以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための食器の保温器を例示するものであって、本発明は食器の保温器を以下のものに特定しない。さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
本発明の食器の保温方法に使用する保温器は、食品が入れられた食器を上に載せて、この食器を冷却状態に保温して食品を保温する。すなわち、本発明の食器の保温方法に使用する保温器は、食品を入れた食器を上に載せる状態で使用されて、保温器で冷却される食器を介して、食器に入れられた食品の温度を適温に保持する。この保温器は、食器を冷却することで、この食器に配置された食品の温度が上昇するのを抑制して冷却状態に保温する。食器を冷却状態に保温する保温器は、低温保存された食品や冷たい食品、あるいは温度が上昇すると風味や食感が失われる食品等を盛りつけたり、入れたりした食器を下側から冷却する。これにより、食器に配置された食品の温度が上昇するのを抑制して、長い時間にわたって低温状態に保温して、これ等の食品を美味に食することができるようにする。
なお、本明細書において、食器とは、食品を載せたり、入れたりすることが可能な容器であって、上面に食品を載せることができる平皿状のものから、上方開口で中央凹の深皿やどんぶり、鉢、椀(碗)、ボウル、カップ、コップ等の容器までを含む広い意味で使用する。さらに、食器は、その材質を限定せず、陶磁器製、ガラス製、金属製、プラスチック製、木製、紙製等の各種食器類であって、現在すでに使用され、あるいは今後製造される種々の食器が使用可能である。
本発明の食器の保温方法に使用する保温器は、種々の形状の食器を上に載せる状態で安定して支持しながら、これ等の食器の下面に広い面積で密着できるように、上に載せられる食器を押し付ける状態で食器の下面に沿う形状に変形する可撓性と、食器が載せられた状態で、変形状態に保持されて、上に載せる食器の下面に面接触して熱結合状態に密着する保形性とを備えている。さらに、保温器は、上に載せられる食器の温度を最適な温度に維持するために、食器の下面に密着して熱結合される食器を冷却状態に保温する保温性を有している。
図1〜図17に示す保温器は、中空状に形成されてなる本体部10と、この本体部10に充填され、かつ自由に変形する保温材20とを備えている。本体部10は、少なくとも食器30との対向面となる上面側を可撓性シート12で構成しており、自由に変形する保温材20を内部に充填することで、本体部10の上面側の形状を食器30の下面に沿う形状に変形させる可撓性を実現している。この保温器は、食品を入れた食器30を上に載せて、この食器30を本体部10の上面10Aに押し付ける状態で、本体部10の上面側を食器30の下面に沿う形状に変形させて、本体部10の上面10Aを食器30の下面に面接触状態で密着させる。
さらに、保温器は、食器30を上に載せた状態で、本体部10の上面10Aを食器30の下面に沿う変形状態に保持し、食器30の下面に面接触させて熱結合状態に密着する保形性を実現するために、本体部30に充填される保温材20を所定の粘度としている。この保温器は、食器30を本体部10の上面10Aに押し付ける状態で、所定の粘度を有する保温材20が食器30の下面に沿う形状に変形すると共に、この変形状態に保持されて、本体部10の上面を食器30の下面に面接触状態で密着させる。ここで、保温材20の粘度は、食器30の下面を押し付ける押圧状態で、速やかに食器30の下面に沿う形状に変形すると共に、食器30を載せた状態では元の形状に復元することなく変形状態に保持される粘度とする。
ただ、保温器は、必ずしも保温材の粘性のみによって保形性が実現される構造には限定しない。保温器は、粘性のない保温材、例えば液状、粉末状、粒状等の保温材であっても、本体部の形状を所定の形状とすることで、食器の下面を押し付ける押圧状態で、本体部の上面を食器の下面に沿う形状に変形させて、なおかつ、その変形状態に保持することができるからである。例えば、下面の形状が中央凸となる食器や、上方開口となる容器形状の食器等を上に載せて保持する場合においては、保温器は、本体部の形状を、中央に貫通穴を設けたリング状とし、あるいは、上面に中央凹である凹部を有する形状とすることで、粘性のない保温材を使用する状態においても、本体部の上面形状を、食器の下面を押し付けた状態の形状に保持して、食器の下面に密着させることができる。したがって、本明細書において、「保温器の保形性」とは、食器が押し付けられて、あるいは押し付けることなく食器を上に載せる状態で、本体部の上面が食器の下面に沿う変形状態に保持されると共に、食器を載せた状態では、元の形状に復元することなく変形状態に保持されて、食器の下面に面接触状態に密着する特性を意味するものとする。
さらに、保温器は、本体部10の上に載せられる食器30を冷却状態に保温する保温性を実現するために、本体部10に充填される保温材20を、外部の熱を吸収する吸熱材や保冷剤としている。保温材20を吸熱材や保冷剤とする保温器は、上に載せられた食器30から熱伝導される熱を保温材20が吸収して食器30を冷却することにより、食器30を冷却状態に保温する。
[本体部10]
図1〜図17に示す本体部10は、内部に保温材20を収納できるように、中空状に成形されている。これらの図に示す本体部10は、上に食器30が配置される状態で、食器30の下面に面接触する接触部11を上面10Aに備えており、この接触部11を食器30の下面に密着させて熱結合させている。本体部10は、形状の異なる食器30の下面に対応して上面10Aを密着できるように、少なくとも上面側を可撓性シート12で構成して変形部14としており、充填された保温材20を内部で変形または移動させて、可撓性シート12で形成される変形部14の形状を、載置される食器30の下面に沿う形状に変形できるようにしている。
図1〜図7に示す本体部10は、可撓性シート12で形成された変形袋19としている。変形袋19である本体部10は、可撓性シート12を加工して全体が袋状に形成される。変形袋19は、可撓性シートを筒状に成形すると共に、両端を閉塞して袋状に成形することができ、あるいは、図5に示すように、上面側を形成する第1シート12Aと下面側を形成する第2シート12Bとからなる2枚の可撓性シート12を周囲で封止して中空状の袋状に形成することができる。図1〜図5に示す変形袋19は、全体の外形をリング状に形成しており、下面を形成する第2シート12Bをリング状の平面シートとすると共に、上面側を形成する第1シート12Aをリング状の溝形に成形して、対向する周縁部を溶着して中空状に成形している。この構造の変形袋19は、第1シート12Aと第2シート12Bの周囲が封止されて、内部に保温材20が封入される。可撓性シート12で形成される変形袋19は、充填される保温材20を外部に漏れないように簡単かつ確実に封入できる特徴がある。
以上のように、全体を可撓性シート12で構成する変形袋19は、上面側を変形部14として、載置される食器30の下面に沿う形状に変形できる。ただ、全体を可撓性シート12で構成する変形袋19は、上面側だけでなく、下面側も変形しやすくなる。本体部10の下面側は、テーブル等の水平な台の上に載置される面となるので、変形することなく平面状に保持されることが好ましい。したがって、変形袋19からなる本体部10は、詳細には後述するが、充填する保温材の充填量を調整することにより、テーブル等の水平な台の上に載置した状態で下面を平面状に保持するようにする。
さらに、図1〜図5に示す本体部10は、変形袋19の下面を平面状に保持するために、変形袋19の下面に支持プレート25を固定して、下面側の変形を抑制している。この本体部10は、支持プレート25が固定される変形袋19の下面を平面状として安定した姿勢に保持しながら、食器30が載せられる上面側を変形部14として、この変形部14を食器30の下面に沿う形状に変形させて密着させることができる。ただ、変形袋からなる本体部は、必ずしも下面に支持プレートを備える必要はない。支持プレートのない変形袋は、テーブル等の水平な台の上面に載置する状態で、その下面の形状を台の上面に沿う平面状に変形させることで、安定して支持できるからである。
さらに、第1シートと第2シートからなる変形袋は、図示しないが、下面側の第2シートを上面側の第1シートよりも硬く(例えば厚く成形)することで下面の変形を抑制することができる。この構造の変形袋は、下面側の変形を抑制して、平面状に保持した状態で安定して水平な台の上に載置でき、上面側のみを変形部として変形させて、食器の下面に沿う状態で密着させることができる。
さらに、本体部は、必ずしも全体を可撓性シートで袋状に形成する必要はなく、図8〜図16に示すように、食器30の下面と対向する上面側を可撓性シート12で構成すると共に、下面側をプレート部13で構成して下面の変形を阻止することもできる。この構造の本体部10は、図8〜図11、図15及び図16に示すように、プレート部13として、平面状の板材で下面を構成し、このプレート部13の外周縁に沿って、上面を構成する可撓性シート12を膨らませる状態で固定することによって中空状に形成することができる。さらに、下面側を構成するプレート部13は、必ずしも平面状に形成する必要はなく、図12〜図14に示すように、上方開口の容器形状として内部に保温材20を収納できる構造とすることもできる。このプレート部13は、下面を構成する底板部13Aの周囲に、外周壁13Bを連結してなる形状として、下面を構成する底板部13Aにより下面の変形を阻止できると共に、側面を構成する外周壁13Bにより内部に充填された保温材20が横崩れするのを抑制できる。
以上のように、上面側又は全体を可撓性シート12で構成して中空状に形成される本体部10は、内部に保温材20が充填されることで所定の立体形状に形成される。さらに、保温材20が充填された本体部10は、充填される保温材20を内部で変形または移動させることで、可撓性シート12で構成される上面側の変形部14を変形させて、上面形状を食器30の下面に沿う所望の形状に変形できる。この本体部10は、内部に保温材20が充填されて立体状に保形されるが、保温材20は、可撓性シート12が完全に張った状態となるまで、言い換えると最大容積までは充填されない。保温材20が本体部10の最大容積まで充填されると、本体部10の可撓性シート12が張った状態に膨らんで、上面10Aの形状を自由に変形できなくなるからである。したがって、本体部10に充填される保温材20は、本体部10の最大容積よりも少量となるように充填される。本体部10は、例えば、最大容積の40〜95%、好ましくは50〜90%に相当する体積の保温材20が充填される。ここで、本体部10の最大容積とは、本体部10の体積が最大となるまで充填物を詰め込むことができる容積であって、一部又は全体を可撓性シートで構成する本体部においては、この可撓性シート全体にテンションがかかる状態となるまで膨らんだ状態における内容積を意味している。例えば、図2に示す本体部10において、図の鎖線は、所定の形状に成形された変形部14の外形を示しており、図の一点鎖線は、変形部14が最大容積まで膨らんだ状態を示しており、図の実線は、本体部10に実際に保温材20を充填した状態を示している。このように、本体部10は、所定の形状に成形された変形部14の容積よりも少量の保温材20を充填することで、変形部14の外形を自由に変形させて、食器30の下面に沿う形状に変形できる。
さらに、本体部10は、最大容積よりも少量の保温材20が充填されるが、保温材20を充填する工程では、空気等の異物が注入されないようにする。それは、本体部10に充填する保温材20の量が本体部10の最大容積よりも少量であっても、空気等が注入されると、可撓性シート12が膨らんだ状態となって、変形部14を自由に変形できなくなる虞があるからである。また、本体部10の内部に空気等が注入されると、保温材20と食器30との間での熱伝導が低下する問題点もある。したがって、本体部10は、空気等の異物を注入することなく、本体部10の最大内容積よりも少量の保温材20が充填されるようにする。ただ、本体部10は、可撓性シート12の変形や、保温材20の熱伝導に支障をきたさない程度であれば、多少の空気等が注入されても問題はない。
さらに、保温器は、本体部10の下面に断熱層を設けることができる。本体部10は、変形袋19の下面に設ける支持プレート25や、本体部10の下面を構成するプレート部13を断熱材で形成し、あるいは、支持プレート25やプレート部13の表面を断熱加工して断熱層を設けることができる。この保温器は、支持プレートやプレート部に、断熱性に優れた部材を使用して断熱層とすることができる。また、保温器は、支持プレートやプレート部の表面に断熱シートを積層し、あるいは断熱材を塗布して断熱層を設けることもできる。
以上のように、本体部の下面に断熱層を備える保温器は、冷却する用途においては、保温器が載置されるテーブルや台の天板が冷却されるのを有効に防止できる。これにより、テーブルや台の天板が冷却されることで結露したり、本体部に充填される保温材の冷却効果が低下するのを防止できる。また、保温器の下面を断熱することにより、ユーザーが保温器を持ち運びする際には、本体部の下面側を持つことで、ユーザーが冷たく感じるのを低減できる。ただ、保温器は、必ずしも本体部の下面に断熱層を設けて断熱する必要はない。
以上の本体部10は、上面10Aに食器30が載せられる状態で、食器30を下面から支持して、食器30を所定の姿勢に保持する。食器30は、通常、食品がこぼれないように、水平ないしほぼ水平姿勢に配置される。したがって、本体部10は、上面10Aに載せられる食器30を略水平な姿勢で下面から安定して支持できるように、その大きさと形状が特定される。本体部10は、好ましくは、平面視における外形を、食器30の外形に沿う形状とする。例えば、外形を円形とする食器を支持する本体部10は、その外形を円形とし、外形を方形状とする食器を支持する本体部は、その外形を方形状とする。
[実施例]
以下、本体部10の実施例について詳述する。図1に示す本体部10は、中央部に開口部15を有するリング状に形成しており、リング状の本体部10の上面10Aを食器30の下面の外周部に密着させる接触部11としている。図に示すリング状の本体部10は、第1シート12Aと第2シート12Bからなる可撓性シート12で変形袋19が形成されている。変形袋19は、下面側の第2シート2Bが平面状の支持プレート25に固定されており、上面側の第1シート12Aで形成される変形袋19の側面10Bとなる内周面10Ba及び外周面10Bbと上面10Aとで変形部14を形成している。第1シート12Aで形成される変形部14は、内周面10Baの高さを外周面10Bbの高さよりも低くして全体の形状を中央凹の形状としている。この本体部10は、中央に設けた開口部15に食器30の下面の中央部を配置する状態で、上面10Aの接触部11を食器30の下面の外周部に沿う形状に変形させて密着させる。図示しないが、本体部は、変形袋の下面に固定される支持プレートを省略することもできる。この変形袋は、下面の第2シートを、上面や側面の第1シートより厚くすることもできる。
図1は、本体部10の一使用例であって、下面の外周部が湾曲面となる食器30に、本体部10の上面10Aが密着する状態を示している。図3は、この本体部10の他の使用例であって、下面の外周部が傾斜面となる食器30に、本体部10の上面10Aが密着する状態を示している。このように、下面の形状が中央凸となる形状の食器30に使用する保温器は、リング状の本体部10の内周面10Baを外周面10Bbよりも低く成形することで、下面が中央凸の食器30の下面に沿うように変形しやすくなる。さらに、図1に示す本体部10は、中央の開口部15に食器30の下面から突出する糸尻31を配置できるようにしている。この構造は、糸尻31を本体部10に接触させることなく食器30を安定して支持できる。ただ、リング状の本体部10は、図4に示すように、糸尻31を本体部10の上面に配置しながら支持することもできる。したがって、リング状の本体部10は、図5に示すように、使用する食器30の形状や大きさに応じて、変形部14の外径(D1)、開口部15の内径(D2)、外周面10Bbの高さ(h1)、内周面10Baの高さ(h2)を種々に変更することができる。なお、図5は、詳細には後述するが、図1に示す本体部10を成形する工程の一例を示す分解断面図である。
さらに、図6と図7に示す保温器は、本体部10の上面10Aに載置される食器30をバランス良く支持できるように、本体部10を複数の収納部10Sに分割している。図に示す本体部10は、4つの収納部10Sに均等に分割している。この本体部10は、各々の収納部の外形を4分割されたドーナツ状としており、全体ではリング状に形成されるようにしている。各々の収納部10Sは互いに独立して内部に保温材(図示せず)を充填しており、隣り合う収納部同士の間で保温材が移動しない構造としている。この本体部10は、各々の収納部10Sの内部において保温材が変形または移動するので、本体部10の上面形状を対称な形状として上面10Aに載置される食器30をバランス良く、しかも水平姿勢で安定して支持できる。図の保温器は、本体部10を4分割しているが、本体部は2〜3個の収納部に分割し、あるいは5個以上の収納部に分割することもできる。また、外形を方形状とする本体部においても、図示しないが、各収納部が対称に配置された形状となるように複数に分割することができる。ただ、本体部は、必ずしも複数の収納部に分割する必要はなく、ひとつの収納部で構成することもできる。この本体部は、内部に充填される保温材を均等に変形または移動させることで、上面に載置される食器をバランス良く、水平姿勢に支持できる。
さらに、本体部10を複数の収納部10Sに分割する保温器は、互いに隣接する収納部10Sの間に所定の間隔の隙間16を設けることができる。この保温器は、取っ手のある食器、例えば、スープ用のカップやティーカップ等であっても、取っ手部分をこの隙間16に挿入することで、取っ手が邪魔になることなく本体部10の上面に安定して支持できる。
さらに、図8〜図11に示す本体部10は、その上面形状を上方開口で中央凹の形状としており、その内側面を接触部11として、食器30の下面に密着させる構造としている。図8〜図11に示す本体部10は、側面10Bである外周面と上面10Aとを可撓性シート12で形成し、下面をプレート部13で形成している。可撓性シート12で形成される変形部14は、上面10Aの中央部を外周部よりも窪ませて、全体の形状を中央凹形状としている。さらに、本体部10は、上面10Aの中央部に第1の接触部11Aを設けて、この第1の接触部11Aを食器30の下面の中央部に密着させると共に、上面10Aの外周部にリング状の第2の接触部11Bを設けて、第2の接触部11Bを食器30の下面の外周部に密着させている。図のプレート部13は平らな板状としているが、プレート部は、外周縁に沿って周壁を設けてカップ状とすることもできる。この本体部は、外周面が外側に崩れるのを有効に防止して外周部を所定の高さに保持できる。
図8に示す本体部10は、第1の接触部11Aを平面状とすると共に、第2の接触部11Bを外周縁に向かって上り勾配で傾斜ないし湾曲する形状としている。以上の形状の本体部10は、ボウル状やカップ状の容器であって、下面の中央部を平面状とする容器を安定して支持できる。この本体部10は、図8に示すように、第1の接触部11Aを食器30の中央部の下面に密着させると共に、第2の接触部11Bを食器30の傾斜又は湾曲する外周部の下面に密着させる。このように、上面10Aの中央部を窪ませて、全体の形状を中央凹形状とする本体部10は、図9に示すように、使用する食器30の形状や大きさに応じて、第1の接触部11Aの外径(S1)、第2の接触部11Bの外径(S2)、外周面10Bbの高さ(h)、中央部の深さ(d)を種々に変更することができる。なお、図9は、詳細には後述するが、図8に示す本体部10を成形する工程の一例を示す分解断面図である。
さらに、図10に示す本体部10は、第1の接触部11Aを平面状とし、第2の接触部11Bを外周縁に向かって上り勾配で傾斜ないし湾曲する形状とすると共に、第1の接触部11Aと第2の接触部11Bの間にリング状の溝部17を形成している。この本体部10は、リング状の溝部17に、食器30の下面から突出する糸尻31を収納する。すなわち、この本体部10は、下面に糸尻31を備える食器30であって、糸尻31の内側を平面状として、糸尻31より外側の外周部を傾斜面又は湾曲面とする食器30を安定して支持できる。この本体部10は、食器30の糸尻31をリング状の溝部17に案内し、第1の接触部11Aを食器30の中央部の下面に密着させると共に、第2の接触部11Bを食器30の傾斜又は湾曲する外周部の下面に密着させる。このように、上面10Aの中央部を窪ませて、第1の接触部11Aと第2の接触部11Bの間にリング状の溝部17を設ける本体部10は、図11に示すように、使用する食器の形状や大きさ、糸尻の形状や大きさに応じて、第1の接触部11Aの外径(S1)、第2の接触部11Bの外径(S2)、外周面10Bbの高さ(h)、中央部の深さ(d)、溝部の幅(a)、溝部の深さ(b)を種々に変更することができる。なお、図11は、詳細には後述するが、図10に示す本体部10を成形する工程の一例を示す分解断面図である。
さらに、図12に示す本体部10は、その上面形状を上方開口で中央凹の形状として、図8や図10で示す食器30よりもさらに深さのあるカップ状の食器30を支持する構造としている。この図に示す本体部10は、上面10Aの中央部に平面状の第1の接触部11Aを設けて、この第1の接触部11Aを食器30の下面の中央部に密着させると共に、上面10Aの外周部にリング状の土手部18を設けて、この土手部18の内側面10Cを第2の接触部11Bとして、食器30の底部の外周面に密着させている。図に示す本体部10は、第1の接触部11Aの中央部に平面状のプレート部27を配置すると共に、土手部18を可撓性シート12で形成して変形部14としている。このように上面の中央部に平面状のプレート部27を設ける構造は、食器の中央部の下面を安定して水平姿勢に支持できる。さらに、本体部10は、下面と側面の一部をプレート部13で形成している。図に示すプレート部13は、平面状の底板部13Aの外周縁に外周壁13Bを連結して、深さのある容器状に形成している。この本体部10は、側面10Bが外側に崩れるのを防止して、本体部10の土手部18を高い起立姿勢に保持できる。
この構造の本体部10は、図12と図13に示すように、食器30の形状に応じて土手部18の形状を変形させて、内側面10Cである第2の接触部11Bを食器30の底部の外周面に密着できる。ここで、図13は、図12よりも底面の面積が小さいコップ状の食器30を示している。このように、第1の接触部11Aの周囲に、リング状の土手部18を設けてこの土手部18の内側面10Cを第2の接触部11Bとする本体部10は、図14に示すように、使用する食器30の形状や大きさに応じて、第1の接触部11Aの外径(S1)、土手部18の外径(D2)、土手部18の幅(W)、土手部18の高さ(H)を種々に変更することができる。なお、図14は、詳細には後述するが、図12と図13に示す本体部10を成形する工程の一例を示す分解断面図である。
さらに、図15に示す本体部10は、その上面形状を略水平として、水平な接触部11を食器30の下面に密着させる構造としている。図に示す本体部10は、可撓性シート12で形成された変形袋19としている。変形袋19である本体部10は、可撓性シート12を加工して全体が袋状に形成される。変形袋19は、側面10Bとなる外周面と上面10Aとを形成する第1シート12Aと下面側を形成する第2シート12Bとからなる2枚の可撓性シート12を周囲で封止して中空状の袋状に形成している。さらに、本体部10は、変形袋19の下面に支持プレート25を固定している。さらに、図に示す本体部10は、上面10Aの中央部に第1の接触部11Aを設けて、この第1の接触部11Aを食器30の下面の中央部に密着させると共に、上面10Aの外周部にリング状の第2の接触部11Bを設けて、第2の接触部11Bを食器30の下面の外周部に密着させている。第1の接触部11Aと第2の接触部11Bは、上面10Aが水平であって、ほぼ等しい高さとなるようにしている。さらに、本体部10は、第1の接触部11Aと第2の接触部11Bの間にリング状の溝部17を形成している。この本体部10は、リング状の溝部17に、食器30の下面から突出する糸尻31を収納する。すなわち、この本体部10は、下面に糸尻31を備える皿状の食器30を安定して支持できる。
この本体部10は、食器30の糸尻31をリング状の溝部17に案内し、第1の接触部11Aを食器30の中央部の下面であって糸尻31の内側に密着させると共に、第2の接触部11Bを食器30の外周部の下面であって糸尻31より外側に密着させる。このように、上面10Aを水平姿勢とする本体部10は、使用する食器30の形状や大きさ、糸尻31の形状や大きさに応じて、第1の接触部11Aの外径(S1)、第2の接触部11Bの外径(S2)、外周面10Bの高さ(h)、溝部17の幅(a)、溝部17の深さ(b)を種々に変更することができる。
さらに、図16に示す本体部10は、その上面形状を略水平として、水平な接触部11を食器30の下面であって糸尻31の内側に密着させる構造としている。図に示す本体部10は、側面10Bとなる外周面と上面10Aとを可撓性シート12で形成し、下面をプレート部13で形成している。この本体部10は、接触部11となる上面10Aの面積を食器30の糸尻31の内側の面積よりも小さくしている。この本体部10は、食器30の下面から突出する糸尻31の内側に、上面10Aの接触部11を配置して食器30の下面に密着させる。すなわち、この本体部10は、糸尻31の内側のみを支持して食器30を水平姿勢に保持する。この本体部10は、面積が広くて、糸尻31が大きな皿状の容器を支持するのに適している。このように、上面10Aを水平姿勢として糸尻31の内側を支持する本体部10は、使用する食器30の形状や大きさ、糸尻31の形状や大きさに応じて、接触部11の外径(S)、側面10Bの高さ(h)を種々に変更することができる。
さらに、図17に示す本体部10は、中央部に開口部15を有するリング状の第1の本体部10Xと、この第1の本体部10Xの開口部15に配置される第2の本体部10Yとを備えている。第1の本体部10Xは、前述の図1〜図5に示す本体部10と同じ構造、すなわち、リング状の変形袋19Aで構成している。また、第2の本体部10Yは、上面10Aを平面状とする板状の変形袋19Bで構成している。さらに、図17に示す本体部10は、下面に支持プレート25を配置しており、第1の本体部10Xとなる変形袋19Aと、第2の本体部10Yとなる変形袋19Bとを、この支持プレート25に固定して所定の位置に配置している。さらに、支持プレート25に固定される本体部10は、第1の本体部10Xと第2の本体部10Yの間にリング状の隙間26を形成しており、この隙間26に、食器30の下面から突出する糸尻31を収納するようにしている。
この本体部10は、食器30の下面から突出する糸尻31の下端を本体部10に接触させることなく、安定して所定の姿勢に支持できる。第1の本体部10Xと第2の本体部10Yとからなる本体部10は、使用する食器30の形状や大きさ、糸尻31の形状や大きさに応じて、第1の本体部10Xにおける、外径(D1)、開口部15の内径(D2)、外周面10Bbの高さ(h1)、内周面10Baの高さ(h2)、また、第2の本体部10Yにおける、接触部11の外径(S)、側面10Bの高さ(h)、さらにまた、隙間26の幅(s)を種々に変更することができる。
以上の本体部10は、図5、図9、図11、及び図14に示すように、可撓性シート12を型40に沿って加熱成形して所定の凹部形状の変形部14を成形することができる。図5に示す本体部10は、所定の凹部形状に成形された第1シート12Aと、平面状に成形されたリング状の第2シート12Bの外周縁を互いに固定して中空状の変形袋19を形成し、この変形袋19の第2シート12Bを支持プレート25に固定する。この本体部10は、第1シート12Aと第2シート12Bの外周縁を溶着して変形袋19を形成する前工程として変形袋19の内部に保温材20を充填することができる。
また、図9、図11、及び図14に示す本体部10は、凹部形状に成形された可撓性シート12の開口縁部をプレート部13に溶着や接着によって固定して中空状に形成される。図に示す本体部10は、プレート部13の外形と変形部14の外形をほぼ等しくしており、プレート部13の周縁に沿って変形部14の周縁を固定して全体の形状を中空状に成形している。この本体部10は、凹部形状に成形された変形部14とプレート部13とを溶着する前工程として変形部14の内側に保温材20を充填することができ、あるいは、変形部14とプレート部13とを溶着した後、プレート部13に設けた充填孔(図示せず)から内部に保温材20を充填することができる。プレート部13に設けた充填孔は、保温材20を充填した後、気密に閉塞される。
[可撓性シート12]
可撓性シート12には、耐水性、耐熱性、耐衝撃性、加工性等を考慮してプラスチックシートが使用される。このようなプラスチックシートの材料として、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン、シリコン等が使用できる。特に、ポリプロピレン製の可撓性シートは優れた耐熱性を実現できる。ポリエチレン製の可撓性シートには、例えば、低密度ポリエチレンが使用できる。この可撓性シートは、高温での使用には適さないが、加工性が良く、ヒートシール性もあるので、食器の冷却に使用する保温器に使用できる。さらに、シリコン製の可撓性シートは、柔軟性があるので、食器の下面に対して隙間なく密着させて、熱伝導を良好にできる。
ただ、可撓性シートには、不織布等の布地を使用することもできる。この本体部には、保温材として、非水溶性のもの、例えば、粒状ないし粉末状のものを使用する。とくに、保温材を吸熱させる際に、空気中の成分、例えば酸素や水蒸気と反応させる必要があって通気性を必要とする場合には、不織布や布地を使用することができる。また、食器の冷却に使用する保温器においては、本体部の表面に生じる結露を吸収するために不織布を使用することもできる。この不織布は、内側面を防水加工することで、液状ないしゲル状の保温材を充填することができる。さらに、可撓性シートは、プラスチックシートと不織布との積層体とすることもできる。
[プレート部13]
本体部10の下面を構成するプレート部13には、プラスチック板が使用できる。プラスチック製のプレート部13には、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の板材が使用される。とくに、プレート部13をプラスチック板とする本体部10は、プラスチック製の可撓性シート12で成形される変形部14の開口縁部を熱溶着して固定することができる。さらに、プレート部13は、表面に断熱層を設けることができる。例えば、プラスチック板であるプレート部は、表面に断熱シートを積層し、あるいは断熱材を塗布することで表面に断熱層を設けることができる。また、プレート部は、断熱性に優れた板材とすることもできる。このように、プレート部に断熱層を設ける構造は、本体部の下面側の断熱特性を向上して、本体部の下面からの不要な熱伝導を防止でき、保温材による熱伝導を接触部に集中させて効率よく保温できる。
[保温材20]
本体部10に充填される保温材20は、保温器の用途に応じて、外部の熱を吸収する保冷剤または吸熱材とする。食器30を冷却状態に保温する保温器は、本体部10の内部に、外部の熱を吸収する保温材20、すなわち、保冷剤または吸熱材が充填される。この保温器は、食器30の熱を下面から保温材20に熱伝導させて食器30を冷却することにより、食器30を冷却状態に保温する。
保温材は、食品を維持する温度によって種々に決定されるが、例えば、低温に冷やされた料理等の温度が上昇しないように保温する用途に使用される保温材には、0〜20℃に冷却する保冷剤や吸熱材を使用する。これ等の保温材20には、現在すでに開発され、あるいは、今後開発される全ての保冷剤や吸熱材が使用できる。
保温材20は、自由に変形する柔軟性を備える。この保温材20は、外部から作用する力に対して自由に変形する特性であって、保温材20を所定の粘度とすることで実現でき、あるいは、保温材20を液状、粉末状、または粒状として、本体部10の内部において自由に移動できる特性とすることで実現できる。
保温材20は、食器30を本体部10の上面10Aに押し付ける状態で、食器30の下面に沿う形状に変形可能な粘度であって、さらに、食器30を載せた状態では元の形状に復元することなく変形状態に保持される粘度とする。この保温材20は、少なくとも食器30の自重による押圧力によって食器30の下面に沿う形状に保持される粘度とすることができる。さらに、保温材20は、上に載せる食器30の下面に面接触して熱結合状態に密着する保形性を実現する粘度とする。すなわち、保温材20は、本体部10に食器30を載せた状態では、本体部10の上面10Aを食器30の下面に沿う形状に変形させると共に、食器30の下面に面接触して密着した状態に保持される粘度とする。
さらに、保温材は、液状ないしゲル状、粉末状、または粒状として、本体部の内部を自由に移動できるものとすることもできる。ただし、保温材20は、常に液状ないしゲル状、または粒状である必要はなく、少なくとも特定の温度範囲において液状ないしゲル状、または粒状であって、この状態で本体部の内部を移動して本体部の外形を変化させるものが使用できる。例えば、熱を蓄える用途に使用される蓄熱剤においては、所定の温度以上に加温されて蓄熱された状態で液状ないしゲル状、または粒状であって、放熱することによって固化して硬くなるものとすることができる。この保温材を充填してなる本体部は、保温材が蓄熱された状態で本体部の内部を移動させて、本体部の外形を食器の下面に沿う形状に変化させることができる。また、熱を吸収する用途に使用される保冷剤においては、所定の温度以下に冷却していない状態では液状ないしゲル状、または粒状であって、冷却することによって固化して硬くなるものとすることができる。この保温材を充填してなる本体部は、保温材を本体部の内部で移動させて本体部の外形を食器の下面に沿う所望の形状に変化させた状態で保温材を冷却させて、保温材を固化させることができる。すなわち、本体部10の上面形状を食器30の下面に沿う形状に保持したまま冷却して硬化させることで、保温器の上面10Aを所定の形状に形成することができる。
後述する、外部の熱を吸収する用途では、吸熱反応が利用される。このような化学蓄熱材には、水酸化物、炭酸化物、アンモニア化物などが使用される。
冷却用途に使用される保温材20である保冷剤には、例えば、高吸水性樹脂(吸水ポリマー)に水を混合したものを使用する。高吸水性樹脂(吸水ポリマー)には、ポリアクリル酸ナトリウムが使用できる。この保冷剤は、ポリアクリル酸ナトリウムを水に混合して全体をゲル状にしたものを直接使用し、あるいは骨材として樹脂ビーズに形成したものが使用できる。このような樹脂ビーズとして、例えば、1%ポリアクリル酸ナトリウム、1%アルギン酸ナトリウム水溶液を1%乳酸カルシウム液に滴下して樹脂ビーズを作成し、この樹脂ビーズ100重量部を骨材として2%ポリアクリル酸ナトリウム水溶液30重量部と混合したものが使用できる。このように、骨材として樹脂ビーズを使用する保温材は、本体部に充填された状態で、側面が大きな勾配となる形状となっても横崩れすることなく保持できる利点がある。
例えば、図17に示す保温器は、第1の本体部10Xの内部に充填する保温材20に、骨材としての樹脂ビーズ21を含有している。図17に示す第1の本体部10Xは、液状の保冷剤に加えて、樹脂ビーズ21からなる保冷剤を充填して保温材20としている。この保温器は、第1の本体部10Xに骨材として樹脂ビーズ21を充填することで、リング状の第1の本体部10Xの外周面10Bbを高く形成可能としている。これに対して第2の本体部10Yには、液状ないしゲル状の保冷剤を充填することで変形部14の柔軟性を実現している。骨材として使用される樹脂ビーズ21は、これが充填される本体部10の形状や大きさを考慮して、その粒径や充填量が決定される。さらに、樹脂ビーズ21は、大小大きさの異なるものを混合して最適な柔軟性を実現することもできる。
以上のように、ゲル状の混合物や樹脂ビーズからなる保温材は、本体部の内部に充填され、本体部の内部を自由に移動する状態で本体部の外形を変形させて、本体部の上面形状を食器の下面に沿う形状に変形させる。この保冷剤は、冷凍庫等で冷却することで、簡単に冷却作用を発揮できると共に、何度も繰り返し利用できる利便性がある。
また、冷却用途に使用される保温材20である吸熱材には、前述の吸熱反応によって外部の熱を吸収する反応が利用できる。この吸熱材は、吸熱反応により、周りの熱を吸収して冷却することができる。ここで、吸熱反応として可逆反応を起こす吸熱材については、繰り返し使用することができるが、不可逆反応を起こす吸熱材については、繰り返し使用できないので、使い捨て型の保温器として使用される。
さらに、保温器は、保温材20を吸熱材または保冷剤として、本体部10の上面10Aに載置される食器30を冷却して低温に保温することができる。ここで、低温とは、常温よりも低い温度であって、この保温器は、食器30に配置される食品の温度が常温に上昇するのを抑制する。このような保温器は、食器30に配置される低温の食品、例えば、生の魚介類、冷菜、冷スープ、冷たい麺類、果物類、アイスクリーム、乳製品、スイーツ類等のように低温で食することが好まれるもの、あるいは温度が上昇すると鮮度や風味が失われるもの等を低温に保温するのに使用される。