ファンデーションやアイカラー等の固形化粧料を充填した中皿(「化粧皿」または「レフィル」と称されるものを含む)を収容して携帯する化粧料容器として、コンパクトケース等が用いられている。このコンパクトケースは、化粧料が充填された中皿と、上面に上記中皿を収容するための凹部(中皿収容凹部)が形成された容器本体と、この容器本体の上面を蓋する蓋体とから構成されており、上記中皿は、容器本体の中皿収容凹部内に交換可能に収容されている。
上記中皿を中皿収容凹部内に固定する方法としては、従来、中皿の外周側面に凹状または凹条等の被係合部を設け、これを、上記被係合部に対応する中皿収容凹部内壁面に設けられた凸部また突部等の係合部に係合させて中皿を保持する方法がとられる。また、中皿内の化粧料を使い尽くした際は、上記中皿収容凹部の底面に設けられた小穴等から、棒状の物体を差し込んで中皿を強く押し上げ、係合が外れて浮き上がった中皿を持ち上げて取り外し、交換することが行われる。
ところで、ファンデーションやアイカラー等は、近年、上記コンパクトケース等の化粧料容器の中に複数の中皿を配列するとともに、これらを、使用する季節や流行等に応じて頻繁に交換することが行われるようになってきている。そこで、中皿収容凹部内の中皿を、軽く弱い力で簡単に脱着・交換することのできる化粧料容器の構成が、複数提案されている。
例えば、特許文献1には、図4に示すように、中皿(化粧皿)21が中皿収容凹部22に収容された際に、この中皿21の係合用凹部21aに対応する中皿収容凹部22の内壁面22aに、その先端側に上記係合用凹部21aに係合する係合用凸部23aを有する樹脂製の板ばね部23(特許文献1においては可撓性の爪部)を設け、この板ばね部23の可撓性(弾性)を利用した押圧により、上記中皿21を、この板ばね部23を有する内壁面22aとは反対側の内壁面22bに押し付けて、着脱自在に固定する構成が開示されている。なお、図中の符号Fは化粧料を示す。
また、本出願人も、図5に示すように、容器本体の中皿収容凹部31の前側面に、前方に向かって延びる前上がり傾斜状の凹部31a(ビニールチューブ配設用凹部)を形成し、この凹部31a内に柔軟な弾性中空体32(ビニールチューブ)を収容して、その押圧力により中皿33を中皿収容凹部31の後側面31b側に押し付け、この中皿33が中皿収容凹部31から抜け出すのを防止するようにした化粧料容器を、既に提案している(特許文献2を参照)。
なお、上記図5に示す化粧料容器も、中皿33を交換する際は、前記従来のものと同様、中皿収容凹部31の底面に設けられた小穴(小孔)34等から、棒状の物体を差し込んで中皿33を持ち上げ、これを取り外すようになっている。
前記図4,図5に記載の化粧料容器によれば、中皿収容凹部22等に着脱自在に固定された中皿21等を簡単に脱着して交換することができる。しかしながら、図4のような構成の化粧料容器においては、その構造上、中皿収容凹部22の内壁面22aに、上記板ばね部23を形作るためのスリット,切れ込みや隙間等を設けざるを得ないため、中皿21内の化粧料Fや、使用時に中皿周辺に飛散し中皿収容凹部22に入り込んでしまった化粧料Fが、このスリット等を通って容器外に漏れ出てしまうおそれがある。また、この樹脂製の板ばね部23は、成形時に複雑な形状の金型を用いるため寸法管理が難しく、塑性変形を起こしやすいという欠点もある。
一方、図5のような構成の化粧料容器は、柔軟な弾性中空体32配設用の凹部31aの形状がシンプルであるため、前記化粧料容器のような成形時の問題や塑性変形等は発生し難いが、依然として、化粧料Fが容器外に漏出するおそれのある構造(中皿脱着用の小穴34等)を有している。また、前上がり傾斜状の凹部31a内に配設された弾性中空体32は、上記中皿33の交換時等にこの凹部31aから抜け出してしまう等するため、紛失等を防止するために、上記弾性中空体32を接着剤で固定しておく等の手間が生じる。上記各化粧料容器において、これらの点についてそれぞれ、その改善が望まれている。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、手間なく組み立てることが可能で、中皿に充填された化粧料が漏れ出るおそれがなく、この中皿を脱着用棒状体等を用いずに簡単に交換することのできる化粧料容器の提供をその目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、化粧料が充填される中皿と、上面に中皿収容凹部が形成された容器本体と、上記中皿をこの中皿収容凹部内に着脱自在に固定するための棒状弾性部材と、上記容器本体を蓋する蓋体とを備え、上記容器本体の中皿収容凹部は、少なくとも一対の、互いに平行な配置で対向する垂直な内壁面を有し、上記一対の内壁面の一方の面の下部に、この内壁面に設けられた開口から内壁内部に向かって堀り込み形状の、棒状弾性部材保持用凹部が形成され、この棒状弾性部材保持用凹部の下側内面が、上記中皿収容凹部の底面より低く設定されているとともに、上記一対の内壁面の他方の面の高さが、上記中皿収容凹部に収容される中皿の高さよりも低く設定されており、上記中皿収容凹部に収容された中皿の一方側の外側面が、上記棒状弾性部材保持用凹部に嵌入された棒状弾性部材に押圧され、この中皿の他方側の外側面が、上記中皿収容凹部の一対の内壁面の他方の面に押し付けられて、上記中皿の中皿収容凹部からの抜け出しが防止されるようになっている化粧料容器を第1の要旨とする。
また、本発明は、そのなかでも、上記棒状弾性部材保持用凹部の下側内面が、上記中皿収容凹部の底面から連続する下り傾斜面に形成されている化粧料容器を第2の要旨とし、なかでも特に、上記棒状弾性部材保持用凹部の下側内面に対向する上側内面が、上記下側内面と平行な傾斜面、もしくは、上記棒状弾性部材保持用凹部の上下方向の開口幅を開口側に向かって広げる傾斜面に形成されている化粧料容器を第3の要旨とする。
さらに、本発明は、そのなかでも、上記中皿が、その外周側面に上記容器本体との係合用凹部または係合用凸部を有する樹脂製の中皿であり、上記中皿収容凹部の一対の内壁面の他方の面に、上記係合用凹部または係合用凸部に対応する係合部が形成されている化粧料容器を、第4の要旨とする。
本発明者は、中皿収容凹部内に配置した弾性部材の押圧により中皿を中皿収容凹部内に保持する化粧料容器について、容器の組み立てや中皿の固定・交換をより効率良く行うことのできる形状・構成を検討した。そして、その過程で、上記弾性部材を保持するために中皿収容凹部の壁面内に設けられる弾性部材保持部の位置や形状、あるいはアンダーカット形状等の成形性を工夫することを着想した。すなわち、本発明者は、上記中皿収容凹部の壁面に設けられる弾性部材保持部を、内壁面の開口から内壁内部の一段低い位置に向けて落ち込む(潜り込む)形状の凹部とすることにより、化粧料容器の容器本体の成形性を維持しつつ、この落ち込み形状の凹部に、上記弾性部材を装着し易く抜けにくい性能を付与できることを見出し、本発明に到達した。
本発明の化粧料容器は、容器本体に設けられた中皿収容凹部が、少なくとも一対の、互いに平行な配置で対向する垂直な内壁面を有し、上記一対の内壁面の一方の面の下部に、内壁内部に向かって堀り込み形状の棒状弾性部材保持用凹部が形成され、この棒状弾性部材保持用凹部の下側内面が、上記中皿収容凹部の底面より低く設定されている。そのため、この化粧料容器の組み立ての際には、上記棒状弾性部材を上記保持用凹部の入り口(開口)に持って行くだけで、棒状弾性部材がこの棒状弾性部材保持用凹部内に自然に嵌り込み、簡単に取る付けることができる。しかも、上記棒状弾性部材保持用凹部が、中皿収容凹部の底面より低い位置に形成されていることから、中皿の脱着時等にも、この棒状弾性部材は上記棒状弾性部材保持用凹部から勝手に抜け出すことがない。したがって、上記棒状弾性部材の脱着時の紛失等を防止することができる。
さらに、本発明の化粧料容器は、上記中皿収容凹部に収容された中皿の一方側の外側面が、上記棒状弾性部材保持用凹部に嵌入された棒状弾性部材に押圧され、この中皿の他方側の外側面が、上記中皿収容凹部の一対の内壁面の他方の面に押し付けられて、上記中皿の中皿収容凹部からの抜け出しが防止されるようになっている。そして、上記中皿収容凹部の、上記他方の面の高さが、上記中皿収容凹部に収容される中皿の高さよりも低く設定されている。そのため、従来の化粧料容器のような中皿脱着用の棒状体を用いる必要がなく、手指等で中皿を弱い力で軽く押すだけで、この中皿を簡単に脱着することができる。また、上記化粧料容器には、脱着用棒状体を挿入するための穴や、可撓片等を形成するためのスリット等も必要ないため、中皿に充填された化粧料が上記中皿収容凹部から漏れ出ることもない。
さらにまた、本発明の化粧料容器は、上記棒状弾性部材保持用凹部がアンダーカット状であるものの、成形が容易で、単純な形状であるためこの棒状弾性部材保持用凹部の寸法管理も必要ない。しかも、上記棒状弾性部材保持用凹部は、塑性変形を起こすこともない。したがって、本発明の化粧料容器は、組み立てが容易で、中皿に充填された化粧料が漏れ出るおそれがなく、中皿の脱着を何度繰り返しても中皿を安定して保持することができる、耐久性に優れる長寿命の化粧料容器とすることができる。
また、本発明の化粧料容器のなかでも、上記棒状弾性部材保持用凹部の下側内面が、上記中皿収容凹部の底面から連続する下り傾斜面に形成されているものは、上記棒状弾性部材をこの保持用凹部に押し込む、組み立て作業をより簡単に行うことができるようになる。しかも、押し込まれた棒状弾性部材は、この棒状弾性部材保持用凹部から抜け出しにくくなるという利点がある。
さらに、本発明の化粧料容器のなかでも、上記棒状弾性部材保持用凹部の下側内面に対向する上側内面が、上記下側内面と平行な傾斜面、もしくは、上記棒状弾性部材保持用凹部の上下方向の開口幅を開口側に向かって広げる傾斜面に形成されているものは、前記アンダーカット部となる棒状弾性部材保持用凹部からの成形型の「抜け」がよく、成形がより簡単になるとともに、その成形精度を向上させることができるという点で有利である。
そして、本発明の化粧料容器のなかでも特に、上記中皿が、その外周側面に上記容器本体との係合用凹部または係合用凸部を有する樹脂製の中皿であり、上記中皿収容凹部の一対の内壁面の他方の面に、上記係合用凹部または係合用凸部に対応する係合部が形成されているものは、上記中皿収容凹部内に収容された中皿を、上記棒状弾性部材の側方への押圧によって、より確実に保持・固定することができる。これにより、容器の落下衝撃や振動等を受けても、中皿の外れにくい化粧料容器とすることができ、好適である。
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の実施形態の化粧料容器の構成を示す分解斜視図であり、図2は、中皿を取り外した状態の容器本体の構造を説明する図である。なお、ユーザーの操作状態を考慮して、図1,図2における上下方向を、そのまま化粧料容器の上下(天地)方向とし、蓋体2の開閉用基部(ヒンジ連結部2b)側を容器の奥側(後側)、その反対側でユーザーに近い化粧用具収容凹部12側を容器の手前側(前側)として説明する。
本実施形態における化粧料容器は、大小二つのサイズの中皿3の中にパウダーファンデーション等の固形化粧料Fを充填した複数の交換用レフィルRを、自由な組み合わせでセットして携行することのできるコンパクトケースであり、図2に示すように、上面に開口する中皿収容凹部11と化粧用具収容凹部12を有する容器本体1と、奥側のヒンジ連結部2bを介してこの容器本体1に対して開閉自在に取り付けられた蓋体2とから構成されている。
なお、上記容器本体1の中皿収容凹部11(奥側)と化粧用具収容凹部12(手前側)との間には、上記中皿3より背が低い(凹部底面11cからの高さが低い)仕切り部13が設けられており、この仕切り部13の、上記中皿収容凹部11側の内壁面11aには、中皿固定用凸部13aが所定の間隔で複数形成されている。また、中皿収容凹部11を挟んでこの仕切り部13に対向する、中皿収容凹部11の奥側の内壁面11b(図示正面に見える壁面)には、後記する棒状弾性部材(シリコーンチューブ4等)を嵌め込むための棒状弾性部材保持用凹部14が形成されている。
そして、図1に示すように、上記中皿収容凹部11の奥側の内壁面11bに設けられた棒状弾性部材保持用凹部14には、弾性を有するシリコーンチューブ4等が嵌め込まれており、化粧料Fが充填された中皿3が、その後端下部(奥側の凸部3a)を上記シリコーンチューブ4等に押し付けてこれを押し潰しながら、上記中皿3の前端下部に形成された係合用の凸部3aを、仕切り部13の中皿収容凹部11側の内壁面11aに設けられた前記中皿固定用凸部13aの下側(凹部底面11c側)に押し込んで係合されている。このようにして、各レフィルRが、中皿収容凹部11内に脱着自在に収容・保持されている。これが、本発明の化粧料容器の特徴である。
各構成部材の構造を詳しく説明すると、上記化粧料容器の容器本体1は、図3(a)の断面図に示すように、先にも述べた中皿収容凹部11と化粧用具収容凹部12とが、容器の奥側−手前側に並んで形成されており、これらの間に、収容される各中皿3より背が低い(凹部底面11cからの高さが低い)仕切り部13が設けられている〔図3(c)参照〕。
このように、上記仕切り部13の凹部底面11cからの高さを中皿3より低く設定しているのは、この仕切り部13の中皿固定用凸部13aに係合固定された中皿3を脱着する際、この中皿3の手前側上端部を、ユーザーの手指で容器奥側方向(図示右側)に押しやすくするためである。この構成により、本実施形態の化粧料容器は、上記レフィルRの脱着を、容易にかつ軽い力で行うことができるようになっている。
なお、上記レフィルRの中皿3として、容器本体1との係合構造を持たない樹脂製の中皿(樹脂皿)や金属製の中皿(金皿)等を用いる場合は、中皿固定用凸部13a等の係合構造を設けず、上記仕切り部13の奥側側面(中皿収容凹部11の手前側の内壁面11a)を粗面する場合がある。これに関しては後記で説明する。
また、図3(a)に示すように、上記容器本体1の奥側(図示右側)には、前記蓋体2のヒンジ連結部2bを嵌め入れて連結ピンを挿通するための貫通孔1dを有する切り欠き部1bが設けられ、容器本体1の手前側(図示左側)には、上記蓋体2の係合片2aと係合する係合用凸部1cを有する切り欠き部1aが形成されている。そして、上記中皿収容凹部11において対向する二つの内壁面11a,11bのうち、奥側の内壁面11bには、この内壁の内部に向かって堀り込み形状の棒状弾性部材保持用凹部14が設けられ、これに対向する手前側の内壁面11a(仕切り部13の奥側側面を兼用)には、先にも述べた、下向き返し状の中皿固定用凸部13aが形成されている。この構成も本発明の特徴の一つである。
上記棒状弾性部材保持用凹部14は、図3(a)のP部拡大図である図3(b)に示すように、上記中皿固定用凸部13aに対向する内壁面11bの下部で、かつ、この内壁面11bと中皿収容凹部11の凹部底面11cとの境界領域に、成形時にアンダーカットとなるように形成されており、棒状弾性部材保持用凹部14全体としては、内壁面11bに設けられた開口から内壁内部の一段低い位置に向けて落ち込む形状に形成されている。
また、上記棒状弾性部材保持用凹部14の開口部位は、図3(b)に示すように、その下側内面14bが、上記中皿収容凹部11の凹部底面11cから連続する下り傾斜面に形成され、この下側内面14bが中皿収容凹部11の凹部底面11cより低い位置にくるように設定されている。そして、上記棒状弾性部材保持用凹部14内においてこの下側内面14bに対向する上側内面14aは、上記下側内面14bと平行な傾斜面に形成されている。
なお、これら平行な下側内面14bと上側内面14aとは、この容器本体1を成形する際の成形型の抜け等を考慮して、奥側(内壁内部側)に向かって下り傾斜となる傾斜面に形成されているのであって、これらの、中皿収容凹部11の凹部底面11cに対する下り傾斜角θ1,θ2は、通常5〜85°、好ましくは10〜45°の範囲に設定される。
また、上記上側内面14aは、成形型の抜けをより良くするために、下側内面14bに対して上記棒状弾性部材保持用凹部14の上下方向の開口幅を開口側に向かって広げる傾斜面としてもよく、その場合、棒状弾性部材保持用凹部14の上側内面は、図3(b)に二点鎖線で示す上側内面14a’のような、凹部底面11cに対する下り傾斜角θ3が下側内面14bの下り傾斜角θ1よりも大きな傾斜面(θ3>θ1)とすることが好ましく、なかでも、下り傾斜角θ3が下り傾斜角θ1よりも1〜30°大きい傾斜面とすることが、より好適である。
上記構成により、この棒状弾性部材保持用凹部14は、化粧料容器組み立ての際に、シリコーンチューブ4等を棒状弾性部材保持用凹部14の入り口(開口)に持って行くだけで、このシリコーンチューブ4等が棒状弾性部材保持用凹部14内に転げ落ちるように嵌り込み、簡単に挿入することができる。しかも、上記棒状弾性部材保持用凹部14が、凹部底面11cより低い位置に形成されていることから、レフィルRの脱着時等にも、このシリコーンチューブ4等が棒状弾性部材保持用凹部14から勝手に抜け出すことがない。したがって、上記シリコーンチューブ4等の脱着時の紛失等を防止することができる。
つぎに、上記棒状弾性部材保持用凹部14内に嵌め入れられる棒状弾性部材としては、中実,中空のどちらの形状の棒状弾性部材でも使用することができるが、前記手指等を用いたレフィルRの取り外しを容易にするためには、比較的弾性の低い軟らかいものが好ましく、通常、そのJIS ショアAゴム硬度が40〜80度程度のもの、好ましくはJIS ショアAゴム硬度が60度前後のものが用いられる。
なお、本実施形態では、中空形状のシリコーンチューブ4(JIS ショアAゴム硬度:60度)を好適に採用している。このシリコーンチューブ4は、長尺の材料を、上記棒状弾性部材保持用凹部14の左右方向の長さに合わせてカットしたものであり、その外径は、図3(c)に示すように、上記棒状弾性部材保持用凹部14の開口幅と同程度か、若干大きな径になっている。
また、上記シリコーンチューブ4は、その長手方向に同一径の、直管形状のものだけでなく、各レフィルRに対応する部位が部分的に膨らんで太径になっている形状としてもよい。このようにシリコーンチューブ4(棒状弾性部材)を、長手方向に「部分的に太径になった形状」とすることにより、この太径部分の見かけ硬度(表面硬度)が下がって、上記中皿3の脱着をより少ない力で行うことができるようになる。
さらに、上記棒状弾性部材を構成する材料としては、シリコーン樹脂(ゴム)の他にも、ビニール(塩化ビニル),ブチルゴム等を使用することができる。特に、シリコーン樹脂製のシリコーンチューブ4は、軟らかく柔軟でありながらしっかりとしたコシがあるため、各レフィルRの中皿収容凹部11内への収まりがよく、これらを適度な押圧で長期間保持できて、好適である。しかしながら、中皿3に充填される化粧料がシリコーン成分を含むものである場合は、ブチルゴム製のチューブが好適に用いられる。
そして、上記レフィルRに用いられる中皿3は、樹脂を用いて成形された、底部とこの底部の周縁に立設された周側面とからなる浅い箱(皿)状で、その内部に形成される凹部に、ファンデーション等の粉体化粧料Fを充填するようになっている。この中皿3の前端(容器の手前側)と後端(容器の奥側)の下部には、図1および図3(c)に示すように、アンダーカット状の係合用凸部3aが形成されており、中皿収容凹部11に収容された場合、この前側の係合用凸部3aが、前記仕切り部13の中皿固定用凸部13aに係合し、後側の係合用凸部3aが、上記シリコーンチューブ4と凹部底面11cの間に挟み込まれるようにして、この中皿収容凹部11内に保持されるようになっている。
なお、先の容器本体1の説明でも述べたように、中皿3としては、容器本体1との係合構造(本例における係合用凸部3a等)を持たない、周側面がフラット状の樹脂製の中皿(樹脂皿)や金属製の中皿(金皿)等を用いることもできる。また、その場合、前記仕切り部13には中皿固定用凸部13a等の中皿との係合構造を設ける必要はなく、これらの中皿の取り外しは難しくなるが、上記シリコーンチューブ4等の押圧による中皿の保持力を向上させるために、前記仕切り部13を、各中皿(またはレフィル)の上端と同じ高さに形成するか、あるいは、これを超えて中皿収容凹部11の上端開口面と面一になる上限の高さにまで形成する。さらに、これら中皿と対向する、上記仕切り部13の奥側側面(中皿収容凹部11の手前側の内壁面11a)は、中皿側面と摩擦を生じる粗面としておくことが望ましい。
そして、容器本体1の上面開口を蓋する蓋体2は、上記容器本体1と同じ材料樹脂を用いて形成されており、その下面の前端部から、容器手前側の切り欠き部1aに突設された係合用凸部1cに係合する板状の係合片2aが形成され、その下面の後端部には、容器本体1の奥側の切り欠き部1bに嵌り込むヒンジ連結部2bが形成されている。上記蓋体2は、このヒンジ連結部2bに設けられた貫通孔(図示省略)と容器奥端の貫通孔1dの軸心を位置合わせして連結ピンを挿通させることにより、上記容器本体1に対して回動自在に取り付けられている。なお、上記蓋体2の下面には、鏡等が接着固定されている場合もある。
以上の構成により、本実施形態におけるコンパクトケースは、容器本体1に化粧料が漏出する原因となるような中皿脱着用の穴等を設けることなく、中皿3および化粧料Fが充填されたレフィルRを、ユーザーの手指等で奥側に軽い力で押し込むだけで、簡単に脱着して交換することができる。また、上記中皿3の固定に用いられるシリコーンチューブ4は、軟らかく柔軟なため、その保持用に設けられた棒状弾性部材保持用凹部14に、前記下り傾斜状に形成された開口から、棒状弾性部材保持用凹部14内にスムーズに挿入することができる。しかも、このシリコーンチューブ4は、上記下り傾斜状の棒状弾性部材保持用凹部14から抜け出しにくく、レフィルRを脱着する際も紛失等するおそれがない。したがって、本実施形態のコンパクトケースは、組み立てが容易で、かつ、長期にわたり継続して常用できる化粧料容器とすることができる。
なお、上記実施形態においては、シリコーンチューブ4を収容する棒状弾性部材保持用凹部14を、容器本体1の中皿収容凹部11の奥側の内壁面11bに設けた例を示したが、この棒状弾性部材保持用凹部14は、上記中皿収容凹部11を構成する四つの内壁面のいずれに設けてもよく、これに対応する中皿固定用凸部13aは、その棒状弾性部材保持用凹部14が設けられた面に対向する内壁面に設ければよい。
さらに、上記実施形態においては、上記棒状弾性部材保持用凹部14を、容器左右方向に連続した一つの凹部(凹条)として形成したが、上記実施形態のように複数の中皿3を収容する場合、これら中皿3にそれぞれに対応する位置に、より短い形状の棒状弾性部材保持用凹部14を、長手方向に複数並べて断続的に形成してもよい。これら断続的な棒状弾性部材保持用凹部14のそれぞれに、短い形状の棒状弾性部材を収容しても、実施形態と同様の効果を奏することができる。