<第1実施形態>
本発明に係る鉄道車両の車体傾斜装置の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、鉄道車両に設けられている車体1と台車2F,2Bと空気バネ3FL,3FR,3BL,3BRを模式的に示した斜視図である。
車体1は、走行する前後2つの台車2F,2Bの上方に設けられている。各台車2F,2Bの枕木方向の両端には、それぞれ空気バネ3FL,3FR,3BL,3BRが載置されていて、各空気バネ3FL,3FR,3BL,3BRによって車体1が支持されている。これら各空気バネ3FL,3FR,3BL,3BRは、空気溜め4から圧縮空気が供給されると、伸張して車体1の高さ位置を上昇させ、貯留する圧縮空気を排出すると、収縮して車体1の高さ位置を下降させるようになっている。空気溜め4は、空気バネ3FL,3FR,3BL,3BRに供給するための圧縮空気を貯留していて、高圧状態になっている。
この鉄道車両では、各空気バネ3FL,3FR,3BL,3BRの圧縮空気の給排気を利用して、曲線路を走行する際に車体1を曲線路の内軌側に傾ける車体傾斜制御が実現化されている。例えば、鉄道車両が図1の矢印側に向かって走行して右向きに曲がる場合、曲線路の円曲線(曲線路は入口緩和曲線と円曲線と出口緩和曲線とで構成され、曲線路のうち曲率が最大でほぼ一定になっている部分が円曲線である)に到達する前に、曲線路の外軌側に設けられている空気バネ3FL,3BLを伸張させて、車体1のうち曲線路の外軌側を通常高さ位置から上昇位置へ上昇させる。
これにより、車体1が曲線路の内軌側に傾くように上昇傾斜して、曲線路を走行する際に、車体1に作用する横方向の加速度が減少する。この結果、乗客に作用する横方向の遠心力を減少させることができ、乗り心地を向上させることができる。そして、鉄道車両が曲線路の円曲線から直線路に到達する前に、曲線路の外軌側に設けられている空気バネ3FL,3BLを収縮させて、車体1のうち曲線路の外軌側を上昇位置から通常高さ位置まで下降させる。この結果、車体1が水平になって傾斜復帰するようになっている。
このような車体傾斜制御を行うための車体傾斜装置10FL,10FR,10BL,10BRが、各空気バネ3FL,3FR,3BL,3BRに対応して設けられている。各車体傾斜装置10FL,10FR,10BL,10BRの構成はそれぞれ同様であるため、以下では、車体傾斜装置10FLの構成を代表して説明する。ここで、図2は、図1に示した車体傾斜装置10FLの構成を模式的に示した図である。そして、図2は車体1が通常高さ位置にある状態を示した図であり、図3は車体1が上昇位置にある状態を示した図である。
車体傾斜装置10FLは、図2に示すように、主に空気バネ3FLと、空気溜め4と、レベリングバルブ装置20と、電磁弁装置30と、車体傾斜制御部40とを備えて構成されている。レベリングバルブ装置20は、空気バネ3FLと空気溜め4の間の空気流路に設けられていて、車体1の高さ位置に応じて圧縮空気の給気と排気と遮断とを行うものである。このレベリングバルブ装置20は、パッシブレベリングバルブ21Aと第1アーム22Aと第1支持柱23Aを有すると共に、傾斜レベリングバルブ21Bと第2アーム22Bと第2支持柱23Bを有している。
パッシブレベリングバルブ21Aは、車体1に取付けられていて、車体1の高さ位置に応じて圧縮空気の流れを遮断する側a1(図4参照)と、圧縮空気を大気に排気する側a2と、空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側a3とに切換えられるようになっている。第1アーム22Aは、一端がパッシブレベリングバルブ21Aに接続されていて、他端が第1支持柱23Aに接続されている。第1支持柱23Aは、台車2Fに起立した状態で取付けられていて、車体1と台車2Fとの間の距離(車体1の高さ位置)に応じて第1アーム22Aを傾動させることができる。
これにより、図2に示すように、車体1が通常高さ位置にあるとき、第1アーム22Aは水平状に延びて、パッシブレベリングバルブ21Aは圧縮空気の流れを遮断する側a1に設定されている。そして、図3に示すように、車体1が上昇位置にあるときに、第1アーム22Aはパッシブレベリングバルブ21Aから下方傾斜して延びて、パッシブレベリングバルブ21Aは圧縮空気を大気に排気する側a2に設定される。一方、車体が下降位置にあるときには(図示省略)、第1アーム22Aはパッシブレベリングバルブ21Aから上方傾斜して延びて、パッシブレベリングバルブ21Aは空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側a3に設定される。
このパッシブレベリングバルブ21Aは、車体1が通常高さ位置にあるとき、車体1が瞬間的に振動や傾斜等を起こしても、圧縮空気の流れを遮断していて、空気バネ3FLに対して圧縮空気の給排気を開始するまでに一定のタイムラグを生じさせるようになっている。つまり、パッシブレベリングバルブ21Aは、作動時間遅れを有する遅延タイプのレベリングバルブで構成されている。これにより、車体1が瞬間的に振動や傾斜等を起こしても、圧縮空気の給排気によるハンチングを防止して、圧縮空気の浪費を防止できるようになっている。
傾斜レベリングバルブ21Bは、車体1に取付けられていて、車体1の高さ位置に応じて圧縮空気の流れを遮断する側b1(図4参照)と、圧縮空気を大気に排気する側b2と、空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側b3とに切換えられるようになっている。第2アーム22Bは、一端が傾斜レベリングバルブ21Bに接続されていて、他端が第2支持柱23Bに接続されている。第2支持柱23Bは、台車2Fに起立した状態で取付けられていて、車体1と台車2Fとの間の距離に応じて第2アーム22Bを傾動させることができる。
ここで、図2に示すように、第2支持柱23Bが第1支持柱23Aより長いため、車体1が通常高さ位置にあるとき、第2アーム22Bは傾斜レベリングバルブ21Bから上昇傾斜して延びている。これにより、傾斜レベリングバルブ21Bは、空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側b3に予め設定されている。但し、傾斜レベリングバルブ21Bと空気バネ3FLの間の空気流路には電磁弁装置30が設けられていて、その電磁弁装置30の電磁切換弁31(図4参照)が圧縮空気の流れを許容した状態になっていなければ、圧縮空気が傾斜レベリングバルブ21Bを通って空気バネ3FLに供給されることはない。
一方、図3に示すように、車体1が上昇位置にあるとき、第2アーム22Bは水平状に延びて、傾斜レベリングバルブ21Bは圧縮空気の流れを遮断する側b1に設定される。傾斜レベリングバルブ21Bとパッシブレベリングバルブ21Aは、車体1が通常高さ位置にあるときの設定状態が異なること以外は同様の構成であり、それらの詳細な構成は、本出願人による上記特許文献1の図3に記載されているため、その説明を省略する。
電磁弁装置30は、パッシブレベリングバルブ21Aと空気バネ3FLの間のパッシブ側流路50Aで圧縮空気の流れを許容又は禁止すると共に、傾斜レベリングバルブ21Bと空気バネ3FLの間の傾斜側流路50Bで圧縮空気の流れを許容又は禁止するものである。この電磁弁装置30は、電磁切換弁31を有していて、車体傾斜制御部40が電磁切換弁31による圧縮空気の流れを切換えるようになっている。ここで、図4は、第1実施形態の車体傾斜装置10FLの空気回路図である。
図4に示すように、パッシブレベリングバルブ21Aと電磁切換弁31との間に、圧縮空気が流れる空気配管51Aが設けられ、パッシブレベリングバルブ21Aと空気溜め4との間に、圧縮空気が流れる空気配管52Aが設けられている。また、傾斜レベリングバルブ21Bと電磁切換弁31との間に、圧縮空気が流れる空気配管51Bが設けられ、傾斜レベリングバルブ21Bと空気溜め4との間に、圧縮空気が流れる空気配管52Bが設けられている。そして、電磁切換弁31と空気バネ3FLとの間に、圧縮空気が流れる空気配管53が設けられている。
電磁切換弁31は、空気配管51Aと空気配管53との間で圧縮空気の流れを許容していて、空気配管51Bと空気配管53との間で圧縮空気の流れを禁止している。そして、電磁切換弁31は、車体傾斜制御部40によって通電されると、空気配管51Aと空気配管53との間で圧縮空気の流れを禁止し、空気配管51Bと空気配管53との間で圧縮空気の流れを許容するようになっている(図6参照)。
車体傾斜制御部40は、CPUとRAMとROMとを備え、車体傾斜制御を行うための制御プログラムを実行するものである。具体的には、車体傾斜制御部40は、鉄道車両の車速と鉄道車両の走行位置とデータベースに記憶されている走行路線データに基づいて、曲線路を走行していると判断するときに電磁切換弁31への通電を制御する。これにより、電磁切換弁31による圧縮空気の流れが切換えられて、車体傾斜制御が行われる。なお、鉄道車両の車速は加速度センサや速度発電機等を用いた周知の方法によって逐次演算されていて、車体傾斜制御部40に逐次入力されている。また、鉄道車両の走行位置は、データベースに記憶されている走行路線データと車速から演算される走行距離等を用いた周知の方法によって求められていて、車体傾斜制御部40に逐次入力されている。
次に、レベリングバルブ装置20の動作について説明する。先ず、車体1の高さ位置が図2に示す通常高さ位置から上下に受動的に変化する場合を例にして説明する。この場合には、車体傾斜制御を行わないため、車体傾斜制御部40は電磁切換弁31に通電しておらず、電磁切換弁31は空気配管51Aと空気配管53との間で圧縮空気の流れを許容していて、空気配管51Bと空気配管53との間で圧縮空気の流れを禁止している。これにより、空気溜め4の圧縮空気が傾斜レベリングバルブ21Bを通過しても電磁切換弁31を通過できないため、傾斜レベリングバルブ21Bが実質的に機能しないようになっている。
このため、パッシブレベリングバルブ21Aのみが実質的に機能していて、例えば乗客が減少して車体1の高さ位置が上昇しようとすると、図3に示すように第1アーム22Aがパッシブレベリングバルブ21Aから下方傾斜して、パッシブレベリングバルブ21Aが、圧縮空気の流れを遮断する側a1から圧縮空気を大気に排気する側a2に切換えられる。これにより、空気バネ3FLの圧縮空気が、空気配管53と電磁切換弁31と空気配管51Aとパッシブレベリングバルブ21Aを通って、大気中に排気される。この結果、空気バネ3FLが収縮し、その他の車体傾斜装置10FR,10BL,10BRの空気バネ3FR,3BL,3BRも同様に収縮して、車体1の高さ位置が下降する。
一方、乗客が増加して車体1の高さ位置が下降しようとすると、第1アーム22Aがパッシブレベリングバルブ21Aから上方傾斜して、パッシブレベリングバルブ21Aが、圧縮空気の流れを遮断する側a1から空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側a3に切換えられる。これにより、空気溜め4の圧縮空気が、空気配管52Aとパッシブレベリングバルブ21Aと空気配管51Aと電磁切換弁31と空気配管53を通って、空気バネ3FLに供給される。この結果、空気バネ3FLが伸張し、その他の車体傾斜装置10FR,10BL,10BRの空気バネ3FR,3BL,3BRも同様に伸張して、車体1の高さ位置が上昇する。なお、空気溜め4の圧縮空気の圧力は、空気バネ3FLの圧縮空気の圧力及び大気圧より非常に高圧で約800kPaになっていて、空気バネ3FLの圧縮空気の圧力は、大気圧より高圧で約400kPaになっている。
続いて、鉄道車両が図1の矢印側に向かって走行して右向きに曲がる際に、車体傾斜制御を行う場合を例にして説明する。この車体傾斜制御では、鉄道車両が直線路から曲線路の円曲線に到達する前に、空気バネ3FL,3BLを伸張させて、車体1を上昇傾斜させることになる。そこで、車体傾斜制御部40は、走行中に曲線路の入口緩和曲線を認識して、鉄道車両が曲線路の入口緩和曲線に進入した時点で、電磁切換弁31に通電する。
これにより、電磁切換弁31による圧縮空気の流れが切換えられて、空気配管51Aと空気配管53との間で圧縮空気の流れが禁止され、空気配管51Bと空気配管53との間で圧縮空気の流れが許容される(図6参照)。こうして、パッシブレベリングバルブ21Aが実質的に機能しなくなるのに対して、傾斜レベリングバルブ21Bが実質的に機能する。そして、このときには、傾斜レベリングバルブ21Bが空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側b3に予め設定されているため、空気溜め4の圧縮空気が、空気配管52Bと傾斜レベリングバルブ21Bと空気配管51Bと電磁切換弁31と空気配管53を通って、空気バネ3FLに供給される。
この結果、空気バネ3FLが伸張し、車体傾斜装置10BLの空気バネ3RLも同様に伸張して、車体1が曲線路の内軌側に傾くように上昇傾斜する。なお、車体1を上昇傾斜させるとき、本実施形態では、空気バネ3FR,3BRを伸張させなくて、車体1のうち曲線路の内軌側の高さ位置を変化させていないが、変形実施形態として、空気バネ3FR,3BRを収縮させて、車体1のうち曲線路の内軌側の高さ位置を下降させても良い。
こうして、車体1の上昇傾斜によって、車体1のうち曲線路の外軌側は上昇位置になるため(図3参照)、パッシブレベリングバルブ21Aは圧縮空気を大気に排気する側a2に切換えられて、傾斜レベリングバルブ21Bは圧縮空気の流れを遮断する側b1に切換えられる(図7参照)。これにより、空気配管51Aの内部の圧縮空気はパッシブレベリングバルブ21Aを通って大気中に排気される。
そして、鉄道車両は車体1が上昇傾斜した状態で曲線路の円曲線を通過した後、直線路に到達する前に、伸張した空気バネ3FL,3BLを収縮させて、車体1を傾斜復帰させる。つまり、鉄道車両が直線路に到達する前に、車体1のうち曲線路の外軌側を上昇位置から通常高さ位置まで下降させる。そこで、車体傾斜制御部40は、走行中に曲線路の出口緩和曲線を認識して、出口緩和曲線に進入した時点で、電磁切換弁31への通電を解除する。
これにより、電磁切換弁31による圧縮空気の流れが切換えられて、空気配管51Aと空気配管53との間で圧縮空気の流れが許容され、空気配管51Bと空気配管53との間で圧縮空気の流れが禁止される(図8参照)。こうして、空気バネ3FLの圧縮空気が、空気配管53と電磁切換弁31と空気配管51Aとパッシブレベリングバルブ21Aを通って大気中に排気される。
この結果、空気バネ3FLが収縮して、車体傾斜装置10BLの空気バネ3RLも同様に収縮して、車体1が水平になるように傾斜復帰する。こうして、車体1の傾斜復帰によって、車体1(車体のうち曲線路の外軌側)は通常高さ位置になるため(図2参照)、パッシブレベリングバルブ21Aは圧縮空気の流れを遮断する側a1に切換えられて、傾斜レベリングバルブ21Bは空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側b3に切換えられる。これにより、空気バネ3FLの圧縮空気がパッシブレベリングバルブ21Aを通って大気中に排気されなくなる。
ところで、従来の車体傾斜装置では、空気バネ3FLの変位を監視することによって、その車体傾斜装置が故障しているか否かの故障検知を行っていた。例えば、空気バネ3FLが伸張しなければならない状況にも拘わらず、空気バネ3FLが伸張しなくてその変位が所定値より小さい場合には、車体傾斜制御部40は車体傾斜装置が故障していると判断していた。しかし、この故障検知の方法は、電磁弁装置30の電磁切換弁31の動作を直接的に監視するものではなく、あくまで最終的な制御結果である空気バネ3FLの変位によって、故障か否かを判断している。このため、空気バネ3FLの伸張又は収縮が完了する時点まで故障検知がされないことになり、故障検知が遅いという問題点があった。
更に、例えば、鉄道車両が図1の矢印側に向かって走行して右向きに曲がる際に、車体傾斜制御を行う場合、前方の台車2Fに設けられている空気バネ3FLと、後方の台車2Bに設けられている空気バネ3BLとを同時に伸張させることになる。このとき、仮に台車2Bに設けられている車体傾斜装置10BLが正常であるのに対して、台車2Fに設けられている車体傾斜装置10FLが故障している場合に、空気バネ3BLの変位に伴って空気バネ3FLも変位する。これにより、空気バネ3FLが正常であるかのように変位して、車体傾斜装置10FLが故障しているにも拘わらず正確に故障検知されないおそれがあった。
そこで、本実施形態の車体傾斜装置10FLは、空気バネ3FLの変位を監視することなく故障検知を行うことができ、その故障検知を早く且つ正確に行うことができるように構成されている。具体的には、傾斜レベリングバルブ21Bと電磁切換弁31との間の空気配管51Bに、圧力スイッチ32(傾斜側圧力検出部)が設けられている。そして、この圧力スイッチ32によって空気配管51(傾斜側流路50)を流れる圧縮空気の圧力を監視することで、故障検知を行うようになっている。
圧力スイッチ32は、電磁弁装置30に一体的に組み込まれていて、所定の圧力が作用するとオンとオフとを切換えるものである。圧力スイッチ32がオンになっている状態とオフになっている状態は、車体傾斜制御部40が逐次入力して監視するようになっている。この圧力スイッチ32では、空気配管51で空気溜め4が貯留する圧縮空気の圧力(以下、「MR圧」と呼ぶ)が作用するとオンになり、空気バネ3FLが貯留する圧縮空気の圧力(以下、「AS圧」と呼ぶ)が作用するとオフになるように設定されている。即ち、圧力スイッチ32は、空気配管51を流れる圧縮空気の圧力が「AS圧」から高圧である「MR圧」に変わると、オフからオンに切り換わる。
車体傾斜制御部40は、電磁切換弁31を切換えて一定時間経過した後に、圧力スイッチ32がオン又はオフになっている状態を監視して、電磁弁装置30(電磁切換弁31)が正常に動作しているか否かを判断している。つまり、車体傾斜制御部40は、仮に電磁切換弁31が正常に動作しない場合に、圧力スイッチ32がオン又はオフのどちらの状態になるかを故障モードK1(図10参照)として予め記憶している。そして、実際に電磁切換弁31を切換える際に圧力スイッチ32の状態(検出結果)と故障モードK1を照合して、電磁弁装置30の異常を検出するようになっている。なお、電磁弁装置30の異常が検出された場合には、車体傾斜制御プログラムの実行が中止されて、車体傾斜制御によって却って乗り心地が悪くなる事態が防止される。
次に、第1実施形態の故障モードK1を説明するために、電磁弁装置30が正常に動作する場合の圧力スイッチ32の状態と、電磁弁装置30が異常に動作する場合の圧力スイッチ32の状態とを分けて説明する。なお、車体傾斜装置10FLの状態と車体傾斜装置10BLの状態は同様であるため、車体傾斜装置10FLの状態についてのみ説明する。先ず、電磁弁装置30が正常に動作する場合、車体傾斜制御が実行される際の空気回路の状態は、図5〜図8に示すように変化する。図5〜図8では、圧力の状態を模式的に説明するために、「MR圧」になっている部分が太い実線で示され、「AS圧」になっている部分が太い破線で示され、「大気圧」になっている部分が太い一点鎖線で示されている。
また、図9には、車体傾斜制御を実行する際の電磁切換弁31の状態と圧力スイッチ32に作用する圧力と圧力スイッチ32の状態とがタイムチャートで示されている。ここで、電磁切換弁31が空気配管51Aと空気配管53の間で圧縮空気の流れを許容し且つ空気配管51Bと空気配管53の間で圧縮空気の流れを禁止するとき、「パッシブ側c1(図4参照)」と呼ぶことにする。一方、電磁切換弁31が空気配管51Aと空気配管53の間で圧縮空気の流れを禁止し且つ空気配管51Bと空気配管53の間で圧縮空気の流れを許容するとき、「傾斜側c2」と呼ぶことにする。
図5は、車体1を上昇傾斜させる前の空気回路の状態を示した図である。図5に示すように、車体1を上昇傾斜させる前、即ち鉄道車両が直線路を走行しているとき(図9参照)、傾斜レベリングバルブ21Bが空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側b3に設定されており、且つ電磁切換弁31がパッシブ側c1に切換えられていて空気配管51Bと空気配管53の間で圧縮空気の流れを禁止しているため、空気配管52A,52B,51Bの圧力は「MR圧」になっている。このため、圧力スイッチ32には「MR圧」が作用して、圧力スイッチ32はオンになっている。
図6は、車体1の上昇傾斜を開始させたときの空気回路の状態を示した図である。鉄道車両が曲線路の入口緩和曲線に進入すると(図9参照)、図6に示すように、車体傾斜制御部40が電磁切換弁31をパッシブ側c1から傾斜側c2に切換える。これにより、空気溜め4の圧縮空気が空気配管52Bと傾斜レベリングバルブ21Bと空気配管51Bと電磁切換弁31と空気配管53を通って空気バネ3FLに送り込まれる。これにより、空気バネ3FLが伸張して、車体1が上昇傾斜し始める。
図7は、車体1が上昇傾斜している最中の空気回路の状態を示した図である。鉄道車両が曲線路の入口緩和曲線を走行している間(図9参照)、車体1が上昇傾斜している途中で、車体1(車体1のうち曲線路の外軌側)が上昇位置になるため、図7に示すように、パッシブレベリングバルブ21Aが圧縮空気を大気に排気する側a2に切換わる。これにより、空気配管51Aの内部の圧縮空気が、パッシブレベリングバルブ21Aを通って大気中に排気されて、空気配管51Aの圧力は「大気圧」の圧力と同じになる。また、空気配管51Bの内部の圧縮空気が、電磁切換弁31と空気配管53を通って空気バネ3FLに供給されるため、空気配管51Bの圧力は「MR圧」から「AS圧」になる。こうして、電磁切換弁31が傾斜側c2に切換えられて一定時間経過した後、圧力スイッチ32には「AS圧」が作用して、圧力スイッチ32はオンからオフに切換わる。
図8は、車体1の傾斜復帰を開始させたときの空気回路の状態を示した図である。鉄道車両が上昇傾斜している状態で曲線路の出口緩和曲線に進入すると(図9参照)、図8に示すように、車体傾斜制御部40が電磁切換弁31を傾斜側c2からパッシブ側c1に切換える。これにより、空気バネ3FLの圧縮空気が空気配管53と電磁切換弁31と空気配管51Aとパッシブレベリングバルブ21Aを通って、大気中に排気され始める。このため、空気バネ3FLが収縮して、車体1が傾斜復帰し始める。
こうして、鉄道車両が曲線路の出口緩和曲線を走行している間(図9参照)、車体1が傾斜復帰している途中で、図5に示すように、傾斜レベリングバルブ21Bが空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側b3に切換わる。これにより、空気溜め4の圧縮空気が、空気配管52Bと傾斜レベリングバルブ21Bと空気配管51Bを通り、且つ空気配管51Bと空気配管53の間で圧縮空気の流れが禁止されているため、空気配管51Bの圧力は「AS圧」から「MR圧」になる。こうして、電磁切換弁31がパッシブ側c1に切換えられて一定時間経過した後、圧力スイッチ32には「MR圧」が作用して、圧力スイッチ32はオフからオンに切換わる。その後、車体1の傾斜復帰が完了すると、空気回路の状態は図5に示した状態になる。
続いて、電磁弁装置30が異常に動作する場合、圧力スイッチ32の状態について説明する。図9には、電磁弁装置30が二つのパターンで故障しているときの圧力スイッチ32の状態がタイムチャートで示されている。また、図10は、第1実施形態において故障検知タイミングと故障原因と故障モードK1を示した図である。
車体1の上昇傾斜を開始させた後、即ち図9の(A)に示したタイミングにおいて、電磁切換弁31が故障によってパッシブ側c1に固定されたままであると仮定する。この場合、空気配管51Bで「MR圧」になっている圧縮空気が電磁切換弁31を通過しない。このため、空気配管51Bの圧力が「MR圧」から「AS圧」に低下しなくて、圧力スイッチ32では図9の(A)付近の二点鎖線で示すようにオンになったままになる。しかし、上述したように、電磁切換弁31がパッシブ側c1から傾斜側c2に正常に切換われば、圧力スイッチ32では図9の(A)付近の実線で示すようにオンからオフに切換わるはずである。このことから、車体傾斜制御部40は、電磁切換弁31をパッシブ側c1から傾斜側c2に切換えた後、図9の(A)に示したタイミングにおいて、圧力スイッチ32がオフしないことを故障モードK1として予め記憶している。
また、車体1の傾斜復帰を開始させた後、即ち図9の(B)に示したタイミングにおいて、電磁切換弁31が故障によって傾斜側c2に固定されたままであると仮定する。この場合、空気バネ3FLの圧縮空気が電磁切換弁31を通過して空気配管51Bに送られる状態が維持される。このため、空気配管51Bの圧力が「AS圧」から「MR圧」に上昇しなくて、圧力スイッチ32では図9の(B)付近の二点鎖線で示すようにオフのままになる。しかし、上述したように、電磁切換弁31が傾斜側c2からパッシブ側c1に正常に切換われば、圧力スイッチ32では図9の(B)付近の実線で示すようにオフからオンに切換わるはずである。このことから、車体傾斜制御部40は、電磁切換弁31を傾斜側c2からパッシブ側c1に切換えた後、図9の(B)に示したタイミングにおいて、圧力スイッチ32がオンしないことを故障モードK1として予め記憶している。
こうして、車体傾斜制御部40は、車体傾斜制御を行う際に、図9の(A)(B)に示したタイミングにおいて、圧力スイッチ32の状態と故障モードK1を照合する。これより、車体傾斜制御部40は、圧力スイッチ32の状態と故障モードK1が異なっていれば、電磁弁装置30が正常であると判断して、車体傾斜制御プログラムを継続して実行する。一方、圧力スイッチ32の状態と故障モードK1が一致していれば、電磁弁装置30が異常であると判断して、車体傾斜制御プログラムの実行を中止するようになっている。
以上の説明から分かるように、本実施形態の車体傾斜装置10FLは、傾斜レベリングバルブ21Bと電磁切換弁31の間の空気配管51Bに圧力スイッチ32を設けて、空気配管51Bで生じる圧力差(「MR圧」と「AS圧」の差)を検知することで、電磁弁装置30(電磁切換弁31)が正常に動作しているかを直接的に監視するという従来にない技術的思想を有している。そして、本実施形態の車体傾斜装置10FLは、従来の車体傾斜装置に対して所定の圧力でオンとオフを切換える圧力スイッチ32を電磁弁装置30に組み込むだけで構成されていて、圧力スイッチ32自体は機械的な動作によって誤作動がほぼ生じないものである。このため、車体傾斜装置10FLは、信頼性が高い装置であり且つ簡易に構成できるものになっている。
第1実施形態の作用効果について説明する。
第1実施形態の車体傾斜装置10FLによれば、圧力スイッチ32が空気配管51Bで流れる圧縮空気の圧力を検出することで、電磁弁装置30の動作を直接的に監視している。そして、車体傾斜制御部40は、電磁切換弁31を切換える際に、圧力スイッチ32がオン又はオフになっている状態と、予め記憶している故障モードK1を照合する。
例えば、車体1の上昇傾斜を開始させて、図9(A)に示したタイミングで圧力スイッチ32がオフになっていると、車体傾斜制御部40は、電磁弁装置30が正確に動作していると判断できる。一方、図9(A)に示したタイミングで仮に圧力スイッチ32がオフになっていないと、車体傾斜制御部40は、電磁切換弁31が故障によってパッシブ側c1に固定されたままになっていると判断して、電磁弁装置30の異常を検出する。このとき、車体1の上昇傾斜が開始された直後であるため、空気バネ3FLの伸張はまだ完了していない。
また、車体1の傾斜復帰を開始させて、図9(B)に示したタイミングで圧力スイッチ32がオンになっていると、車体傾斜制御部40は、電磁弁装置30が正確に動作していると判断できる。一方、図9(B)に示したタイミングで仮に圧力スイッチ32がオンになっていないと、車体傾斜制御部40は、電磁切換弁31が故障によって傾斜側c2に固定されたままになっていると判断して、電磁弁装置30の異常を検出する。このとき、車体1の傾斜復帰が開始された直後であるため、空気バネ3FLの収縮はまだ完了していない。
こうして、この車体傾斜装置10FLでは、電磁弁装置30の動作を直接的に監視しているため、空気バネ3FLの伸張又は収縮が完了する時点より前に故障検知を早く行うことができる。更に、仮に車体傾斜装置10FLが故障している場合に、台車2Fに設けられている空気バネ3FLが、台車2Bに設けられている空気バネ3BLの変位に伴って正常であるかのように変位しても、空気バネ3FLの変位によって故障検知を行っていないため、故障検知を正確に行うことができる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図11は、第2実施形態の車体傾斜装置60FLの空気回路図である。第2実施形態では、図11に示すように、第1出力切換弁33及び第2出力切換弁34が設けられていて、第1出力切換弁33と第2出力切換弁34との間で圧力スイッチ32が圧力を検出する検出用配管54(検出用流路)が設けられている。これら第1出力切換弁33と第2出力切換弁34と圧力スイッチ32と検出用配管54は、電磁弁装置30Xに一体的に組み込まれている。
第1出力切換弁33は、検出用配管54のうち空気溜め4側に配置されていて、空気配管51Aから分岐する分岐配管55(分岐流路)と空気配管51B(第1流路)と検出用配管54に接続されている。この第1出力切換弁33は、車体傾斜制御部40によって圧縮空気の流れを切換えるようになっている。つまり、第1出力切換弁33は、分岐配管55と検出用配管54の間で圧縮空気の流れを許容していて、空気配管51Bと検出用配管54の間で圧縮空気の流れを禁止している。そして、車体傾斜制御部40によって通電されると、分岐配管55と検出用配管54の間で圧縮空気の流れを禁止し、空気配管51Bと検出用配管54の間で圧縮空気の流れを許容するようになっている。
第2出力切換弁34は、検出用配管54のうち空気バネ3FL側に配置されていて、空気配管51A(第2流路)と空気配管53(第3流路)と検出用配管54に接続されている。この第2出力切換弁34は、車体傾斜制御部40によって圧縮空気の流れを切換えるようになっている。つまり、第2出力切換弁34は、空気配管51Aと空気配管53の間で圧縮空気の流れを許容していて、検出用配管54と空気配管53の間で圧縮空気の流れを禁止している。そして、車体傾斜制御部40によって通電されると、空気配管51Aと空気配管53の間で圧縮空気の流れを禁止し、検出用配管54と空気配管53の間で圧縮空気の流れを許容するようになっている。
次に、第2実施形態の故障モードK2を説明するために、電磁弁装置30Xが正常に動作する場合の圧力スイッチ32の状態と、電磁弁装置30Xが異常に動作する場合の圧力スイッチ32の状態とを分けて説明する。先ず、電磁弁装置30Xが正常に動作する場合、車体傾斜制御が実行される際の空気回路の状態は、図12〜図17に示すように変化する。
また、図18には、車体傾斜制御を実行する際の第1出力切換弁33の状態と第2出力切換弁34の状態と圧力スイッチ32に作用する圧力と圧力スイッチ32の状態とがタイムチャートで示されている。ここで、第1出力切換弁33が分岐配管55と検出用配管54の間で圧縮空気の流れを許容し且つ空気配管51Bと検出用配管54の間で圧縮空気の流れを禁止するとき、「パッシブ側d1(図11参照)」と呼ぶことにする。一方、第1出力切換弁33が分岐配管55と検出用配管54の間で圧縮空気の流れを禁止し且つ空気配管51Bと検出用配管54の間で圧縮空気の流れを許容するとき、「傾斜側d2」と呼ぶことにする。
また、第2出力切換弁34が空気配管51Aと空気配管53の間で圧縮空気の流れを許容し且つ検出用配管54と空気配管53の間で圧縮空気の流れを禁止するとき、「パッシブ側e1」と呼ぶことにする。一方、第2出力切換弁34が空気配管51Aと空気配管53の間で圧縮空気の流れを禁止し且つ検出用配管54と空気配管53の間で圧縮空気の流れを許容するとき、「傾斜側e2」と呼ぶことにする。
図12は、車体1を上昇傾斜させる前の空気回路の状態を示した図である。車体1を上昇傾斜させる前、即ち鉄道車両が直線路を走行しているとき(図18参照)、図12に示すように、第1出力切換弁33及び第2出力切換弁34はパッシブ側d1,e1に切換えられている。このため、空気溜め4の圧縮空気が第1出力切換弁33を通って検出用配管54に流れ込まず、空気バネ3FLの圧縮空気が第2出力切換弁34及び第1出力切換弁33を通って検出用配管54に流れ込むため、検出用配管54の圧力は「AS圧」になっている。従って、圧力スイッチ32には「AS圧」が作用して、圧力スイッチ32はオフになっている。
図13は、第1出力切換弁33を傾斜側d2に切換えたときの空気回路の状態を示した図である。鉄道車両が曲線路の入口緩和曲線に進入する前に、直線路を走行しているとき(図18参照)、図13に示すように、車体傾斜制御部40が第1出力切換弁33をパッシブ側d1から傾斜側d2に切換える。これにより、空気溜め4の圧縮空気が第1出力切換弁33を通って検出用配管54に流れ込み、検出用配管54と空気配管53の間で圧縮空気の流れが禁止されているため、検出用配管54の圧力は「MR圧」になっている。従って、圧力スイッチ32はオフからオンに切換わる。
図14は、車体1の上昇傾斜を開始させたときの空気回路の状態を示した図である。鉄道車両が曲線路の入口緩和曲線に進入すると(図18参照)、図14に示すように、車体傾斜制御部40が第2出力切換弁34をパッシブ側e1から傾斜側e2に切換える。これにより、空気溜め4の圧縮空気が空気配管52Bと傾斜レベリングバルブ21Bと空気配管51Bと第1出力切換弁33と検出用配管54と第2出力切換弁34と空気配管53を通って空気バネ3FLに送り込まれる。これにより、空気バネ3FLが伸張して、車体1が上昇傾斜し始める。
図15は、車体1が上昇傾斜している最中の空気回路の状態を示した図である。鉄道車両が曲線路の入口緩和曲線を走行している間(図18参照)、車体1が上昇傾斜している途中で、車体1(車体1のうち曲線路の外軌側)が上昇位置になるため、図15に示すように、パッシブレベリングバルブ21Aが圧縮空気を大気に排気する側a2に切換わる。これにより、空気配管51A及び分岐配管55の内部の圧縮空気が、パッシブレベリングバルブ21Aを通って大気中に排気されて、空気配管51A及び分岐配管55の圧力は「AS圧」から「大気圧」になる。また、検出用配管54の内部の圧縮空気が、第2出力切換弁34と空気配管53を通って空気バネ3FLに供給されるため、検出用配管54の圧力は「MR圧」から「AS圧」になる。こうして、第2出力切換弁34が傾斜側e2に切換えられて一定時間経過した後、圧力スイッチ32には「AS圧」が作用して、圧力スイッチ32はオンからオフに切換わる。
図16は、車体1の傾斜復帰を開始させたときの空気回路の状態を示した図である。鉄道車両が上昇傾斜している状態で曲線路の出口緩和曲線に進入すると(図18参照)、図16に示すように、車体傾斜制御部40が第2出力切換弁34を傾斜側e2からパッシブ側e1に切換える。これにより、空気バネ3FLの圧縮空気が空気配管53と第2出力切換弁34と空気配管51Aとパッシブレベリングバルブ21Aを通って、大気中に排気され始める。このため、空気バネ3FLが収縮して、車体1が傾斜復帰し始める。
図17は、車体1が傾斜復帰している最中の空気回路の状態を示した図である。鉄道車両が曲線路の出口緩和曲線を走行している間(図18参照)、車体1が傾斜復帰している途中で、図17に示すように、車体1(車体1のうち曲線路の外軌側)が通常高さ位置になるため、傾斜レベリングバルブ21Bが空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側b3に切換わる。これにより、空気溜め4の圧縮空気が、空気配管52Bと傾斜レベリングバルブ21Bと空気配管51Bと第1出力切換弁33と検出用配管54を通り、且つ検出用配管54と空気配管53の間で圧縮空気の流れが禁止されているため、検出用配管54の圧力は「AS圧」から「MR圧」になる。こうして、第2出力切換弁34がパッシブ側e1に切換えられて一定時間経過した後、圧力スイッチ32には「MR圧」が作用して、圧力スイッチ32はオフからオンに切換わる。
その後、車体傾斜制御部40が第1出力切換弁33をパッシブ側d1に切換えると、空気回路の状態は図12に示した状態になる。即ち、検出用配管54の内部の圧縮空気が、第1出力切換弁33と分岐配管55と空気配管51Aと第2出力切換弁34と空気配管53を通って空気バネ3FLに供給されるため、検出用配管54の圧力は「MR圧」から「AS圧」になる。こうして、第1出力切換弁33がパッシブ側d1に切換えられると、圧力スイッチ32には「AS圧」が作用して、圧力スイッチ32はオンからオフに切換わる。
続いて、電磁弁装置30Xが異常に動作する場合、圧力スイッチ32の状態について説明する。図19には、電磁弁装置30Xが四つのパターンで故障しているときの圧力スイッチ32の状態がタイムチャートで示されている。また、図20は、第2実施形態において故障タイミングと故障原因と故障モードK2を示した図である。
車体1の上昇傾斜を開始する前、即ち図19の(A)に示したタイミングにおいて、第1出力切換弁33が故障によってパッシブ側d1に固定されたままであると仮定する。この場合、空気配管51Bで「MR圧」になっている圧縮空気が、第1出力切換弁33を通過して検出用配管54に流れ込まない。このため、検出用配管54の圧力が「AS圧」から「MR圧」に上昇しなくて、圧力スイッチ32では図19の(A)付近の二点鎖線で示すようにオフのままになる。しかし、上述したように、第1出力切換弁33がパッシブ側d1から傾斜側d2に正常に切換われば、圧力スイッチ32では図18の(A)付近の実線で示すようにオフからオンに切換わるはずである。このことから、車体傾斜制御部40は、第1出力切換弁33をパッシブ側d1から傾斜側d2に切換えた後、図19の(A)に示したタイミングにおいて、圧力スイッチ32がオンに切換わらないことを故障モードK2として予め記憶している。
また、車体1の上昇傾斜を開始させた後、即ち図19の(B)に示したタイミングにおいて、第2出力切換弁34が故障によってパッシブ側e1に固定されたままであると仮定する。この場合、検出用配管54で「MR圧」になっている圧縮空気が第2出力切換弁34を通過せず、且つ空気バネ3FLの圧縮空気が第2出力切換弁34を通過して検出用配管54に流れない。このため、検出用配管54の圧力が「MR圧」から「AS圧」に低下しなくて、圧力スイッチ32では図19の(B)付近の二点鎖線で示すようにオンになったままになる。しかし、上述したように、第2出力切換弁34がパッシブ側e1から傾斜側e2に正常に切換われば、圧力スイッチ32では図18の(B)付近の実線で示すようにオンからオフに切換わるはずである。このことから、車体傾斜制御部40は、第2出力切換弁34をパッシブ側e1から傾斜側e2に切換えた後、図19(B)に示したタイミングにおいて、圧力スイッチ32がオフしないことを故障モードK2として予め記憶している。
また、車体1の傾斜復帰を開始させた後、即ち図19の(C)に示したタイミングにおいて、第2出力切換弁34が故障によって傾斜側e2に固定されたままであると仮定する。この場合、空気バネ3FLの圧縮空気が第2出力切換弁34を通過して検出用配管54に送られる状態が維持される。このため、検出用配管54の圧力が「AS圧」から「MR圧」に上昇しなくて、圧力スイッチ32では図19の(C)付近の二点鎖線で示すようにオフになったままになる。しかし、上述したように、第2出力切換弁34が傾斜側e2からパッシブ側e1に正常に切換われば、圧力スイッチ32では図18の(C)付近の実線で示すようにオフからオンに切換わるはずである。このことから、車体傾斜制御部40は、第2出力切換弁34を傾斜側e2からパッシブ側e1に切換えた後、図19の(C)に示したタイミングにおいて、圧力スイッチ32がオンに切換わらないことを故障モードK2として記憶している。
また、車体1の傾斜復帰を開始させてしばらく経過した後、即ち図19の(D)に示したタイミングにおいて、第1出力切換弁33が故障によって傾斜側d2に固定されたままであると仮定する。この場合、空気溜め4の圧縮空気が第1出力切換弁33を通過して検出用配管54に送られる状態が維持され、空気バネ3FLの圧縮空気が空気配管53と第2出力切換弁34と空気配管51Aと分岐配管55と第1出力切換弁33を通って検出用配管54に送り込まれない。このため、検出用配管54の圧力が「MR圧」から「AS圧」に下降しなくて、圧力スイッチ32では図19の(D)付近の二点鎖線で示すようにオンのままである。しかし、上述したように、第1出力切換弁33が傾斜側d2からパッシブ側d1に正常に切換われば、圧力スイッチ32では図18の(D)付近の実線で示すようにオンからオフに切換わるはずである。このことから、車体傾斜制御部40は、第1出力切換弁33を傾斜側d2からパッシブ側d1に切換えた後、図19の(D)に示したタイミングにおいて、圧力スイッチ32がオフしないことを故障モードK2として予め記憶している。
こうして、車体傾斜制御部40は、車体傾斜制御を行う際に、図19の(A)(B)(C)(D)に示したタイミングにおいて、圧力スイッチ32の状態と故障モードK2を照合する。これより、車体傾斜制御部40は、圧力スイッチ32の状態と故障モードK2が異なっていれば、電磁弁装置30Xが正常であると判断して、車体傾斜制御プログラムを継続して実行する。一方、圧力スイッチ32の状態と故障モードK2が一致していれば、電磁弁装置30Xが異常であると判断して、車体傾斜制御プログラムの実行を中止するようになっている。
第2実施形態の作用効果について説明する。
第2実施形態の車体傾斜装置60FLによれば、第1実施形態の作用効果と同様、空気バネ3FLの変位ではなく、電磁弁装置30Xの第1出力切換弁33及び第2出力切換弁34の動作を直接的に監視することで、故障検知を早く且つ正確に行うことができる。更に、第2実施形態の空気回路では、第1出力切換弁33及び第2出力切換弁34の両方でパッシブ側d1,e1から傾斜側d2,e2に切換えたときに車体1の上昇傾斜が始まり、第1出力切換弁33のみをパッシブ側d1から傾斜側d2に切換えても車体1の上昇傾斜が始まらない。このため、第1出力切換弁33のみをパッシブ側d1から傾斜側d2に切換えて、図19の(A)に示したタイミングで圧力スイッチ32の状態を監視することで、車体傾斜制御を開始する前に故障検知を行うことができる。また、第2実施形態では、第1出力切換弁33と第2出力切換弁34とのいずれかが正常ならば、車体傾斜制御が正常に行われるメリットがある。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。図21は、第3実施形態の車体傾斜装置70FLの空気回路図である。第3実施形態では、図21に示すように、第1圧力スイッチ35(傾斜側圧力検出部)と、この第1圧力スイッチ35が圧力を検出する検出用配管56とが設けられている。第1圧力スイッチ35では、「MR圧」が作用するとオンになり、「AS圧」が作用するとオフになるように設定されていて、車体傾斜制御部40が第1圧力スイッチ35の状態を逐次入力して監視するようになっている。検出用配管56のうち空気バネ3FL側には、電磁切換弁36が配置されていて、検出用配管56のうち空気溜め4側には、第1遮断弁37が配置されている。
電磁切換弁36は、空気配管51Aと検出用配管56と空気配管53に接続されている。この電磁切換弁36は、車体傾斜制御部40によって圧縮空気の流れを切換えるようになっている。つまり、電磁切換弁36は、空気配管51Aと空気配管53の間で圧縮空気の流れを許容していて、検出用配管56と空気配管53の間で圧縮空気の流れを禁止している。そして、車体傾斜制御部40によって通電されると、空気配管51Aと空気配管53の間で圧縮空気の流れを禁止し、検出用配管56と空気配管53の間で圧縮空気の流れを許容するようになっている。
第1遮断弁37は、空気配管51Bと検出用配管56に接続されている。この第1遮断弁37は、車体傾斜制御部40によって開閉するようになっている。つまり、第1遮断弁37は、閉じていて空気配管51Bと検出用配管56の間で圧縮空気の流れを禁止している。そして、車体傾斜制御部40によって通電されると開いて、空気配管51Bと検出用配管56の間で圧縮空気の流れを許容するようになっている。
また、第3実施形態の空気回路では、空気配管51Aから分岐配管57が分岐していて、分岐配管57で圧力を検出する第2圧力スイッチ39(パッシブ側圧力検出部)が設けられている。第2圧力スイッチ39では、「AS圧」が作用するとオンになり、「大気圧」が作用するとオフになるように設定されている。即ち、第2圧力スイッチ39は、分岐配管57を流れる圧縮空気の圧力が「AS圧」から低圧である「大気圧」に変わると、
オンからオフに切換わる。車体傾斜制御部40は、第2圧力スイッチ39の状態を逐次入力して監視している。
また、空気配管53から分岐配管58が分岐していて、分岐配管57と分岐配管58との間に第2遮断弁38が接続されている。第2遮断弁38は、車体傾斜制御部40によって開閉するようになっている。つまり、第2遮断弁38は、開いていて分岐配管57と分岐配管58の間で圧縮空気の流れを許容している。そして、車体傾斜制御部40によって通電されると閉じて、分岐配管57と分岐配管58の間で圧縮空気の流れを禁止するようになっている。第1圧力スイッチ35と電磁切換弁36と第1遮断弁37と第2遮断弁38と第2圧力スイッチ39と検出用配管56と分岐配管57と分岐配管58は、電磁弁装置30Yに一体的に組み込まれている。
次に、第3実施形態の故障モードK3を説明するために、電磁弁装置30Yが正常に動作する場合の第1圧力スイッチ35の状態及び第2圧力スイッチ39の状態と、電磁弁装置30Yが異常に動作する場合の第1圧力スイッチ35の状態及び第2圧力スイッチ39の状態とを分けて説明する。先ず、電磁弁装置30Yが正常に動作する場合、車体傾斜制御が実行される際の空気回路の状態は、図22〜図26に示すように変化する。
また、図27には、車体傾斜制御を実行する際の第1遮断弁37の状態と第2遮断弁38の状態と電磁切換弁36の状態と第1圧力スイッチ35に作用する圧力と第1圧力スイッチ35の状態と第2圧力スイッチ39に作用する圧力と第2圧力スイッチ39の状態とが、タイムチャートで示されている。ここで、電磁切換弁36が空気配管51Aと空気配管53の間で圧縮空気の流れを許容し且つ検出用配管56と空気配管53の間で圧縮空気の流れを禁止するとき、「パッシブ側f1(図22参照)」と呼ぶことにする。一方、電磁切換弁36が空気配管51Aと空気配管53の間で圧縮空気の流れを禁止し且つ検出用配管56と空気配管53の間で圧縮空気の流れを許容するとき、「傾斜側f2」と呼ぶことにする。そして、第1遮断弁37が閉じているとき「閉g1」と呼び、第1遮断弁が開いているとき「開g2」と呼ぶことにする。また、第2遮断弁38が開いているとき「開h1」と呼び、第2遮断弁38が閉じているとき「閉h2」と呼ぶことにする。
図22は、車体1を上昇傾斜させる前の空気回路の状態を示した図である。図22に示すように、車体1を上昇傾斜させる前、即ち鉄道車両が直線路を走行しているとき(図27参照)、電磁切換弁36はパッシブ側f1に切換えられ、第1遮断弁37は閉g1に切換えられ、第2遮断弁38は開h1に切換えられている。これにより、検出用配管56の内部の圧縮空気は電磁切換弁36と第1出力切換弁37によって閉じ込められていて、検出用配管56の圧力は「AS圧」になっている。これにより、第1圧力スイッチ35には「AS圧」が作用して、第1圧力スイッチ35はオフになっている。なお、検出用配管56で「AS圧」になっている理由については後に説明する。また、空気バネ3FLの圧縮空気は、空気配管53と分岐配管58と第2遮断弁38を通って分岐配管57に流れると共に、電磁切換弁36と空気配管51Aを通って分岐配管57に流れている。このため、分岐配管57では「AS圧」が作用して、第2圧力スイッチ39はオンになっている。
図23は、第1出力切換弁37を開g2に切換えると共に第2出力切換弁38を閉h2に切換えたときの空気回路の状態を示した図である。鉄道車両が曲線路の入口緩和曲線に進入する前に、直線路を走行しているとき(図27参照)、図23に示すように、車体傾斜制御部40が第1出力切換弁37を閉g1から開g2に切換えると共に、第2出力切換弁38を開h1から閉h2に切換える。これにより、空気溜め4の圧縮空気が第1遮断弁37を通って検出用配管56に流れ込み、且つ検出用配管56と空気配管53の間で圧縮空気の流れが禁止されているため、検出用配管56の圧力は「MR圧」になっている。このため、第1圧力スイッチ35はオフからオンに切換わる。また、空気バネ3FLの圧縮空気は空気配管53と電磁切換弁36と空気配管51Aと分岐配管57を流れるため、分岐配管57では「AS圧」が作用している。従って、第2圧力スイッチ39には「AS圧」が作用したままであり、第2圧力スイッチ39はオンになっている。
図24は、車体1の上昇傾斜を開始させたときの空気回路の状態を示した図である。鉄道車両が曲線路の入口緩和曲線に進入すると(図27参照)、図24に示すように、車体傾斜制御部40が電磁切換弁36をパッシブ側f1から傾斜側f2に切換える。これにより、空気溜め4の圧縮空気が空気配管52Bと傾斜レベリングバルブ21Bと空気配管51Bと第1遮断弁37と検出用配管56と電磁切換弁36と空気配管53を通って空気バネ3FLに送り込まれる。これにより、空気バネ3FLが伸張して、車体1が上昇傾斜し始める。
図25は、車体1が上昇傾斜している最中の空気回路の状態を示した図である。鉄道車両が曲線路の入口緩和曲線を走行している間(図27参照)、車体1が上昇傾斜している途中で、車体1が上昇位置になるため、図25に示すように、パッシブレベリングバルブ21Aが圧縮空気を大気に排気する側a2に切換わる。これにより、空気配管51A及び分岐配管57の内部の圧縮空気が、パッシブレベリングバルブ21Aを通って大気中に排気されて、空気配管51A及び分岐配管55の圧力は「AS圧」から「大気圧」になる。こうして、電磁切換弁36を傾斜側f2に切換えて一定時間経過した後、第2圧力スイッチ39には「大気圧」が作用して、第2圧力スイッチ39はオンからオフに切換わる。また、検出用配管56の内部の圧縮空気が、電磁切換弁36と空気配管53を通って空気バネ3FLに供給されるため、検出用配管56の圧力は「MR圧」から「AS圧」になる。こうして、電磁切換弁36を傾斜側f2に切換えて一定時間経過した後、第1圧力スイッチ39には「AS圧」が作用して、第1圧力スイッチ35はオンからオフに切換わる。
図26は、車体1の傾斜復帰を開始させたときの空気回路の状態を示した図である。鉄道車両が上昇傾斜している状態で曲線路の出口緩和曲線に進入すると(図27参照)、図26に示すように、車体傾斜制御部40が第1遮断弁37を開g2から閉g1に切換えると共に、第2遮断弁38を閉h2から開h1に切換える。これにより、空気バネ3FLの圧縮空気が空気配管53と分岐配管58と第2遮断弁38と分岐配管57と空気配管51Aとパッシブレベリングバルブ21Aを通って、大気中に排気され始める。このため、空気バネ3FLが収縮して、車体1が傾斜復帰し始める。そして、分岐配管57では、空気バネ3FLの圧縮空気が流れ始めるため、分岐配管57の圧力は「大気圧」から「AS圧」になる。こうして、第1遮断弁37を開g2から閉g1に切換えると共に、第2遮断弁38を閉h2から開h1に切換えて一定時間経過した後、第2圧力スイッチ39には「AS圧」が作用して、第2圧力スイッチ39はオフからオンに切換わる。
その後、車体1の傾斜復帰が完了して、電磁切換弁36をパッシブ側f1に切換えると、空気回路の状態は図22に示した状態になる。即ち、検出用配管56の内部の圧縮空気は電磁切換弁36と第1出力切換弁37によって閉じ込められて、「AS圧」になっている状態が維持される。こうして、第1圧力スイッチ35には「AS圧」が作用し続けて、第1圧力スイッチ35はオフになったままである。
続いて、電磁弁装置30Yが異常に動作する場合、第1圧力スイッチ35の状態及び第2圧力スイッチ39の状態について説明する。図28には、電磁弁装置30Yが六つのパターンで故障しているときの第1圧力スイッチ35の状態又は第2圧力スイッチ39の状態がタイムチャートで示されている。また、図29は、第3実施形態において故障検知タイミングと故障原因と故障モードK3を示した図である。
車体1の上昇傾斜を開始する前、即ち図28の(A)に示したタイミングにおいて、電磁切換弁36が故障によって傾斜側f2に固定されたままであると仮定する。この場合、空気バネ3FLの圧縮空気が電磁切換弁36を通って検出用配管56に流れている状況で、空気溜め4の圧縮空気が第1遮断弁37を通って検出用配管56に流れ込む。このため、検出用配管56の圧力が「AS圧」から「MR圧」に一瞬上昇した後すぐに「AS圧」になり、第1圧力スイッチ35では図28の(A)付近の二点鎖線で示すように一瞬オンになった後オフになる。しかし、上述したように、電磁切換弁36がパッシブ側f1に正常に切換えられていれば、第1圧力スイッチ35では図27の(A)付近の実線で示すように、オフからオンに切換えられて、オンが維持されるはずである。このことから、車体傾斜制御部40は、第1遮断弁37を閉g1から開g2に切換えた後、図28の(A)に示したタイミングにおいて、第1圧力スイッチ35がオンしないことを故障モードK3として予め記憶している。
また、車体1の上昇傾斜を開始する前、即ち図28の(B)に示したタイミングにおいて、第1遮断弁37が故障によって閉g1に固定されたままであると仮定する。この場合、空気配管51Bで「MR圧」になっている圧縮空気が第1遮断弁37を通過しなくて検出用配管56に流れ込まない。このため、検出用配管56の圧力が「AS圧」から「MR圧」に上昇しなくて、第1圧力スイッチ35では図28の(B)付近の二点鎖線で示すようにオフになったままになる。しかし、上述したように、第1遮断弁37が閉g1から開g2に正常に切換われば、第1圧力スイッチ35では図27の(B)付近の実線で示すようにオフからオンに切換わるはずである。このことから、車体傾斜制御部40は、第1遮断弁37を閉g1から開g2に切換えた後、図28の(B)に示したタイミングにおいて、第1圧力スイッチ35がオンしないことを故障モードK3として予め記憶している。
また、車体1の上昇傾斜を開始させた後、即ち図28の(C)に示したタイミングにおいて、電磁切換弁36が故障によってパッシブ側f1に固定されたままであると仮定する。この場合、検出用配管56で「MR圧」になっている圧縮空気が電磁切換弁36を通過しない。このため、検出用配管56では「MR圧」から「AS圧」に低下しなくて、第1圧力スイッチ35では図28の(C)付近の二点鎖線で示すようにオンのままである。しかし、上述したように、電磁切換弁36が傾斜側f2に正常に切換われば、第1圧力スイッチ35では図27の(C)付近の実線で示すようにオンからオフに切換わるはずである。このことから、車体傾斜制御部40は、電磁切換弁36をパッシブ側f1から傾斜側f2に切換えた後、図28の(C)に示したタイミングにおいて、第1圧力スイッチ35がオフしないことを故障モードK3として予め記憶している。
また、車体1の上昇傾斜を開始させた後、即ち図28の(D)に示したタイミングにおいて、第2遮断弁38が故障によって開h1に固定されたままであると仮定する。この場合、空気バネ3FLの圧縮空気が第2遮断弁38を通過して分岐配管57に流れる。このため、分岐配管57の圧力が「AS圧」から「大気圧」に下降しなくて、第2圧力スイッチ39では図28の(D)付近の二点鎖線で示すようにオンのままになる。しかし、上述したように、第2遮断弁38が閉h2に正常に切換わっていれば、第2圧力スイッチ39では図27の(D)付近の実線で示すようにオンからオフに切換わるはずである。このことから、車体傾斜制御部40は、電磁切換弁36をパッシブ側f1から傾斜側f2に切換えた後、図28の(D)に示したタイミングにおいて、第2圧力スイッチ39がオフしないことを故障モードK3として予め記憶している。
また、車体の傾斜復帰を開始させた後、即ち図28の(E)に示したタイミングにおいて、第2遮断弁38が故障によって閉h2に固定されたままであると仮定する。この場合、空気バネ3FLの圧縮空気が第2遮断弁38を通過しなくて分岐配管57に流れない。このため、分岐配管57の圧力が「大気圧」から「AS圧」に上昇しなくて、第2圧
力スイッチ39では図28の(E)付近の二点鎖線で示すようにオフになったままにな
る。しかし、上述したように、第2遮断弁38が閉h2から開h1に正常に切換われば、第2圧力スイッチ39では図27の(E)付近の実線で示すようにオフからオンに切換わるはずである。このことから、車体傾斜制御部40は、第2遮断弁38を閉h2から開h1に切換えた後、図28の(E)に示したタイミングにおいて、第2圧力スイッチ39がオンしないことを故障モードK3として予め記憶している。
また、車体1の傾斜復帰を開始させてしばらく経過した後、即ち図28の(F)に示したタイミングにおいて、第1遮断弁37が開g2に固定されたままであると仮定する。この場合、空気溜め4の圧縮空気が第1遮断弁37を通過して検出用配管56に流れ込む。このため、検出用配管56の圧力が「AS圧」から「MR圧」に上昇して、第1圧力スイッチ35では図28の(F)付近の二点鎖線で示すようにオフからオンに切換わる。しかし、上述したように、第1遮断弁37は開g2から閉g1に正常に切換わっていれば、第1圧力スイッチ35では図27の(F)付近の実線で示すようにオフになったままである。このことから、車体傾斜制御部40は、電磁切換弁36を傾斜側f2からパッシブ側f1に切換えた後、図28の(F)に示したタイミングにおいて、第1圧力スイッチ35がオンすることを故障モードK3として予め記憶している。
こうして、車体傾斜制御部40は、車体傾斜制御を行う際に、図28の(A)(B)(C)(D)(E)(F)に示したタイミングにおいて、第1圧力スイッチ35の状態及び第2圧力スイッチ39の状態と故障モードK3を照合する。これより、車体傾斜制御部40は、第1圧力スイッチ35の状態及び第2圧力スイッチ39の状態と故障モードK3が異なっていれば、電磁弁装置30Yが正常であると判断して、車体傾斜制御プログラムを継続して実行する。一方、第1圧力スイッチ35の状態及び第2圧力スイッチ39の状態と故障モードK3が一致していれば、電磁弁装置30Yが異常であると判断して、車体傾斜制御プログラムの実行を中止するようになっている。
第3実施形態の作用効果について説明する。
第3実施形態の車体傾斜装置70FLによれば、第1実施形態の作用効果と同様、空気バネ3FLの変位ではなく、電磁弁装置30Yの電磁切換弁36と第1遮断弁37と第2遮断弁38の動作を直接的に監視することで、故障検知を早く且つ正確に行うことができる。また、第2実施形態の作用効果と同様、図28の(A)(B)に示したタイミングにおいて第1圧力スイッチ35の状態を監視することで、車体傾斜制御を開始する前に故障検知を行うことができる。更に、第3実施形態の空気回路では、第1圧力スイッチ35及び第2圧力スイッチ39の両方を用いて故障検知を行うため、故障検知をより正確に行うことができる。また、第3実施形態では、電磁切換弁36と第1遮断弁37と第2遮断弁38とのいずれかが正常ならば、車体傾斜制御が正常に行われるメリットがある。
以上、本発明に係る鉄道車両の車体傾斜装置の各実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、傾斜側流路50Bを流れる圧縮空気の圧力を検出する構成(傾斜側圧力検出部)として、圧力スイッチ32又は第1圧力スイッチ35を用い、パッシブ側流路50Aを流れる圧縮空気の圧力を検出する構成(傾斜側圧力検出部)として第2圧力スイッチ39を用いたが、圧力スイッチに換えて圧力センサを用いても良い。
また、電磁切換弁、圧力センサ、遮断弁の数は1つ又は2つに限定されるものではなく3つ以上であっても良く、電磁弁装置の構成は適宜変更可能である。