以下、本実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、内燃機関の潤滑構造を、自動二輪車に適用した例について説明するが、自動二輪車に限定されるものではなく、四輪車等の他の車両にも適用することができる。図1は、本実施の形態の内燃機関の斜視図である。図2は、本実施の形態のクランクケースの右側面図である。図3は、本実施の形態のシャフトの配置を示す側面図である。なお、図2においては、説明の便宜上、カウンターシャフト及びクラッチを2点鎖線で示し、クランクケース内の前バランサシャフト及びドライブシャフトは破線で示している。
図1に示すように、内燃機関1は、並列2気筒エンジンであり、クランクケース21にシリンダ10を配置して構成される。シリンダ10は、クランクケース21上に配置されたシリンダブロック11にシリンダヘッド12及びヘッドカバー13を取り付けて構成される。クランクケース21の下部には、潤滑及び冷却用のオイルが貯留されるオイルパン22が取り付けられている。クランクケース21の左側部には、ジェネレータ室を形成するジェネレータカバー23が取り付けられている。クランクケース21の前部には、オイルフィルタ25及びオイルクーラ26が取り付けられている。
図2に示すように、クランクケース21は、上ケース27と下ケース28とからなる上下割構造であり、クラッチカバー(不図示)を取り外すことで、クランクケース21の右側空間31を外部に開放している。クランクケース21の右側空間31は、上ケース27及び下ケース28の側壁でケース内側のクランク室やミッション室等から仕切られており、上ケース27及び下ケース28の側壁から突出した周壁32で囲まれた空間である。クランクケース21の右側空間31は、周壁32に形成されたクラッチカバーとの合わせ面33を開口部として外側から部分的に視認可能になっている。
クランクケース21の側壁(ジャーナル壁)には、クランクシャフト41、カウンターシャフト47、ドライブシャフト49の主要3軸が平行に三角配置されている。クランクシャフト41は、ケース内側のクランク室に収容されており、上ケース27と下ケース28の合わせ面34で回転可能に支持されている。カウンターシャフト47は、ケース内側のミッション室に収容されており、クランクシャフト41の後方で上ケース27の側壁に回転可能に支持されている。ドライブシャフト49は、ケース内側のミッション室に収容されており、カウンターシャフト47の後方で上ケース27と下ケース28の合わせ面34で回転可能に支持されている。
クランクシャフト41の前方には前バランサシャフト51が配置され、クランクシャフト41の下方には下バランサシャフト54が配置されている。前バランサシャフト51は前バランサ室86(図7B参照)に収容されており、上ケース27と下ケース28の合わせ面34で回転可能に支持されている。下バランサシャフト54は、下ケース28にバランサハウジング29が取り付けられることで、下ケース28とバランサハウジング29との合わせ面35(図6A参照)で回転可能に支持されている。下ケース28に対してバランサハウジング29を着脱することで、下バランサシャフト54を取り外して1軸バランサと2軸バランサを切り替え可能にしている。
クランクケース21の右側空間31には、クランクシャフト41のプライマリドライブギア42、カウンターシャフト47のプライマリドリブンギア48、前バランサシャフト51の前バランサドリブンギア52、下バランサシャフト54の下バランサドリブンギア55が収容されている。プライマリドライブギア42には、プライマリドリブンギア48、前バランサドリブンギア52、下バランサドリブンギア55が噛み合っている。このように、単一のギアで3種類のギアを駆動させることで、クランクシャフト41に別途ギアを切る必要がなく、クランクシャフト41の全長を短くしている。
また、クランクケース21の右側空間31は、上記したようにクラッチカバーとの合わせ面33を開口部として外部に開放されている。プライマリドライブギア42は一部を除いてクランクケース21から外部に露出され、クラッチ57及びプライマリドリブンギア48は全体的に外部に露出されている。また、前バランサドリブンギア52はクランクケース21の内側に隠れており、下バランサドリブンギア55は一部を除いてクランクケース21から外部に露出されている。このように、右側空間31から外部にギアを露出させることで、ギア同士の位置合わせ(位相合わせ)を容易にしている。
図3に示すように、クランクシャフト41は、クランクウェブ43をクランクピン(不図示)とクランクジャーナル(不図示)で連結して構成されている。クランクピンにはコネクティングロッド44を介してピストン45が連結されており、ピストン45の往復運動がクランクシャフト41の回転運動に変換される。クランクシャフト41の回転はプライマリドライブギア42及びプライマリドリブンギア48を介してカウンターシャフト47に伝達される。カウンターシャフト47の回転は、変速ギア(不図示)の組み合わせに応じた所定の変速比でドライブシャフト49に伝達される。
また、クランクシャフト41の回転は、プライマリドライブギア42及び前バランサドリブンギア52を介して前バランサシャフト51に伝達され、プライマリドライブギア42及び下バランサドリブンギア55を介して下バランサシャフト54に伝達される。前バランサシャフト51及び下バランサシャフト54によって、クランクシャフト41で発生する周期的な振動が相殺されている。クランクシャフト41を中心に、上方にコネクティングロッド44、下方に下バランサシャフト54、前方に前バランサシャフト51、後方にカウンターシャフト47が配置されることで、クランクケース21(図2参照)内の空間が有効利用されている。
このように構成されたクランクケース21は、下バランサシャフト54をクランクシャフト41の下方に配置したことで、クランクケース21の前後にバランサシャフトを配置する構成と比較してクランクケース21の前後幅を小さくでき、さらにマスの集中化を図ることができる。また、メインギャラリ62(図2参照)が下バランサシャフト54の前方に形成されることで、下バランサシャフト54の配置がメインギャラリ62に干渉することが防止されている。この場合、通常のクランクケースのようにクランクシャフトの真下にメインギャラリが配置される構成とは異なるため、内燃機関1の各部に対する潤滑経路を変更しなければならない。
特に、クランクシャフト41の前方と下方にバランサシャフト52、54を配置可能な2軸バランサ構造に特化したクランクケース21の潤滑経路が必要になっている。本実施の形態では、メインギャラリ62から前バランサシャフト51の軸受73c(図7A参照)を通過したオイルをシリンダヘッド12に供給するようにしている。前バランサシャフト51を通過したオイルは十分に高い油圧を維持しているため、シリンダヘッド12の各部の潤滑にオイルを再利用することが可能になっている。
以下、図4を参照して、クランクケース内に形成された内燃機関の潤滑経路について説明する。図4は、本実施の形態の内燃機関の潤滑経路を示すブロック図である。
図4に示すように、クランクケース21(図1参照)の下部のオイルパン22にはオイルが貯留されている。オイルパン22のオイルは、カウンターシャフト47で駆動されるオイルポンプ61によってストレーナから吸引される。ストレーナで吸引されたオイルは、オイルポンプ61によってオイルフィルタ25に送られる。また、オイルフィルタ25内のオイルは、オイルポンプ61によってオイルクーラ26に送られた後にメインギャラリ62に送られる。このとき、オイルフィルタ25では、オイル中の微細な異物がフィルタによって取り除かれ、オイルクーラ26ではオイルが冷却されている。
オイルフィルタ25及びオイルクーラ26はクランクケース21の前面に配置されている(図5参照)。オイルフィルタ25の設置面には、オイルポンプ61に連なる入口64と、オイルクーラ26に連なる出口65とが形成されている(図5参照)。オイルフィルタ25の入口64は中央よりも下側に形成され、オイルフィルタ25の出口65は中央に形成されている。オイルクーラ26の設置面には、オイルフィルタ25に連なる入口67と、メインギャラリ62に連なる出口68とが形成されている(図5参照)。オイルクーラ26の入口67は中央に形成され、オイルクーラ26の出口68は中央よりも上側に形成されている。
メインギャラリ62内のオイルは、下ケース28の右側、真中、左側の各ジャーナル壁71a−71c(図8参照)内のオイル通路72a−72cを通って、それぞれ前バランサシャフト51の各軸受73a−73cに供給される。前バランサシャフト51の右側の軸受73aのオイルは、上ケース27の右側のジャーナル壁74a(図6A参照)内のオイル通路75aを通ってサブギャラリ76に供給される。サブギャラリ76内のオイルは、ピストンジェット77に供給されてピストン45(図2参照)の冷却に使用される。さらに、サブギャラリ76内のオイルは、過給機のターボシャフト(不図示)の軸受78に供給される。
また、左側の前バランサシャフト51の軸受73cのオイルは、上ケース27の左側のジャーナル壁74c(図7A参照)内のオイル通路75cを通ってシリンダヘッド12に供給される。シリンダヘッド12内のオイルは、カムシャフト(不図示)の内部を通ってカムとタペットの接触部分を潤滑して、上ケース27に形成されたオイル戻し通路85やカムチェーン室93(図5参照)等を通じてオイルパン22に戻される。このように、クランクケース21には、メインギャラリ62からサブギャラリ76に向かう潤滑経路とメインギャラリ62からシリンダヘッド12に向かう潤滑経路とが分けられて形成されている。
また、メインギャラリ62内のオイルは、下ケース28の右側、真中、左側の各ジャーナル壁71a−71c(図8参照)内のオイル通路101a−101cを通って、それぞれクランクシャフト41の各軸受102a−102cに供給される。クランクシャフト41の右側と真中の各軸受102a、102bのオイルは、各ジャーナル壁71a、71b内のオイル通路103a、103bを通って、下バランサシャフト54の各軸受104a、104bに供給される。右側のオイル通路103aは途中で分岐しており、オイル通路105を通ってドライブシャフト49にオイルが供給される。クランクシャフト41の左側の軸受102cのオイルは、ジャーナル壁71c上のオイル溝を通ってカウンターシャフト47に供給される。
このように、クランクケース21には、メインギャラリ62から前バランサシャフト51の軸受73a−73cに向かう潤滑経路とメインギャラリ62からクランクシャフト41の軸受102a−102cに向かう潤滑経路とが分けられて形成されている。また、前バランサシャフト51の軸受73a、73cの潤滑経路を通って、サブギャラリ76及びシリンダヘッド12にオイルが供給されている。また、クランクシャフト41の各軸受102a−102cの潤滑経路を通って、下バランサシャフト54の各軸受104a、104b、カウンターシャフト47、ドライブシャフト49にオイルが供給されている。
以下、内燃機関の潤滑構造について詳細に説明する。最初に、図5及び図6を参照して、サブギャラリの潤滑経路について説明する。図5は、本実施の形態のクランクケースの正面図である。図6は、本実施の形態のクランクケースの断面図である。図6Aは図5をA−A線で切断した断面図、図6Bは図5をB−B線で切断した断面図、図6Cは図5をC−C線で切断した断面図をそれぞれ示している。なお、図6Aは説明の便宜上、締付ボルト、カウンターシャフトを省略して記載している。また、図6B及び図6Cは説明の便宜上、各種シャフトを省略して記載している。
図5及び図6Aに示すように、クランクケース21は上下割の上ケース27と下ケース28から成り、下ケース28にはクランクシャフト41の下方にバランサハウジング29が取り付けられている。上ケース27、下ケース28、バランサハウジング29には共通の締付ボルトが挿通され、上ケース27と下ケース28の合わせ面34、下ケース28とバランサハウジング29の合わせ面35が締付ボルトで締め付けられている。上ケース27と下ケース28の合わせ面34には前バランサシャフト51とクランクシャフト41、ドライブシャフト49(図3参照)が支持されている。
上ケース27の側面にはカウンターシャフト47(図3参照)が支持されており、下ケース28とバランサハウジング29の合わせ面35には下バランサシャフト54が支持されている。すなわち、クランクケース21には、クランクシャフト41の前方に前バランサシャフト51が配置され、クランクシャフト41の下方に下バランサシャフト54が配置されている。また、クランクシャフト41の後方には、カウンターシャフト47及びドライブシャフト49が配置されている。クランクケース21の下ケース28には、下バランサシャフト54の前方でオイルポンプ61(図4参照)から送られたオイルを内燃機関1の各部に分配するメインギャラリ62が形成されている。
メインギャラリ62は、クランクシャフト41の真下に位置する下バランサシャフト54を避けるようにして、クランクシャフト41の下斜め前方に形成されている。メインギャラリ62は、前バランサシャフト51よりも下方において、下ケース28の左右方向(図6Aで紙面に垂直な方向)に直線的に形成されている。上ケース27には、クランクシャフト41の上斜め前方で内燃機関1の各部にオイルを供給するサブギャラリ76が形成されている。サブギャラリ76は、前バランサシャフト51よりも上方において、メインギャラリ62と平行に形成されている。これにより、クランクケース21におけるメインギャラリ62とサブギャラリ76の形成領域を小さくしてクランクケース21を小型化することができる。
また、クランクケース21の右側には、メインギャラリ62のオイルを前バランサシャフト51の軸受73aを通過させるオイル通路72a、75aが形成されている。オイル通路72aは、メインギャラリ62から下ケース28側の前バランサシャフト51の軸受設置面81まで延びている。オイル通路75aは、上ケース27側の前バランサシャフト51の軸受設置面82からサブギャラリ76まで延びている。また、前バランサシャフト51の軸受設置面81、82にはオイル溝83が形成されており(図8参照)、このオイル溝83はオイル通路72a、75aを繋ぐオイルの通り路になっている。
また、上記したように上ケース27及び下ケース28は締結ボルトによって強固に締め付けられており、下ケース28側の軸受設置面81と上ケース27側の軸受設置面82には、前バランサシャフト51の軸受73aが隙間なく設置されている。また、前バランサシャフト51は前バランサ室86(図6B参照)に収容されているため、オイルが漏洩してもオイルパン22(図1参照)にオイルを戻すことができる。このように、軸受73aの設置位置をオイル通路が通るため、軸受73aの設置位置以外にオイル通路を形成する場合と異なり、オイルの漏洩を防ぐためのOリング等のシール材が不要となり、部品点数を削減することが可能になっている。
また、クランクケース21において、メインギャラリ62とサブギャラリ76とを結ぶ直線上に前バランサシャフト51が配置されている。すなわち、メインギャラリ62、前バランサシャフト51、サブギャラリ76は下から上に向かって一列に並んでいる。よって、オイル通路72a、75aをそれぞれ直線的に形成することができ、オイル通路72a、75aを短くしてオイル通路72a、75aによる油圧の低下が抑えられている。また、上ケース27及び下ケース28のそれぞれに対して一度の加工でオイル通路72a、75aを形成することで加工工数を減らすことができる。
メインギャラリ62にはオイルポンプ61(図4参照)から油圧が高いオイルが送られるため、メインギャラリ62から前バランサシャフト51の軸受73aには油圧が高いオイルが供給される。よって、高い油圧が必要な前バランサシャフト51の軸受73aには十分な厚みの油膜が形成され、前バランサシャフト51の焼き付きが防止されている。このとき、前バランサシャフト51の軸受73aにオイルが供給されても、オイルには十分な油圧が残っている。このオイルの油圧を有効利用するために、前バランサシャフト51の右側の軸受73aを通過したオイルは十分な油圧を維持したままサブギャラリ76に送られる。
図6Bに示すように、サブギャラリ76に送られたオイルは、サブギャラリ76を奥方に向かって進んでピストンジェット77に供給される。ピストンジェット77からピストン45(図3参照)に向けてオイルが噴射されることでピストン45が冷却される。ピストンジェット77へのオイルの供給によってサブギャラリ76内の油圧が低下するが、メインギャラリ62からサブギャラリ76に向かう潤滑経路は、メインギャラリ62からクランクシャフト41(図6A参照)の軸受102aに向かう潤滑経路とは異なっている。よって、ピストンジェット77による油圧の低下がクランクシャフト41の軸受102aの油圧に与える影響を抑えることができる。
図6Cに示すように、サブギャラリ76に送られたオイルは、ピストンジェット77(図6B参照)よりも奥方(下流側)に向かって進んで過給機入口79から過給機(不図示)のターボシャフトの軸受78(図4参照)に供給される。このように、前バランサシャフト51の軸受73aを潤滑したオイルがピストンジェット77とターボシャフトの軸受78の潤滑に再利用されている。また、オイル通路72a、75aは下ケース28及び上ケース27の前壁に形成されているため、独立したオイル通路72a、75aを形成するためのクランクケース21の駄肉が不要になり、クランクケース21を軽量化することが可能になっている。
続いて、図5、図7、図8を参照して、シリンダヘッドの潤滑経路について説明する。図7は、本実施の形態のクランクケースの断面図である。図8は、本実施の形態の上ケース及び下ケースの斜視図である。なお、図7Aは図5のD−D断面図、図7Bは図5のE−E断面図をそれぞれ示している。なお、図7Bは説明の便宜上、各種シャフトを省略して記載している。
図5及び図7Aに示すように、クランクケース21の左側には、メインギャラリ62のオイルを前バランサシャフト51の軸受73cを通過させるオイル通路72c、75cが形成されている。オイル通路72cは、メインギャラリ62から下ケース28側の前バランサシャフト51の軸受設置面81まで延びている。オイル通路75cは、上ケース27側の前バランサシャフト51の軸受設置面82からシリンダヘッド12(図1参照)に向かって延びている。また、前バランサシャフト51の軸受設置面81、82にはオイル溝83が形成されており(図8参照)、このオイル溝83はオイル通路72c、75cを繋ぐオイルの通り路になっている。
また、前バランサシャフト51は前バランサ室86(図7B参照)に収容されているため、オイルが漏洩してもオイルパン22(図1参照)にオイルを戻すことができる。サブギャラリ76の潤滑経路と同様に、前バランサシャフト51の設置位置をオイル通路が通るため、軸受73の設置位置以外にオイル通路を形成する場合と異なり、オイルの漏洩を防ぐためのOリング等のシール材が不要となり、部品点数を削減することが可能になっている。また、オイル通路72c、75cは下ケース28及び上ケース27の前壁に形成されているため、独立したオイル通路72c、75cを形成するためのクランクケース21の駄肉が不要になり、クランクケース21を軽量化することが可能になっている。
メインギャラリ62にはオイルポンプ61(図4参照)から油圧が高いオイルが送られるため、メインギャラリ62から前バランサシャフト51の軸受73cには油圧が高いオイルが供給される。よって、高い油圧が必要な前バランサシャフト51の軸受73cには十分な厚みの油膜が形成され、前バランサシャフト51の焼き付きが防止されている。このとき、前バランサシャフト51の軸受73cにオイルが供給されても、オイルには十分な油圧が残っている。このオイルの油圧を有効利用するために、前バランサシャフト51の左側の軸受73cを通過したオイルは十分な油圧を維持したままシリンダヘッド12に送られる。
シリンダヘッド12に送られたオイルは、カムシャフトの左端からシャフト内に入り込み、遠心力を受けることでカムやタペット等を潤滑する。このように、前バランサシャフト51の軸受73cを潤滑したオイルがシリンダヘッド12の潤滑に再利用されている。なお、シリンダヘッド12へのオイルの供給によってオイル通路72c、75cの油圧が低下するが、メインギャラリ62からシリンダヘッド12に向かう潤滑経路は、メインギャラリ62からクランクシャフト41の軸受102cに向かう潤滑経路とは異なっている。よって、シリンダヘッド12による油圧の低下がクランクシャフト41の軸受102cの油圧に与える影響を抑えることができる。
また、クランクケース21の右側にメインギャラリ62のオイルをサブギャラリ76に供給するオイル通路72a、75aが形成され(図6A参照)、クランクケース21の左側にメインギャラリ62のオイルをシリンダヘッド12に供給するオイル通路72c、75cが形成されている。よって、メインギャラリ62の油圧を左右均等に分けることができる。また、オイル通路72a、75aとオイル通路72c、75cが左右に離れているため、ピストンジェット77によるサブギャラリ76での油圧の低下がシリンダヘッド12の油圧に影響することがない。同様に、シリンダヘッド12での油圧の低下がサブギャラリの油圧に影響することがない。
図7Bに示すように、クランクケース21の右側には、シリンダヘッド12(図1参照)からクランクケース21内にオイルを戻すオイル戻し通路85が形成されている。すなわち、オイル通路72c、75cに対して、クランクケース21の左右方向の逆側でシリンダヘッド12からオイルを戻している。オイル戻し通路85の出口87は、クランクケース21内で前バランサシャフト51が収容される前バランサ室86に接続されている。この場合、前バランサ室86において、前バランサシャフト51よりもクランクケース21の前側で、かつクランクケース21の右側に接続されている。
この位置では、オイル戻し通路85からの戻りオイルを前バランサシャフト51から最も離すことができる。オイル戻し通路85の出口87からの戻りオイルは、前バランサ室でクランクケース21の内壁面を伝って流れるため、前バランサシャフト51のバランサウェイト等の回転部品に接触しない。よって、前バランサ室86内でのオイルミストの発生を減らすことができ、ブローバイガスへのオイルミストの混入を低減できる。また、戻りオイルが回転部品に接触しないため、シリンダヘッド12からの戻りオイルをオイルパン22に素早く戻すことができる。
また、オイル戻し通路85は、クランクケース21とシリンダ10との合わせ面36から下方に延びる垂直通路91と、垂直通路91の下端からクランクケース21の前方に傾斜する傾斜通路92とを有している。傾斜通路92は、車両に対するクランクケース21(内燃機関1)の搭載時に鉛直になるように傾斜している。すなわち、クランクケース21の搭載角度を考慮して傾斜通路92の傾きが設計されている。これにより、戻りオイルをオイルパン22に向けて素早く戻すことができる。なお、ここでいう鉛直とは、完全に鉛直な場合に限定されず、鉛直に近い略鉛直を含んでいる。
また、オイル戻し通路85は、シリンダ10(図1参照)及び上ケース27の前壁に形成されているため、独立したオイル戻し通路85を形成するためのクランクケース21の駄肉が不要になり、クランクケース21を軽量化することができる。この場合、オイル戻し通路85が、サブギャラリ76よりもクランクケース21の前側を通っている。サブギャラリ76が形成されるクランクケース21の前壁のデッドスペースにオイル戻し通路85が形成されるため、クランクケース21をさらに軽量化することができる。
また、クランクケース21の左側にはカムチェーン(不図示)が収容されるカムチェーン室93(図8参照)が形成されている。カムチェーン室93が、クランクケース21の左右方向においてオイル戻し通路85とは逆側に形成されているため、カムチェーン室93へのオイルの流入量を減らすことができる。よって、戻りオイルとカムチェーンとの接触を少なくして、カムチェーン室93でのオイルミストの発生を減らすことができる。また、オイル戻し通路85とカムチェーン室93によって、シリンダヘッド12の左右両側からオイルパン22に効率的にオイルが戻されるため、シリンダヘッド12のオイル溜まりを解消することができる。
さらに、上記したようにクランクケース21の左側にオイル通路72c、75cが形成され、クランクケース21の右側にオイル戻し通路85が形成されている(図8参照)。これにより、シリンダヘッド12の左側からカムシャフトにオイルを供給して、シリンダヘッド12の右側からクランクケース21に戻る潤滑経路を形成することができる。また、オイル戻し通路85は、オイル通路72a、75aとオイル通路72c、75cとの間に形成されているため、クランクケース21の左右幅を小さくすることができる。
以上のように、本実施の形態によれば、メインギャラリ62にはオイルポンプ61から油圧の高いオイルが送られ、メインギャラリ62からオイル通路72を通じて前バランサシャフト51の軸受73a−73cに油圧の高いオイルが供給される。よって、前バランサシャフト51はオイルの油膜によって軸受73a−73cに回転可能に支持され、前バランサシャフト51の焼き付きが防止されている。また、前バランサシャフト51の軸受73cを通過してシリンダヘッド12に送られたオイルの油圧が高いため、シリンダヘッド12内の各部の潤滑にオイルを再利用することができる。また、メインギャラリ62から共通のオイル通路72c、75cで、前バランサシャフト51の軸受73cとシリンダヘッド12にオイルが供給されるため、クランクケース21に独立したオイル通路を形成する必要がない。よって、個別の配管の配置が無くなり、重量及び加工工数が増えることがなく、さらにオイル通路を短くすることができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
例えば、上記した実施の形態では、クランクケース21の右側にメインギャラリ62のオイルをサブギャラリ76に供給するオイル通路72a、75aが形成され、クランクケース21の左側にメインギャラリ62のオイルをシリンダヘッド12に供給するオイル通路72c、72cが形成される構成にしたが、この構成に限定されない。クランクケース21の左側にメインギャラリ62のオイルをサブギャラリ76に供給するオイル通路72a、75aが形成され、クランクケース21の右側にメインギャラリ62のオイルをシリンダヘッド12に供給するオイル通路72c、75cが形成されてもよい。また、クランクケース21の端にオイル通路72c、75cが形成される構成に限られず、例えば、クランクケース21の左右方向の中間部分にオイル通路72c、75cが形成されてもよい。
また、上記した実施の形態では、クランクケース21に前バランサシャフト51と下バランサシャフト54が配置される構成にしたが、この構成に限定されない。クランクケース21には少なくとも1つのバランサシャフトが配置されていればよく、例えば、バランサシャフトはクランクシャフト41の後側に配置されてもよい。
また、上記した実施の形態では、上ケース27と下ケース28の合わせ面34に前バランサシャフト51が配置される構成にしたが、この構成に限定されない。前バランサシャフト51は、上ケース27及び下ケース28のいずれかに配置されてもよい。
また、上記した実施の形態では、クランクケース21が上下割構造の上ケース27と下ケース28から成る構成にしたが、この構成に限定されない。クランクケース21は左右割構造の左ケースと右ケースから成る構成でもよい。
また、上記した実施の形態では、メインギャラリ62に対してサブギャラリ76が平行に形成される構成にしたが、この構成に限定されない。メインギャラリ62とサブギャラリ76は平行に形成されていなくてもよい。また、上記した実施の形態では、メインギャラリ62とサブギャラリ76が直線状に形成されたが、この構成に限定されない。メインギャラリ62とサブギャラリ76はクランクケース21の形状に合わせて適宜変更されてもよい。
また、上記した実施の形態では、ジャーナル壁71、74の軸受設置面81、82にオイル溝83が形成されて、前バランサシャフト51の軸受73cをオイルに通過させる構成にしたが、この構成に限定されない。前バランサシャフト51の軸受73cをオイルが通過可能な構成であればよく、例えば、軸受73cにオイル溝が形成されてもよいし、前バランサシャフト51にオイル溝が形成されてもよい。
また、上記した実施の形態では、クランクケース21の右側にオイル戻し通路85が形成される構成にしたが、この構成に限定されない。オイル戻し通路85は、クランクケース21の左右幅が大きくならないように、オイル通路72a、75aとオイル通路72c、75cの間に形成されていればよい。