JP4230817B2 - カチオン性重合体エマルション及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はカチオン性重合体エマルション及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カチオン性重合体エマルションは、アニオン性の材料に対する吸着能を有する。このことから、例えばカチオン性重合体エマルションをアニオン性の染料で染色してインクとする、あるいはインクジェット記録用紙に代表される被印刷物にカチオン性重合体エマルションを存在させ、アニオン性染料または顔料からなる水性インクを定着させる等の用途に用いられる。
カチオン性重合体エマルションを水性媒体中で乳化重合によって製造する場合、副生成物としての水溶性重合体の生成が見られる。水溶性重合体の生成は、カチオン性単量体の親水性が高いことに由来するものであり、多くの場合、生成した水溶性重合体はカチオン性単量体を主成分とするものである。
【0003】
この水溶性重合体が共存することは、カチオン性重合体エマルションを用いた配合物の接着性や耐水性等を低下させる要因となり、また、凝集物を生成することにより配合物の安定性低下を招く要因ともなる。
したがって、カチオン性重合体エマルションを用いた配合物の性能発現を良好にするためには、カチオン性重合体エマルションに共存する水溶性重合体を低減させることが必要である。
【0004】
そこで、特許文献1では、有機溶剤中で自己乳化型のカチオン性重合体を生成し、これを水中で乳化した後、溶剤を除去することによりカチオン性重合体エマルションを製造する方法が開示されている。この製造方法によれば、カチオン性単量体を主成分とする水溶性重合体の生成を低減させることができる。
特許文献2では、カチオン性単量体と、水への溶解度が0.1〜1%である非イオン性ビニル単量体とを、乳化剤を用いずに特定の重合開始剤を用いて重合し、重合後に副生成物として共存する水溶性重合体を分離することによってカチオン性重合体エマルションを製造する方法が開示されている。この製造方法によれば、カチオン性単量体を主成分とする水溶性重合体を除去することができる。
特許文献3では、長鎖アルキル基を持つカチオン性単量体を水性媒体中で重合することによりカチオン性重合体を製造する方法が開示されている。この製造方法によれば、カチオン基密度の高いカチオン性重合体を得ることができる。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−161409号公報
【特許文献2】
特開平11−209417号公報
【特許文献3】
特開2001−106732号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、重合体を水中で乳化した後に溶剤を除去する操作が必要であることから、操作工程は煩雑となる。また、有機溶剤を使用するため製造コストが増加する。
特許文献2に記載の発明では、重合後の分離工程が必要であることから、操作工程には煩雑さを伴う。また、製造コストの増加やエマルションの安定性の低下という問題点を有する。
また、特許文献3に記載の製造方法は溶液重合を前提とするものであり、使用するカチオン性単量体は、水性媒体に溶解するものから選定される。したがって、カチオン性重合体エマルションを得るためには特許文献1と同様に重合体を水中で乳化した後に溶剤を除去する等の操作が必要となり、操作工程が煩雑となる。
【0007】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、カチオン性重合体エマルションに共存する、カチオン性単量体を主成分とする水溶性重合体の低減を簡便な製造方法により実現すること、及び、その製造方法によって得られるカチオン性重合体エマルションを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、凝集剤用途等に従来使用されてきたカチオン性単量体とは異なり親水性が著しく低く、20℃の水に対する溶解度が60質量%未満である新規なカチオン性単量体を用いることによって、カチオン性重合体エマルションに共存するカチオン性単量体を主成分とする水溶性重合体の低減が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
さらには、このようなカチオン性単量体を使用することにより、エマルション粒子の内部までカチオン性単量体が導入され、エマルション粒子の表層部に存在するカチオン基の量が低減されることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、下記一般式で表され20℃の水に対する溶解度が60質量%未満である単量体(a)の重合体を含むこと、または、単量体(a)と、これと共重合可能な単量体(b)との共重合体を含むことを特徴とするカチオン性重合体エマルション、および、前記単量体(a)、または前記単量体(a)と前記単量体(b)を水性媒体中で乳化重合させることを特徴とするカチオン性重合体エマルションの製造方法である。
【化3】
(式中のR1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3はメチル基またはエチル基で、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。R4は炭素数1〜18のアルキル基、ベンジル基であり、AはO又はNHであり、Bは炭素数2〜6のアルキレン基であり、Xはハロゲン、BF4、CH3C6H4SO3である。)
前記単量体(a)の比率は5〜100質量%、前記単量体(b)の比率は0〜95質量%(但し、単量体(a)、(b)の合計は100質量%とする)であることが好ましい。
前記単量体(b)は、20℃の水に対する溶解度が5質量%未満である非イオン性の単量体であることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のカチオン性重合体エマルションは、下記一般式で表されるカチオン性単量体(a)または、カチオン性単量体(a)と、これと共重合可能な単量体(b)とを用いて、乳化重合を実施することにより得られる。
【化4】
(式中のR1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3はメチル基またはエチル基で、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。R4は炭素数1〜18のアルキル基、ベンジル基であり、AはO又はNHであり、Bは炭素数2〜6のアルキレン基であり、Xはハロゲン、BF4、CH3C6H4SO3である。)
【0011】
本発明で使用されるカチオン性単量体(a)は上記一般式で表される構造を有することから、カチオン性を保持し、かつラジカル重合開始剤を用いた重合反応が可能であり、重合体に対してカチオン性を付与するための単量体として使用することができる。
【0012】
本発明において使用されるカチオン性単量体(a)は、20℃の水に対する溶解度が60質量%未満、さらに好ましくは40質量%未満である化合物である。
20℃の水に対する溶解度が60質量%以上の場合、カチオン性単量体(a)の水性媒体への溶解量が多くなることにより、水性媒体中でカチオン性単量体(a)の重合が進行する可能性が増し、このことが水溶性重合体を生成させる要因となる。また、カチオン性単量体(a)の親水性が増加することにより、前記単量体(b)が形成する油滴またはミセルへのカチオン性単量体(a)の溶解性が低下し、前記単量体(b)との共重合性が低下する。
【0013】
一般に水性媒体中で乳化重合を行う場合、供給された単量体は油滴を形成しており、これが水性媒体中を拡散してミセル内で重合が進行する。このとき、使用する単量体の親水性が高ければ単量体は水性媒体に溶解してしまい、水性媒体中での重合が進行し水溶性重合体を形成することとなる。
一般にカチオン性単量体は極性の高いカチオン基を有するため、親水性が高く水性媒体に溶解してしまうので、通常の重合方法ではカチオン性の重合体エマルションを得ることは困難である。
例えばカチオン性凝集剤の原料として使用されるカチオン性単量体において、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドは20℃の水に対する溶解度が少なくとも80質量%、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドは少なくとも79質量%、メタクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライドは少なくとも60質量%、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライドは少なくとも80質量%である。これらのカチオン性単量体は水溶性重合体の製造に適しており、これらの単量体を水性媒体中で乳化重合させても、水溶性重合体の低減は期待できない。
【0014】
本発明では、20℃の水に対する溶解度が60質量%未満、さらに好ましくは40質量%未満である特殊なカチオン性単量体を選択することにより、乳化重合時のカチオン性単量体(a)の水性媒体への溶解度を下げ、水溶性重合体の生成を抑制している。また、カチオン性単量体(a)の疎水性を向上させることにより、単量体(b)に対する溶解性が向上し、これらの単量体との共重合性を高めることも可能となる。
【0015】
また一般に、カチオン性単量体を、アクリル酸エステル及び/またはスチレンで代表される単量体との共重合によりエマルション粒子に導入する方法を用いる場合、カチオン性単量体は、その親水性によりエマルション粒子の表面に分布する場合が多い。
本発明においては、疎水性の高いカチオン性単量体(a)を用いることにより、エマルション粒子の内部までカチオン性単量体を導入することが可能となり、相対的にエマルション粒子表層部のカチオン度を低減させることができる。
これにより、カチオン性の材料との共存により不安定化する材料や、凝集物を生じやすい材料との配合が可能となり、例えばインクジェット記録紙用のインク定着剤等、用途面での応用も期待できる。
【0016】
本発明で使用されるカチオン性単量体(a)としては、例えば(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムのBF4塩(20℃の水に対する溶解度が10質量%未満)、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムのBF4塩(同60質量%未満)、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルドデシルアンモニウムのCH3C6H4SO3塩(同40質量%未満)、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルドデシルアンモニウムのCH3C6H4SO3塩(同40質量%未満)、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムのCH3C6H4SO3塩(同60質量%未満)、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムのCH3C6H4SO3塩(同60質量%未満)が挙げられる。
これらの化合物の中でも、とくに(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムのBF4塩の使用が好ましい。
また、これらの中から2種以上を混合して使用することも可能である。
【0017】
本発明において、カチオン性単量体(a)は、単独で重合させて使用することが可能であり、これと共重合可能な単量体(b)と共重合させて使用することも可能である。
前記単量体(a)の比率は5〜100質量%、前記単量体(b)の比率は0〜95質量%(但し、単量体(a)、(b)の合計は100質量%とする)であることが好ましい。前記単量体(a)の比率が5質量%未満の場合、重合体に対してカチオン性を付与する効果が小さくなるため、好ましくない。
【0018】
本発明で使用される単量体(b)は、前記カチオン性単量体(a)と共重合可能な単量体であり、特に限定されるものではないが、水溶性重合体の生成を抑制するために、20℃の水に対する溶解度が5質量%未満である非イオン性の単量体であることが好ましい。
【0019】
前記単量体(b)としては、例えば、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸エステル類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;およびスチレンが挙げられる。
これらの化合物の中でも、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、スチレンの使用が好ましい。
また、これらの中から2種以上を混合して使用することも可能である。
【0020】
本発明では、カチオン性重合体エマルションの安定性を低下させず、水溶性重合体の生成を増加させない範囲で、共重合成分としてカチオン性単量体(a)、単量体(b)と共重合可能な他の単量体を使用することも可能である。
【0021】
本発明のカチオン性重合体エマルションの製造方法は、カチオン性単量体(a)または、カチオン性単量体(a)と単量体(b)とを、水性媒体中で乳化重合させるものである。乳化重合は常法によるものであり、乳化剤を用いて単量体組成物を乳化し、ラジカル重合開始剤を用いて重合反応を進行させる。
重合反応の場への単量体の供給方法は、乳化剤と水を用いて予備乳化させた単量体を水性媒体中に滴下する方法や、水性媒体中に乳化剤と単量体組成物を一括で仕込む方法などが可能であり、特に限定されるものではない。
【0022】
本発明で使用される乳化剤は、カチオン性及び/又はノニオン性及び/又は両性を示し乳化重合において従来使用されているものでよく、この中でも好ましくは、ノニオン性の乳化剤である。
カチオン性の乳化剤は4級アンモニウム塩の構造を有し、その対イオンはCl−が一般的である。Cl−を対イオンとして含むカチオン性の乳化剤は、カチオン性単量体(a)と併用した場合に、カチオン性単量体(a)との間で対イオンの交換反応を起こす。このことによりカチオン性単量体(a)の構造を変え、20℃の水に対する溶解度を増加させてしまうことから、Cl−を対イオンとして含むカチオン性の乳化剤は、本発明においては好ましくない。
カチオン性単量体(a)と同じ対イオンを持つカチオン性の乳化剤を選択して使用する場合には、この限りではない。
本発明で使用される乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンのアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンのアルキルエーテル、ノニオン性の反応性乳化剤等が挙げられる。
乳化剤は、2種以上を混合して使用することも可能である。
【0023】
本発明で使用される重合開始剤は、カチオン性及び/又はノニオン性及び/又は両性を示すものであれば特に限定されず、乳化重合において従来使用されているものでよい。
重合開始剤としては、例えば水溶性のアゾ系開始剤、油溶性のアゾ系開始剤、光重合開始剤等を挙げることができ、これらを1種単独でまたは2種以上使用することができる。
【0024】
本発明のカチオン性重合体エマルションの製造方法において、上記した以外の条件は特に限定されるものではない。
また、本発明のカチオン性重合体エマルションには、必要に応じてさらに重合禁止剤、キレート剤、連鎖移動剤等を添加することも可能である。
【0025】
本発明によれば、副生成物である水溶性重合体が低減され、重合安定性が高く、カチオン基密度の高いカチオン性重合体エマルションを提供することができる。本発明のカチオン性重合体エマルションによれば、安定性、耐水性、アニオン性の材料に対する接着性等に優れた配合物を提供することができる。
このような配合物は、例えばバインダー、定着剤等に利用可能であり、製紙薬品、建材、塗料等の用途に好適に使用される。
【0026】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
窒素導入管を備えた滴下漏斗にイオン交換水(以下、DIWと称す)を87.0g、乳化剤:(花王(株)製 エマルゲン430)を3.0g、カチオン性単量体(a):メタクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムのBF4塩(MRCユニテック(株)製 MOEBAF 以下、MOEBAFと略す、20℃の水に対する溶解度:10質量%未満)を9.0g、単量体(b):メチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製 アクリエステルM 以下、MMAと略す)を171.0g投入し、攪拌して予備乳化を行った。
次に、温度計、攪拌機、還流冷却器および窒素導入管を備えた1,000ml四つ口フラスコにDIWを330.0g投入し、攪拌しながらフラスコ内を窒素置換し55℃まで加熱した。重合開始剤:2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬工業(株)製 V−50 以下、V−50と称す)を0.9g投入して15分間の攪拌を行った後、予備乳化した単量体組成物を55℃で4時間かけて滴下した。その後、熟成工程として55℃で1時間、残存単量体および残存開始剤の処理のため75℃まで昇温して2時間保持し、重合を終了した。
【0027】
(実施例2〜4)
MOEBAFとMMAの配合率を表1に記載のようにし、実施例1と同様の方法にて重合を行った。
(実施例5〜7)
カチオン性単量体(a)としてメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムのBF4塩(MRCユニテック(株)製 MOETAF、20℃の水に対する溶解度:60質量%未満)、メタクリロイルオキシエチルジメチルドデシルアンモニウムのCH3C6H4SO3塩(MRCユニテック(株)製 MOEDDP、同40質量%未満)、メタクリロイルアミノプロピルジメチルドデシルアンモニウムのCH3C6H4SO3塩(MRCユニテック(株)製 MAPDDP、同40質量%未満)のいずれかを表1に記載の配合率で用い、実施例1と同様の方法にて重合を行った。
(実施例8)
単量体(b)としてn−ブチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製 アクリエステルB 以下、n−BMAと略す)を表1に記載の配合率で用い、実施例1と同様の方法にて重合を行った。
(実施例9)
カチオン性単量体(a)としてアクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムのBF4塩(MRCユニテック(株)製 AOEBAF、20℃の水に対する溶解度:10質量%未満)、単量体(b)としてスチレン(三菱化学(株)製)を表1に記載の配合率で用い、実施例1と同様の方法にて重合を行った。
【0028】
(比較例1〜4)
カチオン性単量体(a)としてメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(三菱レイヨン(株)製 アクリエステルDMC 以下、DMCMAと略す、20℃の水に対する溶解度が少なくとも80質量%)またはメタクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(三菱レイヨン(株)製 アクリエステルDML 以下、DMLMAと略す、同 少なくとも60質量%)を、単量体(b)としてMMAを表1に記載の配合率で用い、実施例1と同様の方法にて重合を行った。
【0029】
実施例、比較例に示した製造方法で得られるカチオン性重合体エマルションについて、重合安定性、カチオン性単量体の導入率、カチオン度の比率を評価した。結果を表1に示す。なお、表1において、カチオン性単量体の導入率およびカチオン度の比率における記号「−」は、測定の未実施を示す。
(重合安定性)
実施例、比較例に示した製造方法で得られたカチオン性重合体エマルションの重合安定性を、重合後の固形分量から評価した。
固形分量=エマルションの質量×エマルションの固形分
重合安定性についての評価基準は以下の通り。
○:固形分量が理論値の 95%以上
△: 〃 80%以上95%未満
×: 〃 80%未満
【0030】
(カチオン性単量体の導入率)
実施例、比較例に示した製造方法で得られたカチオン性重合体エマルションを、遠心沈降によってエマルション粒子(沈降成分)と水溶性成分に分離した。水溶性成分に含まれる水溶性重合体と乳化剤の比率をIRによる測定から算出し、水溶性成分の質量から水溶性重合体の生成量を求めた。
次に、熱分解ガスクロマトグラフィーを用いた測定により、水溶性重合体に含まれるカチオン性単量体の比率および量を算出した。カチオン性単量体の仕込み量と、水溶性重合体に含まれるカチオン性単量体の量との差として、エマルション粒子に導入されたカチオン性単量体の量を求めた。
【0031】
エマルション粒子へのカチオン性単量体の導入率についての評価基準は以下の通り。
○:エマルション粒子へのカチオン性単量体の導入率が、カチオン性単量体の仕込み量に対し 80%以上
△: 〃 50%以上80%未満
×: 〃 50%未満
【0032】
(カチオン度の比率)
実施例、比較例に示した製造方法で得られたカチオン性重合体エマルションのカチオン度を、コロイド滴定により測定した。コロイド滴定は、トルイジンブルーを指示薬とし、滴定試薬にN/400ポリビニル硫酸カリウム溶液を用いて行った。
カチオン度の測定値と、カチオン性単量体の仕込み量から計算されるカチオン度の理論値とを用い、以下の式(I)からカチオン度の比率を求めた。
カチオン度の比率=(カチオン度の測定値/カチオン度の理論値)×100(%)・・・(I)
【0033】
カチオン性単量体を主成分とする水溶性重合体が形成された場合や、カチオン性単量体がエマルションの粒子表面に分布する場合には、カチオン度の比率は100%に近い値を示す。
一方エマルション粒子の内部までカチオン性単量体が導入され、エマルション粒子表層部のカチオン度が低減した場合、すなわちカチオン基密度の高い場合には、カチオン度の比率は低下する。
【0034】
【表1】
【0035】
以上表1から明らかなように、実施例1〜4、6〜9はいずれも重合安定性が高く、カチオン性単量体の導入率が高かった。カチオン性単量体(a)としてMOETAFを用いた実施例5はカチオン性単量体の導入率がやや低く、カチオン度の比率が高かった。この結果はカチオン性単量体の水に対する溶解度に由来するもので、水溶性重合体がやや多く生成し、エマルションの粒子内部にはカチオン性単量体が導入されていないことを示す。
カチオン性単量体として20℃の水に対する溶解度が60質量%以上であるDMCMAまたはDMLMAを用い、MMAと共重合した比較例1、3は重合安定性が低く、凝集物を生じエマルションを得ることはできなかった。このため、カチオン性単量体の導入率、カチオン度の比率は測定していない。
カチオン性単量体としてDMCMAまたはDMLMAを用い、共重合成分を含まない比較例2、4は重合可能であったが、エマルションの粒子は形成されず、得られたのは水溶性重合体のみであった。
カチオン性単量体としてMOEBAFを用い、共重合成分を含まない実施例4では安定してエマルション粒子が得られており、この点で重合の結果は大きく異なる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、副生成物である水溶性重合体が低減され、重合安定性が高く、カチオン基密度の高いカチオン性重合体エマルションを簡便な製造方法により提供することができる。
Claims (4)
- 前記単量体(a)の比率が5〜100質量%、前記単量体(b)の比率が0〜95質量%(但し、単量体(a)、(b)の合計は100質量%とする)である請求項1に記載のカチオン性重合体エマルション。
- 前記単量体(b)は、20℃の水に対する溶解度が5質量%未満である非イオン性の単量体であることを特徴とする請求項1または2に記載のカチオン性重合体エマルション。
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