JP4534960B2 - サスペンション装置 - Google Patents

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Description

本発明は、前後左右の各輪毎に設けられた懸架シリンダの流体圧により作動させられるセンタシリンダを備えたサスペンション装置に関するものである。
特許文献1には、(a)前後左右の各輪毎に設けられた4つの懸架シリンダと、(b)4つの懸架シリンダの各々に接続された4つのセンタ液圧室を備え、それら4つの懸架シリンダの液圧により作動させられるセンタシリンダとを備えたサスペンション装置が記載されている。
米国特許第3024037号明細書
本発明の課題は、センタシリンダを備えたサスペンション装置において、車体が許容範囲を外れて大きく傾くことを回避しつつ、センタピストンの中立位置からのずれを小さくすることである。
請求項1に記載のサスペンション装置は、(i)車両の前後左右の各輪に対応して、各々、車輪を保持する車輪保持装置と車体との間に設けられた4つの懸架シリンダと、(ii)(a)ハウジングと、(b)そのハウジングに相対移動可能に嵌合されたセンタピストンと、(c)そのセンタピストンによって仕切られ、前記前後左右の各輪に対応する懸架シリンダにそれぞれ接続された4つのセンタ流体圧室とを含み、前記前後左右の各輪の懸架シリンダの流体圧により作動させられるセンタシリンダと、(iii)前記4つのセンタ流体圧室のうち、前記センタピストンの複数の受圧面のうちの互いに対向する面に対応する2つのセンタ流体圧室同士の間にそれぞれ設けられ、それら2つのセンタ流体圧室同士を、それぞれ、連通させる状態と遮断する状態とに切り換え可能な2つの連通制御弁とを含むサスペンション装置であって、前記センタシリンダが、少なくとも、前記2つのセンタ流体圧室同士が互いに連通させられた場合に、前記センタピストンを中央位置に戻す自己復帰部を含み、かつ、当該サスペンション装置が、前記2つの連通制御弁を連通状態とすることにより、前記センタピストンの中立位置からのずれを補正する位置補正装置を含むものとされる。
本項に記載のサスペンション装置において、センタピストンは、センタシリンダの非作動状態においては中立位置に保たれるのが望ましいが、〔実施例〕において述べるように、前後左右の各輪の荷重の差が大きい状態において車高調整が行われた場合等には中立位置からずれた位置で釣り合うことがある。
このセンタピストンの中立位置からのずれは、2つの連通制御弁の制御によって補正される。センタピストンが中立位置からずれた状態で、2つの連通制御弁を連通状態として、センタピストンの逆向きの受圧面に対応する2つのセンタ流体圧室同士(以下、一対のセンタ流体圧室と称する)を連通させれば、センタピストンは、自己復帰部により中立位置に近づけられる。このように、センタピストンを中立位置に近づけるために、2つの連通制御弁を連通状態とする制御を位置補正制御と称する。中立位置は、自己復帰部により決まる位置である。
請求項2に記載のサスペンション装置においては、前記位置補正装置が、(a)予め定められた開始条件が満たされた場合に、前記2つの連通制御弁を遮断状態から連通状態とし、前記2つの連通制御弁のうちの少なくとも一方によって接続された2つのセンタ流体圧室各々の流体圧に基づいて、前記少なくとも一方の連通制御弁が連通状態に切り換えられてから前記2つのセンタ流体圧室の流体圧差が予め定められた設定差以下になるまでに要する時間である連通時間を取得し、前記2つの連通制御弁が連通状態に切り換えられてから前記連通時間が経過した場合に、通常の終了条件が満たされたとして、前記2つの連通制御弁を遮断状態に切り換える通常終了部と、(b)前記通常の終了条件が満たされなくても、前記車体の姿勢と姿勢の変化との少なくとも一方に基づいて決まる強制的な終了条件が満たされた場合に連通状態から遮断状態とする強制終了部とを含むものとされる。
開始条件は、例えば、イグニッションスイッチが切り換えられた(ON状態からOFF状態、OFF状態からON状態)場合、車高調整が予め定められた設定回数以上行われた毎、走行距離が設定距離だけ増加した毎、車高がロー車高である場合等の1つ以上を含むものとすることができる。
通常の終了条件は、例えば、センタピストンが中立位置から大きくずれている場合に2つの連通制御弁を連通状態に切り換えることにより、センタピストンが中立位置まで戻ると考えられる連通時間が経過したこととすることができる。この場合には、連通時間の決定が通常の終了条件の決定に対応する。
連通時間は、開始時の一対のセンタ流体圧室の流体圧の各々に基づき、一対のセンタ流体圧室の間の流体圧差が設定差以下になるまでに要する時間として取得することができる。流体圧差が0、すなわち、一対のセンタ流体圧室の流体圧同士が同じ大きさになるまで連通状態を維持することが望ましいが、設定差は0より大きい値とすることもできる。また、流体圧差の設定差は、センタピストンが中立位置に近づく理想の大きさとすることができるが、設定差は、車体の姿勢や姿勢の変化が許容範囲から外れない大きさとすることもできる。設定差を一定とした場合、開始条件が満たされた場合の2つのセンタ流体圧室各々の流体圧差が大きい場合は小さい場合より、流体圧差が設定差以下になるのに要する時間である連通時間は長くなる。連通時間が長い場合は、車体の姿勢の変化も大きくなると推定される。したがって、例えば、連通時間が設定時間以上になった場合には、設定差を大きくして、連通時間が決定されるようにするのである。
なお、連通時間が予め定められた設定時間より長くなった場合には、位置補正制御自体が行われないようにすることも可能である。
また、通常の終了条件を、開始条件が満たされた場合の一対のセンタ流体圧室の圧力や車高等に基づいて、車体の姿勢や姿勢の変化が許容範囲から外れないように、2つの連通制御弁を連通状態に保つ連通時間を決定し、その連通時間が経過した場合に満たされたとすることもできる。この場合には、位置補正制御開始後に、実際の車体の姿勢や姿勢の変化を検出することが不可欠ではなくなるという利点がある。
強制的な終了条件は、請求項3に記載のように、実際の車体の傾きが大きくなったり、実際の姿勢の変化が大きくなったりした場合に、満たされる条件とすることができる。姿勢の変化が大きい場合には、傾斜角度の変化量が大きい場合、傾斜角度の変化速度が大きい場合等が該当する。
また、強制的な終了条件は、請求項4〜6に記載のように、2つの車輪の車高差が設定車高差以上になった場合、少なくとも1輪の車高の変化量が設定車高変化量以上になった場合、少なくとも1つの懸架シリンダの流体圧の変化量が設定流体圧変化量以上になった場合、これら車高差の変化速度が設定速度以上である場合、車高の変化速度が設定速度以上である場合、流体圧の変化速度が設定速度以上である場合等の少なくとも1つを含むものとすることができる。実際の車体の姿勢や姿勢の変化が許容範囲から外れたことが検出された場合、あるいは、車体の姿勢や姿勢の変化が許容範囲から外れる可能性が高いとされた場合(許容範囲から外れると予測された場合)に強制的な終了条件が満たされることになる。なお、2つの車輪についての車高差に基づいて終了条件が満たされるか否かが判定される場合には、一対のセンタ流体圧室に接続された懸架シリンダが設けられた2つの車輪であるか非かとは関係なく、車高差を検出する2つの車輪を決めることができる。
車体の姿勢は、例えば、車体の前後方向と横方向との少なくとも一方の傾斜角度で表すことができる。車体の姿勢は、(a)前後左右の各輪において、車輪と車体との相対位置である車高を検出する車高センサが設けられる場合に、前後輪あるいは左右輪に設けられた車高センサによる検出値の差として取得したり、(b)ピッチ角センサ、ロール角センサが設けられる場合に、これらセンサによる検出値として取得したりすることができる。
車体の姿勢の変化は、上述の車高差、ロール角、ピッチ角の変化として取得することができるが、それに限らず、前後左右の各輪のうちの少なくとも1輪についての車高の変化、4つの懸架シリンダのうちの少なくとも1つの流体圧の変化等に基づいて取得することもできる。連通制御弁の制御により、センタシリンダにおいて、センタ流体圧室の流体圧が変化すると、それに伴って、懸架シリンダの流体圧が変化し、車輪に加わる荷重が同じであれば、車高が変化する。また、センタ流体圧室の各々は、懸架シリンダの各々に接続されているため、4つの懸架シリンダ各々の流体圧、4輪の車高の各々は、互いに関連して変化する。したがって、少なくとも1輪についての車高の変化と少なくとも1つの懸架シリンダの流体圧の変化との少なくとも一方に基づけば、車体の姿勢の変化を取得することができる。車体の姿勢の変化には、位置補正開始時からの姿勢の変化量、位置補正開始後の姿勢の変化速度等が該当する。
いずれにしても、このように決められた通常のあるいは強制的な終了条件が満たされた場合に位置補正制御が終了させられた場合には、センタピストンが中立位置まで戻っていない場合がある。しかし、位置補正制御が行われない場合より、中立位置に近づけることが可能となる。
請求項7に記載のサスペンション装置においては、前記通常終了部が、前記開始条件が満たされた場合の、(a)前記2つの連通制御弁のうちの少なくとも一方によって接続された2つのセンタ流体圧室各々の流体圧と、(b)前記2つのセンタ流体圧室の各々に接続された2つの懸架シリンダが設けられた車輪の各々についての車高とに基づいて前記終了条件を決定する終了条件決定部を含むものとされる。
開始条件が満たされた場合の、一対のセンタ流体圧室の流体圧の各々と、一対のセンタ流体圧室に対応する車輪についての車高の各々とに基づけば、例えば、これらの流体圧の差が設定差以下になった場合の2つの車輪の間の車高差である車体の傾斜角度を推定することができる。一方、位置補正制御によって、車体の傾斜角度が大きくなることは望ましくない。そのため、流体圧の各々と、車高の各々とに基づいて、センタピストンを中立位置に近づけ、かつ、車体の傾斜角度が許容範囲外の大きさとならないように、連通時間が決定されることが望ましい。
例えば、流体圧差が設定圧以下になった場合の車体の傾斜角度が設定値以上である場合には、連通時間を短くしたり、設定圧(しきい値)を大きくし、車体の傾斜角度が許容できる傾斜角度以下となるように連通時間を決定したりすることができる。そのため、開始条件が満たされた場合の、2つのセンタ流体圧室各々の流体圧および2つの車輪の各々の車高と連通時間とを予めマップ化したり、演算式により、2つのセンタ流体圧室各々の流体圧と2つの車輪各々の車高とを入力すると連通時間が出力されるようにしたりすることが望ましい。
なお、流体圧差が設定圧力差以下になった場合の車体の傾斜角度が設定角度以上であると推定された場合、あるいは、取得された連通時間が設定時間以下である場合等には、位置補正制御自体が行われないようにすることもできる。
また、本項に記載のサスペンション装置によれば、終了条件が、車体が許容範囲を超えて傾かないように決定されるため、位置補正制御開始後に、左右車高差や流体圧の変化量を取得する必要がなくなるという利点もある。
請求項に記載のサスペンション装置は、(a)流体圧源と、(b)その流体圧源と前記4つの懸架シリンダの各々との間に設けられ、前記センタシリンダと前記懸架シリンダの各々とを連通状態に保った状態で、前記流体圧源と前記懸架シリンダの各々との間の流体の流れを制御可能な4つの個別制御弁と、(c)前記位置補正装置によって前記センタピストンが中立位置に近づけられた後に、少なくとも、前記2つの個別制御弁のうちの少なくとも1つを制御することにより、その個別制御弁に対応する懸架シリンダにおける作動液の流入・流出を制御し、その懸架シリンダが設けられた車輪と前記車体との相対位置である車高を調整し、前記車体の傾斜角度を小さくする位置補正終了時個別制御弁制御部とを備えた流入・流出制御装置を含むものとされる。
位置補正制御によって、車体が大きく傾いた場合等には、車高調整によって傾きが小さくされることが望ましい。車高調整においては、例えば、個別制御弁を開状態として懸架シリンダと流体圧源とを連通させた状態において、流体圧源の制御により、懸架シリンダに流体を供給したり、懸架シリンダから流体を排出させたりする。位置補正制御後に車高調整が行われた場合には、センタピストンが中立位置から遠ざかる場合もあるが、センタピストンのずれが累積された状態に比較して、適正な状態である。
なお、本願発明に係るサスペンション装置においては、位置補正制御が車体の姿勢や姿勢の変化に基づいて行われると考えることができる。
この位置補正制御において、センタピストンが中立位置に近づけられる(移動させられる)と、それに伴って車体の姿勢が変化するのが普通である。この車体姿勢の変化が大きいと、乗員がいる場合には違和感を感じ、乗員がいない場合には見栄えが悪くなる。そこで、2つの連通制御弁が、位置補正制御開始後の車体の姿勢と位置補正制御開始からの姿勢の変化との少なくとも一方に基づいて制御されるようにした。
例えば、位置補正制御が開始された後において、車体の傾斜角度が設定角度より小さい場合に位置補正制御が継続され、設定角度以上になった場合に終了させられるようにすることができる。位置補正制御が開始される時点の車体の傾斜角度が小さく、ほぼ水平となるように制御されている場合には、車体の傾斜角度が設定角度以上であることは、車体の姿勢が大きく変化したことに対応する。この場合には、位置補正制御開始後の車体の傾斜角度は、傾斜角度の変化量であると考えることができる。
また、位置補正制御が開始された後の、車体の傾斜角度の変化量が設定値以上で、かつ、傾斜角度が設定角度以上である場合に、位置補正制御が終了させられ、それ以外の場合に継続されるようにすることができる。傾斜角度の変化量が大きくしても、車体の傾斜角度が小さい場合があるからである。特に、車体が傾斜している状態から位置補正制御が開始された場合には、位置補正制御により傾きが小さくなることがある。
いずれにしても、位置補正制御開始後の、車体の姿勢や姿勢の変化に基づかない場合に比較して、車体の傾きが許容範囲を外れて大きくなることを回避しつつ、センタピストンの中立位置からのずれを補正することができる。
以下、本発明の一実施例としてのサスペンション装置を、図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、前後左右の各輪4FL、FR、RL、RRにおいて、それぞれ、車輪保持装置6FL、FR、RL、RRと車体8との間に、懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRが、サスペンションスプリングとともに設けられる。懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRは作動液により作動させられる。
懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRは、互いに構造が同じものであり、それぞれ、ハウジング11と、ハウジング11の内部を相対移動可能に嵌合されたピストン12と、ピストンロッド14とを含み、ピストンロッド14が車体8に、ハウジング11が車輪保持装置6に、それぞれ上下方向に相対移動不能に連結される。ピストン12には、そのピストン12により仕切られた2つの液室16,18を連通させる連通路20が設けられ、連通路20には絞りが設けられる。絞りにより、ピストン12のハウジング11に対する相対移動速度(絞りを流れる作動液の流速)に応じた減衰力が発生させられる。懸架シリンダ10はショックアブソーバとして機能する。
図1に示すように、ピストンロッド14は、サスペンションスプリング21を保持するスプリングリテーナ22にゴム等の弾性部材を介して取り付けられ、スプリングリテーナ22が車体8に上下方向に相対移動不能に取り付けられる。また、スプリングリテーナ22には、バウンド側ストッパ24が取り付けられる。バウンド側ストッパ24にシリンダ本体11の上端面26が当接することによってバウンド側の移動限度が規定される。
それに対して、ピストン12のピストンロッド14が設けられた側にはリバウンド側ストッパ28が設けられる。リバウンド側ストッパ28に本体11の内側上端面30が当接することにより、リバウンド側の移動限度が規定される。
懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの液室16には、それぞれ、個別連通路32FL、FR、RL、RRが接続される。
個別連通路32FL、FR、RL、RRの各々には、懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの各々に対応して、互いに並列にアキュムレータ34FL、FR、RL、RRとアキュムレータ36FL、FR、RL、RRとが接続される。また、懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRとアキュムレータ36FL、FR、RL、RRとの間には、それぞればね定数切換弁38FL、FR、RL、RRが設けられる。
これらアキュムレータ34、36は、いずれもばねとしての機能を有するものであり、車輪4と車体8との相対移動に伴って弾性力を発生させる。
アキュムレータ34,36は、例えば、ハウジングとそのハウジングの内側を仕切る仕切部材とを含み、その仕切部材の一方の容積変化室に個別連通路32が連通させられ、他方の容積変化室に弾性体が設けられたものであり、一方の容積変化室の容積の増加に起因して他方の容積変化室の容積が減少し、それによって弾性力を発生させるものとすることができる。アキュムレータ34,36は、ベローズ式のものとしたり、ブラダ式のものとしたり、ピストン式のものとしたりすること等ができる。
本実施例においては、アキュムレータ34の方がアキュムレータ36よりばね定数が大きいものとされており、以下、アキュムレータ34を高圧アキュムレータと称し、アキュムレータ36を低圧アキュムレータと称する。ばね定数切換弁38は、常開の電磁開閉弁である。
個別連通路32FL、FR、RL、RRには、それぞれ、可変絞り40FL、FR、RL、RRが設けられる。前述のように、車輪保持装置6の車体8に対する相対的な上下動により液室16において作動液が流入・流出させられるが、この場合に、可変絞り40によって個別連通路32の流路面積が制御されることにより、懸架シリンダ10において発生させられる減衰力が制御される。本実施例においては、可変絞り40等により減衰力調整機構が構成される。
懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの各々は、個別連通路32FL、FR、RL、RRを介してセンタシリンダ48に接続される。センタシリンダ48は、3つのピストンが連結されて成るピストン組立体としてのセンタピストン50と、そのセンタピストン50を液密かつ摺動可能に収容するシリンダハウジング51とを含む。センタピストン50は、図1の右側から順に、第一ピストン52,第二ピストン53および第三ピストン54を有し、第一ピストン52と第二ピストン53、第二ピストン53と第三ピストン54がそれぞれ連結ロッド56,58により直列に連結されている。
シリンダハウジング51は大径部と小径部とを備えた段付き状のシリンダボアを備え、そのシリンダボアにセンタピストン50が嵌合されることにより、ハウジング51内に4つの液室が形成されている。シリンダボアの大径部に第二ピストン53が嵌合され、小径部にそれぞれ第一ピストン52,第三ピストン54が嵌合される。したがって、第一ピストン52,第三ピストン54の直径は、第二ピストン53の直径より小さい。また、第一ピストン52,第三ピストン54の直径は互いに同じである。
第一ピストン52の第二ピストン53とは反対側が第一液室60、第一ピストン52と第二ピストン53との間が第二液室61、第二ピストン53と第三ピストン54との間が第三液室62、第三ピストン54の第二ピストン53とは反対側が第四液室63とされる。また、第一ピストン52において、第一液室60側が外側受圧面65とされて、第二液室61側が内側受圧面66とされる。また、第二ピストン53において、第二液室61側が内側受圧面67とされ、第三液室62側が内側受圧面68とされるとともに、第三ピストン54において、第三液室62側が内側受圧面69とされ、第四液室63側が外側受圧面70とされる。
本実施例においては、第一〜第四液室60〜63がセンタ液圧室に該当する。
第一液室60,第四液室63には、それぞれ、右前輪4FRの懸架シリンダ10FRの液室16,左前輪4FLの懸架シリンダ10FLの液室16が個別連通路32FR、FLを介して接続される。その結果、センタピストン50の外側受圧面65は、右前輪4FRの懸架シリンダ10FRの液室16の液圧(以下、懸架シリンダの液圧と称する)を受け、外側受圧面70は左前輪4FLの懸架シリンダ10FLの液圧を受ける。本実施例においては、第一ピストン52と第三ピストン54との直径が等しく、外側受圧面65と外側受圧面70との受圧面積も等しい。
また、互いに隣接する第一ピストン52と第二ピストン53との間の第二液室61には、個別連通路32RLにより左後輪4RLの懸架シリンダ10RLが接続され、第二ピストン53と第三ピストン54との間の第三液室62には個別連通路32RRにより右後輪4RRの懸架シリンダ10RRが接続される。
それに対して、第二液室61の両側の互いに反対向きである第一ピストン52の内側受圧面66と第二ピストン53の内側受圧面67とは、左後輪4RLの懸架シリンダ10RLの液圧を受ける。しかし、2つのピストンのうち直径の小さい第一ピストン52に加える力は、直径の大きい第二ピストン53の内側受圧面67のうち第一ピストン52の内側受圧面66と等しい受圧面積の部分に加える力により相殺される。そのため、センタピストン50の第二液室61の液圧に対する有効受圧面積は、第二ピストン53の内側受圧面67の受圧面積から第一ピストン52の内側受圧面66の受圧面積を差し引いた大きさとなる。同様に、センタピストン50の第三液室62の液圧に対する有効受圧面積は、第二ピストン53の内側受圧面68の受圧面積から第三ピストン54の内側受圧面69の受圧面積を差し引いた大きさとなる。つまり、センタピストン50には、第二液室61,第三液室62の液圧と、上述した有効受圧面積との積で表される力がそれぞれ作用することになる。
また、前述のように、第一ピストン52の直径と第三ピストン54の直径は等しいため、センタピストン50の第二液室61に対する有効受圧面積と第三液室62に対する有効受圧面積も等しい。さらに、本実施例においては、センタピストン50の第二液室61および第三液室62に対する有効受圧面積が、第一液室60および第四液室63に対する受圧面積と等しくなるように、第2ピストン53の直径が決定されている。
したがって、センタピストン50において、同じ側の2つの受圧面65,67にはそれぞれ、右前輪4FR、左後輪4RLの懸架シリンダ10FR,10RLの液圧に応じた力FFR、FRLを受け、2つの受圧面65,67とは反対側の2つの受圧面70,68には、それぞれ、左前輪4FL,右後輪4RRの懸架シリンダ10FL,10RRの液圧に応じた力を受ける。
また、センタシリンダ48において。センタピストン50の外側受圧面65とハウジング51の端面との間、外側受圧面70とハウジング51の端面との間には、それぞれ、自己復帰部としてのリターンスプリング71,72が設けられる。
本サスペンション装置には、流入・流出制御装置としての作動液給排装置74が設けられる。作動液給排装置74は、高圧源76、低圧源78としてのリザーバ、個別制御弁装置80等を含む。
高圧源76は、ポンプ81とポンプモータ82とを備えたポンプ装置84、蓄圧用アキュムレータ86等を含む。ポンプ装置84,蓄圧用アキュムレータ86等は制御通路88に設けられる。ポンプ81によってリザーバ78の作動液が汲み上げられて吐出され、蓄圧用アキュムレータ86において加圧した状態で蓄えられる。蓄圧用アキュムレータ86は常閉の電磁開閉弁である蓄圧制御弁90を介して制御通路88に接続される。制御通路88には、液圧センサ92が設けられる。液圧センサ92によれば、ポンプ81の吐出圧やアキュムレータ圧を検出することができる。
制御通路88のポンプ81の吐出側には、逆止弁94,消音用アキュムレータ96が設けられる。また、ポンプ81の高圧側と低圧側とを接続する流出通路104が設けられ、流出通路104に流出制御弁106が設けられる。
流出制御弁106は、ポンプ81の吐出圧をパイロット圧とするメカ式の開閉弁である。ポンプ81の非作動時には連通状態にあるが、ポンプ81の作動により吐出圧が高くなると遮断状態とされる。ポンプ81は、ギアポンプである。
個別制御弁装置80は、個別制御通路108FL、FR、RL、RRに設けられた個別制御弁110FL、FR、RL、RRを含む。個別制御通路108FL、FR、RL、RRは制御通路88と個別連通路32FL、FR、RL、RRとをそれぞれ接続する通路である。また、個別制御通路108FL、FRを接続する前輪側左右連通路111に左右連通弁112が設けられ、個別制御通路108RL、RRを接続する後輪側左右連通路113に左右連通弁114が設けられる。なお、個別制御通路108と個別連通路32とによって、懸架シリンダ10と制御圧通路88とがそれぞれ接続される。
本実施例においては、個別制御弁110が閉状態にされると懸架シリンダ10が液圧源98から遮断されるが、センタシリンダ48とは連通状態にある。
これら個別制御弁110FL、FR、RL、RR、左右連通弁112,114は、常閉の電磁開閉弁であり、左右連通弁112,114の遮断状態において個別制御弁110FL、FR、RL、RRを個別に制御することにより、各車輪4FL、FR、RL、RRの各々において、車輪保持装置6FL、FR、RL、RRとそれに対応する車体8の部分(懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRに対応する部分)との間の距離である車高が独立に制御可能とされる。
本サスペンション装置は、コンピュータを主体とする車高調整ECU200によって制御される。車高調整ECU200は、実行部204,記憶部206,入出力部208等を含み、入出力部208には、ばね定数切換弁38、可変絞り40のコイル、作動液給排装置74(蓄圧用制御弁90,個別制御弁110,左右連通弁112、114のコイル、ポンプモータ82等)が図示しない駆動回路を介して接続されるとともに、液圧センサ92,前後左右の各輪毎に設けられ、車高をそれぞれ検出する車高センサ220,個別液通路32FL、FR、RL、RRにそれぞれ設けられた液圧センサ221,車両の走行状態を検出する走行状態検出装置222,車高調整モード選択スイッチ224,車高調整指示スイッチ226、イグニッションスイッチ227等がそれぞれ接続される。
液圧センサ221は、センタシリンダ48の第一〜第四液室60〜63の液圧を検出するものである。第一〜第四液室60〜63各々の液圧は、定常状態においては、懸架シリンダ10FL、FR、RL、RR各々の液圧と同じである。
走行状態検出装置222は、車両の走行状態を検出するものであり、車速センサ228等を含む。
車高調整モード選択スイッチ224は、運転者によって操作されるものであり、スイッチ224の操作により、自動モードとマニュアルモードとのいずれか一方が選択される。
車高調整指示スイッチ226は、車高を増大させる場合、車高を減少させる場合等に操作されるスイッチで、運転者のマニュアル操作によって切り換えられる。
記憶部206には、図2のフローチャートで表される左右連通制御プログラム等が記憶される。
以上のように構成されたサスペンション装置における作動について説明する。
センタシリンダ48において、センタピストン50には、各車輪に設けられた懸架シリンダ10の液圧に応じた力(その液圧と、それに対応する受圧面の受圧面積との積で表される力)が作用し、原則として、静止状態においては、これらが釣り合っている。
車体にピッチング、例えば、車両の前側において車輪保持装置6と車体8との間の距離が減少して後側において増大した場合(例えば、制動した場合等)、左右前輪4FL,4FRの懸架シリンダ10FL,10FRの液圧が高くなり、左右後輪4RL,4RRの懸架シリンダ10RL,10RRの液圧が低くなる。そのため、第一ピストン52,第三ピストン54のそれぞれの外側受圧面65,70に作用する液圧が高くなり、第二ピストン52の内側受圧面67,68に作用する液圧が低くなる。この場合には、センタピストン50に作用する力の釣り合いの状態は変わらないため、センタピストン50の移動が抑制され、各懸架シリンダ10は、それぞれ独立しているに等しい状態となり、大きな減衰力が発生させられ、車両のピッチングが効果的に抑制される。
車体にローリング、例えば、車両の左側において車輪保持装置6と車体8との間の距離が増大して右側において減少した場合(例えば、左旋回時等の場合)、左前輪4FL、左後輪4RLの懸架シリンダ10FL,10RLの液圧が低くなり、右前輪4FR、右後輪4RRの懸架シリンダ10FR,10RRの液圧が高くなる。それに応じ、第三ピストン54の外側受圧面70および第二ピストン53の内側受圧面67に作用する液圧が低くなり、第一ピストン52の外側受圧面65および第二ピストン53の内側受圧面68に作用する液圧が高くなる。ローリング時にもセンタピストン50に作用する力の釣り合い状態が変わらない場合には、各懸架シリンダ10は、それぞれ独立しているに近い状態(極端に言えば、センタシリンダ48がなきに等しい状態)となり、ピストン12の移動に伴って懸架シリンダ10の各々において大きい減衰力が発生させられて、ローリングが効果的に抑制される。
路面から、前後左右の車輪の1つに入力が加わった場合、例えば、左前輪4FLに設けられた懸架シリンダ10FLに車輪保持装置6と車体8との間の距離を小さくする力が加わった場合(例えば左前輪FLが路面の隆起に乗り上げたような場合)あるいは車体8の対角位置にある車輪にそれらを同相移動させる力、例えば、懸架シリンダ10FL,10RRに車輪保持装置6と車体8との間隔を小さくする力が加わった場合には懸架シリンダ10FL,10RRの液圧が高くなり、懸架シリンダ10FR,10RLの液圧が低くなる。これに伴い、第三ピストン54の外側受圧面70および第二ピストン52の内側受圧面68に作用する液圧が高くなり、第二ピストン52の内側受圧面67および第一ピストン52の外側受圧面65に作用する液圧が低くなる。それによって、センタピストン50は、図1において右方へ移動する。その結果、第四液室63および第三液室62の容積が大きくなり、第二液室61,第一液室60の容積が小さくなる。したがって、懸架シリンダ10FL,10RRから作動液が流出するとともに懸架シリンダ10FR,10RLに流入し、あたかも、センタシリンダ48を介して2つの懸架シリンダ10FL,10RRと2つの懸架シリンダ10FR,10RLとが連通させられ、それらの間で作動液の授受が行われるに等しい状態となる。
懸架シリンダ10の各々において、減衰特性が可変絞り40の制御により制御される。
可変絞り40により個別連通路32の流路面積が小さくされた場合には、サスペンションの硬さがハード(車輪と車体との上下方向の相対移動速度が同じ場合の減衰力が大きくなる状態)となり、流路面積が大きくされた場合にはソフト(相対移動速度が同じ場合の減衰力が小さくなる状態)となる。サスペンションの硬さは、図示しないモード選択スイッチの運転者による操作に応じて切り換えられるが、車両の走行状態に基づいて制御されるようにすることもできる。
また、ばね定数切換弁38の制御によりばね定数が切り換えられる。
ばね定数切換弁38が連通状態とされた場合には、液室16に2つのアキュムレータ34,36が連通させられて、ばね定数が小さい状態とされ、ばね定数切換弁38が遮断状態とされた場合には、液室16から低圧アキュムレータ36が遮断されて高圧アキュムレータ34が連通させられるため、ばね定数が大きい状態とされる。
4つの車輪4FL,FR,RL,RRに対応する車高が作動液給排装置74により制御される。
左右連通弁112,114、個別制御弁110は、通常は、図示する原位置にある。例えば、左前輪4FLについて、車輪保持装置6FLと車体8の左前輪4FLに対応する部分との間の距離である車高を大きくする場合には、個別制御弁110FLが連通状態とされて、ポンプ81が作動させられる。ポンプ81の作動により流出制御弁106が遮断状態とされるため、ポンプ81から吐出された作動液が懸架シリンダ10FLに供給され、車高が大きくなる。実際の車高が目標値に達すると、個別制御弁110FLが遮断状態とされ、ポンプ81の作動が停止させられる。
車高を小さくする場合は、個別制御弁110FLが連通状態とされる。ポンプ81は停止状態にあるため、流出制御弁106は連通状態にある。懸架シリンダ10FLからリザーバ78に作動液が流出させられる。実際の車高が目標値に達すると、個別制御弁110FLが遮断状態とされる。
一方、センタシリンダ48において、センタピストン50は、静止状態において、リターンスプリング71,72によって決まる中立位置にあることが望ましい。しかし、中立位置からずれた位置で釣り合うことがある。
前述のように、センタピストン50には、各車輪に設けられた懸架シリンダ10の液圧に応じた力(その液圧と、それに対応する受圧面の有効受圧面積との積で表される力)が作用し、静止状態においては、原則としてこれらは釣り合っている。しかし、各懸架シリンダ10の液圧は常に同じとは限らない。懸架シリンダ10の液圧が変化すると、センタピストン50は、これらが釣り合う位置まで移動させられて、静止する。また、この状態から車高調整が行われることがある。
例えば、人の乗降り、荷物の積載の有無等により、各輪4FL、FR、RL、RR に対する荷重は変化する。懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRが、サスペンションスプリング21とともに、車輪保持装置6FL、FR、RL、RRと車体8との間に設けられた場合に、車輪4FL、FR、RL、RRに加えられる荷重は、それぞれ、サスペンションスプリング21と懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの液圧とで受けられる。そのため、荷重が変化したからといって、そのままの変化が懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの液圧に生じるわけではない。しかし、作動液給排装置74により各輪の車高が同じとされた場合には、これら各輪において、サスペンションスプリング21の弾性力が同じとなり、懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの液圧が荷重に応じた大きさとなる。荷重の変化に応じて各懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの液圧が変化し、それによって、センタピストン50は、各懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの液圧により加えられる力が釣り合う位置まで移動して静止する。
また、各輪4FL、FR、RL、RRに加わる荷重が一定であっても、車高調整が行われることによって、懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの液圧が変わることがある。例えば、個別の車高調整により、前後左右の各輪の実際の車高が同じ高さまで高くされる場合、車体の重量は、主として、車高が最も高い3輪(3点)で支持されるため、最後に作動液の流入・流出が行われる懸架シリンダにおいては、他の3輪の懸架シリンダにおけるより液圧が低い状態で車高が目標車高に達する。この場合には、各輪に加わる荷重が一定であっても、懸架シリンダ10の液圧が変化し、センタピストン50は各懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの液圧により加えられる力が釣り合う位置まで移動させられる。
このように、各輪の懸架シリンダ10の液圧が変わったり、車高調整が行われたりすると、センタピストン50は各輪の懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの液圧により加えられる力が釣り合う位置まで移動させられる。このセンタピストン50の移動の繰り返しにより、静止状態におけるセンタピストン50の位置が中立位置から大きくずれる可能性がある。この中立位置からのずれは、各輪の懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの液圧が互いに大きく異なる状態で車高調整が行われると特に大きくなり、極端な場合、センタピストン50がハウジング51の一方の端部に当接した位置で静止することもある(ボトミング)。それによって、センタシリンダ48の機能が充分に発揮されないことがある。例えば、路面から、前後左右の車輪4FL、FR、RL、RRの1つに入力が加わった場合、あるいは車体8の対角位置にある車輪にそれらを同相移動させる力が加わった場合に、センタピストン50が移動し難くなり、路面からの力がサスペンションにおいて吸入され難くなって、乗り心地が悪くなる。
そこで、本実施例においては、予め定められた位置補正開始条件(以下、単に開始条件と称する)が満たされると、左右連通弁112,114が連通状態に切り換えられるのであり、位置補正制御が行われる。しかし、左右連通弁112,114が開状態に切り換えられて、第一〜第四液室60〜63の液圧が変化すると、それに伴って、各懸架シリンダ10の液圧が変化し、車高が変化するため、車体8が大きく傾くことがある。そのため、位置補正制御において車体8が大きく傾いたと推定された場合、大きく傾いたことが検出された場合等には、位置補正制御が強制的に終了させられるようにされている。
図2のフローチャートで表される左右連通制御プログラムは、予め定められた設定時間毎に実行される。S1において、開始条件が満たされるか否かが判定される。開始条件は、例えば、イグニッションスイッチ227がOFF状態からON状態、あるいは、ON状態からOFF状態に切り換えられた場合、走行距離が設定距離だけ増加した場合、車高調整が予め定められた設定回数以上行われた場合、車高がロー車高である場合等の少なくとも1つが満たされた場合に、満たされたとすることができる。車高がロー車高である場合には、各輪の荷重は、主としてサスペンションスプリング21によって支持されるため、懸架シリンダ10の液圧が小さくなっている。したがって、左右連通弁112,114を連通状態に切り換えた場合に、センタピストン50を、より中立位置に近づけることができる。
開始条件が満たされた場合には、S2において、少なくとも一対のセンタ液圧室の液圧、すなわち、第一液室60および第四液室63の液圧、および/あるいは、第二液室61および第三液室62の液圧が検出される。本実施例においては、第一液室60の液圧PR0,第四液室63の液圧PL0が検出される。S3において、左右連通弁112,114が連通状態とされることにより、これら液圧PR、PLの差が小さくなるが、液圧差の絶対値が予め定められた設定値(例えば、0とすることができるが、0より大きい値とすることもできる)以下となるのに要する時間である連通時間T0が求められ、S4において、位置補正制御を行うことが妥当であるか否かが判定される。
例えば、S3において取得された連通時間T0が非常に長い(設定時間以上である)場合には、この位置補正制御によって車体8が大きく傾くおそれがあると考えられる。そのため、その場合には位置補正制御は行われない方がよいと考えられるのである。本実施例においては、連通時間T0が決定される場合の液圧差の設定値はセンタピストン50の中立位置からのずれが小さくなる値、すなわち、理想的な値とされる。
位置補正制御を行うことが適切であると判断された場合には、S4の判定がYESとなり、S5において、左右連通弁112,114が遮断状態から連通状態に切り換えられて、位置補正制御が開始される。開始後、S6において、第一液室60の液圧PR,第四液室63の液圧PLが検出され、S7において、第一液室60,第四液室63の各々について液圧の変化量の絶対値が取得される。
ΔPR=|PR−PR0|
ΔPL=|PL−PL0|
次に、S8において、これら液圧の変化量の絶対値の少なくとも一方がしきい値Pth以上になったか否かが判定される。しきい値Pthより小さい間は、S9において、連通時間T0が経過したか否かが判定され、経過する以前においてはS6に戻される。S6〜9が繰り返し実行されて、位置補正制御が継続して行われる。
位置補正制御は、連通時間T0が経過してS9の判定がYESとなった場合、あるいは、連通時間T0は経過しないが、液圧変化量ΔPR、ΔPLの少なくとも一方がしきい値Pth以上となって、S8の判定がYESとなった場合に、終了させられるのであり、S10において、左右連通弁112,114が遮断状態に戻される。
S9の判定がYESになって終了する場合には、位置補正制御によりセンタピストン50が中立位置まで戻されたと考えることができるが、S8の判定がYESとなって終了した場合には、位置補正制御が中断させられたのであり、強制的に終了させられたと考えられる。したがって、センタピストン50は中立位置には戻されていないと考えられる。しかし、センタピストン50を位置補正制御前より中立位置に近づけることが可能となる。
また、S8における判定がYESであることは、位置補正制御の継続を許可し、判定がNOであることは、位置補正制御の継続を禁止したことに対応する。その意味において、S8のステップにおける判定を、継続、中止判定と称することができる。
以上のように、本実施例においては、車高調整ECU200の図2の左右連通制御プログラムを記憶する部分、実行する部分等により位置補正装置が構成される。位置補正装置は連通制御部でもある。そのうちの、S8を記憶する部分、実行する部分等により圧力変化対応終了部が構成される。また、S9,10を記憶する部分、実行する部分等により通常終了部が構成され、S8,10を記憶する部分、実行する部分等により強制終了部が構成される。通常終了部は差圧対応終了部でもある。
なお、上記実施例においては、S2において、一対のセンタ液圧室の液圧(第一液室60,第四液室63の液圧)が検出され、S3において、これらの差の絶対値が設定値以下となるように連通時間T0が取得されるようにされていたが、S2において、第一液室60,第四液室63の液圧PR0、PL0と、第一液室60,第四液室63に接続された懸架シリンダ10FR、FLが設けられた車輪4FR、FLの車高HR0、HL0との両方が検出され、車高差の絶対値が設定値以上にならないように、連通時間T1が取得されるようにすることもできる。
その場合の一例を図3のフローチャートで表す。
S31において、第一、第四液室60,63の液圧PR0、PL0と、車輪4FR、FLの車高HR0、HL0とが検出され、S32において、これらに基づいて連通時間T1が取得される。2つの左右連通弁112,114を連通させた場合、液圧差の絶対値|PR−PL|が設定値以下になった場合の車高差の絶対値|HR−HL|を推定することが可能である。この車高差の絶対値が大きくなることは望ましくない。そのため、例えば、車高差の絶対値|HR−HL|が大きくなった場合には連通時間を短くするのである。一方、連通時間を短くすると、センタピストン50を充分に中立位置まで近づけることができない。そこで、本実施例においては、位置補正制御後のセンタピストン50の位置と車体8の傾きとの両方を考慮しつつ連通時間T1が決められるのであり、車体8の傾きが許容範囲から外れることなく、かつ、センタピストン50を中立位置に近づけ得るように連通時間が決定されることになる。
例えば、開始条件が満たされた場合の流体圧、車高と連通時間との関係を表すマップを予め記憶しておけば、流体圧の各々と車高の各々とから連通時間を求めることができる。また、流体圧の各々と車高の各々とを入力すれば連通時間が出力される演算式を予め記憶しておくこともできる。
連通時間T1が決定された後、S33において、位置補正制御が行われることが適正であるか否かが判定される。例えば、両方を考慮した結果、連通時間が設定時間以下である場合には、位置補正制御に起因する姿勢の変化が大きいと考えられるため、位置補正制御が行われないようにする方が望ましいと判定することができるのである。
その後、S34において、左右連通弁112,114が連通状態とされ、S35において、連通時間T1が経過したか否かが判定される。連通時間T1が経過する以前においては、左右連通弁112,114は連通状態に保たれるが、連通時間T1が経過すると、S35の判定がYESとなり、S10において、位置補正制御が終了させられるのであり、2つの連通制御弁112,114が遮断状態とされる。
このように、連通時間が、センタピストン50の位置と車体8の傾きとの調和を図って決定されるため、連通時間が経過するまで、2つの左右連通弁112,114が連通状態に保たれるようにすれば、車体8の傾きを抑制しつつ、センタピストン50を中立位置に近づけることが可能となる。その結果、位置補正制御の開始後に、流体圧や車高の変化を検出する必要がなくなるという利点がある。
本実施例においては、S31,32を記憶する部分、実行する部分等により終了条件決定部が構成される。
また、図2のフローチャートで表される位置補正制御プログラムにおいては、S2,6において、第一、第四液室60,63の液圧が検出され、S7において、液圧の変化量の絶対値が求められるようにされていたが、S2においては、連通時間T0を決定するために液圧PR0,PL0が検出されるとともに、左前輪4FLの車高HL0、右前輪4FRの車高HR0が検出され、S6において、左前輪4FLの車高HL、右前輪4FRの車高HRが検出され、S7において、車高の変化量の絶対値が取得され、
ΔHR=|HR−HR0|
ΔHL=|HL−HL0|
S8において車高の変化量の絶対値がしきい値以上である場合に、位置補正制御が終了させられるようにすることもできる。
本実施例においては、右前輪4FR、左前輪4FLの少なくとも一方についての車高の変化量の絶対値がしきい値以上になった場合に、位置補正制御が強制的に終了させられることになる。
さらに、図2のフローチャートで表される位置補正制御プログラムのS6、7においては、第一液室60,第四液室63の液圧変化量がしきい値以上であるか否かが判定されるようにされていたが、第一液室60、第四液室63の液圧変化量に限らず、他の液室61,62の液圧の変化量がしきい値以上であるか否かが判定されるようにすることができる。センタシリンダ48において、センタピストン50における釣り合いにより、すべての第一〜第四液室60〜63の液圧は互いに関連して変化するからである。
また、車高の変化量が検出される場合も同様であり、前後左右の各輪4のうち、いずれの車輪の車高の変化が検出されてもよい。左右連通弁112,114を連通状態に切り換えることにより、懸架シリンダ10FL、FR、RL、RRの液圧が関連して変化し、車高も関連して変化するからである。車体8は剛体であるため、それによっても、各輪の車高の変化の関係が決まる。
さらに、上記実施例においては、開始条件が満たされた場合の一対のセンタ液圧室60,63の液圧に基づいて連通時間T0が求められるようにされていたが、連通時間を取得する事は不可欠ではない。その場合の一例である左右連通制御プログラムのフローチャートを図4に表す。
S1において、開始条件が満たされるか否かが判定される。開始条件が満たされた場合には、S51において、左右連通弁112,114が遮断状態から連通状態に切り換えられる。そして、S52において、左右前輪4FL,4FRの車高あるいは左右後輪4FL,4FRの車高が検出されて、これらの左右車高差の絶対値ΔHRLが取得される。左右車高差の絶対値は、車体8の左右方向の傾斜角度に対応する。
ΔHRL=|HR−HL|
S53において、左右車高差ΔHRL の絶対値がしきい値Hthより大きいか否かが判定され、しきい値以下である場合には、S54の判定がNOとなり、S55において、設定時間Tsが経過したか否かが判定される。設定時間Tsは、通常、左右連通弁112,114を連通状態に切り換えてからセンタピストン50が中立位置まで戻ると考えられる時間であり、予め設定される。S54,55の判定がNOである場合には、S52〜55が繰り返し実行されて、位置補正制御が継続して行われる。設定時間Tsが経過した場合、左右車高差がしきい値以上になった場合には、S10において位置補正制御が終了させられる。
このように、本実施例においては、左右車高差がしきい値以上になるまで位置補正制御が行われるのであり、車体8の傾きを抑制しつつ、センタピストン50を中立位置に近づけることができる。また、本実施例によれば、液圧センサ221を設ける必要がなくなり、その分、コストダウンを図ることができる。
本実施例においては、車高調整ECU200のS54,10を記憶する部分、実行する部分等により左右車高差対応終了部が構成される。位置補正制御開始時に車体8がほぼ水平にある場合には、左右車高差対応終了部は、車高変化対応終了部でもある。
なお、図4のフローチャートのS53において、左右の車高差の代わりに、車高の変化勾配(dH/dt)が検出されるようにすることができる。S54において、変化勾配がしきい値以上である場合には位置補正制御が終了させられるようにするのである。車高の変化勾配が大きい場合には、車体の傾きが大きくなると予測されるからである。
また、車高差の絶対値の変化勾配(dΔHRL/dt)に基づいて判定が行われるようにすることもできる。車高差の絶対値の変化勾配が正の値である場合には、車高差が大きくなる向きに変化することがわかり、変化勾配の絶対値が大きい場合には、車高の変化速度が大きいことがわかる。したがって、車高差の絶対値の変化勾配(dΔHRL/dt)が正の設定値以上である場合には、位置補正制御が中止させられるようにすることが望ましい。
さらに、車高差と変化勾配との両方に基づいて終了条件が決められるようにすることもできる。
また、左右連通制御が行われた後に、車高調整が行われるようにすることもできる。その場合の一例を図5のフローチャートで表す。S71において、左右連通制御が行われ、S72において、車高調整要求があるか否かが判定される。車高調整要求がある場合には、S73において車高調整が行われる。例えば、車体8が大きく傾いている場合(左右前輪の平均車高と左右後輪の平均車高との差が設定値以上である場合、4輪各々における車高の差の最大値が設定値以上である場合等)には、車体8を水平にするために、車高調整が行われるのである。
このように、位置補正終了後に車高調整が行われると、センタピストン50は、再び、中立位置から遠ざかることがある。しかし、センタピストン50の釣り合い位置が累積的にずれている場合より望ましい。本実施例においては、車高調整ECU200の図5のフローチャートで表される位置補正後車高調整プログラムを記憶する部分、実行する部分等により位置補正制御終了時個別制御弁制御部が構成される。
本発明は、前述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
本発明の一実施例であるサスペンション装置全体を表す図である。 上記サスペンション装置の車高調整ECUの記憶部に記憶された左右連通制御プログラムを表すフローチャートである。 上記車高調整ECUの記憶部に記憶された別の左右連通制御プログラムを表すフローチャートである。 上記車高調整ECUの記憶部に記憶された別の左右連通制御プログラムを表すフローチャートである。 上記車高調整ECUの記憶部に記憶された位置補正制御終了時車高調整プログラムを表すフローチャートである。
符号の説明
10:懸架シリンダ 48:センタシリンダ 50:センタピストン 71,72:リターンスプリング 112,114:左右連通弁 200:車高調整ECU 220:車高センサ 221:液圧センサ

Claims (8)

  1. 車両の前後左右の各輪に対応して、各々、車輪を保持する車輪保持装置と車体との間に設けられた4つの懸架シリンダと、
    (a)ハウジングと、(b)そのハウジングに相対移動可能に嵌合されたセンタピストンと、(c)そのセンタピストンによって仕切られ、前記前後左右の各輪に対応する懸架シリンダにそれぞれ接続された4つのセンタ流体圧室とを含み、前記前後左右の各輪の懸架シリンダの流体圧により作動させられるセンタシリンダと、
    前記4つのセンタ流体圧室のうち、前記センタピストンの複数の受圧面のうちの互いに逆向きの面に対応する2つのセンタ流体圧室同士の間にそれぞれ設けられ、それら2つのセンタ流体圧室同士を、それぞれ、連通させる状態と遮断する状態とに切り換え可能な2つの連通制御弁と
    を含むサスペンション装置であって、
    前記センタシリンダが、少なくとも、前記2つのセンタ流体圧室同士が互いに連通させられた場合に、前記センタピストンを中央位置に戻す自己復帰部を含み、かつ、当該サスペンション装置が、前記2つの連通制御弁を連通状態とすることにより、前記センタピストンの中立位置からのずれを補正する位置補正装置を含むことを特徴とするサスペンション装置。
  2. 前記位置補正装置が、(a)予め定められた開始条件が満たされた場合に、前記2つの連通制御弁を遮断状態から連通状態とし、前記2つの連通制御弁のうちの少なくとも一方によって接続された2つのセンタ流体圧室各々の流体圧に基づいて、前記少なくとも一方の連通制御弁が連通状態に切り換えられてから前記2つのセンタ流体圧室の流体圧差が予め定められた設定差以下になるまでに要する時間である連通時間を取得し、前記2つの連通制御弁が連通状態に切り換えられてから前記連通時間が経過した場合に、通常の終了条件が満たされたとして、前記2つの連通制御弁を遮断状態に切り換える通常終了部と、(b)前記通常の終了条件が満たされなくても、前記車体の姿勢と姿勢の変化との少なくとも一方に基づいて決まる強制的な終了条件が満たされた場合に連通状態から遮断状態とする強制終了部とを含む請求項1に記載のサスペンション装置。
  3. 前記強制終了部が、前記車体の傾きが予め定められた傾きより大きくなった場合と、姿勢の変化が予め定められた変化状態を越えた場合との少なくとも一方の場合に、前記強制的な終了条件が満たされたとする部分を含む請求項2に記載のサスペンション装置。
  4. 前記強制終了部が、前記2つの連通制御弁が連通状態に切り換えられた後に、前記2つの連通制御弁のうちの少なくとも一方によって連通させられる2つのセンタ流体圧室に接続された懸架シリンダが設けられた2つの車輪についての車高差の絶対値が予め定められた設定車高差以上になった場合に、前記強制的な終了条件が満たされたとして、前記2つの連通制御弁を遮断状態に切り換える車高差対応終了部を含む請求項2または3に記載のサスペンション装置。
  5. 前記強制終了部が、前記2つの連通制御弁が連通状態に切り換えられてからの前記少なくとも1輪の車高の変化量の絶対値が予め定められた設定車高変化量以上になった場合に、前記強制的な終了条件が満たされたとして、前記2つの連通制御弁を遮断状態に切り換える車高変化対応終了部を含む請求項2ないしのいずれか1つに記載のサスペンション装置。
  6. 前記強制終了部が、前記2つの連通制御弁が連通状態に切り換えられてからの前記少なくとも1つのセンタ流体圧室の流体圧の変化量の絶対値が予め定められた設定圧力変化量以上になった場合に、前記強制的な終了条件が満たされたとして前記2つの連通制御弁を遮断状態に切り換える圧力変化対応終了部を含む請求項2ないしのいずれか1つに記載のサスペンション装置。
  7. 前記通常終了部が、前記開始条件が満たされた場合の、(a)前記2つの連通制御弁のうちの少なくとも一方によって接続された2つのセンタ流体圧室各々の流体圧と、(b)前記2つのセンタ流体圧室に接続された2つの懸架シリンダが設けられた車輪の各々についての車高とに基づいて前記通常の終了条件を決定する通常終了条件決定部を含む請求項2ないし6のいずれか1つに記載のサスペンション装置。
  8. 当該サスペンション装置が、(a)流体圧源と、(b)その流体圧源と前記4つの懸架シリンダの各々との間に設けられ、前記センタシリンダと前記懸架シリンダの各々とを連通状態に保った状態で、前記流体圧源と前記懸架シリンダの各々との間の流体の流れを制御可能な4つの個別制御弁と、(c)前記位置補正装置によって前記センタピストンが中立位置に近づけられた後に、少なくとも、前記2つの個別制御弁のうちの少なくとも1つを制御することにより、その個別制御弁に対応する懸架シリンダにおける作動液の流入・流出を制御し、その懸架シリンダが設けられた車輪と前記車体との相対位置である車高を調整し、前記車体の傾斜角度を小さくする位置補正終了時個別制御弁制御部とを備えた流入・流出制御装置を含む請求項1ないしのいずれか1つに記載のサスペンション装置。
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