JP6546435B2 - 不織布の製造方法 - Google Patents

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本発明は、起毛繊維を含む不織布の製造方法に関する。
例えば、使い捨ておむつ等の吸収性物品には、破断強度が高く加工適正に優れ、しかも経済的であるとの理由からスパンボンド不織布が多用されている。そして、一般的に、伸度の高い長繊維から形成されたスパンボンド不織布は、しなやかで肌触りが良好であるが、搬送時に張力がかかると幅縮みし易く、加工適性が劣ってしまうことが知られている。逆に、伸度の低い長繊維から形成されたスパンボンド不織布は、搬送時に張力がかかっても幅縮みし難く、加工適性が良好であるが、繊維が硬く、肌触りに難がある。このように、スパンボンド不織布は、加工適性と肌触りを両立することが難しかった。さらに、スパンボンド不織布は、その製造法上、全体にふっくら感等が足らず、肌触りを向上させることが難しかった。
特許文献1には、スパンボンド製法で製造された多層の不織布であって、隣り合う層同士が、伸度の異なる長繊維を用いて形成されている不織布に関する技術が開示されている。
これとは別の技術として、本出願人は、先に、長繊維の一部が破断されて、一端部のみが熱融着部により固定され他端部側の自由端部が太くなっている繊維を備えている不織布の製造方法を提案した(特許文献2参照)。
WO2012/070518号 特開2012−92475号公報
特許文献1に記載の不織布によれば、伸度の高い長繊維を用いて形成された高伸度層を有しているので、しなやかで肌触りが良好である。また、伸度の低い長繊維を用いて形成された低伸度層を重ね合わせているので、加工適性も良好である。しかし、特許文献1に記載の不織布は、伸度の高い長繊維を用いて形成された高伸度層と伸度の低い長繊維を用いて形成された低伸度層とを重ね合わせたものにギア延伸加工を施しただけなので、全体にふっくら感が足らない不織布である。
特許文献2に記載の不織布の製造方法によれば、特定の手段を用いて起毛加工を施すので、破断強度が高いにも拘わらず、全体にふっくら感があり、しなやかで肌触りが良好な不織布を製造することができる。しかし、特許文献2には、伸度の高い長繊維を用いて形成された高伸度層と伸度の低い長繊維を用いて形成された低伸度層とを有し、層ごとに樹脂を換えた多層の原料不織布を用いることに関して具体的に記載されていない。
本発明は、スパンボンド製法で製造された原料不織布の構成繊維を起毛する起毛加工工程を有する不織布の製造方法であって、前記原料不織布は、第一面と第二面とを有し、相対的に低伸度の長繊維から形成された低伸度層と相対的に高伸度の長繊維から形成された高伸度層とを有し、該低伸度層及び該高伸度層を複数の熱融着部により固定して形成されており、該低伸度層が前記第一面側の表面に露出している不織布であり、前記低伸度の長繊維の伸度と前記高伸度の長繊維の伸度との伸度の差は、50パーセントポイント以上の差があり、前記起毛加工工程においては、凸部を有する凸部材を用いて、前記原料不織布の表面に位置する前記低伸度層の前記長繊維の一部を破断して一端部のみが前記熱融着部により固定された起毛繊維を形成する不織布の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、加工適性が良好で、ふっくら感があり、しなやかで心地よい肌触りを実現する不織布を連続して効率的に製造することができる。
図1は、本発明の一実施態様の起毛不織布の製造方法に用いられる好適な製造装置を示す模式図である。 図2は、図1に示す製造装置の備える起毛加工部を示す模式図である。 図3は、図1に示す製造装置の備える原料不織布形成部で製造された原料不織布の断面図である。 図4は、本発明の一実施態様の起毛不織布の製造方法で製造された起毛不織布を示す斜視図である。 図5は、図4に示すV−V線断面図である。 図6は、本発明の不織布を構成する構成繊維の繊維径を測定する方法を示した模式図である。 図7は、図1に示す不織布の有する自由端部が太くなっている繊維を示す斜視図である。 図8は、本発明の不織布の起毛している繊維の量を測定する方法を示した模式図である。 図9は、本発明の不織布の製造方法で製造された不織布の使用形態の例を説明するための図であり、パンツ型使い捨ておむつを展開して伸長させた状態を示す展開平面図である。 図10は、図9のX−X線断面図である。
以下、本発明の不織布の製造方法をその好ましい実施態様に基づき、図面を参照しながら説明する。
尚、不織布に関しては、構成繊維の配向方向により繊維の配向方向に沿うMD方向をY方向、それと直交するCD方向をX方向と判断する。従って、以下の説明では、Y方向とMD方向とは同じ方向を意味し、X方向とCD方向は同じ方向を意味する。また、以下の説明では、MD方向の不織布を搬送する方向とロールを周方向に回転させることによりシートを搬送する方向とは同じ方向を意味し、不織布のCD方向とロール回転軸方向とは同じ方向を意味する。また、図中のZ方向は、搬送する不織布の厚み方向である。
図1〜図2は、本発明の起毛不織布の製造方法に用いられる製造装置(以下、単に製造装置ともいう。)の一実施形態を模式的に示したものである。
図1に示すように、本実施形態の製造装置100は、製造工程の上流側から下流側に向けて、原料不織布形成部5及び起毛加工部6を、この順で備えている。
原料不織布形成部5は、原料不織布10を製造する部分であり、図1に示すように、第1ウェブ形成装置51、第2ウェブ形成装置52及び一対のエンボスローラ53,54を備えている。第1ウェブ形成装置51及び第2ウェブ形成装置52としては、スパンボンド紡糸装置、或いはメルトブローン紡糸装置を用いることができ、製造装置100においては、スパンボンド紡糸装置が用いられている。スパンボンド紡糸装置としては、当該技術分野において通常用いられているものと同様のものを特に制限なく用いることができる。また、メルトブローン紡糸装置を用いる場合には、スパンボンド紡糸装置における溶融ポリマーの吐出ノズルの先端近辺に、一対の熱風吐出部が、該吐出ノズルを中心に対向配置された紡糸ダイを備えたもの等を使用することができる。
原料不織布形成部5を構成する一対のエンボスローラ53,54は、図1に示すように、周面に凸部531が設けられた凸ローラ53と、周面がフラットなアンビルローラ54とから形成されている。一対のエンボスローラ53,54は、アルミニウム合金又は鉄鋼等の金属性の円筒形状のものであり、その回転軸に駆動手段(図示せず)からの駆動力が伝達されることによって回転する。凸ローラ53の凸部531は、後述する原料不織布10の熱融着部4に対応した形状、大きさに形成されており、後述する原料不織布10の熱融着部4に対応した位置に配されている。
起毛加工部6は、原料不織布10の構成繊維を起毛する部分であり、凸部を備える凸部材を有している。凸部材は、本実施形態の製造装置100においては、図1,図2に示すように、周面に凸部611が設けられた凸ローラ61である回転ローラである。凸ローラ61(回転ローラ)は、アルミニウム合金又は鉄鋼等の金属性の円筒形状のものである。凸ローラ61は、その回転軸に駆動手段(図示せず)からの駆動力が伝達されることによって回転する。凸ローラ61の回転速度(周速度V2)は、製造装置100の備える制御部(不図示)により制御されている。ここで、凸ローラ61の周速度V2とは、凸ローラ61の表面での速度を意味する。
起毛加工部6は、図2に示すように、凸ローラ61(回転ローラ)の上流側及び下流側に、原料不織布10を搬送する搬送ローラ62,63を備えている。原料不織布10の搬送速度V1は、製造装置100の備える制御部(不図示)により制御されている。ここで、原料不織布10の搬送速度V1とは、凸ローラ61に供給される原料不織布10表面での速度を意味する。
凸ローラ61は、ISO1997に準拠して測定した最大粗さ(Rz)が、突起の高さが不織布を必要以上に傷つけずに加工でき、紙粉が低減できる観点から、80μm以上であることが好ましく、90μm以上であることが更に好ましく、そして、135μm以下であることが好ましく、127μm以下であることが更に好ましく、具体的には、80μm以上135μm以下であることが好ましく、90μm以上127μm以下であることが更に好ましい。
尚、ISO1997に準拠して測定した最大粗さ(Rz)とは、評価長さ全体において、平均線から最も高い山頂までの高さと、平均線から最も深い谷底までの深さの和である。
上述した凸ローラ61における最大粗さ(Rz)は、例えば、株式会社ミツトヨ製のサーフテストSJ−201(商品名)を用いて測定される。測定の際、フィルタには、ガウシアン(GAUSS)を用いる。そして、検出器には、スタイラス先端R=5μm及び先端角度90°の形状、並びに測定力4mNを用いる。また、測定条件としては、規格条件をISO1997に設定し、カットオフ値(λc)2.5mm、測定長12.5mm、区間数(N)3に設定して測定する。また、測定条件としては、Pre_Length:ON、Profile:R、speed:0.5、GO/NG:Average、Pitch:1.5に設定して測定する。
凸ローラ61の凸部611の密度は、1000個/cm以上であることが好ましく、1200個/cm以上であることが更に好ましく、そして、3000個/cm以下であることが好ましく、2500個/cm以下であることが更に好ましく、具体的には、1000個/cm以上3000個/cm以下であることが好ましく、1200個/cm以上2500個/cm以下であることが更に好ましい。
以上のような表面を有する凸ローラ61は、金属性の円筒形状のローラの表面を、サンドブラスト処理を施して作製してもよく、金属性の円筒形状のローラの表面を、サンドブラスト処理を施した後、サンドブラスト処理の施された面を更に研磨することにより作製してもよい。サンドブラスト処理の施された面を更に研磨する場合には、尖りすぎた頂部を潰して滑らかになるように研磨する観点から、JIS R 6010の研磨布紙用研磨材の粒度の規定に基づく粒度が、50番以上1000番以下であるサンドペーパーを用いることが好ましい。
本実施形態の製造装置100においては、原料不織布10の構成繊維を更に効率よく起毛する観点から、図2に示すように、凸ローラ61の上流側の搬送ローラ52位置より、凸ローラ61の下流側の搬送ローラ53の位置を高く設定し、原料不織布10が凸ローラ61の接触面に、60°以上の抱き角αで接触していることが好ましく、75°以上の抱き角αで接触していることが更に好ましく、そして、110°以下の抱き角αで接触していることが好ましく、90°以下の抱き角αで接触していることが更に好ましく、具体的には、60°以上110°以下の抱き角αで接触していることが好ましく、75°以上90°以下の抱き角αで接触していることが更に好ましい。尚、本実施形態の製造装置100においては、抱き角αとなるように、搬送ローラ52と搬送ローラ53との位置を変えているが、変えなくてもよい。
本実施形態の製造装置100は、上述したように、制御部(不図示)を備えており、該制御部は、凸ローラ61の駆動手段に基づく周速度V2、張力検出器による張力の検出に基づく原料不織布10の搬送速度V1を制御している。そして、製造装置100においては、後述するように原料不織布10が低伸度層3Aを備えているため、高い張力でもネックインし難く生産性を向上させることが可能な観点から、凸ローラ61に搬送される原料不織布10の張力を、好ましくは50N/m以上とすることができ、更に好ましくは80N/m以上とすることができ、上限として200N/m以下とすることができる。
尚、製造装置100は、図7に示すように、起毛加工部6の下流側に製造された不織布1を巻き取る巻取ローラ7を備えている。製造された不織布1は、巻取ローラ7によりロール状に巻き取られるようになっている。これらの製造装置(凸ローラ61等)はスパンボンド不織布を製造した直後に設置してもよいし、スリット工程時に設置してもよいし、これら不織布を用いた商品を製造する際に設置してもよい。高い張力でもネックインしがたいために、高い張力を必要とするどんな工程でも生産性を落とすことなく製造装置を導入できる。
次に、本発明の不織布の製造方法の一実施態様を、上述した本実施形態の製造装置100を用いて、図1〜図2を参照しながら説明する。
本実施態様の不織布の製造方法は、スパンボンド製法で製造され、第一面と第二面とを有する原料不織布10の構成繊維を起毛する起毛加工工程を有している。ここで、第一面とは、例えば図1或いは図3における上面を意味し、第二面とは、例えば図1或いは図3における下面を意味する。本実施態様では、起毛加工工程において、周面に凸部611を有する凸ローラ61に原料不織布10を搬送して、原料不織布10の第一面側の表面に露出している、低伸度の長繊維2Aから形成された低伸度層3Aに対して起毛加工を施し、長繊維2Aの一部を破断して一端部20aのみが熱融着部4により固定された起毛繊維20を形成する。本実施態様においては、このようにして起毛繊維20を有する不織布1を製造する。以下、具体的に説明する。
ここで、スパンボンド製法で製造された原料不織布10としては、スパンボンド紡糸装置を用いられて製造された不織布のみならず、スパンボンド紡糸装置の吐出ノズルの先端に熱風吐出部を取り付けたメルトブローン紡糸装置を用いられて製造された不織布も含まれる。
本実施態様の不織布の製造方法は、先ず、原料不織布形成部5を構成する第1ウェブ形成装置51であるスパンボンド紡糸装置によって紡出された相対的に高伸度の長繊維2Bから形成される高伸度層3Bとなるウェブ3B’を製造し、一方向に連続搬送させる。これとは別に、原料不織布形成部5を構成する第2ウェブ形成装置52であるスパンボンド紡糸装置によって紡出された相対的に低伸度の長繊維2Aから形成された低伸度層3Aとなるウェブ3A’を、第1ウェブ形成装置51より形成され一方向に連続搬送されている高伸度層3Bとなるウェブ3B’上に積層させる。尚、2層よりも多層の不織布を製造する場合には、更に別の紡糸装置を用意して、さらにウェブを積層させるようにすればよい。
次いで、高伸度層3Bとなるウェブ3B’上に低伸度層3Aとなるウェブ3A’が積層された積層体を、原料不織布形成部5を構成する一対のエンボスローラ53,54間に搬送し、凸ローラ53周面の凸部531とフラットなアンビルローラ54とによって、ウェブ3B’及びウェブ3A’同士を熱融着部4により間欠的に、互いの繊維を圧着または融着して固定する。このようにして、図3に示すような、複数の熱融着部4にて固定された複数層の積層のスパンボンド不織布(原料不織布10)を製造する。
製造されたスパンボンド不織布(原料不織布10)は、図3に示すように、第一面と第二面とを有し、相対的に低伸度の長繊維2Aから形成された低伸度層3Aと相対的に高伸度の長繊維2Bから形成された高伸度層3Bとを有し、低伸度層3A及び高伸度層3Bを複数の熱融着部4,4,4・・・により固定して形成されており、低伸度層3Aが第一面側の表面に露出している不織布である。原料不織布10となる、低伸度層3Aと高伸度層3Bとの複数層を有する積層のスパンボンド不織布としては、低伸度層3Aが第一面側の表面に露出する2層以上7層以下の不織布であることが好ましい。2層以上の不織布の場合、低伸度層3Aが第一面側の表面に露出するように配されていることを前提に、高伸度層3Bが第二面側の表面に露出するように配されていることが好ましい。このような構成にすると、高伸度層3Bが低伸度層3Aに挟まれないので、よりしなやかな不織布を得ることができる。より好適に、3層以上の不織布の場合、低伸度層3Aが第一面側の表面に露出するように配され、高伸度層3Bが第二面側の表面に露出するように配されていれば良く、第一面側の層と第二面側の層との間の層は、低伸度層3A及び高伸度層3Bの何れの層であっても良い。尚、本実施形態においては2層から形成された積層のスパンボンド不織布である。2層の積層のスパンボンド不織布においては、低伸度層3Aに隣接して第二面として高伸度層3Bが配されている。ここで、「長繊維」とは、30mm以上の繊維長を有するもので、原料不織布10としては、繊維長150mm以上の所謂連続長繊維であると破断強度が高い不織布1が製造できる点で好ましい。
複数層からなる積層の原料不織布10としては、例えば、スパンボンド−スパンボンド積層不織布、スパンボンド−スパンボンド−スパンボンド積層不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド積層不織布、スパンボンド−スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド積層不織布等が挙げられる。原料不織布10は、安価でかつ、良好な肌触り感が得られること、また加工適正の観点から、その坪量が、5g/m以上であることが好ましく、そして100g/m以下あることが好ましく、25g/m以下であることが更に好ましく、具体的には、5g/m以上100g/m以下あることが好ましく、5g/m以上25g/m以下であることが更に好ましい。尚、原料不織布10を元とする不織布1の坪量も、原料不織布10の坪量と同様である。複数層からなる複層の原料不織布としては、伸度の異なる同程度の繊維径をもつことでより加工適正が安定する観点から、スパンボンドのみからつくられる複層不織布であることが好ましい。
製造された原料不織布10における低伸度層3Aを形成する低伸度の長繊維2Aは、高伸度層3Bを形成する長繊維2Bよりも相対的に伸度が低い長繊維であればよく、具体的には、ホモポリプロピレンや相対的に伸度の低いコポリプロピレンを主とする樹脂から形成されていることが好ましい。尚、低伸度の長繊維2Aは、ホモポリプロピレンを主とする樹脂から形成された1種の繊維から構成されている。ここで、ホモポリプロピレンには、立体規則性の異なるホモポリプロピレンも含まれる。長繊維2Aの繊維径は、原料不織布10において、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることが更に好ましく、そして、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることが更に好ましく、具体的には、5μm以上30μm以下であることが好ましく、10μm以上20μm以下であることが更に好ましい。尚、長繊維2Aには、静電気防止特性剤、潤滑剤、親水剤など少量の添加物を付与してもよい。
製造された原料不織布10における高伸度層3Bを形成する高伸度の長繊維2Bは、低伸度層3Aを形成する長繊維2Aよりも相対的に伸度が高い長繊維であればよく、具体的には、コポリプロピレンを含む樹脂から形成されていることが好ましい。尚、高伸度の長繊維2Bは、コポリプロピレンを含む樹脂から形成された1種の繊維から構成されている。コポリプロピレンとしては、エチレン、プロピレン又はブデン等の他のオレフィンと、プロピレンとのブロックコポリマー或いはランダムコポリマーを含む意味である。コポリプロピレンの中でも特にプロピレン−エチレン共重合体がしなやかさをもち、肌触りのやわらかさの観点から好ましく用いられる。また、高伸度の長繊維2Bは、捲縮性を有していることが好ましく、具体的には、コポリプロピレン樹脂と、コポリプロピレン樹脂とは別の樹脂とから構成された複合繊維を用いることができる。また、捲縮性を有する長繊維2Bに、重合度又は添加剤を異ならせて形成されたコポリプロピレン樹脂同士から構成された複合繊維を用いることもできる。捲縮性の複合繊維としては、サイドバイサイド繊維、芯鞘繊維、偏芯したクリンプを有する芯鞘繊維などが挙げられる。具体的に捲縮性の複合繊維を用いる場合には、芯がコポリプロピレン樹脂、鞘がポリエチレン樹脂からなる芯鞘繊維、または芯鞘ともにコポリプロピレン繊維で熱収縮度が異なる偏芯繊維を用いると柔らかな不織布1が得られる観点から好ましい。高伸度の長繊維2Bが捲縮性を有することで、製造される不織布1に、嵩高性を発現でき肌触りが更に向上する。また高伸度の長繊維2Bが捲縮性を有することで、物理的伸度が高くなり、低伸度の長繊維2Aとの伸度差を設けることができるため、より効率的に起毛繊維を形成することができる。長繊維2Bの繊維径は、原料不織布10において、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることが更に好ましく、そして、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることが更に好ましく、具体的には、5μm以上30μm以下であることが好ましく、10μm以上20μm以下であることが更に好ましい。尚、長繊維2Bには、静電気防止特性剤、潤滑剤、親水剤など少量の添加物を付与してもよい。
製造された原料不織布10において、低伸度層3Aを形成する低伸度の長繊維2Aの伸度(%)と高伸度層3Bを形成する高伸度の長繊維2Bの伸度(%)との伸度の差(%)は、50パーセントポイント以上の差があり、75パーセントポイント以上の差があることが好ましく、100パーセントポイント以上の差があることがさらに好ましい。前記の伸度は以下の方法で測定される。低伸度層3Aを形成する低伸度の長繊維2Aは、加工適正の観点、破断強度の向上の観点から、100%以上の伸度であることが好ましく、そして400%以下の伸度であることが好ましく、具体的には、100%以上400%以下の伸度であることが好ましい。前記伸度は以下の方法で測定される。
製造された原料不織布10において、高伸度層3Bを形成する高伸度の長繊維2Bは、しなやかで心地よい肌触りを実現する観点ら、300%以上の伸度であることが好ましく、そして600%以下の伸度であることが好ましく、具体的には、300%以上600%以下の伸度であることが好ましい。前記伸度は以下の方法で測定される。
〔長繊維の伸度の測定法〕
原料不織布からX方向(CD方向)に10mm、Y方向(MD方向)に100mmにカットした不織布を4枚用意する。引張試験機(株式会社島津製作所製オートグラフAG−IS1kN)を用いて、チャック間20mmに前記不織布を折り曲げて配し、一方のチャックに該不織布のY方向(MD方向)の端部を挟み、他方のチャックに、折り曲げて配した該不織布の表面の繊維を3〜50本程度ほぐし、ほぐした繊維を挟む。ここで同じ表面からの繊維を測定するために、折り曲げる方向はすべて同じにする。10Nロードセルを用い速度10mm/分で4枚の不織布の測定をおこなう。測定後データから最初の降伏点の伸度を読み取り、4枚の不織布の平均値を繊維の伸度とする。次に裏側も同様に折り曲げて測定をおこない、他方の伸度の測定結果とする。不織布がホットメルト等で接合した商品の場合はホットメルトを溶かす溶媒で十分にホットメルトを除去してから測定する。
また、製造された原料不織布10においては、図3に示すように、熱融着部4は、肌触りや、加工適正の観点から、各熱融着部4の表面積が、0.05mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることが更に好ましく、そして、10mm以下であることが好ましく、1mm以下であることが更に好ましく、具体的には、0.05mm以上10mm以下であることが好ましく、0.1mm以上1mm以下であることが更に好ましい。熱融着部4の数は、10個/cm以上であることが好ましく、35個/cm以上であることが更に好ましく、そして、250個/cm以下であることが好ましく、65個/cm以下であることが更に好ましく、具体的には、10個/cm以上250個/cm以下であることが好ましく、35個/cm以上65個/cm以下であることが更に好ましい。隣り合う熱融着部4,4同士の中心間の距離は、0.3mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることが更に好ましく、そして、4mm以下であることが好ましく、2mm以下であることが更に好ましく、具体的には、0.3mm以上4mm以下であることが好ましく、0.5mm以上2mm以下であることが更に好ましい。ここで、隣り合う熱融着部4,4同士とは、最も近い熱融着部4,4同士のことを意味する。尚、製造される不織布1の段階においても、熱融着部4に関しては同様である。
製造された原料不織布10において、熱融着部4は、製造装置100の原料不織布形成部5の備える一対のエンボスローラ53,54による熱圧着により間欠的に形成されたものや、超音波融着によるもの、間欠的に熱風を加えて部分融着させたものなどが挙げられる。この中で熱圧着によるものが繊維を破断させやすい点で好ましい。熱融着部4の形状は、特に制限されず、例えば、図1に示す菱形の他、円形、楕円形、三角形等の多角形などの任意の形状であってもよい。不織布1の一面の表面積に占める熱融着部4の合計表面積の割合は、不織布の強度保持、および毛玉が出来難い観点から、5%以上であることが好ましく、10%以上であることが更に好ましく、そして、30%以下であることが好ましく、20%以下であることが更に好ましく、具体的には、5%以上30%以下であることが好ましく、10%以上20%以下であることが更に好ましい。
次いで、図1,図2に示すように、製造された第一面と第二面とを有する原料不織布10を、凸部611を有する凸ローラ61に搬送し、原料不織布10に起毛加工を施し、原料不織布10の構成繊維を起毛する(起毛加工工程)。詳述すると、搬送された原料不織布10の第一面側の表面に露出している低伸度層3Aに対し、凸部611を有する凸ローラ61を用いて起毛加工を施し、低伸度層3Aを構成する長繊維2Aの一部を破断して一端部20aのみが熱融着部4により固定された起毛繊維20を形成する(図4,図5参照)。
図4,図5に示すように、凸ローラ61を用いて起毛加工を施すことにより、起毛繊維20を形成するのみならず、熱融着部4,4同士の間でループ状に起立するループ状の繊維23も形成される。そして、起毛繊維20は、自由端部20bが太くなっている繊維21と、自由端部20bが太くなっていない繊維22とを有している。起毛繊維20の内の自由端部20bが太くなっている繊維21は、凸ローラ61の周面の凸部611によって原料不織布10の第一面側の表面に露出している低伸度層3Aを起毛し、原料不織布10の熱融着部4のごく表面部の弱化点から長繊維2Aが破断されて形成される。また、起毛繊維20の内の自由端部20bの太くなっていない繊維22は、凸ローラ61の周面の凸部611によって原料不織布10の第一面側の表面に露出している低伸度層3Aを起毛し、熱融着部4と長繊維2Aとの境界部分で破断されて形成される。また、ループ状の繊維23は、凸ローラ61の周面の凸部611によって原料不織布10の第一面側の表面に露出している低伸度層3Aを起毛し、熱融着部4の弱化点から、長繊維2Aが剥離し、この熱融着部4から剥離した繊維が、熱融着部4,4同士の間でループ状に起立して形成される。
尚、連続して製造された不織布1は、巻取ローラ7によりロール状に巻き取られる。もしくはそのまま商品の製造工程に搬送できる。
以上説明したように、製造装置100を用いて不織布を製造する本実施態様の不織布1の製造方法によれば、原料不織布10が低伸度の長繊維2Aから形成された低伸度層3Aを第一面側の表面に露出するように有しているので、搬送中にネックインし難く、加工適性が良好で、搬送速度を高速化することができる。さらに第一面側の低伸度層3Aが凸ローラ61に伸びずに密着するために起毛しやすく、効率的に肌触りの良い感触を付与することができる。また、原料不織布10が高伸度の長繊維2Bから形成される高伸度層3Bを第一面側に有しており、低伸度層3Aを形成する低伸度の長繊維2Aの伸度(%)と高伸度層3Bを形成する高伸度の長繊維2Bの伸度(%)との伸度の差(%)が、50パーセントポイント以上の差であるので、加工適正が良く、不織布1にしなやかで心地よい肌触りを付与することができる。また、本実施態様の不織布の製造方法によれば、長繊維2Aの一部を破断して一端部20aのみが熱融着部4により固定された起毛繊維20を形成するので、ふっくら感のある不織布1を効率的に連続して製造することができる。
以下、本実施態様の不織布の製造方法により製造された不織布1について詳述する。
不織布1は、図4及び図5に示すように、低伸度層3Aを構成する長繊維2Aの一部が破断されて、一端部20aのみが熱融着部4により固定され他端部側が自由端部20bとなっている起毛繊維20を備えている。不織布1は、自由端部20bを有する起毛繊維20、熱融着部4,4同士の間でループ状に起立するループ状の繊維23(起毛繊維20、ループ状の繊維23をあわせて「起毛している繊維」という)及び「起毛している繊維」以外の起毛していない繊維で構成されている。不織布1は、この起毛していない繊維を主として形成されている。そして起毛繊維20は、図4及び図5に示すように、自由端部20bが太くなっている繊維21及び自由端部20bが太くなっていない繊維22からなる。先端が太くなっている繊維21としては、その先端部における断面が扁平状(楕円や潰れた形状)であるものが好ましい。ここで、「自由端部」とは、一端部20aのみが熱融着部4により固定されている起毛繊維20における「他端部」のことを意味し、言い換えれば「先端部」を意味する。自由端部20bが太くなっているか否かは、以下の測定法により繊維径を測定し、先端繊維径の増加割合を算出し判断する。
〔繊維径の測定法〕
先ず、22℃、65%RH環境下にて、図6(a)に示すように、測定する不織布1から、鋭利なかみそりで、CD方向に2cm、MD方向に2cmの大きさの測定片を切り出す。そして、図6(b)に示すように、複数個の熱融着部4を通るCD方向に延びる折り返し線Zにて山折りした測定サンプルを、図6(c)に示すように、カーボンテープを載せた走査型電子顕微鏡(SEM)用アルミ製試料台に載せて固定する。次に、およそ750倍に拡大したSEM画像から、一端部20aのみが熱融着部4により固定されている起毛繊維20をランダムに10本選出し、それら繊維の自由端部の先端付近の写真撮影を行なう。得られた写真(図7参照)から、自由端部20bの先端から120μm離れた位置での起毛繊維20の繊維径(自由端部20bを除く部位での起毛繊維20の径21a)をそれぞれ測定する。自由端部20bを除く部位での起毛繊維20の径21aの測定時における傾きを、そのまま自由端部20b側に平行移動し、自由端部20bの先端と先端から20μm離れた位置との間に挟まれた領域において最も太くなっている位置での繊維21の繊維径(自由端部20bでの繊維21の径21b)を測定する。尚、先端部が扁平状である場合は観察角度によっては先端が太く見えない場合もあるが、その場合でも得られた写真でそのまま測定する。不織布が商品にホットメルト等で接合されている場合でも、不織布を切り出して測定する。またホットメルトを溶かす溶媒を用いて、ホットメルトを除去してもよい。
自由端部20bが太くなっている繊維21とは、先のランダムに選出した10本の起毛繊維20の中で、10本の起毛繊維20の写真それぞれから測定した、自由端部20bでの起毛繊維20の径21bと、自由端部20bを除く部位での起毛繊維20の径21aとから、下記の式(1)で求められる先端繊維径の増加割合の値が15%以上との要件を満たす繊維であることを意味し、熱融着部4同士の間(熱融着部4と繊維との境界を除く、繊維形態部分)での繊維の切断が抑えられ、破断強度の減少が抑えられ、肌触りの良いものが得られる観点から、20%以上大きくなっていることが好ましく、25%以上大きくなっていることが更に好ましい。

先端繊維径の増加割合(%)=[((21b−21a)÷21a)×100]・・・(1)
不織布1においては、肌に接した際の心地よい肌触りと破断強度の両立の観点、ふっくら感向上の観点から、一端部20aのみが熱融着部4により固定されている起毛繊維20(自由端部20bが太くなっている繊維21及び自由端部20bが太くなっていない繊維22)における、自由端部20bが太くなっている繊維21の割合が、20%以上であることが好ましく、30%以上であることが更に好ましく、40%以上であることが特に好ましい。自由端部20bが太くなっている繊維21の割合は、上述した繊維径の測定法において、ランダムに10本選んだ起毛繊維20をおよそ750倍に拡大したSEM画像から、先端繊維径の増加割合をそれぞれ算出し、自由端部20bが太くなっている繊維21の割合を算出する。
上述したように、不織布1は、図4,図5に示すように、熱融着部4,4同士の間でループ状に起立するループ状の繊維23を有している。起立している「ループ状の繊維23」とは、上述した繊維径の測定法において図6(c)のように観察した際、他端部側に自由端部20bを有さず、折り返し線Zから0.5mm以上離れて起立している繊維を意味する。
不織布1は、そのバルクソフトネスが、肌触りのしなやかさに優れる観点から、4.5cN以下であることが好ましく、3cN以下であることがより好ましく、1.5cN以下であることが更に好ましく、0.1cN以上であることが好ましく、0.5cN以上であることがより好ましい。具体的には、乳児や幼児のうぶ着のようなしなやかなものになる点で、0.1cN以上4.5cN以下であることが好ましく、0.1cN以上3cN以下であることがより好ましく、0.5cN以上1.5cN以下であることが更に好ましい。
尚、原料不織布10は、そのバルクソフトネスが、柔軟なものが得られ肌触りに優れる観点から、10cN以下であることが好ましく、6cN以下であることが更に好ましく、そして1cN以上であることが好ましく、具体的には、0.5cN以上10cN以下であることが好ましく、1cN以上8cN以下であることが更に好ましい。
バルクソフトネスは、以下の測定法により測定する。
〔バルクソフトネスの測定法〕
不織布1のバルクソフトネスは、22℃65%RH環境下にて、不織布1をY方向に150mm、X方向に30mm切り出し、直径45mmのリング状に、ホッチキスを用いて端部を上下2箇所で止める。このときステープラーの芯はY方向に長くなるようにする。引張試験機(例えば、株式会社オリエンテック製テンシロン引張り試験機「RZA−100」)を用いて、試料台の上に前記リングを筒状に立て、上方から台とほぼ平行な平板にて圧縮速度10mm/分の速度で圧縮していった際の最大荷重を測定し、バルクソフトネスとする。不織布がホットメルト等で接合した商品の場合はホットメルトを溶かす溶媒で十分にホットメルトを除去してから測定する。
不織布1において、一端部20aのみが熱融着部4により固定されている起毛繊維20を含む起毛している繊維(起毛繊維20及びループ状の繊維23)は、ふっくら感があり、心地よい肌触りを実現する観点から、その量(本数)が、8本/cm以上であることが好ましく、14本/cm以上であることが更に好ましい。また、十分な破断強度が得られる観点から上限は30本/cm以下が好ましい。起毛している繊維の量(本数)は、以下の測定法により測定する。尚、ループ状の繊維23とは、図5に示すように、自由端部を有さず、両端部それぞれが熱融着部4により固定されている繊維を意味する。
〔起毛している繊維の量(本数)の測定法〕
図8は、22℃65%RH環境下にて、不織布1を構成する繊維の中で起毛している繊維の量を測定する方法を示した模式図である。先ず、測定する不織布から、鋭利なかみそりで、20cm×20cmの測定片を切り出し、図8(a)に示すように、測定片の起毛した面において、複数個の熱融着部4を通るX方向に延びる折り返し線Zにて山折りして測定サンプル104を形成する。次に、この測定サンプル104を、A4サイズの黒い台紙の上に載せ、図8(b)に示すように、さらにその上に、縦1cm×横1cmの穴107をあけたA4サイズの黒い台紙を載せる。このとき、図8(b)に示すように、測定サンプル104の折り目105が、上側の黒い台紙の穴107から見えるように配置する。両台紙には、富士共和製紙株式会社の「ケンラン(黒)連量265g」を用いる。その後、上側の台紙の穴107の両側それぞれから、折り目105に沿って外方に5cm離れた位置に、50gのおもりをそれぞれ載せ、測定サンプル104が完全に折りたたまれた状態を作る。次に、図8(c)に示すように、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製VHX−900)を用いて、30倍の倍率で、台紙の穴107内を観察し、測定サンプル104の折り目105から0.2mm上方に平行移動した位置に形成される仮想線108よりも上方に起毛している1cmあたりの起毛した繊維の本数を計測する。このようにして9箇所計測し、平均値(少数第二位を四捨五入)を起毛している繊維の量(本数)とする。不織布が商品にホットメルト等で接合されている場合でも、不織布を切り出して測定する。またホットメルトを溶かす溶媒を用いて、ホットメルトを除去してもよい。商品の大きさが測定片よりも小さい場合、5cm×5cmを3つ切り出し、上記方法で各三箇所合計9箇所測定し、起毛している繊維の量とする。
また、起毛している繊維の数を数える際には、例えば、図8(c)に示す繊維106aのように、折り目105から0.2mm上方にある仮想線108を2回横切る繊維がある場合、その繊維は2本と数える。具体的には、図8(c)に示す例では、仮想線108を1回横切る繊維が4本、仮想線108を2回横切る繊維106aが1本存在するが、2回横切る繊維106aは2本と数え、起毛している繊維の量は6本/cmとなる。
また、起毛している繊維は、ふっくら感を高め、タッチ感を高める観点から、その高さが0.7mm以上であることが好ましく、2.0mm以上であることが更に好ましい。起毛している繊維の高さが5mmを超えると、毛羽立ち様の外観となり、使用時に擦れたりすると、毛玉になったり、毛羽抜けしたりする。この観点から、起毛している繊維の高さは5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることが更に好ましい。ここで、起毛している繊維の高さとは、繊維の長さと異なり、繊維を測定時に引っ張ることなく、自然状態での繊維の高さのことを意味する。起毛している繊維の長さの値が大きい場合や繊維の剛性が高いと、起毛している繊維の高さが高くなる傾向にある。起毛している繊維の高さは、以下の測定法により測定する。
起毛している繊維の高さは、起毛している繊維の量を測定する際に、同時に測定する。具体的には、図8(c)に示すように、台紙の穴107内を観察し、折り目105から平行に線を0.05mmごとに起毛している繊維が交わらなくなるところまで引く。次に、上述のように測定した起毛している繊維の量(0.2mm上方にある仮想線108より判断)に比べて、平行な線に交わる繊維が半分になる平行線を選び、そこから折り目までの距離を測定する。以上の操作を測定する不織布に対して3枚分計測し、1枚につき3箇所、3枚で計9箇所の平均をとり、起毛している繊維の高さとする。
本発明の起毛不織布の製造方法は、上述の実施態様の製造方法に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。
例えば、本実施態様の不織布の製造方法においては、図1,図2に示すように、起毛加工工程にて、回転ローラ(凸ローラ61)を用いて起毛加工を施しているが、回転ローラ(凸ローラ61)に換えて板状部材を用いて起毛加工を施してもよい。
また、本実施態様の不織布の製造方法においては、図1,図2に示すように、起毛加工工程にて、1個の回転ローラ(凸ローラ61)を用いて起毛加工を施しているが、起毛加工工程の後、更に凸部を有する別の凸部材を用いて更に起毛してもよい。別の凸部材としては、凸ローラ61と同じ凸ローラである回転ローラ、又は板状の凸部材等を用いることができる。
また、肌触りの観点から、原料不織布10に起毛加工を施す際、50℃以下の温度で加工を行うことが好ましい。尚、50℃以下の温度とは、回転ローラ(凸ローラ61)に積極的に温度を掛けず、原料不織布10に起毛加工を施す際、常温であることを意味する。言い換えれば、原料不織布10に起毛加工を施す際に、不織布の構成繊維間で熱融着を起こしてしまうことにより、原料不織布10が硬くなってしまわない観点から、如何なる種類の構成繊維樹脂の融点よりも低い温度であることを意味する。
また、上述の本実施態様の不織布1の製造方法においては、図1に示すように、原料不織布形成部5にて原料不織布10を製造した後、連続して、製造された原料不織布10を起毛加工部6の凸ローラ61に搬送し、原料不織布10に起毛加工を施しているが、連続していなくてもよい。具体的に、例えば、原料不織布形成部5にて原料不織布10を製造して巻取ローラでロール状に原料不織布10を一度巻き取った後、別ラインで、ロール状に巻き取った原料不織布10を凸ローラ61に搬送して、原料不織布10に起毛加工を施してもよい。
本実施態様の不織布の製造方法で製造された不織布1の利用範囲は、主として使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品における構成部材に好適に用いられる。構成部材としては、例えば、表面シート、裏面シート、使い捨ておむつの外包材を構成するシート等が挙げられ、特に、不織布1は、着用者の肌当接面に用いる吸収性物品の表面シートに好適に用いられる。不織布1の利用範囲は、その他、清掃用シートにも好適に用いられる。以下、不織布1を利用した使い捨ておむつを例に挙げ、具体的に説明する。
パンツ型使い捨ておむつ200は、図9及び図10に示すように、吸収体81を含む吸収性本体8と、吸収性本体8の非肌当接面側に位置して該吸収性本体8を固定している外包材9とを備えている。
吸収性本体8は、図10に示すように、液透過性の表面シート82、液不透過性(撥水性も含む)の裏面シート83及び両シート82,83間に介在された液保持性の吸収体81を有しており、図9に示すように、実質的に縦長である。
外包材9は、図9に示すように、着用者の背側に配される背側領域A、腹側に配される腹側領域B、それらの間に位置し股間部に配される股下領域Cを有しており、背側領域Aと腹側領域Bの両側縁部9a,9b同士が接合されて、一対のサイドシール部(図示せず)、一対のレッグ開口部(図示せず)及びウエスト開口部(図示せず)が形成される。また、外包材9は、おむつの外面を形成する外層シート92、その肌当接面側に位置して部分的に該外層シート92と接合された内層シート91を有しており、ウエスト開口部及びレッグ開口部を形成するウエスト部及びレッグ部9dにおける両シート91,92間に、ギャザー形成用のウエスト部弾性部材93及びレッグ部弾性部材94が配されている。
吸収性本体8は、図9に示すように、外包材9の背側領域Aから腹側領域Bに跨って配設されており、吸収性本体8の長手方向の両端部は、外包材9の長手方向の両端部よりも長手方向の内方に後退した位置にある。吸収性本体8は、図10に示すように、吸収性本体8の裏面シート83の非肌当接面が、接着剤、ヒートシール、超音波シール等による接合法によって外包材9の内層シート91の肌当接面に接合されている。
吸収性本体8の長手方向に沿う両側部には、図10に示すように、液不透過性又は撥水性で且つ通気性の素材から構成された側方カフス84,84が設けられている。各側方カフス84の自由端部近傍には、側方カフス形成用の弾性部材85が伸長状態で配設固定されている。側方カフス84は、おむつの装着時に自由端部側が起立し、吸収性本体8の幅方向への排泄物の流出を阻止することができる。側方カフス84形成用シートは、図10に示すように、吸収性本体8の幅方向外方の所定幅の部分が、吸収体81の非肌当接面側に巻き込まれて、吸収体81と裏面シート83との間に固定されている。尚、所定幅の部分は、裏面シート30と外包材9との間に固定されていてもよい。
本実施形態の不織布1は、着用者の肌当接面に用いるパンツ型使い捨ておむつ200の外包材9の外層シート92及び内層シート91として好ましく用いられる。また、表面シート82、裏面シート83、並びに側方カフス84形成用シートとして用いることもできる。不織布1を使用しない場合の各部の部材には、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート82としては、液透過性の不織布や、開孔フィルム、これらの積層体等を用いることができ、裏面シート83としては、樹脂フィルムや樹脂フィルムと不織布の積層体等を用いることができる。側方カフス84形成用シートとしては、伸縮性のフィルム、不織布、織物またはそれらの積層シート等を用いることができる。内層シート91及び外層シート92としては、撥水性の不織布等を用いることができる。
吸収体81としては、従来、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるもの等を、特に制限なく用いることができる。例えば、吸収体81としては、パルプ等の繊維材料の繊維集合体又はこれに高吸収性ポリマーを担持させたものからを、ティッシュペーパーや透水性の不織布等の被覆材で包んでなるもの等を用いることができる。
側方カフス形成用の弾性部材85、ウエスト部弾性部材93及びレッグ部弾性部材94としては、通常、使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いられるもの等を、特に制限なく用いることができる。例えば、天然ゴム、ポリウレタン、ポリスチレン−ポリイソプレン共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエン共重合体、アクリル酸エチル−エチレン等のポリエチレン−αオレフィン共重合体等からなる伸縮性の材料等を用いることができる。
上述した実施形態に関し、さらに以下の不織布の製造方法を開示する。
<1>
スパンボンド製法で製造された原料不織布の構成繊維を起毛する起毛加工工程を有する不織布の製造方法であって、
前記原料不織布は、第一面と第二面とを有し、相対的に低伸度の長繊維から形成された低伸度層と相対的に高伸度の長繊維から形成された高伸度層とを有し、該低伸度層及び該高伸度層を複数の熱融着部により固定して形成されており、該低伸度層が第一面側の表面に露出している不織布であり、
前記低伸度の長繊維の伸度と前記高伸度の長繊維の伸度との伸度の差は、50パーセントポイント以上の差があり、
前記起毛加工工程においては、凸部を有する凸部材を用いて、前記原料不織布の表面に位置する前記低伸度層の前記長繊維の一部を破断して一端部のみが前記熱融着部により固定された起毛繊維を形成する不織布の製造方法。
<2>
前記原料不織布は、前記低伸度層の第二面側の表面に露出して前記高伸度層が配されている前記<1>に記載の不織布の製造方法。
<3>
前記凸部材は、周面に前記凸部を有する凸ローラである前記<1>又は<2>に記載の不織布の製造方法。
<4>
前記低伸度の長繊維は、ホモポリプロピレンを主とする樹脂から形成されている前記<1>〜<3>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<5>
前記高伸度の長繊維は、コポリプロピレンを含む樹脂から形成されている前記<1>〜<4>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<6>
前記コポリプロピレンは、エチレン、プロピレン又はブデン等の他のオレフィンと、プロピレンとのブロックコポリマー或いはランダムコポリマーを含む前記<5>に記載の不織布の製造方法。
<7>
前記コポリプロピレンはプロピレン−共重合体である前記<5>又は<6>に記載の不織布の製造方法。
<8>
前記高伸度の長繊維は、捲縮性を有している前記<1>〜<7>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<9>
前記捲縮性を有する長繊維は、コポリプロピレン樹脂と、コポリプロピレン樹脂とは別の樹脂とから構成された複合繊維であるか、または、重合度又は添加剤を異ならせて形成されたコポリプロピレン樹脂同士から構成された複合繊維である前記<8>に記載の不織布の製造方法。
<10>
前記捲縮性を有する複合繊維は、サイドバイサイド繊維、芯鞘繊維、偏芯したクリンプを有する芯鞘繊維である前記<9>に記載の不織布の製造方法。
<11>
前記捲縮性を有する複合繊維は、芯がコポリプロピレン樹脂、鞘がポリエチレン樹脂からなる芯鞘繊維であるか、または芯鞘ともにコポリプロピレン繊維で熱収縮度が異なる偏芯繊維である前記<9>又は<10>に記載の不織布の製造方法。
<12>
前記凸部材は、周面に前記凸部を有する凸ローラであり、前記原料不織布を該凸ローラの接触面に60°以上の抱き角で接触させる前記<1>〜<11>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<13>
前記原料不織布が前記凸ローラの接触面に、60°以上の抱き角αで接触していることが好ましく、75°以上の抱き角αで接触していることが更に好ましく、そして、110°以下の抱き角αで接触していることが好ましく、90°以下の抱き角αで接触していることが更に好ましい前記<12>に記載の不織布の製造方法。
<14>
前記凸部材は、周面に前記凸部を有する凸ローラであり、該凸ローラに搬送される前記原料不織布の張力が80N/m以上である前記<1>〜<13>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<15>
前記起毛加工工程の後、更に凸部を有する別の凸部材を用いて起毛する前記<1>〜<14>の何れか記載の不織布の製造方法。
<16>
前記凸部材の表面は、ISO1997に準拠して測定した最大粗さ(Rz)が80μm以上である前記<1>〜<15>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<17>
前記凸部材の表面は、ISO1997に準拠して測定した最大粗さ(Rz)が、80μm以上、好ましくは90μm以上であり、そして、135μm以下、好ましくは127μm以下である前記<16>に記載の不織布の製造方法。
<18>
前記凸部材は、周面に前記凸部を有する凸ローラであり、
前記凸ローラは、金属性の円筒形状のローラの表面を、サンドブラスト処理を施して作製された凸ローラである前記<1>〜<17>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<19>
前記凸部材に搬送される前記原料不織布の張力は、50N/m以上、好ましくは80N/m以上であり、そして200N/m以下である前記<1>〜<18>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<20>
前記低伸度の長繊維及び前記高伸度の長繊維の繊維径は、それぞれ、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、そして、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である前記<1>〜<19>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<21>
前記原料不織布において、前記低伸度層を形成する前記低伸度の長繊維と前記高伸度層を形成する前記高伸度の長繊維との伸度は、75パーセントポイント以上差があることが好ましく、100パーセントポイント以上差があることがさらに好ましい前記<1>〜<20>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<22>
前記原料不織布において、前記低伸度層を形成する前記低伸度の長繊維は、100%以上の伸度であることが好ましく、そして400%以下の伸度であることが好ましい前記<1>〜<21>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<23>
前記原料不織布において、前記高伸度層を形成する前記高伸度の長繊維は、300%以上の伸度であることが好ましく、そして600%以下の伸度であることが好ましい前記<1>〜<22>の何れか1に記載の不織布の製造方法。
<24>
前記<1>〜<23>の何れか1に記載の不織布の製造方法で製造された不織布。
<25>
前記<24>に記載の不織布を用いた吸収性物品。
<26>
前記不織布を最外層シートとして用いた前記<25>に記載の吸収性物品。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。
〔実施例1〕
原料不織布として、第一面側に繊維径15μmのホモポリプロピレン樹脂からなる相対的に低伸度の長繊維2Aから形成される低伸度層3Aとなるウェブ3A’と、第二面側に繊維径15μmのコポリプロピレン(具体的にはプロピレン−エチレンランダム共重合体)からなる相対的に高伸度の長繊維2Bから形成される高伸度層3Bとなるウェブ3B’を熱融着して形成されており、低伸度の長繊維2Aの伸度と高伸度の長繊維2Bの伸度との伸度の差が50パーセントポイント以上となる、スパンボンド不織布(原料不織布)を準備した。それらの各熱融着部4の形状はひし形で、熱融着部の面積率は9%、表面積率と隣り合う熱融着部4,4同士の中心間の距離は2mmであった。スチールマッチングエンボスローラに通して部分延伸加工を施した。部分延伸加工に用いたスチールマッチングエンボスローラにおける上部ローラの各凸部と下部ローラの各凸部との噛み合いの深さは4mmであった。また凸部の高さが4.2mmであり、周方向に隣り合う凸部同士の距離(ピッチP)は8.3mmであり、回転軸方向に隣り合う凸部同士の距離(ピッチP)は8.3mmであった。また、起毛加工に用いた凸ローラ51は、直径が150mmで、ISO1997に準拠して測定したその表面の最大粗さ(Rz)が125.86μmであるローラを用いた。最大粗さ(Rz)は、上述した株式会社ミツトヨ製のサーフテストSJ−201(商品名)を用いて、上述した測定条件に従って測定した。
次に、このスパンボンド不織布(原料不織布)を、図1及び図2に示す凸ローラ61に室温(25度)にて搬送して、原料不織布の第一面側の表面に位置する低伸度層3Aの構成繊維を起毛して実施例1の不織布を作製した。用いた凸ローラ61は、ISO1997に準拠して測定した最大粗さ(Rz)が97.2μmであり、原料不織布10の凸ローラ61の接触面に対する抱き角αが80°であった。不織布の搬送速度は50m/分、凸ローラ61の周速は200m/分、搬送テンションは80N/mであった。
〔実施例2〕
原料不織布10の凸ローラ61の接触面に対する抱き角αを45°に変更する以外は、実施例1と同様にして実施例2の不織布を作製した。
〔実施例3〕
実施例1と同様の加工をおこない、原料不織布のみを変更して実施例3の不織布を作製した。原料不織布として、第一面側に繊維径16μmのコポリプロピレン(具体的にはプロピレン−エチレンランダム共重合体)からなる相対的に低伸度の長繊維2Aから形成される低伸度層3Aとなるウェブ3A’と、第二面側に繊維径16μmのコポリプロピレンを主体とした捲縮性の複合繊維からなる相対的に高伸度の捲縮性の長繊維2Bから形成される高伸度層3Bとなるウェブ3B’を熱融着して形成されており、低伸度の長繊維2Aの伸度と高伸度の長繊維2Bの伸度との伸度の差が50パーセントポイント以上となる、スパンボンド不織布を準備した。それらの各熱融着部4の形状は円形で、熱融着部の面積率は8%、表面積率と隣り合う熱融着部4,4同士の中心間の距離は3mmであった。
〔実施例4〕
原料不織布10の凸ローラ61の接触面に対する抱き角αを45°に変更する以外は、実施例3と同様にして実施例4の不織布を作製した。
〔比較例1〕
実施例1と同じ原料不織布を、比較例1の不織布とした。即ち、比較例1の不織布には、起毛加工が施されていない。
〔比較例2〕
実施例3と同じ原料不織布を、比較例2の不織布とした。即ち、比較例2の不織布には、起毛加工が施されていない。
〔比較例3〕
原料不織布を、低伸度の長繊維の伸度と高伸度の長繊維の伸度との伸度の差が50パーセントポイント未満の原料不織布に変更し、該原料不織布に対して、実施例2と同様の加工を施して比較例3の不織布を作製した。原料不織布として、第一面側に繊維径16μmのホモポリプロピレン樹脂からなる長繊維から形成される層と、第二面側に同様に繊維径15μmのホモポリプロピレンからなる長繊維から形成される層を熱融着したスパンボンド不織布を準備した。それらの各熱融着部4の形状は楕円形で、熱融着部の面積率は15%、表面積率と隣り合う熱融着部4,4同士の中心間の距離は1.5mmであった。
〔比較例4〕
原料不織布10の凸ローラ61の接触面に対する抱き角αを80°に変更する以外の加工は、比較例3と同様にして比較例4の不織布を作製した。
〔比較例5〕
原料不織布を、低伸度の長繊維の伸度と高伸度の長繊維の伸度との伸度の差が50パーセントポイント未満の原料不織布に変更し、該原料不織布に対して、実施例2と同様の加工を施して比較例5の不織布を作製した。原料不織布として、第一面側に繊維径15μmのコポリプロピレン(具体的にはプロピレン−エチレンランダム共重合体)からなる長繊維から形成される層と、第二面側に同様に繊維径15μmのコポリプロピレン(具体的にはプロピレン−エチレンランダム共重合体)からなる長繊維から形成される層を熱融着したスパンボンド不織布を準備した。それらの各熱融着部4の形状はひし形で、熱融着部の面積率は9%、表面積率と隣り合う熱融着部4,4同士の中心間の距離は2mmであった。
〔比較例6〕
原料不織布10の凸ローラ61の接触面に対する抱き角αを80°に変更する以外の加工は、比較例5と同様にして比較例6の不織布を作製した。
〔性能評価〕
実施例1〜4、比較例1〜6の不織布について、上述した方法に従って、バルクソフトネス、起毛している繊維の量(本数)を測定した。バルクソフトネスは、しなやかさを示すパラメータであり、起毛している繊維の量(本数)は、ふっくら感を示すパラメータである。また、また、実施例1〜4、比較例1〜6の不織布について、後述する方法に従って、肌触り感を評価した。評価環境は室温20℃、湿度60%RHであった。更に、実施例1〜4、比較例1〜6の不織布の製造時において、後述する方法に従って、ネックイン量を測定した。それらの結果を下記表1に示す。
〔肌触り感〕
実施例1〜4、比較例1〜6で得られた不織布について、ホモポリプロピレンのみで作られた比較例3を2点、ホモポリプロピレンとコポリプロピレンで作られた比較例1を4点としたときの10段階の(10点に近づく程よりよい肌触り)官能評価を成人男女3人に対して行い、各不織布についての平均値を、整数桁に四捨五入して求め、表1に示した。なお、本評価は、各不織布に軽くタッチするように触ったときの官能評価である。
〔不織布の製造時のネックイン量の測定〕
不織布の起毛加工において、巻出し直後の幅を定規を用いて目視で測定した結果を基材幅とする。また、凸ロールで加工をおこなった直後に定規を用いて目視で幅を測定した結果を加工直後幅とする。これらの数値からネックイン量(%)として(1−加工直後幅/基材幅)×100の式を用いて算出した。ネックインが大きいほど、初期の幅に対して、加工中での幅縮みが大きいことを意味し生産時に幅の予測がつき難く大きな課題となる。つまり、この測定により加工適正を評価することができる。
Figure 0006546435
表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜4の不織布は、比較例4,6の不織布に比べて、張力が高く凸ロールへの抱き角が変わらないものも破れが発生していないことが判った。また、実施例1〜4の不織布は、比較例3の不織布に比べて、バルクソフトネスの値が低く、しなやかで心地よい肌触りを実現していることが判った。また、実施例1〜4の不織布は、比較例1〜2の不織布に比べて、起毛している繊維の量(本数)が多く、ふっくら感の向上が期待できる。ふっくら感としなやかさの両立は、実施例1〜4の不織布が、比較例1〜3の不織布に比べて、肌触りの官能評価が高いことからも実証されている。また、比較例5はコポリプロピレンでできているために肌触りはよいが同じ樹脂でできているためにネックインが大きく、実施例1〜4の不織布は、ネックイン量が少なく、高速生産が期待できる。
1 不織布
2A,2B 長繊維
20 起毛繊維
20a 一端部
20b 自由端部
21 自由端部が太くなっている繊維
22 自由端部が太くなっていない繊維
23 ループ状の繊維
4 熱融着部
100 製造装置
5 原料不織布形成部
51 第1ウェブ形成装置
52 第2ウェブ形成装置
53、54 エンボスローラ
531 凸部
6 起毛加工部
61 凸ローラ
611 凸部
7 巻取ローラ
10 原料不織布
104 測定サンプル
105 折り目
106a 2回横切る繊維
107 穴
108 仮想線
200 パンツ型使い捨ておむつ
8 吸収性本体
81 吸収体
82 表面シート
83 裏面シート
84 側方カフス
85 側方カフス形成用の弾性部材
9 外包材
91 内層シート
92 外層シート
93 ウエスト部弾性部材
94 レッグ部弾性部材
9a,9b 側縁部
9d レッグ部
A 背側領域、B 腹側領域、C 股下領域

Claims (10)

  1. スパンボンド製法で製造された原料不織布の構成繊維を起毛する起毛加工工程を有する不織布の製造方法であって、
    前記原料不織布は、第一面と第二面とを有し、相対的に低伸度の長繊維から形成された低伸度層と相対的に高伸度の長繊維から形成された高伸度層とを有し、該低伸度層及び該高伸度層を複数の熱融着部により固定して形成されており、該低伸度層が前記第一面側の表面に露出している不織布であり、
    前記低伸度の長繊維の伸度と前記高伸度の長繊維の伸度との伸度の差は、50パーセントポイント以上の差があり、
    前記起毛加工工程においては、凸部を有する凸部材を用いて、前記原料不織布の表面に位置する前記低伸度層の前記長繊維の一部を破断して一端部のみが前記熱融着部により固定された起毛繊維を形成する不織布の製造方法。
  2. 前記原料不織布は、前記低伸度層の第二面側の表面に露出して前記高伸度層が配されている請求項1に記載の不織布の製造方法。
  3. 前記凸部材は、周面に前記凸部を有する凸ローラである請求項1又は2に記載の不織布の製造方法。
  4. 前記低伸度の長繊維は、ホモポリプロピレンを主とする樹脂から形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の不織布の製造方法。
  5. 前記高伸度の長繊維は、コポリプロピレンを含む樹脂から形成されている請求項1〜4の何れか1項に記載の不織布の製造方法。
  6. 前記高伸度の長繊維は、捲縮性を有している請求項1〜5の何れか1項に記載の不織布の製造方法。
  7. 前記凸部材は、周面に前記凸部を有する凸ローラであり、前記原料不織布を該凸ローラの接触面に60°以上の抱き角で接触させる請求項1〜6の何れか1項に記載の不織布の製造方法。
  8. 前記凸部材は、周面に前記凸部を有する凸ローラであり、該凸ローラに搬送される前記原料不織布の張力が80N/m以上である請求項1〜7の何れか1項に記載の不織布の製造方法。
  9. 前記起毛加工工程の後、更に凸部を有する別の凸部材を用いて起毛する請求項1〜8の何れか1項に記載の不織布の製造方法。
  10. 前記凸部材の表面は、ISO1997に準拠して測定した最大粗さ(Rz)が80μm以上である請求項1〜9の何れか1項に記載の不織布の製造方法。
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