JP6553375B2 - Ucp−1発現促進剤 - Google Patents

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Description

本発明は、褐色脂肪化を促し、UCP−1の発現を促進する、UCP−1発現促進剤に関する。
従来、脂肪は白色脂肪(white adipose)と褐色脂肪(brown adipose)とに大別されてきた。白色脂肪は、白色脂肪細胞中に過剰なエネルギーを単房性の脂肪滴の形態で貯蔵し、栄養状態に応じて脂肪酸を放出する器官である。褐色脂肪に多い褐色脂肪細胞は、多くのミトコンドリアを有し、特異的にUCP−1(脱共役タンパク質(uncoupling protein)−1)が多く発現しており、エネルギーを熱の形で放散する特性を有している。
UCPは、ミトコンドリア内膜での酸化的リン酸化反応を脱共役させ、エネルギーを熱として散逸する機能を持っている。褐色脂肪細胞の代表的なUCPであるUCP−1は、近年の研究により、その発現量の増加が熱産生を促進させ、その結果としてエネルギーの消費を増大させ、脂肪蓄積や肥満、糖尿病を抑制することに繋がることが明らかとなり、褐色脂肪化が肥満やメタボリックシンドロームの予防、改善の観点から注目されている(非特許文献1)。
一方、PPARγ(peroxisome proliferator-activated receptor γ)は、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)の一種であり、その活性化により糖尿病やインスリン抵抗性を予防・改善することが知られている(非特許文献2)。例えば、PPARγアゴニストであるピオグリタゾン(Pioglitazone)やロシグリタゾン(Rosiglitazone)は2型糖尿病薬として利用されている(非特許文献3)。
他方、Smadファミリーは、TGFβ(transforming growth factorβ)ファミリー分子の刺激によってリン酸化を受け、核にそのシグナルを伝達する細胞内情報伝達因子である。また、Smad3特異的な阻害剤であるSIS3(specific inhibitor of Smad3)は、TGFβに起因する組織の線維化を予防、改善する薬剤として期待されている(非特許文献4)。また、近年、Smad3欠損マウスが食餌性肥満及び糖尿病に対して耐性を示すことより、このTGFβ/Smad3シグナル伝達経路がグルコース及びエネルギーの恒常性に関与する可能性が示唆されており、肥満及び糖尿病予防、改善におけるTGFβ制御法の適用が検討されている(非特許文献5)。一方で、Smad3欠損マウスにおいては、血中トリグリセリドレベルはむしろ増加し、インスリンも増加するという報告もされている(非特許文献6)。
Patrick Seale et al., DIABETES, VOL. 58, 1482-1484, JULY 2009 Michael Lehrke et al., Cell 123, 993-999, December 16, 2005 Steven M. Watkins et al., Journal of Lipid Research Volume 43, 1809-1817, 2002 Masatoshi Jinnin et al., Mol Pharmacol 69, 597-607, 2006 Hariom Yadav et al., Cell Metabolism 14, 67-79, July 6, 2011 Chek Kun Tan et al., Diabetes, 60, 464-476, 2011
本発明は、優れたUCP−1発現促進作用を有し、褐色脂肪化(褐色化とも称する)を促すUCP−1発現促進剤を提供することに関する。
本発明者らは、上記課題に鑑み検討したところ、PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤とを組み合わせて使用した場合に、UCP−1の発現を有意に促進して、褐色脂肪化を促し、斯かる組み合わせがエネルギー消費促進、体脂肪蓄積抑制、肥満の予防又は改善、高脂血症抑制、糖尿病の予防または改善の各効果を発揮し得る医薬品、医薬部外品、皮膚外用剤、食品等の素材として有用であることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(8)に係るものである。
(1)PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなるUCP−1発現促進剤。
(2)PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなる褐色脂肪化促進剤。
(3)PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなるエネルギー消費促進剤。
(4)PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなる体脂肪蓄積抑制剤。
(5)PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなる肥満予防又は改善剤。
(6)PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなる糖尿病予防又は改善剤。
(7)PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなる高脂血症予防又は改善剤。
(8)PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせて摂取又は投与すること、又はPPARγ活性化剤の摂取又は投与とSmad3を阻害するための処置を組み合わせることを特徴とする、非治療的UCP−1発現促進方法、非治療的褐色脂肪化促進方法、非治療的エネルギー消費促進方法、非治療的体脂肪蓄積抑制方法、非治療的肥満予防又は改善方法、非治療的糖尿病予防又は改善方法、又は非治療的高脂血症予防又は改善方法。
本発明によれば、優れたUCP−1発現促進作用及び褐色脂肪化作用を有し、エネルギー消費促進、体脂肪蓄積抑制、肥満の予防又は改善、糖尿病の予防又は改善、高脂血症の予防又は改善等のために有用な、医薬品、医薬部外品若しくは皮膚外用剤、或いは医薬品、医薬部外品、皮膚外用剤又は食品に使用される素材及び方法を提供できる。したがって、本発明によれば、UCP−1の発現及び褐色脂肪化を促進させ、エネルギー消費の促進、体脂肪蓄積の抑制、肥満予防又は改善、糖尿病の予防又は改善、及び高脂血症の予防又は改善が可能となる。
UCP−1発現量(in vitro)を示すグラフ。 UCP−1発現量(in vivo)を示すグラフ。左図:定量的PCRの結果、右図:ウエスタンブロッティングの結果 鼠径部皮下脂肪におけるUCP−1の免疫組織化学の染色像を示す顕微鏡写真。 糖代謝及び脂質代謝改善作用を示すグラフ。左上図:血糖値のΔAUC、左下図:インスリンのΔAUC、右上図:トリグリセリドのΔAUC、右下図:NEFAのΔAUC。 TGFβ刺激応答性のSmad3リン酸化亢進抑制作用を示す図。(レーン左;低濃度サンプル、レーン右;高濃度サンプル) PPARγの活性化作用を示す図。
本発明において用いられるPPARγ活性化剤とは、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)γを活性化する物質の総称であり、PPARγアゴニスト或いはPPARγリガンドともいわれる。代表的PPARγ活性化剤として知られるチアゾリジン誘導体は、脂肪組織において小型の脂肪細胞を増加させ、アディポネクチンなどのインスリン感受性ホルモンの分泌を促進することで、インスリン抵抗性を改善することから、広く2型糖尿病薬として利用されている。
PPARγ活性化剤としては、例えば下記構造式で表わされるロシグリタゾン(BRL49653)(J Biol Chem. 1995 Jun 2;270(22):12953-6.)、ピオグリタゾン(J Biol Chem. 1995 Jun 2;270(22):12953-6.)の他、ネトグリタゾン(Bone. 2006 Jan;38(1):74-84.)、ダルグリタゾン(J Pharmacol Exp Ther 305:1173-1182)、シグリタゾン(J Biol Chem. 1995 Jun 2;270(22):12953-6.)、エングリタゾン(J Biol Chem. 1995 Jun 2;270(22):12953-6.)、トログリタゾン(Eur J Biochem. 1996 Jul 1;239(1):1-7.)、リヴォグリタゾン(Ann Pharmacother. 2013 Jun;47(6):877-85.)、FK-614(Metabolism. 2005 Sep;54(9):1250-8.)、Tesaglitazar(AZ-242)(Structure. 2001 Aug;9(8):699-706.)、Ragaglitazar (J Med Chem. 2001 Aug 2;44(16):2675-8.)、Prostaglandin D2、J2、delta12-prostaglandin J2、15-Deoxy-delta 12, 14-prostaglandin J2(Cell. 1995 Dec 1;83(5):803-12.)、docosahexaenoic acid、eicosapentaenoic acid、 linolenic acid、linoleic acid、arachidonic acid(Mol Endocrinol. 1997 Jun;11(6):779-91.)、Telmisartan(Acta Diabetol. 2005 Apr;42 Suppl 1:S9-16.)、Carsonic acid (Planta Med. 2006 Aug;72(10):881-7.)、FMOC−L−ロイシンおよびその誘導体(特表2004−501896号公報)、アリールオキシ酢酸置換基を有するN−置換インドール、デヒドロジオイゲノールA、デヒドロジオイゲノールB、マグノロール、オレアノール酸、ベツリン酸(特開2005−97216号公報)、ロスマリン酸誘導体(特開2006−273741号公報)、モノアシルグリセロールまたはその誘導体(特開2008−106040号公報)、ジンゲロール類またはその誘導体(特開2008−285438号公報)、ショウガ(特開2010−106001号公報)、ジフェニルエテン誘導体(特開2012−116799号公報)、炭素鎖長20〜22の高度不飽和脂肪酸の水酸化誘導体(国際公開第2002/102364号)、GW1929(Diabetes. 1999 Jul;48(7):1415-24)、nTZDpa(Mol Endocrinol. 2003 Apr;17(4):662-76.)、乳酸菌処理物(国際公開第2013/084971号)、醤油粕(特開2009−242382号公報)、クルクミン(Evid Based Complement Alternat Med. 2013;2013:470975. doi: 10.1155/2013/470975.)等が挙げられる。
また、後記参考例に示すように、ショウガ抽出物、ナツメグ抽出物、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ロベージ抽出物、エレミ抽出物、クローブ抽出物、シトロネラ抽出物、ベイ抽出物、シンナモン抽出物、ダバナ抽出物、アサの実抽出物、ケシの実抽出物、アシタバカルコンには、PPARγ活性化作用があることが確認されており、ショウガ又はその抽出物、ナツメグまたはその抽出物、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ロベージ及びその抽出物、エレミ又はその抽出物、クローブ又はその抽出物、シトロネラ又はその抽出物、ベイ又はその抽出物、シンナモン、又はその抽出物、ダバナ又はその抽出物、アサの実又はその抽出物、ケシの実又はその抽出物、アシタバカルコンを本発明のPPARγ活性化剤として用いることができる。このうち、ショウガ又はその抽出物、ナツメグ又はその抽出物、DHA、EPA及びそれらを含有する魚油、クローブ又はその抽出物、シンナモン又はその抽出物、ベイ又はその抽出物が好ましい。
本発明において用いられるSmad3阻害剤とは、Smad3が担う細胞内シグナル伝達系の阻害作用を有する物質を意味し、例えばSmad3のリン酸化抑制剤やSmad3の発現抑制剤が挙げられる。また、Smad3とSmad4の相互作用を阻害する物質や、TGFβ受容体拮抗剤、TGFβシグナル伝達阻害剤、アクチビン受容体拮抗剤、Smad3分解促進剤等もSmad3阻害剤として挙げられる。Smad3阻害剤としては、代表的にはSpecific Inhibitor of Smad3(SIS3)として知られている、下記式で示される6,7−ジメトキシ−2−((2E)−3−(1−メチル−2−フェニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル−プロプ−2−エノイル))−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン又はその塩( Molecular Pharmacology 69(2) 597-607)が挙げられるが、塩酸塩が好ましい。
その他、Naringenin(Pharmaceutical Research 23(1) 82-89, 2006)、SB431542(Molecular Pharmacology 62: 58-64, 2002)、LY2157299(Proc Amer Assoc Cancer Res. 2006:47. Abstract 250.)、ウルソール酸(特開2000−159673号公報)、オレアノール酸(特開2000−159793号公報)、ピリジルアクリル酸アミド誘導体(国際公開第99/05109号)、キナゾリン誘導体(特表2002−523502号公報)、シクロピロパンカルボン酸アミド化合物(特開2004−35475号公報)、ピリジン/トリアジン誘導体(特表2006−503043号公報)、ピラジン誘導体(特表2006−519833号公報)、縮合複素芳香族化合物(特表2006−519249号公報)、イソチアゾール誘導体(特表2006−516603号公報)、イソチアゾール/イソキサゾール誘導体(特表2006−506443号公報)、ピラゾール誘導体(特表2006−507353号公報)、イミダゾール誘導体(特表2006−502237号公報)、トリアゾール誘導体(特表2006−502236号公報)、トリアゾール/オキサゾール誘導体(特表2006−502235号公報)、キナゾリン誘導体(特表2007−517046号公報)、ピリミジニルイミダゾール誘導体(特表2008−511631号公報、特表2008−511630号公報)、ピラゾール誘導体(特開2009−197016号公報、特表2009−502780号公報、特表2004−535404号公報)、二本鎖RNA(特表2011−527893号公報)、TGFβ1阻害ペプチド(特表2012−519671号公報、特開2012−214489号公報、特表2009−512727号公報、特開2008−56685号公報、特開2007−186519号公報)、アルコキシ−チエノピリミジン誘導体(特表2012−530731号公報)、イミダゾチアジアゾール誘導体(特表2011−529456号公報)、チエノピリミジン誘導体(特表2011−518132号公報)、トリアザベンゾ[e]アズレン誘導体(特表2010−508311号公報)、トリアゾール誘導体(特表2009−520706号公報)、ヘテロサイクル誘導体(特表2006−527722号公報)、チアゾール誘導体(特表2006−527720号公報)、ピラゾール湯導体(特表2005−539026号公報)、2−フェニルピリジン−4−イルヘテロサイクル誘導体(特表2005−539000号公報)、ピリジン誘導体(特表2005−537291号公報)、トリアゾール誘導体(特表2005−538997号公報)、アミノチアゾール誘導体(特表2005−538996号公報)、ベンゾオキサジノン誘導体(特表2005−530800号公報)、チアゾール誘導体(特表2004−521903号公報)、ピラゾール誘導体(特表2004−521901号公報)、チアゾール誘導体(特表2004−523540号公報)、チアゾールアミン誘導体(特表2004−524302号公報)、トリアゾール誘導体(特表2004−517069号公報)、ピリジニルイミダゾール誘導体(特表2003−524010号公報)、トリアリールイミダゾール誘導体(特表2002−541253号公報)等を、Smad3阻害に有効なTGFβ阻害剤として挙げることができる。
また、後記参考例に示すように、植物タンニン、ルテオリン、ローズマリー抽出物、白茶抽出物、マリアアザミ抽出物、ログウッド色素、ピーナツ種皮抽出物、ライチポリフェノール、リンゴポリフェノール、ウーロン茶抽出物、及びオールスパイスには、Smad3阻害作用があることが確認されており、植物タンニン、ルテオリン、ローズマリー又はその抽出物、白茶又はその抽出物、マリアアザミ又はその抽出物、ログウッド色素、ピーナツ種皮又はその抽出物、ライチポリフェノール、リンゴポリフェノール、ウーロン茶又はその抽出物、及びオールスパイスを本発明のSmad3阻害剤として用いることができる。このうち、植物タンニン、ローズマリー又はその抽出物、オールスパイス又はその抽出物、またはルテオリンが好ましい。
PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤の好適な組み合わせとしては、UCP−1発現誘導の点から、チアゾリジン誘導体とSmad3阻害剤の組合せ、好ましくはロシグリタゾン(マレイン酸ロシグリタゾン)又はピオグリタゾンとSIS3の組み合わせ、さらに好ましくはロシグリタゾン(マレイン酸ロシグリタゾン)とSIS3の組み合わせが挙げられる。
また、Smad3を阻害するための処置としては、Smad3が担う細胞内シグナル伝達系を阻害するための処置、例えばSmad3のリン酸化抑制やSmad3の発現抑制を行うための処置が挙げられ、具体的には、温熱処置(特開2009−226069号公報)等が挙げられる。
本発明のPPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなるUCP−1発現促進剤、褐色脂肪化促進剤、エネルギー消費促進剤、体脂肪蓄積抑制剤、肥満予防又は改善剤、糖尿病予防又は改善剤、及び高脂血症予防又は改善剤は、配合剤として、それぞれの有効量を適当な配合比において一の剤型に製剤化したものでも、またそれぞれの有効量を含有する薬剤を単独に製剤化したものを同時に又は間隔を空けて別々に使用できるようにしたキットであってもよいが、同時摂取が好ましい。また、Smad3を阻害するための処置は、PPARγ活性化剤の投与と同時に又は間隔を空けて行ってもよいが、好ましくは剤の投与と同時に処置を行う。
また、PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせて配合剤とする場合、その配合比率は、素材、用途又は製剤の種類に応じて適宜選択することができるが、概ね、PPARγ活性化剤:Smad3阻害剤が、1:0.001〜10000、好ましくは1:0.01〜1000、さらに好ましくは1:0.02〜100である。
後記実施例に示すように、PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤とを組み合わせて、ラット皮下脂肪由来培養細胞に添加した場合、UCP−1遺伝子の発現が有意に増加し、また、PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤とを組み合わせてラットに投与した場合に、皮下脂肪においてUCP−1遺伝子の発現が有意に増加し、その効果は、PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤をそれぞれ単独で添加又は投与した場合に得られる効果の相加を超え、相乗的効果であると云える。
すなわち、PPARγ活性化剤と、Smad3阻害剤或いはSmad3を阻害する処置との併用は、UCP−1発現を促進するため或いは脂肪細胞を褐色化するために使用すること、例えばUCP−1発現促進剤又は褐色脂肪化促進剤として使用することができ、また、当該UCP−1発現促進剤又は褐色脂肪化促進剤を製造するために使用することができる。
また、UCP−1の発現が促進されることにより、熱産生が促進され、その結果としてエネルギーの消費が増大し、脂肪蓄積や肥満を抑制すると考えられており(前記非特許文献1)、実際に、PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせて使用した場合に、血糖値、血中インスリン値、中性脂肪(TG)値、NEFA(脂肪酸)値が顕著に低下し、糖代謝改善作用及び脂質代謝改善作用が認められている(実施例2)。したがって、Smad3阻害剤或いはSmad3を阻害するための処置との併用は、エネルギー消費促進、体脂肪蓄積抑制、肥満予防又は改善、糖尿病予防又は改善、高脂血症予防又は改善のために使用すること、例えばエネルギー消費促進剤、体脂肪蓄積抑制剤、肥満予防又は改善剤、糖尿病予防又は改善剤、高脂血症予防又は改善剤として使用することができ、また、当該エネルギー消費促進剤、体脂肪蓄積抑制剤、肥満予防又は改善剤、糖尿病予防又は改善剤、及び高脂血症予防又は改善剤を製造するために使用することができる。
尚、当該使用は、ヒト若しくは非ヒト動物、又はそれらに由来する検体における使用であり得、また治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。ここで、「非治療的」とは、医療行為を含まない概念、すなわち人間を手術、治療又は診断する方法を含まない概念、より具体的には医師又は医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法を含まない概念である。
ここで、「UCP−1の発現促進」とは、UCP−1mRNAへのUCP−1遺伝子の転写を誘導又は促進すること、UCP−1タンパク質へのUCP−1mRNAの翻訳を誘導又は促進することが挙げられる。
また、「褐色脂肪化促進」とは、白色脂肪の褐色脂肪化を誘導又は促進する、あるいは、前駆脂肪細胞から褐色脂肪(細胞)への分化を誘導又は促進することを意味し、「褐色脂肪化」とは、白色脂肪の形質が褐色脂肪に特徴的な形質に転化する、あるいは前駆脂肪細胞から褐色脂肪(細胞)に特徴的な形質を有する脂肪細胞を誘導することをいう。具体的には、組織学的には、褐色脂肪細胞に特異的な細胞径の小型化、あるいは多房性の中性脂肪蓄積構造などを呈する、あるいはミトコンドリアが増加する、あるいは、mRNAまたは蛋白質レベルで、褐色脂肪細胞のマーカー分子として知られるUCP−1を発現していることが挙げられる。
尚、本発明において、「褐色脂肪(細胞)」には、「古典的褐色脂肪(細胞)」の他に「Beige脂肪(細胞)」或いは「Brite脂肪(細胞)」と呼ばれる脂肪(細胞)も含まれるものとし(篠田幸作、梶村真吾:細胞工学 Vol.32,No.7,769-773,2013)、「褐色脂肪化」には「古典的褐色脂肪化」、「Beige脂肪化」、「Brite脂肪化」も含まれるものとする。
従って、本発明のUCP−1発現促進剤、褐色脂肪化促進剤、エネルギー消費促進剤、体脂肪蓄積抑制剤、肥満予防又は改善剤、糖尿病予防又は改善剤、及び高脂血症予防又は改善剤(以下、「UCP−1発現促進剤等」と称する)を含む組成物は、UCP−1の発現促進、脂肪細胞の褐色化、エネルギー消費促進、体脂肪蓄積抑制、肥満の予防又は改善、糖尿病の予防又は改善、高脂血症予防又は改善の各効果を奏する医薬品、医薬部外品、皮膚外用剤、食品となり、UCP−1発現促進剤等は、医薬品、医薬部外品、皮膚外用剤若しくは食品へ配合するための素材又は製剤として有用である。
上記医薬品(医薬部外品も含む)の剤形は、例えば注射剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、各種外用剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等の何れでもよく、投与形態も、経口投与(内用)、非経口投与(外用、注射)の何れであってもよい。このような種々の剤型の医薬製剤を調製するには、例えば本発明のPPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を、又は他の薬学的に許容される賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤、他の薬効成分等を適宜組み合わせて用いることができる。
上記皮膚外用剤(医薬部外品も含む)は、使用方法に応じて、ローション、乳液、ゲル、クリーム、軟膏剤、粉末、顆粒等の種々の剤型で提供することができる。このような種々の剤型の皮膚外用剤は、例えば本発明のPPARγ活性化剤とSmad3阻害剤と、皮膚外用剤に配合され得る、油性成分、保湿剤、粉体、色素、乳化剤、可溶化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、増粘剤、薬効成分、香料、樹脂、防菌防黴剤、植物抽出物、アルコール類等を適宜組み合わせることにより調製することができる。
上記医薬品や皮膚外用剤(医薬部外品も含む)に配合可能な薬効成分としては、例えば、ビタミン類、脂肪代謝促進作用が知られている薬物或いは天然物(例えば、キサンチン誘導体、α−アドレナリン作用抑制薬、PPARα活性化剤、PPARδ活性化剤、ビピリジン誘導体、イソフラボン酸、グレープフルーツオイル、ヌートカトン、カフェイン、唐辛子又はそのエキス、カプサイシン又はその類縁体、レスベラトロール、カテキン類、ココアポリフェノール、コーヒーポリフェノール、クロロゲン酸、フェルラ酸、ケルセチン、ヘスペリジン及びその配糖体、アスタキサンチン、αリポ酸、リン脂質等)等が挙げられる。
上記医薬品や皮膚外用剤(医薬部外品も含む)におけるPPARγ活性化剤の含有量は、通常、製剤全質量の0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、そして95質量%以下、好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。また、0.01〜95質量%、好ましくは0.1〜80質量%、更に好ましくは1.0質量%〜60質量%が挙げられる。
また、Smad3阻害剤の含有量は、製剤全質量の0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、そして95質量%以下、好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。また、0.01〜95質量%、好ましくは0.1〜80質量%、更に好ましくは1.0質量%〜60質量%が挙げられる。
また、上記食品には、エネルギー消費促進、体脂肪蓄積抑制、肥満予防又は改善、糖尿病予防又は改善、高脂血症予防又は改善等をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した、病者用食品、栄養機能食品、保健食品又は特定保健用食品等の機能性食品が包含される。
食品の形態は、固形、半固形または液状であり得る。食品の例としては、パン類、麺類、クッキー等の菓子類、ゼリー類、乳製品、冷凍食品、インスタント食品、でんぷん加工製品、加工肉製品、その他加工食品、お茶やコーヒー飲料、果実飲料、炭酸飲料、ゼリー状飲料等の飲料、スープ類、調味料、栄養補助食品等、及びそれらの原料が挙げられる。
また食品は、サプリメントのように、上記の経口投与製剤と同様、錠剤形態、丸剤形態、カプセル形態、液剤形態、シロップ形態、粉末形態、顆粒形態等であってもよい。
斯かる食品は、任意の飲食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、増粘剤、固着剤、分散剤、湿潤剤等を適宜組み合わせて配合し、調製することができる。また、ビタミン類、脂肪代謝促進作用が知られている薬物或いは天然物(例えば、イソフラボン酸、グレープフルーツオイル、ヌートカトン、カフェイン、唐辛子又はそのエキス、カプサイシン又はその類縁体、レスベラトロール、ココアポリフェノール、コーヒーポリフェノール、クロロゲン酸、フェルラ酸、ケルセチン、ヘスペリジン及びその配糖体、アスタキサンチン、αリポ酸、リン脂質等)等の薬効成分を適宜配合することができる。
上記の食品中のPPARγ活性化剤の含有量は、その使用形態により異なるが、通常、0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上であり、そして50質量%以下、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。例えば、0.0001%〜50質量%、好ましくは0.001〜20質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%が挙げられる。また、Smad3阻害剤の含有量は、製剤全質量の0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上であり、そして50質量%以下、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。例えば、0.0001%〜50質量%、好ましくは0.001〜20質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%が挙げられる。
本発明のPPARγ活性化剤とSmad3阻害剤の組み合わせを医薬品或いはサプリメントとして、或いは医薬品或いはサプリメントに配合して使用する場合の投与量は、PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤の種類により、また、対象者の状態、体重、性別、年齢又はその他の要因に従って変動し得るが、経口投与の場合の成人1人当たりの1日の投与量は、通常、PPARγ活性化剤として1mg以上、好ましくは5mg以上、更に好ましくは15mg以上であり、そして10g以下、好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。ピオグリタゾンの場合は、通常一日あたり5mg〜45mg、特に15mg〜45mg、ロシグリタゾンの場合は通常一日当り1mg〜8mg、特に4mg〜8mgが好ましい。また、Smad3阻害剤として、1mg以上、好ましくは5mg以上、更に好ましくは15mg以上であり、そして10g以下、好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。
また、上記製剤は、任意の投与計画に従って投与され得るが、1日1回〜数回に分け、数週間〜数ヶ月間継続して投与することが好ましい。
また、投与又は摂取対象としては、それを必要としている若しくは希望している動物であれば特に限定されないが、エネルギー消費促進、体脂肪蓄積抑制、または肥満予防又は改善を必要とする若しくは希望するヒトが挙げられる。
上述した実施形態に関し、本発明においてはさらに以下の態様が開示される。
<1>PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなるUCP−1発現促進剤。
<2>PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなる褐色脂肪化促進剤。
<3>PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなるエネルギー消費促進剤。
<4>PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなる体脂肪蓄積抑制剤。
<5>PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなる肥満予防又は改善剤。
<6>PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなる糖尿病予防又は改善剤。
<7>PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなる高脂血症予防又は改善剤。
<8>UCP−1発現促進剤、褐色脂肪化促進剤、エネルギー消費促進剤、体脂肪蓄積抑制剤、肥満予防又は改善剤、糖尿病予防又は改善剤、または高脂血症予防又は改善剤を製造するためのPPARγ活性化剤とSmad3阻害剤の組み合わせの使用。
<9>UCP−1発現促進、褐色脂肪化促進、エネルギー消費促進、体脂肪蓄積抑制、肥満予防又は改善、糖尿病予防又は改善、または高脂血症予防又は改善に使用するためのPPARγ活性化剤とSmad3阻害剤の組み合わせ。
<10>PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてその有効量を投与又は摂取すること、又はPPARγ活性化剤の摂取又は投与とSmad3を阻害するための処置を組み合わせることを特徴とするUCP−1発現促進方法、褐色脂肪化促進方法、エネルギー消費促進方法、体脂肪蓄積抑制方法、肥満予防又は改善方法、糖尿病予防又は改善方法、または高脂血症予防又は改善方法。
<11>前記<1>〜<10>において、PPARγ活性化剤は、ロシグリタゾン又はピオグリタゾンである。
<12>前記<1>〜<10>において、PPARγ活性化剤は、ショウガ又はその抽出物、ナツメグまたはその抽出物、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エレミ又はその抽出物、クローブ又はその抽出物、シトロネラ又はその抽出物、ベイ又はその抽出物、シンナモン又はその抽出物、アシタバカルコン、ロベージ又はその抽出物、ダバナ又はその抽出物、ケシの実又はその抽出物、アサの実又はその抽出物のいずれか1以上である。
<13>前記<1>〜<12>において、Smad3阻害剤は、SIS3である。
<14>前記<1>〜<12>において、Smad3阻害剤は、植物タンニン、ルテオリン、ローズマリー又はその抽出物、白茶又はその抽出物、マリアアザミ又はその抽出物、ログウッド色素、ピーナツ種皮又はその抽出物、ライチポリフェノール、リンゴポリフェノール、ウーロン茶、又はオールスパイスのいずれか1以上である。
<15>前記<8>において、使用は非治療的使用である。
<16>前記<10>において、方法は非治療的方法である。
<17>前記<10>において、投与又は摂取の対象は、エネルギー消費促進、体脂肪蓄積抑制、肥満予防又は改善、糖尿病予防又は改善、または高脂血症予防又は改善を必要とする若しくは希望するヒトである。
<18>前記<1>〜<17>において、PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を医薬品或いはサプリメントとして経口投与する場合の成人1人当たりの1日の投与量は、PPARγ活性化剤として1mg以上、好ましくは5mg以上、さらに好ましくは15mg以上、そして10g以下、好ましくは5g以下、さらに好ましくは1g以下であり、Smad3阻害剤として、1mg以上、好ましくは5mg以上、さらに好ましくは15mg以上、そして10g以下、好ましくは5g以下、さらに好ましくは1g以下である。
実施例1 UCP−1発現誘導作用(細胞)
(1)脂肪細胞の単離および培養
Wistarラット (SLC、♂、8週齢)を用いた。食餌は、標準固形飼料CE−2(オリエンタル酵母工業)を自由摂食させ、水道水を自由摂水させた。飼育環境は、室温を23±2度、湿度を55±10%とし、明期を7〜19時とした。
上記ラットをイソフルラン麻酔下にて開腹し、腹部皮下脂肪を摘出した。脂肪組織をメスにて細切後、0.5mg/mLコラゲナーゼ溶液中に懸濁し、37℃で15分間インキュベートすることで細胞を分離分散させた。適宜培地を加え、速やかに1000rpm、5分間遠心し上清を除去した。沈殿として得られた間質血管系画分(SVF;stromal vascular fraction)を培地に懸濁し、これを脂肪組織由来の前駆培養細胞とした。
培地は、10% fetal bovine serum(FBS,AusGeneX)および100 units/mL penicillin(invitrogen)、100μg/mL streptomycin(invitrogen)を添加したhigh glucose DMEM(SIGMA)を使用し、37℃、5%CO条件下にて培養した。
(2)UCP−1発現誘導
得られた前駆培養細胞を、I型コラーゲンにてコートした12穴プレートに播種し、翌日PPARγ活性化剤(ロシグリタゾン(Rosi)(和光純薬)、1μM)および/あるいはSmad3阻害剤(SIS3(SIGMA)、10μM)を添加した。
(3)定量的PCR
Total RNAの抽出は、RNeasy Mini Kit (Qiagen) を用いて定法に従い行った。逆転写は、High Capacity RNA−to−cDNA Kit(アプライドバイオシステム)を用いて定法に従い行った。
得られたcDNA(30ng/well)を鋳型として、7500 Fast Real−Time PCR System(アプライドバイオシステム)を用いて定量的PCRを行った。UCP−1遺伝子の発現量は、36B4遺伝子発現量を内部標準として補正した。
図1より、UCP−1の発現量は、ロシグリタゾンとSIS3を組み合わせることにより、相乗的に増加した。
実施例2 UCP−1発現誘導作用(マウス)
(1)動物およびその飼育
C57BL/6Jマウス(SLC、♂、10週齢)を体重が均等になるように2群に分けた。食餌は、標準固形飼料CE−2(オリエンタル酵母工業)を自由摂食させ、水道水を自由摂水させた。飼育環境は、室温を23±2℃、湿度を55±10%とし、明期を7〜19時とした。
(2)Alzet浸透圧ポンプの埋め込み手術
ソムノペンチル1/13希釈溶液を10mL/kg体重にて腹腔内投与した後、鎮痛剤ペンタゾシンを1mg/kg体重にて皮下注射した。背部を毛刈り後、以下の被験化合物を充填した浸透圧ポンプAlzet(DURECT)を皮下に埋め込むことで、持続投与した。尚、各被験化合物は50%DMSO/20%エタノール/30%水溶液に溶解して用いた。
<被験化合物>
第1群:対照群
第2群:PPARγ活性化剤(ロシグリタゾン(Rosi)(和光純薬)、5mg/kg体重/日)+Smad3阻害剤(SIS3(SIGMA)、5mg/kg体重/日)
手術一週間後、UCP−1発現量の解析のため、鼠蹊部皮下脂肪の採取を行った。採取組織は液体窒素を用いて即時凍結し、使用時まで−80℃にて保存した。また、組織染色用に10%ホルマリン溶液にて固定した。
(3)定量的PCR
Total RNAの抽出は、RNeasy Lipid Tissue Mini Kit (Qiagen)を用いて定法に従い行った。逆転写は、High Capacity RNA−to−cDNA Kit(アプライドバイオシステム)を用いて定法に従い行った。
逆転写反応により得られたcDNA(30ng/well)を鋳型として、7500 Fast Real−Time PCR System(アプライドバイオシステム)を用いて定量的PCRを行った。UCP−1遺伝子の発現量は、36B4遺伝子発現量を内部標準として補正した。
図2(左図)より、UCP−1の発現量は、ロシグリタゾンとSIS3を組み合わせることにより、顕著に上昇した。
(4)ウエスタンブロッティング
組織にLysis bufferを加えホモジナイズした。3000rpm、4℃、5分間の遠心により固化した脂肪層を除去した後、12000rpm、4℃で10分間遠心した上清をタンパク質溶液として得た。
SDS−PAGEには、1レーンあたりタンパク質10μg分、4xSDS Sample buffer (Novagen)を1/4容量含む調製サンプルに対し、95℃で5分間熱変性をかけたものを用いた。Immun−BlotTM PVDF Membrane(BioRad)に転写し、以下の手順でブロッキング、抗体反応を行い、ECL prime western blotting detection system(Amersham)を用いて感光、バンドを検出した。
5% スキムミルク / TBS−T,1時間 (室温)
↓ TBS−Tにて洗浄
一次抗体 / Can Get SignalTM solution1 (TOYOBO),O/N (4℃)
↓ TBS−Tにて洗浄
二次抗体 / Can Get SignalTM solution2 (TOYOBO), 1時間 (室温)
↓ TBS−Tにて洗浄
検出
※ TBS−T; 0.1% Tween20/Tris Buffered Saline (TBS)
Lysis buffer: RIPA buffer (SIGMA)、Protease inhibiter cocktail (1/1000量、SIGMA)
一次抗体:anti−UCP−1(Abcam ♯23841),1000倍希釈
anti−α−tubulin(Cell signaling ♯2144),1000倍希釈
二次抗体:anti−rabbit IgG, HRP linked(GEヘルスケア),1000倍希釈
図3(右図)より、UCP−1の発現量は、ロシグリタゾンとSIS3を組み合わせることにより、顕著に増加した。
(5)UCP−1の免疫組織化学的染色
以下のプロトコルに従い、鼠蹊部皮下脂肪について、UCP−1の免疫組織化学的染色を行った。組織の固定には、10%ホルマリン溶液を用いた。抗体はanti−UCP−1(abcam ♯23841) を用いた。
<プロトコル>
1)パラフィン切片をキシレンにより脱パラフィン、アルコール,水洗し、PBSに浸漬
2)Dako Target Retrieval solution, pH9(10×)でMW処理5分
3)PBS洗浄後、1%過酸化水素メタノール,室温30分
4)1次抗体300倍,反応時間室温60分
5)PBS洗浄後、Anti−Rabbit Envision ,室温30分
6)PBS洗浄後、DABにて発色、ヘマトキシリンで核染色し、脱水、透徹、封入。
※PBS洗浄は5分×3回
<試薬>
一次抗体:ab23841(abcam社)
二次抗体:EnvisionTM K4003(DAKO社)
DAB :K3468(Dako社)
Dako Target Retrieval solution, pH9:S2367(DAKO社)
ロシグリタゾンとSIS3を組み合わせることにより、対照に比較し細胞は小型化し、濃く染色されたことより、UCP−1の発現が誘導されたことが認められた(図3)。
実施例3 糖代謝及び脂質代謝改善作用
(1)動物およびその飼育
C57BL/6J(SLC、♂、7週齢)に、60kcal%脂肪含有高脂肪飼料(リサーチダイエット)を自由摂食、水道水を自由飲水させた。10週間後、平均体重が均等になるように4群に分けた。飼育環境は、室温を23±2℃、湿度を55±10%とし、明期を7〜19時とした。
(2)Alzet浸透圧ポンプの埋め込み手術
ソムノペンチル1/13希釈溶液を10mL/kg体重にて腹腔内投与した後、鎮痛剤ペンタゾシンを1mg/kg体重にて皮下注射した。背部を毛刈り後、以下の剤を充填した浸透圧ポンプAlzet(DURECT)を皮下に埋め込むことで、剤を持続投与した。尚、各被験化合物は50%DMSO/20%エタノール/30%水溶液に溶解して用いた。
<被験化合物>
第1群:対照群
第2群:PPARγ活性化剤(ロシグリタゾン(Rosi)(和光純薬)、5mg/kg体重/日)+Smad3阻害剤(SIS3(SIGMA)、5mg/kg体重/日)
(3)経口糖・脂質負荷試験
術後13日目に、以下の方法で、経口糖・脂質負荷試験を行った。
糖・脂質混合乳剤として、10%グルコースおよび10%コーン油を含有する以下の溶液を、超音波処理にて乳化したものを用いた。
<糖・脂質混合乳剤の組成>
グルコース 1g
コーン油 1g
卵黄レシチン 0.1g
脂肪酸不含BSA 0.4g
蒸留水 total 10mL
<方法>
絶食12時間後、イソフルラン麻酔下にて補綴し、10mL/kg体重量の糖・脂質混合乳剤をゾンデにて経口投与した。0、15、30、60、120分後に、イソフルラン麻酔下で眼窩より採血すると共に、血糖値を測定した。血糖値は、簡易血糖値測定器アキュチェックアビバ(ロシュ)および測定用試験紙アキュチェックアビバストリップII(ロシュ)にて測定した。また、採血した血液より10000rpm、4℃、6分間の遠心処理にて血清を分取し、血中インスリン濃度をインスリン測定キット(森永生化学研究所)、血中トリグリセリド濃度をTG E−テスト(和光純薬)、血中遊離脂肪酸濃度をNEFA C−テスト(和光純薬)にて測定した。
AUCは、最低測定値を底辺とした曲線下面積として算出した。結果を図4に示す。
図4より、ロシグリタゾンとSIS3を組み合わせることにより、血糖値、血中インスリン値、中性脂肪(TG)値、NEFA(脂肪酸)値が顕著に低下し、糖代謝改善作用及び脂質代謝改善作用が認められた。
参考例1 Smad3阻害素材
(1)Smad3リン酸化に与える影響
i)HEK293細胞を6well dishに3x10 cells/wellとなるように播種し、5% charcoal−treated FBS含有DMEM中で一晩培養した。翌日、下記表1に示す各素材を終濃度0.002%(ルテオリンは2μM)(低濃度サンプル)あるいは終濃度0.01%(ルテオリンは10μM)(高濃度サンプル)にてそれぞれ添加した無血清DMEMに交換した。2時間後、0.03μg/mL TGFβを添加し20分間インキュベートした細胞について、培地を除去しPBSで洗浄後回収した。
ii)ウエスタンブロッティング
回収した細胞にLysis bufferを加えよくホモジナイズした。氷上に15分間静置後、超音波にて破砕し、12000rpm、4℃で10分間遠心した上清をタンパク質溶液として得た。
SDS−PAGEには、一レーンあたりタンパク質25mg分、4xSDS Sample buffer (Novagen)を1/4容量含む調製サンプルに対し、95℃で5分間熱変性をかけたものを用いた。Immun−BlotTM PVDF Membrane (BioLad)に転写し、以下の手順でブロッキング、抗体反応を行い、ECL prime western blotting detection system (Amersham) を用いてタンパク質の検出を行った。内部標準として、αtubulinとSmad3について、併せて検出を行った。
5% スキムミルク / TBS−T,1時間 (室温)
↓ TBS−Tにて洗浄
一次抗体 / Can Get SignalTM solution1 (TOYOBO),O/N (4℃)
↓ TBS−Tにて洗浄
二次抗体 / Can Get SignalTM solution2 (TOYOBO), 1時間 (室温)
↓ TBS−Tにて洗浄
検出
※ TBS−T; 0.1% Tween20/Tris Buffered Saline (TBS)
Lysis buffer: RIPA buffer (SIGMA)
Protease inhibiter cocktail (1/1000量、SIGMA)
Phosphatase Inhibitor Cocktail 1 (1/100量、SIGMA)
Phosphatase Inhibitor Cocktail 2 (1/100量、SIGMA)
一次抗体:anti−Smad3(Cell signaling ♯9513),1000倍希釈
anti−phospho Smad3(Cell signaling ♯9520),1000倍希釈
anti−α−tubulin(Cell signaling ♯2144),1000倍希釈
二次抗体:anti−rabbit IgG, HRP linked(GEヘルスケア),1000倍希釈
iii)a)〜k)の素材について、TGFβ刺激応答性のSmad3リン酸化亢進が抑制され、高濃度処理群(レーン右側)においてはより顕著な抑制効果が認められた(図5)。
参考例2 PPARγ活性化素材
アフリカミドリザル腎細胞株CV−1をプレートにまき、DMEM(5%チャコール処理ウシ胎児血清)中で1日培養した。ホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流にGAL4結合配列を含むレポータープラスミド(pG5−Luc;invitrogen)と、ヒトPPARγ2リガンド結合部位(NCBI Ref Seq NM_015869,nt703−1606)をpBINDベクター(Promega)に挿入したpBIND−PPARγ−LBDとを同時にトランスフェクション試薬(Superfect Transfection Reagent;QIAGEN)を用いて上記細胞に導入した。pBIND−PPARγ−LBDベクターは、細胞に導入するとPPARγ2リガンド結合部位とGAL4結合配列に結合する部位との融合蛋白質を発現する。当該融合蛋白質は、PPARγ2リガンドと結合することにより、その下流のホタルルシフェラーゼ遺伝子の転写を活性化する。よって、ホタルルシフェラーゼ活性を測定することによって、PPARγ2リガンドの結合量を決定することができる。また当該ベクターにはウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子が組み込まれているので、ウミシイタケルシフェラーゼ活性を測定することにより、当該ベクターの導入効率を求めることができる。ベクター導入の3時間後、培養液をDMEM(5%チャコール処理ウシ胎児血清)に交換し、さらに2時間後、培養液を下記表2に示す素材をそれぞれ記載の終濃度にて添加した無血清DMEM培地に交換した。約16時間培養後、PBSにて細胞を洗浄し、Dual Luciferase Reporter Assay System (Promega)を用いてホタルおよびウミシイタケのルシフェラーゼ活性を測定することにより、PPARγ活性化作用を評価した。尚、PPARγ活性化作用は以下のように定義した。PPARγ活性化作用=(pG5lucによる蛍ルシフェラーゼ活性)/(GAL4−PPARγ−LBDによるウミシイタケルシフェラーゼ活性)
尚、結果はコントロールにおけるルシフェラーゼ活性を1とし、それに対する相対値で示した。
ii)図6より、a)〜n)の素材は、PPARγを活性化することが示された。

Claims (5)

  1. PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなるUCP−1発現促進剤であって、
    PPARγ活性化剤がロシグリタゾンであり、Smad3阻害剤がSIS3である、UCP−1発現促進剤。
  2. PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなる体脂肪蓄積抑制剤であって、
    PPARγ活性化剤がロシグリタゾンであり、Smad3阻害剤がSIS3である、体脂肪蓄積抑制剤。
  3. PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなる肥満予防又は改善剤であって、
    PPARγ活性化剤がロシグリタゾンであり、Smad3阻害剤がSIS3である、肥満予防又は改善剤。
  4. PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなる糖尿病予防又は改善剤であって、
    PPARγ活性化剤がロシグリタゾンであり、Smad3阻害剤がSIS3である、糖尿病予防又は改善剤。
  5. PPARγ活性化剤とSmad3阻害剤を組み合わせてなる高脂血症予防又は改善剤であって、
    PPARγ活性化剤がロシグリタゾンであり、Smad3阻害剤がSIS3である、高脂血症予防又は改善剤。
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