JP6546051B2 - 金属表面処理用アクリル樹脂エマルション及びその製造方法 - Google Patents
金属表面処理用アクリル樹脂エマルション及びその製造方法Info
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Description
特許文献2には、リン酸金属塩と、水酸基価が5mg〜40mgKOH/gであって、粒子径が0.01μm〜0.5μmの有機樹脂エマルションと、を含む電磁鋼板絶縁被膜形成用の処理液が開示されている。
一方、特許文献2に記載された有機樹脂エマルションのように、カルボキシ基を有しない樹脂エマルションもある。しかし、親水性基として水酸基のみを有する樹脂エマルションは、金属塩に由来する金属イオンによってミセルが破壊されるという現象が生じる場合があり、処理液の安定性の観点からは、その使用は好ましいとはいえない。
<1> (メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する疎水性構造単位(A)と、
カルボキシ基以外の親水性基及びエチレン性不飽和二重結合を有する親水性単量体に由来する親水性構造単位(B)と、
オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が20以下であるアニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(C)と、
オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が25以上であるノニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(D)と、
を有し、かつ、酸価が8.0mgKOH/g以下であるエマルション粒子が、水性媒体中に分散されている金属表面処理用アクリル樹脂エマルション。
<3> 上記構造単位(C)の割合が、上記エマルション粒子を形成する全ての単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して、5質量部〜10質量部であり、かつ、上記構造単位(D)の割合が、上記エマルション粒子を形成する全ての単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して、10質量部〜30質量部である<1>又は<2>に記載の金属表面処理用アクリル樹脂エマルション。
<4> 上記エマルション粒子が、オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が20以下であるノニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(E)を更に有する<1>〜<3>のいずれか1つに記載の金属表面処理用アクリル樹脂エマルション。
<6> 上記構造単位(C)の割合が、上記エマルション粒子を形成する全ての単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して、5質量部〜10質量部であり、上記構造単位(D)の割合が、上記エマルション粒子を形成する全ての単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して、10質量部〜20質量部であり、かつ、上記構造単位(E)の割合が、上記エマルション粒子を形成する全ての単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して、1質量部〜10質量部である<4>又は<5>に記載の金属表面処理用アクリル樹脂エマルション。
<7> 電磁鋼板処理に用いられる<1>〜<6>のいずれか1つに記載の金属表面処理用アクリル樹脂エマルション。
少なくとも、(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる疎水性単量体(a)と、カルボキシ基以外の親水性基及びエチレン性不飽和二重結合を有する親水性単量体(b)と、を重合させて、酸価が8.0mgKOH/g以下であるエマルション粒子を得る乳化重合工程を有する金属表面処理用アクリル樹脂エマルションの製造方法。
本明細書において、金属表面処理用アクリル樹脂エマルション中の各成分の量は、各成分に該当する物質が金属表面処理用アクリル樹脂エマルション中に複数存在する場合には、特に断らない限り、金属表面処理用アクリル樹脂エマルション中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本発明の金属表面処理用アクリル樹脂エマルション(以下、「アクリル樹脂エマルション」ともいう。)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する疎水性構造単位(A)(以下、「構造単位(A)」ともいう。)と、カルボキシ基以外の親水性基及びエチレン性不飽和二重結合を有する親水性単量体に由来する親水性構造単位(B)(以下、「構造単位(B)」ともいう。)と、オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が20以下であるアニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(C)(以下、「構造単位(C)」ともいう。)と、オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が25以上であるノニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(D)(以下、「構造単位(D)」ともいう。)と、を有し、かつ、酸価が8.0mgKOH/g以下であるエマルション粒子が、水性媒体中に分散されているアクリル樹脂エマルションである。
これに対して、本発明のアクリル樹脂エマルションは、構造単位(A)と構造単位(B)と構造単位(C)と構造単位(D)とを有し、かつ、酸価が8.0mgKOH/g以下であるエマルション粒子が、水性媒体中に分散されている態様であることにより、優れた安定性を示す。
本発明のアクリル樹脂エマルションが、このような効果を奏し得る理由については明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
形成される水和層の厚みは、構造単位(C)及び構造単位(D)が有するオキシアルキレン基の平均付加モル数によって決まる。本発明におけるエマルション粒子の水和層は、平均付加モル数が25以上のオキシアルキレン基を有するノニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(D)によって形成されているため厚い。
アニオン性基に由来するアニオン(例えば、SO3 −)がエマルション粒子の表面に露出すると、金属イオンの影響を受けるため、凝集等が生じ易い。本発明におけるエマルション粒子の水和層は、平均付加モル数が25以上のオキシアルキレン基を有するノニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(D)と、平均付加モル数が20以下のオキシアルキレン基を有するアニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(C)と、によって形成されているため、構造単位(C)の有するアニオン性基がエマルション粒子の表面に露出せず、また、密度が高い。
本発明におけるエマルション粒子は、表面に金属イオンの影響を受け易いアニオン性基が露出しない、密で厚みのある水和層が形成されているので、金属イオンによるミセルの破壊や凝集が生じ難く、安定性に優れると考えられる。
エマルション粒子は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する疎水性構造単位(A)と、カルボキシ基以外の親水性基及びエチレン性不飽和二重結合を有する親水性単量体に由来する親水性構造単位(B)と、オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が20以下であるアニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(C)と、オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が25以上であるノニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(D)と、を有し、かつ、酸価が8.0mgKOH/g以下である。
エマルション粒子は、アクリル樹脂エマルションの安定性をより向上させる観点から、構造単位(A)、構造単位(B)、構造単位(C)、及び構造単位(D)以外に、オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が20以下であるノニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(以下、「構造単位(E)ともいう。)を更に有することが好ましい。
エマルション粒子におけるカルボキシ基の量は、エマルション粒子の酸価の値を指標とすることができる。
エマルション粒子の酸価は、アクリル樹脂エマルションの安定性の観点から、8.0mgKOH/g以下であり、好ましくは7.0mgKOH/g以下であり、より好ましくは6.0mgKOH/g以下であり、更に好ましくは3.0mgKOH/g以下であり、更に好ましくは1.0mgKOH/g以下であり、特に好ましくは0mgKOH/gである。
(1)200mLのビーカーに、アクリル樹脂エマルション約20gを精秤する。
(2)脱イオン水を用いて、アクリル樹脂エマルションを100mL〜150mLに希釈する。
(3)希釈したアクリル樹脂エマルションに、カチオン交換樹脂〔アンバーライト(登録商標)IR−120B〕を適量加え、得られた混合物のpHを3以下に調整する。
(4)100目濾布(目開き:224μm)を用いて、pHを調整した混合物からカチオン交換樹脂を取り除き、脱イオン水を用いて、洗液の濁りが無くなるまで水洗し、濾液を回収する。なお、洗液の濁りの有無は、目視にて判断する。
(5)水酸化ナトリウム溶液(0.5mol/L、容量分析用規定液)を用いて、回収した濾液の電導度滴定を行い、滴定量を測定する。
(6)下記の式により、酸価を算出する。なお、式中の0.5は、水酸化ナトリウム溶液の濃度(mol/L)を示す。
酸価(mgKOH/g)=(0.5×f×X×56.1)/(W×NV)
f:0.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液の力価
X:滴定量(mL)
W:アクリル樹脂エマルションの採取量(g)
NV:アクリル樹脂エマルション1g当たりの不揮発分(g)
構造単位(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する疎水性構造単位である。(メタ)アクリル酸エステル単量体の種類は、疎水性単量体であれば、特に制限されない。
本明細書において「疎水性単量体」とは、後述する親水性基及びカルボキシ基を有さない単量体を意味する。
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、フッ素含有アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、エマルション粒子の硬さの観点から、アルキル(メタ)アクリレート及びアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、構造単位(A)の割合は、例えば、アクリル樹脂エマルションの安定性の観点から、エマルション粒子を形成する全ての単量体に由来する構造単位の合計質量に対して、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が更に好ましい。
構造単位(B)は、カルボキシ基以外の親水性基及びエチレン性不飽和二重結合を有する親水性単量体に由来する親水性構造単位である。
カルボキシ基以外の親水性基及びエチレン性不飽和二重結合を有する親水性単量体の種類は、特に制限されない。
解離性基としては、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
ノニオン性基としては、水酸基、窒素原子が無置換のアミド基、アルキレンオキシド重合体(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等)に由来する基、糖アルコールに由来する基などが挙げられる。
これらの中でも、カルボキシ基以外の親水性基としては、アクリル樹脂エマルションの安定性の観点から、水酸基が好ましい。
親水性単量体が有するカルボキシ基以外の親水性基の数は、1つであっても、複数であってもよい。
エチレン性不飽和二重結合としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、アリルオキシ基、スチリル基などが挙げられる。これらの中でも、エチレン性不飽和二重結合としては、例えば、反応性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
親水性単量体が有するエチレン性不飽和二重結合の数は、1つであっても、複数であってもよく、1つであることが好ましい。
アルキル部位の炭素数は、1〜25の範囲が好ましく、1〜3の範囲がより好ましい。アルキル部位の炭素数が上記の範囲内であると、親水性基による安定性の寄与が十分であり、アクリル樹脂エマルションの安定性に優れる。
これらの中でも、カルボキシ基以外の親水性基及びエチレン性不飽和二重結合を有する親水性単量体としては、他の単量体との相溶性及び共重合性の観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
また、構造単位(B)の割合は、例えば、被膜の親水性が高くなりすぎることを抑制する観点から、エマルション粒子を形成する全ての単量体に由来する構造単位の合計質量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
エマルション粒子は、構造単位(A)及び構造単位(B)以外の単量体に由来する構造単位(以下、「その他の構造単位」ともいう。)を有していてもよい。
この場合、構造単位(A)と構造単位(B)との合計の割合は、エマルション粒子を形成する全ての単量体に由来する構造単位の合計質量に対して、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
その他の構造単位を構成する単量体としては、芳香族モノビニル〔スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエン等〕、シアン化ビニル〔アクリロニトリル、メタクリロニトリル等〕、ビニルエステル〔ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等〕、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
構造単位(C)は、オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が20以下であるアニオン型反応性界面活性剤(以下、「アニオン型反応性界面活性剤(c)」ともいう。)に由来する構造単位である。
アニオン型反応性界面活性剤(c)は、オキシアルキレン基、アニオン性基、及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が20以下であれば、その種類は制限されない。
これらの中でも、オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基が好ましい。オキシエチレン基は、他のオキシアルキレン基よりも親水性が高く、樹脂粒子の表面に密度の高い水和層を形成できるため、アクリル樹脂エマルションの安定性を更に向上できる。
オキシアルキレン基の平均付加モル数は、アクリル樹脂エマルションの安定性の観点から、5〜20が好ましく、5〜10がより好ましい。
アニオン性基としては、硫酸エステル塩基及びリン酸エステル塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、硫酸エステル塩基がより好ましい。
これらの中でも、エチレン性不飽和二重結合としては、イソプロペニル基、1−プロペニル基、アリルオキシ基、及びスチリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
また、構造式(1)において、n1は、オキシエチレン単位の平均繰り返し数(即ち、オキシエチレン基の平均付加モル数)を表す。n1は、1〜20の整数であり、好ましくは5〜20の整数である。
また、構造式(2)において、n2は、オキシエチレン単位の平均繰り返し数(即ち、オキシエチレン基の平均付加モル数)を表す。n2は、1〜20の整数であり、好ましくは5〜20の整数である。
また、構造単位(C)の割合は、例えば、得られる被膜の堅牢性の観点から、エマルション粒子を形成する全ての単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
構造単位(D)は、オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が25以上であるノニオン型反応性界面活性剤(以下、ノニオン型反応性界面活性剤(d)」ともいう。)に由来する構造単位である。
ノニオン型反応性界面活性剤(d)は、オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が25以上であれば、その種類は制限されない。
これらの中でも、オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基が好ましい。オキシエチレン基は、他のオキシアルキレン基よりも親水性が高く、樹脂粒子の表面に密度の高い水和層を形成できるため、アクリル樹脂エマルションの安定性を更に向上できる。
オキシアルキレン基の平均付加モル数は、アクリル樹脂エマルションの安定性の観点から、25〜50が好ましく、25〜30がより好ましい。
これらの中でも、エチレン性不飽和二重結合としては、イソプロペニル基、1−プロペニル基、アリルオキシ基、及びスチリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
また、構造式(3)において、n3は、オキシエチレン単位の平均繰り返し数(即ち、オキシエチレン基の平均付加モル数)を表す。n3は、25〜100の整数であり、好ましくは25〜50の整数である。
また、構造式(4)において、n4は、オキシエチレン単位の平均繰り返し数(即ち、オキシエチレン基の平均付加モル数)を表す。n4は、25〜100の整数であり、好ましくは25〜50の整数である。
また、構造式(5)において、m1は、オキシブチレン単位の平均繰り返し数(即ち、オキシブチレン基の平均付加モル数)を表し、n5は、オキシエチレン単位の平均繰り返し数(即ち、オキシエチレン基の平均付加モル数)を表す。m1+n5は、25〜100の整数であり、好ましくは25〜50の整数である。
また、構造単位(D)の割合は、例えば、得られる被膜の堅牢性の観点から、エマルション粒子を形成する全ての単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
エマルション粒子は、オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が20以下であるノニオン型反応性界面活性剤(以下、「ノニオン型反応性界面活性剤(e)」ともいう。)に由来する構造単位(E)を更に有することが好ましい。
オキシアルキレン鎖の短い構造単位(E)を更に有するエマルション粒子では、樹脂粒子の表面に水和層がより高い密度で形成されるため、金属イオンによるミセルの破壊が生じ難く、アクリル樹脂エマルションの安定性が更に向上する。
ノニオン型反応性界面活性剤(e)は、オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が20以下であれば、その種類は制限されない。
これらの中でも、オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基が好ましい。オキシエチレン基は、他のオキシアルキレン基よりも親水性が高く、樹脂粒子の表面に密度の高い水和層を形成できるため、アクリル樹脂エマルションの安定性が更に向上する。
オキシアルキレン基の平均付加モル数は、アクリル樹脂エマルションの安定性の観点から、5〜20が好ましく、5〜10がより好ましい。
これらの中でも、エチレン性不飽和二重結合としては、イソプロペニル基、1−プロペニル基、アリルオキシ基、及びスチリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
また、構造式(6)において、n6は、オキシエチレン単位の平均繰り返し数(即ち、オキシエチレン基の平均付加モル数)を表す。n6は、1〜20の整数であり、好ましくは5〜20の整数である。
また、構造式(7)において、n7は、オキシエチレン単位の平均繰り返し数(即ち、オキシエチレン基の平均付加モル数)を表す。n7は、1〜20の整数であり、好ましくは5〜20の整数である。
また、構造式(5)において、m2は、オキシブチレン単位の平均繰り返し数(即ち、オキシブチレン基の平均付加モル数)を表し、n8は、オキシエチレン単位の平均繰り返し数(即ち、オキシエチレン基の平均付加モル数)を表す。m2+n8は、1〜20の整数であり、好ましくは5〜20の整数である。
また、構造単位(E)の割合は、例えば、得られる被膜の堅牢性の観点から、エマルション粒子を形成する全ての単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して、10質量部以下が好ましい。
水性媒体としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択できる。
水性媒体としては、水、水とアルコール系溶剤との混合液等が挙げられる。アクリル樹脂エマルションの安定性の観点からは、水性媒体としては、水が好ましい。
アクリル樹脂エマルション中の水性媒体の含有量は、特に制限されず、好ましくは20質量%〜80質量%であり、より好ましくは30質量%〜70質量%であり、更に好ましくは50質量%〜60質量%である。
本発明のアクリル樹脂エマルションは、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、上記で説明した以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、酸化防止剤、帯電防止剤、pH調整剤、消泡剤等の各種添加剤が挙げられる。
エマルション粒子の平均粒子径は、分散性の観点から、50nm〜300nmが好ましく、80nm〜200nmがより好ましく、100nm〜120nmが更に好ましい。
本明細書中において「エマルション粒子の平均粒子径」は、日本化学会編「新実験化学講座4 基礎技術3 光(II)」第725頁〜第741頁(昭和51年7月20日丸善(株)発行)に記載された動的光散乱法により測定された値である。具体的な方法は、以下のとおりである。
アクリル樹脂エマルションを蒸留水で希釈し、十分に攪拌混合した後、10mm角のガラスセル中にパスツールピペットを用いて5ml採取し、これを動的光散乱光度計「ゼータサイザー1000HS」〔シスメックス(株)製〕にセットする。減衰率のCount Rateが150Cps〜200Cpsになるように、アクリル樹脂エマルションの希釈液の濃度を調整した後、測定温度25℃±1℃、及び光散乱角90°の条件で測定した結果をコンピュータ処理することで、アクリル樹脂エマルション中のエマルション粒子の平均粒子径を求める。
本発明のアクリル樹脂エマルションは、例えば、電磁鋼板処理に好適に用いることができる。
電磁鋼板の表面には、防錆等を目的として、クロム酸塩、リン酸金属塩(リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛等)などを含む膜を形成させる。防錆等の機能を良好に付与するためには、電磁鋼板の表面に形成される膜が均一であることが求められる。
本発明のアクリル樹脂エマルションは、安定性に優れ、金属イオンと接触しても、エマルション粒子が金属イオンと結合し難く、凝集や異物の発生が生じ難いため、アクリル樹脂エマルションを、クロム酸塩、リン酸金属塩等のバインダーとして用いた処理液によれば、均一な被膜を形成できる。
すなわち、本発明のアクリル樹脂エマルションは、クロム酸塩やリン酸金属塩等の金属塩を多量に配合しても、凝集や異物の発生が生じ難く、均一な被膜の形成が可能であるため、金属塩を高濃度で含む電磁鋼板処理の処理液に好適に用いることができる。
本発明の金属表面処理用アクリル樹脂エマルションの製造方法は、上述のアクリル樹脂エマルションを製造できればよく、特に制限されるものではない。本発明のアクリル樹脂エマルションを製造する方法としては、以下で説明する、本実施形態のアクリル樹脂エマルションの製造方法が好ましい。
なお、各工程で用いる成分の具体例、及び好ましい態様については、上述のアクリル樹脂エマルションの項に記載したとおりであるため、ここでは説明を省略する。
乳化重合工程は、アニオン型反応性界面活性剤(c)とノニオン型反応性界面活性剤(d)とを含む反応性界面活性剤の存在下、少なくとも、疎水性単量体(a)と親水性単量体(b)とを重合させて、酸価が8.0mgKOH/g以下であるエマルション粒子を得る工程である。
乳化重合工程では、少なくとも、疎水性単量体(a)及び親水性単量体(b)と、アニオン型反応性界面活性剤(c)及びノニオン型反応性界面活性剤(d)とが共重合して、アニオン型反応性界面活性剤(c)及びノニオン型反応性界面活性剤(d)が、少なくとも、疎水性単量体(a)及び親水性単量体(b)の重合により形成された樹脂粒子の表面に固定化される。固定化されたアニオン型反応性界面活性剤(c)及びノニオン型反応性界面活性剤(d)は、樹脂粒子の表面に水和層を形成し、エマルション粒子となる。ここで、水和層の厚みは、反応性界面活性剤の有するオキシアルキレン基の平均付加モル数によって決まる。
乳化重合工程では、平均付加モル数が25以上のオキシアルキレン基を有するノニオン型反応性界面活性剤(d)を用いることで、厚い水和層を形成できる。また、アニオン性基がエマルション粒子の表面に露出すると、金属イオンの影響を受けるため、凝集等が生じ易いが、平均付加モル数が25以上のオキシアルキレン基を有するノニオン型反応性界面活性剤(d)と、平均付加モル数が20以下のオキシアルキレン基を有するアニオン型反応性界面活性剤(c)と、を併用することで、アニオン型反応性界面活性剤(c)が有するアニオン性基に由来するアニオン(例えば、SO3 −)をエマルション粒子の表面に露出させることなく、水和層を密に形成できる。即ち、乳化重合工程によれば、樹脂粒子の表面に、密で厚みのある水和層が形成されたエマルション粒子が得られる。このような水和層を有するエマルション粒子は、金属塩に由来する金属イオンによってミセルの破壊や凝集が生じ難いため、安定性に優れると考えられる。
これらの中でも、重合方法としては、工業的生産性の観点から、乳化モノマー滴下法が好ましい。
親水性単量体(b)の使用量は、得られる被膜の親水性、及びアクリル樹脂エマルションの安定性の観点から、原料である単量体の総量100質量部に対して、好ましくは1質量部〜50質量部であり、より好ましくは5質量部〜30質量部であり、更に好ましくは10質量部〜20質量部である。
乳化重合工程において、上述のその他の単量体を使用する場合、その他の単量体の使用量は、得られる被膜の親水性の観点から、原料である単量体の総量100質量部に対して、好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは40質量部以下であり、更に好ましくは30質量部以下である。
ノニオン型反応性界面活性剤(d)の使用量は、得られる被膜の堅牢性、及びアクリル樹脂エマルションの安定性の観点から、原料である単量体の総量100質量部に対して、好ましくは1質量部〜50質量部であり、より好ましくは10質量部〜30質量部である。
乳化重合工程において、上述のノニオン型反応性界面活性剤(e)を使用する場合、ノニオン型反応性界面活性剤(e)の使用量は、得られる被膜の堅牢性、及びアクリル樹脂エマルションの安定性の観点から、原料である単量体の総量100質量部に対して、好ましくは1質量部〜10質量部であり、より好ましくは3質量部〜8質量部である。
重合開始剤としては、通常の乳化重合に使用できるものであれば、特に制限なく、使用することができる。重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物、過酸化水素などが挙げられる。
乳化重合工程において重合開始剤を用いる場合、重合開始剤を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
乳化重合工程では、上記の重合開始剤とともに、還元剤を用いることもできる。
還元剤としては、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、チオグリコール酸、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖等が挙げられる。
乳化重合工程において還元剤を用いる場合、還元剤を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施例において製造したアクリル樹脂エマルション中のエマルション粒子の平均粒子径は、日本化学会編「新実験化学講座4 基礎技術3 光(II)」第725頁〜第741頁(昭和51年7月20日丸善(株)発行)に記載された動的光散乱法により測定した。具体的な方法は、以下のとおりである。
アクリル樹脂エマルションを蒸留水で希釈し、十分に攪拌混合した後、10mm角のガラスセル中にパスツールピペットを用いて5ml採取し、これを動的光散乱光度計「ゼータサイザー1000HS」〔シスメックス(株)製〕にセットした。減衰率のCount Rateが150Cps〜200Cpsになるように、アクリル樹脂エマルションの希釈液の濃度を調整した後、測定温度25℃±1℃、及び光散乱角90°の条件で測定した結果をコンピュータ処理することで、エマルション粒子の平均粒子径を求めた。
本実施例において製造したアクリル樹脂エマルション中のエマルション粒子の酸価は、下記の(1)〜(6)に従って求めた。
(1)200mLのビーカーに、アクリル樹脂エマルション約20gを精秤した。
(2)脱イオン水を用いて、アクリル樹脂エマルションを100mL〜150mLに希釈した。
(3)希釈したアクリル樹脂エマルションに、カチオン交換樹脂〔アンバーライト(登録商標)IR−120B〕を適量加え、得られた混合物のpHを3以下に調整した。
(4)100目濾布(目開き:224μm)を用いて、pHを調整した混合物からカチオン交換樹脂を取り除き、脱イオン水を用いて、洗液の濁りが無くなるまで水洗し、濾液を回収した。なお、洗液の濁りの有無は、目視にて判断する。
(5)水酸化ナトリウム溶液(0.5mol/L、容量分析用規定液)を用いて、回収した濾液の電導度滴定を行い、滴定量を測定した。
(6)下記の式により、酸価を算出した。なお、式中の0.5は、水酸化ナトリウム溶液の濃度(mol/L)を示す。
酸価(mgKOH/g)=(0.5×f×X×56.1)/(W×NV)
f:0.5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液の力価
X:滴定量(単位:mL)
W:アクリル樹脂エマルションの採取量(g)
NV:アクリル樹脂エマルション1g当たりの不揮発分(g)
〔実施例1〕
温度計、攪拌棒、還流冷却器、及び滴下ロートを備えた反応容器内に、脱イオン交換水43.3質量部を仕込み、反応容器内を窒素置換しながら58℃に昇温させた。
一方、別の容器に、脱イオン交換水76.8質量部と、アニオン型反応性界面活性剤(c)である「アクアロン(登録商標)KH−10」[有効成分:ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸アンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:10〕、有効成分:99質量%、第一工業製薬(株)製]5.1質量部(有効成分:5.0質量部)と、ノニオン型反応性界面活性剤(d)である「アデカリアソープ(登録商標)ER−30」[有効成分:ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:30〕、有効成分:65質量%、(株)ADEKA製]17.5質量部(有効成分:11.4質量部)と、ノニオン型反応性界面活性剤(e)である「アデカリアソープ(登録商標)ER−10」[有効成分:ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:10〕、有効成分:100質量%、(株)ADEKA製]5.7質量部と、を入れて攪拌した後、更にアクリル酸ブチル〔BA:butyl acrylate、疎水性単量体(a)〕33.7質量部と、メタクリル酸メチル〔MMA:methyl methacrylate、疎水性単量体(a)〕23.3質量部と、エチレングリコールジメタクリレート〔EGDM:ethylene glycol dimethacrylate、疎水性単量体(a)〕3.0質量部と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル〔2HEMA:2-hydroxyethyl methacrylate、親水性単量体(b)〕)10.0質量部と、スチレン(St、その他の単量体)30.0質量部と、を入れて攪拌することで、プレエマルションを調製した。
次に、反応容器の内温を58℃に保ちながら、上記にて調製したプレエマルションの内の3質量%(6.2質量部)を反応容器内に添加した後、10質量%過硫酸アンモニウム水溶液0.14質量部及び10質量%メタ重亜硫酸ナトリウム水溶液0.14質量部を加え、乳化重合反応を開始させた。
反応容器の内温が62℃に達した後、上記にて調製したプレエマルションの残り全量と、2.5質量%過硫酸アンモニウム水溶液(重合開始剤)0.36質量部と、2.5質量%メタ重亜硫酸ナトリウム水溶液(還元剤)0.36質量部と、を4時間にわたって均一に逐次添加し、乳化重合させた。逐次添加終了後、得られた乳化重合物を62℃で2時間熟成させてから室温まで冷却し、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、42質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、99.7nmであり、酸価は、0mgKOH/gであった。
実施例1において、アニオン型反応性界面活性剤(c)として、「アクアロン(登録商標)KH−10」5.1質量部(有効成分:5.0質量部)の代わりに、「アデカリアソープ(登録商標)SR−20」[有効成分:ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸アンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:20〕、有効成分:100質量%、(株)ADEKA製]5.0質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、42質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、123.4nmであり、酸価は、0mgKOH/gであった。
実施例1において、ノニオン型反応性界面活性剤(d)として、「アデカリアソープ(登録商標)ER−30」17.5質量部(有効成分:11.4質量部)の代わりに、「アクアロン(登録商標)RN−50」[有効成分:ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:50〕、有効成分:65質量%、第一工業製薬(株)製]17.5質量部(有効成分:11.4質量部)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、42質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、125.7nmであり、酸価は、0mgKOH/gであった。
実施例1において、ノニオン型反応性界面活性剤(d)として、「アデカリアソープ(登録商標)ER−30」17.5質量部(有効成分:11.4質量部)の代わりに、「ラテムル(登録商標)PD−430S」[有効成分:ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)/オキシブチレン基(BO)、平均付加モル数:30〕、有効成分:25質量%、花王(株)製]45.6質量部(有効成分:11.4質量部)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、40質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、116.0nmであり、酸価は、0mgKOH/gであった。
アニオン型反応性界面活性剤(c)である「アクアロン(登録商標)KH−10」の使用量を、5.1質量部(有効成分:5.0質量部)から2.5質量部(有効成分:2.5質量部)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、42質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、140.9nmであり、酸価は、0mgKOH/gであった。
ノニオン型反応性界面活性剤(d)である「アデカリアソープ(登録商標)ER−30」の使用量を、17.5質量部(有効成分:11.4質量部)から8.8質量部(有効成分:5.7質量部)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、41質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、122.0nmであり、酸価は、0mgKOH/gであった。
実施例1において、ノニオン型反応性界面活性剤(e)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、41質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、122.7nmであり、酸価は、0mgKOH/gであった。
アクリル酸ブチル(BA)の使用量を、33.7質量部から13.7質量部に変更し、かつ、スチレン(St)の使用量を、30.0質量部から50.0質量部に変更したこと以外は、実施例7と同様にして、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、41質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、110.8nmであり、酸価は、0mgKOH/gであった。
アクリル酸ブチル(BA)の使用量を、33.7質量部から48.7質量部に変更し、かつ、スチレン(St)の使用量を、30.0質量部から15.0質量部に変更したこと以外は、実施例7と同様にして、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、41質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、102.2nmであり、酸価は、0mgKOH/gであった。
メタクリル酸メチル(MMA)の使用量を、23.3質量部から53.3質量部に変更し、かつ、スチレン(St)の使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、42質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、115.5nmであり、酸価は、0mgKOH/gであった。
アクリル酸ブチル(BA)の使用量を、33.7質量部から34.1質量部に変更し、メタクリル酸メチル(MMA)の使用量を23.3質量部から21.9質量部に変更し、メタクリル酸(MAA、その他の単量体)を1.0質量部使用し、アニオン型反応性界面活性剤(c)である「アクアロン(登録商標)KH−10」の使用量を、5.1質量部(有効成分:5.0質量部)から10.1質量部(有効成分:10.0質量部)に変更し、かつ、ノニオン型界面活性剤(d)である「アデカリアソープ(登録商標)ER−30」の使用量を、17.5質量部(有効成分:11.4質量部)から8.8質量部(有効成分:5.7質量部)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、42質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、120.0nmであり、酸価は、6.5mgKOH/gであった。
実施例1において、アニオン型反応性界面活性剤(c)である「アクアロン(登録商標)KH−10」5.1質量部(有効成分:5.0質量部)の代わりに、アニオン型反応性界面活性剤(1)に該当しないアニオン型反応性界面活性剤である「アデカリアソープ(登録商標)SR−3025」[有効成分:ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸アンモニウム〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:30〕、有効成分:25質量%、(株)ADEKA製]20質量部(有効成分:5.0質量部)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、42質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、124.2nmであり、酸価は、0mgKOH/gであった。
実施例1において、アニオン型反応性界面活性剤(c)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、41質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、68.3nmであり、酸価は、0mgKOH/gであった。
アニオン型反応性界面活性剤(c)である「アクアロン(登録商標)KH−10」の使用量を、5.1質量部(有効成分:5.0質量部)から20.2質量部(有効成分:20.0質量部)に変更し、かつ、ノニオン型反応性界面活性剤(d)及びノニオン型反応性界面活性剤(e)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、42質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、85.7nmであり、酸価は、0mgKOH/gであった。
実施例1において、アニオン型反応性界面活性剤(c)、ノニオン型反応性界面活性剤(d)、及びノニオン型反応性界面活性剤(e)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、38質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、412.2nmであり、酸価は、0mgKOH/gであった。
実施例1において、アニオン型反応性界面活性剤(c)である「アクアロン(登録商標)KH−10」5.1質量部(有効成分:5.0質量部)の代わりに、アニオン型非反応性界面活性剤である「ハイテノール(登録商標)NF−13」[有効成分:ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:13〕、有効成分:98質量%、第一工業製薬(株)製]1.1質量部(有効成分:1.1質量部)を用い、ノニオン型反応性界面活性剤(d)である「アデカリアソープ(登録商標)ER−30」17.5質量部(有効成分:11.4質量部)の代わりに、ノニオン型非反応性界面活性剤である「ノイゲン(登録商標)EM−250」[有効成分:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:50〕、有効成分:100質量%、第一工業製薬(株)製]4.4質量部を用い、かつ、ノニオン型反応性界面活性剤(e)である「アデカリアソープ(登録商標)ER−10」5.7質量部の代わりに、ノニオン型非反応性界面活性剤である「ノイゲン(登録商標)EA−130T」[有効成分:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル〔オキシアルキレン基の種類:オキシエチレン基(EO)、平均付加モル数:20〕、有効成分:100質量%、第一工業製薬(株)製〕10.3質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、42質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、113.6nmであり、酸価は、0mgKOH/gであった。
アクリル酸ブチルの(BA)の使用量を、34.1質量部から35.7質量部に変更し、メタクリル酸メチル(MMA)の使用量を21.9質量部から16.3質量部に変更し、かつ、メタクリル酸(MAA)の使用量を1.0質量部から5.0質量部に変更したこと以外は、実施例11と同様にして、pH2.3のアクリル樹脂エマルションを得た。得られたアクリル樹脂エマルションの固形分は、42質量%であった。また、エマルション粒子の平均粒子径は、118.0nmであり、酸価は、32.6mgKOH/gであった。
実施例1〜実施例11及び比較例1〜比較例6のアクリル樹脂エマルションについて、以下の方法により安定性の評価を行った。
アクリル樹脂エマルション5質量部と、リン酸アルミニウム50質量%水溶液10質量部と、グリセリン1質量部と、を試薬瓶に量り取り、試薬瓶を上下に10回振とうさせた。振とう後の液の状態を目視にて観察し、下記の評価基準に従って、アクリル樹脂エマルションの安定性を評価した。結果を表1及び2に示す。
なお、実用上許容できるものは、「AA」、「A」、及び「B」に分類されるものである。
AA:異物や塊が認められず、また、分離も生じていない。
A:若干の異物が認められるが、凝集や分離は生じていない。
B:多量の異物が認められ、経時で分離が生じた。
C:多量の塊が認められ、経時で流動性を失った(ゲル化した)。
表1及び表2中、反応性界面活性剤の「内容」の欄には、反応性界面活性剤が有するオキシアルキレン基の種類及び平均付加モル数を示す。
表1及び表2中、「−」は、該当成分を配合していないことを意味する。
ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(D)を有するが、アニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(C)を有しないアクリル樹脂エマルション(例えば、比較例2)、アニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(C)を有するが、ノニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(D)を有しないアクリル樹脂エマルション(例えば、比較例3)、及びアニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(C)及びノニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(D)の両方を有しないアクリル樹脂エマルション(例えば、比較例4)は、いずれも安定性が悪かった。
反応性界面活性剤に由来する構造単位の代わりに、非反応性界面活性剤に由来する構造単位を有するアクリル樹脂エマルション(例えば、比較例5)は、安定性が悪かった。
エマルション粒子の酸価が8.0mgKOH/gを超えるアクリル樹脂エマルション(例えば、比較例6)は、安定性が悪かった。
Claims (7)
- (メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する疎水性構造単位(A)と、
カルボキシ基以外の親水性基及びエチレン性不飽和二重結合を有する親水性単量体に由来する親水性構造単位(B)と、
オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が20以下であるアニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(C)と、
オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が25以上であるノニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(D)と、
オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が20以下であるノニオン型反応性界面活性剤に由来する構造単位(E)と、
を有し、かつ、酸価が8.0mgKOH/g以下であるエマルション粒子が、水性媒体中に分散されている金属表面処理用アクリル樹脂エマルション。 - 前記構造単位(C)及び前記構造単位(D)におけるオキシアルキレン基が、オキシエチレン基である請求項1に記載の金属表面処理用アクリル樹脂エマルション。
- 前記構造単位(C)の割合が、前記エマルション粒子を形成する全ての単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して、5質量部〜10質量部であり、かつ、前記構造単位(D)の割合が、前記エマルション粒子を形成する全ての単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して、10質量部〜30質量部である請求項1又は請求項2に記載の金属表面処理用アクリル樹脂エマルション。
- 前記構造単位(E)におけるオキシアルキレン基が、オキシエチレン基である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属表面処理用アクリル樹脂エマルション。
- 前記構造単位(C)の割合が、前記エマルション粒子を形成する全ての単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して、5質量部〜10質量部であり、前記構造単位(D)の割合が、前記エマルション粒子を形成する全ての単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して、10質量部〜20質量部であり、かつ、前記構造単位(E)の割合が、前記エマルション粒子を形成する全ての単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して、1質量部〜10質量部である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の金属表面処理用アクリル樹脂エマルション。
- 電磁鋼板処理に用いられる請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の金属表面処理用アクリル樹脂エマルション。
- オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が20以下であるアニオン型反応性界面活性剤(c)と、オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が25以上であるノニオン型反応性界面活性剤(d)と、オキシアルキレン基及びエチレン性不飽和二重結合を有し、かつ、オキシアルキレン基の平均付加モル数が20以下であるノニオン型反応性界面活性剤(e)と、を含む反応性界面活性剤の存在下、
少なくとも、(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる疎水性単量体(a)と、カルボキシ基以外の親水性基及びエチレン性不飽和二重結合を有する親水性単量体(b)と、を重合させて、酸価が8.0mgKOH/g以下であるエマルション粒子を得る乳化重合工程を有する金属表面処理用アクリル樹脂エマルションの製造方法。
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