JP2008308989A - エンジン及びそれを備えた車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジンオイルの循環効率の向上を図る。
【解決手段】エンジン2は、ケーシング19と、シリンダボディ22と、シリンダヘッド25と、オイルポンプ61とを備えている。ケーシング19は、クランク室23aと、ミッション室23bとを有する。ミッション室23bの下部には、オイル溜まり62が設けられている。オイルポンプ61は、オイル溜まり62に溜められたオイルをシリンダヘッド25内に供給する。エンジン2は、オイル戻し経路91を有する。オイル戻し経路91は、シリンダヘッド25の内部とミッション室23bとの間に連結されている。オイル戻し経路91は、シリンダヘッド25内のオイルをミッション室23bにまで戻す。
【選択図】図14

Description

本発明はエンジン及びそれを備えた車両に関する。
例えば、特許文献1には、内燃機関のオイル戻し経路構造が開示されている。
図15は、特許文献1に記載された内燃機関100の冷却系オイル回路を示した図である。内燃機関100では、冷却系用オイルは、オイルポンプ101により吸入される。オイルポンプ101によって吸入された冷却系用オイルは、オイル経路102を経由してシリンダボディ120内のオイルギャラリ103に供給される。冷却系用オイルは、オイルギャラリ103からオイル経路104を経由して、シリンダヘッド105内の後壁内において、気筒毎に設けられたオイルジャケット106に供給される。オイルジャケット106からの冷却系用オイルは、オイル戻し経路107を経て戻り側オイルギャラリ108に達する。
戻り側オイルギャラリ108からの冷却系用オイルは、連絡オイル経路109を経て、サーモスタット110に達する。サーモスタット110により検出される油温が高い場合は、冷却系用オイルはオイルクーラ連結パイプ111を経て、図示しないオイルクーラへと流れる。オイルクーラには、戻り連結パイプ114が連結されている。オイルクーラからの冷却系用オイルは、この戻り連結パイプ114を経てオイル戻し経路113、115へ流入する。一方、サーモスタット110により検出される油温が低い場合は、バイパス経路112を経て、オイル戻し経路113、115へ流入する。オイル戻し経路113、115へ流入した冷却系用オイルは、クランクケース116内に区画形成されたクランク室118に戻される。具体的には、図15に示すように、オイル戻し経路113、115へ流入した冷却系用オイルは、クランク軸117の下方に戻される。
特開2006−97613号公報
ところで、通常、クランク室118の圧力は、比較的高い。このため、特許文献1に記載の内燃機関(エンジン)100のように、シリンダヘッド105からのオイルがクランク室118に戻される場合、クランク室118の圧力に起因して、オイルの戻りが悪くなる虞がある。極端な場合には、オイルが逆流する虞もある。その結果、オイルの循環効率が低下する虞がある。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エンジンオイルがシリンダヘッドに供給されるエンジンにおいて、エンジンオイルの循環効率の向上を図ることにある。
本発明に係るエンジンは、ケーシングと、シリンダボディと、シリンダヘッドと、オイルポンプとを備えている。ケーシングは、クランク室と、クランク室に対して区画されたミッション室とを有する。ミッション室の下部には、オイル溜まりが設けられている。シリンダボディは、ケーシングのクランク室に取り付けられている。シリンダヘッドは、シリンダボディの先端部に取り付けられている。オイルポンプは、オイル溜まりに溜められたオイルをシリンダヘッド内に供給する。
本発明に係るエンジンは、オイル戻し経路を有する。オイル戻し経路は、シリンダヘッドの内部とミッション室との間に連結されている。オイル戻し経路は、シリンダヘッド内のオイルをミッション室にまで戻す。
本発明に係る車両は、上記本発明に係るエンジンを備えている。
本発明によれば、エンジンオイルがシリンダヘッドに供給されるエンジンにおいて、エンジンオイルの循環効率の向上を図ることができる。
以下、本発明を実施した好ましい実施形態の一例を、図1に示す自動二輪車1を例に挙げて説明する。尚、以下の説明において、前後左右の方向は、シート16に着座した乗員から視た方向をいうものとする。
(自動二輪車1の概略構造)
図1に示すように、自動二輪車1は、車体フレーム10を備えている。車体フレーム10は、ステアリングヘッドパイプ11を有する。ステアリングヘッドパイプ11は、自動二輪車1の前半部分において、下方に向かってやや斜め前方に延びている。ステアリングヘッドパイプ11の基端部には、ハンドル12が取り付けられている。一方、ステアリングヘッドパイプ11の先端部には、フロントフォーク13が接続されている。フロントフォーク13の先端部には、前輪14が回転可能に取り付けられている。本実施形態では、前輪14が従動輪を構成している。
車体フレーム10には、4サイクルエンジンであるエンジン2が懸架されている。エンジン2の上方には、エンジン2に供給されるオイルを溜めるオイルタンク3が配置されている。図3にも示すように、オイルタンク3の下端面3aは、略平面状に形成されている。オイルタンク3の下端面3aは、エンジン2のクランクケース21の直上に、クランクケース21に近接して配置されている。
車体フレーム10のエンジン2の上方には、燃料タンク15が配置されている。燃料タンク15の後方には、ライダーが着座するためのシート16が設けられている。
車体フレーム10の後端部には、リアアーム17が揺動可能に取り付けられている。リアアーム17の先端部には、駆動輪としての後輪18が回転可能に取り付けられている。後輪18は、図示しないドライブシャフトによって、エンジン2のドライブ軸46(図3も参照)と連結されている。これにより、エンジン2により生じた動力が後輪18に伝達され、後輪18が回転する。尚、ドライブシャフトに替えて、伝動ベルトや伝動チェーンなどを配置してもよい。
車体フレーム10の後端部には、回動可能なサイドスタンド4が取り付けられている。サイドスタンド4は、回転軸4aを中心として回動可能である。サイドスタンド4は、車幅方向に関して、自動二輪車1の中心よりも左側に取り付けられている。このため、サイドスタンド4を用いて、自動二輪車1を駐車した場合、自動二輪車1は、左に傾いた状態で静止する。
(エンジン2)
次に、本実施形態におけるエンジン2の構造について、図2、図3等を参照しながら詳細に説明する。図3に示すように、エンジン2は、クランクケース21と、シリンダボディ22と、シリンダヘッド25と、ヘッドカバー30とを備えている。ケーシング19は、内部空間23が区画形成されたクランクケース21と、図4に示す発電機カバー64と、クラッチカバー66とを備えている。図3に示すように、クランクケース21の内部空間23には、相互に区画されたクランク室23aとミッション室23bとが形成されている。シリンダヘッド25は、シリンダボディ22の先端に取り付けられている。シリンダヘッド25の先端には、ヘッドカバー30が取り付けられている。
−シリンダ24の周辺構造−
シリンダボディ22は、クランクケース21の前半部から上方に向かって斜め前方向に延びている。シリンダボディ22の内部には、略円柱状のシリンダ24が区画形成されている。具体的に、本実施形態では、図2に示すように、シリンダボディ22に、2つのシリンダ24a、24bが形成されている。つまり、本実施形態では、エンジン2は、並列二気筒エンジンである。尚、以下の説明において、「2つのシリンダ24a、24b」を「シリンダ24」と総称することがある。
各シリンダ24a、24bは、クランク室23aに開口している。各シリンダ24a、24b内には、シリンダ24の延びる方向に摺動可能なピストン27a、27bが配置されている。図3に示すように、このピストン27a、27b、シリンダボディ22及びシリンダヘッド25によって、2つの燃焼室36a、36bが区画形成されている。各燃焼室36a、36bには、吸気ポート37a、37b及び排気ポート38a、38bが開口している。燃料タンク15に溜められた燃料と、図1に示すエアクリーナー5から供給される空気とが混合された混合気は、吸気ポート37a、37bから各燃焼室36a、36bに供給される。排気ガスは、燃焼室36a、36bから、排気ポート38a、38bへと排出される。排気ポート38a、38bから排出された排気ガスは、図1に示すエギゾーストパイプ39を経由して自動二輪車1外へと排出される。
図3に示すように、各吸気ポート37a、37bには、吸気弁31a、31bが配置されている。各排気ポート38a、38bには排気弁32a、32bが配置されている。吸気弁31a、31bと排気弁32a、32bとは、それぞれ吸気カム軸33aと、排気カム軸33bとに接続されている。吸気カム軸33aと排気カム軸33bとは、図2に示すカムチェーン34によってクランク軸28の右端部と連結されている。これにより、クランク軸28の回転と共に、吸気カム軸33aと排気カム軸33bとが回転し、吸気弁31a、31bと排気弁32a、32bとが駆動される。
図2に示すように、各ピストン27a、27bは、コンロッド26a、26bの先端部に取り付けられている。コンロッド26a、26bの各基端部は、図示しないクランクピンによって、クランク軸28のクランクアーム部28a、28bに取り付けられている。これにより、クランク軸28の回転に伴って、ピストン27a、27bがシリンダ24a、24b内を往復運動する。
−クランク軸28及びバランサ軸40、41−
図2に示すように、クランク軸28は、車幅方向に延びている。言い換えれば、クランク軸28は車幅方向に延びている。クランク軸28は、軸受部35a、35bによって、クランクケース21に対して回転可能に支持されている。
−発電機63−
クランクケース21の左側には、発電機カバー64が取り付けられている(図4も参照)。図2に示すように、この発電機カバー64と、クランクケース21の左側の外側面とによって、発電機室65が区画形成されている。
クランク軸28の左端部は、クランクケース21の左側壁に形成された開口21i(図10も参照)を経由して、クランクケース21内から外方に突出している。クランク軸28の左端部は、発電機室65にまで至っている。クランク軸28の左端部には、発電機室65において、発電機63が取り付けられている。発電機63は、インナ63aとアウタ63bとを備えている。インナ63aは、発電機カバー64に回転不能に固定されている。一方、アウタ63bは、クランク軸28の左側端に固定されている。このため、アウタ63bは、インナ63aに対して回転可能である。クランク軸28が回転することで、アウタ63bがインナ63aに対して相対的に回転する。これにより、発電機63において発電が行われる。
また、発電機室65には、スタータ(図示せず)が配置されている。この図示しないスタータにより、エンジン2の始動が行われる。スタータは、図10に示すアイドラ軸93を備えている。アイドラ軸93は、車幅方向に延びている。アイドラ軸93は、クランク軸28と略並行である。アイドラ軸93は、クランクケース21と発電機カバー64とによって、回転可能に支持されている。アイドラ軸93の内部には、アイドラ軸93の軸方向に貫通する貫通孔93aが形成されている。つまり、アイドラ軸93は、筒状に形成されている。
図3に示すように、クランク軸28には、バランサ軸40、41が接続されている。バランサ軸40、41は、クランク軸28の軸心28d周りの重量偏差を低減するためのものである。図2、図3に示すように、バランサ軸40、41は、支持軸40h、41hと、支持軸40h、41hが挿通されたバランサ本体40b、41bとを備えている。バランサ本体40b、41bは、筒体40c、41cと、重錘部40d、41dとを備えている。重錘部40d、41dは、バランサ軸40、41の軸心周りに重量偏差を有している。重錘部40d、41dは、車幅方向に関して、クランク軸28のクランクアーム部28a、28bに位置している。
図2に示すように、車幅方向に関して、バランサ本体40bの中央部には、バランサ本体40bから半径方向に突出する位置決め部40eが形成されている。この位置決め部40eは、クランクケース21に対して固定された位置決め板対(図示せず)により形成されるガイド溝内に摺動可能に挿入されている。これにより、バランサ軸40は、バランサ軸40の軸方向に関して、位置決めされている。
図示は省略するが、車幅方向に関して、バランサ本体41bの中央部にも、バランサ本体41bから半径方向に突出する位置決め部が形成されている。この位置決め部も、クランクケース21に対して固定された位置決め板対(図示せず)により形成されるガイド溝内に摺動可能に挿入されている。これにより、バランサ軸41は、バランサ軸41の軸方向に関して、位置決めされている。
バランサ本体40bの左端部には、従動ギア40fが設けられている。一方、クランク軸28のクランク室23a内に位置する部分の左端部には、バランサギア43が設けられている。従動ギア40fは、このバランサギア43と噛合している。これにより、バランサ軸40は、クランク軸28の回転に伴って、クランク軸28の回転方向とは反対方向に回転する。
図示は省略するが、バランサ本体41bの左端部にも、従動ギアが設けられている。この従動ギアも、バランサギア43と噛合している。これにより、バランサ軸41は、クランク軸28の回転に伴って、クランク軸28の回転方向とは反対方向に回転する。
バランサ軸40、41は、それぞれ車幅方向に延びるように配置されている。各バランサ軸40、41は、図示しない軸受を介して、クランクケース21に回転可能に支持されている。
図3に示すように、バランサ軸(上バランサ軸)40は、バランサ軸40の軸心40aがクランク軸28の軸心28dよりも上方に位置するように配置されている。バランサ軸(上バランサ軸)40は、バランサ軸40の軸心40aがクランク軸28の軸心28dよりも後方に位置するように配置されている。一方、バランサ軸(下バランサ軸)41は、バランサ軸41の軸心41aがクランク軸28の軸心28dよりも下方に位置するように配置されている。バランサ軸(下バランサ軸)41は、バランサ軸41の軸心41aがクランク軸28の軸心28dよりも前方に位置するように配置されている。
バランサ軸40、41は、バランサ軸40の軸心40aと、バランサ軸41の軸心41aとを通過する仮想の直線Lが、クランク軸28の軸心の付近を通過するように配置されていることが好ましい。そうすることで、クランク軸28の軸心28d周りの重量偏差をより効果的に低減することができる。具体的に、本実施形態では、仮想の直線Lは、クランク軸28の軸心28dよりも若干前方を通過している。
−クラッチ52及び変速機構50−
図2に示すように、クランクケース21の右側には、クラッチカバー66が取り付けられている(図4も参照)。本実施形態では、このクラッチカバー66と、クランクケース21と、発電機カバー64とでケーシング19が構成されている。クラッチカバー66とクランクケースの右側の外壁面とによって、クラッチ室67が区画形成されている。クランク軸28の右端部は、クランクケース21の右側壁に形成された開口21g(図6も参照)を経由してクラッチ室67にまで延びている。
図3に示すように、クランク軸28の後方斜め上には、車幅方向に延びるメイン軸45が配置されている。また、メイン軸45の後方斜め下には、車幅方向に延びるドライブ軸46が配置されている。このドライブ軸46とメイン軸45とによって変速機構50が構成されている。
具体的には、メイン軸45は、メイン軸45の軸心45bがクランク軸28の軸心28dよりも上方で、且つクランク軸28の軸心28dよりも後方に位置するように配置されている。ドライブ軸46は、ドライブ軸46の軸心46bが、メイン軸45の軸心45bよりも下方で、且つメイン軸45の軸心45bよりも若干後方に位置するように配置されている。本実施形態では、ドライブ軸46の軸心46bは、クランク軸28の軸心28dのほぼ真後ろに位置している。
図2に示すように、メイン軸45は、ミッション室23b内から、クランクケース21の右側壁に形成された開口21h(図6も参照)を経由してクラッチ室67にまで延びている。メイン軸45は、軸受47によりクランクケース21に回転可能に支持されている。メイン軸45のミッション室23b内に位置する部分には、複数の変速歯車45aが形成されている。
メイン軸45の右端部には、クラッチ室67内において、湿式多板式のクラッチ52が装着されている。クラッチ52は、アウタ52aと、インナ52cとを備えている。アウタ52aは、メイン軸45に対して回転可能である。一方、インナ52cは、メイン軸45に固定されている。インナ52cは、メイン軸45と共に回転する。
アウタ52aには、アウタ52aと共に回転する複数のフリクションプレート52dが設けられている。各フリクションプレート52dは、メイン軸45の軸方向に変位可能である。一方、インナ52cには、インナ52cと共に回転する複数のクラッチプレート52eが設けられている。複数のフリクションプレート52dと複数のクラッチプレート52eとは、メイン軸45の軸方向に関して、交互に配置されている。つまり、フリクションプレート52dは、2枚のクラッチプレート52eの間に位置している。これらフリクションプレート52dとクラッチプレート52eとが、プレッシャプレート52fと付勢部材としてのばね52gとの作用により、相互に圧接されることにより、フリクションプレート52dとクラッチプレート52eとの間に摩擦力が発生する。これにより、アウタ52aの回転がインナ52cに伝達される。
アウタ52aには、アウタ52aと共に回転する減速大歯車52bが設けられている。この減速大歯車52bは、クランク軸28の減速小歯車28cに噛合している。このため、アウタ52aは、クランク軸28の回転に伴って回転する。アウタ52aとインナ52cとが係合していない状態では、アウタ52aが回転してもインナ52cは回転しない。一方、アウタ52aとインナ52cとが係合している状態では、アウタ52aの回転と共に、インナ52c及びメイン軸45が回転する。これにより、クランク軸28の回転がメイン軸45に伝達される。つまり、このクラッチ52により、クランク軸28とメイン軸45との間の断続が行われる。
尚、クラッチ52の断続は、ライダーが図示しないクラッチレバーを操作することにより行われる。ライダーがクラッチレバーを操作すると、図2に示すプッシュバー42が右側に移動する。これにより、ばね52gの付勢力に抗してプレッシャプレート52fが右側に押しやられる。その結果、フリクションプレート52dとクラッチプレート52eとが離間する。これにより、クラッチ52が切れる。クラッチ52が切れた状態で、クラッチレバーが元に戻されると、再び、ばね52gの付勢力により、フリクションプレート52dとクラッチプレート52eとが相互に圧接される。これにより、クラッチ52がつながる。
ドライブ軸46の右側端は、クランクケース21の右側壁に形成された凹部21c(図6も参照)において、軸受48aによってクランクケース21に対して回転可能に固定されている。一方、ドライブ軸46の左端部は、クランクケース21から突出し、発電機室65にまで延びている。ドライブ軸46の左端部は、軸受48bによって回転可能に固定されている。ドライブ軸46のミッション室23b内に位置する部分には、変速歯車45aと噛合する複数の変速歯車46aが設けられている。
−ギア選択機構60−
ドライブ軸46と共に回転する変速歯車46aは、図3に示すギア選択機構60によって選択される。ギア選択機構60は、メイン軸45の後方に配置されたシフトドラム57と、シフトドラム57の上方に配置されたシフト軸56とを備えている。シフト軸56は、エンジン2に揺動可能に取り付けられたチェンジペダル(図示せず)によって操作される。シフト軸56は、図示しない揺動アームによりシフトドラム57に連結されている。シフトドラム57の右端部は、図示しない軸受を介して、クランクケース21の右側壁に形成された開口21d(図6を参照)において回動可能に固定されている。
図2に示すように、ドライブ軸46の左端部は、クランクケース21から外方に突出して、発電機室65にまで至っている。このドライブ軸46の左端部には、発電機室65において、図示しないドライブシャフトが接続されている。これにより、ドライブ軸46の回転が後輪18へと伝達される。
−クランクケース21−
次に、クランクケース21の構造について、図3等を参照しながら、詳細に説明する。本実施形態では、図3に示すように、クランクケース21は、クランク軸28の軸心よりも高い位置に位置する上ケース21aと、クランク軸28の軸心よりも下方に位置する下ケース21bとを備えている。上ケース21aと下ケース21bとは、上下方向に組み合わされている。これら上ケース21aと下ケース21bとによって、内部空間23が区画形成されている。
内部空間23には、クランク室23aと、ミッション室23bとに区画されている。具体的に、クランク室23aと、ミッション室23bとは、隔壁21eによって区画されている。隔壁21eは、上ケース21aに形成された隔壁21a1と、下ケース21bに形成された隔壁21b3とによって構成されている。図5に示すように、隔壁21eには、連通孔21fが形成されている。具体的に、連通孔21fは、上ケース21aに形成されている。クランク室23aと、ミッション室23bとは、この連通孔21fによって連通している。
図3に示すように、隔壁21eよりも前方に位置するクランク室23a内には、クランク軸28と、バランサ軸40、41が収納されている。一方、隔壁21eよりも後方に位置するミッション室23b内には、変速機構50と、図2に示すギア選択機構60と、オイルポンプ61とが収納されている。
図6に示すように、下ケース21bの右壁面には、連通孔71が形成されている。この連通孔71によって、ミッション室23bと、図2に示すクラッチ室67とが連通している。また、上ケース21aには、クランク軸28が挿通される開口21hの後方に、クラッチ室67に開口する排風経路72が形成されている。排風経路72は、上方に向かって延びている。
図5に示すように、上ケース21aの前半部分には、車幅方向に長い略矩形状のシリンダ取付口73が形成されている。図2に示すように、このシリンダ取付口73にシリンダ24が取り付けられている。図5に示すように、シリンダ取付口73の後方には、車幅方向に長い略矩形状の回転軸挿入口74が形成されている。本実施形態では、回転軸挿入口74は、前後方向において、クランクケース21のほぼ中央部に位置している。回転軸との関係でいえば、図3に示すように、回転軸挿入口74は、上バランサ軸40の直上からメイン軸45の前半部分の直上にまでわたって形成されている。この回転軸挿入口74は、クランク軸28の軸心28dよりも高い位置に軸心が位置する回転軸を内部空間23内に挿入するためのものである。
図3に示す上バランサ軸40は、クランクケース21の上部に形成された回転軸挿入口74(図5を参照)から内部空間23に挿入される。詳細には、上バランサ軸40は、クランクケース21の上部に形成された回転軸挿入口74からクランク室23aに挿入される。一方、クランク軸28の軸心28dよりも低い位置に軸心が位置する下バランサ軸41(図3を参照)は、下方から挿入される。具体的に、本実施形態では、図3に示すように、下ケース21bは、下ケース本体21b1と、底部材21b2とを有している。下ケース本体21b1は、下方に開口する開口75が形成されている。開口75は、底部材21b2によって塞がれている。下バランサ軸41は、底部材21b2が取り外された状態で、下ケース本体21b1の開口75から内部空間23内へ挿入される。尚、図6では、底部材21b2の描画を省略している。
−オイル回路99−
次に、主として図3、図10〜図14を参照しながら、エンジン2のオイル回路99について詳細に説明する。図3に示すように、内部空間23の底部には、エンジンオイルが溜められたオイル溜まり62が形成されている。このオイル溜まり62は、ミッション室23bとクランク室23aとにわたって形成されている。
図14に示すように、オイル溜まり62に溜められたエンジンオイルは、オイルポンプ61によってストレーナ51を介して吸い上げられる。ストレーナ51は、オイル溜まり62内に配置されている。このストレーナ51は、オイル溜まり62に溜められたエンジンオイルから固形物などを濾過して、エンジンオイルに混入した固形物などがオイルポンプ61に到達しないようにするためのものである。
図3に示すように、オイルポンプ61は、側面視においてメイン軸45の下方に配置されている。オイルポンプ61は、伝動チェーン68によってメイン軸45に連結されている。オイルポンプ61は、メイン軸45の回転によって駆動される。
図14に示すように、オイルポンプ61によって吸い上げられたエンジンオイルは、まずオイルクリーナ53に供給される。このオイルクリーナ53により、エンジンオイルの清浄化が行われる。
オイルクリーナ53からのエンジンオイルの一部は、メイン軸45とミッションシャワー44とに対して供給される。メイン軸45に供給されたエンジンオイルは、メイン軸45の各摺動部に対して供給される。一方、ミッションシャワー44に供給されたエンジンオイルは、ミッションシャワー44から放出され、ギア選択機構60に散布される。これにより、メイン軸45及びギア選択機構60の各摺動部の潤滑及びシールが行われる。尚、メイン軸45及びギア選択機構60の各摺動部の潤滑及びシールに使用されたエンジンオイルは、メイン軸45及びギア選択機構60から流れ落ち、オイル溜まり62に戻る。
また、オイルクリーナ53からのエンジンオイルの一部は、オイルクーラ54に供給される。このオイルクーラ54において、エンジンオイルが冷却される。オイルクーラ54において冷却されたエンジンオイルは、メインギャラリ55に一旦溜められる。
メインギャラリ55に溜められたエンジンオイルは、クランク軸28に対して供給される。具体的に、メインギャラリ55に溜められたエンジンオイルは、クランク軸28に形成されたオイル供給孔28fに供給される。このオイル供給孔28fを経由してクランク軸28の各摺動部にエンジンオイルが供給される。これにより、クランク軸28の各摺動部の潤滑及びシールが行われる。尚、クランク軸28の各摺動部の潤滑及びシールに使用されたエンジンオイルは、クランク軸28から流れ落ち、オイル溜まり62に戻る。
クランク軸28のオイル供給孔28fには、オイル供給経路95、96が連結されている。オイル供給経路95は、途中で分岐しており、上バランサ軸40及び下バランサ軸41に接続されている。クランク軸28のオイル供給孔28fに供給されたエンジンオイルの一部は、このオイル供給経路95を経由して上バランサ軸40及び下バランサ軸41の各摺動部に供給される。これにより、上バランサ軸40及び下バランサ軸41の各摺動部の潤滑及びシールが行われる。尚、上バランサ軸40及び下バランサ軸41の各摺動部の潤滑及びシールに使用されたエンジンオイルは、上バランサ軸40及び下バランサ軸41から流れ落ち、オイル溜まり62に戻る。
一方、オイル供給経路96は、シリンダヘッド25に至っている。このオイル供給経路96によって、シリンダヘッド25の各摺動部にエンジンオイルが供給される。具体的に、オイル供給経路96は、途中で分岐している。オイル供給経路96は、吸気カム軸33aと排気カム軸33bとに接続されている。クランク軸28のオイル供給孔28fに供給されたエンジンオイルの一部は、このオイル供給経路96を経由して吸気カム軸33a及び排気カム軸33bの各摺動部に供給される。これにより、吸気カム軸33a及び排気カム軸33bの各摺動部の潤滑及びシールが行われる。
吸気カム軸33a及び排気カム軸33bの各摺動部の潤滑及びシールに使用されたエンジンオイルは、吸気カム軸33a及び排気カム軸33bから流れ落ち、シリンダヘッド25の底部に流れ落ちる。シリンダヘッド25の底部には、後に詳述するオイル戻し経路91が接続されている。オイル戻し経路91は、ミッション室23b内のオイルポンプ61近傍にまで延びており、オイル溜まり62に至っている。シリンダヘッド25内のエンジンオイルは、このオイル戻し経路91を経由して、オイル溜まり62にまで戻される。つまり、オイル戻し経路91によって、シリンダヘッド25内のエンジンオイルがミッション室23bにまで戻される。
オイル供給経路96の途中部には、オイル供給経路97が接続されている。オイル供給経路97は、ドライブ軸46に接続されている。オイル供給経路96を流れるエンジンオイルの一部は、このオイル供給経路97を経由して、ドライブ軸46の各摺動部に供給される。これにより、ドライブ軸46の各摺動部の潤滑及びシールが行われる。尚、ドライブ軸46の各摺動部の潤滑及びシールに使用されたエンジンオイルは、ドライブ軸46から流れ落ち、オイル溜まり62に戻る。
−オイル戻し経路91−
次に、オイル戻し経路91について、図3、図10〜図13を主として参照しながら詳細に説明する。図3に示すように、シリンダボディ22の内部には、シリンダ24と略並行に延びる、第1の経路としてのオイル戻り孔69が形成されている。具体的に、オイル戻り孔69の上端部は、シリンダヘッド25の底部に開口している。一方、オイル戻り孔69の下端部は、シリンダボディ22の下端面に開口している。オイル戻り孔69は、シリンダボディ22の前方側の壁部内に形成されている。オイル戻し経路91は、このオイル戻り孔69を含んでいる。
例えば図10に示すように、上ケース21aの前半部には、第2の経路としてのオイル経路92が形成されている。具体的に、オイル経路92は、上ケース21aのクランク軸28よりも前の前方壁部分に形成されている。図5に示すように、オイル経路92の上端部は、シリンダボディ22が取り付けられる上ケース21aの端面21a2に開口している。詳細に、開口92aは、端面21a2のオイル戻り孔69の下端部に対応する位置に形成されている。つまり、オイル経路92は、オイル戻り孔69に接続されている。尚、図示は省略するが、オイル経路92とオイル戻り孔69との間には、エンジンオイルの漏れを抑制するためのガスケット又は、Oリングが配置されている。
図10に示すように、オイル経路92のオイル経路92は、開口92aから下方に向かってやや斜め後方に延びている。そして、オイル経路92は、途中部において、左側に折れ曲がっている。オイル経路92の下流側端部は、発電機室65に向かって開口している。具体的に、オイル経路92の下流側の開口92bは、アイドラ軸93の貫通孔93aに対応した位置に形成されている。これにより、オイル経路92は、アイドラ軸93の貫通孔93aに接続されている。つまり、オイル経路92によって、オイル戻り孔69と貫通孔93aとが連通している。これにより、オイル戻り孔69からのエンジンオイルは、オイル経路92を経由して貫通孔93aに導かれる。
一方、発電機カバー64の内部には、図11に示すように、第3の経路としてのオイル経路94が形成されている。オイル経路94の上流側端部は、貫通孔93aに対応した位置に開口している。つまり、オイル経路94の上流側開口94aは、アイドラ軸93の取付位置に開口している。これにより、貫通孔93aとオイル経路94とは連結されている。
オイル経路94は、上流側の開口94aから一旦下方に向かって延びている。オイル経路94は、途中部94gにおいて折れ曲がっている。オイル経路94の途中部94gよりも下流側の部分は、後方に向かって延びている。オイル経路94は、後方端部94hにおいて車幅方向内側に折れ曲がっている。オイル経路94の後方端部94hよりも下流側部分94iは、車幅方向内側に向かって延びている。オイル経路94の下流側部分94iは、ミッション室23bに至っており、下流側部分94iの下流側開口94fは、オイル溜まり62に開口している。すなわち、このオイル経路94によって、貫通孔93aとミッション室23bとが連通されている。本実施形態では、このオイル経路94と、貫通孔93aと、オイル経路92とオイル戻り孔69とによって、オイル戻し経路91が構成されている。
尚、オイル経路94の途中部94gには、下方に向かって開口する開口94bが形成されている。開口94bは、図13にも示すように、栓94dによって塞がれている。また、オイル経路94の後方端部94hには、後方に向かって開口する開口94cが形成されている。開口94cは、栓94eによって塞がれている。
−ブリーザ部材−
図3に示すように、回転軸挿入口74には、ブリーザ部材80が取り付けられている。言い換えれば、ブリーザ部材80は、平面視において、回転軸挿入口74を被覆するように、回転軸挿入口74内に配置されている。つまり、ブリーザ部材80によって、回転軸挿入口74が閉じられている。言い換えれば、ブリーザ部材80は、回転軸挿入口74の蓋としての機能も有している。
図3及び図4に示すように、ブリーザ部材80の直上には、オイルタンク3が配置されている。ブリーザ部材80の上端面は、略平面状に形成されている。ブリーザ部材80の上端面は、オイルタンク3の下端面3aと対向している。
このブリーザ部材80は、シリンダ24とピストン27との間から吹き抜けたブローバイガスに混じったミスト状のエンジンオイル(ミストオイル)を、ブローバイガスから分離するためのものである。以下、図3並びに図7〜図9を参照しながら、ブリーザ部材80の構造について説明する。尚、図6〜図9に示す矢印は、ブローバイガスの流れを表している。
図3に示すように、ブリーザ部材80は、ブリーザ本体81と、蓋82とを備えている。ブリーザ本体81と、蓋82とは、図8に示すように、複数のボルト83によって相互に固定されている。また、その複数のボルト83によって、ブリーザ部材80は、クランクケース21に対して固定されている。尚、図3及び図7では、ボルト83の描画を省略している。
図3に示すように、ブリーザ本体81は、少なくともその一部が、回転軸挿入口74内に位置している。そして、ブリーザ本体81の内部空間23側の底部壁81aは、ブリーザ本体81に近接して配置された回転軸に沿った形状に形成されている。具体的には、底部壁81aは、上バランサ軸40とメイン軸45とに沿った形状に形成されている。詳細には、底部壁81aは、上バランサ軸40が回転したときに上バランサ軸40の軸心から最も離れた部位が通過する軌道40gと、メイン軸45が回転したときにメイン軸45の軸心から最も離れた部位が通過する軌道45cとに沿った形状に形成されている。
ブリーザ本体81内には、ブリーザ室84が形成されている。ブリーザ室84は、蓋82によって閉じられている。図7及び図8に示すように、ブリーザ本体81の底部壁81aの右端部には、ブリーザ室84に連通する略矩形状の開口81bが形成されている。この開口81bには、図8に示すように、排風経路72に接続されている。これにより、内部空間23からのブローバイガスは、クラッチ室67及び排風経路72を経由してブリーザ室84に導かれる。尚、開口81bと排風経路72との間には、Oリング又はガスケットが配置されている。このOリング又はガスケットにより、開口81bと排風経路72との間のシールが行われている。
図7〜図9に示すように、ブリーザ本体81には、隔壁85が形成されている。図8及び図9に示すように、隔壁85は、ブリーザ本体81の内壁から上方に向かって突出している。隔壁85の先端は、蓋82に当接している。この隔壁85により、ブリーザ室84は、ラビリンス状に区画されている。言い換えれば、ブリーザ室84内に、ラビリンス状経路86が形成されている。さらに言い換えれば、ブリーザ室84は、クランク状に区画されている。これにより、ブローバイガスの排出経路長が長くなっている。
主として図7に示すように、蓋82には、排出用パイプ87が取り付けられている。排出用パイプ87は、ラビリンス状経路86の終端部に開口している。開口81bからブリーザ室84に導かれたブローバイガスは、ラビリンス状経路86を通過して、排出用パイプ87から排出される。ラビリンス状経路86を通過する際に、ブローバイガスに混じったミスト状のエンジンオイルがブローバイガスから分離され、液状のエンジンオイルが回収される。その結果、排出用パイプ87からは、エンジンオイルの混合量が低減されたブローバイガスが排出される。
図3に示すように、排出用パイプ87には、ブローバイホース88が接続されている。ブローバイホース88は、図1に示すエアクリーナー5に接続されている。排出用パイプ87から排出されたブローバイガスは、エアクリーナー5の負圧により吸引される。これにより、ブローバイガスは、ブローバイホース88を経由して、エアクリーナー5に供給される。エアクリーナー5に供給されたブローバイガスは、吸気ポート37a、37bから再び燃焼室36a、36bに供給される。これにより、ブローバイガスの再燃焼が行われる。
図8及び図9に示すように、ブリーザ本体81の底部壁81aの左端部には、オイル抜き孔89が形成されている。ブリーザ室84において回収されたエンジンオイルは、このオイル抜き孔89から排出される。オイル抜き孔89は、車幅方向に関して、車幅中心よりも、図1に示すサイドスタンド4が設けられた左側に形成されている。つまり、オイル抜き孔89は、底部壁81aの、サイドスタンド4により自動二輪車1を駐車したときに低くなる側に形成されている。また、底部壁81aのブリーザ室84側の面は、開口81bが形成された右側からオイル抜き孔89に近づくにつれて低くなるスロープ状に形成されている。底部壁81aは、底部壁81aのブリーザ室84側の面のうち、オイル抜き孔89が形成された部分が最も低くなるように形成されている。これにより、ブリーザ室84内において回収され、液化したエンジンオイルは、底部壁81aのブリーザ室84側の面上を流れてオイル抜き孔89に集められる。
図8及び図9に示すように、クランクケース21には、オイル回収経路90が形成されている。オイル回収経路90は、オイル抜き孔89に連通している。オイル回収経路90は、オイル抜き孔89の先端から、図3及び図8に示すオイル溜まり62付近にまで延びている。オイル抜き孔89から排出されたエンジンオイルは、このオイル回収経路90を経由してオイル溜まり62にまで戻される。尚、オイル抜き孔89とオイル回収経路90との間には、図示しないOリング又はガスケットが配置されている。このOリング又はガスケットにより、オイル抜き孔89とオイル回収経路90との間からのエンジンオイルの漏れが抑制されている。
(作用及び効果)
例えば、図15に示すエンジン(内燃機関)100のように、シリンダヘッド105内のエンジンオイルをクランク室118に戻すことも考えられる。つまり、オイル戻し経路115の下流側端部をクランク室118に位置させることも考えられる。しかしながら、通常、クランク室118の圧力は、比較的高い。このため、クランク室118の圧力に起因して、オイル戻し経路からのエンジンオイルの戻りが悪くなる虞がある。
それに対して、ミッション室23bは、クランク室23aと比較して低圧である。このため、本実施形態のように、オイル戻し経路91の下流側端部がミッション室23bに位置する構成とすることで、オイル戻し経路91からのエンジンオイルの戻りを良くすることができる。よって、エンジンオイルの循環効率を高くすることができる。
例えば、発電機室65の下部とミッション室23bの下部とを連通させると共に、シリンダヘッド25内のエンジンオイルを発電機室65に戻すことも考えられる。つまり、オイル戻し経路91の下流側端部を発電機室65に位置させることも考えられる。しかしながら、発電機室65には、比較的高い回転速度で回転する発電機63が配置されている。このため、発電機室65では、上記発電機63の回転に起因して、比較的風圧の高い激しい風が発生している。よって、シリンダヘッド25内のエンジンオイルを発電機室65に戻す場合、この風圧により、オイル戻し経路91からのエンジンオイルの戻りが悪くなる虞がある。
それに対して、ミッション室23bに位置するメイン軸45やドライブ軸46の回転速度は、クランク軸28と共に回転する発電機63の回転速度よりも遅い。このため、ミッション室23bには、発電機室65ほど大きな風圧は生じない。よって、本実施形態のように、オイル戻し経路91の下流側端部がミッション室23bに位置する構成とすることで、オイル戻し経路91からのエンジンオイルの戻りを良くすることができる。従って、エンジンオイルの循環効率を高くすることができる。
ところで、例えば、シリンダヘッド25内からのエンジンオイルを、パイプなどを用いて、ミッション室23bに導くことも考えられる。つまり、オイル戻し経路91をパイプにより構成することも考えられる。しかしながら、オイル戻し経路91をパイプにより構成する場合、パイプと他の部材との間に所定のクリアランスを設ける必要がある。また、パイプのエルボ部分には、比較的大きな曲率半径が必要となる。このため、パイプを配置するためには、比較的大きなスペースが必要となる。よって、オイル戻し経路91をパイプにより構成する場合は、エンジン2が大形化する傾向にある。また、パイプなどの別の部材を用いてオイル戻し経路91を形成した場合、エンジン2のコストが上昇する傾向にある。
それに対して、本実施形態では、オイル戻し経路91が、シリンダボディ22内部、アイドラ軸93内部、及び発電機カバー64の内部に形成されている。このため、オイル戻し経路91をパイプにより構成する場合のように、クリアランスの確保等の問題が生じにくい。よって、その分、エンジン2をコンパクト化することができる。例えば、車幅方向に関して、エンジン2の張り出しを抑制することが可能となる。また、オイル戻し経路の形成にパイプを要さないため、エンジン2を低コスト化することができる。
尚、エンジン2の小型化が可能な本実施形態の技術は、エンジン2の小型化が特に強く要求される自動二輪車に対して特に有用である。自動二輪車においては、エンジン2の車幅方向の長さを抑制することで、自動二輪車1の車幅方向の張り出しを抑制することができるので、自動二輪車1の運動性能を向上させることができるというメリットも得られる。
但し、本発明に係る車両は、自動二輪車に限定されない。ATV(All Terrain Vehicle)等の自動二輪車以外の鞍乗型車両、四輪自動車などにおいてもエンジン2の小型化は共通の課題であるからである。つまり、本発明に係る車両は、ATV(All Terrain Vehicle)等の自動二輪車以外の鞍乗型車両、四輪自動車などであってもよい。
また、オイル戻し経路91をパイプにより構成する場合と比較して、オイル戻し経路91を発電機カバー64などの内部に形成する場合は、オイル戻し経路91の経路の設定が比較的自由に行える。例えば、オイル戻し経路91を、比較的小さな曲率半径で複数回にわたって連続して曲げることもできる。このため、エンジン2の設計自由度を向上することができる。
ところで、本実施形態のように、シリンダヘッド25内のエンジンオイルをミッション室23bに導く場合、発電機カバー64を経由するようにオイル戻し経路91を形成する必要がある。これは、クランク軸28の左端部に発電機63が取り付けられているため、クランクケース21の左側壁は比較的薄いことが好ましいので、クランクケース21の左側壁にオイル戻し経路91を形成することが困難であるからである。よって、クランクケース21に形成されたオイル経路92と、発電機カバー64に形成されたオイル経路94とを何らかの手段で連絡する必要がある。例えば、オイル経路92とオイル経路94とを別個に設けたパイプなどにより連絡することも考えられる。しかしながら、パイプを別個に設けると、エンジン2が大形化する傾向にある。
それに対して、本実施形態では、オイル経路92とオイル経路94とがアイドラ軸93の内部に形成された貫通孔93aによって連絡されている。このように、既存のシャフトと、オイル経路92とオイル経路94とを連絡するパイプとを兼用することで、エンジン2の構成をシンプルにすることができる。その結果、エンジン2を小型化することが可能となる。
尚、本実施形態では、オイル経路92とオイル経路94とを連絡する貫通孔93aをアイドラ軸93に形成する例について説明した。但し、本発明はこの構成に限定されない。アイドラ軸93以外の他のシャフトに貫通孔93aを形成してもよい。具体的には、クランクケース21の左側壁と発電機カバー64との間に軸架された他のシャフトに貫通孔93aを形成してもよい。貫通孔93aを形成するシャフトは、アイドラ軸93等の、比較的回転速度が遅いシャフトであることがより好ましい。そうすることで、エンジンオイルの漏れを抑制することができる。その結果、エンジンオイルの循環効率を向上することができる。
本実施形態では、オイル戻し経路91はオイル溜まり62にまで延びている。このため、シリンダヘッド25内からのエンジンオイルをより確実にオイル溜まり62に戻すことができる。その結果、エンジンオイルの循環効率を向上することができる。
本実施形態に係るエンジン2では、平面視において、回転軸挿入口74とブリーザ部材80とが同じ位置に配置されている。これにより、平面視におけるエンジン2の大きさを小さくすることができる。例えば、エンジン2の前後方向の長さを抑制することができる。
また、回転軸挿入口74内にブリーザ部材80を配置することで、平面視において、回転軸挿入口74とブリーザ室84とを別の場所に設ける場合と比較して、回転軸挿入口74を大きく形成すると共に、ブリーザ部材80を大きくすることが可能となる。よって、上バランサ軸40の挿入が容易となる。且つ、ブリーザ室84の容量を比較的大きくすることができる。従って、ブローバイガスとミストオイルとの分離能力を向上することができる。言い換えれば、エンジンオイルの回収効率を向上させることができる。
また、図3に示すように、オイルタンク3とブリーザ部材80とも、平面視において、同じ位置に配置されている。これにより、例えば、オイルタンク3とブリーザ部材80とを平面視において、前後方向に配置したときに比べて、リアアーム17の取付位置をより前方にすることができる。よって、リアアーム17を比較的長くすることができる。その結果、自動二輪車1の運動性能を向上させることができる。
《その他の変形例》
上記実施形態では、オイル経路92とオイル経路94とを連絡する貫通孔93aをアイドラ軸93に形成する例について説明した。但し、本発明はこの構成に限定されない。アイドラ軸93以外の他のシャフトに貫通孔93aを形成してもよい。具体的には、クランクケース21の左側壁と発電機カバー64との間に軸架された他のシャフトに貫通孔93aを形成してもよい。貫通孔93aを形成するシャフトは、アイドラ軸93等の、比較的回転速度が遅いシャフトであることがより好ましい。そうすることで、エンジンオイルの漏れを抑制することができる。その結果、エンジンオイルの循環効率を向上することができる。
本発明に係る車両は、ATV(All Terrain Vehicle)等の自動二輪車以外の鞍乗型車両、四輪自動車などであってもよい。
本発明は、エンジンに有用である。
実施形態に係る自動二輪車の側面図である。 エンジンの断面図である。 エンジンの側面視における断面図である。 エンジンの平面図である。 上ケースの平面図である。 クランクケースの左側面図である。 ブリーザ部材の平面図である。 図7におけるVIII-VIII矢視図である。 図7におけるIX-IX矢視図である。 クランクケースの右側面図である。 発電機カバーの背面図である。 図11におけるXII-XII矢視図である。 図11におけるXIII-XIII矢視図である。 オイル回路を表す概念図である。 特許文献1に記載された内燃機関の冷却系オイル回路を示した図である。
符号の説明
1 自動二輪車
2 エンジン
19 ケーシング
21 クランクケース
22 シリンダボディ
23a クランク室
23b ミッション室
24 シリンダ
25 シリンダヘッド
61 オイルポンプ
62 オイル溜まり
64 カバー(発電機カバー)
65 回転電機室(発電機室)
69 第1の経路(オイル戻り孔)
91 オイル戻し経路
92 第2の経路(オイル経路)
93 シャフト(アイドラ軸)
93a 貫通孔
94 第3の経路(オイル経路)

Claims (9)

  1. クランク室と、前記クランク室に対して区画され、オイル溜まりが下部に設けられたミッション室とを有するケーシングと、
    前記ケーシングの前記クランク室に取り付けられたシリンダボディと、
    前記シリンダボディの先端部に取り付けられたシリンダヘッドと、
    前記オイル溜まりに溜められたオイルを前記シリンダヘッド内に供給するオイルポンプと、
    を備え、
    前記シリンダヘッドの内部と前記ミッション室との間に連結され、前記シリンダヘッド内のオイルを前記ミッション室にまで戻すオイル戻し経路を有するエンジン。
  2. 請求項1に記載されたエンジンにおいて、
    前記ケーシングは、
    前記クランク室と、前記ミッション室とを有するクランクケースと、
    前記クランクケースの側方に取り付けられ、前記クランク室に対して区画された回転電機室を区画形成するカバーと、
    を有し、
    前記回転電機室において、前記クランクケースと前記カバーとの間に軸架され、軸方向に貫通する貫通孔が形成されたシャフトをさらに備え、
    前記オイル戻し経路は、前記貫通孔を含むエンジン。
  3. 請求項1に記載されたエンジンにおいて、
    前記シリンダボディには、前記シリンダヘッドの内部と連通する第1の経路が形成されており、
    前記オイル戻し経路は、前記第1の経路を含むエンジン。
  4. 請求項2に記載されたエンジンにおいて、
    前記シリンダボディには、前記シリンダヘッドの内部と連通する第1の経路が形成されており、
    前記クランクケースには、前記第1の経路と前記貫通孔とを連通させる第2の経路が形成されており、
    前記オイル戻し経路は、前記第2の経路を含むエンジン。
  5. 請求項2に記載されたエンジンにおいて、
    前記カバーには、前記貫通孔と前記ミッション室とを連通させる第3の経路が形成されており、
    前記オイル戻し経路は、前記第3の経路を含むエンジン。
  6. 請求項2に記載されたエンジンにおいて、
    前記シャフトは、前記シャフトの軸心周りに回転可能であるエンジン。
  7. 請求項1に記載されたエンジンにおいて、
    前記オイル戻し経路は、前記オイル溜まりにまで延びているエンジン。
  8. 請求項1に記載されたエンジンを備えた車両。
  9. 自動二輪車である請求項8に記載された車両。
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