JP7262222B2 - 褐色脂肪細胞活性化剤 - Google Patents

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本発明は、褐色脂肪細胞活性化剤に関する。
近年、肥満に悩む者は多く、大きな社会問題となっている。肥満と脂肪には密接な関係がある。哺乳動物の脂肪組織は、その機能と組織学的特性により、白色脂肪組織(white adipose tissue:WAT)と、褐色脂肪組織(brown adipose tissue:BAT)の2つに大きく分類される。白色脂肪組織ではその中に存在する白色脂肪細胞が、余剰エネルギーを中性脂肪(トリアシルグリセロール)の形で貯蔵し、単房性の大きな脂肪滴を形成する。一方、褐色脂肪組織の生理的役割は全く逆で、交感神経の刺激等により、エネルギーを熱として消費・散逸する部位である。褐色脂肪組織には、多房性の脂肪滴や豊富なミトコンドリアを有することを特徴とする褐色脂肪細胞が存在する(非特許文献1、2)。
近年の研究により、褐色脂肪細胞は胎児期から存在する古典的褐色脂肪細胞と、長期の低温刺激等の環境要因によって白色脂肪組織中に出現する誘導性の褐色脂肪様細胞(ベージュ脂肪細胞とも呼ばれる)とに分けられることがわかった。これらは、どちらも多房性の脂肪滴をもち、ミトコンドリアに富み、UCP1等の熱産生に関わる蛋白を発現するなどの共通の特徴をもつが、その発生学的特徴や発現遺伝子プロファイルが大きく異なっていることが明らかとなってきた。さらに、ヒト成人で検出されるBATは、ベージュ脂肪細胞の特色をもつことが報告されている(非特許文献1、2)。
解剖組織学的検討によると、ヒトその他の大型哺乳動物では、乳幼児期などには褐色脂肪細胞が存在するが、成人以降では見いだし難くなるため、ヒト等の大型哺乳動物では、成長するにつれて褐色脂肪細胞が消失し、成人には褐色脂肪細胞が存在しないもしくは極微量しか存在しないという説もあるものの、近年、成人にも代謝活性のあるBATが存在し、寒冷暴露時や食事摂取時の熱産生・エネルギー消費や体脂肪の調節に寄与しており、その機能低下が肥満、例えば加齢に伴う体脂肪蓄積の一因になることが多くの文献より明らかとなっている。また、BAT減少により寒冷誘導熱産生も低下すると、肥満のみでなく体が冷えやすくなるという弊害も出るようになる(非特許文献1、2)。
ここで、褐色脂肪組織は、寒冷刺激による熱産生と深く関与していることが報告されている。例えば、全身のエネルギー消費量を室温27℃の温暖条件で測定すると、体重(特に除脂肪体重)に比例して増えるが、BAT活性化の代表的刺激である寒冷刺激(19℃、2時間)を加えるとさらに増加する。両条件での差を寒冷誘導熱産生(CIT:cold-induced thermogenesis)として算出すると、除脂肪体重とは無関係で、BAT活性と高い正の相関を示し、さらにBAT活性が高い被験者の方が寒冷刺激時の体温の低下が少なかった。以上のことから、寒冷誘導熱産生を測定することで、BAT活性の評価が可能であることが明らかとなった。また、温度刺激以外にもカプサイシン類やカフェイン等の様々な化学物質や痛みといった刺激によっても交感神経が活性化されBAT活性が亢進することも知られている(非特許文献2)。更に、褐色脂肪組織は、安静時代謝量の増加をもたらすことも報告されている(非特許文献4、5)。
現在、BATを増加させたり活性化する試みが行われている。例えば、ワサビ、カプサイシン類、ショウガ、プレニル桂皮酸誘導体等について、褐色脂肪組織の活性化作用があることが報告されている(特許文献4~6、非特許文献2)。褐色脂肪細胞を活性化させる効果のある更なる物質が望まれている。
特許第5229839号公報 国際公開第2010/076879号 国際公開第2009/057756号 特開2016-199481号公報 特開2017-39777号公報 特開2014-65672号公報
Saito M et. al., Diabetes, July (2009), Vol 58, pp. 1526-1531 ここまでわかった燃える褐色脂肪の不思議(2013),斉藤昌之編, NAP Limited Yoneshiro T, Obesity (Silver Spring). 2011 Sep;19(9):1755-60 Yoneshiro T, J Clin Invest. 2013 Aug;123(8):3404-8 Yoneshiro T, Obesity (Silver Spring). 2011 Jan;19(1):13-16 Yoneshiro T et. al., The American Journal of Clinical Nutrition 2017;105:873-81 Symonds ME, et. al. J Pediatr. 2012 Nov;161(5):892-8 中山ら,新規フラボノイド合成法の開発に基づくChafurosideの効率的全合成,天然有機化合物討論会講演要旨集,50巻,451-456頁,2008年9月 新版 茶の機能(2013),公益社団法人日本茶業中央会編,農山漁村文化協会(農文協)
本発明の課題は、新規な褐色脂肪細胞活性化剤の提供にある。
本発明者らは、褐色脂肪細胞の活性化効果が高い物質を得るために鋭意研究した結果、チャフロサイドBを多く含有するベトナム茶葉等の茶葉の褐色脂肪細胞の活性化効果が非常に高いことを発見した。
ウーロン茶、緑茶、焙じ茶、紅茶などの茶葉には、脂肪燃焼効果があることが知られているが、これは、重合カテキン類、テアフラビン類といったカテキン類やカフェインによるものであると考えられている(非特許文献6、特許文献6)。
茶葉に褐色脂肪細胞を活性化する効果があることは知られている。しかし、従来、茶葉の褐色脂肪細胞の活性化作用は、主に重合カテキン類といったカテキン類によるものであるというのが当分野の技術常識である。一方,下記実施例に記載のように本願の茶葉に含まれるカテキン類は少ないため本願発明は非常に驚くべきものである。
本願は、以下の発明を提供する。
(1)チャフロサイドBを有効成分として含有する褐色脂肪細胞活性化剤。
(2)チャフロサイドBが1日あたり10μg~1000μg摂取される量で配合されている(1)に記載の褐色脂肪細胞活性化剤。
(3)茶葉を含有し、前記茶葉1gあたり5μg~500μgのチャフロサイドBが含まれる(2)に記載の褐色脂肪細胞活性化剤。
(4)前記茶葉は、アッサム茶(Camellia sinesis variety assamica)の茶葉からなる又は含む、(3)に記載の褐色脂肪細胞活性化剤。
(5)前記アッサム茶の茶葉は、ベトナムで栽培されたアッサム茶の茶葉からなる又は含む、(4)に記載の褐色脂肪細胞活性化剤。
(6)エネルギーの消費を促進する及び/又は体温低下を抑制するための、(1)~(5)のいずれか1項に記載の褐色脂肪細胞活性化剤。
(7)(1)~(6)のいずれか1項に記載の褐色脂肪細胞活性化剤を含む組成物。
(8)前記組成物が食品組成物である、(7)に記載の組成物。
本発明の褐色脂肪細胞活性化剤は、褐色脂肪細胞を活性化して寒冷誘導熱産生や食事誘導熱産生を増やし、安静時代謝を促進し、全身のエネルギー消費を促進することができる。全身のエネルギー消費が上昇すると、肥満を予防又は抑制することができる。
図1は、実施例3における、茶葉の抽出物摂取から0~120分後の安静時代謝量(REE=resting energy expenditure)の変化を、試験試料摂取時(0時点)におけるベースラインと各時点におけるREEの差であるΔEE(kcal/day)として示す。上図がBAT高活性者(BAT(+))2名、下図がBAT低活性者の(BAT(-))2名のグラフである。■が茶葉の抽出物を摂取した場合、◆がプラセボを摂取した場合である。 図2は、実施例5における、6週間にわたる摂取前後のCIT(kcal/day)の変化を示す。Actは茶葉抽出物摂取群、Plaはプラセボ摂取群の平均を示す。 図3は、実施例5において試験開始時に内臓脂肪面積が90cm2以上であったID10およびID23における6週間にわたる茶葉抽出物摂取前後の腹部の断面写真を示す。図中の線はトレースした腹筋線を表し、これより内側の脂肪組織を内臓脂肪、外側の脂肪組織を皮下脂肪とみなし定量した。 図4は、実施例5における、6週間にわたる摂取前後の寒冷刺激付与時(0分)及び4分後の皮膚温を示す。Activeは茶葉抽出物摂取群、Placeboはプラセボ摂取群の被験者の結果を示す。なお点線部は寒冷刺激による温度上昇が特に激しい部分を示す。 図5は、実施例7における、ベトナム茶葉抽出物単回摂取から2時間の間にわたり排出された全尿中の総ノルアドレナリン量を示す。図のActは茶葉抽出物摂取群、Plaはプラセボ摂取群の平均を示す。 図6は、実施例9における、チャフロサイドB単回摂取から2時間の間にわたり排出された全尿中の総ノルアドレナリン量を示す。図のChaBはチャフロサイドB摂取群、Plaはプラセボ摂取群の平均を示す。
本発明において褐色脂肪細胞とは、胎児期に形成される古典的褐色脂肪細胞および白色脂肪組織中に分化誘導される褐色脂肪様細胞(ベージュ脂肪細胞又はブライト細胞と呼ぶこともある)の両方を指す。つまり、本発明では、狭義の古典的褐色脂肪細胞のみならず、白色脂肪組織中に誘導された褐色様の脂肪細胞も褐色脂肪細胞と呼ぶ。また、白色脂肪組織中に誘導される褐色様の脂肪細胞を特にベージュ脂肪細胞または褐色脂肪様細胞と呼ぶこともある。
白色脂肪細胞は、単房性の大型な脂肪滴を有し細胞質が少ない。一方、褐色脂肪細胞は、小型の多房性脂肪滴を有し、この多房性脂肪滴の周りに多数のミトコンドリアが存在して、そのため特有の褐色を帯び、交感神経や血管が豊富であるという形態学的・組織学的な特徴を持つ。従って、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞は、形態学的・組織学的に細胞を観察することにより区別できる。また、白色脂肪はエネルギーを貯蔵するが褐色脂肪細胞はエネルギーを熱として消費・散逸するという違いがある。また、褐色脂肪細胞は白色脂肪細胞よりもエネルギーの代謝が高く、エネルギーを熱として放出するためにグルコースの取込みが増加する。したがって、褐色脂肪細胞の存在は、例えば、18Fで標識したグルコースの集積をPET(陽電子放射断層撮影)で測定することにより評価できる。さらに、褐色脂肪細胞では、UCP1(uncoupling protein 1)mRNAの発現やUCP1タンパク質を測定することにより褐色脂肪細胞の存在を確認できる。更に、褐色脂肪細胞は寒冷刺激により活性化されるので、寒冷誘導による熱産生を測定することでも評価できる。また、エネルギー消費量は、例えば、メタボリックチャンバーや簡易呼気分析装置などによる測定値からO2消費量やCO2排出量をもとに算出することによって評価できる。さらに、上述のように、BATの存在がCITと正の相関を示すことにより、CITを測定することによっても評価できる。また、下記に詳述するように、褐色脂肪細胞は各種刺激による交感神経の亢進により活性化されるため、例えば、摂取後の生体試料、例えば尿、におけるノルアドレナリンを始めとするカテコールアミン量等の交感神経活動の指標となるバイオマーカーの量/濃度/発現等を測定すること等によっても評価できる。
本願において、褐色脂肪細胞の活性化とは、白色脂肪組織中に褐色脂肪様細胞(ベージュ細胞)が分化誘導されることを促進する作用、及び/又はベージュ脂肪細胞や褐色脂肪細胞におけるエネルギー消費を促進する作用のことを言う。褐色脂肪細胞の活性化は、特に、ベージュ脂肪細胞や褐色脂肪細胞における代謝を上げること、エネルギー消費を促進すること、脂肪酸を熱エネルギーに変換することもある。脂肪酸から熱エネルギーへの変換はUCP1により行われることもある。
ヒト等の動物における褐色脂肪を活性化する有効で生理的な条件として寒冷暴露があげられる。寒冷刺激の受容体は、温度受容体(transient receptor potential:TRP)チャネルであり、この刺激情報は感覚神経を介して脳に伝えられ、視床下部→交感神経→βアドレナリン受容体を介して褐色脂肪を活性化させる。このTRPチャネルには多くの分子種があり、また温度以外にも様々な化学物質や痛み刺激によっても活性化される。TRPチャネルに対するアゴニスト活性を持ち、交感神経を活性化する唐辛子由来のカプシノイドやショウガ由来のパラドールが、ヒトの褐色脂肪を活性化し、エネルギー消費を増加させることが報告されている(非特許文献2)。
褐色脂肪細胞活性化剤とは、上述のような褐色脂肪細胞の活性化作用を有する物質を指す。上述のように、褐色脂肪細胞の活性化は、褐色脂肪細胞の存在を測定すること、エネルギー代謝量を測定すること、UCP1 mRNA発現やUCP1タンパク質を測定すること、組織学的に細胞を観察すること、18F標識グルコースの集積をPETで測定すること、寒冷誘導熱産生を測定すること、交感神経の活性亢進を測定すること等で評価できる。また、白色脂肪組織中に褐色脂肪様細胞(ベージュ脂肪細胞)が分化誘導されることを特に褐色脂肪細胞の再活性化と呼ぶこともある。
本発明の褐色脂肪細胞活性化剤は、熱産生によるエネルギーの代謝を促進し得る。エネルギーの代謝には、基礎代謝によるもの、運動によるもの、日常の生活活動によるもの、そして熱産生によるものがある。熱産生によるエネルギー消費は、身体が急激な温度変化に対応し得るためのもので、例えば寒冷刺激により上昇する。実際、鎖骨上のBATと寒冷刺激による皮膚温度が上昇する部位が一致しているため、褐色脂肪細胞の活性化をサーマルイメージングにより測定できることが示されている(非特許文献7)。また、食事摂取により熱産生を増やすことや、感染や炎症などに対抗すべく発熱するために熱産生することも知られている。従って、本願において、熱産生によるエネルギー消費とは、基礎代謝や筋肉運動等によらない、寒冷刺激や食事摂取等に対応する熱産生のために消費される代謝性のエネルギー消費のことをいう。本願の褐色脂肪細胞活性化剤は、特に、交感神経を刺激することによりベージュ脂肪細胞や褐色脂肪細胞における熱産生を上昇させてエネルギーの代謝を促進することもある。このような熱産生は、脂肪酸を熱エネルギーに変換することにより起こることもあり、脂肪酸から熱エネルギーへの変換はUCP1により行われることもある。本発明の褐色脂肪細胞活性化剤は、褐色脂肪組織におけるエネルギー代謝を高めることもあり、UCP1の発現を亢進させることもある。
本願において、寒冷誘導熱産生(CIT:cold-induced thermogenesis)とは、対象が温度の低下した外気に暴露されたときに,熱を生産することをいう。上述のように、動物は、外気の温度が低下すると、体内の温度を維持するために交感神経が刺激されて熱を産生する。褐色脂肪組織は、このような寒冷刺激に応答して熱を生産する役割を有することが報告されている(非特許文献1~5)。本願の褐色脂肪細胞活性化剤は、このような褐色脂肪組織における寒冷誘導熱産生によるエネルギーの代謝を促進し得る。
本願において、食事誘導熱産生(DIT:diet-induced thermogenesis)とは、対象が食事を摂ることにより、熱を生産することをいう。この食事摂取により味覚等の感覚神経が刺激されて交感神経が刺激されることや食品を消化吸収するため等の理由で、エネルギーが消費され体温が上昇する。ここで、褐色脂肪組織はDITと深く関与していることが分かってきた(非特許文献2)。本願の褐色脂肪細胞活性化剤は、このような褐色脂肪組織における食事誘導熱産生によるエネルギーの代謝を促進し得る。
本願において、安静時代謝とは、安静時に消費されるエネルギーのことである。安静時代謝量(resting energy expenditure (REE))は、安静座位又は仰臥位にて測定される。褐色脂肪組織は、安静時代謝量の増加をもたらすことが報告されている(非特許文献4、5)。本発明の褐色脂肪細胞活性化剤は、安静時代謝を促進し得る。
本願において、茶葉とは摘採後の茶の葉を乾燥したものを指し、発酵、釜炒り、蒸熱、粗揉、揉稔、中揉、精揉、火入れなどの処理が施されていてもいなくてもよい。茶葉の形態は、乾燥した状態の茶葉そのものであってもよく、破砕、切断、細切、臼挽、粉砕などを行ってもよく、抽出物の形態で用いてもよい。例えば、茶葉は、特許文献1に記載の方法により製造できる。乾燥後の茶葉の水分含有量は、例えば、特許文献1に記載の方法による計算式で乾燥前の茶葉に対し0.1~20%、0.5~15%、1.0~10%、あるいは、1.0~2.0%、2.0~3.0%、3.0~4.0%、4.0~5.0%、5.0~6.0%、6.0~7.0%、7.0~8.0%、8.0~9.0%、9.0~10.0%(質量%)の範囲内にあってもよい。また、茶葉は、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶いずれであってもよく、ウーロン茶、緑茶、焙じ茶、紅茶など各種を含み限定されない。
茶葉の生産地や品種も限定されない。茶葉は、例えば、アッサム茶(ツバキ科ツバキ属アッサム種:camellia sinesis variety assamica)といったツバキ科ツバキ属(camellia sinesis)の茶葉からなってもよく又は含んでもよい。ある実施形態では、本発明の茶葉はアッサム茶(camellia sinesis variety assamica)の茶葉からなる又は含む。ある実施形態では、本発明の茶葉はベトナム茶葉からなる又は含む。
本明細書においてベトナム茶葉は、ベトナムで栽培されたアッサム茶(ツバキ科ツバキ属アッサム種:camellia sinesis variety assamica)の茶葉を指す。なお、原料の茶の木を育成する場所はベトナムであるものの、乾燥茶葉へと加工製造する場所は問わない。ベトナム茶葉は、ツバキ科ツバキ属アッサム種のうちPH種と呼ばれるベトナムの国家種として認定されたものであってもよい。また、ベトナム茶葉は、従来から飲料や食用として多く用いられており安全性の面でも好ましい。また、下記に詳述するように、本実施例で用いたベトナム茶葉は、通常の茶葉に比べチャフロサイドBの含有量が高く、通常の茶葉に比べカテキン類は少ない。
チャフロサイド(chafuroside)は、ウーロン茶、緑茶、焙じ茶、紅茶などの茶葉に微量に含まれるフラボンC配糖体であり、チャフロサイドA、Bが同定されている。以下にチャフロサイドBの構造を示す。チャフロサイドには、抗アレルギー、発ガン抑制、抗炎症等の効果があることが知られている(特許文献1~3、非特許文献9)。チャフロサイドは、特許文献1、9に記載のような方法で茶などの天然物から得てもよく、非特許文献8、9に記載のような方法で合成してもよい。
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茶葉の抽出物とは、茶葉に溶媒抽出などの抽出処理を施した抽出物を指す。抽出方法は任意であるが、溶媒抽出の場合、茶葉を、必要に応じて細断又は粉砕した後、水性抽出剤、例えば特定温度の水、あるいは含水有機溶媒、有機溶媒、極性溶媒、例えばメタノール、エタノール、1,3-ブタンジオール、エーテル等を用いることにより抽出される。
しかし、抽出方法は溶媒抽出に限定されず、当業界で知られている常用の手法によってもよい。また、本願の効果を損なわない限り、抽出液にアスコルビン等の抗酸化物、炭酸カリウム等のカリウム製剤、乾燥助剤、その他の添加剤を使用してもよい。抽出物の形態も、抽出液そのもの、常用の手法による希釈又は濃縮物、乾燥により得られる粉状あるいは塊状の固体であってもよい。
本発明に使用する茶葉はチャフロサイドBを含み得る。チャフロサイドBの含有量は、茶葉の種類、茶葉の生育条件、採取時期、製造方法等などにより異なるものの、茶葉1g(乾燥質量)あたり、5~500μg/g、10~400μg/g、50~200μg/g、あるいは10μg/g、20μg/g、30μg/g、40μg/g、50μg/g、60μg/g、70μg/g、80μg/g、90μg/g、100μg/g、110μg/g、120μg/g、130μg/g、140μg/g、150μg/g(質量)以上含有される場合がある。ここで、本発明において使用するベトナム茶葉等の茶葉は、茶葉1g(乾燥質量)あたり、50~500μg/g、60~300μg/g、70~200μg/g、あるいは50μg/g、60μg/g、70μg/g、80μg/g、90μg/g、100μg/g、110μg/g、120μg/g、130μg/g、140μg/g、150μg/g(質量)以上含有する場合もある。
本発明において、例えば、体重60kgのヒトでは、1日あたり、10~1000μg、例えば、10~500μg、20~400μg、30~300μg、40~200μg、50~200μg、50~100μg、又は50~80μg(質量)、あるいは10μg、20μg、30μg、40μg、50μg以上(質量)のチャフロサイドBを摂取してもよい。
本発明の褐色脂肪細胞活性化剤又は組成物における茶葉の含有量は特に限定されず、例えば、0.1~100%、1~90%、10~80%、20~70%、30~60%(質量)等、用途、剤型、投与法、投与回数等により適宜決定できる。
また、本発明は、本発明の褐色脂肪細胞活性化剤の製造方法も提供する。本発明の褐色脂肪細胞活性化剤の製造方法は、褐色脂肪細胞活性化剤の有効成分として茶葉、例えばベトナム茶葉を用いること、及び/又は、例えば特許文献1に記載のように茶葉を撹拌しながら加熱すること、及び/又は、茶葉から抽出物、好ましくはチャフロサイドBを抽出すること、及び/又は、非特許文献8、9等に記載の方法でチャフロサイドBを合成することを含んでもよい。非特許文献8、9等に記載のように、通常の茶葉に含まれるチャフロサイドの量は微量であるため、茶葉を使用する場合、チャフロサイドBの含有量が高い茶葉を用いること、及び/又はチャフロサイドBの含有量が高くなるような方法で茶葉を製造することが好ましい。
更に、上述のように、褐色脂肪細胞を活性化することにより体温低下が抑制及び/又はエネルギー消費が促進されるため、本発明の褐色脂肪細胞活性化剤又は組成物は、エネルギーの消費を促進する及び/又は体温低下を抑制するためのものであってもよい。
本発明の褐色脂肪細胞活性化剤又は組成物は、以下の実施例にて示すように単回投与でも連続投与でも効果があることが実証されているため、投与回数は限定されない。投与方法も限定されない。例えば、本発明の褐色脂肪細胞活性化剤を経口摂取製剤として配合する場合には、必要に応じて添加剤を任意に選択し併用することができる。さらに、本発明の効果を高めるために、他の褐色脂肪細胞活性化剤等を併用してもよい。
また、本発明の褐色脂肪細胞活性化剤および組成物は、必要に応じて、例えば、賦形剤、着色剤、保存剤、増粘剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、安定化剤、ゲル化剤、酸化防止剤、界面活性剤、保存剤、pH調整剤、油分、粉末、色材、水、アルコール類、増粘剤、キレート剤、シリコーン類、酸化防止剤、紫外線吸収剤、保湿剤、香料、各種薬効成分、防腐剤、pH調整剤、中和剤等、公知のものを適宜選択して使用できる。
本発明の組成物は、粉末、お茶や清涼飲料水などの飲料、サプリメントなどの錠剤、加工食品、嗜好品、調味料、乳製品、油脂加工品等であってもよく、粉末状、液状、固形状、顆粒状、粒状、ペースト状、ゲル状等の様々な形態であり得る。本発明の組成物は、食品組成物であってもよい。
本発明の褐色脂肪細胞活性化剤は、白色脂肪組織中に褐色脂肪様細胞(ベージュ細胞)を分化誘導すること、及び/又はベージュ脂肪細胞や褐色脂肪細胞を活性化し、特に熱産生による全身のエネルギー消費を促進するというアプローチにより代謝を促進することで、肥満を予防及び/又は抑制することができる。従って、肥満に起因する疾患の治療及び/又は予防にも有効である。また、褐色脂肪細胞を活性化させ、寒冷誘導熱産生を増やすことで身体が冷えるのを防いだり、食事誘導熱産生を増やすことで、食事によるエネルギー代謝を亢進させることもできる。
次に実施例によって本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。
実施例1:試料の調製
ベトナムで栽培されたツバキ科ツバキ属アッサム種(camellia sinesis variety assamica)PH種の乾燥茶葉(水分含量:4.34重量%)を用いて抽出物を調製した。ベトナム茶葉を、炭酸カリウムを添加した熱水により110±3℃で60分間抽出した。乾燥茶葉1gに対し約0.5g(重量)の抽出物が得られ、収量は約50%であった。また、チャフロサイドBの含有量をLC/MS/MS(SCIEX社 4000Q TRAP)より測定したところ、抽出物1gあたり134μg/g(重量)であった。
プラセボは、茶葉抽出物の代わりにデキストリンを使用した。
実施例2:寒冷刺激によるヒトBAT活性の評価
寒冷誘導熱産生(CIT)を測定することでBAT活性を評価した。被験者は30~40歳の男性4名であった。被験者は、6~12時間の絶食後、薄着(Tシャツ、短パン)に着替えてもらい室温27℃の部屋で30分安静に過ごし27℃の状態に順化させた後、ポータブルガスモニターAR-10 Type4(アルコシステム)と専用の仰臥位フードを用いて20分間呼気分析を行い安静時代謝量(REE=resting energy expenditure)を測定した。REEは、既報(非特許文献5)を参考に、付属のソフトを用いて、測定開始10分後以降で5分間以上数値が安定した部分の平均値として求めた。その後、室温19℃の部屋にて2時間安静に過ごし寒冷刺激を与えた後、同様にREEを測定した。
寒冷刺激を与える前に比べて寒冷刺激を与えた後に増加したREEの差分をCIT(kcal/day)とした。CITが150cal/day以上の2名の被験者を高活性者とし、150kcal/dayより低い2名の被験者を低活性者としてBAT低活性およびBAT高活性群の2郡に選別した。
実施例3:茶葉抽出物の単回投与がBAT低活性者およびBAT高活性者の代謝量に及ぼす作用
上記の方法で選別したBAT低活性群とBAT高活性群を対象に、単回クロスオーバー試験により、茶葉抽出物の安静時代謝量に対する作用を検討した。
実施例2の測定とは別の日に、各群の茶葉抽出物の摂取前後のREEを測定した。被験者は、実施例2と同じ男性4名である。被験者は、上記と同様6~12時間の絶食後、薄着(Tシャツ、短パン)に着替えてもらい室温27℃の部屋で30分安静に過ごし27℃の状態に順化させた後、REEを測定しこれをベースラインとした。REEの測定は実施例2と同じ装置および方法を用いた。
ベースライン測定後、被験者は50μgのチャフロサイドBを含有するベトナム茶葉抽出物を摂取し、10分間安静に過ごしてもらい、その後、20分間REEを測定した。この測定は、摂取10分~30分後、摂取40分~60分後、摂取70分~90分後、および摂取100分~120分後に、各20分間ずつ計4回行った。1~2週間のウォッシュアウト後、各被験者は同様な手順で、REEのベースラインおよびプラセボ摂取10分~120分後までの変動も同様に測定した。
結果は、茶葉抽出物又はプラセボ摂取から0~120分後のREEの変化を、摂取時(0時点)におけるベースラインと各時点におけるREEの差であるΔEE(kcal/day)として図1に示す。図1より、BAT高活性群(上図)ではベトナム茶葉抽出物を摂取すると、プラセボ摂取に比べ摂取後のREEが高いことがわかった。BAT高活性群では、茶葉抽出物摂取は、プラセボ摂取に比べ、ΔEEが高い、つまり、エネルギー消費が高いことが分かる。一方、BAT低活性群(下図)ではそのような効果はみられなかった。
以上の結果により、褐色脂肪細胞の活性が高い個体に投与した場合、単回投与であっても0.5~1時間後にはエネルギー消費がプラセボに比べ促進されていたため、ベトナム茶葉抽出物やチャフロサイドBは、褐色脂肪細胞におけるエネルギー消費に対し即効性があることが示唆される。
実施例4:PETによるヒトBAT活性の評価
PET(Positron Emission Tomography、陽電子放射断層撮影)を用いて褐色脂肪細胞の活性化を評価した。フッ素の放射性同位元素(18F)で標識した非代謝性FDG(フルオロデオキシグルコース)を利用して、PETにより糖の利用を可視化することでBATの活性の程度が評価できる(非特許文献1~5)。また、寒冷刺激は、褐色脂肪を活性化して、寒冷誘導熱産生を増加させる。そこで、健康な成人を対象として、低温負荷により寒冷刺激を与えた後でFDG(2-fluoro-2-deoxyglucose)-PETにより褐色脂肪組織の代謝活性を評価した。評価は、非特許文献1に記載の方法に基づいて行った。
被験者は20~50歳代の健康な成人男性である。被験者は6~12時間の絶食後に、低温負荷をかけた。すなわち、Tシャツと短パン等の薄着となり、室温19℃に管理された部屋で椅子に座り、5分間に2~3分間程度の頻度で間歇的にタオルを巻いた氷ブロックの上に足を置いた。
この条件で1時間経過した後、18F-FDG(1.7~5.4MBq/kg体重)を静脈注射し、更に同じ寒冷暴露を継続した。18F-FDG注射から1時間後、24℃の部屋で、PET/CTシステム(Aquiduo、東芝メディカルシステム、栃木)を用いて約30分間の全身スキャンを行った。CTのパラメータは、管電圧120kV、可変管電流制御システム、造影剤不使用低線量CTとし、axial面、スライス厚2mmの並行画像を得た。
ヒトのBATは主に鎖骨上部、頸部脊椎周囲等に局在し、これらの局在部位から遠い抹消部などでは褐色脂肪組織は非常に少ない(非特許文献1~7)。よって、肩部位へのFDG集積を定量的に評価するために、肩周辺を関心領域とし、SUV(standardised uptake values)を以下の式のように算出した。SUVとは、画像で計測される放射能濃度を投与量と体重で補正した定量値のことであり、PET等において放射性薬剤の腫瘍や臓器への集積の強さを表すための指標となる。具体的にはSUVは以下の式で求める。
SUV(組織放射能[Bq/g]/投与量[Bq/g体重])=画像で測定した臓器の放射能濃度(Bq/g)÷(放射能投与量÷体重)
関心領域における1ピクセル当たりのSUV最大値をSUVmaxとした。このSUVmaxの値をもとに、SUVmaxが3.7より低い被験者をBAT低活性者として26名を選抜した(平均SUVmax1.31)。
実施例5:茶葉抽出物の連続投与によるBAT低活性者に及ぼす作用
5-1:BAT低活性者の選別
BATの活性が低いヒトでも、寒冷刺激等の継続的な処置により、BATの再活性化・増量することが可能で、これにより体脂肪の減少をもたらすことが報告されている(非特許文献4)。よって、BAT低活性者でもベトナム茶葉抽出物を連続的に投与することにより、BATを再活性化できるかについて調べた。実施例4で選抜した被験者BAT低活性者26名(ID1~ID26)を、体組成、腹囲、BDHQによる食事習慣に偏りがないよう12~14名からなる2郡に分け、それぞれ茶葉抽出物投与群およびプラセボ投与群とした。
5-2:CITの測定
茶葉抽出物又はプラセボ摂取前に各被験者のCITを実施例2と同様に測定した。
5-3:PET-CTによる皮下脂肪および内臓脂肪の測定
さらに、試験開始時に内臓脂肪面積が90cm2以上であった茶葉抽出物投与群の2名は、実施例4と同じ方法および装置を用いて、腹部の断面写真を撮影し、付属のソフトウエアを用いて画像解析して皮下脂肪、内臓脂肪、及び全体脂肪の面積を算出した。
5-4:寒冷刺激による皮膚温の変化の測定
寒冷刺激による、鎖骨上部、頸部脊椎周囲等の褐色脂肪細胞が局在する部分の発熱はBAT活性に関連することが知られている(非特許文献7)。そこで、茶葉抽出物投与群から4名及びプラセボ投与群から4名に対し寒冷刺激を与え、その前後の皮膚温の変化を非特許文献7に記載の方法と同様の方法でサーマルイメージングカメラにより測定した。
具体的には、被験者は6~12時間の絶食後に、低温負荷をかけた。すなわち、室温20℃湿度45%のモニター室で30分安静に過ごし順化させた。その後、サーモカメラによる撮影が可能なように、被験者は頭、首、肩が出る服に着替えた後、20℃の状態で7分間座位で安静に過ごした後、鎖骨を含む肩部の皮膚温をサーマルイメージングカメラ(日本アビオニクス社製InfReC R300SR)にて測定しこれをベースラインとした。ベースライン測定度、19度の冷水に片手を入れることにより寒冷刺激を与え、寒冷刺激直後(0分)、1分後、2分後、3分後、4分後、5分後、6分後、7分後の皮膚温を測定した。
5-5:投与方法
実施例1の方法で製造した茶葉抽出物又はプラセボを1日4粒投与し、茶葉抽出物摂取群のみにチャフロサイドBが1日当たり50μg摂取されるようにした。この投与は6週間にわたり毎日行った。
上記投与開始から6週間後、上述と同じ被験者及び方法で、PET撮影、寒冷刺激によるCIT/皮膚温変化、皮下/内臓脂肪の測定を行った。
5-6:結果
図2は、5-2の結果である、6週間にわたる投与前後のCITの変化を示す。二元配置分散分析(対応あり)およびpaired t検定の結果、プラセボ投与群では投与前後でCITに有意な変動はみとめられなかったが、茶葉抽出物投与群では6週後にCITの有意な増加がみとめられた(p=0.021)。これより、BAT低活性者であっても、6週間の投与により寒冷誘導熱産生によるCITが有意に増加していたことがわかる。
図3は、5-3の結果である茶葉抽出物投与群2名の腹部の断面写真を示す。ID10の全体脂肪面積、及び内臓脂肪面積、並びにID23の皮下脂肪、内臓脂肪、及び全体脂肪の面積が小さくなっていることがわかる。茶葉抽出物の投与により、内臓脂肪面積がID10では約73%、ID23では約79%にも減少していた。
図4は、5-4の結果である投与前後の皮膚温の変化を示す。プラセボ摂取群では投与前後でCITや皮膚温に大きな増加は見られなかったが、茶葉抽出物摂取群では皮膚温の大幅な増加が認められた。よって、BAT低活性者であっても、茶葉抽出物を6週間にわたり投与すると、BAT部分のエネルギー代謝(熱産生)が有意に促進されていたことが示唆される。
以上の結果により、BAT低活性者であっても、ベトナム茶葉抽出物を6週間にわたり投与すると、褐色脂肪細胞が徐々に増え、BATが再活性化・増量し、結果として褐色脂肪細胞の活性が高くなると考えられる。また、寒冷誘導による熱産生は、摂取前は低かったものの、ベトナム茶葉抽出物の摂取により寒冷誘導熱産生によるエネルギーの消費が促進されたことも分かる。さらには、ベトナム茶葉抽出物を投与し続けると、皮下脂肪および内臓脂肪も減少していたことも分かる。
従って、本願の褐色脂肪細胞活性化剤を摂取することにより、白色脂肪組織中に褐色様脂肪細胞(ベージュ脂肪細胞)を分化誘導するとともに、褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞を活性化して、寒冷誘導熱産生を増やし、全身のエネルギー消費を促進することにより、脂肪量を減少させひいては肥満を解消すること、並びにエネルギー代謝(熱産生)を上げることで身体の冷えを予防・改善することが示された。
実施例6:ベトナム茶葉抽出物のカテキン含量
上記実施例において示されたベトナム茶葉抽出物の褐色脂肪細胞活性化作用は、従来から知られているようにカテキン類によるものである可能性も考えられる。そこで、本実施例にて使用したベトナム茶葉抽出物に含まれるカテキン含量を確認した。対照として、一般的に飲用されている緑茶であるやぶきた茶(Camellia sinensis variety sinensis ‘Yabukita')を用いた。具体的には、マルカブ佐藤製茶株式会社製のやぶきた茶の乾燥茶葉(水分含量:3.4重量%)を90℃の熱水により常圧で50分間抽出した抽出物を使用した。やぶきた茶の乾燥茶葉1gに対し約0.24g(重量)の抽出物が得られ、収量は約24%であった。
カテキン類の含量は株式会社島津製作所のLC-2010A HTを用いたHPLCにより測定した。
結果を下記表1に示す。
Figure 0007262222000002
表1より、本実施例において使用したベトナム茶葉は対照と比較してカテキン類の含有量が非常に少ないことがわかった。また、非特許文献8、9等に記載のように、通常の茶葉に含まれるチャフロサイドの量は微量である。本願実施例で用いたベトナム茶葉は、通常の茶葉に比べて大量のチャフロサイドBを含有する一方カテキン類の含有量は少ないことを鑑みると、上記褐色脂肪細胞の活性化/再活性化効果はベトナム茶葉に多く含まれるチャフロサイドBによるものと考えられる。よって、以下の実験を行いチャフロサイドBの効果を検証した。
実施例7:ベトナム茶葉抽出物単回摂取後の尿中のカテコールアミン測定
交感神経が活性化されるとノルアドレナリンの放出が促進されるため、交感神経活動の指標として尿中のノルアドレナリン量を測定した。被験者は30~50歳の健康な男性4名であった。被験者は、6~12時間の絶食後、室温25~27℃の部屋で30分安静に過ごした後、1度排尿した。試料は、800mgあたり100μgのチャフロサイドBを含有するように調製した以外は、実施例1と同様の茶葉・方法でベトナム茶葉を抽出して製造したベトナム茶葉抽出物を使用した。被験者は800mgのベトナム茶葉抽出物(チャフロサイドB100μg含有)を摂取し、120分間安静に過ごしてもらい、摂取から120分の間に排出された全尿を採取した。1~2週間のウォッシュアウト期間をはさみ、各被験者は同様な手順で、プラセボ(400μgデキストリン)を摂取し、摂取から120分の間に排出された全尿を採取した。採取した尿は直ちに凍結し、株式会社LSIメディンス(東京都千代田区内神田一丁目13番4号)に委託して、ノルアドレナリン量を測定した。
実施例8:チャフロサイドBの合成
チャフロサイドBの化学合成は、既報(非特許文献8)に従い実施した。合成したチャフロサイドは、LC/MS(島津)で分析を行い、純度96.9%であることを確認した。
実施例9:チャフロサイドB単回摂取後の尿中のカテコールアミン測定
被験者は30~50歳の健康な男性4名であった。被験者は、6~12時間の絶食後、室温25~27℃の部屋で30分安静に過ごした後、1度排尿した。被験者は実施例8で製造した100μgのチャフロサイドBと300μgデキストリン(HBD-20、松谷化学工業株式会社)を摂取し、120分間安静に過ごしてもらい、摂取から120分の間に排出された全尿を採取した。1~2週間のウォッシュアウト期間をはさみ、各被験者は同様な手順で、プラセボ(400μgデキストリン)摂取から120分の間に排出された全尿を採取した。採取した尿は直ちに凍結し、株式会社LSIメディンスに委託して、ノルアドレナリン量を測定した。
実施例7の結果を図5に、実施例9の結果を図6に示す。図5より、ベトナム茶葉抽出物(チャフロサイドB100μg含有)を摂取すると、プラセボ摂取に比べ、尿中のノルアドレナリン量が有意に高いことがわかった。同様に図6より、100μgのチャフロサイドBを摂取しても、プラセボ摂取に比べ摂取後の尿中のノルアドレナリン量が有意に高いことがわかった。さらに、図5および図6より、ベトナム茶葉抽出物(チャフロサイドB100μg含有)と100μgのチャフロサイドB摂取後の尿中のノルアドレナリン量は、ほぼ同程度であることがわかった。
実施例7,9の結果により、チャフロサイドBの単回摂取が、同量のチャフロサイドBを含むベトナム茶葉抽出物の単回摂取後と同程度尿中のノルアドレナリン量を増加させたことがわかった。よって、ベトナム茶葉に含まれるチャフロサイドBと化学的に合成したチャフロサイドBのいずれも同様に交感神経を活性化しノルアドレナリンの放出を促進すると考えられ、チャフロサイドBには、交感神経を活性化し、ノルアドレナリンの放出を介して、ヒト等の動物の褐色脂肪を活性化し、エネルギー消費を増加させる効果があることが示唆される。更に、実施例3,実施例5等で確認されたベトナム茶葉の褐色脂肪細胞活性化/再活性化効果もベトナム茶葉に含まれるチャフロサイドBによるものであることが示唆される。
以上、本発明の実施の形態について説明してきた。しかしながら、本発明はこれらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。

Claims (5)

  1. チャフロサイドBを有効成分として1日あたり10μg~1000μg摂取される量で含有する褐色脂肪細胞活性化剤であって、
    前記褐色脂肪細胞活性化剤は、茶葉を含有し、前記茶葉1gあたり5μg~500μgのチャフロサイドBが含まれ、
    前記茶葉は、アッサム茶(Camellia sinesis variety assamica)の茶葉からなる又は含む、褐色脂肪細胞活性化剤。
  2. 前記アッサム茶の茶葉は、ベトナムで栽培されたアッサム茶の茶葉からなる又は含む、請求項1に記載の褐色脂肪細胞活性化剤。
  3. エネルギーの消費を促進する及び/又は体温低下を抑制するための、請求項1又は2に記載の褐色脂肪細胞活性化剤。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の褐色脂肪細胞活性化剤を、チャフロサイドBが1日あたり10μg~1000μg摂取される量で含有する、褐色脂肪細胞活性化用組成物。
  5. 前記組成物が食品組成物である、請求項4に記載の組成物。
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