本発明の画像形成方法について説明する。
本発明の構成の一つとして、樹脂、及び着色剤を含有するコアに、シェル層を形成したコアシェル構造のトナー粒子を含むトナーを用いる。本発明者らは、コアシェル構造を有するトナー粒子において、シャープな帯電分布及びその帯電分布に至るトナーの帯電の立ち上がり特性が良好であるトナーについて鋭意検討をした。その結果、シェルを形成するポリエステル樹脂において、以下詳細に説明する構造及び物性にすることで、前述の課題を解決するトナーが得られることを見出した。具体的には、シェル層にポリエステル樹脂Aを含有し、ポリエステル樹脂Aの含有量は、樹脂100.0質量部に対して0.10質量部以上40.0質量部以下である。さらに、ポリステル樹脂Aの25℃、10000Hzにおける誘電正接が0.007以上0.014以下である。ポリエステル樹脂Aは、下記式(1)で示されるユニットをポリエステル樹脂Aを構成する全モノマーユニットを基準として0.10mol%以上20.0mol%以下含有する。
本発明に係るトナー粒子は、上記構成を有するトナー粒子であればよく、公知の粉砕法及び重合法を用いて製造することができる。中でも、コアシェル構造を形成・制御しやすい懸濁重合法、溶解懸濁重合法、乳化凝集法で製造することが好ましい。特に、小粒径化が容易で、真球に近く表面の凹凸が少ないコアシェル構造のトナー粒子が得やすく、シャープな帯電分布及びその帯電分布に至るトナーの帯電の立ち上がり特性が良好である懸濁重合法により製造されるトナー粒子が好ましい。
例えば、懸濁重合法においては、樹脂を生成する重合性単量体及び必要に応じて着色剤、ワックスを含む重合性単量体組成物に極性樹脂を添加し、トナー粒子を製造する。これによって、樹脂、着色剤、必要に応じてワックスから形成されるコアを、極性樹脂から形成されるシェル層で被覆したコアシェル構造を有するトナー粒子を得ることができる。
本発明ではトナー粒子のシェル層を形成する極性樹脂として、上記のポリエステル樹脂Aを含有する。
ポリエステル樹脂Aは、式(1)で示されるユニットを、ポリエステル樹脂Aを構成する全モノマーユニットを基準として、0.10mol%以上20.0mol%以下、好ましくは1.30mol%以上15.0mol%以下含有する。
式(1)で示されるユニット(以下、イソソルビドユニットとも称する)の含有量が上記範囲内であれば、トナーのシャープな帯電分布及びその帯電分布に至るトナーの帯電の立ち上がり特性をよくすることができる。その理由としては、以下の作用効果によるものと推測している。
イソソルビドユニットは、分子内にエーテル基を有した環状構造であるため、イソソルビドユニットを含有するポリエステル樹脂Aは、電荷発生が従来のポリエステル樹脂と変わらず、適度に誘電正接が大きくなる。よって、コアシェル構造のトナー粒子のシェル層に、ポリエステル樹脂Aを含有させることで、限られたトナー接触回数の中で、トナー粒子間の電荷のやり取りが向上する。その結果、トナーのシャープな帯電分布及びその帯電分布に至るトナーの帯電の立ち上がり特性が向上し、長期にわたって高画質を維持することができるものと推測している。
従来、トナーのシャープな帯電分布及びその帯電分布に至るトナーの帯電の立ち上がり特性を改善すると、トナー粒子間の電荷の受け渡しが早くなるため、トナーから電子写真感光体へ電荷の注入がしやすくなり、電子写真感光体の表面電位が乱れる場合がある。しかし、本発明のトナーであっても、後述する本発明の電子写真感光体を用いれば、トナーからの電荷の注入による電子写真感光体の表面電位の乱れが生じにくくなる効果を発現することがわかった。その結果、環境によらず画像濃度安定性、画像濃度均一性、細線再現性が良好であり、かぶりやゴーストなどの画像欠陥のない、長期に渡り安定的に高画質画像を得ることが可能となった。
本発明のポリエステル樹脂Aは、アルコール成分としてイソソルビドを用いるが、それ以外のアルコール成分としては下記の材料を併用することができる。
二価アルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのようなビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのような脂肪族系のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールAのようなビスフェノールA類が挙げられる。
三価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどが挙げられる。
また、ポリエステル樹脂Aを形成するために用いられる酸成分としては下記のものが挙げられる。例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びピロメリット酸のような芳香族多価カルボン酸;フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸や、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸のような炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸などの脂肪族多価カルボン酸;それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜8)エステルが挙げられる。
それらの中でも特に、ビスフェノール誘導体をアルコール成分とし、二価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキル(炭素数1〜8)エステルを酸成分として、これらを縮重合して得られるポリエステル樹脂Aを好ましく用いることができる。
ポリエステル樹脂Aの25℃、10000Hzにおける誘電正接は、0.007以上0.014以下である。好ましくは0.008以上0.012以下である。誘電正接が0.007以上0.014以下であれば、トナー粒子間の電荷の受け渡しが良好になり、トナーのシャープな帯電分布及びその帯電分布に至るトナーの帯電の立ち上がり特性が向上する。0.014より大きい場合は、トナーの電荷の漏えいが多くなり、特に高湿環境下におけるかぶりなどの現像性が低下する場合がある。さらには、トナーからの電子写真感光体への電荷の注入が多くなり、電子写真感光体の表面電位を乱しやすくなり、かぶりや画像濃度安定性、画像欠陥を生じる場合がある。また、0.007より小さい場合は、トナー粒子間の電荷の受け渡しが不十分となり、所望のトナーのシャープな帯電分布及びその帯電分布に至るトナーの帯電の立ち上がり特性を得ることができない。誘電正接を上記範囲にするため方法としては、イソソルビドユニットや、上記例示したアルコール成分や酸成分の含有量を調整することでできる。本発明において、例えば、イソソルビドユニットに加えて、エチレングリコールなどのエーテル構造を有する成分を添加し、含有量を調整することで、誘電正接を調整することができる。中でも、イソソルビドユニットの含有量を調整することで誘電正接を上記範囲内に調整することが好ましい。
イソソルビドユニットの含有量で調節するのが好ましい理由として、以下の作用効果によるものと推測される。イソソルビドユニットは環状構造中にエーテル結合を有するため、エチレングリコールなどのエーテル結合を有するユニットよりも、1ユニット当たりの誘電正接への影響が大きくなく適度である。そのため、ポリエステル樹脂として、部分的に誘電正接が大きくすることが無く、ポリエステル樹脂Aに適度な誘電正接を付与することができるためであると推測される。
ポリエステル樹脂Aの酸価は、0.5mgKOH/g以上25.0mgKOH/g以下であることが好ましく、0.5mgKOH/g以上15.0mgKOH/g以下であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂Aの酸価が上記範囲内であれば、シェル層が十分に形成され、耐熱保存性、現像性が向上する。また、ポリエステル樹脂Aの酸価が上記範囲内であれば、トナー粒子を懸濁重合法で製造する際の粒度分布が良好となり、現像性が向上する。
ポリエステル樹脂Aの酸価は、樹脂に用いるモノマーの種類や配合量を調整することにより、上記範囲とすることができる。具体的には、樹脂製造時のアルコールモノマー成分比/酸モノマー成分比、分子量を調整することにより制御できる。
ポリエステル樹脂Aの重量平均分子量(Mw)は、5000以上30000以下であることが好ましく、7000以上20000以下であることがより好ましい。上記範囲内であると、シェル層の強度が適度になり、低温定着性と耐熱保存性、現像性の両立がより良くなる。
なお、ポリエステル樹脂Aの重量平均分子量(Mw)は、反応時間や触媒の添加量を調整することにより制御することができる。
本発明のトナーは、ポリエステル樹脂Aを、コアを形成する樹脂100.0質量部に対して、0.10質量部以上40.0質量部以下である。より好ましくは、1.0質量部以上20.0質量部以下、さらには好ましくは1.5質量部以上10.0質量部以下である。上記範囲内であれば、シェル層の厚みが適度となり、耐熱保存性、現像性を良好に維持して、良好なトナーを得ることができる。
本発明において、結着樹脂及びポリエステル樹脂Aと共に、従来公知のポリエステル樹脂を併用してもよい。
次に、本発明のトナー及びトナーの製造方法について詳細に説明する。
本発明のトナーの重量平均粒径(D4)は、4.0μm以上9.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは5.0μm以上7.5μm以下である。
トナーの重量平均粒径が4.0μm以上であると、トナーの流動性を維持し、帯電立ち上がり性、帯電分布が良好になり、カブリや飛散、画像濃度薄等の弊害を引き起こし難くなる。また、電子写真感光体上や中間転写体上に残る転写残トナーのクリーニング性を維持し、像担持体や中間転写体や帯電付与部材への汚染による画像弊害が起こりにくい。9.0μm以下であると、微小文字等の細線再現性の悪化及び画像飛び散りの悪化を引き起こし難くなる。
以下、本発明のトナー粒子の好ましい製造方法である懸濁重合法で製造されるトナー粒子について、詳述する。
懸濁重合法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。樹脂を生成する重合性単量体に、必要に応じて着色剤(着色剤組成物)、ワックス及び重合開始剤等を混合して重合性単量体組成物を調製する。次に、該重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して重合性単量体組成物の粒子を形成(造粒)する。そして、水系媒体中にて重合性単量体組成物の粒子中の重合性単量体を重合させてトナー粒子を得る。
重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が用いられる。ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体又は多官能性重合性単量体を使用することができる。単官能性重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。
スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン等のスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート等のアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレート等のメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン等のビニルケトン。
多官能性重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル。
単官能性重合性単量体は、単独で又は2種以上組み合わせて、又は、多官能性重合性単量体と組み合わせて使用する。多官能性重合性単量体は架橋剤として使用することも可能である。
上記工程における重合性単量体組成物は、着色剤を第1の重合性単量体に分散させた分散液を、第2の重合性単量体と混合して調製されたものであることが好ましい。即ち、着色剤を第1の重合性単量体により十分に分散させた後で、他のトナー材料と共に第2の重合性単量体と混合することにより、着色剤がより良好な分散状態でトナー粒子中に存在できる。
重合性単量体の重合の際に用いられる重合開始剤としては、油溶性開始剤及び/又は水溶性開始剤が用いられる。油溶性開始剤としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等の顔料分散剤;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等のパーオキサイド系開始剤。
水溶性開始剤としては、以下のものが挙げられる。過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第一鉄又は過酸化水素。
また、重合性単量体の重合度を制御する為に、連鎖移動剤、重合禁止剤等を更に添加し用いることも可能である。
上記重合開始剤の濃度は、重合性単量体100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部である。上記重合性開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減温度を参考に、単独又は混合して使用される。
さらに、本発明においては、トナー粒子の耐ストレス性を高めると共に、トナー粒子の構成分子の分子量を制御するために、ビニル系状重合体の合成時に架橋剤を用いることもできる。
架橋剤としては、2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられる。具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンのような芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリルレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物が挙げられる。これらは単独又は混合物として用いられる。
これらの架橋剤は、トナーの定着性、耐オフセット性の点で、重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部の範囲、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いる。
重合性単量体や架橋剤は、単独、又は理論ガラス転移温度(Tg)が、40〜75℃の範囲を示すように単量体を適宜混合して用いることが好ましい。理論ガラス転移温度が40℃以上の場合にはトナーの保存安定性や耐ストレス性の面から問題が生じ難く、一方75℃以下の場合はトナーのフルカラー画像形成の場合において透明性や低温定着性が低下しない。
上記懸濁重合法で用いられる水系媒体は、分散安定化剤を含有させることが好ましい。分散安定化剤としては、公知の無機系及び有機系の分散安定化剤を用いることができる。無機系の分散安定化剤としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
有機系の分散安定化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン等が挙げられる。また、ノニオン性、アニオン性、カチオン性の界面活性剤の利用も可能である。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等が挙げられる。
分散安定化剤のうち、本発明においては、酸に対して可溶性のある難水溶性無機分散安定化剤を用いることが好ましい。また、本発明においては、難水溶性無機分散安定化剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散安定化剤が重合性単量体100質量部に対して0.2〜2.0質量部の範囲となるような割合で使用することが好ましい。このような範囲で使用することによって、重合性単量体組成物の水系媒体中での液滴安定性が向上するからである。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300〜3000質量部の範囲の水を用いて水系媒体を調製することが好ましい。
本発明において、上記難水溶性無機分散安定化剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定化剤をそのまま用いて分散させてもよい。しかし、細かい均一な粒度を有する分散安定化剤粒子を得るために、水中にて高速撹拌下に、上記難水溶性無機分散安定化剤を生成させて調製することが好ましい。例えば、リン酸カルシウムを分散安定化剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定化剤を得ることができる。
懸濁重合法においては、重合性単量体組成物にポリエステル樹脂Aを含む極性樹脂を添加し、トナー粒子を製造する。これにより、主にコアを形成する樹脂及び必要に応じて添加したワックスを、ポリエステル樹脂Aを含む極性樹脂(シェル)で被覆した、コアシェル構造を有するトナーを得ることができる。
そのため、これら重合法によるトナーは、ワックスをトナー内に良好に内包化することにより、比較的多量のワックスを含有しても、トナー表面への露出は少なく、連続プリントにおけるトナー劣化を抑制することができる。
本発明のトナーの着色剤としては、以下に示すブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの顔料及び必要に応じて染料を用いることができる。
ブラック着色剤としては、カーボンブラックが挙げられる。また、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を混合して、ブラックに調節したものが挙げられる。カーボンブラックとしては、特に制限はないが、例えばサーマル法、アセチレン法、チャンネル法、ファーネス法、ランプブラック法等の製法により得られたカーボンブラックを用いることができる。本発明に用いるカーボンブラックの平均一次粒径は、特に制限はないが、平均一次粒径が14〜80nmであることが好ましく、より好ましくは25〜50nmである。平均一次粒径が14nm以上の場合には、トナーは赤味を呈さず、フルカラー画像形成用のブラックとして好ましい。カーボンブラックの平均一次粒径が80nm以下の場合には、良好に分散しかつ着色力が低くなり過ぎず好ましい。上記カーボンブラックは単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。これらは粗製顔料であってもよく、本発明の顔料分散剤の効果を著しく阻害するものでなければ調製された顔料組成物であってもよい。
顔料系のイエロー着色剤としては、縮合多環系顔料、イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.Pigment Yellow3、7、10、12、13、14、15、17、23、24、60、62、74、75、83、93、94、95、99、100、101、104、108、109、110、111、117、123、128、129、138、139、147、148、150、155、166、168、169、177、179、180、181、183、185、191:1、191、192、193、199が挙げられる。
染料系のイエロー着色剤としては、C.I.solvent Yellow33、56、79、82、93、112、162、163、C.I.disperse Yellow42、64、201、211が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合多環系顔料、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.Pigment Red 2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.Pigment Violet19が挙げられる。
シアン着色剤としては、フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物が用いられる。具体的には、C.I.Pigment Blue1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明において、着色剤は、色相角、彩度、明度、耐侯性、OHP画像の透明性、トナー中への分散性の点から選択される。着色剤の添加量は、コアを形成する結着樹脂100質量部に対し1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
本発明のトナーは、一種以上のワックスを含有していることが好ましい。トナー中に含まれるワックスは総量で、トナー粒子100質量部中に2.5質量部以上25.0質量部以下含有されることが好ましい。また、トナー中に含まれるワックスの総量は、4.0質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、6.0質量部以上18.0質量部以下であることがさらに好ましい。
ワックスとしては、以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
本発明のトナーは、トナーの帯電性を環境によらず安定に保つために、荷電制御剤を用いることが好ましい。
負荷電性の荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、荷電制御樹脂が挙げられる。
正荷電性の荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩等によるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートのようなジオルガノスズボレート類;荷電制御樹脂が挙げられる。これらを単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、荷電制御樹脂が好ましく、荷電制御樹脂のpKaが6.0以上9.0以下であることがより好ましい。特には、荷電制御樹脂のpKaが7.0以上8.5以下であることが好ましい。荷電制御樹脂のpKaを上記範囲内とすることで、トナーの水分吸着が抑えられ、トナーが高温高湿環境で優れた帯電特性を発揮し、かぶりなどの現像性が向上する。
荷電制御樹脂としては、上記pKa(酸解離定数)を満たすものであればどのようなものでも構わないが、特に分子構造として側鎖に式(2)で示される構造を有することが望ましい。
(R1は、炭素数1以上18以下のアルキル基、または、炭素数1以上18以下のアルコキシル基を示す。nは0以上3以下の整数を示す。nが2または3の場合、R1は同一であっても異なっていてもよい。*は荷電制御樹脂における結合部位である。)
上記式(2)で示される構造は、下記式(3)で示される構造であることがより好ましい。
(R2は、炭素数1以上18以下のアルキル基、または、炭素数1以上18以下のアルコキシル基を示す。R3は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1以上18以下のアルキル基、または、炭素数1以上18以下のアルコキシル基を示す。gは、1以上3以下の整数を示す。hは0以上3以下の整数を示す。hが2または3の場合、R2は同一であっても異なっていてもよい。*は前記荷電制御樹脂における結合部位である。)
R2とR3におけるアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。R2とR3におけるアルコキシル基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
式(2)で示される構造を側鎖に有する荷電制御樹脂(の主鎖構造は、特に限定されない。例えば、ビニル系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリエーテル系重合体などが挙げられる。荷電制御樹脂を製造する上での製造しやすさや、コストメリット等を考慮すれば、ポリエステル系重合体、或いは、ビニル系重合体であることが好ましい。
式(2)及び式(3)を含有する荷電制御樹脂は、単一重合体でも他の重合性単量体との共重合体でもよい。共重合体として使用可能な重合性単量体としては具体的には次に例示される通りである。スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン,p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンの如きスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体が例示される。
上記荷電制御樹脂の製造方法としては特に限定されず、公知の手法により製造することができる。一例として、式(2)で示される構造を含有する重合性単量体(式(4)で示される化合物)と重合開始剤を用いて重合させればよい。
(式(4)中、R6は、炭素数1以上18以下のアルキル基、または、炭素数1以上18以下のアルコキシル基を示す。R7は、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1以上18以下のアルキル基、または、炭素数1以上18以下のアルコキシル基を示す。mは、1以上3以下の整数を示す。nは0以上3以下の整数を示す。nが2または3の場合、R6は同一であっても異なっていてもよい。)
式(4)で示される化合物の具体例を以下に示す。
荷電制御樹脂に含まれる式(2)で示される構造aの含有量は50μmol/g以上1000μmol/g以下であることが好ましい。50μmol/g以上1000mol/g以下にすることで、良好な帯電性と耐久性が発揮できる。また、高温高湿環境下において、トナーへの水分吸着が抑えられる。
式(2)で示される構造を側鎖に有する荷電制御樹脂を用いた場合、摩擦帯電により生じた電荷を安定に付与することができる。また、高温高湿環境下において、トナーへの水分吸着が抑えられるため、優れた帯電特性を発揮し、かぶりなどの現像性が向上する。
pKa(酸解離定数)の測定方法は後述するが、中和滴定結果から求めることができる。
荷電制御剤の含有量は、重合性単量体100.0質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜20.0質量部、より好ましくは0.05質量部〜10.0質量部である。
本発明のトナーは、前記ポリエステル樹脂Aの他に、シェル層を形成する極性樹脂を用いてもよい。極性樹脂として、以下に一例を挙げるがこれら以外のものでも構わない。
極性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。より好ましくは材料の多様性からポリエステル樹脂が望まれる。極性樹脂は、ポリエステル樹脂Aの前記詳述した効果を得るために、コアを形成する樹脂100質量部当たり、好ましくは0.5質量部以上20.0質量部以下、より好ましくは1.0質量部以上10.0質量部以下である。
また、本発明のトナーは低温定着性を向上させることを目的に、結晶性ポリエステルをコアに含有させてもよい。
結晶性ポリエステルとしては、例えば脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを重縮合して得られる樹脂が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、これらの酸の無水物又は低級アルキルエステル等が挙げられる。
また、結晶性ポリエステルは、上記のような脂肪族ジカルボン酸を主成分として用いるが、上記の成分の他に三価以上の多価カルボン酸を用いてもよい。
三価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、及びこれらの酸無水物又は低級アルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。
これらは1種単独、又は、2種以上併用してもよい。
脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタジエングリコールその他が挙げられる。
また、結晶性ポリエステルは、上記のような脂肪族ジオールが主成分として用いられるが、上記成分の他に、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の二価のアルコール、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の三価のアルコール等を用いてもよい。
これらは1種単独、又は、2種以上併用してもよい。
本発明のトナーは、トナー粒子の表面に無機微粒子を外添してもよい。該無機微粒子は、トナーの流動性改良及び帯電均一化のためにトナー粒子に添加、混合され、添加された無機微粒子はトナー粒子の表面に均一に付着した状態で存在する。
上記無機微粒子は、一次粒子の個数平均粒径(D1)が4nm以上500nm以下であることが好ましい。
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニアから選ばれる無機微粒子又はその複合酸化物などが使用できる。複合酸化物としては、例えば、シリカアルミナ複合酸化物、シリカチタニア複合酸化物やチタン酸ストロンチウム微粉体等が挙げられる。これら無機微粒子は、表面を疎水化処理して用いることが好ましい。
さらに、本発明に用いられるトナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤を用いてもよい。例えば、テフロン(登録商標)粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末のような滑剤粉末、酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末などの研磨剤、ケーキング防止剤、また、逆極性の有機及び/又は無機微粒子である現像性向上剤が挙げられる。これらの添加剤も表面を疎水化処理して用いることも可能である。
〔電子写真感光体〕
次に、本発明の電子写真感光体について説明する。
本発明の電子写真感光体は、支持体、支持体上に形成された下引き層、下引き層上に形成された感光層を有する。そして、下引き層の体積抵抗率が1×1011Ω・cm以上1×1016Ω・cm以下であり、下引き層が有機電子輸送性化合物を含有することを特徴とする。
上記の特徴を有する下引き層であれば、下引き層中、及び下引き層と感光層との界面での電荷の移動が早くなり、トナーから電子写真感光体への電荷の注入による電荷の滞留を解消することが可能となる。これにより、電子写真感光体の表面電位の変動・低下(減衰)が抑えられると考えられる。
下引き層の体積抵抗率が1×1011Ω・cm未満の場合には、表面電位の低下が発生しやすくなり、また、トナーからの電荷の注入による画像弊害が生じやすくなる。そのため、かぶりが悪化するあるいは画像濃度安定性や画像濃度均一性が低下する場合がある。一方、1×1016Ω・cmよりも大きい場合は、露光後現像までに電子が十分に移動できないため、現像コントラストが十分に得られず、画像濃度が低下する。
このように、特定のコアシェル構造を有するトナーと、下引き層を制御し、かつ有機電子輸送性化合物を含有する電子写真感光体とを組み合わせる事で、相乗的に高画質画像を長期に渡り安定的に出力することが可能になると考えられる。
感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型(機能分離型)感光層であることが好ましい。さらに、電子写真特性の観点から、積層型感光層は、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層であることが好ましい。
〔支持体〕
支持体としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、金、鉄といった金属又は合金で形成されている導電性支持体を用いることが可能である。ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ガラスといった絶縁性支持体上にアルミニウム、銀、金の金属の薄膜で形成した支持体、又は酸化インジウム、酸化スズといった導電性材料の薄膜で形成した支持体が挙げられる。
支持体の表面には、電気的特性の改善や干渉縞の抑制のため、陽極酸化といった電気化学的な処理、湿式ホーニング処理、ブラスト処理、又は切削処理を施してもよい。
〔導電層〕
支持体と下引き層の間には導電層を設けても良い。導電層は、導電性粒子を樹脂に分散させた導電層用塗布液を用いて形成される層である。導電性粒子としては、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラックや、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀のような金属粉や、導電性酸化スズ、ITOのような金属酸化物粉体が挙げられる。
また、樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂およびアルキッド樹脂が挙げられる。
導電層用塗布液の溶剤としては、例えば、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤および芳香族炭化水素溶剤が挙げられる
導電層の膜厚は、0.2μm以上40μm以下であることが好ましく、1μm以上35μm以下であることがより好ましく、さらには5μm以上35μm以下であることがより好ましい。
〔下引き層〕
下引き層は、支持体上または、導電層上に設けられる。下引き層の体積抵抗率は1×1011以上、1×1016Ω・cm以下であり、かつ有機電子輸送性化合物を含有する。
有機電子輸送性化合物は、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、またはカルボキシ基のいずれかの重合性官能基を有することが好ましい。より好ましくは、重合性官能基を有する有機電子輸送性化合物、重合性官能基を有する樹脂、および架橋剤を含む組成物の重合物である。
下引き層には、下引き層の体積抵抗率が上記範囲内であれば、導電性粒子を含有してもよい。導電性粒子としては、たとえば、カーボンブラック、アセチレンブラックや、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀のような金属粉や、導電性酸化スズ、ITOのような金属酸化物粉体が挙げられる。有機電子輸送性化合物の含有量は、組成物の全質量に対して30質量%以上70質量%以下がより好ましい。
有機電子輸送性化合物としては、例えば、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物が挙げられる。以下に、有機電子輸送性化合物の具体例として、下記式(A−1)〜(A−11)のいずれかで示される化合物を示す。
(式(A1)〜(A11)中、R11〜R16、R21〜R30、R31〜R38、R41〜R48、R51〜R60、R61〜R66、R71〜R78、R81〜R90、R91〜R98は、R101〜R110は、R111〜R120は、それぞれ独立に、下記式(A)で示される1価の基、水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換の複素環を示す。アルキル基の主鎖中のCH2の1つがO、S、NH又はNR121(R121はアルキル基)で置き換わっていても良い。R11〜R16の少なくとも1つ、R21〜R30の少なくとも1つ、R31〜R38の少なくとも1つ、R41〜R48の少なくとも1つ、R51〜R60の少なくとも1つ、R61〜R66の少なくとも1つ、R71〜R78の少なくとも1つ、R81〜R90の少なくとも1つ、R91〜R98の少なくとも1つ、R101〜R110の少なくとも1つ、R111〜R120の少なくとも1つは、式(A)で示される1価の基を有する。
置換のアルキル基の置換基は、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基である。置換のアリール基の置換基、置換の複素環基の置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルコキシ基である。
Z21、Z31、Z41及びZ51は、それぞれ独立に、炭素原子、窒素原子、又は酸素原子を示す。Z21が酸素原子である場合はR29及びR30は存在せず、Z21が窒素原子である場合はR30は存在しない。Z31が酸素原子である場合はR37及びR38は存在せず、Z31が窒素原子である場合はR38は存在しない。Z41が酸素原子である場合はR47及びR48は存在せず、Z41が窒素原子である場合はR48は存在しない。Z51が酸素原子である場合はR59及びR60は存在せず、Z51が窒素原子である場合はR60は存在しない。)
(式(A)中、α、β、及びγの少なくとも1つは重合性官能基を有する基であり、重合性官能基は、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基及びメトキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基である。l及びmは、それぞれ独立に、0又は1であり、lとmの和は、0以上2以下である。
αは、主鎖の炭素数が1〜6のアルキレン基、主鎖の炭素数が1〜6の置換若しくは無置換のアルキレン基の主鎖中のCH2の1つが酸素原子に置き換わって導かれる基、主鎖の炭素数が1〜6の置換若しくは無置換のアルキレン基の主鎖中のCH2の1つが硫黄原子に置き換わって導かれる基、または主鎖の炭素数が1〜6の置換若しくは無置換のアルキレン基の主鎖中のCH2の1つがNR19に置き換わって導かれる基を示し、R19は、水素原子またはアルキル基を示す。
該置換のアルキレン基の置換基は、炭素数1〜6のアルキル基、ベンジル基、アルコシキカルボニル基、またはフェニル基である。これらの基は、該重合性官能基を有しても良い。
βは、フェニレン基、炭素数1〜6のアルキル基置換フェニレン基、ニトロ基置換フェニレン基、ハロゲン基置換フェニレン基、またはアルコキシ基置換フェニレン基を示し、これらの基は、該重合性官能基を有しても良い。
γは、水素原子、主鎖の炭素数が1〜6のアルキル基、または炭素数1〜6のアルキル基で置換された主鎖の炭素数が1〜6のアルキル基を示し、これらの基は、該重合性官能基を有しても良い。
以下に重合性官能基を有する電子輸送性物質の具体例を示す。表中、Aaは、Aと同様な構造式で表され、その1価の基の具体例をA及びAaの欄に示す。表中、γが「−」である場合は、水素原子を示し、そのγの水素原子は、α又はβの欄に示す構造に含めて表示する。
(A2)〜(A6)、(A9)のいずれか構造を有する誘導体(有機電子輸送性化合物の誘導体)は、東京化成工業(株)やシグマアルドリッチジャパン(株)やジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能である。(A1)の構造を有する誘導体は、東京化成工業(株)、又はジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能なナフタレンテトラカルボン酸二無水物とモノアミン誘導体との反応で合成可能である。(A7)の構造を有する誘導体は、東京化成工業(株)又はシグマアルドリッチジャパン(株)から購入可能なフェノール誘導体を原料として合成可能である。(A8)の構造を有する誘導体は、東京化成工業(株)やシグマアルドリッチジャパン(株)から購入可能なペリレンテトラカルボン酸二無水物とモノアミン誘導体との反応で合成することが可能である。(A10)の構造を有する誘導体は、例えば特許第3717320号公報記載の公知の合成方法を用いて、ヒドラゾン構造を有するフェノール誘導体を、有機溶媒中、過マンガン酸カリウム等の適当な酸化剤で酸化する事によって合成可能である。(A11)の構造を有する誘導体は、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)又はジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能なナフタレンテトラカルボン酸二無水物とモノアミン誘導体とヒドラジンとの反応で合成可能である。
(A1)〜(A11)のいずれかで示される化合物には、架橋剤と重合可能な重合性官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基及びメトキシ基)を有する。(A1)〜(A11)のいずれかの構造を有する誘導体に重合性官能基を導入して、(A1)〜(A11)のいずれかで示される化合物を合成する方法として、以下のような方法が挙げられる。例えば、(A1)〜(A11)のいずれかの構造を有する誘導体を合成した後、直接重合性官能基を導入する方法がある。また、重合性官能基又は重合性官能基の前駆体と成り得る官能基を有する構造を導入する方法がある。後述の方法としては、(A1)〜(A11)のいずれかの構造を有する誘導体のハロゲン化物を元に、例えばパラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基を有するアリール基を導入する方法がある。また、(A1)〜(A11)のいずれかの構造を有する誘導体のハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基を有するアルキル基を導入する方法がある。また、(A1)〜(A11)のいずれかの構造を有する誘導体のハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法がある。
耐溶剤性が高く、強固な架橋構造を形成する観点から、有機電子輸送性化合物は、同一分子内に2つ以上重合性官能基を有することが好ましい。
〔架橋剤〕
次に重合性官能基を有する架橋剤について述べる。
架橋剤としては、通常架橋剤として用いられる化合物を使用することができる。具体的には、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)等に記載されている化合物等を用いることができる。
本発明に用いられる架橋剤はイソシアネート化合物、アミノ化合物が好ましい。
本発明に用いられるイソシアネート化合物は、イソシアネート基またはブロックイソシアネート基が2個以上有しているものが好ましい。より好ましくは、イソシアネート基またはブロックイソシアネート基を3個〜6個有するものである。例えば、トリイソシアネートベンゼン、トリイソシアネートメチルベンゼン、トリフェニルメタントリイソシアネート、リジントリイソシアネートの他、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、ノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、トリメチロールプロパンやペンタエリストールとのアダクト変性体等の変性体各種が挙げられる。
ブロックイソシアネート基は、−NHCOX(Xは保護基)の形を取る。Xはイソシアネート基に導入可能な保護基であれば何れでも良いが、下記(H1)〜(H6)で示される基がより好ましい。
以下に、イソシアネート化合物の具体例を示す。
本発明の下引き層は、重合性官能基を有する樹脂を更に含有してもよい。重合性官能基を有する樹脂としては、下記式(D)で示される構造単位を有する樹脂が好ましい。
式(D)中、R1は、水素原子又はアルキル基を示す。Y1は、単結合、アルキレン基又はフェニレン基を示す。W1は、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、又はメトキシ基を示す。
式(D)で示される構造単位を有する樹脂としては、例えば、アセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられる。上記式(D)で示される構造単位は、以下に示す特徴的な構造の中に有してもよいし、特徴的な構造以外に有してもよい。特徴的な構造を以下の(E−1)〜(E−5)に示す。(E−1)は、アセタール樹脂の構造単位である。(E−2)は、ポリオレフィン樹脂の構造単位である。(E−3)は、ポリエステル樹脂の構造単位である。(E−4)は、ポリエーテル樹脂の構造単位である。(E−5)は、ポリアミド樹脂の構造単位である。
上記式中、R201〜R205は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を示す。R206〜R210は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキレン基、又は置換もしくは無置換のアリーレン基を示す。R201がC3H7(プロピル基)である場合は(E−1)はブチラールを示す。
式(D)で示される構造単位を有する樹脂(以下樹脂Dとも称する)は、例えば、シグマアルドリッチジャパン(株)や東京化成工業(株)から購入可能な、重合性官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、又はメトキシ基)を有するモノマーを重合させることで得られる。
また、樹脂Dは、一般的に購入することも可能である。購入可能な樹脂としては、例えば、日本ポリウレタン工業(株)製AQD−457、AQD−473、三洋化成工業(株)製サンニックスGP−400、GP−700などのポリエーテルポリオール系樹脂、日立化成工業(株)製フタルキッドW2343、DIC(株)製ウォーターゾールS−118、CD−520、ベッコライトM−6402−50、M−6201−40IM、ハリマ化成(株)製ハリディップWH−1188、日本ユピカ社製ES3604、ES6538などのポリエステルポリオール系樹脂、DIC(株)製、バーノックWE−300、WE−304などのポリアクリルポリオール系樹脂、(株)クラレ製クラレポバールPVA−203などのポリビニルアルコール系樹脂、積水化学工業(株)製BX−1、BM−1などのポリビニルアセタール系樹脂、ナガセケムテックス(株)製トレジンFS−350などのポリアミド系樹脂、日本触媒(株)製アクアリック、鉛市(株)製ファインレックスSG2000などのカルボキシル基含有樹脂、DIC(株)製、ラッカマイドなどのポリアミン樹脂、東レ(株)製QE−340Mなどのポリチオール樹脂などが挙げられる。これらの中でもポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルポリオール系樹脂などが重合性、電子輸送層の均一性の観点からより好ましい。
樹脂Dの重量平均分子量(Mw)は5000〜400000の範囲であることがより好ましい。
以下表12に、樹脂Dの具体例を示す。
下引き層の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましく、0.5μm以上5.0μm以下がより好ましい。
〔電荷発生層〕
下引き層上には、電荷発生層が形成される。
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、アントラキノン誘導体、アントアントロン誘導体、ジベンズピレンキノン誘導体、ピラントロン誘導体、ビオラントロン誘導体、イソビオラントロン誘導体、インジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体、フタロシアニン顔料や、ビスベンズイミダゾール誘導体が挙げられる。これらの中でも、フタロシアニン顔料が好ましく、オキシチタニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、及びヒドロキシガリウムフタロシアニンが好ましい。
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ビニル化合物の重合体及び共重合体や、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリビニルアセタール樹脂が好ましく、ポリビニルアセタールがより好ましい。
電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂及び溶剤とともに分散して得られる電荷発生層用塗布液の塗膜を形成し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することが好ましい。また、電荷発生層は、電荷発生物質の蒸着膜でもよい。
電荷発生層において、電荷発生物質と結着樹脂との質量比率(電荷発生物質/結着樹脂)は、10/1〜1/10の範囲であることが好ましく、5/1〜1/5の範囲であることがより好ましい。電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。電荷発生層の膜厚は、0.05μm以上5μm以下であることが好ましい。
〔正孔輸送層〕
電荷発生層上には正孔輸送層が形成される。
正孔輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物、トリフェニルアミンが挙げられる。又は、正孔輸送物質としては、これらの化合物から誘導される基を主鎖又は側鎖に有するポリマーも挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、及びスチリル化合物が好ましい。
正孔輸送層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリスチレン樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂及びポリアリレート樹脂が好ましい。また、これらの分子量としては、重量平均分子量(Mw)=10,000〜300,000が好ましい。
正孔輸送層において、正孔輸送物質と結着樹脂との質量比率(正孔輸送物質/結着樹脂)は、10/5〜5/10が好ましく、10/8〜6/10がより好ましい。
正孔輸送層の膜厚は、3μm以上40μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以上16μm以下である。正孔輸送層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤又は芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。
また、正孔輸送層上に保護層を形成してもよい。保護層には、導電性粒子又は電荷輸送物質と、結着樹脂とを含有させることが好ましい。また、保護層は、潤滑剤といった添加剤をさらに含有してもよい。また、結着樹脂自体に導電性や電荷輸送性を有させてもよく、その場合、保護層には、当該結着樹脂以外に導電性粒子や電荷輸送物質を含有させなくてもよい。また、保護層の結着樹脂は、熱可塑性樹脂でもよいし、熱、光、放射線(電子線)により重合させて得られる硬化性樹脂であってもよい。保護層の膜厚は、1μm以上10μm以下が好ましい。
上記各層を形成する方法としては、各層を構成する材料を溶剤に溶解及び/又は分散させて得られた塗布液を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を乾燥及び/又は硬化させることによって形成する方法が好ましい。塗布液を塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法、スピンコーティング法が挙げられる。
本発明のトナー及び電子写真感光体は、以下詳細に説明する画像形成方法に用いることで、上記詳述した効果を十分に発揮することができる。
本発明の画像形成方法としては、電子写真感光体上に形成された静電潜像を、現像装置内のトナーを用いてトナー像を形成する現像工程を有する画像形成方法が挙げられる。
以下に本発明が適用される画像形成方法を用いた画像形成装置の一例を挙げ、これを図1に示し、本発明の構成についてさらに詳しく説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。
図1は、本発明が適用される画像形成方法を用いた画像形成装置100の概略断面図である。画像形成装置100は、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザープリンタである。画像形成装置100は、画像情報に従って、記録材(例えば、記録用紙、プラスチックシート、布など)にフルカラー画像を形成することができる。
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。第1〜第4の画像形成部SY、SM、SC、SKは、鉛直方向と交差する方向に一列に配置されている。
なお、以下の例では、第1〜第4の画像形成部SY、SM、SC、SKの構成及び動作は、形成する画像の色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字Y、M、C、Kは省略して、総括的に説明する。
本実施例では、画像形成装置100は、複数の像担持体として、鉛直方向と交差する方向に並設された4個のドラム型の電子写真感光体1を有する。電子写真感光体1は、図示矢印A方向(時計方向)に図示しない駆動手段(駆動源)により回転駆動される。電子写真感光体1の周囲には、電子写真感光体1の表面を均―に帯電する帯電手段としての帯電ローラ2、画像情報に基づきレーザーを照射して電子写真感光体1上に静電潜像を形成する露光手段としてのスキャナユニット(露光装置)3が配置されている。また、電子写真感光体1の周囲には、静電潜像をトナー像として現像する現像手段としての現像ユニット4、転写後の電子写真感光体1の表面に残ったトナー(転写残トナー)を除去するクリーニング手段としてのクリーニング部材6が配置されている。更に、4個の電子写真感光体1に対向して、電子写真感光体1上のトナー像を転写材(記録材)12に転写するための中間転写体としての中間転写ベルト5が配置されている。
なお、本発明では、現像ユニット4は、現像剤として非磁性一成分現像剤のトナーを用いるのが好ましい。また、現像ユニット4は、現像剤担持体としての現像ローラを電子写真感光体1に対して接触させて反転現像を行うものである。即ち、現像ユニット4は、電子写真感光体1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを、電子写真感光体1上の露光により電荷が減衰した部分(画像部、露光部)に付着させることで静電像を現像する。
本発明では、電子写真感光体1と、電子写真感光体1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像ユニット4及びクリーニング部材6とは、一体化され、即ち、一体的にカートリッジ化された、プロセスカートリッジ7が好適に用いられる。プロセスカートリッジ7は、画像形成装置本体100Aに設けられた装着ガイド、位置決め部材などの装着手段を介して、画像形成装置100に着脱可能となっている。各色用のプロセスカートリッジ7は、全て同一形状を有しており、各色用のプロセスカートリッジ7内には、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブランク(K)の各色のトナーが収容されている。
中間転写体である中間転写ベルト5は、全ての電子写真感光体1に当接し、図示矢印B方向(反時計方向)に循環移動(回転)する。中間転写ベルト5は、複数の支持部材として、駆動ローラ51、二次転写対向ローラ52、従動ローラ53に掛け渡されている。
中間転写ベルト5の内周面側には、各電子写真感光体1に対向するように、一次転写手段としての、4個の一次転写ローラ8が並設されている。一次転写ローラ8は、中間転写ベルト5を電子写真感光体1に向けて押圧し、中間転写ベルト5と電子写真感光体1とが当接する一次転写部N1を形成する。そして、一次転写ローラ8に、図示しない一次転写バイアス印加手段としての一次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これによって、電子写真感光体1上のトナー像が中間転写ベルト5上に転写(一次転写)される。
また、中間転写ベルト5の外周面側において二次転写対向ローラ52に対向する位置には、二次転写手段としての二次転写ローラ9が配置されている。二次転写ローラ9は、中間転写ベルト5を介して二次転写対向ローラ52に圧接し、中間転写ベルト5と二次転写ローラ9とが当接する二次転写部N2を形成する。そして、二次転写ローラ9に、図示しない二次転写バイアス印加手段としての二次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これによって、中間転写ベルト5上のトナー像が転写材12に転写(二次転写)される。
画像形成時には、先ず、電子写真感光体1の表面が帯電ローラ2によって一様に帯電される。次いで、スキャナユニット3から発された画像情報に応じたレーザー光によって、帯電した電子写真感光体1の表面が走査露光され、電子写真感光体1上に画像情報に従った静電潜像が形成される(静電潜像形成工程)。次いで、電子写真感光体1上に形成された静電潜像は、現像ユニット4によってトナー像として現像される。電子写真感光体1上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ8の作用によって中間転写ベルト5上に転写(一次転写)される。
例えば、フルカラー画像の形成時には、上述のプロセスが、第1〜第4の画像形成部SY、SM、SC、SKにおいて順次に行われ、中間転写ベルト5上に各色のトナー像が次に重ね合わせて一次転写される。その後、中間転写ベルト5の移動と同期が取られて転写材12が二次転写部N2へと搬送される。中間転写ベルト5上の4色トナー像は、転写材12を介して中間転写ベルト5に当接している二次転写ローラ9の作用によって、一括して転写材12上に二次転写される。
トナー像が転写された転写材12は、定着手段としての定着装置10に搬送される。定着装置10において転写材12に熱及び圧力が加えられることで、転写材12にトナー像が定着される。
また、一次転写工程後に電子写真感光体1上に残留した一次転写残トナーは、クリーニング部材6によって除去、回収される。また、二次転写工程後に中間転写ベルト5上に残留した二次転写残トナーは、中間転写ベルトクリーニング装置11によって清掃される。
次に、画像形成装置100に装着されるプロセスカートリッジ7の全体構成について説明する。本発明では、収容しているトナーの種類(色)を除いて、各色用のプロセスカートリッジ7の構成及び動作は実質的に同一であるものを用いることが好ましい。
図2は、電子写真感光体1の長手方向(回転軸線方向)に沿って見たプロセスカートリッジ7の概略断面(主断面)図である。図2のプロセスカートリッジ7の姿勢は、画像形成装置本体に装着された状態での姿勢であり、以下でプロセスカートリッジの各部材の位置関係や方向等について記載する場合はこの姿勢における位置関係や方向等を示している。
プロセスカートリッジ7は、電子写真感光体1等を備えた電子写真感光体ユニット13と、現像ローラ17等を備えた現像ユニット4とを一体化して構成される。
電子写真感光体ユニット13は、電子写真感光体ユニット13内の各種要素を支持する枠体としてのクリーニング枠体14を有する。電子写真感光体1は、図示しない駆動手段(駆動源)としての駆動モータの駆動力が電子写真感光体ユニット13に伝達されることで、画像形成動作に応じて図示矢印A方向(時計方向)に回転駆動される。また、電子写真感光体ユニット13には、電子写真感光体1の周面上に接触するように、クリーニング部材6、帯電ローラ2が配置されている。クリーニング部材6によって電子写真感光体1の表面から除去された転写残トナーは、クリーニング枠体14内に落下、収容される。帯電手段である帯電ローラ2は、導電性ゴムのローラ部を像担持体1に加圧接触することで従動回転する。
ここで、帯電ローラ2の芯金には、帯電工程として、電子写真感光体1に対して所定の直流電圧が印加されており、これにより電子写真感光体1の表面には、一様な暗部電位(Vd)が形成される。前述のスキャナユニット3からのレーザー光によって画像データに対応して発光されるレーザー光のスポットパターンは、電子写真感光体1を露光し、露光された部位は、電荷発生層からのキャリアにより表面の電荷が消失し、電位が低下する。この結果、露光部位は所定の明部電位(Vl)、未露光部位は所定の暗部電位(Vd)の静電潜像が、電子写真感光体1上に形成される。
一方、現像ユニット4は、トナー80を担持するためのトナー担持体としての現像ローラ17と、現像ローラ17にトナーを供給するトナー供給部材としてのトナー供給ローラ20が配置された現像室15を有している。また、トナー供給ローラ20は、現像ローラ17との間に当接部N(現像ローラ17とトナー供給ローラ20とでトナーを挟む部分)を形成し、同一方向に回転している。トナー収容室18内には、撹拌搬送部材22が設けられている。撹拌搬送部材22は、トナー収容室18内に収容されたトナーを撹拌すると共に、トナー供給ローラ20の上部に向けて図中矢印G方向にトナーを搬送するためのものでもある。
現像ブレード21は現像ローラ17の下方に配置され、現像ローラに対してカウンターで当接しており、トナー供給ローラ20によって供給されたトナーのコート量規制及び電荷付与を行っている。現像ブレード21は、例えば厚さ0.1mmの板バネ状のSUS製の薄板を用い、薄板のバネ弾性を利用して当接圧力を形成し、その表面がトナー及び現像ローラ17に当接される。ここで、現像ブレードとしてはこの限りではなく、リン青銅やアルミニウム等の金属薄板でもよい。また、現像ブレード21の表面にポリアミドエラストマーやウレタンゴムやウレタン樹脂等の薄膜を被覆したものを用いてもよい。
トナーは、現像ブレード21と現像ローラ17との摺擦により摩擦帯電されて電荷を付与されると同時に層厚規制される。また、本発明においては、現像ブレード21に不図示のブレードバイアス電源から所定電圧を印加し、トナーコート層の安定化をするのが好ましい。
現像ローラ17と電子写真感光体1とは、対向部において各々の表面が同方向(図2では下から上に向かう方向)に移動するようにそれぞれ回転する。
なお、図2では、現像ローラ17は、電子写真感光体1に接触して配置されているが、現像ローラ17は、電子写真感光体1に対して所定間隔を開けて近接配置される構成であってもよい。
本発明においては、現像ローラ17に印加された所定のDCバイアスに対して、摩擦帯電によりマイナスに帯電したトナーが、電子写真感光体1に接触する現像部において、その電位差から、明部電位部にのみ転移して静電潜像を顕像化する。
本発明においては、トナー供給ローラ20と現像ローラ17とは、各々の表面が当接部Nにおいて、同一方向に回転していることが好ましい。また、現像ローラ17とトナー供給ローラ20の回転方向は、各々の表面が当接部において同一方向に移動する方向であり、当接部におけるトナー供給ローラ20の現像ローラ17への侵入量が0.3mm以上1.5mm以下であることが好ましい。さらに、トナー供給ローラ20の当接部における周速が、現像ローラ17の当接部における周速に対して110%以上250%以下であることが好ましい。現像ローラ17とトナー供給ローラ20の回転方向が、各々の表面が当接部において同一方向に移動する方向である構成の画像形成方法である場合、逆方向に移動する構成の場合よりも、現像ローラ17とトナー供給ローラ20の摺擦によるトナー劣化が少ない。一方で、トナー供給ローラ20による現像後の現像ローラ17からのトナーの回収性(はぎ取り性)が弱い場合があり、より高速化が進んだ場合、現像ローラに連れまわったトナーがチャージアップしやすくなることが有り、改善の余地がある。しかし、本発明のトナーを用いた場合、ポリエステル樹脂Aを含有するシェルを有しているため、帯電立ち上がり性に優れ、高速化が進んだ場合でも、徐々にあるいは急激にチャージアップすることがない。そのため、トナーのチャージアップによる電子写真感光体への電荷注入も抑制される。さらには、本発明の電子写真感光体は、トナーからの電荷による影響を受けにくいため、長期にわたり高画質画像を得ることができる。そのため、本発明のトナーは、上記画像形成方法である場合、上記詳述したトナーと像担持体との相乗効果を十分に発揮することができる。
図2においては、トナー供給ローラ20は図示矢印E方向(時計方向)に、現像ローラ17は矢印D方向(反時計方向)に回転している。このことにより、トナーへの負荷を軽減し、長期間の使用においても高画質を維持することができる。トナー供給ローラ20は、例えば導電性芯金の外周に発泡体層を形成した弾性スポンジローラである。トナー供給ローラ20と現像ローラ17は所定の侵入量、即ち、トナー供給ローラ20が現像ローラ17により凹状とされるその凹み量△E、を持って接触している。
本発明においては、侵入量は、現像残トナーのはぎ取り性とトナーへの負荷のバランスから、0.3mm以上1.5mm以下であることが好ましく、0.7mm以上1.2mm以下であることがより好ましい。
トナー供給ローラ20と現像ローラ17とは、当接部Nにおいて互いに同方向に周速差を持って回転しており、この動作により、トナー供給ローラ20による現像ローラ17へのトナー供給とはぎ取りを行っている。その際、トナー供給ローラと現像ローラとの電位差を調整することにより、現像ローラへのトナー供給量を調整することができる。
本発明では、当接部における、供給ローラ(供給部材)の周速が、現像ローラ(トナー担持体)の周速に対して110%以上250%以下であることが好ましく、150%以上200%以下であることがより好ましい。トナー供給ローラに対しては、DCバイアスを印加してもよい。
以下、本発明に好適に用いられるトナー供給ローラの詳細について説明する。
図2におけるトナー供給ローラ20は、例えば導電性支持体と、導電性支持体に支持される発泡層と、を備える。具体的には、導電性支持体たる芯金電極20aと、その周囲に気泡同士がつながっている連続気泡体(連泡)から構成される発泡層としての発泡ウレタン層20bが設けられており、図中Eの方向に回転する。表層のウレタンを連続気泡体とすることで、トナー供給ローラ20内部にトナーが多量に進入可能となる。また、トナー供給ローラ20の表面セル径は50μm〜1000μmとするのが好ましい。
次に、本発明に係る各物性の測定方法に関して記載する。
<トナーの重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行った。前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
<ポリエステル樹脂Aの酸価>
本発明におけるポリエステル樹脂Aの酸価は、以下の操作により求められる。
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。ポリエステル樹脂Aの酸価はJIS K 0070−1992に準じて測定した。具体的には、以下の手順に従って測定した。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得た。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1lとした。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得た。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管した。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求めた。前記0.1モル/l塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いた。
(2)操作
(A)本試験
粉砕したポリエステル樹脂Aの試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン:エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解した。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定した。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとした。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン:エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行った。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出した。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
<ポリエステル樹脂Aの重量平均分子量>
ポリエステル樹脂A0.03gをo−ジクロロベンゼン10mlに分散して溶解後、135℃において24時間振投機で振とうを行い、0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用い、下記の条件にて分析を行う。
[分析条件]
分離カラム:Shodex(TSK GMHHR−H HT20)×2
カラム温度:135℃
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
移動相流速:1.0ml/min.
試料濃度 :約0.3%
注入量 :300μl
検出器 :示差屈折率検出器 Shodex RI−71
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(東ソー社製TSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500)により作成した分子量校正曲線を使用する。
<ポリエステル樹脂Aの誘電正接>
4284AプレシジョンLCRメーター(ヒューレット・パッカード社製)を用いて、周波数10000Hzにおける複素誘電率の測定値から誘電正接(tanδ=ε”/ε’)を算出する。
乳鉢で粗粉砕したポリエステル樹脂Aを0.3〜0.7g秤量し、350Kgf/cm2の荷重を2分間かけて成型し、直径25mm、厚さ1mm以下の円盤状の測定試料にする。この測定試料を直径25mmの誘電率測定治具(電極)を装着したARES(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)を用い、25℃で、350gの荷重をかけた状態で1000Hz〜100000Hzの周波数範囲で3回測定する。そして、各測定の10000Hzにおける測定値の平均値を算出することにより得られる。
<荷電制御樹脂のpKa>
荷電制御樹脂の測定サンプル0.100gを250mlのトールビーカーに精秤し、THF150mlを加え、30分かけて溶解する。この溶液にpH電極を入れ、サンプルのTHF溶液のpHを読み取る。その後、0.1モル/l水酸化カリウムエチルアルコール溶液(キシダ化学社製)を10μlずつ添加し、その都度pHを読み取り滴定を行う。pHが10以上となり、30μl添加してもpHの変化がなくなるまで0.1モル/l水酸化カリウムエチルアルコール溶液を加える。得られた結果から0.1モル/l水酸化カリウムエチルアルコール溶液添加量に対するpHをプロットし、滴定曲線を得る。得られた滴定曲線からpH変化の傾きが一番大きいところを中和点とし、添加した水酸化カリウム量から酸価(mgKOH/g)を算出する。pKaは中和点までに必要とした0.1モル/l水酸化カリウムエチルアルコール溶液量の半分量でのpHと同じ値であるため、滴定曲線から半分量でのpHを読み取る。
<電子写真感光体の下引き層の体積抵抗率の測定方法>
下引き層の体積抵抗率を測定する方法を説明する。図3(A)は、下引き層の体積抵抗率を測定する方法を説明するための上面図であり、図3(B)は、下引き層の体積抵抗率を測定する方法を説明するための断面図である。
下引き層の体積抵抗率は、常温常湿環境下(温度23℃±3℃、湿度50%±5%RH)において測定する。下引き層202の表面に銅製テープ203(住友スリーエム(株)製、型番No.1181)を貼り、これを下引き層202の表面側の電極とする。また、支持体(導電性支持体)201を下引き層202の裏面側の電極とする。銅製テープ203と支持体201との間に電圧を印加するための電源206、及び、銅製テープ203と支持体201との間を流れる電流を測定するための電流測定機器207を設置する。また、銅製テープ203に電圧を印加するため、まず銅製テープ203の上に銅線204を載せる。そして、銅線204が銅製テープ203からはみ出さないように銅線204の上から銅製テープ203と同様の銅製テープ205を貼り、銅製テープ203に銅線204を固定する。銅製テープ203には、銅線204を用いて電圧を印加する。
銅製テープ203と支持体201との間に電圧を印加しないときのバックグラウンド電流値をI0(A)とし、直流電圧(直流成分)のみの電圧を−1V印加したときの電流値をI(A)とする。そして、下引き層202の膜厚d(cm)、下引き層202の表面側の電極(銅製テープ203)の面積をS(cm2)とする。そして、下記式(3)で表される値を下引き層202の体積抵抗率ρ(Ω・cm)とする。
ρ=1/(I−I0)×S/d(Ω・cm) ・・・(3)
この測定では、絶対値で1×10−6A以下という微小な電流量を測定するため、電流測定機器207としては、微小電流の測定が可能な機器を用いて行うことが好ましい。そのような機器としては、例えば、横河ヒューレットパッカード製のpAメーター(商品名:4140B)や、アジレントテクノロジー(株)製のハイレジスタンスメーター(商品名:4339B)が挙げられる。
なお、下引き層の体積抵抗率は、支持体上に下引き層のみを形成したサンプルで測定してもよく、又、電子写真感光体から下引き層上の各層を剥離して、支持体上に下引き層のみを残した構成で測定しても、同様の値を示す。
以下、発明を実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。実施例中及び比較例中の部及び%は特に断りがない場合、全て質量基準である。以下に樹脂及びトナーの製造方法について記載する。
<ポリエステル樹脂1の製造例>
原材料モノマーを表13に示した仕込み比率で混合した混合物100質量部と触媒としてジ(2−エチルヘキサン酸)錫0.55質量部を窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した6リットルの四つ口フラスコに入れた。その後、窒素雰囲気下、200℃で6時間かけて反応させた。更に210℃にて無水トリメリット酸を添加して、40kPaの減圧下にて反応を行い、重量平均分子量(Mw)が12000になるまで反応を続けた。得られたポリエステル樹脂Aをポリエステル樹脂1とする。ポリエステル樹脂1の組成分析を行い、イソソルビドユニット比率の結果を表13に示す。また、得られたポリエステル樹脂1の酸価は表13のようになった。
ポリエステル樹脂1の組成分析は1−NMRにより行った。具体的な測定方法は下記の通りである。
測定装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl3)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて測定試料を調製する。当該測定試料を用いて上記条件にて測定した。
<ポリエステル樹脂の製造例2〜16>
酸成分とアルコール成分の仕込み量を表13のように変更することを除いて、ポリエステル樹脂1の製造例と同様にしてポリエステル樹脂2〜16を製造した。ポリエステル樹脂2〜16の物性を表13に示す。
<ポリエステル樹脂の製造例17〜22>
ポリエステル樹脂1の製造例において、反応時間を調整し、重量平均分子量(Mw)を変えた以外は同様に行い、ポリエステル樹脂17〜22を製造した。ポリエステル樹脂17〜22の物性を表13に示す。
表13中、TPA:テレフタル酸、TMA:トリメリット酸、BPA(PO):ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物、EG:エチレングリコールを意味する。
次に実施例として用いた荷電制御樹脂の合成例、及びそれを含むトナーの製造例を以下に示す。
<重合性単量体M−3の合成例>
(工程1)
2,5−ジヒドロキシ安息香酸100gと80%硫酸1441gとを50℃に加熱混合した。この混合液にtert−ブチルアルコール144gを加えて50℃で30分間撹拌した。その後、この混合液にtert−ブチルアルコール144gを加え30分間撹拌する操作を3回行った。反応液を室温まで冷却し、氷水1kgにゆっくり注いだ。析出物を濾過、水洗し、その後、ヘキサン洗浄した。この析出物をメタノール200mLに溶解させ、水3.6Lに再沈殿させた。濾過後、80℃にて乾燥することで下記式(10)に示すサリチル酸中間体74.9gを得た。
(工程2)
上記式(10)で示されるサリチル酸中間体25.0gをメタノール150mLに溶解させ、炭酸カリウム36.9gを加えて65℃に加熱した。この反応液に4−(クロロメチル)スチレン18.7gとメタノール100mLの混合液を滴下し、65℃にて3時間反応させた。反応液を冷却後、濾過し、濾液を濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をpH=2の水1.5Lに分散させ、酢酸エチルを加えて抽出した。その後、水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下、酢酸エチルを留去して析出物を得た。析出物をヘキサン洗浄後、トルエンと酢酸エチルにて再結晶することで精製し、上記重合性単量体M−3を20.1g得た。
<重合性単量体M−8の合成例>
式(10)のサリチル酸中間体を2,4−ジヒドロキシ安息香酸18gに変更する以外は、重合性単量体M−3の合成(工程2)と同じ方法で、上記重合性単量体M−8を得た。
<重合性単量体M−9の合成例>
式(10)のサリチル酸中間体を2,3−ジヒドロキシ安息香酸18g に変更する以外は、重合性単量体M−3の合成(工程2)と同じ方法で、上記重合性単量体M−9を得た。
<重合性単量体M−10の合成例>
式(10)のサリチル酸中間体を2,6−ジヒドロキシ安息香酸18gに変更する以外は、重合性単量体M−3の合成(工程2)と同じ方法で、上記重合性単量体M−10を得た。
<荷電制御樹脂1の合成例>
上記重合性単量体M−3 9.9g、スチレン 60.1gをジメチルホルムアミド42.0mlに溶解させ、窒素バブリングをしながら1時間撹拌した後、110℃まで加熱した。この反応液に、開始剤としてtert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート(日本油脂株式会社製、商品名パーブチルI)2.1gとトルエン42mlの混合液を滴下した。更に110℃にて4時間反応した。その後、冷却しメタノール1Lに滴下し、析出物を得た。得られた析出物をテトラヒドロフラン120mlに溶解後、メタノール1.80Lに滴下し、白色析出物を析出させ、濾過し、減圧下90℃にて乾燥させることで、荷電制御樹脂1を57.6g得た。得られた荷電制御樹脂1のNMRと酸価を測定し、重合性単量体M−3に由来する成分の含有量を確認した。
<荷電制御樹脂2〜6の合成例>
原料の仕込み量を表14のように変更する以外は荷電制御樹脂1の合成例と同様にして荷電制御樹脂2〜荷電制御樹脂6を得た。
<荷電制御樹脂7の合成例>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した反応容器にキシレン200部を仕
込み、窒素気流下で還流した。
次に、下記材料を混合し、上記反応容器に撹拌しながら滴下し10時間保持した。
5−ビニルサリチル酸 9.0部
スチレン 75.0部
2−エチルヘキシルアクリレート 16.0部
ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート) 5.0部
その後、蒸留を行って溶剤を留去し、減圧下40℃で乾燥し荷電制御樹脂7を得た。
<荷電制御樹脂8〜9の合成例>
荷電制御樹脂7の合成例のうち、下記変更以外は同様に合成を行った。
5−ビニルサリチル酸9.0部をフタル酸1ビニル5.3部に変更した以外は、荷電制御樹脂7の合成例と同様にして、荷電制御樹脂8を得た。
5−ビニルサリチル酸9.0部を1−ビニルナフタレン−2−カルボン酸10.9部に変更した以外は、荷電制御樹脂7の合成例と同様にして、荷電制御樹脂9を得た。
<荷電制御樹脂10の合成例>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した反応容器にキシレン200質量部を仕込み、窒素気流下で還流した。次に下記材料を混合し、上記反応容器に撹拌しながら滴下し10時間保持した。
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸 6.0部
スチレン 72.0部
2−エチルヘキシルアクリレート 18.0部
その後、蒸留を行って溶剤を留去し、減圧下40℃で乾燥し荷電制御樹脂10を得た。
<荷電制御樹脂11の合成例>
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を取り付けた反応容器に、下記材料を混合し、温度230℃で8時間の重縮合反応を行い、さらに、8kPaで1時間にわたって重縮合反応を継続した。
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 500部
テレフタル酸 154部
フマル酸 45部
オクチル酸スズ 2部
その後、160℃に冷却することにより、ポリエステル樹脂を形成し、次いで、温度160℃の状態でアクリル酸10部を投入し、混合させて15分間保持した後、
スチレン 142部
n−ブチルアクリレート 35部
重合開始剤(ジ−t−ブチルペルオキサイド) 10部
の混合物を滴下ロートにより1時間かけて滴下した後、温度160℃を維持した状態で1時間にわたって付加重合反応を行った後、200℃に昇温させ、10kPaで1時間保持することにより、荷電制御樹脂11を得た。
表14中、St:スチレン、2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート、aの含有量:それぞれの荷電制御樹脂で用いた重合性単量体に由来する成分の含有量を意味する。
<トナー1の製造例>
スチレン単量体100部に対して、C.I.Pigment Blue15:3を16.5部、ジ−ターシャリーブチルサリチル酸のアルミ化合物〔ボントロンE88(オリエント化学工業社製)〕を3.0部用意した。これらを、アトライター(三井鉱山社製)に導入し、半径1.25mmのジルコニアビーズ(140質量部)を用いて200rpmにて25℃で180分間撹拌を行い、マスターバッチ分散液1を調製した。
一方、イオン交換水710部に0.1M−Na3PO4水溶液450部を投入し60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7部を徐々に添加してリン酸カルシウム化合物を含む水系媒体を得た。
・マスターバッチ分散液1 40部
・スチレン単量体 49.5部
・n−ブチルアクリレート単量体 16.5部
・炭化水素系ワックス(フィッシャートロプシュワックス、最大吸熱ピークのピーク温度=78℃、Mw=750) 9部
・荷電制御樹脂1 0.3部
・ポリエステル樹脂1 4部
上記材料を65℃に加温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、5,000rpmにて均一に溶解し分散した。これに、重合開始剤1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの70%トルエン溶液7.1質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、温度65℃、N2雰囲気下において、T.K.ホモミクサーにて12,000rpmで10分間撹拌し、重合性単量体組成物を造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ温度67℃に昇温し、重合性ビニル系単量体の重合転化率が90%に達したところで、0.1mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して水系分散媒体のpHを9に調整した。更に昇温速度40℃/hで80℃に昇温し4時間反応させた。重合反応終了後、減圧下で補給用トナー粒子の残存モノマーを留去した。水系媒体を冷却後、塩酸を加えpHを1.4にし、6時間撹拌することでリン酸カルシウム塩を溶解した。トナー粒子を濾別し水洗を行った後、温度40℃にて48時間乾燥した。得られた乾燥品を多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で、超微粉及び粗粉を同時に厳密に分級除去して、重量平均粒径(D4)6.3μmのシアン色のトナー粒子1を得た。
100部のトナー粒子1に対し、1.2部の疎水性シリカ粒子RY200(日本アエロジル株式会社社製)と0.4部の酸化チタン微粉体JMT−150AO(テイカ株式会社社製)を三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)で5分間乾式混合して、シアントナー1を得た。
<トナー2から11の製造例>
トナー1の製造例において、ポリエステル1を表15のとおり変更し以外は同様に行い、トナー2から11を得た。
<トナー12から17の製造例>
トナー1の製造例において、ポリエステル1の添加量を表15のとおり変更し以外は同様に行い、トナー12から17を得た。
<トナー18から28の製造例>
トナー1の製造例において、ポリエステル1を表15のとおり変更し以外は同様に行い、トナー18から28を得た。
<トナー29から38の製造例>
トナー1の製造例において、荷電制御樹脂1を表14のとおり変更し以外は同様に行い、トナー29から38を得た。
次に、電子写真感光体の具体的な製造方法について示す。
<電子写真感光体(d−1)の製造例>
直径30mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003)を支持体とした。
次に、支持体上に導電層を形成した。導電層は金属酸化物粒子としての酸素欠損型酸化スズ(SnO2)が被覆されている酸化チタン(TiO2)粒子214部、結着樹脂としてのフェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ−325。)132部、および、メタノール40部、1−メトキシ−2−プロパノール58部を、直径0.8mmのガラスビーズ450部を用いたサンドミルに入れ、回転数:2000rpm、分散処理時間:4.5時間、冷却水の設定温度:18℃の条件で分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュ(目開き:150μm)でガラスビーズを取り除いた。ガラスビーズを取り除いた後、分散液中の金属酸化物粒子と結着樹脂の合計質量に対して10質量%になるように、表面粗し付与材としてのシリコーン樹脂粒子(モメンティブ社製、トスパール120)を分散液に添加した。更に、分散液中の金属酸化物粒子と結着樹脂の合計質量に対して0.01質量%になるように、レベリング剤としてのシリコーンオイル(東レダウコーニング社製、SH28PA)を分散液に添加した。この分散液を撹拌することによって、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間140℃で乾燥・熱硬化させることによって、膜厚が30.2μmの導電層を形成した。
次に、下引き層塗布液として、下記式(Y−1)に示す有機電子輸送性化合物3.0部、共重合ナイロン樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製)3.5部をメタノール(キシダ化学(株)製、特級)25.0部、および、n−ブタノール(キシダ化学(株)製、特級)6.5部に混合し、攪拌して溶解させて下引き層塗布液を調整した。
下引き層塗布液を上記導電層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を20分間温度120℃で乾燥させることによって、膜厚が1.0μmの下引き層を形成した。
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°および28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)を用意した。このヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶10部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部およびシクロヘキサノン250部を、直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、分散処理時間:3時間の条件で分散処理を行った。次に、酢酸エチル250部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が0.15μmの電荷発生層を形成した。
次に、下記式(9−1)示される化合物、及び下記式(9−2)で示される化合物をそれぞれ4部ずつ、及びビスフェノールZ型のポリカーボネート(商品名:Z400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)の10部を、ジメトキシメタンの50部及びo−キシレンの50部の混合溶剤に溶解させることによって、正孔輸送層用塗布液を調製した。この正孔輸送層用塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を40分間温度120℃で乾燥させることによって、膜厚が15μmの正孔輸送層を形成した。
このようにして、支持体、導電層、下引き層、電荷発生層、正孔輸送層の順に積層した電子写真感光体を作成した。また、下引き層の体積抵抗率を前述の方法で測定したところ、3.0×1015Ω・cmであった。
<電子写真感光体(d−2)の製造例>
電子写真感光体d−1の作成において、下引き層の作成を以下のように変更した以外は、像担持体d−1と同様に作成した。
式(A101)に示す有機電子輸送化合物4.0部、架橋剤として式(B1:保護基H5)5.0部をジメチアセトアミド50部とメチルエチルケトン50部の混合溶媒に溶解し、下引き層用塗布液を調製した。
この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間160℃で加熱し、溶媒を蒸発させるとともに、硬化させることによって、膜厚が0.5μmの下引き層を形成した。下引き層の体積抵抗率を前述の方法で測定したところ、1.2×1015Ω・cmであった。
<電子写真感光体(d−3)の製造例>
電子写真感光体d−1の作成において、下引き層の作成を以下のように変更した以外は、電子写真感光体d−1と同様に作成した。
式(A101)に示す有機電子輸送化合物4.0部、架橋剤として式(B1:保護基H5)5.0部、樹脂として式(D25)0.5部をジメチアセトアミド50部とメチルエチルケトン50部の混合溶媒に溶解し、下引き層用塗布液を調製した。
この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間160℃で加熱し、溶媒を蒸発させるとともに、硬化させることによって、膜厚が0.7μmの下引き層を形成した。下引き層の体積抵抗率を前述の方法で測定したところ、1.0×1015Ω・cmであった。
<電子写真感光体(d−4)の製造例>
電子写真感光体d−1の作成において、下引き層の作成を以下のように変更した以外は、電子写真感光体d−1と同様に作成した。
式(A117)に示す有機電子輸送化合物4.0部、架橋剤として式(B1:保護基H1)5.5部、樹脂として式(D25)0.5部をTHF50部と1−メトキシ−2−プロパノール50部の混合溶媒に溶解し、撹拌することによって、下引き層用塗布液を調製した。
この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間160℃で加熱し、溶媒を蒸発させるとともに、硬化させることによって、膜厚が0.7μmの下引き層を形成した。下引き層の体積抵抗率を前述の方法で測定したところ、3.8×1014Ω・cmであった。
<電子写真感光体(d−5)の製造例>
電子写真感光体d−1の作成において、下引き層の作成を以下のように変更した以外は、電子写真感光体d−1と同様に作成した。
式(A107)に示す有機電子輸送化合物4.0部、架橋剤として式(B1:保護基H1)5.5部、をTHF50部と1−メトキシ−2−プロパノール50部の混合溶媒に溶解した。酸化チタン(CR−EL、石原産業(株)製)5.0部と、直径0.8mmのガラスビーズを25部とを加えて混合液とした。この混合液を、ペイントシェーカーで16時間分散処理し、ガラスビーズを除去することによって下引き層用塗布液とした。
この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間160℃で加熱し、溶媒を蒸発させるとともに、硬化させることによって、膜厚が1.3μmの下引き層を形成した。下引き層の体積抵抗率を前述の方法で測定したところ、4.1×1012Ω・cmであった。
<電子写真感光体(d−6)の製造例>
電子写真感光体d−1の作成において、下引き層の作成を以下のように変更した以外は、電子写真感光体d−1と同様に作成した。
式(A107)に示す有機電子輸送化合物4.0部、架橋剤として式(B1:保護基H1)5.5部、樹脂として式(D25)0.5部をTHF50部と1−メトキシ−2−プロパノール50部の混合溶媒に溶解した。酸化チタン(CR−EL、石原産業(株)製)5.0部と、直径0.8mmのガラスビーズを25部とを加えて混合液とした。この混合液を、ペイントシェーカーで16時間分散処理し、ガラスビーズを除去することによって下引き層用塗布液とした。
この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間160℃で加熱し、溶媒を蒸発させるとともに、硬化させることによって、膜厚が0.6μmの下引き層を形成した。下引き層の体積抵抗率を前述の方法で測定したところ、2.3×1012Ω・cmであった。
<電子写真感光体(d−7)の製造例>
電子写真感光体d−1の作成において、下引き層の作成を以下のように変更した以外は、電子写真感光体d−1と同様に作成した。
上記式(Y−1)に示す有機電子輸送化合物3.0部、N−メトキシメチル化ナイロン(商品名:トレジンEF−30T、ナガセケムテックス(株)(旧・帝国化学産業(株))製)4.5部をメタノール(キシダ化学(株)製、特級)25.0部、および、n−ブタノール(キシダ化学(株)製、特級)6.5部に混合し、攪拌して溶解させて下引き層用塗布液を調整した。
この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間100℃で加熱し、溶媒を蒸発させ、膜厚が1.1μmの下引き層を形成した。下引き層の体積抵抗率を前述の方法で測定したところ、6.5×1011Ω・cmであった。
<電子写真感光体(d−8)の製造例>
電子写真感光体d−1の作成において、下引き層の作成を以下のように変更した以外は、電子写真感光体d−1と同様に作成した。
式(A107)に示す有機電子輸送化合物4.0部、架橋剤として式(B1:保護基H1)5.5部をTHF50部と1−メトキシ−2−プロパノール50部の混合溶媒に溶解した。更に、酸化チタン(CR−EL、石原産業(株)製)9.0部と、直径0.8mmのガラスビーズを25部とを加えて混合液とした。この混合液を、ペイントシェーカーで16時間分散処理し、ガラスビーズを除去することによって下引き層用塗布液とした。
この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間160℃で加熱し、溶媒を蒸発させるとともに、硬化させることによって、膜厚が1.4μmの下引き層を形成した。下引き層の体積抵抗率を前述の方法で測定したところ、7.2×1011Ω・cmであった。
<電子写真感光体(d−9)の製造例>
電子写真感光体d−1の作成において、下引き層の作成を以下のように変更した以外は、電子写真感光体d−1と同様に作成した。
共重合ナイロン樹脂(商品名:アミランCM8000)4.5部をメタノール(キシダ化学(株)製、特級)25.0部、および、n−ブタノール(キシダ化学(株)製、特級)6.5部に混合し、攪拌して溶解させた。更に、酸化チタン(CR−EL、石原産業(株)製)2.0部と、直径0.8mmのガラスビーズを25部とを加えて混合液とした。この混合液を、ペイントシェーカーで16時間分散処理し、ガラスビーズを除去することによって下引き層用塗布液とした。
この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間100℃で加熱し、溶媒を蒸発させ、膜厚が1.0μmの下引き層を形成した。下引き層の体積抵抗率を前述の方法で測定したところ、7.1×1012Ω・cmであった。
<電子写真感光体(d−10)の製造例>
電子写真感光体d−1の作成において、下引き層の作成を以下のように変更した以外は、電子写真感光体d−1と同様に作成した。
上記式(Y−1)に示す有機電子輸送化合物3.0部、N−メトキシメチル化ナイロン(商品名:トレジンEF−30T)4.5部をメタノール(キシダ化学(株)製、特級)25.0部、および、n−ブタノール(キシダ化学(株)製、特級)6.5部に混合し、攪拌して溶解させた。更に、酸化チタン(CR−EL、石原産業(株)製)5.0部と、直径0.8mmのガラスビーズを25部とを加えて混合液とした。この混合液を、ペイントシェーカーで16時間分散処理し、ガラスビーズを除去することによって下引き層用塗布液とした。
この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間100℃で加熱し、溶媒を蒸発させ、膜厚が1.3μmの下引き層を形成した。下引き層の体積抵抗率を前述の方法で測定したところ、4.5×1010Ω・cmであった。
<電子写真感光体(d−11)の製造例>
電子写真感光体d−1の作成において、下引き層の作成を以下のように変更した以外は、電子写真感光体d−1と同様に作成した。
N−メトキシメチル化ナイロン(商品名:トレジンEF−30T)4.5部をメタノール(キシダ化学(株)製、特級)25.0部、および、n−ブタノール(キシダ化学(株)製、特級)6.5部に混合し、攪拌して溶解させた。更に、酸化チタン(CR−EL、石原産業(株)製)5.0部と、直径0.8mmのガラスビーズ25部とを加えて混合液とした。この混合液を、ペイントシェーカーで16時間分散処理し、ガラスビーズを除去することによって下引き層用塗布液とした。
この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間100℃で加熱し、溶媒を蒸発させ、膜厚が1.3μmの下引き層を形成した。下引き層の体積抵抗率を前述の方法で測定したところ、6.2×1010Ω・cmであった。
〔実施例1〕
シアントナー1を現像剤とし、温度23℃、相対湿度50%環境下でA4のカラーレーザーコピア用紙(キヤノン製、80g/m2)を用いて画像評価を行った。画像形成装置としては市販のレーザープリンターであるLBP−7700C(キヤノン製)および及びプロセスカートリッジであるトナーカートリッジ323(シアン)(キヤノン製)の改造カートリッジを用いた。
この改造カートリッジはカートリッジ内部のギアを変更・追加することにより、トナー供給ローラがトナー担持ローラとの当接部において各々の表面が同一の方向に移動するように改造を行った。なお、トナー供給ローラのトナー担持ローラ基準での周速は160%となるよう調整を行った。また、クリーニングブレードの電子写真感光体への侵入量を0.8mmに調整した。カートリッジ内部からから製品トナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、本発明によるトナーを160g充填して評価を行った。なお、マゼンタ、イエロー、ブラックの各ステーションにはそれぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたマゼンタ、イエロー、及びブラックカートリッジを挿入して評価を行った。
上記で説明した改造機を用い、耐久試験を行うことによりトナーを評価した。
耐久試験の条件は、以下の通りである。高温高湿環境(30℃,80%RH)、低温低湿環境(15℃,10%RH)の各環境下において、印字比率が1%のオリジナル画像を1日に1000枚プリントアウトを行った。また1日1000枚のプリントアウト後は、1週間各環境下で放置し、その後、次の1日1000枚のプリントアウトを実施し、合計13000枚のプリントアウトを行った。なお、評価のタイミングは1000枚毎に、各評価日の最初と最後において、各評価用の画像を出力して、それぞれの評価基準により行った。詳細な結果を表17に示す。
<評価>
(1)画像かぶり
画質(環境帯電安定性、帯電分布及び帯電の立ち上がり性)の観点から、画像カブリを以下の方法で評価した。
各評価時に、ベタ白画像を出力して、下記評価基準により行った。紙は、A4の普通紙(GF−C081A4:キヤノンマーケティングジャパン社製)を用いて行った。
「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)を用いて、標準紙とプリントアウト画像の白地部分の反射率を測定して、下記式によりカブリ(反射率;%)を算出した。フィルターは、ブルーフィルターを装着して測定した。
なお、評価基準は耐久を通しての最悪値を以下の基準により判断した。
かぶり(反射率;%)=(標準紙の反射率;%)−(サンプルの反射率;%)
A:かぶりが0.8%未満である。
B:かぶりが0.8%以上1.6%未満である。
C:かぶりが1.6%以上2.1%未満である。
D:かぶりが2.1%以上である。
(2)画像濃度安定性
画質(環境帯電安定性、帯電分布及び帯電の立ち上がり性)の観点から、画像濃度安定性を以下の方法で評価した。
各評価時にベタ黒画像を出力した。画像濃度は、カラー反射濃度計(X−RITE 404Amanufactured by X−Rite Co.)を用いて、ベタ黒画像の中心部を測定した。上記の高温高湿環境(30℃,80%RH)、低温低湿環境(15℃,10%RH)の各環境下での画像出力試験において、1週間放置前後に、毎回、ベタ画像を1枚ずつ出力し、各画像の濃度を測定した。得られた画像濃度の内、濃度が最大のものと最小のものとの差を求め以下の評価基準に基づいて示した。
A:画像濃度差が0.3以下である。
B:画像濃度差が0.3より大きく、0.5以下である。
C:画像濃度差が0.5より大きい。
(3)画像均一性の評価
画質(転写性、帯電分布及び帯電の立ち上がり性)の観点から、画像均一性を以下の方法で評価した。上記耐久試験の12000枚が出力された直後にベタ画像を出力し、画像の均一性を目視評価した。
A:画像濃度にムラがなく均一である。
B:画像濃度にややムラがある。
C:画像濃度にムラがある。
(4)ゴーストの評価
画質(帯電分布及び帯電の立ち上がり性)の観点から、低温低湿環境下にて以下の方法でゴースト評価を行った。
低温低湿環境下での画像出力試験において、1週間放置前後に、毎回、画像パターンとして、1枚内で先端部に15mm角のベタ黒、その後全面ハーフトーンの画像を印字した。そして、ハーフトーン部分に現れる現像剤担持ローラ周期の濃度ムラを目視評価し、以下の基準でゴーストの評価とした。
[L/L画像弊害評価]
A:ゴーストが認められない。
B:極軽微なゴーストが認められる。
C:顕著なゴーストが認められる。
前記条件でトナー1を評価したところ、トナー1は、全ての評価項目において非常に良好な結果を示した。詳細な結果を表17に示す。
(5)細線再現性(画質)
画質の観点から、細線再現性の評価を行った。上記画像出力において、4600枚の画像出力後、線幅3ピクセルの格子模様がA4用紙全面に印刷された画像(印字面積比率4%)を印刷し、細線再現性を評価した。3ピクセルの線幅は理論上127μmである。画像の線幅をマイクロスコープVK−8500(キーエンス製)で測定する。無作為に5点選んで線幅を測定し、最小値と最大値を除いた3点の平均値をd(μm)としたとき、細線再現性指数として下記のLを定義する。
L(μm)=|127−d|
Lは理論上の線幅127μmと、出力された画像上の線幅dとの差を定義したものである。dは127より大きくなる場合と、小さくなる場合とがあるため、差の絶対値として定義している。Lが小さいほど優れた細線再現性を示す。
(評価基準)
A:Lが0μm以上5μm未満。
B:Lが5μm以上15μm未満。
C:Lが15μm以上30μm未満。
〔実施例2から32、比較例1から9〕
実施例1において、トナー及び/または電子写真感光体を表16のとおり変更し、実施例1と同様に評価した。詳細な結果を表17に示す。
〔実施例31〕
実施例1において、評価機(改造機)の当接部における供給部材のトナー担持体への侵入量を0.3mmになるようにした以外は同様に行い評価を行った。評価結果を表17に示す。
〔実施例32〕
実施例1において、評価機(改造機)の当接部における供給部材のトナー担持体への侵入量を1.5mmになるようにした以外は同様に行い評価を行った。評価結果を表16に示す。
〔実施例33〕
実施例1において、評価機(改造機)の供給部材の当接部の周速が、トナー担持体の当接部の周速に対して110%になるようにした以外は同様に行い評価を行った。評価結果を表17に示す。
〔実施例34〕
実施例1において、評価機(改造機)の供給部材の当接部の周速が、トナー担持体の当接部の周速に対して250%になるようにした以外は同様に行い評価を行った。評価結果を表17に示す。
〔実施例35と36〕
実施例1において、評価機(改造機)の当接部における供給部材のトナー担持体への侵入量をそれぞれ0.2mm、1.8mmになるようにした以外は同様に行い評価を行った。評価結果を表17に示す。
〔実施例37と38〕
実施例1において、評価機(改造機)の供給部材の当接部の周速が、トナー担持体の当接部の周速に対してそれぞれ90%、300%になるようにした以外は同様に行い評価を行った。評価結果を表17に示す。
〔実施例39〕
実施例1において、評価機本体のギア及びソフトウエア、カートリッジのギアを変更し、現像剤担持ローラの回転方向を反対方向にした以外は同様に行い評価を行った。評価結果を表17に示す。
〔実施例40から49〕
実施例1において、トナー及び/または電子写真感光体を表16のとおり変更し、実施例1と同様に評価した。詳細な結果を表17に示す。