以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(本実施形態)を説明する。
図1は、本実施形態の冷蔵庫10の正面図である。図1に示す冷蔵庫10は、冷蔵庫本体1の正面に、冷蔵室左扉2と、冷蔵室右扉3と、製氷室扉4aと、急速冷凍室扉4bと、冷凍室扉5と、野菜室扉6とを備えている。冷蔵室左扉2は、上ヒンジ7a及び下ヒンジ8aにより、紙面手前方向に回動可能になっている。さらに、冷蔵室右扉3は、上ヒンジ7b及び下ヒンジ8bにより、紙面手前方向に回動可能になっている。即ち、冷蔵室左扉2及び冷蔵室右扉3は観音開き可能に備えられ、これらと冷蔵庫本体1とにより形成される空間に、冷蔵室(図示しない)が形成されている。
また、製氷室扉4a、急速冷凍室扉4b及び冷凍室扉5は、紙面手前方向に引き出し可能になっている。そして、これらと冷蔵庫本体1とにより形成される空間に、製氷室、急速冷凍室及び冷凍室(いずれも図示しない)がそれぞれ形成されている。野菜室扉6も同様に、紙面手前方向に引き出し可能になっている。さらに、これと冷蔵庫本体1とにより構成される空間に、野菜室100(貯蔵室、図2参照)が形成されている。
図2は、冷蔵庫10内において、上段容器102が取り付けられた下段容器101の斜視図である。野菜室100では、冷蔵庫本体1(図1参照)の内箱124が野菜室100の壁面(左壁、右壁及び底壁)を構成している。また、野菜室100の上方に配置される野菜容器カバー105(図3参照)が、野菜室100の上壁を構成している。従って、野菜室100では、下段容器101及び上段容器102のそれぞれの内部の密閉性がある程度確保されている。
野菜室100では、下段容器101(収納容器)及び上段容器102(収納容器、内部容器)が、正面側と背面側とに(以下、「前後方向に」ということがある)引出自在に収容されている。ただし、本実施形態では、下段容器101が前後方向に移動しても、上段容器102の下段容器101の内部での位置は変化しない。しかし、詳細は後記するが、使用者がロックハンドル106(図8参照)を操作することで、上段容器102も正面側に引き出し可能になる。
野菜室100の背面側には、圧縮機(図示せず)等を庫外に配置するための機械室(図示せず)が形成されている。そのため、底壁が正面側よりも背面側で高くなっている。また、下段容器101には、ガラス製の仕切り103が備えられている。これにより、下段容器101が二つの区画(正面側の前側空間101Bと、背面側の後側下段空間101A及び後側上段空間101C、いずれも図2では図示しない)に分割されている。そして、上段容器102は、下段容器101の二つの区画のうちの背面側の空間を覆うように、配置されている。
図3は、冷蔵庫10内において、野菜容器カバー105(カバー部材)が配置された野菜室100の斜視図である。野菜容器カバー105は、下段容器101及び上段容器102(図4参照。図3ではいずれも図示しない)の上部開口を覆うように配置されている。なお、野菜容器カバー105は、下段容器101を冷蔵庫10に収容したときに、下段容器101の上方に配置されるようになっている。そのため、下段容器101を冷蔵庫10から完全に引き出したときには、野菜容器カバー105は冷蔵庫10の内部に残存し、下段容器101の内部が外部に開放される。
野菜容器カバー105は、光透過性を有する樹脂により構成されている。野菜容器カバー105の上面であって正面側には、ローレット(正面側から背面側に延在する複数の溝)105aが形成されている。そして、使用者が下段容器101及び上段容器102を正面側に引き出してこれらを使用する際、野菜室100の外部であって上方に取り付けられたLED照明からの光は、このローレット105aを透過して、下段容器101及び上段容器102の内部に照射されるようになっている。前記のようにローレット105aは複数の溝によって形成されているため、ローレット105aに入射した光は拡散される。また、ローレット105aは複数の溝によって形成されているため、表面積が大きい。そのため、影の発生を抑制しつつ、広範囲が照射される。
また、野菜容器カバー105の下面(即ち、野菜室100の内部を臨む面)には、蒸散ボード105bが配置されている。さらに、野菜容器カバー105の上面には、野菜室100の内外を連通する複数の連通孔105c(内外連通孔)が形成されている。これらの点の詳細は、図9や図10等を参照しながら後記する。
また、野菜室100の壁面、又は、野菜室100と冷凍室との間に位置する断熱仕切壁には、冷気の吹出口(図示しない)が形成されている。そして、この吹出口には、野菜室100を冷却する冷気の供給を制御可能な冷気供給調整手段141が設けられている。これにより、野菜室100に吹き出された冷気が、多少は後側空間101A(図4参照)に入り込んで、また、正面側から抜けるようになっている。さらには、後側空間101A内の湿度が過度に上昇することを防止でき、意図しない部位での結露が防止される。
図4は、図3のA−A線断面図である。なお、図4には、図1において示した野菜室扉6も併せて示している。下段容器101は、後側下段空間101Aと、前側空間101Bと、後側上段空間101Cとの三つの空間に区画されている。これらのうち、後側下段空間101Aは、下段容器101の内部に配置された仕切り103と、上段容器102の下面とにより下段容器101を区切って形成されている。また、前側空間101Bは、上段容器102の正面側の側面と仕切り103と野菜容器カバー105とにより下段容器101を区切って形成されている。後側上段空間101Cは、上段容器102と野菜容器カバー105とにより下段容器101を区切って形成されている。
これらの各空間のうち、後側下段空間101Aの背面側には、下段容器101の内部の各空間(即ち、後側下段空間101Aと、前側空間101Bと、後側上段空間101Cとの三つの空間内)の湿度を制御する蒸散カセット112が配置されている。蒸散カセット112の詳細については図16等を参照しながら後記する。
また、上段容器102の底面には、後側下段空間101A(第一の空間)と後側上段空間101C(第二の空間)とを連通する連通孔102a(空間連通孔)が形成されている。これにより、後側下段空間101Aと後側上段空間101Cとの双方の除湿が可能となる。
図5は、上段容器102の正面側からの斜視図である。上段容器102の正面側に配置されたロックハンドル106(支持固定解除機構)は、通常時には下段容器101の内部に支持固定された上段容器102を、使用者によって操作されることで上段容器102を前後方向移動可能にするものである。ロックハンドル106は、押下されることで上段容器102の正面側への移動を可能にする押下部106aと、上段容器102の正面側上端に少し窪んで形成された窪み部106bとを備えて構成される。そして、使用者が、窪み部106bを把持しながら、押下部106aを把持した手の親指等で押下することで、下段容器101内での上段容器102の支持固定が解除される。そして、これにより、上段容器102が前後方向に移動可能になる。
また、ロックハンドル106の正面側下方には、ロックハンドル106の内部を介して、後側下段空間101Aと、前側空間101Bと、後側上段空間101Cとの三つの空間(以下、これらの空間をまとめて「各空間」ということがある)同士を連通する連通孔106c(空間連通孔)が形成されている。さらに、ロックハンドル106の内部には、各空間内の空気と接触可能な位置に、白金触媒118(図8(b)参照)が収容されている。従って、連通孔106cを通じてロックハンドル106に取り込まれた空気は、当該白金触媒118に接触し、その後、白金触媒118に接触した空気は各空間に供給されることになる。これにより、前側空間101B内の空気は、後側上段空間101C内の蒸散ボード105b(図10参照)や後側下段空間101A内の背面側に形成された結露面101a(図16参照)に至ることができる。そのため、前側空間101B内の空気の湿度の制御が可能になる。
図6は、上段容器102の背面側からの斜視図である。ロックハンドル106の背面側の下方にも、ロックハンドル106の内部を介して、各空間同士を連通する連通孔106dが形成されている。そして、前記の連通孔106cと同様、この連通孔106dを通じてロックハンドル106に取り込まれた空気は、前記の白金触媒118に接触し、その後、白金触媒118に接触した空気は各空間に供給されることになる。なお、連通孔106dは、上段容器102の正面側側面に形成された孔102bを介して、後側上段空間101Cを臨んでいる。
図7は、上段容器102の下側からの斜視図である。ロックハンドル106の下方にも、ロックハンドル106の内部を介して、後側下段空間101Aと、前側空間101Bと、後側上段空間101Cとの三つの空間を連通する連通孔106eが形成されている。そして、前記の連通孔106c,106dと同様、この連通孔106eを通じてロックハンドル106に取り込まれた空気は、前記の白金触媒に接触し、その後、白金触媒に接触した空気は各空間に供給されることになる。なお、連通孔106eは、上段容器102の底面に形成された孔102cを介して、後側下段空間101Aを臨んでいる。
図8は、ロックハンドル106を構成する各部材を示し、(a)はその背面側からの斜視図であり、(b)はその分解斜視図であり、(c)は(a)におけるB−B線断面図である。なお、図8(c)では、図示の簡略化のために、ロック(上段容器102の支持固定)を解除するための機構の一部の図示を省略している。
図8(a)に示すように、ロックハンドル106は、連通孔106dを有する触媒カバー106fと、触媒カバー106fが取り付けられるハンドルケース後106gと、ハンドルケース後106gの正面側に取り付けられるハンドルケース前106hと、押下部106a(図5参照)と一体に構成されるハンドルレバー106jとを備えて構成される。そして、図8(b)に示すように、ロックハンドル106から触媒カバー106fが取り外されると、ロックハンドル106の内部には、左右方向に延在して白金触媒118が配置されている。この白金触媒118は、ロックハンドル106におけるロックを解除するための機構(図示しない)を避けるように、ロックハンドル106の内部に配置されている。
図8(c)において、太線の矢印は、空気の流れる方向を示している。図8(c)に示すように、白金触媒118は、連通孔106c,106d,106eを通じて、各空間内の空気と接触可能になっている。また、矢印による図示はしていないが、各空間内の空気は、白金触媒118に接触しないで別の空間にも供給されるようになっている。
ここで、白金触媒118について説明する。白金触媒118は、光触媒と異なり、LED等の光が無くても、各空間内の空気に含まれるエチレン及びトリメチルアミンを分解する触媒である。白金触媒118によってエチレンが分解されることで、二酸化炭素及び水蒸気が発生する。そして、発生した二酸化炭素は連通孔を介して各空間内に供給されることから、各空間に貯蔵された野菜の気孔が閉じられて野菜の呼吸が抑制され、呼吸による栄養成分の減少や乾燥が抑えられるので、野菜の鮮度が長時間維持される。なお、白金触媒118の設置場所としては、ロックハンドル106内部に限らず、各空間を仕切る少なくとも一つの壁面に触媒収納部を設け、この触媒収納部に白金触媒118を収納すれば良い。この場合、触媒収納部にも、各空間と連通する連通孔が形成される。また、各空間のいずれかの壁面に触媒収納部を設けるとともに、各空間を仕切る壁面に連通孔を形成する構造であっても良い。
また、野菜室100に貯蔵された野菜等の表面に存在する水に二酸化炭素が溶解されると、野菜等の表面は酸性になる。しかし、水に溶解したときにアルカリ性を示すトリメチルアミンが発生すると、トリメチルアミンも野菜表面に存在する水に溶解するため、二酸化炭素の溶解により酸性化した野菜表面が中和されてしまう。しかし、冷蔵庫10では、白金触媒118によってトリメチルアミンが分解されることで、野菜室100に保存された野菜等の表面は酸性となり、野菜表面の微生物の増殖が抑制される。
冷蔵庫10における白金触媒118はペレット状であり、袋に詰められた状態でロックハンドル106に収容されている。これにより、ペレット状の白金触媒118は、上段容器102が引き出し及び収容される際に袋内で適度に混合される。そのため、ペレットに対して一方向からのみ空気が接触することが防止され、触媒機能が維持されるようになっている。なお、白金触媒118に限らず、他の遷移金属触媒を用いても良い。遷移金属触媒としては、冷蔵庫10では、細孔を有するシリカ(メソポーラスシリカ)が用いられ、この細孔の内部に白金やルテニウム等の遷移金属の微粒子が担持される。
図9は、野菜容器カバー105の上方からの斜視図である。前記のように、野菜容器カバー105の正面側の上面には、ローレット105aが形成されている。このローレット105aの外側から、図示しないLED照明からの光が野菜室100の内部に照射される。また、野菜容器カバー105には、野菜容器カバー105の下方に配置される上段容器102(図9では図示しない)と、野菜容器カバー105との間に形成される後側上段空間101Cの内外を連通する連通孔105cが複数形成されている。この連通孔105cは、冷蔵庫10においては、24個であり、野菜室100の背面右側に形成された冷気戻り口(図示しない)の近傍を含んで形成されている。
図10は、野菜容器カバー105の下方からの斜視図であり、(a)はその全体図、(b)は(a)のC部を拡大して示す図である。図10(a)は、野菜容器カバー105の正面側の下方から野菜容器カバー105を観察した様子を示すものである。図10(a)に示すように、野菜容器カバー105の下面(上段容器102の内部を臨む面)には、蒸散ボード105b(水分吸蔵放出部材)が配置されている。蒸散ボード105bは、PET繊維等の樹脂繊維が編み込まれて形成された平板状の部材であり、空気は通すが液体の水分は吸収するものである。そして、吸湿された水分は空気に対して蒸散(放出)可能になっている。
図10(b)に示すように、野菜容器カバー105の下面には、野菜室100の内外を連通する連通孔105cに対向して、リブ105dが形成されている。そして、連通孔105cとリブ105dとの間に形成された空間105eに蒸散ボード105bが挿入されることで、野菜容器カバー105の下面に蒸散ボード105bが保持される。また、空間105eに蒸散ボード105bが保持されることで、蒸散ボード105bの鉛直投影下に連通孔105cが位置し、連通孔105cが蒸散ボード105bで閉塞されることになる。これにより、下段容器101及び上段容器102の内部の水分を含む空気が連通孔105cを通って野菜室100の外部に排出されつつも、野菜室100の外部から連通孔105cを通って野菜室100の内部に直接冷気が入り込むことが抑制される。
また、後側上段空間105Cの内部の空気が野菜容器カバー105に接触すると、その空気に含まれる水分は、野菜容器カバー105に結露して結露水が発生する可能性がある。しかし、発生した結露水は、上段容器102の上方の全域にわたって配置された蒸散ボード105bによって吸湿される。そのため、後側上段空間10Cへの結露水の落下が抑制される。
図11は、野菜容器カバー105の側面図である。図11において、野菜容器カバー105の下方に配置される下段容器101及び下段容器102は仮想線にて示している。蒸散ボード105bは、上段容器102の内部を臨んで、野菜容器カバー105の下面に取り付けられている。また、図11では図示していないが、野菜容器カバー105の上方には、野菜室100を冷却するための冷風が通流している。そのため、通流する冷風は、連通孔105cから露出した蒸散ボード105bをなめるように通流することになる。これにより、蒸散ボード105bに吸湿された液体の水が水蒸気となって通流する冷風に放出されることになる。つまり、野菜室100内の水分が蒸散ボード105bで吸収され、吸湿した水分が連通孔105cを介して野菜室外へ放出される。そのため、蒸散ボード105bが過度に水を吸湿し、水滴が上段容器102の内部に滴下することが防止される。
図12は、下段容器101の正面側からの斜視図である。下段容器101の内部は、仕切り103によって、正面側と背面側とに区切られている。そして、下段容器101の背面側の内部には、後側下段空間101Aが形成され、また、下段容器101の正面側の内部には、前側空間101B(図12では図示しない)が形成されている。下段容器101の背面側には、結露水が付着する面(結露面101a、図12では図示しない)を覆うように、下段容器カバー110が取り付けられている。結露水の発生の様子は、図16を参照しながら後記する。
図13は、下段容器101の背面側からの斜視図である。前記のように下段容器101の内部を区切る仕切り103は、下段容器101の左右の内壁に一対に設けられたガイド部104によって、支持されている。また、下段容器カバー110(図12参照)が取り付けられた下段容器101の反対側の面(即ち、外側面)には、冷気供給調整手段141(図3参照)からの冷気の吹き付け面113と、前記の結露水が付着する面において結露した水を当該冷気に蒸散する蒸散カセット112とが取り付けられている。
図14は、下段容器101の背面側の側壁に取り付けられる部材の斜視図であり、(a)は内側面に取り付けられる下段容器カバー110であり、(b)は外側面に取り付けられるケース112である。図14(a)に示すように、下段容器カバー110には、複数のスリット110aが形成されている。形成されたスリット110aの向きは、正面側から背面側に流れるときに下方向に向かうように、形成されている。スリット110aがこのような方向に形成されることで下段容器カバー110の表面に結露水が生じた場合でも、その結露水はスリット110aを通じて、その背面側に配置された蒸散ボード112e(後記する)に到達させることができ、結露水の後側下段空間101Aへの落下が防止される。
さらに、この下段容器カバー110の表面には、シボ加工が施されている。即ち、下段容器カバー110の表面は粗面化されている。これにより、下段容器カバー110の親水性を高めて水滴をできにくくすることで、使用者が水滴の存在を気付きにくくすることができる。そのため、使用者が、水滴が落ちるかもしれないという不安感を抱くことが防止される。
また、図14(b)に示すように、蒸散カセット112は、図14では図示しない蒸散ボード112d(図15参照)を覆うようにして嵌めこまれるカバー112cを収容するケース112aと、嵌めこまれたカバー112cを固定するケース下112bとを備えて構成される。
図15は、下段容器101の外側背面に取り付けられる蒸散カセット112の分解斜視図であり、(a)は蒸散ボード112dを取り付けた状態であり、(b)は蒸散ボード112dを取り外した状態である。この図15(a)に示す状態は、図14に示した状態から、カバー112cを正面側に回動させて取り外し、蒸散ボード112dを露出させた状態を示すものでもある。この点について説明すると、ケース112aの下側端部と、カバー112cの下側端部とは、回動可能に係止されている。従って、図15(a)に示すように、ケース112aからカバー112cを取り外すと、その係止された部分を軸中心としてカバー112cは回動し、下側に移動する。これにより、板状の蒸散ボード112dが正面側に露出する。
また、この板状の蒸散ボード112dの下端には、蒸散ボード112dと一体に、正面側から背面側に延在する蒸散ボード112eが接続されている。従って、蒸散カセット112の内部に配置される蒸散ボード112d及び蒸散ボード112eからなる一体物は、樹脂繊維により構成されたL字形状のものである。
これらの蒸散ボード112d,112eは、図10を参照しながら説明した蒸散ボード105bと同じ材質のものであるため、その詳細な説明は省略する。そして、詳細は後記するが、下段容器101の内側面(図16に示す結露面101a)に結露した水は、この内側面を垂れて蒸散ボード112eに吸湿されるようになっている。そして、吸湿された水は、蒸散ボード112e及び蒸散ボード112dをこの順で拡散し、蒸散ボード112dに至ることになる。
図15(b)に示すように、蒸散ボード112dの背面側には、空気を通り抜け可能な通風孔112gが形成された保護材112fが配置されている。この蒸散カセット112の背面側を通流する冷気は、この通風孔112gを通って、蒸散ボード112dの背面側に接触する。これにより、蒸散ボード112dに至った水分は、接触した冷気に蒸散される。
図16は、後側下段空間101Aの内部の水分を結露させて、その結露した水を野菜室100の外部に蒸散するときの様子を示す図である。下段容器101の後側壁に一体的に形成された冷気の吹き付け面113には、冷気供給調整手段141からの冷気が吹き付けられている。これにより、吹き付け面113の近傍の壁温は、他の部分の壁温よりも低くなることになる。そのため、下段容器101を構成する、その部分の内壁面(結露面101a)に接触した空気中の水分は結露して、結露水117が発生する。発生した結露水117は、自重により、下段容器101の後側壁の下部に形成された間隙部114から下段容器101外へ流れ落ち、さらにカバー112cに形成されたスリット112c1を通って蒸散ボード112eに流れ落ちる。なお、間隙部114は、下段容器101の下部の他の場所に形成しても良く、例えば下段容器101の底面かつ背面側に形成するものであっても構わない。
蒸散ボード112eに吸湿された水分は、蒸散ボード112e,112dの内部を拡散する。このとき、吸湿された水分は、上下方向に配置された蒸散ボード112dの内部を上方向に拡散することになる。そして、蒸散ボード112d内を拡散する水分は、前記のように蒸散ボード112dに接触する冷気に蒸散され、これにより、野菜室100の内部の空気の水分が野菜室100の外部に排出される。このように、蒸散ボード112e,112dは、後側壁の内面を流れ落ちた結露水を、後側壁に形成された間隙部114から下段容器101の外へ吸い出して冷気へ放出させる。このとき、下段容器101の後側壁に冷気を直接接触させ、後側壁自体を結露面とすることで、従来のように金属製の高熱伝導部材を設けずに、簡単な構造で、貯蔵室内部の湿度を制御することが可能となる。
本実施形態の冷蔵庫10では、図16に示すように、蒸散ボード112dの上下方向の長さ(高さ)と、吹き付け面113の上下方向の長さ(高さ)とはほぼ同じになっている。ここで、蒸散ボード112dの左右方向の長さと、吹き付け面113の左右方向の長さとは、図13に示すように、ほぼ同じである。よって、蒸散ボード112dの面積は、吹き付け面113の面積とほぼ同じになっている。そして、下段容器101の外側面である吹き付け面113に冷気を吹き付け、その下部に配置された蒸散カセット112から庫内の水分を蒸散させることで、小さな下段容器101の外側面を有効利用して、その内部の湿度が制御可能となる。
ここで、下段容器101の背面側に取り付けられる下段容器カバー110の変形例について説明する。
図17は、下段容器101の内部に取り付けられる下段容器カバー110の変形例を示す図であり、下段容器カバー110に代えて取り付けられる蒸散ユニットカバー116の斜視図である。図14(a)に示した下段容器カバー110は板状であったが、当該下段容器カバー110に代えて、L字形状の蒸散ユニットカバー116が使用可能である。
蒸散ユニットカバー116には、前記の下段容器カバー110におけるスリット110aと同様に、下方向への空気の流れが生じるような複数のスリット116aが形成されている。ただし、蒸散ユニットカバー116の右側には、下段容器101の右側側面と対向する対向部材116bが形成されている。この蒸散ユニットカバー116の表面には、前記の下段容器カバー110と同様に、シボ加工が施されている。
図18は、図17に示す蒸散ユニットカバー116を下段容器101の内部に取り付けたときの、下段容器101の内部を正面側から示す斜視図である。蒸散ユニットカバー116は、図示しないネジ等によって下段容器101の内壁に固定されている。前記の図16を参照しながら説明したように、冷蔵庫10では、下段容器101の外側面に形成された吹き付け面113(図16参照)に冷気を吹き付けることで、意図的に結露水が生じるようになっている。
しかし、吹き付け面113と、下段容器101の右側の外側面とは近接している。従って、吹き付け面113に冷気が吹き付けられることで下段容器101が冷却されると、その冷熱は右側の内側面にも伝達し、その右側の内側面にも結露水が生じることがある。そこで、図18に示すように、右側の内側面で生じうる結露水も回収するために、背面側の右側に対向部材116bを備える蒸散ユニットカバー116が配置されている。また、このL字形状の蒸散ユニットカバー116は、底面にも結露水受け部が形成されており、その底面が背面側へ下るような傾斜を有している。したがって、右側側面で発生した結露水が仮に底面まで到達したとしても、背面側へと案内することができ、最終的に蒸散ボード112e、112dによって水分を吸収し冷気に対して放出することが可能である。
蒸散ユニットカバー116の右側側面、即ち、対向部材116bの下方には、正面側から背面側に向かって下るような傾斜を有する溝部116cが形成されている。そして、下段容器101の右側側面が冷却された結果、対向部材116bの表面に結露水が生じた場合、右側壁から後側壁へと傾斜する溝部116cにより、自重により落下した結露水を受け止め、下段容器101の内部への落下が防止される。そして、受け止められた結露水は溝部116cを通流して背面側に至り、スリット116aに近接して設けられた結露水排出部116dを通って、蒸散ユニットカバー116の背面側に配置された蒸散ボード112eに供給される。そして、このようにすることで、対向部材116bの表面に生じた結露水も、野菜室100の外部に排出される。すなわち、後側壁に隣接する右側壁から後側壁へと延びる結露水案内部材が、容器の内面に取り付けられているので、後側壁の内側で結露した結露水だけでなく、右側壁の内側で結露した結露水についても、後側壁の内側へと供給され、蒸散ボード112eによって最終的に後側壁の外側へ放出できるようになっている。
なお、下段容器101の内壁と、対向部材116bの対向面との間は、これらは図示しないネジ等によって固定されるものの、多少の隙間が生じている。しかし、これらの間には空気の層ができるために伝熱性能は悪く、そのため、結露水が生じにくい。従って、これらの隙間の間に結露水が発生することは十分に抑制されている。
次に、図19〜図22を参照しながら、冷蔵庫10の野菜室扉6が引き出されるときの、下段容器101等の動作について説明する。なお、図19〜図22では、図示の簡略化のために、前記において説明した部材の一部の図示を省略している。
図19は、冷蔵庫10本体の野菜室100内に下段容器101を完全に収容したときの、下段容器101の断面図である。図19は、ロックハンドル106の近傍を正面側から背面側の方向に切断したときの、左右方向から視た際の断面を示している。図19に示すように、冷蔵庫10内に下段容器101が収容されているときは、野菜容器カバー105は、下段容器101の開口である下段容器101及び上段容器102の全体(即ち、前側空間101B及び後側上段空間101C)を覆っている。これにより、これらの空間の内部の気密性が高められている。従って、収納容器101内のすべての空間、すなわち、後側下段空間101Aだけでなく前側空間101Bおよび後側上段空間101Cについて、内部の二酸化炭素濃度を1000ppm以上に保つことができる。また、後側上段空間101Cの鉛直投影内に、蒸散ボード105bが位置するように構成されているので、後側上段空間101C内の湿度をより効果的に制御することが可能である。
また、このとき、野菜容器カバー105の下面に配置された蒸散ボード105b(図10参照、図19では図示せず)及び蒸散カセット112(図6参照、図19では図示せず)により、野菜室100の内部の湿度が制御されている。そして、野菜室100を構成する各空間は、上段容器102の底面に形成された連通孔102(図4参照、図19では図示せず)やロックハンドル106に形成された連通孔106c,106d,106e(図8参照、図19では図示せず)により連通しており、これにより、野菜室100の全体の湿度が制御される。
図20は、冷蔵庫10内から下段容器101を少し引き出したとき、具体的には前側空間101Bまでが野菜室100の外へ引き出されたときの、下段容器101を示す断面図である。下段容器101が正面側に引き出されると、それに伴って、上段容器102も正面側に引き出される。ただし、下段容器101の内部での上段容器102の相対的な位置は変化せず、下段容器101が正面側に引き出されても、上段容器102は後側下段空間101Aの上方に支持固定されたままである。
また、下段容器101が正面側に引き出されると、その引き出し動作に伴って野菜容器カバー105は上段容器102の上端を滑り、野菜容器カバー105の上端部105dはロックハンドル106の正面側側面に接触する。これにより、下段容器101が正面側に引き出されても、前側空間101Bのみが外部に開放され(野菜容器カバー105から露出し)、後側上段空間101Cの開口は野菜容器カバー105で覆われるので、後側上段空間101Cの気密性は維持された状態になっている。従って、前側空間101B内よりも後側上段空間101C内の方が、野菜等から発生する二酸化炭素の濃度を高く維持することが可能である。また、下段容器101が正面側に引き出される際には、野菜容器カバー105の移動量は上段容器102の移動量よりも少なくなる。そのため、使用者が前側空間101Bのみを使用したい場合には、野菜容器カバー105やロックハンドル106の操作は必要とされない。
図20に示した状態から下段容器101が正面側に更に引き出されると、野菜容器カバー105は冷蔵庫10本体の内部に残ったまま、下段容器101が引き出されることになる。つまり、後側上段空間101Cも野菜室100の外へ引き出されたときは、前側空間101Bの開口だけでなく、後側上段空間101Cの一部開口が野菜容器カバー105から露出する。
図21は、冷蔵庫10内から下段容器101を完全に引き出した後で、ロックハンドル106を解除することにより後側上段空間101Cを解放したときの様子を示す断面図である。ロックハンドル106を操作することで、野菜容器カバー105の正面側の上端部105d(図21では図示しない)はロックハンドル106の上端よりも上側になるように野菜容器カバー105が移動する。これにより、後側上段空間101Cは外部に開放されて、さらには、上段容器102が正面側に引き出し可能になる。
図22は、冷蔵庫10内から下段容器101及び上段容器102を完全に引き出したときの冷蔵庫10の断面図である。上段容器102が完全に引き出されると、上段容器102の正面側の下端が仕切り103の上端に載置され、これにより、安定した野菜等の取り出しが可能となる。また、上段容器102を完全に引き出したとき、野菜容器カバー105は、背面側から正面側に向かって、やや傾斜を有して配置される。即ち、野菜容器カバー105は、正面側の端部(前記の上端部105d)の上下方向の高さが背面側の端部105eよりも少し高くなるように、冷蔵庫10の内部に配置される。これにより、上段容器102の外部に開放される空間(取り出し口)を広く確保することができ、野菜等を取り出しやすくなる。
本実施形態では、アルカリ性のガスであるトリメチルアミンが白金触媒118によって短時間に分解されるため、二酸化炭素の溶解により酸性化した野菜の表面の中和を抑制し、表面の酸性度を高めることが可能となる。すなわち、野菜を収納容器に収納した場合に、従来ではその表面のpHが上昇するのに対して、本実施形態ではその表面のpHが減少する。その結果、野菜の表面に発生する酵素や微生物が抑制され、腐敗の進行が抑えられる。また、トリメチルアミンが分解されると二酸化炭素も発生するため、光触媒を用いた場合と比べて、二酸化炭素を増加させる効果も高い。実際に実験を行ったところ、白金触媒118を用いた場合、光触媒を用いた場合の約2倍の二酸化炭素生成能力があることが判明した。このため、広い領域であっても、内部の二酸化炭素を増加させることが可能となっている。
図23は、光触媒を用いて後側下段空間の野菜のみの鮮度を高めることを意図した従来の構造と、本実施形態の構造とについて、収納容器の各空間内の野菜におけるビタミンCの残存量を測定した実験の結果を示す図である。図23(a)は、後側上段空間101Cに1/2カットしたオレンジを収納して7日経過後のビタミンC残存量を比較したものであり、従来と比べて約21%も高いことが分かった。図23(b)は、前側空間101Bに1/2カットした長ねぎを収納して6日経過後のビタミンC残存量を比較したものであり、従来と比べて約22%も高いことが分かった。図23(c)は、後側下段空間101Aに小松菜を収納して7日経過後のビタミンC残存量であり、従来と同等であることが分かった。すなわち、本実施形態によれば、後側下段空間101Aだけでなく、後側上段空間101C及び前側空間101Bについても、野菜の中の栄養成分が老化作用により消費され難くなり、野菜を栄養価の高い状態で長く保つことが可能となっている。
以上、図面を参照しながら本実施形態を説明したが、本発明は前記の実施形態に何ら制限されるものではない。
例えば、下段容器101の背面側には蒸散カセット112を配置したが、蒸散カセット112に代えて、下段容器101の背面側の内側面に沿って蒸散ボードを配置するようにしてもよい。この場合、水分吸蔵放出部材は、後側下段空間101Aの内部に配置されることになる。そして、このとき、この蒸散ボードの上方には、上段容器101の内外を連通する連通孔を設けることが好ましい。これにより、蒸散ボードの上方であって下段容器101の内側面に結露した水は、その下方に配置された蒸散ボードに吸湿されることになる。そして、吸湿された水は、下段容器101の内部(後側下段空間101Aの内部)の空気によって適宜蒸散され、外部に排出され易い位置に形成された連通孔を通じて、下段容器101の外部に排出されることになる。
また、例えば、水分吸蔵放出部材としての蒸散ボード105bは野菜容器カバー105の下面に配置されていたが、水分吸蔵放出部材はこの下面ではなく、上段容器102の側面(例えば背面側の側面)であってもよい。
さらに、第一の空間としての後側上段空間101C、第二の空間としての後側下段空間101A、及び前側空間101Bは、ロックハンドル106に形成された連通孔106eによって連通しているので、これらの空間のうちの少なくとも一方に、水分吸蔵放出部材が配置されていれば、どの空間についても、湿度の制御が可能である。勿論、これらの双方の空間にそれぞれ水分吸蔵放出部材が配置されるようにしてもよい。なお、前記の実施形態では、後側上段空間101Cの内部に蒸散ボード105bが配置されており、後側下段空間101Aの内部には水分吸蔵放出部材は配置されていない。
また、例えば、蒸散ボード112dの面積は、下段容器101の外側面に形成された吹き付け面113の面積とほぼ同じである必要はなく、より確実な結露を行わせる観点から、吹き付け面113の面積が蒸散ボード112dの面積よりも大きくなるようにしてもよい。すなわち、貯蔵室に対して露出する領域の面積の方が、蒸散ボード112dが取り付けられる領域の面積よりも大きくなるように、下段容器101の後側壁を構成しても良い。このとき、蒸散ボード112dは、下段容器101の後側壁の高さ中心よりも低い位置に収まるように取り付けられている。また、吹き付け面113に吹き付ける冷気の量は、野菜室100に貯蔵されている野菜の量等に応じて適宜変更するようにしてもよい。
さらに、吹き付け面113は右側に配置したが、冷気供給調整手段141の位置によって適宜変更してもよく、中央近傍や左側であってもよい。
また、野菜容器カバー105に形成された連通孔105cは等間隔である必要はなく、必要に応じて適宜間隔を変えて形成することができる。ただし、野菜容器カバー105の外部を通流する冷気の通り道の近傍に設けることで、野菜室100の内部の水分をより効率よく外部に排出することができる。
さらに、下段容器101を正面側に引き出した後、ロックハンドル106を操作することで上段容器102の支持固定を解除したが、ロックハンドル106を操作することなく、下段容器101の引き出しに伴って上段容器102も外部に開放されるようにしてもよい。
冷蔵庫10では、後側下段空間101A、前側空間101B及び後側上段空間101Cの三つの空間に区切られるようにしたが、二つの空間が形成されてもよく、四つ以上の空間が形成されるようにしてもよい。
これらの他にも、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置換することが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらには、各実施形態の構成の一部について、他の構成を追加、削除、置換等することもできる。