JP6562411B2 - ウシの受精卵移植成功率の判定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ウシの受精卵移植成功率の判定方法、判定試薬及び判定キットに関する。
ウシの育種を進めるには、優秀な個体の子孫を残すことが重要である。そのために受精卵移植で特定の個体を生産する手法がとられるが、受精卵移植が成功する確率は31-60%と個体差が大きい。
受精卵移植に対する個体の受胎能力は、遺伝的な側面が少なくない。従って、受精卵移植成功率と相関のある遺伝子多型を見出すことができれば、受胚牛とすべき個体を迅速に検出することができ、ウシの育種の迅速化に貢献することができる。しかしながら、現在までのところ、受精卵移植制御に関するDNA情報は明らかになっていないため、専ら処理方法及び管理方法から対策がとられている。
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従って、本発明の目的は、ウシの受精卵移植成功率を遺伝子レベルで簡便に判定し得る手段を提供することである。
本発明者らは、前記目的を達成するために研究を重ねた結果、受精卵移植成功率と密接に関連するCYP19A1遺伝子を同定することに成功し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、雌ウシから分離された核酸試料について、雌ウシの受精卵移植成功率の低さの指標となるCYP19A1遺伝子領域変異が存在するか否かを検出することを含む、該雌ウシの受精卵移植成功率を判定する方法であって、前記変異は、配列番号8に示される塩基配列における476番目の塩基(配列番号4における151番目の塩基)がアデニンからグアニンに置換する変異を含む、方法を提供する。また、本発明は、配列番号8における476番目の塩基を含むウシゲノム上の領域を増幅するプライマーセットを含む、雌ウシの受精卵移植成功率の判定試薬を提供する。さらに、本発明は、上記本発明の判定試薬を含む、雌ウシの受精卵移植成功率の判定キットを提供する。
本発明により、遺伝子の変異を指標として、塩基配列レベルで受卵雌ウシの受精卵移植成功率を判定することができる手段が初めて提供された。受精卵移植成功率は複数の遺伝子が関わっている量的形質であるが、本発明によれば、1種類の遺伝子の変異のみを指標として簡便に成功率を判定することができる。従って、本発明は、ウシの育種の効率化と迅速化に貢献することができる。
実施例で同定されたCYP19A1遺伝子の変異部分を示す図である。四角は、変異部分を検出するためのPCRプライマーCYP19A1-F及びCYP19A1-Rの該当する位置、→はプライマーの5'から3'への方向を示す。 実施例で同定されたCYP19A1遺伝子の変異部位近傍の塩基配列の波形データである。図1に示した領域のPCR増幅断片の塩基配列を決定すると、成功型のゲノミックDNAを鋳型とした増幅断片では151番目の塩基がアデニン(A)であり、不成功型のゲノミックDNAを鋳型とした増幅断片では151番目の塩基にグアニン(G)が見られる。
本発明において、「遺伝子領域」とは、タンパク質をコードする領域と、イントロン領域と、プロモーター領域、3'-及び5'-UTR等の当該遺伝子の発現の制御に関与し得る領域とを含む、ゲノム上の連続した領域をいう。具体的には、「CYP19A1遺伝子領域」とは、配列表の配列番号8〜17に示した配列を含むゲノム上の領域である。配列番号8〜17は、CYP19A1遺伝子の各エクソン及びその近傍のゲノム配列を表1の通りに示したものである。
Figure 0006562411
本発明において、遺伝子の変異とは、基準となる塩基配列と比較して相違する部分をいう。CYP19A1遺伝子領域について基準となる塩基配列は、配列表の配列番号8〜17に示す塩基配列である。以下、本明細書において、CYP19A1遺伝子領域内の部位に言及する場合、配列番号8〜17に示す基準の配列における位置で表すものとする。なお、配列番号1には、CYP19A1遺伝子のcDNAの塩基配列を示した。
本発明の方法では、雌ウシから分離された核酸試料について、CYP19A1遺伝子における変異の有無を検出することを含む。CYP19A1遺伝子に下記定義の通りの変異があった場合、該雌ウシは受精卵移植成功率が低いと判定できる。
「受精卵移植成功率」とは、ある雌ウシが受精卵の移植を受けた場合に受胎する確率をいう。胎仔が60日齢程度以上まで発育した場合、受精卵移植が成功した(受胎した)と判断してよい。下記定義の通りの変異を含むCYP19A1遺伝子変異型アリルを有する雌ウシは、受精卵移植成功率が低い。受精卵移植成功率が低いと判定される雌ウシは、例えば、2回又はそれ以上の回数受精卵移植を受けても受胎しないウシであり得る。CYP19A1遺伝子に下記定義の通りの変異がない雌ウシは、一方又は両方のアリルが変異型である雌ウシと比較して、1回の受精卵移植で成功し受胎する確率が有意に高いため、受精卵の受卵ウシとして好ましく選択することができる。
CYP19A1(cytochrome P450, family 19, subfamily A, polypeptide 1)遺伝子は、エストロゲン合成酵素をコードする遺伝子である。本発明におけるCYP19A1遺伝子領域の変異とは、ウシ体内でのCYP19A1遺伝子の機能が低下する変異である。ウシ体内でのCYP19A1遺伝子の機能の低下には、CYP19A1遺伝子の発現量の低下等によりウシ体内での野生型CYP19A1タンパク質の蓄積量が低下すること、及び生理活性が低下した変異型のCYP19A1タンパク質がウシ体内で産生されることが包含される。本発明におけるCYP19A1遺伝子領域の変異とは、典型的には、CYP19A1遺伝子の発現が抑制される変異であり得る。エストロゲン合成酵素遺伝子であるCYP19A1遺伝子の発現が抑制されると、ウシ体内でエストロゲンの合成が低下し、血中に分泌されるエストロゲン量が低下し得る。従って、本発明で指標となるCYP19A1遺伝子の変異は、エストロゲン分泌量ないしは血中エストロゲン量の低下をもたらす変異でもあり得る。そのような変異の具体例として、配列番号8に示す塩基配列における第476番塩基がアデニンからグアニンに置換する一塩基置換変異が挙げられる。
ある遺伝子領域における変異が当該遺伝子の発現を抑制するかどうかは、例えば、下記実施例においても用いられているレポーターアッセイにより調べることができる。レポーターアッセイは周知の常法であり、そのためのキットも各種のものが市販されている。例えばルシフェラーゼレポーターアッセイの場合、遺伝子領域のうちで変異部位を含む一定の領域をルシフェラーゼ遺伝子の上流又は下流に連結したコンストラクトを構築し、インビトロで該コンストラクトを発現させ、発現したルシフェラーゼの酵素活性に基づいてルシフェラーゼ遺伝子の発現が抑制されたかを評価すればよい。ルシフェラーゼの酵素活性が変異型コンストラクトで野生型コンストラクトよりも低下していた場合、その変異は遺伝子の発現を抑制する変異であると判断することができる。
核酸試料は特に限定されず、ゲノミックDNA試料、RNA試料(全RNA若しくはmRNA)、又はcDNA試料を用いることができる。cDNA試料は、ウシからRNAを分離し、これを鋳型とした逆転写反応により調製することができる。核酸試料としては、作業工程の簡便さから、ゲノミックDNA試料を好ましく用いることができる。
核酸試料を用いて遺伝子領域上の変異を調べる具体的な方法としては、例えば、核酸試料をPCR等の核酸増幅反応に付し、増幅断片の塩基配列に基づいて変異の有無を調べる方法が挙げられる。変異により野生型配列と変異型配列との間で制限酵素の認識部位に相違が生じる場合には、増幅断片の制限酵素断片長多型を解析することにより(すなわち周知のPCR-RFLP法により)変異の有無を調べることができるが、一般には、増幅断片の塩基配列を決定して変異の有無を調べる方法がより好ましい。
CYP19A1遺伝子領域の変異として、配列番号8における第476番塩基がアデニンからグアニンに置換する一塩基置換変異の有無を検出する場合であれば、当該部位を含むCYP19A1遺伝子領域の一部(50bp〜1000bp程度の領域を増幅すれば十分である)をゲノミックDNA試料から核酸増幅法により増幅し、増幅断片の塩基配列を決定し、一塩基置換があるか否かを確認すればよい。配列番号2及び3に示すプライマーセットを用いてPCRを行えば、CYP19A1遺伝子領域のうちで図1(配列番号4)に示した領域が増幅される。この増幅断片における151番目(配列番号8においては476番目)の塩基を比較すると、一塩基置換がない場合(野生型アリル)はアデニンであり、一塩基置換がある場合(変異型アリル)はグアニンである。従って、当該一塩基置換変異の有無は、簡便には、配列番号8における476番目の塩基(配列番号4における151番目の塩基)が何であるかを確認することによって検出することができる。
CYP19A1遺伝子における上記定義の通りの変異は、ウシの受精卵移植成功率の指標となるので、変異部位を含むウシゲノム上の領域を増幅するプライマーセット、すなわち、CYP19A1遺伝子領域内の変異部位を含む領域を増幅するプライマーセットは、ウシの受精卵移植成功率の判定試薬として提供することができる。なお、このプライマーセットは、変異を有しない野生型配列のウシ由来の核酸試料を鋳型としたPCRに用いれば、当然ながら、変異部位に対応する部位を含む変異のない配列の増幅断片が得られる。
CYP19A1遺伝子領域内の変異部位を含む領域を増幅するプライマーセットは、例えば、配列番号8における476番目の塩基を含むウシゲノム上の領域を増幅するプライマーセットであり得る。そのようなプライマーセットは、配列番号8に示す塩基配列中の第1番〜第475番塩基の領域内の部分領域に特異的にハイブリダイズするフォワード側プライマーと、配列番号8に示す塩基配列中の第477番〜第1800番塩基の領域内の部分領域に特異的にハイブリダイズするリバース側プライマーとのセットであり得る。なお、「フォワード側プライマー」とは、配列表に実際に示されている塩基配列の相補鎖にハイブリダイズするプライマーであり、「リバース側プライマー」とは、配列表に実際に示されている塩基配列にハイブリダイズするプライマーである。
「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイズの条件下において、対象とする領域にのみハイブリダイズし、その他の領域には実質的にハイブリダイズしないという意味である。「通常のハイブリダイズの条件下」とは、通常のPCRのアニーリングやプローブによる検出に用いられる条件下のことをいい、例えば、Taqポリメラーゼを用いたPCRの場合には、50mM KCl、10mM Tris-HCl(pH 8.3〜9.0)、1.5mM MgCl2といった一般的な緩衝液を用いて、54℃〜60℃程度の適当なアニーリング温度で反応を行なうことをいい、また、例えばノーザンハイブリダイゼーションの場合には、5 x SSPE、50%ホルムアミド、5 x Denhardt's solution、0.1〜0.5%SDSといった一般的なハイブリダイゼーション溶液を用いて、42℃〜65℃程度の適当なハイブリダイゼーション温度で反応を行なうことをいう。ただし、適当なアニーリング温度及びハイブリダイゼーション温度は、上記例示に限定されず、プライマー又はプローブのTm値及び実験者の経験則に基づいて定められ、当業者であれば容易に定めることができる。「実質的にハイブリダイズしない」とは、全くハイブリダイズしないか、するとしても対象とする領域にハイブリダイズする量よりも大幅に少なく、相対的に無視できる程度の微量しかハイブリダイズしないという意味である。
そのような条件下で特異的にハイブリダイズするプライマーとしては、ハイブリダイズする部分領域と完全に相補的な塩基配列を有するプライマーが好ましいが、通常、10%以下の塩基が置換した配列を有するプライマーを用いても、対象とする部分領域にハイブリダイズして増幅が起きる場合が多い(ただし、「10%以下の塩基が置換した塩基配列」は、もとの塩基配列のうち3'末端の塩基以外の塩基が置換されていることが好ましい)。また、この分野で周知の通り、プライマーの5'末端側に例えば制限酵素認識配列等の任意の配列を付加しても、対象とする部分領域に特異的にハイブリダイズし、目的の領域を増幅することができる。
従って、配列番号8に示す塩基配列中の第1番〜第475番塩基の領域内の部分領域に特異的にハイブリダイズするフォワード側プライマーには、配列番号8に示す塩基配列中の第1番〜第475番塩基の領域内の連続する15塩基以上、好ましくは18塩基以上の塩基配列からなるプライマー、及び該塩基配列のうち10%以下の塩基が置換した塩基配列からなるプライマー、並びにこれらのプライマーの5'末端側に付加配列を有するプライマーが包含される。すなわち、該フォワード側プライマーは、配列番号8に示す塩基配列中の第1番〜第475番塩基の領域内の連続する15塩基以上の塩基配列又は該塩基配列のうち10%以下の塩基が置換した塩基配列をその3'末端側に含むプライマーであり得る。
同様に、配列番号8に示す塩基配列中の第477番〜第1800番塩基の領域内の部分領域に特異的にハイブリダイズするリバース側プライマーには、配列番号8に示す塩基配列中の第477番〜第1800番塩基の領域内の連続する15塩基以上、好ましくは18塩基以上の塩基配列と相補的な配列からなるプライマー、及び該相補的な配列のうち10%以下の塩基が置換した塩基配列からなるプライマー、ならびにこれらのプライマーの5'末端側に付加配列を有するプライマーが包含される。すなわち、該リバース側プライマーは、配列番号8に示す塩基配列中の第477番〜第1800番塩基の領域内の連続する15塩基以上からなる塩基配列と相補的な配列又は該相補的な配列のうち10%以下の塩基が置換した塩基配列をその3'末端側に含むプライマーであり得る。
上記のフォワード側プライマーの具体例としては、配列番号2に示す塩基配列からなるプライマー、及び配列番号5に示す塩基配列からなるプライマー等を挙げることができる。また、上記のリバース側プライマーの具体例としては、配列番号3に示す塩基配列からなるプライマー等を挙げることができる。
下記実施例で用いられている、配列番号2に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号3に示す塩基配列からなるプライマーとのセットは、実施例で同定されたCYP19A1遺伝子領域における一塩基置換変異を検出するための好ましいプライマーセットの一例であるが、ウシの受精卵移植成功率の判定試薬に使用可能なCYP19A1遺伝子領域を増幅するプライマーセットはこれに限定されない。
受精卵移植成功率の判定試薬は、プライマーセットのみからなるものであってもよいし、プライマーを緩衝液等に溶解させた形態であってもよく、また、乾燥させたプライマーと緩衝液等とをセットにした形態であってもよい。さらに、該試薬は、プライマーの分解防止等に有用な各種添加剤等を含んでいてもよい。
上記したウシの受精卵移植成功率の判定試薬は、他の試薬類と適宜に組み合わせて、ウシの受精卵移植成功率の判定キットとして提供することができる。PCR等の核酸増幅法に必要なプライマー以外の他の試薬類は周知である。例えば、該判定キットには、上記した受精卵移植成功率の判定試薬のほか、核酸増幅反応の反応液を調製するための緩衝液や、耐熱性ポリメラーゼ等がさらに含まれ得る。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。以下の記載では、特に説明がない場合には、J. Sambrook & D. W. Russell (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001) に記載の方法、あるいはそれを適宜修飾又は改変した方法により行なった。また、市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールの指示に従って行なった。
1.受精卵移植成功率に関与する遺伝子の同定
(1) ウシCYP19A1遺伝子の塩基配列の決定
まず、ホルスタイン種集団から1回で受精卵移植が成功したウシ(136頭)及び2回以上移植を行っても受胎しなかったウシ(56頭)からなる集団について、全染色体をカバーする618,090個のSNPを用いて受精卵移植成功率に関連するウシ染色体の領域を同定した。このうち、強い関連の見られた第10番染色体上の受精卵移植制御領域に存在するCYP19A1遺伝子の発現の制御に関わる領域の塩基配列を解読し、受精卵移植が成功したウシと成功しなかったウシを比較したところ、成功しなかったウシに特異的な一塩基置換変異を見出した。
(2) 一塩基置換変異がCYP19A1遺伝子の発現量に及ぼす影響
CYP19A1遺伝子の受精卵移植成功型と不成功型それぞれのゲノム断片をつないだルシフェラーゼ遺伝子のコンストラクトを、ウシ子宮内膜細胞由来株BEnEpCに導入し、ルシフェラーゼ遺伝子の発現をルシフェラーゼ酵素の活性測定にて定量した。なお、コンストラクトの作製及びルシフェラーゼアッセイには、dual-luciferase reporter assay system (Promega, 米国ミシガン州Madison)を用いた。プライマーCYP19A1-F2及びCYP19A1-R2を用いたPCR(後述)により、受精卵移植成功型配列及び不成功型配列を有するウシのcDNAからそれぞれ一塩基置換変異を含む領域(配列番号1における第245番〜第1682番塩基の領域、配列番号7)を増幅し、各増幅断片を上記キットに含まれるルシフェラーゼ遺伝子の上流に連結してアッセイ用のコンストラクトとした。
その結果、CYP19A1の受精卵移植成功型では不成功型と比べ有意に活性が上昇していることがわかった(表1)。一塩基置換変異の結果、CYP19A1の発現を抑制することが受精卵移植成功率の低下をもたらすと考えられる。
Figure 0006562411
(3) CYP19A1遺伝子変異が受精卵移植成功率に及ぼす影響
CYP19A1遺伝子のエストロゲン分泌量に対する影響を調べるため、雌牛35頭のDNAを用いて遺伝子型を調べ、発情後7-10日目の血中エストロゲン量を比較した。その結果、受精卵移植成功型をホモで有する個体では、不成功型を有する個体と比べてエストロゲン分泌量が有意に高いことがわかった(表2)。一塩基置換変異の結果、エストロゲンの分泌を抑制することが受精卵移植成功率の低下をもたらすと考えられる。
Figure 0006562411
(4) CYP19A1遺伝子変異が受精卵移植成功率に及ぼす影響
CYP19A1遺伝子の受精卵移植成功率に対する影響を調べるため、雌牛398頭のDNAを用いて遺伝子型を調べ、受精卵移植成功率を比較した。その結果、受精卵移植成功型をホモで有する個体では、不成功型を有する個体と比べて受精卵移植成功率が有意に高いことがわかった(表3)。このことから、受精卵移植不成功型のCYP19A1遺伝子を有するウシの生産効率は、成功型CYP19A1遺伝子を有する個体と比較して減少することが考えられる。
Figure 0006562411
2.ウシのゲノミックDNA上のCYP19A1遺伝子の変異の有無の確認
受精卵移植成功率の悪いウシに認められた変異部位を含むDNA断片を増幅するためのプライマーCYP19A1-F、CYP19A1-Rを合成した。配列表の配列番号2、3にそれぞれプライマーCYP19A1-F、CYP19A1-Rの塩基配列を示す。
ウシの血液(抗擬固剤としてEDTA、ヘパリンを含む)より、自動核酸分離装置NA-1000(クラボウ社製)を用いてゲノミックDNAを調製した。これらのゲノミックDNAを鋳型とし、プライマーCYP19A1-FとCYP19A1-Rを用いたPCR (94℃で20秒、60℃で30秒、72℃で1分間からなる工程を1サイクルとした35サイクル反応)を行い、3730蛍光DNAシークエンサー(アプライドバイオシステムズ社製)を用いてPCR生成物の塩基配列を比較した。受精卵移植成功型CYP19A1遺伝子を鋳型にPCRで増幅させたDNA断片(配列番号1における326〜508番塩基の領域、配列番号4及び図1)では、151番目の塩基がアデニン(A)であるが、不成功型由来の増幅断片ではグアニン(G)であった。図2に示すように、当該部位における塩基を調べることにより、CYP19A1遺伝子の受精卵移植成功型と不成功型を簡便に見分けることができることが確認された。

Claims (9)

  1. 雌ウシから分離された核酸試料について、雌ウシの受精卵移植成功率の低さの指標となるCYP19A1遺伝子領域変異が存在するか否かを検出することを含む、該雌ウシの受精卵移植成功率を判定する方法であって、前記変異は、配列番号8に示される塩基配列における476番目の塩基(配列番号4における151番目の塩基)がアデニンからグアニンに置換する変異を含む、方法。
  2. 前記核酸試料がゲノミックDNA試料である請求項記載の方法。
  3. 前記変異の有無の検出は、配列番号8における476番目の塩基(配列番号4における151番目の塩基)を含む領域をゲノミックDNA試料から核酸増幅法により増幅することを含む、請求項記載の方法。
  4. 配列番号8における476番目の塩基(配列番号4における151番目の塩基)が、アデニンである場合は成功率が高く、グアニンである場合は成功率が低いという基準に基づいて前記雌ウシの受精卵移植成功率が判定される、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
  5. 配列番号8における476番目の塩基を含むウシゲノム上の領域を増幅するプライマーセットを含む、雌ウシの受精卵移植成功率の判定試薬。
  6. 前記プライマーセットは、配列番号8に示す塩基配列中の第1番〜第475番塩基の領域内の部分領域に特異的にハイブリダイズするフォワード側プライマーと、配列番号8に示す塩基配列中の第477番〜第1800番塩基の領域内の部分領域に特異的にハイブリダイズするリバース側プライマーとのセットである、請求項記載の判定試薬。
  7. 前記プライマーセットは、配列番号2又は5に示す塩基配列からなるプライマーと、配列番号3に示す塩基配列からなるプライマーとのセットである、請求項記載の判定試薬。
  8. 前記プライマーセットは、配列番号2に示す塩基配列からなるプライマーと、配列番号3に示す塩基配列からなるプライマーとのセットである、請求項記載の判定試薬。
  9. 請求項ないしのいずれか1項に記載の判定試薬を含む、雌ウシの受精卵移植成功率の判定キット。
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