着プレートと、孤立型定着プレートと、があり、
前記拘束型定着プレートは、前記4本のアンカーボルトのうちの3本の前記アンカーボルト間を架設するように設けられ、
前記孤立型定着プレートは、残る1本のアンカーボルトに取り付けられている
ことを特徴とするアンカーボルト構造体。 - 請求項1に記載のアンカーボルト構造体において、
前記拘束型定着プレートは、
2枚の直線状のバー型定着プレートで構成されており、
1枚の前記バー型定着プレートは、前記3本のアンカーボルトのうちの一方の端の前記アンカーボルトと中央の前記アンカーボルトとの間を架設し、
残る一枚の前記バー型定着プレートは、前記3本のアンカーボルトのうちの他方の端の前記アンカーボルトと前記中央のアンカーボルトとの間を架設している
ことを特徴とするアンカーボルト構造体。 - 請求項1または請求項2に記載のアンカーボルト構造体において、
前記アンカーボルトの下端に連結される下軸部と、前記アンカーボルトと前記下軸部とを連結する連結ナットと、をさらに有し、
前記アンカーボルトの下部領域には雄ネジが設けられ、
前記下軸部の上部領域には、前記アンカーボルトの前記雄ネジとは逆向きの螺旋になっている雄ネジが設けられ、
前記連結ナットは、筒状であって、その内側に螺旋方向が互いに逆向きになった雌ネジを有する
ことを特徴とするアンカーボルト構造体。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載のアンカーボルト構造体において、
前記アンカーボルトの設置位置は、前記基礎杭を囲む正方形または長方形の4隅である
ことを特徴とするアンカーボルト構造体。 - 請求項1から請求項4のいずれかに記載のアンカーボルト構造体を設置するアンカーボルト設置方法であって、
前記基礎杭がずれた方向に、前記孤立型定着プレートが取り付けられた前記アンカーボルトがくるようにして、前記アンカーボルト構造体を設置する
ことを特徴とするアンカーボルト設置方法。 - 請求項5に記載のアンカーボルト設置方法であって、
前記基礎杭の周囲に捨てコンクリートを打ち、
前記捨てコンクリートの上にアンカーボルトの設置位置を墨出しし、
墨出しした位置に台板を固定し、
前記台板の上に再度墨出しし、
この墨出しした位置に前記アンカーボルト構造体を設置する
ことを特徴とするアンカーボルト設置方法。 - 柱脚部の底面に略正方形であって4隅に穴を備えたベースプレートが取り付けられており、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の前記アンカーボルト構造体の上端部が前記ベースプレートの前記穴に通されて柱が固定される柱固定方法。
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