以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照し、鉄道車両1の全体構成について説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態における鉄道車両1の側面図であり、図1(b)は、図1(a)のIb−Ib線における鉄道車両1の断面模式図である。尚、図1(b)では、鉄道車両1の一部が模式的に図示されると共に、ハッチングは省略して図示される。
図1(a)及び図1(b)に示すように、鉄道車両1は、乗客を収容する車体10と、その車体10のレール方向(図1(a)の左右方向)の前後の2箇所に配置される台車20と、それら車体10及び台車20の間に配設される空気ばねユニット(上空気ばね30A及び下空気ばね30B)とを主に備える。
台車20は、道床100に敷設されたレール101上を転動する車輪21と、車輪21を軸支する軸箱(図示せず)と、台車枠22とを主に備える。
空気ばねユニットは、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bが上下直列に重ねられると共に、台車20の枕木方向(図1(b)左右方向)2箇所に配設され、車体10は、空気ばねユニットを介して台車20によって支持される。
鉄道車両1は、空気ばねユニットの高さを調整することによって車体10の水平状態を保つことが可能とされる。また、プラットホーム到着時に鉄道車両1の乗降口とプラットホームとの段差を無くすことで乗客の乗降を安全に行うことができ、更に、走行中に枕木方向2箇所に配設される空気ばねユニットをそれぞれ別の高さに調整することで車体10を傾けて、曲線通過時の乗り心地や通過速度の向上が可能とされる。
次いで、図2(a)を参照し、下空気ばね30B(上空気ばね30A)の詳細構成について説明する。図2(a)は、下空気ばね30B(上空気ばね30A)の側面断面図である。尚、以下の説明において、下空気ばね30Bの軸を軸Oと記載する。また、図2(a)の下空気ばね30Bは、下空気ばね30Bの軸Oを含む平面により切断した断面が図示され、図2(b)、図3、図4及び図5においても同様に図示される。
また、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bは、説明の便宜上、配置される位置で区別して異なる名称が付与されるが、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bは同じ空気ばねとして形成される。よって、上空気ばね30Aには下空気ばね30Bと同一の符号を付してその説明は省略する。また、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bが同一の構成に形成され、各個の有効受圧面積および容積は略同一となるため、各個のばね定数も製造時の公差の範囲で略同一とされる。
図2(a)に示すように、下空気ばね30B(上空気ばね30A)は、鉄道車両1の走行時の振動を吸収するための空気ばねであり、第1部材31と、その第1部材31に対向配置される第2部材32と、それら第1部材31および第2部材32を連結するダイヤフラム33と、そのダイヤフラム33によって形成される空気室34とを主に備える。
第1部材31は、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bを車体10と台車20との間に配設する際に上空気ばね30A及び下空気ばね30B同士が当接する部位であり、第1部材31の空気室34側の面に形成されるストッパゴム31aと、そのストッパゴム31aが形成される面とは反対側の面である平面部31bと、その平面部31bの略中央部分に形成される凹部31cとを主に備える。
ストッパゴム31aは、第1部材31及び第2部材32同士の軸O方向(図2(a)の上下方向)における相対的な変位を規制するためのストッパゴムであり、第1部材31の空気室34側の面に形成される。
平面部31bは、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bを上下直列に重ねる際に、上空気ばね30A及び下空気ばね30B同士が当接する面であり、ストッパゴム31aが形成される面とは軸O方向の反対側の面を形成する。また、平面部31bの略中央部分には凹部31cが形成される。
凹部31cは、後述する固定部材35と嵌合可能に形成される窪みであり、平面部31bに軸O方向視円形状に形成され、その開口部分から下空気ばね30Bの軸O方向の空気室34側に向けて縮径する断面台形状に形成される。
第2部材32は、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bを車体10と台車20との間に配設する際に車体10又は台車20と当接する部位であり、第1部材31と軸O方向に対向して配置される。第2部材32は、当接部32aと、その当接部32aの略中央部分から突設される給排気口32bとを主に備える。
当接部32aは、空気室34側の面がストッパゴム31aと当接可能に形成されると共に、その空気室34側の面と軸O方向反対側の面が車体10及び台車20と当接可能に形成される。当接部32aの空気室34側の面とストッパゴム31aとが当接することにより、第1部材31及び第2部材32同士の軸O方向における相対的な変位を規制することができる。これにより、下空気ばね30Bの最小高さが規定される。
また、下空気ばね30Bが収縮状態で使用される際に第1部材31と第2部材32とがストッパゴム31aを介して当接することで、第1部材31又は第2部材32の水平方向(軸Oと垂直な方向)への変位をストッパゴム31aの摩擦力および撓みによって規制できると共に、当接部32aの当接面での摩耗も抑制できる。
給排気口32bは、後述する空気室34の空気を給排気するための筒状部材であり、当接部32aの略中央部分に空気室34と外部とを接続するように形成される。
ダイヤフラム33は、下空気ばね30Bが空気を給排気することで膨張、収縮するゴム膜であり、第1部材31と第2部材32とを接続するように形成される。これにより、第1部材31と第2部材32との間には空気室34が形成される。
空気室34は、下空気ばね30Bに供給される空気を保持するための空間であり、給排気口32bを介して空気を給排気することにより、ダイヤフラム33が膨張、収縮する。
尚、ストッパゴム31a、平面部31b、凹部31c、当接部32a、給排気口32b及びダイヤフラム33は、軸Oに対して軸対称の円盤状に形成されるが、その説明図は省略する。また、本実施形態では、ダイヤフラム33が軸Oに対して軸対称の円盤状に図2(a)の形状で一定に形成されるので、下空気ばね30Bの水平方向のばね定数は水平方向の全方向で一定とされる。
次いで、図2(b)を参照し、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bが上下直列に重ねられる空気ばねユニットについて説明する。図2(b)は、空気ばねユニットの分解側面図である。
図2(b)に示すように、本実施形態では、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bを反転させ、平面部31b同士を対向させて上下直列に重ねられる。上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの平面部31b同士が当接することにより、上下に対向する凹部31cによって空間が形成される。
固定部材35は、上下に対向する凹部31cによって形成される空間と同一の形状で形成される。これにより、凹部31cに固定部材35を嵌合させることで、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの水平方向(軸Oと垂直な方向)の変位を規制することができる。よって、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bを上下直列に重ねる際に、平面部31b同士をねじ止めや溶接によって固定する必要が無いため、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bを重ねる工程を簡略化することができる。よって、鉄道車両1の製造コストを抑制できる。
ここで、空気ばねを上下直列に重ねるために、例えば、上空気ばねの平面部に凹部を形成し、下空気ばねにその凹部と嵌合可能な凸部を形成した場合、上空気ばねと下空気ばねとが異なる構成で形成されることになり、部品点数が増加する。一方、上空気ばね及び下空気ばねの各個の平面部に凹部と凸部とを両方設けるのでは、平面部の2箇所に加工しなければならないため、平面部(凹部および凸部)を形成するための工数が増加する。また、平面部同士を溶接で固定すると、上空気ばね又は下空気ばねのいずれかの取り換えが必要となった場合に、片方の空気ばねのみを取り換えることが困難となる。
これに対して、本実施形態では、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの平面部31bに凹部31cが形成されているため、平面部31b同士を対向させ、凹部31cに固定部材35を嵌合させることで上空気ばね30A及び下空気ばね30Bを上下直列に重ねることができる。よって、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの平面部31b(凹部31c)を同一の形状で形成することが可能となり、部品点数が低減する。また、平面部31bの1箇所に凹部31cを形成するだけで良いので、平面部31b(凹部31c)を加工する工数も最小限に抑えることができる。よって、鉄道車両1の製造コストを抑制できる。
また、凹部31cに固定部材35が嵌合されているだけであるため、上空気ばね30A、下空気ばね30B又は固定部材35の取り外しが容易である。よって、上空気ばね30A又は下空気ばね30Bのいずれかの取り換えが必要となった場合に、上空気ばね30A又は下空気ばね30Bの片方のみを容易に取り換えることができる。
更に、固定部材35の軸O方向の上下の面(図2(b)の上側の面および下側の面)の直径が、凹部31cの開口部分の直径よりも小さく形成されるため、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bを重ねる際の位置決めが容易となる。よって、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bを重ねて車体10と台車20との間に配設する工程が簡略化され、鉄道車両1の製造コストを抑制できる。
尚、空気ばねユニットは、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bのそれぞれの当接部32aが車体10又は台車20と当接すると共に、車体10及び台車20に挟み込まれることにより、車体10の重量によって固定される。
次いで、図3(a)を参照し、空気ばねユニットに供給する空気の圧力を制御する空気圧制御系40について説明する。図3(a)は、空気ばねユニットに空気圧制御系40を接続した状態を示す模式図である。尚、図3(a)では、空気ばねユニットは車体10と台車20との間に配設された直後の使用前の状態が図示される。
また、図3(a)では、空気圧制御系40の下流側管41、上流側管43、空気だめ45及びコントローラ48は模式的に図示されると共に、電磁弁42、レベリングバルブ44、減圧弁46、及び圧力スイッチ47は回路記号で図示され、図3(b)、図4及び図5においても同様に図示される。
尚、空気圧制御系40においては、空気だめ45側を上流側、空気ばねユニット側を下流側と定義する。
図3(a)に示すように、空気圧制御系40は、空気ばねユニット及び電磁弁42の下流側(図3(a)の下側)を接続する下流側管41と、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの給排気を切り替える電磁弁42と、電磁弁42の上流側(図3(a)の上側)に接続される上流側管43と、その上流側管43を介して電磁弁42に接続されるレベリングバルブ44と、そのレベリングバルブ44の上流側に接続される空気だめ45と、上流側管43を介して電磁弁42に接続される減圧弁46と、上流側管43に接続されて上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの圧力を検知する圧力スイッチ47と、その圧力スイッチ47の検知の結果から電磁弁42を制御するコントローラ48とを主に備える。
下流側管41は、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bと電磁弁42とを接続する空気の流路であり、上空気ばね30Aの給排気口32b及び電磁弁42の下流側の一方のポートを接続する第1下流側管41aと、下空気ばね30Bの給排気口32b及び電磁弁42の下流側の他方のポートを接続する第2下流側管41bとを主に備える。
電磁弁42は、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの給排気を切り替えるための切替弁である。電磁弁42は、その上流側の一方のポート及び下流側の一方のポートを接続し、上流側の他方のポート及び下流側の他方のポートを接続する第1流路42aと、上流側の一方のポート及び下流側の他方のポートを接続し、上流側の他方のポート及び下流側の一方のポートを接続する第2流路42bとを備える4ポート2位置の電磁弁で構成される。また、電磁弁42は、上流側のポートと下流側のポートとを両方向流れで接続する。
尚、以下の説明において、第1流路42aが電磁弁42の上流側のポートと下流側のポートとを接続する状態を第1位置と記載し、第2流路42bが電磁弁42の上流側のポートと下流側のポートとを接続する状態を第2位置と記載する。
上流側管43は、電磁弁42とレベリングバルブ44及び減圧弁46とを接続する空気の流路であり、電磁弁42の上流側の一方のポート及びレベリングバルブ44の下流側のポートを接続する供給管43aと、電磁弁42の上流側の他方のポート及び減圧弁46を接続する減圧管43bとを主に備える。
レベリングバルブ44は、後述する空気だめ45から供給される空気の圧力を調整する調整弁であり、供給管43aを介して電磁弁42の上流側の一方のポートに接続されると共に、レベリングバルブ44の上流側のポート及び下流側のポートを逆止弁で接続する供給部44aと、レベリングバルブ44の上流側のポート及び下流側のポートを共に閉弁状態にする閉弁部44bと、レベリングバルブ44の下流側のポートから上流側のポートへ空気を排気する排気部44cとを主に備える。
空気だめ45は、圧縮された空気を貯留するための空気タンクであり、レベリングバルブ44の上流側のポートに接続される。空気だめ45は、図示しないコンプレッサによって空気が供給されることで、タンク内は一定の空気圧が保たれる。
これにより、下流側管41、電磁弁42及び供給管43aを介してレベリングバルブ44に接続される上空気ばね30A又は下空気ばね30Bは、供給部44aに接続される場合は空気だめ45から空気室34に所定の圧力の空気が供給され、閉弁部44bに接続される場合は閉弁状態となり空気室34の空気が保持され、排気部44cに接続される場合は空気室34の空気が排気される。
よって、レベリングバルブ44は、レベリングバルブ44の上流側のポートと下流側のポートとを供給部44a、閉弁部44b又は排気部44cで接続する状態にそれぞれ切り替えることで、空気だめ45から上空気ばね30A又は下空気ばね30Bに供給される空気の圧力を調整し、上空気ばね30A又は下空気ばね30Bの高さが所定の高さとなるように制御することが可能とされる。
減圧弁46は、上空気ばね30A又は下空気ばね30Bの空気室34の空気を減圧するための弁であり、減圧管43bを介して電磁弁42の上流側の他方のポートに接続される。これにより、下流側管41、電磁弁42及び減圧管43bを介して減圧弁46に接続される上空気ばね30A又は下空気ばね30Bは、空気室34の空気が排気されると共に、空気室34の圧力が減圧弁46によって所定の圧力まで減圧される。
圧力スイッチ47は、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bのパンクを検知するためのセンサであり、供給管43aに接続される。圧力スイッチ47が電磁弁42とレベリングバルブ44との間に接続されることにより、1個の圧力スイッチ47によって、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの双方の圧力変化(パンク)を検知することができる。よって、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bのパンクを検知するための部品点数が低減され、鉄道車両1の製造コストを抑制できる。
コントローラ48は、圧力スイッチ47での検知の結果に応じて電磁弁42の切り替えを制御するものであり、圧力スイッチ47で検知される圧力低下が所定の閾値を超えた場合に、上空気ばね30A又は下空気ばね30Bがパンクしたと判断し、電磁弁42を切り替える制御を行う。
次いで、図3(b)及び図4(a)を参照し、空気ばねユニットを使用可能状態にする方法について説明する。図3(b)は、図3(a)の状態からレベリングバルブ44を切り替えた状態を示す空気ばねユニット及び空気圧制御系40の模式図である。図4(a)は、図3(b)の状態から電磁弁42を切り替えた状態を示す空気ばねユニット及び空気圧制御系40の模式図である。
図3(b)に示すように、図3(a)の状態からレベリングバルブ44の上流側のポートと下流側のポートとを供給部44aで接続する状態に切り替えた場合、第1下流側管41a、電磁弁42の第1流路42a及び供給管43aを介して供給部44aに接続される上空気ばね30Aは、空気だめ45から空気室34に空気が供給されることで膨張状態となる。
これに対して、第2下流側管41b、電磁弁42の第1流路42a及び減圧管43bを介して減圧弁46に接続される下空気ばね30Bは、収縮状態となる。
図4(a)に示すように、図3(b)の状態からコントローラ48によって電磁弁42を第2位置に切り替えた場合、第1下流側管41a、電磁弁42の第2流路42b及び減圧管43bを介して減圧弁46に接続される膨張状態の上空気ばね30Aは、空気室34の空気が排気されると共に、空気室34の圧力が減圧弁46によって所定の圧力まで減圧されつつ収縮状態となる。
これに対して、第2下流側管41b、電磁弁42の第2流路42b及び供給管43aを介して供給部44aに接続される収縮状態の下空気ばね30Bは、空気だめ45から空気室34に空気が供給されることで膨張状態となる。
ここで、図3(a)の上空気ばね30Aは使用前の状態であるため、上空気ばね30Aの空気室34の圧力は大気圧と略同一となる。この場合、図3(a)に示す通り、収縮状態の上空気ばね30Aのダイヤフラム33はその自重によって撓むことでしわが寄り、この状態が長く続くと、ダイヤフラム33の劣化が早まってしまう。
これに対して、本実施形態では、上述の通り、減圧弁46は、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの空気を排気する際に、空気室34の圧力を所定の圧力に減圧する。詳細には、例えば、上空気ばね30Aの空気を排気する際には、上空気ばね30Aの空気室34の圧力を、少なくとも大気圧よりも高い圧力であって、且つ、上空気ばね30Aの第1部材31(ストッパゴム31a)と上空気ばね30Aの第2部材32(当接部32a)とが離間する圧力よりも低い圧力に減圧させる。また、下空気ばね30Bの空気を排気する際も下空気ばね30Bの空気室34を同様の圧力まで減圧させる。
この場合、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bは、膨張状態から排気をして収縮状態となっても、空気室34には上記の圧力が保持される。これにより、上空気ばね30A又は下空気ばね30Bが収縮状態となっても、ダイヤフラム33にしわが寄ることを防止できる。よって、ダイヤフラム33の劣化が抑制され、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの耐久性が向上する。
よって、図4(a)の状態、即ち、上空気ばね30A又は下空気ばね30Bのいずれかが膨張状態であり、且つ、収縮状態の上空気ばね30A又は下空気ばね30Bがダイヤフラム33にしわが寄らない程度の圧力を保持している状態を空気ばねユニットの使用可能状態とし、鉄道車両1の運行が開始される。
次いで、図4(a)及び図4(b)を参照し、空気ばねユニットの使用方法について説明する。図4(b)は、図4(a)の状態から電磁弁42を切り替えた状態を示す空気ばねユニット及び空気圧制御系40の模式図である。
図4(b)に示すように、図4(a)の状態からコントローラ48によって電磁弁42を第1位置に切り替えた場合、第1下流側管41a、電磁弁42の第1流路42a及び供給管43aを介して供給部44aに接続される収縮状態の上空気ばね30Aは、空気だめ45から空気室34に空気が供給されることで膨張状態となる。
これに対して、第2下流側管41b、電磁弁42の第1流路42a及び減圧管43bを介して減圧弁46に接続される膨張状態の下空気ばね30Bは、空気室34から空気が排気されると共に、空気室34の圧力が減圧弁46によって所定の圧力まで減圧されつつ収縮状態となる。
このように電磁弁42を第1位置および第2位置に交互に切り替え、図4(a)及び図4(b)の状態を交互に遷移させることで、上空気ばね30Aが膨張し、下空気ばね30Bが収縮した状態と、上空気ばね30Aが収縮し、下空気ばね30Bが膨張した状態とを交互に切り替えることができる。即ち、上空気ばね30A又は下空気ばね30Bのいずれかが常に膨張もしくは収縮した状態が続くことを抑制でき、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの劣化度合いが均等になるように使用することができる。よって、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの耐久性が向上する。
ここで、本実施形態では、コントローラ48は、図示しない鉄道車両1の進行方向を検知するスイッチと連動することで、電磁弁42を切り替える制御を行う。これにより、例えば、鉄道車両1の往路で上空気ばね30Aを使用し、復路で下空気ばね30Bを使用することが可能となり、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの劣化度合いを均等に近づけることができる。
また、鉄道車両1の進行方向を検知するスイッチは、鉄道車両1の進行方向が切り替わる際に、運転台を先頭側の運転台に切り替えることや、車内の案内放送の切り替えを行うために従来から設置されているものである。よって、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの使用頻度を検知するセンサを新たに設ける必要がなく、鉄道車両1の製造コストを抑制できる。
更に、上述の通り、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bは、各個が同一の構成に形成され、各個のばね定数が略同一であると共に、電磁弁42は、上空気ばね30A又は下空気ばね30Bを空気だめ45又は減圧弁46に接続する。これにより、上空気ばね30Aの膨張状態から収縮状態への遷移と、下空気ばね30Bの収縮状態から膨張状態への遷移とを同時に行うことができる。
即ち、鉄道車両1の高さ及び乗り心地を一定に保った状態で使用する空気ばねを上空気ばね30A又は下空気ばね30Bに切り替えることができる。よって、鉄道車両1の走行中や乗客の乗降中であっても、使用する空気ばねを上空気ばね30A又は下空気ばね30Bに切り替えることが可能となる。
特に、本実施形態のように鉄道車両1の往路と復路とで使用する空気ばねを上空気ばね30A又は下空気ばね30Bに切り替える場合、鉄道車両1が往路と復路との折り返しの駅に到着し、乗客が乗降している際に使用する空気ばねを切り替えることで、乗客の乗降が終わり次第速やかに復路での運行が可能となる。よって、使用する空気ばねを切り替えることによる鉄道車両1の発車時刻の遅延を抑制できる。
また、電磁弁42を切り替え、使用する空気ばねを上空気ばね30A又は下空気ばね30Bに切り替えた場合、電磁弁42を切り替えた直後に一時的な圧力低下が圧力スイッチ47で検知される。よって、電磁弁42を切り替えてもその一時的な圧力低下が検知されない場合には、コントローラ48によって電磁弁42が動作していないことを判断することができる。
次いで、図5(a)及び図5(b)を参照し、膨張状態の上空気ばね30Aがパンクした場合について説明する。
図5(a)は、上空気ばね30Aを使用している状態で上空気ばね30Aがパンクした直後の状態を示す空気ばねユニット及び空気圧制御系40の模式図であり、図5(b)は、図5(a)の状態から電磁弁42及びレベリングバルブ44を切り替えた状態を示す空気ばねユニット及び空気圧制御系40の模式図である。
図5(a)に示すように、膨張状態の上空気ばね30Aがパンクした場合、供給管43aに接続される圧力スイッチ47によって圧力低下が検知される。この圧力低下が所定の閾値を超えた場合に、コントローラ48は、上空気ばね30Aがパンクしたと判断して電磁弁42を第1位置から第2位置に切り替える。
よって、図5(b)に示すように、上空気ばね30Aがパンクした場合であっても、コントローラ48が電磁弁42を第1位置から第2位置に切り替えることで、収縮状態の下空気ばね30Bに空気を供給することができる。
この場合、上述の通り、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bは、各個が同一の構成に形成され、各個のばね定数が略同一であるので、上空気ばね30Aのパンク後の鉄道車両1の乗り心地をパンク前と略同一に維持することができる。よって、従来の空気ばねに比べ、パンク後の鉄道車両1の乗り心地を向上させることができる。
また、各個のばね定数が略同一であるので、上空気ばね30Aのパンク後に、パンク前に上空気ばね30Aに供給されていた空気の圧力と同一の圧力の空気を収縮状態の下空気ばね30Bに供給することで、パンクの前後で鉄道車両1の高さを一定に保つことができる。
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
上記実施形態では、鉄道車両1が先頭車両である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、中間車両であっても良い。
また、上記実施形態では、同一の構成で形成される上空気ばね30A及び下空気ばね30Bを上下直列に重ねる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、同一の構成で形成されない空気ばねを重ねる場合は、少なくとも、ばね定数が略同一に設定される空気ばねを重ねれば良い。
また、上記実施形態では、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの平面部31b同士を当接させて上下直列に重ねる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、給排気口32bを当接部32aから突設させずに形成させるか、若しくは、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの水平方向(軸Oと垂直な方向)側に給排気口32bを設け、第1部材31及び第2部材32の双方に平面部を設けて重ねても良い。この場合、空気ばねを3個以上重ねることが可能となる。
また、上記実施形態では、第1部材31又は第2部材32の水平方向への変位をストッパゴム31aの摩擦力および撓みによって規制する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、第1部材31及び第2部材32の空気室34側にそれぞれ嵌合可能な凹凸を設け、それら凹凸を嵌合させることで第1部材31又は第2部材32の水平方向の変位を規制する構成でも良い。この場合は、第1部材31又は第2部材32の水平方向の変位を確実に規制できると共に、ストッパゴム31aの耐久性が向上する。また、凸の幅に比べて凹の幅を大きく形成する構成や、凹凸をそれぞれ円錐形状で形成する構成でも良く、この場合は、第1部材31又は第2部材32が水平方向に相対的に変位した状態で上空気ばね30A(下空気ばね30B)がパンクした場合であっても、凹凸を嵌合させることができる。特に、軸Oを頂点とした円錐形状で凹凸を形成すれば、軸Oを中心として第1部材31及び第2部材32を確実に嵌合させることができる。
また、上記実施形態では、凹部31cに固定部材35を嵌合させて上空気ばね30A及び下空気ばね30Bを上下直列に重ねる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bのいずれか一方の平面部31bに凹部31cを形成し、他方の平面部31bに凹部31cと嵌合可能な凸部を形成し、凹部31cと凸部とを嵌合させて重ねても良い。また、平面部31b同士をねじ止めや溶接によって固定しても良い。
また、上記実施形態では、凹部31c及び固定部材35が軸O方向視円形状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、凹部31c及び固定部材35を軸O方向視多角形の形状に形成しても良い。この場合、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bが回転して位置がずれることを確実に防止することができる。
また、上記実施形態では、電磁弁42の上流側の他方のポートに減圧弁46が接続される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、減圧管43b及び減圧弁46を備えない構成でも良く、この場合には、第2流路42bは、少なくとも電磁弁42の上流側の一方のポートと下流側の他方のポートとを両方向流れで接続可能な構成であれば良く、この構成では、上空気ばね30Aがパンクするまで使用し、パンクした場合に下空気ばね30Bに切り替えれば良い。
また、減圧管43b及び減圧弁46を備えない場合、第1流路42aは、電磁弁42の上流側の他方のポート又は下流側の他方のポートを閉弁する構成や大気開放する構成であっても良い。また、減圧弁46だけを備えない構成でも良い。
また、上記実施形態では、コントローラ48を鉄道車両1の進行方向を検知するスイッチと連動させて電磁弁42を制御し、鉄道車両1の往路で上空気ばね30Aを使用し、復路で下空気ばね30Bを使用することで、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの劣化度合いを均等に近づける場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの使用時間や、鉄道車両1の走行距離が所定の閾値を超えた場合に電磁弁42を切り替えても良い。
また、鉄道車両1の運行区間によっては、上空気ばね30Aと下空気ばね30Bとで加わる負荷に相違が生じる場合が考えられる。この場合は、加速度計を設置して上空気ばね30A及び下空気ばね30Bに加えられた振動の総量を集計することや、圧力スイッチ47での内圧の変化の総量を集計することで、その集計結果が所定の閾値を超えた場合に使用する空気ばねを上空気ばね30A又は下空気ばね30Bに切り替えても良い。これにより、上空気ばね30Aと下空気ばね30Bとで加わる負荷に相違がある場合であっても、劣化度合いを均等に近づけることができる。
また、上記実施形態では、電磁弁42が上空気ばね30A及び下空気ばね30Bとレベリングバルブ44との間に1個接続される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、下流側管41と上流側管43との間に直列に複数個の電磁弁42を接続しても良い。この場合は、いずれか1個の電磁弁42をコントローラ48によって切り替える制御を行い、その切り替えの制御を行っても圧力スイッチ47で一時的な圧力の変化が検知されない場合に、その電磁弁42が動作していないと判断し、その他のいずれか1個の電磁弁42を切り替えるように制御すれば良い。これにより、1個の電磁弁42が動作しなくなっても、その他の電磁弁42によって空気だめ45の空気の供給先を上空気ばね30A又は下空気ばね30Bに切り替えることができる。
また、上記実施形態では、圧力スイッチ47によって上空気ばね30A又は下空気ばね30Bの圧力を検知する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、上空気ばね30A又は下空気ばね30Bの圧力から鉄道車両1のブレーキ力を制御するブレーキ制御用圧力計を流用しても良い。この場合、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bの圧力を検知する部品を別途設ける必要が無いため、鉄道車両1の製造コストを抑制できる。
また、上記実施形態では、圧力スイッチ47が供給管43aに1個接続される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、供給管43aに複数個の圧力スイッチ47が接続される構成でも良い。この場合、複数の圧力スイッチ47のいずれか1個の圧力スイッチ47において所定の圧力低下が検知された場合にパンクしたと判断し、電磁弁42を切り替えるように制御すれば良い。これにより、1個の圧力スイッチが圧力を検知できない状態となっても、その他の圧力スイッチ47で上空気ばね30A及び下空気ばね30Bのパンクを検知し、使用する空気ばねを切り替えることができる。
また、上記実施形態では、空気ばねユニットと空気供給系40とを接続する構成を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、特許第4764117号(以下、「特許文献3」と称す)の構成と本願の空気ばねユニットとを組み合わせることが可能である。この場合、本願の供給管43aの上流側に分岐点を設け、それぞれの分岐と特許文献3の第1電磁弁10及び第2電磁弁15の下流側とを接続することで、上空気ばね30A及び下空気ばね30Bのいずれかがパンクした場合であっても、特許文献3の車高制御機構の機能を維持することができる。