JP6540773B2 - 真空脱ガス方法及び真空脱ガス装置 - Google Patents

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Description

本発明は、真空脱ガス方法及び真空脱ガス装置に関する。
製鉄の製鋼プロセスでは、転炉等で一次精錬処理された溶鋼の成分を調整するために、RH法や、DH−AD法、LVD法等の各種真空脱ガス方式を用いた二次精錬処理が行われる。このうち、RH法では、真空槽内で高真空に曝した溶鋼に対してArガスを投入し、溶鋼を還流・攪拌することで、主に溶鋼中のガス成分が除去される(真空脱ガス処理)。さらに、RH法では、真空脱ガス処理中の溶鋼に対して、上吹きランスから酸素ガスを吹きつけることにより、溶鋼中の炭素が除去(脱炭処理)されるため、高品質な鋼を製造することができる。
このRH法では、近年、二次精錬プロセスの効率化や処理速度の向上を目的とした様々な取り組みが行われている。例えば、特許文献1には、真空脱ガス処理中の溶鋼に対して、上吹きランスから酸素と燃料ガスとを噴出させ、燃焼させることにより、溶鋼の温度上昇を図る方法が記載されている。また、特許文献2には、真空脱ガス処理中の溶鋼に対して、複数のランスから酸素を吹きつけることにより、脱炭反応を促進させる方法が開示されている。さらに、特許文献3には、酸素供給量や、圧力(真空度)等の操業条件の調整によりスプラッシュを抑えつつも脱炭速度を維持する方法が記載さえている。さらに、特許文献4には、操業条件を変更することにより、酸素吹付マッハ数を調整し、脱炭と溶鋼の昇温を達成する方法が記載されている。
特許第2759021号公報 特開2002−294329号公報 特開平4−285111号公報 特許第2859709号公報
ところで、RH法では、溶鋼から水素や窒素等のガス成分を除去する際、真空槽中の真空度を上げることにより、脱ガス反応が促進されることが知られている。しかし、例えば50Torr以下の高い真空度下において、特許文献1,2に記載の方法のように上吹きランス等から酸素を溶鋼に吹きつけて脱炭処理を行う場合、吹きつける酸素の体積が増大することで吹きつけ流速が増大し、浴面動圧が高まることにより、スプラッシュの発生量が増大することが問題であった。スプラッシュは、溶鋼が表面のガス流動によって飛散する現象であり、これが生じると装置の内壁面や上吹きランスへの地金が付着し、操業が困難となることがある。
また、特許文献3に記載の方法では、炭素濃度、真空度及び酸素供給速度から算出される値(a)が所定の範囲になるように、溶鋼の炭素濃度に応じて真空度を調整している。しかし、真空度の調整だけでは、スプラッシュの発生量の低減と脱炭速度の向上とを両立させることが困難であった。
さらに、特許文献4に記載の方法では、脱炭速度を向上させるために、酸素供給圧力と真空度との比から計算されるマッハ数が所定値以上となるように、真空度や酸素供給圧力、酸素流量を調整している。しかし、このような方法で脱炭速度を向上させた場合、スプラッシュの発生量が増大する可能性があった。
そこで、本発明は、上記の課題に着目してなされたものであり、酸素ガス吹きつけによる脱炭反応を伴う真空脱ガス処理において、高い真空度下でスプラッシュの発生量を抑えつつも脱炭速度を高くすることが可能な真空脱ガス方法及び真空脱ガス装置を提供することを目的としている。
発明者らは、上記課題の解決のために鋭意検討を行った。そして、真空脱ガス処理において、真空槽から排出される排ガスの流量及びガス成分濃度の少なくとも一方を測定し、その測定結果に基づいて真空槽内の真空度を調整すると同時に、上吹きランスの溶鋼表面からの高さを調整することで、真空度下であっても溶鋼のスプラッシュの発生量を抑えつつ、脱炭速度を高くすることが可能であることを見出した。
本発明は上記知見に基づくものであり、以下の特徴を有している。
[1] 真空脱ガス装置の減圧させた真空槽内で溶鋼を還流させ、前記真空槽内に設けられた上吹きランスから前記溶鋼に酸素を吹きつける脱炭処理を行う真空脱ガス方法において、前記真空槽から排出される排ガスの流量及び前記排ガスのガス成分濃度の少なくとも一方を測定し、前記流量及び前記ガス成分濃度の少なくとも一方に基づいて、前記上吹きランスのランス高さ及び前記真空槽の真空度を調整することを特徴とする真空脱ガス方法。
[2] 前記脱炭処理を行う際に、前記流量を測定し、前記流量の減少に応じて、前記ランス高さを高くし、前記真空度を高くすることを特徴とする[1]に記載の真空脱ガス方法。
[3] 前記脱炭処理を行う際に、前記流量及び前記ガス成分濃度を測定し、前記ガス成分濃度及び前記流量から前記溶鋼の脱炭量を算出し、前記脱炭量の増加に応じて、前記ランス高さを高くし、前記真空度を高くすることを特徴とする[1]に記載の真空脱ガス方法。
[4] 真空脱ガス装置の減圧させた真空槽内で溶鋼を還流させ、前記真空槽内に設けられた上吹きランスから前記溶鋼に酸素を吹きつける脱炭処理を行う真空脱ガス方法において、前記溶鋼の炭素濃度を測定し、前記炭素濃度の減少に応じて、前記上吹きランスのランス高さを高くし、前記真空槽の真空度を高くすることで、前記ランス高さ及び前記真空度を調整することを特徴とする真空脱ガス方法。
[5] 前記ランス高さを6000mm以下の範囲で調整し、前記真空度を5Torr以上の範囲で調整することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかひとつに記載の真空脱ガス方法。
[6] 前記溶鋼は、Crを10.5mass%以上含むことを特徴とする[1]〜[5]のいずれかひとつに記載の真空脱ガス方法。
[7] 減圧させた真空槽内で溶鋼を還流する真空脱ガス装置であって、前記真空槽内に設けられる上吹きランスと、前記上吹きランスから溶鋼に酸素を吹きつける脱炭処理を行う際に、前記真空槽から発生する排ガスの流量及び前記排ガスのガス成分濃度の少なくとも一方を測定する測定部と、前記流量及び前記ガス成分濃度の少なくとも一方に基づいて、前記上吹きランスのランス高さ及び前記真空槽の真空度を調整する制御部と、を備えることを特徴とする真空脱ガス装置。
本発明によって、真空脱ガス装置の減圧下の真空槽内を還流する溶鋼に、上吹きランスから酸素ガスを吹き込むことで脱炭処理を行う際に、スプラッシュの発生量を抑えつつ、脱炭速度を高くすることができる真空脱ガス方法及び真空脱ガス装置が提供される。
本発明の一実施形態に係る真空脱ガス装置を示す断面図である。 上吹きランスの先端部を示す断面図である。 実施例の条件2における排ガスの流量に対するランス高さ及び真空度の設定値を示すグラフである。 実施例の条件4における排ガスの流量に対するランス高さ及び真空度の設定値を示すグラフである。 実施例の各条件における、排ガスの流量の変化を示すグラフである。
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の細部について記載される。しかしながら、かかる特定の細部がなくても1つ以上の実施態様が実施できることは明らかであろう。他にも、図面を簡潔にするために、周知の構造及び装置が略図で示されている。
<第1の実施形態>
[真空脱ガス装置の構成]
はじめに、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る真空脱ガス装置1の構成について説明する。真空脱ガス装置1は、RH方式の脱ガス装置であり、取鍋2に収容された溶鋼3に対して脱ガスや脱炭等の精錬処理を行う。溶鋼3は、予め転炉等の精錬装置において、一次精錬処理される。
真空脱ガス装置1は、真空槽4と、上昇側浸漬管5と、下降側浸漬管6と、ダクト7と、副原料投入管8と、上吹きランス9と、測定部10と、制御部11とを有する。
真空槽4は、内面に耐火物がライニングされた略円筒状の容器である。真空槽4は、鉛直方向下側の端に上昇側浸漬管5及び下降側浸漬管6が接続され、上部にダクト7及び副原料投入管8が接続される。
上昇側浸漬管5及び下降側浸漬管6は、略円筒状の形状を有し、内面及び下端側の外面に耐火物がライニングされる。また、上昇側浸漬管5は、不図示のガス供給装置から供給されるガスを内面から吹き込むように構成される。
ダクト7は、真空排気装置(不図示)に接続され、真空排気装置によって真空槽4の内部の気圧を低くすることができるように構成される。
副原料投入管8は、不図示の複数のホッパーに接続され、各ホッパーから合金鉄や脱酸剤、造滓剤等の各種副原料が送られることで、真空槽4内の溶鋼3に副原料を投入する。
上吹きランス9は、図2に示すように、長手方向(図1,2の紙面に対する上下方向)に延在する酸素供給路91が内部に形成され、下端にノズル92が設けられる。ノズル92は、ラバール型の形状を有する。また、上吹きランス9の真空槽4の外に配された上端側は、酸素供給装置(不図示)及び昇降装置(不図示)に接続される。このような構成の上吹きランス9は、酸素供給装置を介して送られる酸素ガスを、ノズル92から真空槽4内の溶鋼3に吹きつける。また、このような構成の上吹きランス9は、昇降装置が駆動することで、長手方向に昇降可能に構成される。
測定部10は、ダクト7に設けられる測定装置であり、真空槽4からの排ガスの流量[kg/h]を測定する流量測定機器(不図示)と、排ガスの各ガス成分の濃度(ガス成分濃度)を測定するガス成分分析機器(不図示)とを有する。測定部10は、ダクト7を流れる排ガスの流量及びガス成分濃度を測定し、電気的に接続される制御部11に、排ガスの流量及びガス成分濃度の測定結果を送信する。
制御部11は、測定部10から取得する排ガスの流量及びガス成分濃度の測定結果に基づいて、後述する脱炭処理中に真空排気装置及び昇降装置を制御することで、真空度及びランス高さHを制御する。制御部11による真空度及びランス高さHの制御方法についての詳細は、後述する。
[真空脱ガス処理方法]
次に、第1の実施形態に係る真空脱ガス処理方法について説明する。まず、真空槽4を下降させ、取鍋2内に収容された溶鋼3に上昇側浸漬管5および下降側浸漬管6を浸漬させる。溶鋼3は、炭素濃度が1.0mass%以下のものであればよい。溶鋼3の炭素濃度が1.0mass%超となると脱炭時間が非常に長くなるため、真空脱ガス処理前に炭素濃度を1.0mass%以下まで低減しておくことが望ましい。
次いで、真空槽4内の真空度を90Torr以下(例えば、90Torr)にし、真空槽4内の所定の高さまで溶鋼3を吸い上げることで、真空脱ガス処理を開始する。さらに、上昇側浸漬管5の内面からArガスを吹き込むことにより、溶鋼3を還流させる。これにより、溶鋼3中の水素や窒素といったガス成分が除去される。真空度が高いほうが、脱ガス速度が高くなるので好ましいが、一方でスプラッシュが発生するなどして操業を阻害する可能性もある。よって、溶鋼3中の炭素濃度を見ながら、真空度を調節することが好ましい。たとえば、真空度を段階的に高くするようにして、5Torr以上60以下とすることが好ましく、5Torr以上50Torr以下とすることがより好ましい。真空度を60Torr程度とすることで、高い脱ガス速度で真空脱ガス処理が行われることができ、真空度を50Torr以下とすることでさらに高い脱ガス速度で処理を行うことができる。一方、真空度が5Torr以下になると、ガスの体積膨張が激しくなり、溶鋼3の浴面における酸素ガスの動圧が低くなる可能性があるため、真空度を5Torr以上とすることが好ましい。なお、ここで言う真空度は、絶対圧基準での真空度とする。
また、真空脱ガス処理が開始されると、測定部10は、ダクト7を流れる排ガスの流量及びガス成分濃度を測定する。排ガスの流量及び炭素濃度の測定は、真空脱ガス処理が行われる間、所定の時間間隔で継続して行われる。測定部10による排ガス流量及びガス成分濃度の測定結果は、制御部11へと送られる。そして、制御部11は、取得した排ガス流量及びガス成分濃度の測定結果から、溶鋼3の脱炭量を算出する。具体的には、制御部11は、排ガスの流量及びガス成分濃度から得られる排ガス中の炭素量の累積値を、溶鋼3の脱炭量として算出する。
そして、溶鋼3を還流させた状態で、上吹きランス9から一定の送酸量(供給量)で酸素ガスを溶鋼3に吹き込み、溶鋼3中の炭素を酸化除去する脱炭処理を行う。脱炭処理は、所定量の酸素ガスが吹き込まれるまで行われる。酸素ガスの供給量(送酸量)は、一般的なRH方式の真空脱ガス装置1の場合、2000Nm/h以上3000Nm/h以下の範囲とすることが好ましい。送酸量を2000Nm/h以上とすることで、十分な脱炭速度を得ることができる。一方、送酸量を3000Nm/h以下とすることで、10Torr程度の高い真空度においても、スプラッシュの発生を防止することができる。
また、脱炭処理では、制御部11は、排ガスの流量及びガス成分濃度から算出される脱炭量に基づいて、ランス高さH及び真空槽4内の真空度を調整する。このとき、制御部11は、脱炭量に応じて予め設けられた設定値となるように、ランス高さH及び真空度を調整する。
ここで、排ガス流量や成分濃度を監視する理由について述べる。
まず、排ガス流量を監視する理由について、上吹きによる脱炭反応は、反応式「2C+O→2CO」によって表現される。つまり、1molの酸素によって生じた脱炭反応からCOガスが2mol発生するため、体積が2倍となり、排ガスの流量が増加する。この排ガスの流量の増加分から脱炭速度を予測することが可能である。
また、処理の初期は溶鋼3のガスとの界面付近に炭素が豊富に存在するために、処理の初期は脱炭反応が急激に進行する。しかし、溶鋼3中の炭素量が減少してくると、脱炭速度は、ガス−溶鋼界面への鋼中炭素の拡散律速へと移行するために、徐々に低下することがわかっている。つまり、前述した脱炭反応量に応じた排ガスの流量(体積)の増加を考慮することで、溶鋼3中の炭素量が排ガスの流量から間接的に予測される。このため、予測した溶鋼3中の炭素量に基づいて、処理中の条件変更を行うことが可能となる。
次に、成分濃度を監視する理由について述べる。前述した排ガスの流量を監視することで溶鋼3中の炭素量の予測は可能である。しかし、二次燃焼が考慮されていないため、相対的評価は可能であるが、実際の炭素量とずれが生じている可能性がある。そこで、排ガス流量に加えて成分濃度を同時に監視することで、より正確に溶鋼3中の炭素量の予測ができる。脱炭によって発生したCOガスは酸素ガスと反応して二次燃焼(反応式「2CO+O→2CO」)を引き起こす。全てのCOガスが二次燃焼するわけではなく、二次燃焼するCOガスの割合は処理条件に応じて変化する。特にランス高さが高くなると、溶鋼3の界面で発生したCOガスがダクト7に流れ込むまでに、COガスと酸素ガスと接触する可能性が高くなるために、二次燃焼量は増加する傾向がある。すなわち、排ガスの流量に加え、排ガス中のCO量とCO量との割合を考慮することで、溶鋼3中のC予測精度が上がるのである。
処理中に何度か溶鋼中の炭素量を、溶鋼3を直接採取して測定しているが、この炭素量によって操業条件を変更することも可能である。こちらは排ガスデータを監視する場合に比べて単純で、炭素量が正確にわかるので、炭素量に基づいて容易に操業条件変更が可能である。
具体的には、制御部11は、脱炭量が多くなる程、ランス高さHが大きくなるように、予め設定される脱炭量に応じた条件や関数からランス高さHの設定値を求め、求めた設定値となるように真空度を調整する。なお、ランス高さHは、一般的なRH方式の真空脱ガス装置1の場合、3500mm以上6000mm以下の範囲で変化させることが好ましい。ランス高さHを3500mm以上とすることで、上吹きランス9への地金の付着を抑えることができ、さらに酸素ガスの噴流が十分に広がった状態で溶鋼3へ到達するため、火点面積が確保され、安定した脱炭速度を得ることができる。一方、ランス高さHを6000mm以下とすることで、酸素ガスが確実に溶鋼3へ到達するため、脱炭速度を十分に速くすることができる。また、脱炭反応で生じるCOガスによって酸素ガスの溶鋼3への到達が妨げられる可能性があるが、ランス高さHを6000mm以下とすることで、COガスの発生量に関わらず酸素ガスを確実に溶鋼3へ到達させることができる。
また、制御部11は、脱炭量が多くなる程、真空度が高くなるように、予め設定される脱炭量に応じた条件や関数から真空度の設定値を求め、求めた設定値となるように真空度を調整する。さらに、真空度は、5Torr以上50Torr以下の範囲で変化させることが好ましい。
なお、ランス高さH及び真空度の設定値を求めるための条件や関数は、ランス高さH及び真空度に応じたスプラッシュの発生量の実績に基づいて設定されることが好ましい。これは、スプラッシュの発生量が問題とならないようなランス高さH及び真空度の設定値の最適値が、真空槽4の寸法・形状や、上吹きランス9のノズル形状、送酸量といった各種条件によって異なるためである。また、ランス高さH及び真空度の設定値を求めるための条件や関数は、溶鋼3の脱炭処理前(あるいは真空脱ガス処理前)の炭素濃度毎に、設定されることが好ましい。この場合、脱炭処理前の炭素濃度を複数の範囲に分け、範囲毎に、ランス高さH及び真空度の設定値を求めるための条件や関数がそれぞれ設定される。
上吹きランス9はラバールランスを用いる。ラバールランスは内部で圧縮したガスの膨張を利用して噴射するガスを加速させるものであり、図2に示すスロート径d1、出口径d2の比率に応じて、ガスの加速の度合いが変化する。スロート径d1及び出口径d2には加速が最大となる最適比率があるが、RH脱ガスでは高真空度で処理を行うため、その分のガス膨張を考慮すると、最適比率でなくても十分な加速が得られる。ただし、スロート径d1に対するスロート径d2の比率であるd2/d1があまりに小さい場合には、噴流の加速が起こらない上に、噴流が広がらず、脱炭が生じる火点面積が減少してしまう。また、d2/d1があまりに大きい場合には、噴流形状が広がりすぎて噴射後にガスの速度が急激に減少する。そのため、スロート径d1に対するスロート径d2の比率は1.2<d2/d1<3とすることが望ましい。
脱炭処理では、処理時間の経過によって脱炭反応が進み、溶鋼3の炭素濃度が低下することで脱炭量が増加する。このため、第1の実施形態では、制御部11は、脱炭処理の処理時間の経過に伴って、ランス高さHが大きく、真空度が高くなるようにランス高さH及び真空度の制御を行う。
脱炭処理の後、溶鋼3が所定の成分および温度となるまで溶鋼3の還流が行われることで、真空脱ガス処理が終了する。なお、真空脱ガス処理中は、必要に応じて合金鉄や脱酸剤(金属アルミ等)といった副原料が、副原料投入管8から投入される。
<第2の実施形態>
[真空脱ガス装置の構成]
次に、本発明の第2の実施形態に係る真空脱ガス装置1の構成について説明する。真空脱ガス装置1は、第1の実施形態と同様に、図1に示されるものであり、真空槽4と、上昇側浸漬管5と、下降側浸漬管6と、ダクト7と、副原料投入管8と、上吹きランス9と、測定部10と、制御部11とを有する。
真空槽4、上昇側浸漬管5、下降側浸漬管6、ダクトと、副原料投入管8及び上吹きランス9の構成は、第1の実施形態と同じである。
測定部10は、ダクト7に設けられる測定装置であり、真空槽4からの排ガスの流量を測定する流量測定機器(不図示)を有する。測定部10は、ダクト7を流れる排ガスの流量を測定し、電気的に接続される制御部11に、排ガスの流量の測定結果を送信する。
制御部11は、測定部10から取得する排ガスの流量の測定結果に基づいて、後述する脱炭処理中に真空排気装置及び昇降装置を制御することで、真空度及びランス高さHを制御する。制御部11による真空度及びランス高さHの制御方法の詳細は、後述する。
[真空脱ガス処理方法]
第2の実施形態に係る真空脱ガス処理方法では、まず、第1の実施形態と同様に、真空槽4を下降させ、取鍋2内に収容された溶鋼3に上昇側浸漬管5および下降側浸漬管6を浸漬させる。溶鋼3の炭素濃度については、第1の実施形態と同じである。
次いで、第1の実施形態と同様に、真空槽4内の真空度を90Torr以下にし、真空槽4内の所定の高さまで溶鋼3を吸い上げることで、真空脱ガス処理を開始する。さらに、上昇側浸漬管5の内面からArガスを吹き込むことにより、溶鋼3を還流させる。
また、真空脱ガス処理が開始されると、測定部10は、ダクト7を流れる排ガスの流量を測定し、測定結果を制御部11へ送信する。排ガスの流量及びCO濃度の測定は、真空脱ガス処理が行われる間、所定の時間間隔で継続して行われる。
そして、溶鋼3を還流させた状態で、上吹きランス9から一定の送酸量で酸素ガスを溶鋼3に吹き込み、溶鋼3中の炭素を酸化除去する脱炭処理を行う。脱炭処理は、第1の実施形態と同様に、所定量の酸素ガスが吹きつけられるまで行われる。送酸量は、第1の実施形態と同じである。
また、脱炭処理では、制御部11は、測定部10から取得した排ガスの流量に基づいて、ランス高さH及び真空槽4内の真空度を調整する。このとき、制御部11は、排ガスの流量に応じて予め設けられた設定値となるように、ランス高さH及び真空度を調整する。
具体的には、制御部11は、排ガスの流量が小さくなる程、ランス高さHが大きくなるように、予め設定される排ガスの流量に応じた条件や関数からランス高さHの設定値を求め、求めた設定値となるようにランス高さHを調整する。例えば、ランス高さHの設定値は、排ガスの流量の複数の範囲に対して設定されてもよく、排ガスの流量の関数から求められてもよい。なお、ランス高さHは、一般的なRH方式の真空脱ガス装置1の場合、第1の実施形態と同様に、3500mm以上6000mm以下の範囲で変化させることが好ましい。
また、制御部11は、排ガスの流量が小さくなる程、真空度が高くなるように、予め設定される排ガスの流量に応じた条件や関数から真空度の設定を求め、求めた設定値となるように真空度を調整する。例えば、真空度の設定値は、排ガスの流量の複数の範囲に対して設定されてもよく、排ガスの流量の関数から求められてもよい。さらに、真空度は、第1の実施形態と同様に、5Torr以上50Torr以下の範囲で変化させることが好ましい。
なお、ランス高さH及び真空度の設定値を求めるための条件や関数は、第1の実施形態と同様に、ランス高さH及び真空度に応じたスプラッシュの発生量の実績に基づいて、設定されることが好ましい。
脱炭処理では、処理の経過に伴って脱炭量は増加する。このため、第2の実施形態では、制御部11は、脱炭処理の処理時間が経過に伴って、ランス高さHが大きく、真空度が高くなるようにランス高さH及び真空度の制御を行う。
脱炭処理の後、第1の実施形態と同様に、溶鋼3が所定の成分および温度となるまで溶鋼3の還流が行われることで、真空脱ガス処理が終了する。なお、真空脱ガス処理中は、必要に応じて合金鉄や脱酸剤(金属アルミ等)といった副原料が、副原料投入管8から投入される。
<第3の実施形態>
[真空脱ガス装置の構成]
次に、本発明の第3の実施形態に係る真空脱ガス装置1の構成について説明する。真空脱ガス装置1は、図1に示す真空脱ガス装置1と略同様な構成であり、真空槽4と、上昇側浸漬管5と、下降側浸漬管6と、ダクト7と、副原料投入管8と、上吹きランス9と、制御部11とを有する。なお、測定部10については、設けられなくてもよい。
真空槽4、上昇側浸漬管5、下降側浸漬管6、ダクトと、副原料投入管8及び上吹きランス9の構成は、第1の実施形態と同じである。
制御部11は、作業者の入力情報、あるいは接続される図示されない上位コンピュータから取得される、溶鋼3の炭素濃度に基づいて、後述する脱炭処理中に真空排気装置及び昇降装置を制御することで、真空度及びランス高さHを制御する。制御部11による真空度及びランス高さHの制御方法についての詳細は、後述する。
[真空脱ガス処理方法]
第3の実施形態に係る真空脱ガス処理方法では、まず、第1の実施形態と同様に、真空槽4を下降させ、取鍋2内に収容された溶鋼3に上昇側浸漬管5および下降側浸漬管6を浸漬させる。溶鋼3の炭素濃度については、第1の実施形態と同じである。
次いで、第1の実施形態と同様に、真空槽4内の真空度を90Torr以下にし、真空槽4内の所定の高さまで溶鋼3を吸い上げることで、真空脱ガス処理を開始する。さらに、上昇側浸漬管5の内面からArガスを吹き込むことにより、溶鋼3を還流させる。
そして、溶鋼3を還流させた状態で、上吹きランス9から一定の送酸量で酸素ガスを溶鋼3に吹きつけ、溶鋼3中の炭素を酸化除去する脱炭処理を行う。脱炭処理は、第1の実施形態と同様に、所定量の酸素ガスが吹き込まれるまで行われる。送酸量は、第1の実施形態と同じである。
また、脱炭処理では、処理中に溶鋼3のサンプルを採取し、採取したサンプルの分析を行うことで、溶鋼3の炭素濃度を測定する。溶鋼3の炭素濃度の測定は、脱炭処理中の所定のタイミングで少なくとも1回行われる。炭素濃度の分析結果は、作業者による入力、あるいは上位コンピュータからの取得によって、制御部11へ送られる。
さらに、脱炭処理では、制御部11は、所得される溶鋼3の炭素濃度に基づいて、ランス高さH及び真空槽4内の真空度を調整する。このとき、制御部11は、炭素濃度に応じて予め設けられた設定値となるように、ランス高さH及び真空度を調整する。
具体的には、制御部11は、溶鋼3の炭素濃度が低くなる程、ランス高さHが大きくなるように、予め設定される炭素濃度に応じた条件や関数から設定値を求め、求めた設定値となるようにランス高さを調整する。例えば、ランス高さHの設定値は、溶鋼3の炭素濃度の複数の範囲に対して設定されてもよく、溶鋼3の炭素濃度の関数から求められてもよい。なお、ランス高さHは、一般的なRH方式の真空脱ガス装置1の場合、第1の実施形態と同様に、3500mm以上6000mm以下の範囲で変化させることが好ましい。
また、制御部11は、溶鋼3の炭素濃度が小さくなる程、真空度が高くなるように、予め設定される炭素濃度に応じた条件や関数から設定値を求め、求めた設定値となるように真空度を調整する。例えば、真空度の設定値は、溶鋼3の炭素濃度の複数の範囲に対して設定されてもよく、溶鋼3の炭素濃度の関数から求められてもよい。さらに、真空度は、第1の実施形態と同様に、5Torr以上50Torr以下の範囲で変化させることが好ましい。
なお、ランス高さH及び真空度の設定値を求めるための条件や関数は、第1の実施形態と同様に、ランス高さH及び真空度に応じたスプラッシュの発生量の実績に基づいて、設定されることが好ましい。
脱炭処理では、処理の経過に伴って溶鋼3の炭素濃度が低下することから、排ガスの流量が小さくなる。このため、第2の実施形態では、脱炭処理の処理時間が経過に伴って、ランス高さHが大きくなり、真空度が高くなる。
脱炭処理の後、第1の実施形態と同様に、溶鋼3が所定の成分および温度となるまで溶鋼3の還流が行われることで、真空脱ガス処理が終了する。なお、真空脱ガス処理中は、必要に応じて合金鉄や脱酸剤(金属アルミ等)といった副原料が、副原料投入管8から投入される。
<変形例>
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態の種々の変形例とともに本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲は、本発明の範囲及び要旨に含まれるこれらの変形例または実施形態も網羅すると解すべきである。
例えば、本発明の係る真空脱ガス方法では、上記実施形態における溶鋼3を、Crを10.5mass%以上含む高Cr鋼としてもよい。
また、上記実施形態では、真空度、ランス高さH及び送酸量について、好ましい範囲を示したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、真空脱ガス装置1の形状や寸法、上吹きランスの仕様、処理内容等の条件によっては、真空度、ランス高さH及び送酸量の少なくともいずれかは、上記の範囲を超えた値に設定されてもよい。さらに、真空度については、50Torr以下とすることが好ましいとしたが、50Torrよりも低い真空度(例えば、90Torr以下)に設定されてもよい。
さらに、第1の実施形態では、溶鋼3の脱炭量に応じてランス高さH及び真空度を調整するとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、第1の実施形態において、脱炭量の代わりに、排ガスの流量及び炭素濃度から溶鋼3の炭素濃度を算出し、算出される炭素濃度に応じて、ランス高さH及び真空度を調整してもよい。
さらに、第1及び第2の実施形態では、制御部11によって、ランス高さH及び真空度を自動的に調整する構成としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、作業者が測定部10による排ガスの流量または脱炭量の測定結果を監視し、排ガスの流量または脱炭量に応じてランス高さH及び真空度を調整してもよい。なお、作業者の作業負荷を考慮すると、第1及び第2の実施形態のように、ランス高さH及び真空度を自動的に変更することが好ましい。
さらに、第1〜第3の実施形態では、脱炭処理の全ての期間にわたってランス高さH及び真空度の調整を行うとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、脱炭処理の初期(後述する脱炭速度の低下がみられない前半)には、ランス高さH及び真空度の調整は行わず、脱炭処理の後半においてランス高さH及び真空度を調整するようにしてもよい。なお、脱炭処理の前半では、積極的に真空度を上げ、ランス高さHを高くしない方が良い。その理由は、ランス高さHを高くすると発生したCOガスが燃焼する二次燃焼位置も高くなり、溶鋼の温度上昇効果が抑制されることと、経験的にも脱炭速度の上昇がわずかしか見られないためである。そのため、初期の脱炭量の上昇が収まり始めた時間帯以降において、徐々にランス高さHと真空度を上げることが望ましい。また、脱炭処理の初期に対応する炭素濃度の範囲においては、ランス高さH及び真空度が一定となるように、設定値を設定してもよい。
さらに、第1及び第2の実施形態では、脱炭量または排ガスの流量に応じたランス高さH及び真空度の調整に加えて、実際の溶鋼3の炭素濃度を測定し、測定される炭素濃度に応じてランス高さH及び真空度を補正するようにしてもよい。この場合、第3の実施形態と同様に、脱炭処理中に溶鋼3のサンプルを採取し、採取したサンプルの炭素濃度を分析することで、脱炭処理中の炭素濃度が測定される。ここで、後述するように、排ガスの流量とガス成分濃度とから算出される脱炭量、及び排ガスの流量は、溶鋼3の炭素濃度の代わりに測定されるものであり、本発明ではこの脱炭量または排ガスの流量から、間接的に得られる溶鋼3の炭素濃度に応じてランス高さH及び真空度を制御している。脱炭量または排ガスの流量から間接的に推定される溶鋼3の炭素濃度は、実際の溶鋼3の炭素濃度に対して、様々な要因から誤差を生じる可能性がある。つまり、測定される実際の炭素濃度と、脱炭量または排ガスの流量から推定される炭素濃度とを比較し、誤差が生じた場合には、誤差が少なくなるように脱炭量または排ガスの流量を補正することで、より確実に脱炭速度を向上させ、スプラッシュを抑制することができる。
<実施形態の効果>
(1)本発明の一態様に係る真空脱ガス方法は、真空脱ガス装置1の減圧させた真空槽4内で溶鋼3を還流させ、真空槽4内に設けられた上吹きランス9から溶鋼3に酸素を吹きつける脱炭処理を行う真空脱ガス方法において、真空槽4から排出される排ガスの流量及び排ガスのガス成分濃度の少なくとも一方を測定し、流量及びガス成分濃度の少なくとも一方に基づいて、上吹きランス9のランス高さH及び真空槽4の真空度を調整する。
ここで、脱炭処理では、脱炭速度を向上させる手段として、真空槽4の真空度を上げることが考えられる。しかし、真空度を上げた場合、ガス体積が膨張し、溶鋼3の浴面への吹きつけ流速が増大し、浴面動圧が上昇するためにスプラッシュの発生量が多くなる。このため、通常は、スプラッシュの発生量が問題とならない程度の一定の真空度で脱炭処理が行われている。
これに対して、本発明者らは、脱炭処理が進み、溶鋼3の炭素濃度が低くなった状態では、炭素濃度が高い場合に比べて脱炭処理により生じるCOガス量も低くなるため、炭素濃度が高い状態に比べてスプラッシュの発生量が少なくなることを知見した。つまり、炭素濃度に応じて真空度を調整する(炭素濃度の低下に合わせて真空度を上げる)ことでスプラッシュの発生量を抑えながらも脱炭速度を向上させることができる。さらに、真空度を上げた場合にランス高さHを高くする(炭素濃度の低下に合わせてランス高さを上げる)ことで、溶鋼3の浴面動圧が低くなるため、スプラッシュの発生をさらに抑えることができる。
溶鋼3の炭素濃度の変化は、送酸量を一定とする条件下では、排ガスの流量やガス成分濃度であるCO濃度に基づいて得ることができる。具体的には、炭素濃度の変化は、排ガスの流量の増減、または排ガスの流量及びCO濃度から得られる脱炭量から間接的に得られる。排ガスの流量から炭素濃度の変動を得る場合、炭素濃度が減少すると、脱炭処理に伴い発生するCOガスの発生量も低くなることから、排ガスの流量の減少を炭素濃度の低下として求めることができる。また、脱炭量から炭素濃度の変動を得る場合、炭素濃度が減少すると、それに伴って脱炭量が増加することから、脱炭量の減少を炭素濃度の低下として求めることができる。つまり、上記(1)の構成によれば、脱炭処理を行う際に、スプラッシュの発生量を抑えつつも脱炭速度を向上させることができる。
また、真空度及び送酸量を一定として脱炭処理をする場合、処理の初期では脱炭速度が上昇していくものの、処理の後半では脱炭速度の増加量が徐々に減少し、処理の末期では脱炭速度が低下する。このような脱炭処理の初期における脱炭速度の上昇は、脱炭反応や二次燃焼により溶鋼温度が上昇するにつれて反応が生じやすくなるためと考えられる。一方、後半に脱炭速度が低下する理由は、脱炭処理が進むにつれて、当然溶鋼3中の炭素の総量が減少するために、脱炭の生じる浴面近傍の炭素濃度が低下するためと考えられる。しかし、上記(1)の構成によれば、溶鋼3の炭素濃度の変化に応じて、脱炭速度が向上するように、真空度を調整することにより、脱炭処理の後半において脱炭速度を向上させることができる。
(2)上記(1)の構成において、脱炭処理を行う際に、流量を測定し、流量の減少に応じて、ランス高さHを高くし、真空度を高くする。
上記(2)の構成によれば、溶鋼3の炭素濃度に影響される排ガスの流量の変化に応じて、ランス高さH及び真空度を調整することで、スプラッシュの発生量を抑えつつも脱炭速度を向上させることができる。
(3)上記(1)の構成において、脱炭処理を行う際に、流量及び排ガスのガス成分濃度を測定し、ガス成分濃度及び流量から溶鋼の脱炭量を算出し、脱炭量の増加に応じて、ランス高さHを高くし、真空度を高くする。
上記(3)の構成によれば、溶鋼3の炭素濃度に影響される脱炭量の変化に応じて、ランス高さH及び真空度を調整することで、スプラッシュの発生量を抑えつつも脱炭速度を向上させることができる。
(4)本発明の一態様に係る真空脱ガス方法は、真空脱ガス装置1の減圧させた真空槽4内で溶鋼3を還流させ、真空槽4内に設けられた上吹きランス9から溶鋼3に酸素を吹きつける脱炭処理を行う真空脱ガス方法において、溶鋼の炭素濃度を測定し、炭素濃度の減少に応じて、上吹きランスのランス高さを高くし、真空槽の真空度を高くすることで、ランス高さ及び真空度を調整する。
上記(4)の構成によれば、溶鋼3の炭素濃度の変化に応じて、ランス高さH及び真空度を調整することで、スプラッシュの発生量を抑えつつも脱炭速度を向上させることができる。なお、上記(4)の構成では、上記(1)〜(3)の構成のように排ガスを用いて炭素濃度の変化を検知する方法に比べ、分析に時間を要するため、最適な効果が得られるランス高さ及び真空度にリアルタイムで制御することが難しい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかの構成において、ランス高さHを6000mm以下の範囲で調整し、真空度を5Torr以上の範囲で調整する。
上記(5)の構成によれば、一般的に用いられるRH方式の真空脱ガス装置1に適用することができる。また、ランス高さHが6000mm以下の条件で、真空度を5Torr以上とすることで、酸素が十分に減速した後に浴面に衝突するようになるため、スプラッシュの発生をより抑制することができる。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかの構成において、溶鋼3は、Crを10.5mass%以上含む。
ここで、ステンレスに代表されるような、Cr濃度が10.5mass%以上と高い溶鋼を用いて脱炭処理する場合、真空度が高いほど脱Crに比べて脱Cが促進されることがわかっていることから、高い真空度で脱炭処理されることが好ましい。つまり、溶鋼のCr濃度が高い場合、送酸量を一定とした条件においても、真空度が脱炭速度に影響を与えることとなる。これに対して、特許文献3,4に記載の脱炭処理では、酸素供給量低減や真空度上昇等の調整が伴うものであり、いずれかのパラメータは脱炭速度が減少する方向へ調整される。このため、特許文献3,4に記載の技術では、脱炭速度の向上が認められるものの、大幅な向上は見込められなかった。また、特許文献3,4に記載の技術は、高真空化で脱炭が促進される鋼種に対し、高真空化というアクションをとったものではない。一方、上記(6)の構成によれば、Cr濃度の高い溶鋼を脱炭処理する際においても、高い真空度で且つ高い脱炭速度で脱炭処理をすることができる。
(7)本発明の一態様に係る真空脱ガス装置1は、減圧させた真空槽4内で溶鋼3を還流する真空脱ガス装置1であって、真空槽4内に設けられる上吹きランス9と、上吹きランス9から溶鋼3に酸素を吹きつける脱炭処理を行う際に、真空槽4から発生する排ガスの流量及び排ガスのガス成分濃度の少なくとも一方を測定する測定部10と、流量及びガス成分濃度の少なくとも一方に基づいて、上吹きランス9のランス高さH及び真空槽4の真空度を調整する制御部11と、を備える。
上記(7)の構成によれば、上記(1)の構成と同様な効果を得ることができる。
次に、本発明者らが実施した実施例について説明する。実施例では、第1〜第3の実施形態と同様な真空脱ガス装置1を用いて、溶鋼3に対して脱炭処理を含む真空脱ガス処理を施した。真空脱ガス処理を行う前の溶鋼3の炭素濃度は、0.5mass%程度とした。上吹きランス9には、スロート径d1が30mm、出口径d2が60mmのものを用いた。送酸量は、1900Nm/hで一定とした。また、いずれの条件においても、脱炭処理開始時の初期条件は、真空度が90Torr、ランス高さHが5000mmとした。さらに、脱炭処理を行う時間は48分とし、10分おきに溶鋼3のサンプルを採取し、サンプルの炭素濃度を測定した。
表1に真空度及びランス高さの条件、並びに後述する真空脱ガス処理を通しての総脱炭量及び評価について示す。表1に示すように、実施例では、条件1〜条件4の4条件で真空脱ガス処理を行った。
Figure 0006540773
条件1は、脱炭処理中の真空度及びランス高さHを一定とした比較例である。
条件2は、ランス高さH及び真空度を溶鋼3の炭素濃度に応じて変化させた条件であり、ランス高さH及び真空度を制御する監視パラメータとして、上記の第2の実施形態と同様に排ガスの流量を用いた。条件2では、排ガスの流量をリアルタイムで測定し、その測定結果に応じてランス高さH及び真空度を調整した。
条件3は、ランス高さH及び真空度を溶鋼3の炭素濃度に応じて変化させた条件であり、ランス高さH及び真空度を制御する監視パラメータとして、上記の第1の実施形態と同様に測定された排ガスの流量及びCO濃度から求められる溶鋼3の脱炭量を用いた。条件3では、測定される排ガスの流量及びCO濃度から脱炭量をリアルタイムで算出し、その算出結果に応じてランス高さH及び真空度を調整した。
条件4は、ランス高さH及び真空度を溶鋼3の炭素濃度に応じて変化させた条件であり、ランス高さH及び真空度を制御する監視パラメータとして、上記第3の実施形態と同様に、処理中に採取された溶鋼3のサンプルを分析して得られた溶鋼3の炭素濃度を用いた。条件4では、10分おきに採取されるサンプルの炭素濃度の分析結果に応じて、ランス高さH及び真空度を調整した。
また、条件2〜条件4におけるランス高さH及び真空度は、予めランス高さHと真空度とを各々変更して操業した実績から、各条件での設備への地金の付着の有無を確認し、炭素濃度に応じて地金の付着が生じる直前の条件を最適条件として用いた。
図3に、条件2で用いた排ガスの流量に対する、ランス高さH及び真空度の条件をそれぞれ示す。図3に示すように、ランス高さHは、排ガスの流量に対して、線形に変動するように調整を行った。また、真空度は、排ガスの流量に対して、段階的に変動するように調整を行った。
図4に、条件4で用いた排ガスの流量に対する、ランス高さH及び真空度の条件をそれぞれ示す。図4に示すように、ランス高さHは、溶鋼3の炭素濃度に対して、線形に変動するように調整を行った。また、真空度は、溶鋼3の炭素濃度に対して、段階的に変動するように調整を行った。
なお、条件3のランス高さH及び真空度についても、排ガスの流量及びCO濃度から求められる溶鋼3の脱炭量を監視パラメータとして、条件2と同様な制御を行った。条件2における排ガスの流量は、溶鋼3の炭素濃度に相当するものである。このため、条件3では、溶鋼3の脱炭量が増加するにしたがって、図3の排ガスの流量に対するランス高さH及び真空度の変化と同じように、ランス高さH及び真空度を制御した。
実施例の結果として、条件1〜4における、脱炭処理時間に対する排ガスの流量を図5に示す。条件1では、脱炭処理の後半において、排ガスの流量低下がみられることから、脱炭速度の低下が確認された。一方、条件2〜4では、脱炭処理の後半においても排ガスの流量が増加し、脱炭速度が向上することが確認された。また、表1に示すように、脱炭処理における総脱炭量は、条件1に比べ、条件2が約18%上昇し、条件3が約21%上昇し、条件4が約14%上昇することが確認できた。なお、条件4では、直接測定される溶鋼3の炭素濃度を参考したにも関わらず、条件2,3に比べて脱炭量がわずかに劣位になった。この理由は、サンプルの分析に数分程度の時間がかかることから、条件2,3に比べて、ランス高さH及び真空度の変更に遅れが生じたためと考えられる。
以上の結果より、本発明を適用することにより、脱炭速度が向上し、操業能率が向上することが確認された。また、実施例での条件では、スプラッシュによる地金付着も問題とならないことから、本発明によればスプラッシュの発生量を抑えつつも脱炭速度を向上させることができることが確認された。
また、実施例のように排ガスの流量、脱炭量及び炭素濃度のいずれかを基準の監視パラメータとする場合、これらの監視パラメータは、溶鋼3の鋼種が同じであれば、処理時間に対して同じような変化曲線を描くことを確認した。つまり、例えば排ガス量と適正なランス高さHとの相関、及び排ガス量と適正な真空度との相関を予め求めておくことで、操業中は排ガスの変化に応じて自動でランス高さH及び真空度を制御するように設備化できることが確認された。なお、実施例で用いた設備では、ランス高さHは滑らかに上昇させることができたが、真空度は装置の性質上、段階的にしか上昇させることができなかったため、図4のように段階的に変化させるものとした。しかし、設備的に真空度も滑らかに調整可能であれば、ランス高さHと同様に排ガスの流量に対して直線的に変化させてもよい。
実施例で定めた条件はあくまで一例であり、例えば図3,4に示した関係図や、監視パラメータを変更すれば当然処理効率は変化する。しかし、それらすべての条件を網羅することは不可能であることから、操業データを基にランス高さと真空度を変更する手法であれば、いかなる方法でも本発明の範囲に属すると考える。
1 真空脱ガス装置
2 取鍋
3 溶鋼
4 真空槽
5 上昇側浸漬管
6 下降側浸漬管
7 ダクト
8 副原料投入管
9 上吹きランス
91 酸素供給路
92 ノズル
10 測定部
11 制御部
H ランス高さ

Claims (7)

  1. 真空脱ガス装置の減圧させた真空槽内で溶鋼を還流させ、前記真空槽内に設けられた上吹きランスから前記溶鋼に酸素を吹きつける脱炭処理を行う真空脱ガス方法において、
    前記真空槽から排出される排ガスの流量を測定し、
    前記流量の減少に応じて、前記上吹きランスのランス高さを高くし、前記真空槽の真空度を高くすることを特徴とする真空脱ガス方法。
  2. 真空脱ガス装置の減圧させた真空槽内で溶鋼を還流させ、前記真空槽内に設けられた上吹きランスから前記溶鋼に酸素を吹きつける脱炭処理を行う真空脱ガス方法において、
    前記真空槽から排出される排ガスの流量及び前記排ガスのガス成分濃度を測定し、
    前記ガス成分濃度及び前記流量から前記溶鋼の脱炭量を算出し、
    前記脱炭量の増加に応じて、前記上吹きランスのランス高さを高くし、前記真空槽の真空度を高くすることを特徴とする真空脱ガス方法。
  3. 真空脱ガス装置の減圧させた真空槽内で溶鋼を還流させ、前記真空槽内に設けられた上吹きランスから前記溶鋼に酸素を吹きつける脱炭処理を行う真空脱ガス方法において、
    前記溶鋼の炭素濃度を測定し、
    前記炭素濃度の減少に応じて、前記上吹きランスのランス高さを高くし、前記真空槽の真空度を高くすることで、前記ランス高さ及び前記真空度を調整することを特徴とする真空脱ガス方法。
  4. 前記ランス高さを6000mm以下の範囲で調整し、
    前記真空度を5Torr以上の範囲で調整することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の真空脱ガス方法。
  5. 前記溶鋼は、Crを10.5mass%以上含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の真空脱ガス方法。
  6. 減圧させた真空槽内で溶鋼を還流する真空脱ガス装置であって、
    前記真空槽内に設けられる上吹きランスと、
    前記上吹きランスから溶鋼に酸素を吹きつける脱炭処理を行う際に、前記真空槽から発生する排ガスの流量を測定する測定部と、
    前記流量の減少に応じて、前記上吹きランスのランス高さを高くし、前記真空槽の真空度を高くする制御部と、
    を備えることを特徴とする真空脱ガス装置。
  7. 減圧させた真空槽内で溶鋼を還流する真空脱ガス装置であって、
    前記真空槽内に設けられる上吹きランスと、
    前記上吹きランスから溶鋼に酸素を吹きつける脱炭処理を行う際に、前記真空槽から発生する排ガスの流量及び前記排ガスのガス成分濃度を測定する測定部と、
    前記ガス成分濃度及び前記流量から前記溶鋼の脱炭量を算出し、前記脱炭量の増加に応じて、前記上吹きランスのランス高さを高くし、前記真空槽の真空度を高くする制御部と、
    を備えることを特徴とする真空脱ガス装置。
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