JP2008148612A - 鶏の品種識別のためのツールおよびその利用 - Google Patents

鶏の品種識別のためのツールおよびその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】鶏の品種を識別する技術を開発する。
【解決手段】単一のマーカーを用いるだけで、目的の品種を同定することができる品種特異的マーカーを提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は鶏の品種を識別するためのツールおよびその利用に関するものであり、特に、比内鶏、土佐地鶏、ニューハンプシャーをそれぞれ検出するためのツールおよびその利用に関するものである。
我が国では、鶏肉市場の大部分をブロイラー肉が占めているが、銘柄鶏や地鶏と呼ばれる鶏もまた流通している。銘柄鶏や地鶏は、生産過程において、品種、餌、飼養方法、出荷日令等について特別な基準が用いられている鶏であり、健康的であるというイメージが定着している。また、銘柄鶏や地鶏は、風味に優れた食肉を提供するので食肉の品質面で市場価値が高いものが多い。
鶏製品の流通において、鶏の品種を明示することは重要である。正確な品種識別方法は、鶏製品の信頼性を保つこと、および誤った表記による生産物の流通を防止することに寄与するので、簡便かつ高性能な分析方法の開発が強く求められている。
品種識別法として、DNAに基づく識別法の研究が行われている。DNAは、凍結または調理された食品等から簡単に抽出され、分析され得るので、原材料を証明するための有益なツールである。
DNAに基づく品種識別法としては、制限酵素断片長多型(RFLP)、ランダム増幅DNA多型(RAPD)、一塩基多型(SNP)、制限酵素ランドマークゲノムスキャニング(RLGS)、増幅断片長多型(AFLP)、単純反復配列間増幅断片長多型(ISSR)、またはマイクロサテライトDNA多型等を利用した方法が挙げられる。
例えば、AFLP解析は、微生物、植物および動物の生物多様性の研究に用いられてきた(非特許文献1および2)。AFLP解析はゲノムにおいて特異的な多型を研究する方法として、他の方法と比較して、迅速かつ効率的に解析し得るとともに、再現性が高いという利点を有している。AFLP解析はイベリア豚の純系もしくは交雑種の識別に用いられた。系統特異的AFLPマーカーがイベリア豚や、早成もしくは遅成の鶏の系統において見出された。品種特異的なマーカーは原産のベネト鶏において見出された。
また、マイクロサテライトDNA多型を利用した品種識別法として、名古屋コーチンを識別する方法が存在する(非特許文献3)。
Shan X, Blake TK and Talbert LE. Conversion of AFLP markers to sequence-specific PCR markers in barley and wheat. Theoretical and Applied Genetics, 98: 1072-1078. 1999. Fumiere O, Dubois M, Gregoire D, Thewis A and Berben G. Identification on Commercialized Products of AFLP Markers Able To Discriminate Slow- from Fast-Growing Chicken Strains. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 51: 1115-1119. 2003. 中村明弘、「名古屋コーチンのDNA識別法を開発」、鶏卵肉情報、2006年5月25日号、p16−19
しかしながら、上述した品種以外の鶏の品種を識別する方法は未だ開発されておらず、特に、鶏肉生産に用いられる鶏に関して、簡便に品種識別が可能となるようなマーカーは得られていない。
本発明の目的は、上述した品種以外の鶏の品種を簡便に識別する技術を確立することである。
本発明者は、鋭意検討の結果、識別すべき鶏が比内鶏か否かを識別することができる鶏ゲノムDNA上の一塩基多型、識別すべき鶏が土佐地鶏か否かを識別することができる鶏ゲノムDNA上の一塩基多型、および識別すべき鶏がニューハンプシャーか否かを識別することができる鶏ゲノムDNA上の一塩基多型を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明に係るポリヌクレオチドは、配列番号1に示される塩基配列の部分配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドであって、該部分配列は、配列番号1に示される塩基配列の177番目の塩基を含みかつ、連続した15個以上の塩基からなることを特徴としている。
本発明に係るポリヌクレオチドは、配列番号6に示される塩基配列からなることが好ましい。
本発明に係るポリヌクレオチドは、配列番号2に示される塩基配列の部分配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドであって、該部分配列は、配列番号2に示される塩基配列の180番目の塩基を含みかつ、連続した15個以上の塩基からなることを特徴としている。
本発明に係るポリヌクレオチドは、配列番号9に示される塩基配列からなることが好ましい。
本発明に係るポリヌクレオチドは、配列番号3に示される塩基配列の部分配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドであって、該部分配列は、配列番号3に示される塩基配列の244番目の塩基を含みかつ、連続した15個以上の塩基からなることを特徴としている。
本発明に係るポリヌクレオチドは、配列番号12に示される塩基配列からなることが好ましい。
本発明に係る比内鶏の検出方法は、第1のポリヌクレオチドを鶏ゲノムDNAと共にインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
本発明に係る比内鶏の検出方法において、第1のポリヌクレオチドは配列番号6に示される塩基配列からなることが好ましい。また、本発明に係る比内鶏の検出方法において、配列番号4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドおよび配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを、鶏ゲノムDNAと共にインキュベートしてもよい。
本発明に係る比内鶏の検出方法は、二本鎖DNAを検出する工程をさらに包含することが好ましい。
本発明に係る土佐地鶏の検出方法は、第2のポリヌクレオチドを鶏ゲノムDNAと共にインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
本発明に係る比内鶏の検出方法において、第2のポリヌクレオチドは配列番号9に示される塩基配列からなることが好ましい。また、本発明に係る比内鶏の検出方法において、配列番号7に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドおよび配列番号8に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを、鶏ゲノムDNAと共にインキュベートしてもよい。
本発明に係る土佐地鶏の検出方法は、二本鎖DNAを検出する工程をさらに包含することが好ましい。
本発明に係るニューハンプシャーの検出方法は、第3のポリヌクレオチドを鶏ゲノムDNAと共にインキュベートする工程を包含することを特徴としている。
本発明に係る比内鶏の検出方法において、第3のポリヌクレオチドは配列番号12に示される塩基配列からなることが好ましい。また、本発明に係る比内鶏の検出方法において、配列番号10に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドおよび配列番号11に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドを、鶏ゲノムDNAと共にインキュベートしてもよい。
本発明に係るニューハンプシャーの検出方法は、二本鎖DNAを検出する工程をさらに包含することが好ましい。
本発明に係る比内鶏の検出キットは、第1のポリヌクレオチドを備えていることを特徴としている。
本発明に係る比内鶏の検出キットにおいて、第1のポリヌクレオチドは配列番号6に示される塩基配列からなることが好ましい。また、本発明に係る比内鶏の検出キットは、配列番号4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドおよび配列番号5に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドをさらに備えていてもよい。
本発明に係る比内鶏の検出キットは、二本鎖DNAを検出するための検出試薬をさらに備えていることが好ましい。
本発明に係る土佐地鶏の検出キットは、第2のポリヌクレオチドを備えていることを特徴としている。
本発明に係る比内鶏の検出キットにおいて、第2のポリヌクレオチドは配列番号9に示される塩基配列からなることが好ましい。また、本発明に係る比内鶏の検出キットは、配列番号7に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドおよび配列番号8に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドをさらに備えていてもよい。
本発明に係る土佐地鶏の検出キットは、二本鎖DNAを検出するための検出試薬をさらに備えていることが好ましい。
本発明に係るニューハンプシャーの検出キットは、第3のポリヌクレオチドを備えていることを特徴としている。
本発明に係る比内鶏の検出キットにおいて、第3のポリヌクレオチドは配列番号12に示される塩基配列からなることが好ましい。また、本発明に係る比内鶏の検出キットは、配列番号10に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドおよび配列番号11に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドをさらに備えていてもよい。
本発明に係るニューハンプシャーの検出キットは、二本鎖DNAを検出するための検出試薬をさらに備えていることが好ましい。
本発明は、複雑な統計学的な計算を必要としない簡便な技術であり、本発明を用いれば、単一のマーカーを用いるだけで、目的の品種を容易に同定することができる。
(1:比内鶏)
本発明は、比内鶏の検出に用いることができるポリヌクレオチド(第1のポリヌクレオチド)を提供する。本発明に係る第1のポリヌクレオチドは、配列番号1に示される塩基配列の部分配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドであって、該部分配列は、配列番号1に示される塩基配列の177番目の塩基を含むことを特徴としている。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「DNA配列」、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用される。
本発明に係るポリヌクレオチドは、DNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)またはRNA(例えば、mRNA)の形態で存在し得る。DNAは、一本鎖または二本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であり得るか、または、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であり得る。
なお、本明細書中で使用される場合、「ゲノムDNA」は、ゲノム全長に限定されず、目的の領域を含む部分断片であってもよく、ゲノムに由来するDNA全般が意図される。目的の領域を含む部分断片を得るためには、ゲノムDNAをテンプレートとして、目的の領域を増幅し得るように設計したプライマーセットを用いて増幅反応を行えばよい。
「配列番号1に示される塩基配列の177番目の塩基」とは、比内鶏に特異的な一塩基多型が存在する塩基である。比内鶏においては、上記位置の塩基はチミンであるが、他の品種においてはアデニンである。
本発明に係る第1のポリヌクレオチドは、比内鶏のゲノムDNAと特異的にハイブリダイズするので、識別すべき鶏由来のゲノムDNAおよび第1のポリヌクレオチドがハイブリダイズするか否かを調べることにより、対象の鶏が比内鶏であるか否かを知ることができる。具体的には、本発明に係る第1のポリヌクレオチドは、増幅用プライマー(例えば、PCRプライマー)またはハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。
なお、第1のポリヌクレオチドが標的(例えば、比内鶏のゲノムDNA)とハイブリダイズしたか否かを検出するためには、当該分野において周知の二本鎖DNA検出技術を利用すればよい。また、第1のポリヌクレオチドがプライマーである場合は、増幅産物が得られるか否かによって、ハイブリダイズしたか否かを検出することができる。
本発明はまた、比内鶏を検出するための方法およびキットを提供する。
上述したように、本発明に係る第1のポリヌクレオチドを、比内鶏特異的SNPを含むポリヌクレオチドを検出するハイブリダイゼーションプローブまたは当該ポリヌクレオチドを増幅するためのプライマーとして利用することによって、比内鶏に由来する組織(例えば、食肉)を容易に検出することができる。
本発明に係る比内鶏の検出方法は、識別すべき鶏が比内鶏であるか否かを識別する方法であって、識別すべき鶏由来のゲノムDNAと第1のポリヌクレオチドをインキュベートさせる工程を包含することを特徴としている。第1のポリヌクレオチドが、識別すべき鶏由来のゲノムDNAとハイブリダイズすれば、該鶏は比内鶏であると判別することができる。
また、本発明に係る比内鶏の検出キットは、識別すべき鶏が比内鶏であるか否かを識別するために用いるキットであって、第1のポリヌクレオチドを備えていることを特徴としている。本発明に係る比内鶏の検出キットは、第1のポリヌクレオチドを備えているので、本発明に係る比内鶏の検出方法に好適に用いることができる。なお、本発明に係る比内鶏の検出キットはプライマーセットであってもよく、この場合、一方のプライマーが第1のポリヌクレオチドであればよい。
本明細書中で使用される場合、用語「プローブ」は、目的のヌクレオチド配列を有する遺伝子(例えば、DNA)の存在を検出するためのポリヌクレオチドが意図され、適切な条件下で目的の遺伝子とハイブリダイズすることが好ましい。プローブとしての好ましい長さは、ハイブリダイゼーション条件に応じて適宜変更され得るが、一般的には、17〜1000の間の任意の塩基数からなるヌクレオチドであり得、好ましくは20〜600塩基からなり、より好ましくは50〜500塩基からなる。配列番号1〜3に示される塩基配列の全長配列からなるポリヌクレオチドは、何れも塩基数が600個以下であるので、当該ポリヌクレオチドがプローブとして好適に用いられ得ることを当業者は容易に理解する。
本明細書において使用される場合、用語「プライマー」は、適切な条件下での鋳型指向性DNA合成の開始点として作用する一本鎖オリゴヌクレオチドが意図される。プライマーとしての好ましい長さは、意図される用途に応じて適宜変更され得るが、一般的には、15〜50の間の任意の数の塩基からなるヌクレオチドであり得、好ましくは15〜30ヌクレオチドである。プライマーは、鋳型配列に完全に一致する必要はないが、鋳型とハイブリダイズするに十分相補的であるべきである。用語「プライマー対」は、増幅される核酸配列の5’末端とハイブリダイズする5’(上流)プライマーおよび増幅されるその配列の3’末端の相補物とハイブリダイズする3’(下流)プライマーを含む一組のプライマーセットが意図される。
なお、本明細書において、核酸増幅反応として「PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)」を用いて例示的に説明しているが、本実施形態に係るオリゴヌクレオチドは、PCR以外の核酸増幅反応にもまた適用可能である。
第1のポリヌクレオチドを比内鶏のゲノムDNAを特異的に増幅するためのプライマーとして用いる場合、その3’末端が、比内鶏に特異的な一塩基多型部位であることが好ましい。このようなプライマーを用いて鶏ゲノムDNAを増幅することにより、比内鶏のゲノムDNAのみを増幅することができる。
さらに、ゲノムDNAをテンプレートとした増幅反応に用いるための、第1のポリヌクレオチドを増幅し得るように設計したプライマーセットもまた本発明の範囲内に含まれ得ることを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。この場合、PCR産物としての扱い易さの観点から、第1のポリヌクレオチドは100〜400塩基からなることが好ましいが、これに限定されない。
(2:土佐地鶏)
本発明は、土佐地鶏の検出に用いることができるポリヌクレオチド(第2のポリヌクレオチド)を提供する。本発明に係る第2のポリヌクレオチドは、配列番号2に示される塩基配列の部分配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドであって、該部分配列は、配列番号1に示される塩基配列の180番目の塩基を含むことを特徴としている。
「配列番号2に示される塩基配列の180番目の塩基」とは、土佐地鶏に特異的な一塩基多型が存在する塩基である。土佐地鶏においては、上記位置の塩基はグアニンであるが、他の品種においてはアデニンである。
本発明に係る第2のポリヌクレオチドは、土佐地鶏のゲノムDNAと特異的にハイブリダイズするので、識別すべき鶏由来のゲノムDNAおよび第2のポリヌクレオチドがハイブリダイズするか否かを調べることにより、対象の鶏が土佐地鶏であるか否かを知ることができる。具体的には、本発明に係る第2のポリヌクレオチドは、増幅用プライマー(例えば、PCRプライマー)またはハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。
なお、第2のポリヌクレオチドが標的(例えば、土佐地鶏のゲノムDNA)とハイブリダイズしたか否かを検出するためには、当該分野において周知の二本鎖DNA検出技術を利用すればよい。また、第2のポリヌクレオチドがプライマーである場合は、増幅産物が得られるか否かによって、ハイブリダイズしたか否かを検出することができる。
本発明はまた、比内鶏を検出するための方法およびキットを提供する。
本発明に係る土佐地鶏の検出方法は、識別すべき鶏が土佐地鶏であるか否かを識別する方法であって、識別すべき鶏由来のゲノムDNAと第2のポリヌクレオチドをインキュベートさせる工程を包含することを特徴としている。第2のポリヌクレオチドが、識別すべき鶏由来のゲノムDNAとハイブリダイズすれば、該鶏は土佐地鶏であると判別することができる。
また、本発明に係る土佐地鶏の検出キットは、識別すべき鶏が土佐地鶏であるか否かを識別するために用いるキットであって、第2のポリヌクレオチドを備えていることを特徴としている。本発明に係る土佐地鶏の検出キットは、第2のポリヌクレオチドを備えているので、本発明に係る土佐地鶏の検出方法に好適に用いることができる。なお、本発明に係る土佐地鶏の検出キットはプライマーセットであってもよく、この場合、一方のプライマーが第2のポリヌクレオチドであればよい。
第2のポリヌクレオチドを土佐地鶏のゲノムDNAを特異的に増幅するためのプライマーとして用いる場合、その3’末端が、土佐地鶏に特異的な一塩基多型部位であることが好ましい。このようなプライマーを用いて鶏ゲノムDNAを増幅することにより、土佐地鶏のゲノムDNAのみを増幅することができる。
さらに、ゲノムDNAをテンプレートとした増幅反応に用いるための、第2のポリヌクレオチドを増幅し得るように設計したプライマーセットもまた本発明の範囲内に含まれ得ることを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。この場合、PCR産物としての扱い易さの観点から、第2のポリヌクレオチドは100〜400塩基からなることが好ましいが、これに限定されない。
(3:ニューハンプシャー)
本発明は、ニューハンプシャーの検出に用いることができるポリヌクレオチド(第3のポリヌクレオチド)を提供する。本発明に係る第3のポリヌクレオチドは、配列番号3に示される塩基配列の部分配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドであって、該部分配列は、配列番号1に示される塩基配列の244番目の塩基を含むことを特徴としている。
「配列番号3に示される塩基配列の244番目の塩基」とは、ニューハンプシャーに特異的な一塩基多型が存在する塩基である。ニューハンプシャーにおいては、上記位置の塩基はグアニンであるが、他の品種においてはシトシンである。
本発明に係る第3のポリヌクレオチドは、ニューハンプシャーのゲノムDNAと特異的にハイブリダイズするので、識別すべき鶏由来のゲノムDNAおよび第3のポリヌクレオチドがハイブリダイズするか否かを調べることにより、対象の鶏がニューハンプシャーであるか否かを知ることができる。具体的には、本発明に係る第3のポリヌクレオチドは、増幅用プライマー(例えば、PCRプライマー)またはハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。
なお、第3のポリヌクレオチドが標的(例えば、ニューハンプシャーのゲノムDNA)とハイブリダイズしたか否かを検出するためには、当該分野において周知の二本鎖DNA検出技術を利用すればよい。また、第3のポリヌクレオチドがプライマーである場合は、増幅産物が得られるか否かによって、ハイブリダイズしたか否かを検出することができる。
本発明はまた、ニューハンプシャーを検出するための方法およびキットを提供する。
本発明に係るニューハンプシャーの検出方法は、識別すべき鶏がニューハンプシャーであるか否かを識別する方法であって、識別すべき鶏由来のゲノムDNAと第3のポリヌクレオチドをインキュベートさせる工程を包含することを特徴としている。第3のポリヌクレオチドが、識別すべき鶏由来のゲノムDNAとハイブリダイズすれば、該鶏はニューハンプシャーであると判別することができる。
また、本発明に係るニューハンプシャーの検出キットは、識別すべき鶏がニューハンプシャーであるか否かを識別するために用いるキットであって、第3のポリヌクレオチドを備えていることを特徴としている。本発明に係るニューハンプシャーの検出キットは、第3のポリヌクレオチドを備えているので、本発明に係るニューハンプシャーの検出方法に好適に用いることができる。なお、本発明に係る土佐地鶏の検出キットはプライマーセットであってもよく、この場合、一方のプライマーが第3のポリヌクレオチドであればよい。
第3のポリヌクレオチドをニューハンプシャーのゲノムDNAを特異的に増幅するためのプライマーとして用いる場合、その3’末端が、ニューハンプシャーに特異的な一塩基多型部位であることが好ましい。このようなプライマーを用いて鶏ゲノムDNAを増幅することにより、ニューハンプシャーのゲノムDNAのみを増幅することができる。
さらに、ゲノムDNAをテンプレートとした増幅反応に用いるための、第3のポリヌクレオチドを増幅し得るように設計したプライマーセットもまた本発明の範囲内に含まれ得ることを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。この場合、PCR産物としての扱い易さの観点から、第3のポリヌクレオチドは100〜400塩基からなることが好ましいが、これに限定されない。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
〔実施例1:AFLP解析〕
ホワイトコーニッシュ21羽、レッドコーニッシュ22羽、ホワイトプリマスロック22羽、ニューハンプシャー22羽、ロードアイランドレッド20羽、横斑プリマスロック20羽、比内鶏20羽、土佐地鶏30羽、および対馬地鶏42羽から、血液を採取した。なお、鶏は以下から入手した:家畜改良センター(ホワイトコーニッシュ、レッドコーニッシュ、ホワイトプリマスロック、およびニューハンプシャー);畜産草地研究所(横斑プリマスロック、比内鶏、土佐地鶏10羽、および対馬地鶏20羽);高知県畜産試験場(土佐地鶏20羽);および、長崎県畜産試験場(対馬地鶏22羽)。
採取した血液から、定法を用いてゲノムDNAを抽出した。抽出したゲノムDNAを品種ごとに混合した。
得られたゲノムDNAに対し、AFLP Core Reagent KitおよびStarter Primer Kit(共にInvitrogen)を用いて、製造者の説明書に従ってALFP解析を行った。具体的には、まず、各品種のゲノムDNAをEcoRIおよびMseIにより断片化し、EcoRIアダプターおよびMseIアダプターをライゲーションさせた。次にユニバーサルプライマーセットを用いて予備増幅した後、AFLPプライマーを用いて増幅することにより選択的AFLP増幅産物を得た。
得られた増幅産物を、7M尿素を含む6%ポリアクリルアミドゲル中にて、200Vの電圧を印加して電気泳動した。バッファーにはTBEを用いた。電気泳動後、上記増幅産物をナイロンメンブレン(Roche)に転写し、GENGOLD(British BioCell International Ltd.)を用いた銀増幅により可視化した。
各品種についての上記増幅産物のバンドを比較することにより、品種間で異なる長さを示すバンド(多型バンド)を約200本見出した。
〔実施例2:PCR用プライマーの設計〕
実施例1において得られた多型バンドは、品種ごとに混合されたゲノムDNAに対して行ったAFLP解析によって得られたものである。この多型バンドを実際に鶏個体または鶏組織等の品種識別に用いることが可能であるかは定かではない。品種識別に用いることが可能であるか否かを確かめるためには、一定数の各品種の鶏個体に対して検証する必要がある。しかし、AFLP解析はコストが高くかつ煩雑であるため、このような検証を行うのは困難である。さらに、市場等において実際に使用する段階においても、AFLP解析を日常のルーチンワークとして用いるのは難しい。そこで、AFLP解析によって得られた多型を検出することができるPCR用のプライマーを設計することを試みた。PCR反応による多型の検出は、一般に特定のマーカーが増幅されたか否かを確かめるだけであるので、簡便であり、大量のスクリーニングに適している。
まず、実施例1において得られた各多型バンドに係るDNAの塩基配列を以下のように解読した。
各多型バンドから、定法を用いてDNAを抽出した。このDNAを、pCR 2.1−TOPOベクター(TOPO TA Cloningキット、Invitrogen)に挿入し、該ベクターを用いてTOP10コンピテント細胞(TOPO TA Cloningキット、Invitrogen)を形質転換した。形質転換した細胞を増殖させた後、定法を用いてDNAを抽出及び精製し、シークエンス反応を行った。
CEQ Dye Terminator Cycle Sequencinf Quick Start Kit(Beckman Coulter Inc.)を用いて行い、CEQ 8000 Genetic Analysis System(Beckman Coulter Inc.)を用いて塩基配列の解読を行った。
ここで、従来、AFLP解析によって得られた多型を検出することができるPCR用のプライマーを設計する際には、多型バンドに係るDNAの塩基配列のうち、AFLPプライマーに対応する部分の内側の塩基配列に基づいて設計が行われていた。このようなプライマーは、多くの場合、多型を検出する能力またはゲノムDNAを増幅する能力を失う(非特許文献1および2)。
本発明者は、鋭意検討の結果、上記のようなプライマーが、多型を検出する能力またはゲノムDNAを増幅する能力を失うのは、AFLP解析によって検出される多型が、AFLPプライマーに含まれる特異的な塩基の違い、または制限酵素部位の違いの結果として生じることを見出した。そこで、以下の方法を採用することにより、適切なプライマーを設計することに成功した。
まず、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のBLAST chicken sequencesを参照して、各多型バンドの塩基配列のゲノム上の位置を同定した。次に、公開された鶏のドラフトシークエンス(http://www.ensembl.org/Gallus_gallus/およびhttp://genome.uese.edu/cgi−bin/hgGateway?org=Chicken&db=0&hgsid=30948908にて公開)を基に、多型バンドに係るDNAの塩基配列の外側を増幅し得るプライマーセットを設計した。
このプライマーを用いて、各品種につき5羽ずつの鶏から得たゲノムDNAに対し、PCR反応を行った。それぞれのPCR産物をシークエンスし、配列を比較することにより多型部位を検出することができた。
そして、この多型部位を検出し得るプライマーを設計することによって、適切なPCR用プライマーを設計することができた。具体的には、多型部位を増幅するように設計した共通プライマーセットと、多型部位を3’末端に有する品種特異的プライマーを設計した。
〔実施例3:対立遺伝子の品種間における分布の調査〕
実施例2において設計したプライマーを用いて、9品種219羽に対してPCR反応を行った。反応は、94℃で9分30秒間行った後、94℃で30秒間、63℃で30秒間、72℃で3分間を35サイクル、次いで72℃で1分間行った。
結果、品種識別が可能な三つの一塩基多型を得ることができた(表1)。
第1の一塩基多型は、配列番号4に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号5に示す塩基配列からなるプライマーとのセット(第1の共通プライマーセット)および配列番号6に示す塩基配列からなる第1の品種特異的プライマー(第1のポリヌクレオチド)によって検出される一塩基多型である。比内鶏のゲノムDNAに対して、第1の共通プライマーおよび第1の品種特異的プライマーを用いてPCR反応を行うと、塩基長186bpの断片が100%の確率で得られる。一方、他の品種の鶏ゲノムDNAに対して、第1の共通プライマーおよび第1の品種特異的プライマーを用いてPCR反応を行うと、塩基長467bpの断片が100%の確率で得られる。すなわち、比内鶏であるか否かを100%の確率で識別することができた(図1(A))。
また、第1の一塩基多型は、相同性検索の結果から、Z染色体(GenBankアクセッション番号:NW_060748を参照)上に存在していた(図2(A))。但し、第1の一塩基多型の位置は、特定のタンパク質をコードする遺伝子内にはなかった。詳細には、Z染色体の3015717番目のAがTに変換していた。
第2の一塩基多型は、配列番号7に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号8に示す塩基配列からなるプライマーとのセット(第2の共通プライマーセット)および配列番号9に示す塩基配列からなる第2の品種特異的プライマー(第2のポリヌクレオチド)によって検出される一塩基多型である。土佐地鶏のゲノムDNAに対して、第2の共通プライマーおよび第2の品種特異的プライマーを用いてPCR反応を行うと、塩基長340bpの断片が100%の確率で得られる。一方、他の品種の鶏ゲノムDNAに対して、第2の共通プライマーおよび第2の品種特異的プライマーを用いてPCR反応を行うと、塩基長444bpの断片が100%の確率で得られる。すなわち、100%の確率で土佐地鶏であるか否かを識別することができた(図1(B))。
また、第2の一塩基多型は、第1染色体(GenBankアクセッション番号:NW_060220を参照)上に存在していた(図2(B))。但し、第2の一塩基多型の位置は、特定のタンパク質をコードする遺伝子内にはなかった。詳細には、第1染色体の1573080番目のAがGに置換していた。
第3の一塩基多型は、配列番号10に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号11に示す塩基配列からなるプライマーとのセット(第3の共通プライマーセット)および配列番号12に示す塩基配列からなる第3の品種特異的プライマー(第3のポリヌクレオチド)によって検出される一塩基多型である。ニューハンプシャーのゲノムDNAに対して、第3の共通プライマーおよび第3の品種特異的プライマーを用いてPCR反応を行うと、塩基長208bpの断片が100%の確率で得られる。一方、他の品種の鶏ゲノムDNAに対して、第3の共通プライマーおよび第3の品種特異的プライマーを用いてPCR反応を行うと、塩基長474bpの断片が100%の確率で得られる。すなわち、100%の確率でニューハンプシャーであるか否かを識別することができた(図1(C))。
また、第3の一塩基多型は、第10染色体上のグアニンヌクレオチド交換因子p532遺伝子(GenBankアクセッション番号:NW_060433を参照)上に存在していた(図2(C))。詳細には、グアニンヌクレオチド交換因子p532遺伝子の19684番目のCがGに置換していた。
これらの一塩基多型に関して、該当する3品種におけるホモ接合体もしくはヘテロ接合体の判断は、シークエンスに基づいて行った。それぞれの品種におけるホモ接合体の割合を表2に示す。
特異性の低いもしくは発現頻度の低い、品種特異的マーカーの他の候補を表3に示す。
例えば、対馬地鶏のみに存在する14塩基(AAGGTGACTTAATT:配列番号13)の欠失を第11染色体上の1088645番から1088658番の間に見出した(候補2)が、この発現頻度は50%であり、対馬地鶏の識別においての有効性は低かった。
このように、得られるマーカーの特定の品種における頻度は、通常100%よりも低く、複数のマーカーを組み合わせて統計的な処理を行うことにより、100%に近い検出率を得る(非特許文献3を参照)。
一方、本発明は、一つの一塩基多型のみに基づいて特定の品種を100%の確率で識別することができるので、従来の他の品種識別法と比較して非常に簡便であり、日常の検査手段として用いる際に、非常に有効である。
本発明は、鶏製品、特に特定JAS規格認定地鶏やブランド鶏に由来する製品を検査および保証するためのツールとして有用である。本発明を用いれば、品種を誤って表記した鶏製品の流通を防止し、鶏製品に対する信頼感を消費者に与えることができる。
なお、本発明は、交雑種の鶏に対しても適用することが可能である。例えば、比内地鶏は比内鶏と他の鶏との交雑種であるが、本発明に係る一塩基多型をホモ接合体として有する比内鶏を繁殖のために用いれば、該比内鶏の子であるすべての比内地鶏は該一塩基多型を有するため、本発明を用いて該比内地鶏を検出することが可能である。
(A)は本発明に係る比内鶏を識別するためのプライマーを用いて、各品種の鶏ゲノムDNAを増幅した結果を示す写真であり、(B)は本発明に係る土佐地鶏を識別するためのプライマーを用いて、各品種の鶏ゲノムDNAを増幅した結果を示す写真であり、(C)は本発明に係るニューハンプシャーを識別するためのプライマーを用いて、各品種の鶏ゲノムDNAを増幅した結果を示す写真である。 (A)は、鶏ゲノムDNA(Z染色体)の塩基配列を示す図であり、比内鶏ではゴシック部位に本発明に係る一塩基多型部位が存在する。(B)は、鶏ゲノムDNA(第1染色体)の塩基配列を示す図であり、土佐地鶏ではゴシック部位に本発明に係る一塩基多型部位が存在する。(C)は、第10染色体上のグアニンヌクレオチド交換因子p532遺伝子の塩基配列を示す図であり、ニューハンプシャーではゴシック部位に本発明に係る一塩基多型部位が存在する。

Claims (9)

  1. 配列番号1に示される塩基配列の部分配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドであって、
    該部分配列は、配列番号1に示される塩基配列の177番目の塩基を含み、かつ連続した15個以上の塩基からなることを特徴とするポリヌクレオチド。
  2. 配列番号2に示される塩基配列の部分配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドであって、
    該部分配列は、配列番号2に示される塩基配列の180番目の塩基を含み、かつ連続した15個以上の塩基からなることを特徴とするポリヌクレオチド。
  3. 配列番号3に示される塩基配列の部分配列またはその相補配列からなるポリヌクレオチドであって、
    該部分配列は、配列番号3に示される塩基配列の244番目の塩基を含み、かつ連続した15個以上の塩基からなることを特徴とするポリヌクレオチド。
  4. 請求項1に記載のポリヌクレオチドを鶏ゲノムDNAと共にインキュベートする工程を包含することを特徴とする比内鶏の検出方法。
  5. 請求項2に記載のポリヌクレオチドを鶏ゲノムDNAと共にインキュベートする工程を包含することを特徴とする土佐地鶏の検出方法。
  6. 請求項3に記載のポリヌクレオチドを鶏ゲノムDNAと共にインキュベートする工程を包含することを特徴とするニューハンプシャーの検出方法。
  7. 請求項1に記載のポリヌクレオチドを備えていることを特徴とする比内鶏の検出キット。
  8. 請求項2に記載のポリヌクレオチドを備えていることを特徴とする土佐地鶏の検出キット。
  9. 請求項3に記載のポリヌクレオチドを備えていることを特徴とするニューハンプシャーの検出キット。
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