以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下で、参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
以下の説明において、パウチ容器10に充填される内容物は、固体、液体、粉体、粒体、ゲル状体のいずれでもよい。内容物は、パウチ容器10とは別の内部容器、例えば、目薬を収容したプラスチック容器等であってもよい。また、以下の説明では、パウチ容器10の上端を切り取ることにより開口するパウチ容器を例にあげて説明しているが、パウチ容器10の開口は、他の箇所、例えば、上側隅部や、背面等に設けられてもよい。また、パウチ容器10に、プラスチック等からなる口栓(所謂スパウト)を取り付け、当該口栓を介して内容物を取り出せるようにしてもよい。
また、以下の説明では、少なくとも、互いに対向する正面及び背面(第一面及び第二面)を構成する一対の壁面シートと、底ガゼットシートとを備えたスタンディングパウチを例示するが、底ガゼットシートを有さない平パウチや、サイドガゼットシートを備えたサイドガゼットパウチ、1枚のシートを用いて第一面及び第二面が構成された所謂ワンシームパウチ、底ガゼットシート及びサイドガゼットシートの両方を備えたパウチなど、他のパウチ形態に本発明の構成を適用してもよい。
はじめに、図1〜図3を参照して、第一実施形態のパウチ容器10について説明する。図1は、第一実施形態であるパウチ容器10の斜視図である。図2は、このパウチ容器10の正面図、図3は、図2の概略的なA−A断面図である。
パウチ容器10は、正面シート12と、背面シート14と、容器の下端において正面および背面シート14を連結する底ガゼットシート(図1〜図3では見えず)と、正面シート12の内面に結合される内装シート18と、を備える所謂スタンディングパウチである。正面シート12及び背面シート14は、パウチ容器10の正面および背面を構成する壁面シートである。底ガゼットシートは、パウチ容器10の底ガゼット(マチ)を構成する。この底ガゼットシートは、上方に向かって山折りされた状態で、正面シート12および背面シート14に挟みこまれる。以上の正面シート12、背面シート14、底ガゼットシートで囲まれた容器の内部空間が、内容物が充填される充填空間20となる。
パウチ容器10では、正面・背面シート12,14の間に底ガゼットシートが挿入され、この状態で各シートの端部同士を接合するシール部が形成されている。本実施形態では、当該シール部として、上端シール部22t、底シール部22b、及びサイドシール部22sが形成される。正面・背面シート12,14は、横方向よりも上下方向に長く延びた正面視略矩形形状を有する(以下、横方向を「幅方向」、上下方向を「高さ方向」という)。底ガゼットシートは、例えば正面・背面シート12,14の下端から該シートの上下方向長さの1/6〜1/4程度の範囲に設けられる。
パウチ容器10は、その上端部分を切り取ることで、充填空間20と外部空間とを連通できる。この切り取り容易にするために、パウチ容器10のサイドシール部22sには、切り取りの開始端となるノッチ24が形成されている。上端シール部22tは、正面・背面シート12,14の上端同士を接合して形成される。
底シール部22bは、底ガゼットシートの端部に形成されるシール部であって、底ガゼットシートと正面・背面シート12,14とを接合する。底シール部22bは、内容物を充填したときに正面・背面シート12,14が互いに離間して底ガゼットシートが展開するように形成される。また、底ガゼットシートには、横方向両端部に切り欠き21が形成されることが好適である。これにより、正面シート12と背面シート14とが直接接合され、安定した自立性が得られる。サイドシール部22sは、容器幅方向両端部において、正面シート12と背面シート14とを接合して形成される。サイドシール部22sの一部は、後述の内装シート18の幅方向両端部を正面・背面シート12,14の間に挟んだ状態で形成される。
パウチ容器10は、さらに、内装シート18を備える。内装シート18は、正面シート12の内面(充填空間20に露出する面)に接合されたシートである。内装シート18は、正面・背面シート12,14の幅と同じ幅を有し、正面・背面シート12,14の略1/3〜1/4程度の高さを有した横長の長方形である。内装シート18の幅方向両端は、正面シート12および背面シート14に挟まれて接合される。また、内装シート18の高さ方向両端は、正面シート12の内面に接合される。一方で、内装シート18の周縁以外の部分は、正面シート12と接合していない。したがって、内装シート18と正面シート12との間には、外部空間および充填空間20から閉鎖された閉鎖空間26が形成される。
こうしたパウチ容器10を構成する各シートは、通常、樹脂フィルムから構成される。シートを構成する樹脂フィルムには、耐衝撃性、耐磨耗性、及び耐熱性など、包装体としての基本的な性能を備えることが要求される。また、上記各シール部は、通常、ヒートシールにより形成されるので、シートには、ヒートシール性も要求される。シートとしては、ベースフィルム層と、ヒートシール性を付与するシーラント層とを有する複層シートが好適であり、高いガスバリア性が要求される場合には、ベースフィルム層とシーラント層との間にガスバリア層を設けることが好適である。
なお、ベースフィルム層そのものにバリア性を付与してもよい。この場合は、バリア層をベースフィルム層として用い、バリア層とシーラント層とを有する複層シートとなる。また、シートの両面にヒートシール性を付与する場合は、後述のシーラント層を形成する単層フィルムを用いてもよいし、複層シートの場合は、同種又は異種のシーラント層を二層有するか(このとき、シーラント層の一層を形式的にベースフィルム層として用いることになる)、或いはベースフィルム層の両面にシーラント層を有するシートを用いてもよい。
ここで、ベースフィルム層、シーラント層、及びガスバリア層の構成材料を例示する。なお、これら各層の積層は、慣用のラミネート法、例えば、接着剤によるドライラミネーション、熱接着性層を挟んで熱により接着させる熱ラミネーションなどにより行うことができる。
ベースフィルム層を構成するフィルムとしては、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)など)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド系樹脂(ナイロン−6、ナイロン−66などのナイロン系樹脂(Ny)など)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
シーラント層を構成するフィルムとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ナイロン(ON)、エチレン−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
ガスバリア層としては、アルミニウム等の金属薄膜、又は塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの樹脂フィルム、或いは任意の合成樹脂フィルム(例えば、ベースフィルム層であってもよい)に、アルミニウム、酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物などを蒸着(又はスパッタリング)したフィルムが例示できる。なお、本実施形態では、後に詳説するように、正面シート12(舌部30が形成されるシート)に両面印刷を施している。両面印刷を許容しつつ、ガスバリア性を付与するためには、ガスバリア層を、酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物などを蒸着して形成された透明ガスバリア層とすることが好ましい。
ところで、本実施形態では、正面シート12のうち内装シート18と重なる箇所に舌部30を設けている。舌部30は、正面シート12に上側に開口した略コ字状の分離線32で区画される部位である。この舌部30は、正面シート12を、分離線32に沿って破断した場合に、その上端のみが正面シート12に繋がり、左右端部および下端は、正面シート12から切り離されて、ユーザ等によりめくられることが可能となる。
分離線32は、切断線(図面において太実線で図示)と、半破断線(図面において破線で図示)と、を含む。切断線は、ユーザ等による破断の起点となる線で、所定長さをもって正面シート12を貫通する切り込み線等が該当する。半破断線は、ユーザ等による破断を補助するための線で、例えば、切り込み線を間欠的に並べたミシン目線や、シートの厚み未満の深さの溝線であるハーフカット線等が該当する。また、切断線(切り込み線)の位置およびサイズは、特に限定されないが、ユーザが指を掛けやすく、かつ、半破断線を破断する前段階において舌部30がめくれない程度の位置およびサイズに形成されることが望ましい。本実施形態では、略コ字状の分離線32の角部に切断線を設けている。このとき、切断線は、指1,2本が引っ掛けられる程度の長さとし、不必要に舌部30がめくれ上がらないようにしている。
また、分離線32の始端32sおよび終端32eは、略円弧状となっている。分離線32の両端32s,32eを円弧状とすることで、半破断線に沿ってシートを破断した際に、分離線32を越えた意図しない破断が継続することを防止できる。なお、これら端部の形状は円弧状に限定されず、例えば、円形や長円形状等、通常公知の形状が選択できる。
分離線32を、切断線から、半破断線に沿って破断していくと、舌部30は、その上端のみが正面シート12に繋がり、他の部分が、正面シート12から分離した状態となる。このとき、舌部30を、下から上に向かってめくりあげると、舌部30の内面(正面シート12の内面)および内装シート18の外面が、外部に露出することになる。本実施形態では、この舌部30の内面および内装シート18の外面の少なくとも一方に、情報を印刷している。
印刷される情報は、特に限定されないが、パウチ容器10に収容される内容物の用法や用量、原料等、製品として販売するのに必要な情報の他、懸賞情報や(内容物が食品の場合)応用レシピ情報といった購入者特典情報等でもよい。また、印刷される情報は、文字に限らず、写真やイラスト等でもよい。いずれにしても、正面シート12のうち内装シート18と重なる部分に舌部30を設け、当該舌部30よび内装シート18の少なくとも一方に、情報を印刷することにより、パウチ容器10のサイズに対する、情報印刷スペースを広げることができる。特に、内容物が医農薬品等、膨大な情報の記載が必要な内容物の場合に好適である。
すなわち、舌部30が存在しない場合、情報印刷スペースは、原則、正面シート12の外面、背面シート14の外面に限られる。なお、底ガゼットシートの外面にも印刷は可能であるが、ユーザの目に触れにくいため、当該底ガゼットシートに情報が印刷されることは少ない。したがって、舌部30がない場合、情報印刷スペースを広げるためには、正面シート12および背面シート14のサイズを広げる、ひいては、パウチ容器10そのもののサイズを増大させるしかなかった。しかし、パウチ容器10のサイズアップは、材料費の増加や、陳列・輸送コストの増加を招き、望ましくない。
そこで、本実施形態では、既述した通り、舌部30を設け、当該舌部30または舌部30と対向する内装シート18に情報を印刷している。かかる構成とすることで、パウチ容器10そのもののサイズを増加させることなく、最大で、舌部30の2倍の面積の印刷スペースを増やすことができる。
また、本実施形態の舌部30の分離線32は、切断線と半破断線とで構成されている。したがって、半破断線に沿って正面シート12を破断するまで、舌部30をめくり上げることができない。かかる特性は、購入者にのみ提示したい購入者特典情報等(例えば懸賞応募に必要な数列等)を印刷する場合に、特に有効となる。
また、舌部30の内面および内装シート18の外面は、舌部30をめくるまで見られない。また、舌部30および内装シート18は、パウチ容器10から離脱することなく、パウチ容器10に残存し続ける部位である。したがって、舌部30の内面および内装シート18の外面は、容器のデザイン性のために隠しておきたいが、破棄されて欲しくない情報の印刷に特に適していると言える。例えば、内容物が薬品の場合は、当該薬品の能書情報が必要となる。能書情報は、薬品を適切に使用するために重要な情報であるものの、細かい文字で書かれることが多く、当該能書情報を容器外面に印刷した場合には、当該容器のデザイン性を損なうことが多い。そのため、従来、薬品の場合、能書情報を印刷した紙を容器内部に封入していた。しかし、能書情報を印刷した紙は、容器から分離可能であるため、紛失することが多かった。一方、本実施形態のように、舌部30の内面および内装シート18の外面に能書情報を印刷した場合、舌部30をめくるまでは、能書情報は、見えないため、パウチ容器10のデザイン性を損なうことがない。また、舌部30をめくった後でも、舌部30および内装シート18は、パウチ容器10に残存し続けるため、能書情報を紛失することがない。
なお、当然ながら、舌部30の内面、内装シート18の外面以外の箇所、正面シート12の外面および背面シート14の外面にも、各種情報は、印刷される。したがって、正面シート12のうち、舌部30となる箇所は、その両面に情報が印刷されることになる。この両面印刷を許容し、かつ、ガスバリア性を担保するために、当該正面シート12のガスバリア層は、アルミ等の金属を透明蒸着して形成される透明ガスバリア層とすることが望ましい。
図4は、本実施形態の正面シート12および内装シート18の構成の一例を示す図である。図4に示すように、正面シート12は、外側から順に、透明蒸着ポリエステル(以下「VMPET」という)70、ナイロン(以下「Ny」という)78、直鎖状低密度ポリエチレン(以下「LLDPE」という)80を積層して構成されている。LLDPE80は、シーラント層を構成するもので、正面シート12は、片面シール性を有していればよいため、LLDPE80は、片面にのみ配されている。VMPET70は、酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物などを蒸着して形成された透明ガスバリア層(VM層)を内面に有したPETである。本実施形態では、このVMPET70の内面(VM層の形成面)に、外面用画像層72、遮蔽画像層74、内面用画像層76が順に印刷されている。これらはグラビア印刷やフレキソ印刷等の通常公知の印刷手法により設けられる。VMPET70の内面に印刷された外面用画像層72は、透明なVMPET70を透過して外面側から視認できる一方で、内面用画像層76は、遮蔽画像層74で遮られるため、外面側からは視認できない。また、内面用画像層76は、透明なNy78およびLLDPE80を透過して、内面側から視認できる一方で、外面用画像層72は、遮蔽画像層74で遮られるため、内面側からは視認できない構成となっている。なお、遮蔽画像層74は、例えば外面側から視認するときに内面用画像層76を視認できない程度(内面側からも同様)に遮蔽できるものであればよく、通常は白色インキや黒色インキ等の所望のインキを所謂ベタ状に印刷されて形成される。また、その形成領域も遮蔽できる程度の領域であればよく、全面に設けられていなくともよい。また、この正面シート12において、外面用画像層72は、パウチ容器10の外面に印刷される各種情報を示す画像層である。また、正面シート12において、内面用画像層76は、上述した舌部30の内面に印刷される情報を示す画像の層である。したがって、内面用画像層76は、基本的には、舌部30に対応する位置にのみ形成されればよいが、より広い範囲に形成されてもよい。
また、内装シート18は、外側から順に、LLDPE80、PET82、ガスバリア層84、Ny78、LLDPE80を積層して構成されている。内装シート18は、両面シール性が必要であるため、シーラント層を構成するLLDPE80が両面に配されている。また、PET82の内面には、情報を示す外面用画像層72が印刷されている。この外面用画像層72は、透明なPET82、LLDPE80を透過して外面から視認できる構成となっている。この外面用画像層72が示す画像は、上述した内装シート18の外面に印刷される情報を示す画像である。内装シート18の外面用画像層72は、基本的には、内装シート18のうち舌部30との重複箇所にのみ形成されればよいが、場合によっては、より広い範囲に形成されてもよい。また、ここで説明した構成は一例であり、製造のしやすさや、収容される内容物の特性や、印刷したい画像の配置等に応じて、適宜、変更されてもよい。例えば、正面シート12の構成は、VMPET70に替えて通常のPETを配するとともに遮蔽画像層74の印刷に替えて、当該印刷層個所にアルミニウム等からなるガスバリア層を配置してもよい。この場合、PETの内面に外面用画像層72を印刷し、Ny78の外面に内面用画像層76を印刷すれば、両面印刷された舌部30が得られる。また、背面シート14およびガゼットシートは、正面シートとほぼ同じ構成でよい。ただし、背面シート14およびガゼットシートは、両面印刷の必要がないため、内面用画像層76は不要となる。
また、本実施形態では、正面シート12にのみ舌部30を形成しているが、舌部30は、背面シート14に形成されてもよい。また、舌部30の形状、位置、個数は、適宜変更されてもよい。例えば、図5に示すように、一つの正面シート12または背面シート14に、複数の舌部30a,30b,30cを形成してもよい。また、図5に示すように、舌部30a,30bの形状は、矩形に限らず、略三角形状や略円形状でもよい。この場合、分離線32a,32bは、略V字状、略C字状となる。また、舌部30のめくり方向は、上下方向に限らず、図5に図示した舌部30cのように、左右方向にめくれるようにしてもよい。これらの場合でも、分離線32を、切断線と半破断線とで構成することで、意図しない舌部30のめくれを防止できる。
次に第二実施形態について図6、図7を参照して説明する。図6は、第二実施形態のパウチ容器10の正面図である。また、図7は、パウチ容器10の使用状態を示す概略縦断面図である。このパウチ容器10も第一実施形態のパウチ容器10と同様に、互いに対向する正面シート12および背面シート14と、正面・背面シート12,14を連結する底ガゼットシートと、正面シート12の内面に接合される内装シート18と、を備えている。
正面シート12と内装シート18との重なる箇所には、舌部30が設けられている。本実施形態の舌部30は、上側に開口した略U字状の分離線32で、正面シート12から区画される部位である。この分離線32も、切断線および半破断線から構成されており、輸送段階などで意図しない舌部30のめくれを防止できる。この舌部30は、正面シート12を、分離線32に沿って破断した場合に、その上端のみが正面シート12に繋がり、左右端部および下端は、正面シート12から切り離されて、ユーザによりめくられる。舌部30の下端近傍、かつ、幅方向略中央には、略円弧状の切り込みが形成されている。この切り込みで囲まれた部分34をめくれば、後述する吊り下げ用のバーが挿通される挿通孔35(図7参照)となる。この挿通孔35は、当該挿通孔35から舌部30上端までの距離L1が、舌部30上端から容器上端までの距離L2より長くなるような位置に形成されている。かかる配置とすることで、舌部30を、上方にめくりあげた際、挿通孔35は、パウチ容器10の上端より上側に位置し、パウチ容器10と重複しないことになる。パウチ容器10を店頭に陳列する際には、舌部30をめくった状態で、挿通孔35を、店頭に設けられた吊り下げバー100に通し、パウチ容器10を吊り下げ状態とすればよい。
ここで、舌部30を有さないパウチ容器10を吊り下げ保持するためには、上端シール部22tの高さ方向幅を大きくしたうえで、当該上端シール部22tに孔を形成しなければならなかった。しかし、上端シール部22tの高さ方向長さを広げる場合、機械適性の問題からパウチ容器10の高さ方向長さを同一高さとすると、その分、内容物を充填するための充填空間20が小さくなるという問題があり、逆に充填量を確保するために充填空間20を一定にするとパウチ容器10の高さ方向長さが長くなり、機械適性の悪化につながる問題があった。一方、本実施形態では、舌部30に挿通孔35を設けているため、上端シール部22tの高さ方向長さを短くすることができ、パウチ容器10に対する充填空間20のサイズを大きく保つことができる。また、第一実施形態と同様に、舌部30の内面および外装シートの外面に印刷を施しておけば、印刷スペースを広く取ることもできる。
また、内容物が、パウチ容器10ごと熱水乃至熱湯等の熱媒体(以下、熱水等という)で加熱するレトルト(所謂熱水等加熱処理をいい、熱水等による殺菌処理等を含む)対応食品の場合、挿通孔35は、当該パウチ容器10を熱水等から取り出す際に、箸等のスティックを引っ掛ける引っ掛け孔としても機能する。すなわち、レトルト対応食品の中には、パウチ容器10ごと、熱水等の中に浸して加温するものがある。こうしたレトルト対応食品では、加温後のパウチ容器10を熱水等の中から取り出しやすくするために、パウチ容器10に、箸等のスティックを引っ掛ける孔を形成しているものがある。しかし、通常、こうした引っ掛け孔は、上端シール部22tや、サイドシール部22sに形成されている。この場合、パウチ容器10が鍋の底に沈んでいると、引っ掛け孔から鍋底までの距離が短く、スティックを挿し込んでも当該スティックでパウチ容器10を持ちあげにくいという問題があった。一方、本実施形態に示す舌部30に挿通孔35を設けた場合、当該舌部30が形成されたパウチ容器10の正面が上側になるような姿勢でパウチ容器10を鍋に投入すれば、挿通孔35と鍋底との間に十分な間隔が保たれ、スティックを引っ掛けやすくなる。すなわち、この場合、舌部30は、熱水等の対流等の影響で、正面シート12からめくれて立ち上がりやすい。また、複数の材料を積層した積層シートからなる舌部30は、高温環境下におかれると、熱膨張率の違い等に起因して湾曲する。具体的には、後述するPET82が表層で未延伸ポリプロピレン(以下「CPP」という)86が最内層である正面シート12に舌部30が設けられる場合、PET82よりもCPP86のほうが熱膨張率は大きいため、舌部30はPET82側(すなわち、パウチ容器10から離れる方向)に湾曲することになる。こうした舌部30の立ち上がりや、湾曲が生じることにより、挿通孔35から、鍋底やパウチ容器10の正面からの距離が大きくなりやすく、スティックを引っ掛けやすくなる。
ところで、図6から明らかな通り、本実施形態では、舌部30の全周縁を囲む領域、すなわち、舌部30の根元のすぐ外側領域(舌部30の一端の近傍)、および、舌部30の分離線32のすぐ外側領域に、正面シート12と内装シート18とをヒートシールした周縁シール部36a,36bを設けている。かかる構成とするのは次の理由による。既述した通り、本実施形態では、舌部30に形成された挿通孔35を、パウチ容器10を吊り下げ保持するための孔として用いることを想定している。この場合、パウチ容器10が吊り下げ保持されている間、舌部30には、パウチ容器10の自重相当の大きさの上向きの力が作用する。この力を受けて、分離線32に沿った破断が、必要以上に進行することを防ぐために、舌部30の根元付近には、周縁シール部36aが形成されている。
また、舌部30の分離線32から周縁シール部36a,36bまでの間は、正面シート12と内装シート18が重なってできるポケットとなる。既述した通り、本実施形態のパウチ容器10は、レトルト処理されることも想定されているが、パウチ容器10の表面に深いポケットが存在すると、当該パウチ容器10が熱水等に投入された際に、ポケット内に熱水等が進入し、当該パウチ容器10を熱水等から引き上げた後も、ポケットに熱水等が残存するおそれがある。そこで、本実施形態では、舌部30の分離線32のすぐ外側位置において、正面シート12と内装シート18をヒートシールした周縁シール部36a,36bを形成し、舌部30の周囲に多量の熱水等が溜まるポケットができないようにしている。
図8は、本実施形態の正面シート12および内装シート18の構成を示す図である。図8に示すように、正面シート12は、外面側から順に、PET82、ガスバリア層84、Ny78、CPP86が積層されて構成される。本実施形態で、シーラント層にCPP86を用いるのは、本実施形態のパウチ容器10がレトルト処理を想定しているためである。すなわち、CPP86は、比較的(LLDPE等と比べて)、耐熱性が高いため、かかるCPP86を用いた場合、容器のレトルト処理が可能となる。PET82の内面には、外面用画像層72が印刷されている。この外面用画像層72は、パウチ容器10の表面に印刷される各種情報を示す画像層である。また、必要なら、Ny78の外面に内面用画像層76を印刷してもよい。いずれにしても、その一部が舌部30となる正面シート12は、熱収縮率の異なる複数の材料を積層して構成されている。特に、CPP86は、PET82に比べて熱収縮率が高いことが知られている。そのため、既述した通り、当該正面シート12(舌部30を含む)を熱水等の高温環境下に置くと、熱収縮率の違いで、舌部30が容易に湾曲できる。
内装シート18は、外側から順に、CPP86、PET82、ガスバリア層84、Ny78、CPP86を積層して構成されている。本実施形態の内装シート18は、両面シール性および耐熱性が必要であるため、耐熱性に優れたCPP86が両面に配されている。また、PET82の内面には、外面用画像層72が印刷されている。この外面用画像層72は、透明なPET82、CPP86を透過して外面から視認できる構成となっている。なお、内装シート18の外面用画像層72は、基本的には、舌部30との重複箇所のみに形成されればよいが、場合によっては、より広い範囲に形成されてもよい。また、外面用画像層72は、製品に関する各種情報を示す画像層であるが、場合によっては、省略されてもよい。また、ここで説明した構成は一例であり、製造のしやすさや、収容される内容物の特性や、印刷したい画像の配置等に応じて、適宜、変更されてもよい。例えば、PET82に替えてVMPETを用いるとともに、ガスバリア層84を省略するようにしてもよい。また、背面シート14およびガゼットシートは、正面シート12とほぼ同じ構成でよい。
以上、説明したようにこの第二実施形態によれば、舌部30に挿通孔35を形成しているため、パウチ容器10のサイズを増加することなく挿通孔35を確保できる。なお、第二実施形態でも、第一実施形態と同様に、舌部30の内面や内装シート18の外面に情報を印刷してもよい。また、本実施形態では、パウチ容器10の正面にのみ舌部30を設けたが、正面および背面の双方に舌部30を設けてもよい。また、舌部30や挿通孔35の形状やサイズ、個数等も適宜変更されてもよい。特に、挿通孔35の位置は、パウチ容器10を吊り下げ陳列しないのであれば、実施形態とは大きく異なる位置に設けられてもよい。
次に、第三実施形態について図9を参照して説明する。図9は、第三実施形態であるパウチ容器10の正面図である。このパウチ容器10も第一、第二実施形態のパウチ容器10と同様に、互いに対向する正面シート12、背面シート14と、正面・背面シート12,14を連結する底ガゼットシートと、正面シート12の内面に接合される内装シート18と、を備えている。内装シート18は、周縁が、正面シート12の内面に接合されており、内装シート18と正面シート12との間には、パウチ容器10の充填空間20および外部空間から隔離された閉鎖空間が形成されている。
この閉鎖空間には、パウチ容器10の製造段階において、文書40、例えば製品が薬品の場合には、当該薬品の能書文書等が収納されている。すなわち、パウチ容器10を製造する際には、正面シート12と内装シート18とを重ねた状態で、内装シート18の周縁をヒートシールするが、このヒートシールを、両シート12,18の間に文書40を挟みこんだ状態で行う。
正面シート12には、この閉鎖空間26へのアクセス用開口となる分離線32が形成されている。分離線32は、パウチ容器10の幅方向端部に設けられており、高さ方向に略直線状に延びている。この分離線32の両端近傍は、切断線で、中央部分は半破断線で形成されている。したがって、半破断線に沿って正面シート12が破断されない限り、閉鎖空間へのアクセスが出来ないようになっている。
一方で、半破断線に沿って正面シート12が破断されると、正面シート12には、閉鎖空間へのアクセス開口が形成されることになる。この状態になれば、ユーザは、閉鎖空間に収容された文書40を取り出して自由に閲覧することができる。また、閲覧後は、文書40を閉鎖空間に再度戻すこともできる。
ここで従来、能書等の情報は、容器の外面に印刷するか、情報を印刷した紙(文書)を製品とともに充填空間に収納することが多かった。しかし、容器の外面に印刷する場合には、容器サイズを増加させることなく、印刷スペースを確保することが困難であった。また、目薬等のように内部容器に収容された製品の場合は、パウチ容器10の充填空間20に目薬および文書40の両方を封入することが多かった。しかし、この場合において、目薬、文書40の順に充填空間20に収容すると、文書40を取り出した後でなければ目薬を取り出せず、手間であった。また、逆に、文書40、目薬の順に充填空間に収容しようとすると、文書40が邪魔をして、目薬をパウチ容器10の内部に収容することが難しくなることがあった。
本実施形態のように、充填空間20とは隔離された閉鎖空間を形成し、当該閉鎖空間に文書40を収容することにより、容器サイズを増加させることなく、また、目薬の取り出しや収容のしやすさを損なうことなく、能書等の文書40をユーザに提供できる。なお、本実施形態では、分離線32(ひいてはアクセス開口)をほぼ直線状としているが、図10に示すように、分離線32を、略コ字状にし、正面シート12に、ユーザによりめくられる舌部30を形成してもよい。かかる構成の場合、閉鎖空間に収容された文書40を取り出す際には、分離線32に沿って正面シート12を破断し、舌部30をめくればよい。これにより、閉鎖空間にアクセスするための大きな開口が形成され、文書40がより取り出しやすくなる。ただし、舌部30をめくれる構成にした場合、一度取り出した文書40の再収納が難しくなる。そこで、かかる構成とする場合には、文書40の再収納を可能にするため、めくられた舌部30の一部を正面シート12に貼着するためのタックシール等を別途設けることが望ましい。また、本実施形態では、パウチ容器10の製造段階で文書40を閉鎖空間に封入しているが、切断線の位置およびサイズを調整することで、パウチ容器10の製造後に文書40を閉鎖空間に封入するようにしてもよい。例えば、図10に示すように、予め形成する切断線を、文書40の幅より大きくしておけば、パウチ容器10の製造後であっても、文書40を閉鎖空間に収容できる。
図11は、本実施形態の正面シート12および内装シート18の構成を示す図である。図11に示すように、正面シート12は、外面側から順に、Ny78、VMPET70、LLDPE80が積層されて構成される。このとき、Ny78の内面には、製品に関する各種情報が印刷される。ただし、正面シート12のうち、内装シート18との重複箇所の少なくとも一部だけは、印刷を施さず、透明のままにしておくことが望ましい。このように内装シート18との重複箇所の少なくとも一部を透明とすれば、閉鎖空間に収容された文書40を、外側からも容易に視認でき、ユーザは、文書40の存在に気付きやすくなる。
内装シート18は、外側から順に、LLDPE80、VMPET70、LLDPE80を積層して構成されている。本実施形態の内装シート18は、両面シール性が必要であるため、シーラント層を構成するLLDPE80が両面に配されている。また、図9に示す形態の場合、内装シート18は、ユーザの目に触れることはないため、VMPET70等への印刷は不要となるが、図10に示す形態の場合は、VMPET70の内面に外面側から視認される外面用画像層72を印刷することが望ましい。また、ここで説明した構成は一例であり、製造のしやすさや、収容される内容物の特性や、印刷したい画像の配置等に応じて、適宜、変更されてもよい。例えば、VMPET70に替えて透明蒸着ナイロン(VMNY)を用いてもよく、また、VMPET70に替えて通常のPETを用いるとともに、ガスバリア層を別途配するようにしてもよい。また、背面シート14およびガゼットシートは、正面シート12とほぼ同じ構成でよい。
また、第一〜第三実施形態は、いずれも一例であり、正面シート12のうち内装シート18と重なる位置に、切断線と半破断線とからなる分離線32が形成されるのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。