JP6551296B2 - サスペンションシステム - Google Patents

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Description

本発明は、車体と車輪保持部材との間に設けた油圧シリンダの油圧により車高を調整する車高調整機能を備えたサスペンションシステムに関する。
従来から、例えば、特許文献1に提案されているように、車体と4輪の車輪保持部材との間に設けた油圧シリンダ(ショックアブソーバ)の油圧を制御して車高を調整するサスペンションシステムが知られている。各輪の油圧シリンダは、個別制御通路を介して作動油給排装置に接続されている。このサスペンションシステムにおいては、個別制御通路を開閉する個別制御バルブおよび作動油給排装置を制御して、各油圧シリンダに作動油を供給することにより車高を上昇させ、各油圧シリンダから作動油を排出させることにより車高を下降させる。
また、各油圧シリンダには、それぞれ、ばね定数の大きい高圧アキュムレータと、ばね定数の小さい低圧アキュムレータとが連通されている。油圧シリンダと低圧アキュムレータとを連通する通路には、両者の連通を許容する状態と遮断する状態とに切り替え可能なばね切替バルブが設けられている。従って、ばね切替バルブの開閉によってホイールレートを切り替えることができる。
このサスペンションシステムにおいては、通常走行時においては、油圧シリンダに高圧アキュムレータと低圧アキュムレータとが連通されて(ばね切替バルブ:開)ホイールレートが小(ソフト)に設定される。また、急旋回時および急加減速時においては、油圧シリンダと低圧アキュムレータとの連通が遮断されて(ばね切替バルブ:閉)ホイールレートが大(ハード)に設定される。尚、ホイールレートとは、ホイール位置におけるばね定数のことであり、車輪の接地荷重の変化とその車輪における車体とホイールセンターとの上下距離の変化(ホイールトラベル)の比、すなわち、単位ホイールトラベルを生じさせるのに必要なその車輪の接地荷重変化量を表す。
特開2008−168861号公報
上記のシステムでは、車高を上昇させる場合、油圧シリンダに作動油を供給することにより油圧シリンダ内の油圧を増加させてピストンロッドを上昇させるが、このとき、低圧アキュムレータおよび高圧アキュムレータにも同時に作動油が供給される。このため、車高を上昇させるために必要となる作動油量が多く、これに伴って、車高を上昇させるために必要な時間が長くなる。
そこで、本願出願人は、油圧シリンダの作動油の給排と、低圧アキュムレータの作動油の給排とを独立して行うことができる新しいサスペンションシステムを考えた。この新しいサスペンションシステムにおいては、個別制御バルブおよびばね切替バルブをバイパスして低圧アキュムレータと作動油給排装置とを連通させるバイパス通路、および、バイパス通路を開閉するバイパスバルブを備えている。従って、バイパスバルブおよびばね切替バルブを閉弁した状態で作動油給排装置から油圧シリンダに作動油を供給することにより、低圧アキュムレータへの作動油の供給を伴わずに車高を上昇させることができる。
このようにして車高を上昇させた状態から、ばね切替バルブを開弁すると、油圧シリンダと低圧アキュムレータとが連通して、両者の差圧によって両者間を作動油が移動して車高が変動してしまう。そこで、この新しいシステムにおいては、車高上昇が完了した後、個別制御バルブおよびばね切替バルブを閉弁させた状態でバイパスバルブを開弁して、低圧アキュムレータの油圧が油圧シリンダの油圧と等しくなるように、作動油給排装置から低圧アキュムレータに作動油を供給する。これにより、それ以降、ばね切替バルブを開弁しても車高が変化してしまうことを防止できる。
しかし、新たに追加したバイパスバルブの故障検出を適正に行う必要がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、バイパスバルブの故障を適正に検出することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、
車両の左右前後輪のそれぞれにおいて車輪保持部材と車体との間に設けられ、作動油を収容して前記車輪保持部材と前記車体との間の距離変化に合わせて伸縮する油圧シリンダ(20)と、
前記左右前後輪の各油圧シリンダに対応して設けられ、第1ガス室と、前記油圧シリンダに連通する第1油室とを区画して備え、前記油圧シリンダの油圧に応じて前記第1油室に収容される作動油の量が変化して油圧系のばねとして機能する第1ガスばね(31)と、
前記各油圧シリンダに対応して設けられ、第2ガス室と、前記油圧シリンダに連通する第2油室とを区画して備え、前記油圧シリンダの油圧に応じて前記第2油室に収容される作動油の量が変化して油圧系のばねとして機能する第2ガスばね(32)と、
前記各油圧シリンダに対応して設けられ、前記油圧シリンダと前記第2ガスばねとの連通を許容する状態と遮断する状態とに切り替え可能なばね切替バルブ(62)と、
前記各油圧シリンダに対して作動油の供給および排出を行うための作動油給排装置(70)と、
前記作動油給排装置に接続され作動油の流れる流路となる給排元通路、および、前記給排元通路の開閉を行う元バルブを有する給排油圧制御回路(54,64)と、
前記各油圧シリンダに対応して設けられ、前記油圧シリンダのそれぞれと前記給排元通路とを連通させる作動油の流路である車高調整用通路、および、前記車高調整用通路の開閉を行う車高調整用バルブを有する車高調整用油圧制御回路(51,61)と、
前記各油圧シリンダに対応して設けられ、前記ばね切替バルブおよび前記車高調整用バルブをバイパスして、前記第2ガスばねのそれぞれと前記給排元通路とを連通させる作動油の流路であるバイパス通路、および、前記バイパス通路の開閉を行うバイパスバルブを有する第2ガスばね用油圧制御回路(53,63)と、
前記ばね切替バルブおよび前記バイパスバルブを閉弁状態にし、前記元バルブおよび前記車高調整用バルブを開弁状態にして、前記作動油給排装置から各車輪の油圧シリンダへ作動油を供給して、各車輪位置の車高を目標車高まで上昇させる車高上昇制御手段(100,S10)と、
前記元バルブに対して前記油圧シリンダ側であって、前記バイパスバルブに対して前記元バルブ側であり前記車高調整用バルブに対して前記元バルブ側となる作動油の流路に設けられ、前記流路の油圧を検出する油圧センサ(90)と、
各車輪位置ごとに車高が目標車高にまで上昇したときの前記油圧センサにより検出される油圧を記憶する油圧記憶手段(S15)と、
前記車高の目標車高への上昇が完了した後、前記第2ガスばねのそれぞれの油圧が前記油圧記憶手段に記憶された車輪位置に対応した油圧と等しくなるように、前記ばね切替バルブおよび前記車高調整用バルブを閉弁状態に維持したまま、一輪ずつ、前記バイパスバルブを開弁状態にして前記作動油給排装置から前記第2ガスばねへの作動油の供給を開始し、前記油圧センサにより検出される油圧が前記油圧記憶手段に記憶された車輪位置に対応した油圧に達したときに、前記バイパスバルブを閉弁状態にするとともに前記作動油給排装置の作動油供給動作を停止させる第2ガスばね油圧調整手段(S101〜S106)と、
前記第2ガスばね油圧調整手段が前記バイパスバルブを開弁するための開弁指令を出力した後の前記油圧センサによって検出される油圧の変化、および、前記第2ガスばね油圧調整手段が前記バイパスバルブを閉弁するための閉弁指令を出力し、かつ、前記作動油給排装置の作動油供給動作を停止させた後の前記油圧センサによって検出される油圧の変化の少なくとも一方に基づいて、前記油圧の変化が所定の低下勾配を示さない場合に前記バイパスバルブが故障していると判定するバイパスバルブ故障検出手段(S103,S113,S108,S118)とを備えたことにある。
本発明においては、車両の左右前後輪のそれぞれにおいて車輪保持部材と車体との間に油圧シリンダが設けられている。この油圧シリンダは、作動油を収容して車輪保持部材と車体との間の距離変化に合わせて伸縮する。
各油圧シリンダには、第1ガスばねと第2ガスばねとが設けられる。第1ガスばねは、第1ガス室と、油圧シリンダに連通する第1油室とを区画して備え、油圧シリンダの油圧に応じて第1油室に収容される作動油の量が変化して油圧系のばねとして機能する。第2ガスばねは、第2ガス室と、油圧シリンダに連通する第2油室とを区画して備え、油圧シリンダの油圧に応じて第2油室に収容される作動油の量が変化して油圧系のばねとして機能する。
この第2ガスばねについては、ばね切替バルブによって、油圧シリンダとの連通を許容する状態と遮断する状態とに切り替えられる。従って、ばね切替バルブが開弁されることによって、油圧シリンダは、第1ガスばねと第2ガスばねとの両方に連通した状態、つまり、ホイールレートが小さく設定された状態(ソフト)となる。また、ばね切替バルブが閉弁されることによって、油圧シリンダは、第1ガスばねと第2ガスばねとのうち、第1ガスばねにみに連通した状態、つまり、ホイールレートが高く設定された状態(ハード)となる。
油圧シリンダに収容される作動油の圧力を調整することによって、その油圧シリンダの設けられている車輪位置の車高を調整することができる。各油圧シリンダにおいては、作動油給排装置および給排油圧制御回路によって作動油の供給および排出が行なわれ、これにより車高が調整される。作動油給排装置は、例えば、作動油を油圧シリンダに供給するための高圧源(例えば、ポンプ)、および、作動油を油圧シリンダから排出するための低圧源(例えば、リザーバタンク)を備えている。給排油圧制御回路は、作動油給排装置に接続され作動油の流れる流路となる給排元通路、および、給排元通路の開閉を行う元バルブを有している。
サスペンションシステムは、各油圧シリンダに対応して設けられる、車高調整用油圧制御回路、および、第2ガスばね用油圧制御回路を備えている。車高調整用油圧制御回路は、油圧シリンダのそれぞれと給排元通路とを連通させる作動油の流路である車高調整用通路、および、車高調整用通路の開閉を行う車高調整用バルブを有する。従って、元バルブ、および、車高調整対象輪の車高調整用バルブを開弁状態にすることで、車高調整対象輪の油圧シリンダの油圧を調整して車高を調整することができる。
第2ガスばね用油圧制御回路は、ばね切替バルブおよび車高調整用バルブをバイパスして、第2ガスばねのそれぞれと給排元通路とを連通させる作動油の流路であるバイパス通路、および、バイパス通路の開閉を行うバイパスバルブを有する。従って、元バルブおよび任意のバイパスバルブを開弁状態にすることで、任意の第2ガスばねの油圧を独立して調整することができる。
車高上昇制御手段は、ばね切替バルブおよびバイパスバルブを閉弁状態にし、元バルブおよび車高調整用バルブを開弁状態にして、作動油給排装置から各車輪の油圧シリンダへ作動油を供給して、各車輪位置の車高を目標車高まで上昇させる。従って、第2ガスばねへの作動油の供給を伴わずに油圧シリンダの油圧を調整できるため、車高上昇に必要な作動油の量が少なくて済み、車高上昇時間を短縮することができる。
このように、車高を上昇させるときに第2ガスばねへの作動油の供給を行わないようにする構成においては、ばね切替バルブを開弁してホイールレートを切り替えた場合に、油圧シリンダから第2ガスばねに作動油が流れて車高が急に下がってしまう。そこで、本発明においては、油圧センサ、油圧記憶手段、および、第2ガスばね油圧調整手段が設けられている。
油圧センサは、元バルブに対して油圧シリンダ側であって、バイパスバルブに対して元バルブ側であり車高調整用バルブに対して元バルブ側となる作動油の流路に設けられ、その流路の油圧を検出する。従って、この油圧センサは、車高調整用バルブが開弁されているときには油圧シリンダの油圧を検出することができ、バイパスバルブが開弁されているときには第2ガスばねの油圧を検出することができる。油圧記憶手段は、車輪位置ごとに車高が目標車高にまで上昇したときの油圧センサにより検出される油圧を記憶する。
第2ガスばね油圧調整手段は、車高の目標車高への上昇が完了した後、第2ガスばねのそれぞれ油圧が油圧記憶手段に記憶された車輪位置に対応した油圧と等しくなるように第2ガスばねの油圧を調整する。この場合、第2ガスばね油圧調整手段は、ばね切替バルブおよび車高調整用バルブを閉弁状態に維持したまま、一輪ずつ、バイパスバルブを開弁状態にして作動油給排装置から第2ガスばねへの作動油の供給を開始し、油圧センサにより検出される油圧が油圧記憶手段に記憶された車輪位置に対応した油圧に達したときに、バイパスバルブを閉弁状態にするとともに作動油給排装置の作動油供給動作を停止させる。これにより、第2ガスばねの油圧を油圧シリンダの油圧と同圧にすることができ、その後、ばね切替バルブを開弁しても車高が変化しないようにすることができる。
本発明のサスペンションシステムにおいては、第2ガスばね油圧調整手段が第2ガスばねの油圧を調整する過程においてバイパスバルブの故障を検出するバイパスバルブ故障検出手段を備えている。
例えば、第2ガスばね油圧調整手段が第2ガスばねへの作動油の供給を開始するためにバイパスバルブに開弁指令を出力した場合、バイパスバルブが正常に開弁すれば、油圧センサによって検出される油圧は低下するはずであるが、正常に開弁しない場合には、本来得られるはずの油圧低下が得られない。また、第2ガスばねへの作動油の供給が完了して、第2ガスばね油圧調整手段が作動油給排装置の作動油供給動作を停止させるとともにバイパスバルブに閉弁指令を出力した場合には、バイパスバルブが正常に閉弁すれば、油圧センサによって検出される油圧は低下するはずであるが、正常に閉弁しない場合には、本来得られるはずの油圧低下が得られない。
こうしたことに着目して、バイパスバルブ故障検出手段は、第2ガスばね油圧調整手段がバイパスバルブを開弁するための開弁指令を出力した後の油圧センサによって検出される油圧の変化、および、第2ガスばね油圧調整手段がバイパスバルブを閉弁するための閉弁指令を出力し、かつ、作動油給排装置の作動油供給動作を停止させた後の油圧センサによって検出される油圧の変化の少なくとも一方に基づいて、油圧の変化が所定の低下勾配を示さない場合にバイパスバルブが故障していると判定する。
従って、本発明によれば、バイパスバルブの故障を適正に検出することができる。
上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成要件に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係るサスペンションシステムの概略を示す全体構成図である。 車高上昇制御メインルーチンを表すフローチャートである。 車高上昇制御サブルーチンを表すフローチャートである。 低ガスばね油圧調整サブルーチンを表すフローチャートである。 故障検出後車高上昇制御サブルーチンを表すフローチャートである。 故障検出後低ガスばね油圧調整サブルーチンを表すフローチャートである。 各バルブおよびポンプ装置の作動状態と、油圧および車高の推移を表すグラフである。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本実施形態のサスペンションシステム1の概略を示す全体構成図である。
サスペンションシステム1は、左右前後輪WFL,WFR,WRL,WRRの各々と車体とを離接可能に連結するサスペンション装置10FL,10FR,10RL,10RRと、車高を調整する際にサスペンション装置10FL,10FR,10RL,10RRに対して作動油の供給および排出を行うための作動油給排装置70と、サスペンション装置10FL,10FR,10RL,10RRと作動油給排装置70との間に設けられる油圧制御回路50と、システム全体の作動を制御する電子制御ユニット100(ECU100呼ぶ)とを備える。
以下、符号末尾に付した記号に関して、FLは左前輪に対応して設けられる部材であること、FRは右前輪に対応して設けられる部材であること、RLは左後輪に対応して設けられる部材であること、RRは右後輪に対応して設けられる部材であることを表すが、明細書中において、対応する車輪を特定する必要がない場合には、末尾の記号を省略する。
サスペンション装置10は、左右前後輪Wのそれぞれを保持する車輪保持部材11(例えば、ロアアーム)、および、各車輪保持部材11と車体との間に設けられる油圧シリンダ20を備えている。尚、図示しないが、各車輪保持部材11と車体との間には、油圧シリンダ20と並列にサスペンションスプリング(コイルスプリング)が設けられている。油圧シリンダ20は、ショックアブソーバとして機能し、車輪保持部材11と車体との間の距離変化に合わせて伸縮する。
各油圧シリンダ20は、互いに構造が同じであって、それぞれ、ハウジング21と、ハウジング21の内部にハウジング21に対して相対移動可能に嵌合されたピストン22と、ピストン22からハウジング21の外部まで延びたピストンロッド23とを備えている。ハウジング21は、車輪保持部材11に連結され、ピストンロッド23は、車体に連結されている。ハウジング21は、ピストン22によって2つの油室24a,24bに仕切られている。ピストン22には、油室24a,24bを連通させる連通路25が形成され、連通路25には絞り(図示略)が形成されている。この絞りによって、ピストン22のハウジング21に対する相対移動速度に応じた減衰力が発生する。
各油圧シリンダ20の油室24aには、それぞれ、作動油の流れる通路である個別給排通路51が接続されている。油圧シリンダ20は、個別給排通路51から供給される作動油の圧力によって車輪保持部材11と車体とを離間させる方向の力を発生させる。従って、油圧シリンダ20は、個別給排通路51から供給される作動油の圧力が高いほど、車輪保持部材11と車体との距離を大きくして車高を上昇させる。
各個別給排通路51には、油圧シリンダ20に近い側から順に、主アキュムレータ31およびレベリングバルブ61が接続されている。主アキュムレータ31は、サスペンションスプリング(コイルスプリング)とは別に設けられた油圧系のガスばねとして機能する。
個別給排通路51は、本発明の車高調整用通路に相当する。主アキュムレータ31は、本発明の第1ガスばねに相当する。レベリングバルブ61は、本発明の車高調整用バルブに相当する。従って、個別給排通路51とレベリングバルブ61とからなる構成が、本発明の車高調整用油圧制御回路に相当する。
主アキュムレータ31は、ハウジング31aと、そのハウジング31a内を2つの容量変化室に仕切る仕切り部材31bとを備え、仕切り部材31bによって仕切られた一方の容量変化室である油室31cに個別給排通路51が連通し、他方の容量変化室であるガス室31dに弾性体であるガス(例えば、窒素ガス)が充填されて構成されている。主アキュムレータ31は、油室31cの容積の増加に起因してガス室31dの容積が減少する。従って、主アキュムレータ31は、油圧シリンダ20の油圧に応じて油室31cに収容される作動油の量が変化して、油圧シリンダ20の伸縮動作に弾性力を発生させる油圧系のガスばねとして機能する。主アキュムレータ31の油室31cは、常時、油圧シリンダ20の油室24aに連通している。
レベリングバルブ61は、車高調整時に作動して、個別給排通路51を開閉する常閉式の電磁開閉弁である。
各個別給排通路51には、レベリングバルブ61と油圧シリンダ20との間となる位置において、個別レート切替通路52が分岐して接続される。個別レート切替通路52には、個別給排通路51との接続位置に近い側から順に、ばね切替バルブ62および副アキュムレータ32が接続されている。
副アキュムレータ32は、本発明の第2ガスばねに相当する。
副アキュムレータ32は、ハウジング32aと、そのハウジング32a内を2つの容量変化室に仕切る仕切り部材32bとを備え、仕切り部材32bによって仕切られた一方の容量変化室である油室32cに個別レート切替通路52が連通し、他方の容量変化室であるガス室32dに弾性体であるガス(例えば、窒素ガス)が充填されて構成されている。副アキュムレータ32は、油室32cの容積の増加に起因してガス室32dの容積が減少する。従って、副アキュムレータ32は、油圧シリンダ20の油圧に応じて油室32cに収容される作動油の量が変化して、油圧シリンダ20の伸縮動作に弾性力を発生させる油圧系のガスばねとして機能する。
副アキュムレータ32は、主アキュムレータ31よりもばね定数が小さい。主アキュムレータ31および副アキュムレータ32は、ベローズ式、ブラダ式、および、ピストン式など任意の形式のものを採用することができる。本実施形態では、主アキュムレータ31には、高圧縮圧力時の耐ガス透過性に優れた金属ベローズ式アキュムレータが採用される。また、副アキュムレータ32には、比較的大きな容量を確保でき耐ガス透過性に優れた樹脂膜入りブラダ式アキュムレータが採用される。
ばね切替バルブ62は、ホイールレートの切り替え時に作動する常開式の電磁開閉弁である。ばね切替バルブ62が開弁している状態においては、油圧シリンダ20に対して主アキュムレータ31と副アキュムレータ32とが並列に接続され、ばね切替バルブ62が閉弁している状態においては、油圧シリンダ20と副アキュムレータ32との連通が遮断される(主アキュムレータ31と副アキュムレータ32との連通が遮断されると表現することもできる)。以下、主アキュムレータ31を高ガスばね31と呼び、副アキュムレータ32を低ガスばね32と呼ぶ。
このように、サスペンション装置10は、車輪保持部材11と、油圧シリンダ20と、油圧シリンダ20に並列に接続される高ガスばね61および低ガスばね62から構成されている。
各個別給排通路51は、それぞれ、共通給排通路54に接続される。共通給排通路54は、作動油給排装置70に接続されており、作動油給排装置70から作動油を各個別給排通路51に供給する通路でもあり、各個別給排通路51から作動油を作動油給排装置70に戻す通路でもある。
共通給排通路54には、常閉式の電磁開閉弁である元バルブ64が設けられている。従って、元バルブ64が開弁されている状態においてのみ、各個別給排通路51と作動油給排装置70とが連通し、元バルブ64が閉弁されている状態においては、各個別給排通路51と作動油給排装置70との連通が遮断される。
尚、図1においては、共通給排通路54は、元バルブ64の下流側で、左右前輪の個別給排通路51FL,51FRに連通される通路と、左右後輪の個別給排通路51RL,51RRに連通される通路とに分岐しているが、必ずしもこのように分岐させる必要はない。例えば、各個別給排通路51FL,51FR,51RL,51RRが直接、4輪共通の共通給排通路54に連通されているなど、作動油給排装置70から各個別給排通路51までの作動油の通路(つまり共通給排通路54)は任意に構成できるものである。
共通給排通路54は、本発明の給排元通路に相当する。この共通給排通路54および元バルブ64からなる構成が、本発明の給排油圧制御回路に相当する。
油圧制御回路50には、レベリングバルブ61、および、ばね切替バルブ62をバイパスして、低ガスばね32を共通給排通路54に連通させる個別バイパス通路53が設けられている。各個別バイパス通路53には、それぞれ、バイパスバルブ63が設けられている。このバイパスバルブ63は、常閉式の電磁開閉弁である。従って、バイパスバルブ63が開弁されている状態においては、レベリングバルブ61、および、ばね切替バルブ62の状態に関係なく、低ガスばね32が共通給排通路54に連通する。この個別バイパス通路53およびバイパスバルブ63からなる構成が、本発明の第2ガスばね用油圧制御回路に相当する。
作動油給排装置70は、高圧源としてのポンプ装置71と、低圧源としてのリザーバタンク72とを備えている。ポンプ装置71は、ポンプ71a、および、ポンプ71aを駆動するポンプモータ71bを備えている。ポンプ装置71は、リザーバタンク72の作動油をくみ上げて共通給排通路54に供給する。作動油給排装置70は、ポンプ装置71の下流側となる共通給排通路54であって、元バルブ64よりも上流側となる位置にチェックバルブ73(逆止弁)とリターンバルブ74とを並列に備えている。
リターンバルブ74は、ポンプ装置71から元バルブ64への作動油の供給と、元バルブ64からリザーバタンク72への作動油の排出とを切り替えるバルブである。リターンバルブ74は、通常、スプリングの力により元バルブ64とリザーバタンク72との間の通路が開いた状態となっており、ポンプ装置71が駆動されると、その吐出圧と共通給排通路54の油圧との差圧によって弁体が押されて元バルブ64とリザーバタンク72との間の通路を閉じる。これにより、チェックバルブ73が開弁してポンプ装置71から吐出された作動油が、開弁された元バルブ64に流れる。
尚、本実施形態の作動油給排装置70は、軽量化を図るために、ポンプ装置71によって加圧された油圧を蓄圧する蓄圧用アキュムレータを備えていない。
また、共通給排通路54には、元バルブ64の下流側の油圧を検出するための圧力センサ90が設けられている。この圧力センサ90は、元バルブ64、4つのレベリングバルブ、および、4つのバイパスバルブで囲まれる作動油の流路ならどこに設けられていてもよい。つまり、圧力センサ90は、元バルブ64に対して油圧シリンダ20側であって、4つのバイパスバルブ63に対して元バルブ64側でありレベリングバルブ61に対して元バルブ64側となる作動油の流路に設けられていればよい。従って、この圧力センサ90によれば、任意の車輪のレベリングバルブ61を開弁した場合には、その車輪の油圧シリンダ20の油圧を検出することができ、任意の車輪のバイパスバルブ63を開弁した場合には、その車輪の低ガスばね32の油圧を検出ことができる。
このように、油圧制御回路50は、共通給排通路54と、元バルブ64と、個別給排通路51と、レベリングバルブ61と、個別レート切替通路52と、ばね切替バルブ62と、個別バイパス通路53と、バイパスバルブ63とから構成されている。
ECU100は、マイクロコンピュータおよび駆動回路(モータ駆動回路、および、電磁弁駆動回路)を主要部として備えている。本明細書において、マイクロコンピュータは、CPUとROM及びRAM等の記憶装置を含み、CPUはROMに格納されたインストラクション(プログラム)を実行することにより各種機能を実現するようになっている。
ECU100には、油圧制御回路50に設けられた各種の電磁弁(レベリングバルブ61、ばね切替バルブ62、バイパスバルブ63、および、元バルブ64)と、作動油給排装置70に設けられたポンプモータ71bと、圧力センサ90とが接続されている。更に、ECU100には、車両運動状態を検出する運動検出センサ110と、ドライバーの操作を検出する操作検出センサ120と、報知器130とが接続されている。
運動検出センサ110としては、例えば、車速を検出する車速センサ、前後左右輪位置ごとに車高を検出する車高センサ、車体の上下方向の加速度を検出する上下加速度センサ、車体のヨーレートを検出するヨーレートセンサ、および、車体の前後左右方向の加速度を検出する水平加速度センサなどである。車高センサは、例えば、各車輪Wを保持する車輪保持部材11と、その車輪位置における車体との間の距離を車高として検出する。
操作検出センサ120としては、ブレーキペダルの踏み込みストロークを検出するストロークセンサ、ステアリングの操舵角を検出する操舵角センサ、および、トランスファのレンジ状態を検出するトランスファセンサなどである。尚、ECU100は、運動検出センサ110および操作検出センサ120を直接的に接続している必要はなく、それらのセンサを接続している他の車載ECU(例えば、エンジンECU、ブレーキECU、および、ステアリングECUなど)から検出信号を入力してもよい。また、ECU100は、操作検出センサ120として車高選択スイッチと、車高調整オフスイッチとを接続している。
車高選択スイッチは、ドライバーの操作によって、目標車高を、ノーマル車高、ロー車高、および、ハイ車高の3通りにて選択するスイッチである。車高調整オフスイッチは、ドライバーの操作によって、車高制御を禁止するスイッチである。
報知器130は、例えば、運転席正面に配置されたメータディスプレイに設けられ、異常が検出されたときに、その異常の種類に応じたアイコンを表示する。本実施形態のサスペンションシステムにおいては、油圧制御回路50の異常が検出された場合に、ECU100からの指令によって報知器130が作動して、ドライバーに対して異常を報知する。
ECU100は、運動検出センサ110および操作検出センサ120によって検出された検出信号に基づいて、ホイールレート切替制御、および、車高制御を実施する。
まず、ホイールレート切替制御について説明する。本実施形態のサスペンションシステムにおいては、各車輪Wごとに、当該車輪位置における低ガスばね32と油圧シリンダ20との連通および遮断を切り替えることにより、当該車輪Wのホイールレートを切り替えることができる。つまり、ばね切替バルブ62の開閉制御によって、油圧シリンダ20と低ガスばね32との連通状態/遮断状態(高ガスばね31と低ガスばね32との連通状態/遮断状態と表現することもできる)を切り替えることにより、ホイールレートを小(ソフト)/大(ハード)に切り替えることができる。
例えば、ECU100は、基本的には、4輪Wのばね切替バルブ62を開弁状態に維持することにより、ホイールレートを小(ソフト)に設定して乗り心地を確保する。また、ECU100は、運動検出センサ110および操作検出センサ120によって、車両旋回時のロール運動、あるいは、車両制動時のピッチ運動などの車体の姿勢変化が検出(あるいは予測)されたときに、姿勢変化状況に応じた車輪W(例えば、左右前輪)のばね切替バルブ62を閉弁することにより、当該車輪Wの油圧シリンダ20から低ガスばね32を切り離してホイールレートを増加させる(ハード)。これにより、車体のロール運動およびピッチ運動(車体の姿勢変化)を抑制することができる。
次に、車高制御について説明する。ECU100は、車高選択スイッチによって選択された車高と、運動検出センサ110および操作検出センサ120によって検出された信号に基づいて、作動油給排装置70および各種電磁弁61,62,63,64を制御することにより、前後左右輪Wそれぞれの油圧シリンダ20の作動油の供給・排出・保持を切り替えて車高を調整する。
例えば、ECU100は、乗員数および積載量などの荷重条件に関わらず、常にドライバーの選択した車高を維持するオートレベリング制御を実施する。また、ECU100は、車速に応じて最適な目標車高を設定する機能を有している。例えば、ECU100は、ドライバーのスイッチ操作によってロー車高、ハイ車高が選択されている場合には、車速が予め設定された閾値よりも増加すると、ドライバーの選択車高を解除して、目標車高をノーマル車高に変更する。また、ECU100は、高速走行時には、ドライバーの選択車高を解除して、目標車高を予め設定された高速走行用ロー車高に変更する。また、ECU100は、トランスファセンサによって検出されるトランスファの設定がL4レンジ(オフロード走行用レンジ)である場合には、車速が予め設定された車速以上になると、目標車高をハイ車高に切り替える。
ECU100は、車高センサによって検出された車高(実車高)が目標車高と一致するように作動油給排装置70と、レベリングバルブ61、切替バルブ62、バイパスバルブ63、および、元バルブ64とを駆動制御する。尚、ECU100は、レベリングバルブ61、切替バルブ62、バイパスバルブ63、および、元バルブ64の状態を切り替える場合、これらのバルブに対して開弁指令、あるいは、閉弁指令を出力する。開弁指令は、バルブを開弁するための駆動信号であって、常閉式電磁弁に対しては駆動信号の出力オンを表し、常開式電磁弁に対しては駆動信号の出力オフを表す。また、閉弁指令は、バルブを閉弁するための駆動信号であって、常閉式電磁弁に対しては駆動信号の出力オフを表し、常開式電磁弁に対しては駆動信号の出力オンを表す。
ECU100は、車高を変更する必要が生じた場合、以下のようにして車高を調整する。ここでは、車高を上昇させるときの制御について説明する。図2は、ECU100の実施する車高上昇制御メインルーチンを表す。ECU100は、車高上昇要求が発生すると、車高上昇制御メインルーチンを開始する。
車高上昇制御メインルーチン(以下、単に、メインルーチンと呼ぶ)は、車高上昇制御サブルーチンと、車高上昇制御サブルーチンの実施後に開始される低ガスばね油圧調整サブルーチンとから構成される。
本実施形態のサスペンションシステムは、車高を上昇させる場合、ばね切替バルブ62を閉弁状態にすることにより油圧シリンダ20から低ガスばね32を切り離しておいて、油圧シリンダ20に作動油を供給する。これにより、車高を上昇させるために必要となる作動油量を少なくし、車高上昇に必要となる時間を短くすることができる。車高が上昇した後に、ばね切替バルブ62を開弁すると、油圧シリンダ20と低圧ガスばね32とが連通して、両者の差圧により両者間を作動油が移動して車高が変動してしまう。そこで、このサスペンションシステム1は、低圧ガスばね32に油圧シリンダ20とは独立して作動油を供給できるように個別バイパス通路53、および、バイパスバルブ63が設けられており、車高調整の完了後にバイパスバルブ63が開弁されて、低ガスばね32の油圧が油圧シリンダ20の油圧と同圧となるように調整される。
車高上昇制御サブルーチンは、油圧シリンダ20から低ガスばね32を切り離した状態で、油圧シリンダ20に作動油を供給して車高を上昇させる処理である。一方、低ガスばね油圧調整サブルーチンは、低圧ガスばね32の油圧を油圧シリンダ20の油圧と同圧に調整する処理である。また、低ガスばね油圧調整サブルーチンには、バイパスバルブ63の故障を検出する処理も含まれている。
まず、車高上昇制御サブルーチンについて説明する。図3は、車高上昇制御サブルーチンを表すフローチャートである。車高上昇制御サブルーチンが開始されると、ECU100は、ステップS11において、4輪Wについて、バイパスバルブ63を閉弁状態に維持したまま、ばね切替バルブ62を開弁状態から閉弁状態に切り替えるとともに、レベリングバルブ61を閉弁状態から開弁状態に切り替える。
続いて、ECU100は、ステップS12において、元バルブ64を閉弁状態から開弁状態に切り替える。ECU100は、元バルブ64を開弁した後、ステップS13において、ポンプ装置71を起動させる。これにより、リザーバタンク72に溜まっている作動油が油圧制御回路50を介して、油圧シリンダ20および高ガスばね31に供給される。従って、油圧シリンダ20の油圧が上昇し、これに伴って当該車輪Wの車高が上昇する。この場合、低ガスばね32には作動油が供給されないため、少ない油量で早く車高を上昇させることができる。
続いて、ECU100は、ステップS14において、車高センサによって検出された車高Lx(以下、実車高Lxと呼ぶ)が目標車高L0に達するまで待機する。ECU100は、任意の車輪Wにおける実車高Lxが目標車高L0に達したと判定すると(S14:Yes)、ステップS15において、目標車高L0に到達した車輪(該当車輪と呼ぶ)のその時点における圧力センサ90の検出値を車輪位置と対応付けて車高調整完了圧力P0として記憶する。この車高調整完了圧力P0は、該当車輪の油圧シリンダ20および高ガスばね31の油圧と等しい。
図7は、任意の車輪における、各バルブの開閉タイミングと、油圧および車高との推移を表すグラフである。時刻t1において、車高上昇制御サブルーチンが開始されると、油圧シリンダ20の油圧(破線にて示す)は、上昇を開始する。この油圧シリンダ20の油圧は、圧力センサ90によって検出される検出値Px(実線にて示す)と等しい。この車高上昇制御サブルーチンにおいては、低ガスばね32が油圧シリンダ20から切り離されているため、低ガスばね32の油圧は、上昇しない。
この図7の例では、時刻t2に実車高Lxが目標車高L0に達する。このときの圧力センサ90の検出値Pxが、車高調整完了圧力P0として記憶される。
続いて、ECU100は、ステップS16において、該当車輪のレベリングバルブ61を開弁状態から閉弁状態に切り替える。これにより、該当車輪における車高調整が完了する。続いて、ECU100は、ステップS17において、4輪全ての車高調整が完了したか否かを判断し、車高調整の完了していない車輪、つまり、実車高Lxが目標車高L0に達していない車輪が残っている場合には、その処理をステップS14に戻して同様の処理を繰り返す。
こうして、4輪全ての車高調整が完了すると、ECUは、車高上昇制御サブルーチン(s10)を終了して、その処理を低ガスばね油圧調整サブルーチン(S100)に進める。この低ガスばね油圧調整サブルーチンが開始されるタイミングは、図7において、時刻t2にあたる。
低ガスばね油圧調整サブルーチンが開始されると、ECU100は、ステップS101において、予め決められた順番(例えば、左前輪→右前輪→左後輪→右後輪)で4輪のうちの1輪を選択する。この選択された車輪を選択輪と呼ぶ。続いて、ECU100は、ステップS102において、選択輪のバイパスバルブ63を閉弁状態から開弁状態に切り替える。
続いて、ECU100は、ステップS103において、このバイパスバルブ63を開弁した時に、圧力センサ90によって検出された油圧が、予め設定された低下判定勾配よりも大きな勾配(絶対値の大きな負の勾配)で低下したかについて判断する。図7に示すように、車高を上昇させる車高調整が完了したとき(図7における時刻t2)には、低ガスばね32の油圧(一点鎖線にて示す)は、圧力センサ90によって検出されるバイパスバルブ63の上流側(作動油給排装置70側)の油圧よりも低くなっている。従って、バイパスバルブ63を閉弁状態から開弁状態に切り替えたときに、バイパスバルブ63には、その上流側から作動油が流入する。従って、図7の時刻t2に示すように、圧力センサ90によって検出される検出値Pxは、大きく低下するはずである。
しかし、バイパスバルブ63が閉弁状態から開弁しない(閉じっぱなし)故障が発生した場合、つまり、ECU100からバイパスバルブ63に対して開弁指令を出力しても、バイパスバルブ63が開弁しない場合には、圧力センサ90の検出値Pxは低下しない。そこで、ECU100は、ステップS103において、バイパスバルブ63に対して開弁指令を出力した後の検出値Pxの勾配(時間微分値)を演算し、この勾配に基づいてバイパスバルブ63の故障の有無を判定する。このように、ECU100からバイパスバルブ63に対して開弁指令を出力しても、バイパスバルブ63が開弁しない故障を閉故障と呼ぶ。
この場合、例えば、ECU100は、バイパスバルブ63に対して開弁指令が出力される直前の検出値Px1と、開弁指令が出力されてから所定時間経過後の検出値Px2との差(Px1−Px2)を演算して、上記の差が判定閾値を超える場合に、検出値Pxが低下判定勾配よりも大きな勾配で低下したと判定するなど、油圧低下の判定については、種々の手法を用いることができる。
ECU100は、ステップS103において「Yes」、つまり、低下判定勾配よりも大きな勾配の油圧低下が検出された場合、バイパスバルブ63は閉故障していないと判定して、その処理をステップS104に進める。上述したようにステップS102でバイパスバルブ63が開弁されるときには、4輪のレベリングバルブ61およびばね切替バルブ62は、閉弁状態となっている。従って、ステップS102でバイパスバルブ63が開弁されると、リザーバタンク72に溜まっている作動油が、選択輪の低ガスばね32のみに供給される。こうして、図7の時刻t2以降に示すように、選択輪の低ガスばね32の油圧が上昇していく。
ECU100は、ステップS104において、圧力センサ90の検出値Pxが選択輪の車高調整完了圧力P0に達するまで待機する。つまり、低ガスばね32の油圧が、選択輪の油圧シリンダ20および高ガスばね31の油圧と等しくなるまで待機する。
ECU100は、検出値Pxが車高調整完了圧力P0に達すると(S104:Yes)、ステップS105において、選択輪のバイパスバルブ63を開弁状態から閉弁状態に切り替え、続くステップS106において、ポンプ装置71を停止させる。ECU100は、ポンプ装置71を停止させた後、ステップS107において、元バルブ64を開弁状態から閉弁状態に切り替える。ポンプ装置71が停止された後であって、元バルブ64が閉弁されるまでの期間は、共通給排通路54の作動油は、リザーバタンク72に排出可能状態となる。
続いて、ECU100は、ステップS108において、ポンプ装置71を停止させた後の圧力センサ90によって検出された検出値Pxが、予め設定された低下判定勾配よりも大きな勾配(絶対値の大きな負の勾配)で低下したかについて判断する。低ガスばね32への作動油の供給が完了して(図7の時刻t3)、選択輪のバイパスバルブ63が閉弁され、ポンプ装置71が停止された場合には、共通給排通路54の作動油はリザーバタンク72に排出される。従って、図7の時刻t3に示すように、圧力センサ90の検出値Pxは、元バルブ64が閉弁されるまでの間に、所定の低下勾配で大気圧にまで低下するはずである。
しかし、バイパスバルブ63が開弁状態から閉弁しない(開きっぱなし)故障が発生した場合、つまり、ECU100からバイパスバルブ63に対して閉弁指令を出力しても、バイパスバルブ63が閉弁しない場合には、圧力センサ90の検出値Pxの低下勾配は小さい。つまり、低ガスばね32に蓄えられた作動油が、共通給排通路54の油圧の低下を補うように共通給排通路54に流れるため、検出値Pxは、すぐには低下しない。従って、ステップS107において元バルブ64が閉弁された時点においても、検出値Pxは、大気圧に対してかなり高い値を示す。
そこで、ECU100は、ステップS108において、ポンプ装置71を停止させた後の圧力センサ90によって検出された検出値Pxの勾配(時間微分値)を演算し、この勾配に基づいてバイパスバルブ63の故障の有無を判定する。このように、ECU100からバイパスバルブ63に対して閉弁指令を出力しても、バイパスバルブ63が閉弁しない故障を開故障と呼ぶ。
ECU100は、ステップS108において「Yes」、つまり、低下判定勾配よりも大きな勾配の油圧低下が検出された場合、バイパスバルブ63は開故障していないと判定して、その処理をステップS109に進める。ECU100は、ステップS109において、選択輪のばね切替バルブ62を閉弁状態から開弁状態に切り替える。これにより、選択輪の油圧シリンダ20と低ガスばね32とが連通され、ホイールレートが小(ソフト)に設定される。この場合、選択輪の油圧シリンダ20の油圧と低ガスばね32の油圧とは同圧となっているため、ばね切替バルブ62を開弁しても油圧シリンダ20から低ガスばね32に作動油が移動しない。従って、ばね切替バルブ62の開弁に伴う車高の変動は防止される。
続いて、ECU100は、ステップS110において、4輪全てについて、低ガスばね32の油圧調整が完了したか否かについて判断し、4輪全てについて完了していない場合には、その処理をステップS111に進める。ECU100は、ステップS111において、元バルブ64を閉弁状態から開弁状態に切り替え、続く、ステップS112において、ポンプ装置71を起動させる。ECU100は、ポンプ装置71を起動させると、その処理をステップS101に戻して、次の順番となる車輪を選択輪に設定して、同様の処理を繰り返す。こうした処理が繰り返されて、バイパスバルブ63の故障が検出されずに、4輪全ての低ガスばね32の油圧調整が完了すると(S110:Yes)、低ガスばね油圧調整サブルーチンが終了する。
一方、ステップS103において「No」、つまり、選択輪のバイパスバルブ63に開弁指令を出力したにも関わらず、低下判定勾配よりも大きな勾配の油圧低下が検出されない場合、ECU100は、ステップS113において、この選択輪のバイパスバルブ63が閉故障していると判定する。この判定結果は、ECU100内に設けられた不揮発性メモリに記憶される。続いて、ECU100は、ステップS114において、報知器130を作動させて、ドライバーに対して異常が発生したことを報知する。
ECU100は、バイパスバルブ63の閉故障が検出された場合には、その選択輪のばね切替バルブ62については、この低ガスばね油圧調整サブルーチンでは開弁させない。上述したように、バイパスバルブ63の故障が検出されない場合、ECU100は、ばね切替バルブ62を開弁して(S109)、油圧シリンダ20に低ガスばね32を連通させる。しかし、バイパスバルブ63が閉故障している場合には、低ガスばね32に作動油を供給できていないため、低ガスばね32の油圧は油圧シリンダ20の油圧よりも低い。このため、仮に、選択輪のばね切替バルブ62を開弁すると、油圧シリンダ20から低ガスばね32に作動油が流れ、選択輪の車高が急に下がってしまい、ドライバーに違和感を与えてしまう。このような理由で、ECU100は、バイパスバルブ63の閉故障が検出された場合には、その車輪のばね切替バルブ62については開弁させない。尚、バイパスバルブ63の閉故障が検出された車輪のばね切替バルブ62については、後述する故障検出後車高上昇制御サブルーチンにより車高を上昇させるとき、つまり、低車高であって油圧シリンダ20の油圧が低い状態において開弁される。
続いて、ECU100は、ステップS115において、4輪全てについて、低ガスばね32の油圧調整が完了したか否かについて判断し、4輪全てについて完了していない場合には、その処理をステップS101に進める。尚、バイパスバルブ63が閉故障している場合には、実際には、低ガスばね32の油圧調整はできないが、ここでの判断は、低ガスばね32の油圧調整が完了したと判定される。ECU100は、ステップS115において、4輪全てについて、低ガスばね32の油圧調整が完了したと判定した場合、ステップS116においてポンプ装置71を停止し、ステップS117において元バルブ64を開弁状態から閉弁状態に切り替えて、低ガスばね油圧調整サブルーチンを終了する。
また、ステップS108において、「No」、つまり、選択輪のバイパスバルブ63に閉弁指令を出力し、かつ、ポンプ装置71を停止した後における、圧力センサ90の検出値Pxの低下勾配が低下判定勾配以下となる場合、ECU100は、ステップS118において、この選択輪のバイパスバルブ63が開故障していると判定する。この判定結果は、ECU100内に設けられた不揮発性メモリに記憶される。続いて、ECU100は、ステップS119において、報知器130を作動させて、ドライバーに対して異常が発生したことを報知する。
ECU100は、報知器130を作動させると、その処理をステップS109に進めて、ばね切替バルブ62を開弁して、油圧シリンダ20に低ガスばね32を連通させる。この場合、選択輪のバイパスバルブ63が開故障しているため、低ガスばね32の油圧は、油圧シリンダ20の油圧と同圧となっている。従って、ばね切替バルブ62を開弁しても、選択輪の車高の変動は発生しない。
ECU100は、こうした低ガスばね油圧調整サブルーチンを実施することにより、低ガスばね32の油圧を調整すると同時に、バイパスバルブ63の故障の検出を行う。
ECU100は、4輪全てについて、バイパスバルブ63の故障が検出されていない場合は、上述した車高上昇制御サブルーチンおよび低ガスばね油圧調整サブルーチンからなるメインルーチンを実施する。また、ECU100、バイパスバルブ63の故障が一旦検出された後については、上述した車高上昇制御サブルーチンおよび低ガスばね油圧調整サブルーチンに代えて、故障検出後車高上昇制御サブルーチン(図5)および故障検出後低ガスばね油圧調整サブルーチン(図6)からなるメインルーチンを実施する。
まず、図5に示す故障検出後車高上昇制御サブルーチンから説明する。バイパスバルブ63の故障(開故障あるいは閉故障)が検出された後に、車高上昇要求が発生すると、ECU100は、故障検出後車高上昇制御サブルーチンを開始する。以下の説明にあたって、バイパスバルブ63の開故障が検出された車輪を開故障輪と呼び、バイパスバルブ63の閉故障が検出された車輪を閉故障輪と呼ぶ。
まず、ECU100は、ステップS21において、閉故障輪のばね切替バルブ62を閉弁状態から開弁状態に切り替え、閉故障輪以外の車輪のばね切替バルブ62を開弁状態から閉弁状態に切り替える。同時に、ECU100は、開故障輪のレベリングバルブ61を閉弁状態に維持し、開故障輪以外の車輪のレベリングバルブ61を閉弁状態から開弁状態に切り替える。同時に、ECU100は、正常輪(開故障輪でも閉故障輪でもない車輪)のバイパスバルブ63を閉弁状態に維持する。開故障輪および閉故障輪のバイパスバルブ63については、開閉制御不能であるため、その故障の種類に応じた状態が維持される。
続いて、ECU100は、ステップS22において、元バルブ64を閉弁状態から開弁状態に切り替える。ECU100は、元バルブ64を開弁した後、ステップS23において、ポンプ装置71を起動させる。これにより、リザーバタンク72に溜まっている作動油が油圧制御回路50を介して、開故障輪以外の油圧シリンダ20および高ガスばね31に供給される。これにより、開故障輪以外の車輪においては、油圧シリンダ20の油圧が上昇し、これに伴って車高が上昇する。開故障輪が1輪存在する場合には、残り3輪の油圧シリンダ20の油圧上昇によって、車体全体の車高が上昇する。また、開故障輪が存在しない場合は、4輪の油圧シリンダ20の油圧上昇によって、車体全体の車高が上昇する。従って、少ない油量で早く車高を上昇させることができる。尚、この場合、開故障輪においては、バイパスバルブ63が開弁状態を維持しているため、低圧ガスばね32に作動油が供給される。
続いて、ECU100は、ステップS24において、車高センサによって検出された実車高Lxが目標車高L0に達するまで待機する。ECU100は、開故障輪を除く任意の車輪Wにおける実車高Lxが目標車高L0に達したと判定すると(S24:Yes)、ステップS25において、目標車高L0に到達した該当車輪のその時点における圧力センサ90の検出値を車輪位置と対応付けて車高調整完了圧力P0として記憶する。
続いて、ECU100は、ステップS26において、該当車輪のレベリングバルブ61を開弁状態から閉弁状態に切り替える。これにより、該当車輪における車高調整が完了する。続いて、ECU100は、ステップS27において、開故障輪以外の車輪全てについて、車高調整が完了したか否かを判断し、車高調整の完了していない車輪(開故障輪以外の車輪)が残っている場合には、その処理をステップS24に戻して同様の処理を繰り返す。
こうして、開故障輪以外の車輪全てについて車高調整が完了すると、ECU100は、その処理をステップS28に進めて、開故障輪のレベリングバルブ61を閉弁状態から開弁状態に切り替える。これにより、開故障輪の油圧シリンダ20の油圧が上昇する。この場合、閉故障輪については、ばね切替バルブ62が開弁された状態で油圧シリンダ20に作動油が供給されるため、低ガスばね32にも同時に作動油が供給されることになる。これは、閉故障輪では、バイパスバルブ63を開弁することができないため、低ガスばね32を使用できるようにする(ホイールレートを小にする)ためには、油圧シリンダ20と低ガスばね32を連通させて、低ガスばね32に作動油を供給する必要があるからである。
続いて、ECU100は、ステップS29において、開故障輪について、車高センサによって検出された実車高Lxが目標車高L0に達するまで待機する。ECU100は、開故障輪における実車高Lxが目標車高L0に達したと判定すると(S29:Yes)、ステップS30において、その時点における圧力センサ90の検出値を開故障輪の車高調整完了圧力P0として記憶する。この車高調整完了圧力P0は、開故障輪の油圧シリンダ20および高ガスばね31の油圧と等しい。
続いて、ECU100は、ステップS31において、開故障輪のレベリングバルブ61を開弁状態から閉弁状態に切り替えて、故障検出後車高上昇制御サブルーチンを終了して、その処理を故障検出後低ガスばね油圧調整サブルーチン(図6)に進める。尚、故障検出後車高上昇制御サブルーチンは、故障輪が一輪である場合を想定した処理である。従って、複数の車輪においてバイパスバルブ63の故障が検出された場合には、ECU100は、その時点で、車高制御に係る処理を中止するとよい。
開故障輪以外の3輪の車高を上昇させた場合には、その3輪の車高上昇によって、車体全体の車高が上昇する。そうした理由から、故障検出後車高上昇制御サブルーチンでは、開故障輪以外の3輪の車高を先に上昇させてから、開故障輪の車高を上昇させるようにして、実質的な車高の上昇に係る時間を短縮している。つまり、開故障輪のレベリングバルブ61を閉弁した状態で、開故障輪以外の3輪のレベリングバルブ61を開弁して、3輪の車高を上昇させた後、開故障輪のレベリングバルブ61を開弁して、開故障輪の車高を上昇させる。尚、必ずしも、開故障輪のレベリングバルブ61を開故障輪以外の3輪の車高上昇完了後に開弁させなくてよく、4輪同時にレベリングバルブ61を開弁するようにしてもよい。
次に、故障検出後低ガスばね油圧調整サブルーチンについて説明する。故障検出後低ガスばね油圧調整サブルーチンが開始されると、ECU100は、ステップS121において、4輪のうちの正常輪(開故障輪でも閉故障輪でもない車輪)の1つを選択する。続いて、ECU100は、ステップS122において、選択された正常輪について、低ガスばね油圧調整を実施する。このステップS122の処理は、上述した低ガスばね油圧調整ルーチン(S100)と同様の処理であって、正常輪の低圧ガスばね32の油圧をステップS25で記憶した車高調整完了圧力P0にまで上昇させる処理、および、その過程における油圧変動に基づくバイパスバルブ63の故障(開故障および閉故障)判定処理である。
続いて、ECUは、ステップS123において、正常輪の全てについて、ステップS122の低ガスばね油圧調整が完了したか否かについて判断し、低ガスばね油圧調整が完了していない車輪が残っている場合には、その処理をステップS121に戻して、残っている正常輪の1つを選択し、ステップS122において、その正常輪について低ガスばね油圧調整を実施する。
ECU100は、こうした処理を繰り返し、正常輪の全てについて低ガスばね油圧調整が完了すると、ステップS124において、開故障輪が存在するか否かについて判断する。開故障輪が存在しない場合は、閉故障輪が存在する。閉故障輪が存在する場合(S124:No)、閉故障輪の低ガスばね32には、すでに、故障検出後車高上昇制御サブルーチンによって、油圧シリンダ20と同圧にて作動油が供給されている。従って、低ガスばね32の油圧調整は不要となるため、ステップS125においてポンプ装置71を停止した後、ステップS126において元バルブ64を開弁状態から閉弁状態に切り替えて、故障検出後低ガスばね油圧調整サブルーチンを終了する。
一方、開故障輪が存在する場合(S124:Yes)、ECU100は、ステップS127において、圧力センサ90の検出値PxがステップS30において記憶した車高調整完了圧力P0に達するまで待機する。ECU100は、検出値Pxが車高調整完了圧力P0に達すると(S127:Yes)、ステップS128においてポンプ装置71を停止した後、ステップS129において元バルブ64を開弁状態から閉弁状態に切り替える。
続いて、ECU100は、ステップS130において、開故障輪のばね切替バルブ62を閉弁状態から開弁状態に切り替えて、故障検出後低ガスばね油圧調整サブルーチンを終了する。この故障検出後低ガスばね油圧調整サブルーチンにおいては、最後に開故障輪の低ガスばね32の油圧調整が行われる。その理由は、開故障輪では、バイパスバルブ63が開故障しているため、バイパスバルブ63を使って低ガスばね32の油圧を調整することができないことから、バイパスバルブ63に代えて元バルブ64に使用して低ガスばね32の油圧を調整する必要があるからである。そのため、開故障輪以外の車輪の低ガスばね32の油圧制御が完了し、それらのバイパスバルブ63が閉弁された後において、開故障輪の低ガスばね32の油圧調整が行われる。
以上説明した本実施形態のサスペンションシステムによれば、個別バイパス通路53とバイパスバルブ63とを備えているため、油圧シリンダ20および高ガスばね31に対する作動油の供給/排出と、低ガスばね32に対する作動油の供給/排出とを互いに独立して行うことができる。これにより、低ガスばね32を除いた油圧系統を使って車高調整を行うことができるため、少ない油量で早く車高を上昇させることができる。
これに伴って、作動油給排装置70における作動油の必要供給流量を少なくすることができるため、その構成を簡易にすることができる。例えば、ポンプ71aの吐出流量を少なくすることができる。また、従来装置のようにポンプの吐出流量を補うための蓄圧用アキュムレータ等を設ける必要がなくなる。これらの結果、作動油給排装置70の軽量化を図ることができる。
また、車高調整後に、低ガスばね32の油圧が油圧シリンダ20の油圧と等しくなるように調整されるため、ばね切替バルブ62を開弁してホイールレートを切り替えても車高変動を発生しないようにすることができる。
更に、低ガスばね32の油圧調整を実施するときに、バイパスバルブ63の故障を、その故障の発生している車輪、および、その故障の種類(開故障および閉故障)を特定して検出することができる。また、バイパスバルブ63の故障が検出された場合には、その故障の種類に対応した車高上昇制御および低ガスばね油圧調整が行われるため、サスペンションシステムの信頼性を向上させることができる。
また、バイパスバルブ63の閉故障検出に当たっては、車高調整が完了してバイパスバルブ63に対して開弁指令を出力した時の圧力センサの検出値Pxの低下勾配に基づいて、閉故障の有無が判定される。従って、閉故障を簡単、かつ、確実に検出することができる。また、バイパスバルブ63の開故障検出に当たっては、低ガスばね32の油圧調整が完了してバイパスバルブ63に対して閉弁指令が出力され、かつ、ポンプ装置71が停止させられたときの圧力センサ90の検出値Pxの低下勾配に基づいて、開故障の有無が判定される。従って、開故障を簡単、かつ、確実に検出することができる。
尚、ECU100は、車高を下降制御する場合、車高上昇制御と同様に、油圧シリンダ20から低ガスばね32を切り離して(ばね切替バルブ62を閉弁状態にして)、油圧シリンダ20から作動油を排出してもよいし、油圧シリンダ20と低ガスばね32とを連通した状態で油圧シリンダ20から作動油を排出してもよい。前者の場合には、車高制御の終了後、低ガスばね32から作動油を排出させて油圧調整を行う必要があるが、後者の場合には、低ガスばね32の油圧調整を行う必要はない。
以上、本実施形態に係るサスペンションシステム1について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、各輪Wの油圧シリンダ20に対応して設けられるガスばねの数は2つであるが(高ガスばね31、低ガスばね32)、更に、別のガスばねが設けられていてもよい。例えば、油圧回路の圧力が異常上昇した場合に圧力を逃がすためのリリーフ用ガスばねが油圧シリンダ20に常時連通されている構成であってもよい。
また、本実施形態においては、バイパスバルブ63の開故障と閉故障との両方を検出しているが、必ずしも両方の故障を検出する必要はなく、少なくとも、一方の故障を検出すればよい。この場合、例えば、低ガスばね油圧調整サブルーチン(図4)におけるステップS103,S113,S114を省略してバイパスバルブ63の閉故障検出を省略した構成、あるいは、ステップS108,S118,S119を省略してバイパスバルブ63の開故障検出を省略した構成などを採用することができる。
1…サスペンションシステム、10…サスペンション装置、11…車輪保持部材、20…油圧シリンダ、21…ハウジング、22…ピストン、31…主アキュムレータ(高ガスばね)、32…副アキュムレータ(低ガスばね)、50…油圧制御回路、51…個別給排通路、52…個別レート切替通路、53…個別バイパス通路、54…共通給排通路、61…レベリングバルブ、62…切替バルブ、63…バイパスバルブ、64…元バルブ、70…作動油給排装置、71…ポンプ装置、71a…ポンプ、71b…ポンプモータ、72…リザーバタンク、73…チェックバルブ、74…リターンバルブ、90…圧力センサ、100…電子制御ユニット(ECU)、110…運動検出センサ、120…操作検出センサ、W…車輪。

Claims (1)

  1. 車両の左右前後輪のそれぞれにおいて車輪保持部材と車体との間に設けられ、作動油を収容して前記車輪保持部材と前記車体との間の距離変化に合わせて伸縮する油圧シリンダと、
    前記左右前後輪の各油圧シリンダに対応して設けられ、第1ガス室と、前記油圧シリンダに連通する第1油室とを区画して備え、前記油圧シリンダの油圧に応じて前記第1油室に収容される作動油の量が変化して油圧系のばねとして機能する第1ガスばねと、
    前記各油圧シリンダに対応して設けられ、第2ガス室と、前記油圧シリンダに連通する第2油室とを区画して備え、前記油圧シリンダの油圧に応じて前記第2油室に収容される作動油の量が変化して油圧系のばねとして機能する第2ガスばねと、
    前記各油圧シリンダに対応して設けられ、前記油圧シリンダと前記第2ガスばねとの連通を許容する状態と遮断する状態とに切り替え可能なばね切替バルブと、
    前記各油圧シリンダに対して作動油の供給および排出を行うための作動油給排装置と、
    前記作動油給排装置に接続され作動油の流れる流路となる給排元通路、および、前記給排元通路の開閉を行う元バルブを有する給排油圧制御回路と、
    前記各油圧シリンダに対応して設けられ、前記油圧シリンダのそれぞれと前記給排元通路とを連通させる作動油の流路である車高調整用通路、および、前記車高調整用通路の開閉を行う車高調整用バルブを有する車高調整用油圧制御回路と、
    前記各油圧シリンダに対応して設けられ、前記ばね切替バルブおよび前記車高調整用バルブをバイパスして、前記第2ガスばねのそれぞれと前記給排元通路とを連通させる作動油の流路であるバイパス通路、および、前記バイパス通路の開閉を行うバイパスバルブを有する第2ガスばね用油圧制御回路と、
    前記ばね切替バルブおよび前記バイパスバルブを閉弁状態にし、前記元バルブおよび前記車高調整用バルブを開弁状態にして、前記作動油給排装置から各車輪の油圧シリンダへ作動油を供給して、各車輪位置の車高を目標車高まで上昇させる車高上昇制御手段と、
    前記元バルブに対して前記油圧シリンダ側であって、前記バイパスバルブに対して前記元バルブ側であり前記車高調整用バルブに対して前記元バルブ側となる作動油の流路に設けられ、前記流路の油圧を検出する油圧センサと、
    各車輪位置ごとに車高が目標車高にまで上昇したときの前記油圧センサにより検出される油圧を記憶する油圧記憶手段と、
    前記車高の目標車高への上昇が完了した後、前記第2ガスばねのそれぞれの油圧が前記油圧記憶手段に記憶された車輪位置に対応した油圧と等しくなるように、前記ばね切替バルブおよび前記車高調整用バルブを閉弁状態に維持したまま、一輪ずつ、前記バイパスバルブを開弁状態にして前記作動油給排装置から前記第2ガスばねへの作動油の供給を開始し、前記油圧センサにより検出される油圧が前記油圧記憶手段に記憶された車輪位置に対応した油圧に達したときに、前記バイパスバルブを閉弁状態にするとともに前記作動油給排装置の作動油供給動作を停止させる第2ガスばね油圧調整手段と、
    前記第2ガスばね油圧調整手段が前記バイパスバルブを開弁するための開弁指令を出力した後の前記油圧センサによって検出される油圧の変化、および、前記第2ガスばね油圧調整手段が前記バイパスバルブを閉弁するための閉弁指令を出力し、かつ、前記作動油給排装置の作動油供給動作を停止させた後の前記油圧センサによって検出される油圧の変化の少なくとも一方に基づいて、前記油圧の変化が所定の低下勾配を示さない場合に前記バイパスバルブが故障していると判定するバイパスバルブ故障検出手段と
    を備えたサスペンションシステム。
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