JP4289214B2 - 溶鋼の脱炭処理方法および溶鋼製造方法 - Google Patents

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本発明は、溶鋼中成分濃度を推定しながら行う溶鋼の脱炭処理方法および溶鋼製造方法に関する。
真空脱ガス装置を備える真空精錬炉を用いて例えば脱炭処理のような脱ガス処理をする場合、規格成分である炭素濃度の上下限に対して成分外れを起こさないことは製品保証上極めて重要である。また、例えば脱炭処理のときに上限よりやや低い炭素濃度で脱炭処理を終了することは処理時間短縮につながるため、コストおよび生産性の観点から極めて重要である。
そのためには、当然のことながら、真空脱ガス処理中の除去すべきガス成分の溶鋼中濃度を精度よく推定することが必要となる。例えば、真空脱炭処理を行う場合には、除去すべきガス成分、つまりCO成分は溶鋼中では溶解炭素として存在するから、この場合には、溶鋼中の炭素濃度を精度よく知ることが必要となる。これは脱水素等の場合にあっても同様である。
なお、真空脱ガス処理としては多くは脱炭処理を目的としていることから、以下にあっては、真空脱炭処理を例にとって本発明を説明する。
これまでにあっても、溶鋼中の炭素濃度の推定方法としては以下のものが知られている。
特許文献1は、脱炭処理中の溶鋼中炭素濃度推移をフィッティングで定める脱炭速度定数を用いて推定する方法を開示している。これは、脱炭処理前あるいは処理中に取鍋から溶鋼サンプルを採取しその炭素濃度分析値に対して、サンプル採取時刻から現在までの炭素濃度推移を速度定数を用いた演算により推定する方法である。
特許文献2は、処理前あるいは処理途中の溶鋼サンプルの炭素濃度分析値を用いることなく、排ガス情報に基づき現在の炭素濃度を推定する方法を開示している。
特開平6-256840号公報 特開平9-202913号公報
しかし、特許文献1の開示する方法は、炭素濃度推定に誤差が生じる可能性が高い。脱炭速度定数をフィッティングで求めるため現に処理しているヒート固有の条件がフィッティングのばらつきからはずれてもそれを検出して修正する方法がないからである。
特許文献2の開示する方法は、時々刻々と測定される排ガス情報により炭素濃度推定をするため特許文献1の場合よりも精度よく推定できる可能性があるが、それでも十分な精度が得られない可能性が高い。特許文献2の場合には、その原理から多くの仮定を含んでいるためである。
ここに、本発明の課題は、上述のような問題点を含まない新規な方法を提供することであり、
溶鋼中成分濃度を推定しながら行う溶鋼の脱炭処理方法および溶鋼製造方法を提供することである。
本発明者らは、上述の課題を解決する手段について種々検討の結果、特許文献2に示すように、溶鋼中の脱ガス成分も最終的には排ガスとして排出されるのであるから、排気ガス成分の変動を監視することで、溶鋼中の同成分の変動を知ることができることに着目した。特にガス中の特定成分割合の検出速度はかなり早いことから瞬時の計測が可能となる。しかし、排ガスの成分割合の値をもって溶鋼中の同成分の含有量をそのまま推定することはできない。
そこで、本発明者らは、排ガス中の脱ガス成分中の目的成分の排出速度の変化速度を求めることによって、その時々の時点での溶鋼中の同成分の含有量を容易かつ正確に推測することができることを知り、本発明を完成した。
本発明によれば真空脱ガス装置における脱ガス処理に際して、処理中の脱ガス成分を精度よく推定することができ、処理時間の短縮によるコストの削減が可能となる利点がある。
すでに述べたように、本発明にかかる実施の一形態として、真空脱ガス処理として脱炭処理の場合について説明するが、例えば脱水素など他成分の除去処理でも同一の原理にて推定が可能である。
まず、本発明にかかる真空脱ガス処理装置は、図1ないし3に模式的に示すように、下部に浸漬管を有する真空槽を備えている。真空槽の下部に設けられたこの浸漬管を取鍋内溶鋼に浸漬して脱ガス処理を行う。また、図示しないがいわゆるタンク脱ガス装置のように取鍋全体を真空容器に収容する装置や取鍋に接続した真空容器を用いて取鍋内溶鋼表面を真空状態にする装置でもよい。これらの装置は適宜手段により真空排気系(図示せず)に接続されており、真空槽内部を例えば100 Pa程度の真空に保持することができる。この真空容器あるいは真空槽には排気系統が設けられている。この排気系統には脱ガス成分の分析可能な排ガス分析計が設けられている。本発明においてこの排ガス分析計の具体的態様は特に制限されず、通常の計測手段であればよい。また設置箇所も、特に制限されず通常の測定箇所であればよいが、排気系統の真空槽に近い箇所が好ましい。
本発明にかかる脱ガス処理装置には、計測データを処理する各種演算器が備えられている。まず、上記排ガス分析計により測定された脱ガス成分の割合と排ガス流量とからその排出量およびその変化速度を演算する第1演算器と、この第1演算器の演算の結果から溶鋼中の目的成分濃度を演算する第2演算器である。
しかし、これらの各演算器は、十分な容量の1つのコンピュータを使うことでそれを代替できることから、そのような場合の各演算器への言及はその機能を説明するためだけである。
さらに、必要により不活性ガスの上吹きを可能とする昇降ランスを備えてもよく、浸漬管には、環流ガス吹込みノズルを設けてもよい。また、取鍋に攪拌ガス吹き込み用のノズルあるいはプラグを設けてもよい。もちろん、真空脱ガス装置として酸素ガスの上吹きランスを備えてもよい。
図1はArガスなどの還流用ガスの吹込みノズルを上昇浸漬管に設けた例を、図2はさらにNなどの不活性ガスを吹込むランスを天蓋に設けた例を、そして図3はさらに取鍋底部から撹拌用ガス(Arガス)を吹き込んだノズルを設けた例を示す。
本発明にかかる真空脱ガス処理装置には、そのほかに通常の装置におけると同様の各種機能、構造をさらに設けたものであってもよく、本発明においてそれらは特に制限されず、また説明を簡潔にするため、これ以上の言及は行わない。
ここに、本発明の実施の一形態として浸漬管本数2本のRH真空脱ガス装置を用いた場合について説明する。
本発明の対象となる溶鋼は、高炉から運搬された溶銑が種々の溶銑予備処理を経て転炉に注銑され、転炉にて脱炭吹錬された後、取鍋に出鋼される。取鍋に出鋼された溶鋼は二次精錬設備に運搬され、RH真空脱ガス装置などの真空脱ガス装置にて脱ガス処理を施される。
RH真空脱ガス装置は真空槽下部に設けた2本の浸漬管を取鍋内溶鋼に浸漬し、真空槽内を排気するとともに一方の浸漬管(上昇管)内面から環流用ガスを導入して、取鍋内溶鋼を真空槽にリフトアップする。リフトアップされた溶鋼は真空槽内で脱炭反応により炭素濃度を減じ、もう一方の浸漬管(下降管)を経由して取鍋に戻る循環流を形成する。
所定の脱炭処理を施した後、該溶鋼は合金添加などにより成分調整の後、連続鋳造装置に送られる。
上述のRH真空脱ガス装置においては、環流用ガス流量、真空槽内圧力、排ガス中CO、CO2濃度などが連続的あるいは間歇的に測定可能かつ記録可能である。なお、排ガス中分析成分はCO、CO2のみに止める必要はなく、これ以外の成分をも分析して各種補正に使用してもよい。
次に、このような真空脱ガス処理に際して、排ガス中の成分分析に基づき本発明にしたがって溶鋼中成分濃度を推定する方法について説明する。
ここに、「脱ガス成分」とは、溶鋼から除去すべき成分、つまり「目的成分」が脱ガス処理によりガス成分として溶鋼から離脱したものを云い、具体的には、脱炭処理の場合には、脱ガス成分とはCO、CO2ガスであり、目的成分は溶鋼に溶解している[C](溶解炭素)である。また、脱水素処理の場合には、それぞれH2、[H](溶解水素)である。
本発明によれば、真空槽の下部に設けられた浸漬管を溶鋼に浸漬したときに、必要により環流ガスを吹込み、あるいは上吹きランスから酸素または不活性ガスを引き込み、さらには取鍋から攪拌ガスを吹込むが、その際に溶鋼から離脱したガスを真空槽に接続された排気系統から排出し、その排ガス中の脱ガス成分の含有量を経時的に測定する。このようにして得た経時的変化量から、この脱ガス成分の含有量の変化速度を求めるのである。
本発明の好適態様では、さらに、排ガスにおける脱ガス成分の排出流量を計測し、脱ガス成分の排出速度を求め、その変化速度を演算する。
なお、本発明において、それぞれ変化速度、あるいは変化率を求めるが、具体的には、例えば、これは、脱ガス成分の排出速度の時間変化を演算器による演算によって行えばよい。
本発明の一つの方法によれば(後で述べる手順A)、脱ガス成分の排出速度の変化速度から溶鋼の脱炭速度定数と目的成分の濃度の組合せを求めることにより溶鋼中の濃度を決定することができる。本発明の別の方法(後で述べる手順B)によれば、脱ガス成分の排出速度の変化速度から脱炭積算量の算出を行う。このとき、一定の時点での目的成分の濃度を計測して決定しておけば、それに基づいて上記脱炭積算量からその時点での溶鋼濃度を決定することができるのである。
次に、さらに具体的に本発明による溶鋼中の脱ガス成分濃度の推定方法を説明する。なお、以下に例示する具体的な[C]推定方法(便宜上、手順Aという)はあくまでも一例であり、本発明はこの方法だけに制限されるものではない。
A1)脱ガス処理中時刻tiにおける排ガス分析により排ガス中CO分率(CO,i)、CO2分率(CO2,i)を測定する。
A2)脱ガス処理中時刻tiにおける排ガス流量を測定あるいは算出する。排ガス流量は排ガス流量計を用いて測定してもよい。また、排ガス中に流量が既知のトレーサーガスが含有されるように導入し、トレーサーガス濃度と既知のトレーサーガス流量とから排ガス流量を算出してもよい。さらに、排ガスに含有されるインプットガス量を経験的に定めることにより排ガス流量を算出してもよい。なお、この排ガス流量は適当な方法により標準状態換算の体積流量Qex,i(Nm3/s)に換算する。
A3)A1)で求めた排ガス中CO,iとCO2,iの和と、A2)で求めた排ガス流量Qex,iとの積である「排ガス中の脱ガス成分の排出速度」Qco,iを求める。
Qco,i=(CO,i+CO2,i)・Qex,i (1)
A4)時刻tiにおける単位時間当りの脱炭速度をdCdt,i(kg/s)とおくと、物質収支よりQco,iは比例定数Aを用いて(2)式でも表せる。
Qco,i=−A・(22.4/12)・dCdt,i (2)
A5)時刻tiにおける単位時間当りの脱炭速度dCdt,iは一次の速度式で表せ、時刻tiでの速度定数K,i(1/s)と時刻tiでの溶鋼中炭素濃度C,i(-)と溶鋼量W(kg)を用いると(3)式で表せるからQco,iは(4)式でも表せる。
dCdt,i/W=−K,i・C,i (3)
Qco,i=A・(22.4/12)・K,i・C,i・W (4)
A6)時刻ti-1(=ti−Δt)では同様に(5)式が得られる。
Qco,i-1=A・(22.4/12)・K,i-1・C,i-1・W (5)
A7)時間Δt内での脱炭速度定数Kの変化は小さいとすると、K,i=K,i-1であり、これを用いて{(4)-(5)}÷Δtを計算すると(6)式が得られる。ここで、右辺の一部は(7)式で表せるので、(6)式は(8)式と書き直せる。
(Qco,i-Qco,i-1)/Δt = A・(22.4/12)・K,i・W・(C,i−C,i-1)/Δt (6)
(C,i−C,i-1)/Δt=−K,i・C,i (7)
(Qco,i-Qco,i-1)/Δt = −A・(22.4/12)・K,i2・C,i・W (8)
A8)(8)式÷(4)式を計算すると(9)式が得られ、(9)式と(4)式から時刻t,iでの溶鋼中炭素濃度C,iが(10)式で求まる。(10)式から、排ガス中の脱ガス成分の排出速度の変化速度((10)式分母中の{}部分)を用いて溶鋼中の目的成分の濃度を推定できることが示された。
K,i=−{(Qco,i-Qco,i-1)/Δt}/Qco,i (9)
C,i=−Qco,i2/[A・(22.4/12)・{(Qco,i-Qco,i-1)/Δt}・W] (10)
A9)実際の溶鋼中濃度推定では測定誤差や排ガス分析遅れ、取鍋内混合遅れなどの補正のために、補正係数βを用いて(11)式で表し、補正係数を種々の条件に応じて修正する方法を採用してもよい。
C,i=−β・Qco,i2/[A・(22.4/12)・{(Qco,i-Qco,i-1)/Δt}・W] (11)
以上、上記手段Aでは最も単純な例を用いて算出手法を説明したが、K,i=K,i-1の近似を用いない方法を採用してもよい。また、単純に時刻Δtだけ離れた時刻t,iとt,i-1の値だけでなく、近傍の値を数学的に用いて誤差を小さくする手法を用いてもよい。
また、上記手順Aでは排ガス流量の測定値を用いる方法を利用したが、真空脱ガス装置が安定的に稼動している場合、リークガス流量などをある値に設定することにより排ガス流量を間接的に推定してもよい。排ガス流量計の精度が低い場合、この方法のほうが推定精度が向上するからである。
(9)式で得られる脱炭速度定数K,iだけを用いる方法も可能である。以下、手順Bとして一例を示す。
B1)時刻t,i-1での溶鋼中炭素推定濃度C,i-1に対して、(9)式により求めた時刻t,iでの脱炭速度定数K,iを使うと、時刻t,iでの溶鋼中炭素濃度C,iは(12)式で求まる。溶鋼中炭素濃度の初期値として、処理前あるいは処理中に溶鋼サンプリング試料の分析により得た溶鋼中炭素濃度を用いれば逐次計算により、時刻t,iでの溶鋼中炭素濃度が逐次計算できる。
C,i=C,i-1−K,i×C,i-1×dt,i (12)
ただし、dt,i:時刻tiでの演算時間刻みである。
なお、排ガス情報にタイムラグがある場合は、その分を補正して計算してもよい。
以上からも明らかなように本発明にかかる濃度推定方法は排ガス成分の測定精度に依存するが、真空容器あるいは真空槽内の排ガス成分の代表性について懸念される場合は、真空容器あるいは真空槽上方の天蓋あるいは側面に設けたランスから不活性ガスを上吹きすることにより、溶鋼から離脱した脱ガス成分を真空槽内で混合し、この混合ガス中の脱ガス成分を用いることが精度向上の点で望ましい。
真空槽を用いる場合にランスから不活性ガスを噴出させる高さは、真空槽天蓋内側から真空槽内溶鋼面までの距離をXとした時にX/2よりも上方が望ましい。下方では混合による排ガス成分の代表性改善効果が小さく、かつ、溶鋼面から飛散する地金がランスに付着してランスの変形など操業トラブルを誘発するからである。さらに望ましくは、天蓋からの噴出高さまでの距離がX/3位置よりも上方であることが望ましい。
また、ランスから噴出させる不活性ガス流量は環流あるいは攪拌ガスの0.5倍以上が望ましく、さらに望ましくは1.0倍以上である。不活性ガス流量が小さすぎると混合効果が低減するからである。
このような観点からは、混合用の不活性ガスの流量の上限を定める必要はないが、操業コスト削減及び真空排気系への不可抑制の観点から、混合用の不活性ガスの流量の上限は10倍とすることが望ましく、より望ましい上限は6倍である。
上記説明は浸漬管が2本の場合であるRH真空脱ガス装置を使うとして行ったものであるが、浸漬管が2本であることに起因する特有の取り扱いは行っていないため、浸漬管が1本の場合でも上記説明の原理を同様に適用することができる。
RH脱炭処理中におよそ[C]=20ppm(0.002%)となった時期に鋼中サンフ゜ルを採取し分析により得た炭素濃度と、上記方法により算出した推定炭素濃度との差である推定誤差(ppm)を求め推定誤差の標準偏差σを算出した。
まず、発明者らは、従来法として前述の特許文献1、2の方法(それぞれ公知方法1、2という)をそれぞれ用いたが、いずれも処理中に確認不可能な浸漬管径の閉塞(にともなう内径の減少)とみられる現象に遭遇した場合、満足な炭素濃度推定を行うことができないことがわかった。
すなわち、公知方法1では推定誤差の標準偏差σは6.2ppm、公知方法2でもσは5.6ppmと非常に大きいことを確認した。RH処理中の浸漬管径が安定している場合はそこそこのσが得られるものの、突発的な成分はずれが頻発し、これに対応するために製品規格[C]上限に対して多大なマージンを見込んで脱炭終了判定を行うため、処理時間の短縮が十分に達成できなかった。
次に、本発明法として上述した(10)式での炭素濃度推定を行った。その結果、推定誤差の標準偏差σは3.6ppmにまで低減した。特に、従来法では検出できなかった脱炭の停滞現象が検出可能になった点の寄与が大きいと考えられる。本発明法では、脱炭の停滞現象が生じるときに特有な現象が(10)式により評価され、推定炭素濃度がより実際に則して評価されるため、推定精度が向上したと考えられる。従来法では、dCdt,iの絶対値のみに基づき炭素濃度を推定するため、炭素濃度の推定誤差が大きかったものと考えられる。
次に、上記の本発明法に加えて、真空槽上方の天蓋に昇降ランスを設け、ランス先端のガス噴出し孔から真空槽のほぼ中央部に向けて不活性ガスを添加して排ガスを希釈混合する実験を行った。その結果、推定誤差の標準偏差は2.2ppmまで顕著に低減した。これは、真空槽中央部に混合促進ガスとして不活性ガスを導入したことにより、排ガス中CO,CO2濃度の代表性が著しく改善されたためと考えられた。
また、手順Bとして、概ね[C]=80〜100ppm程度のタイミングで処理中サンプル採取を行い、この分析値をCoとして[C]推定を行った結果、推定誤差の標準偏差σは3.3ppm、さらに真空槽天蓋に設けた昇降ランスからの混合ガス導入により標準偏差σは2.0ppmにまで低減した。この低減効果は手順Aで述べたものと同じである。
次に、浸漬管本数が1本の脱ガス装置にも本発明法を適用した。従来法の推定誤差の標準偏差σは5.3ppmであった。 適用した本発明法は上述した手順Bと同様であり、推定誤差の標準偏差σは3.4ppm、真空槽天蓋の昇降ランスから混合ガスを吹き込んだ場合のσは2.0ppmであった。
高炉から出銑された溶銑をトピードカーに移して転炉工場に輸送後、脱珪、脱硫、脱りんなどの溶銑予備処理を一つ以上行ったのち、得られた溶銑を250ton転炉に装入して脱炭吹錬を施した。脱炭吹錬により得られた溶鋼を転炉出鋼孔から取鍋へ出鋼し、溶鋼を収容した取鍋を二次精錬設備(ここではRH脱ガス装置)へ移送し、脱ガス処理を行った。
なお、転炉吹錬後の炭素濃度は0.04%とし、RH脱ガス装置にておおよそ炭素濃度0.002%まで脱炭した際の、RH処理中の排ガス情報を演算器に取り込み[C]推定値を算出した。そして、RH脱炭終了時に溶鋼サンプルを採取し、その分析値に基づいて推定誤差の標準偏差を調査した。
RH真空脱ガス装置の浸漬管径は0.75m、環流用Arガス流量は2000NL/min、真空槽内到達真空度は133Paの条件で真空脱炭処理を行った。
従来法(公知方法2)、発明法1(天蓋ランスからの混合ガスなしの場合)、発明法2(天蓋ランスから混合ガス添加の場合)、とで比較調査を実施した。混合ガスとしてはいずれも4000NL/minのガスを導入した。なお、天蓋ランスから混合ガスを導入する場合、導入位置が真空槽の上方であるため、窒素ガスを導入した。処理中の窒素濃度の挙動はArガスを導入した場合と大差なかった。
まず、極低炭素鋼の炭素濃度を手順Aにて推定し、推定誤差の標準偏差σの実績を調査した結果を表1に示す。
さらに、[C]≦28ppmとなるまでの脱炭処理時間短縮効果を確認したところ、表2に示すように、従来法に対して発明法1では2.3min短縮でき、発明法2では5.6minの短縮が可能となった。そのときの従来方法での処理コストを1.0としたときのコスト指数を調査した結果、同じく表2に示すように、発明法1ではコスト指数は0.81であり、発明法2ではコスト指数は0.65と低減することができた。
以上のように本発明法は、真空処理時間の短縮により溶製コストを大幅に低減できる方法であることが確認された。
Figure 0004289214
Figure 0004289214
実施例1と同様の試験を行い、手順Bにより[C]推定を行った。まず、推定誤差の標準偏差については表3の結果が得られた。これを元に[C]≦28ppmの極低炭素鋼の処理時間短縮効果を調査した。その結果、表4にしめすようみ、従来法に対して発明法1では2.6min、発明法2では5.9minの短縮が可能となった。これにともない従来法を1.0とした場合のコスト指数を求めたところ、発明法1では0.79、発明法2では0.60となり、発明法は顕著な時間短縮及びコスト低減効果を発揮できることが確認できた。
Figure 0004289214
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RH真空脱ガス装置の代わりに1本の大型浸漬管を用いた真空脱ガス装置を用いて実施例1と同様の実験を行った。浸漬管径は2.0m、取鍋底部から攪拌ガスとしてアルゴンガスを1000NL/min流し、真空槽内到達圧力を133Paとした。[C]推定方法として実施例1と同様の手順Aを採用した。
まず、推定誤差の標準偏差については表5の結果が得られた。これを元に[C]≦28ppmの極低炭素鋼の処理時間短縮効果を調査した。その結果、表6に示すように、従来法に対して発明法1では2.5min、発明法2では5.6minの短縮が可能となった。これにともない従来法を1.0とした場合のコスト指数を求めたところ、発明法1では0.8、発明法2では0.67となり、発明法は顕著な時間短縮及びコスト低減効果を発揮できることが確認できた。
Figure 0004289214
Figure 0004289214
以上のように本発明法は、真空処理時間の短縮により溶製コストを大幅に低減できる方法であることが確認された。
本発明にかかる方法を実施するRH真空脱ガス装置の模式的説明図である。 本発明にかかる方法を実施する別のRH真空脱ガス装置の模式的説明図である。 同じく一本足の浸漬管を備えた脱ガス装置の模式的説明図である。

Claims (7)

  1. 真空容器に収容された取鍋内の溶鋼の脱炭処理を行う方法であって、該真空容器に接続された排気系統において排ガス中のCOとCOの排出速度を経時的に測定し、かつ、この測定した時間内の任意の微小時間における、前記COとCOの排出速度の変化速度を求め、
    得られた変化速度に基づき前記任意の微小時間における溶鋼の脱炭速度定数と前記任意の微小時間の終期における溶鋼の炭素濃度との組み合わせを求めること、あるいは、
    得られた変化速度に基づき前記任意の微小時間における溶鋼の脱炭速度定数を求め、溶鋼の脱ガス処理前あるいは処理中に溶鋼サンプリング試料を分析して得た溶鋼中炭素濃度を初期値とする逐次計算に該脱炭速度定数を用いること
    によって前記任意の微小時間の終期における溶鋼中の炭素濃度を推定すること
    を特徴とする溶鋼の脱炭処理方法。
  2. 真空槽の下部に設けられた浸漬管を溶鋼に浸漬して溶鋼の脱炭処理を行う方法であって、該真空槽に接続された排気系統において排ガス中のCOとCOの排出速度を経時的に測定し、かつ、この測定した時間内の任意の微小時間における、前記COとCOの排出速度の変化速度を求め、
    得られた変化速度に基づき前記任意の微小時間における溶鋼の脱炭速度定数と前記任意の微小時間の終期における溶鋼の炭素濃度との組み合わせを求めること、あるいは、
    得られた変化速度に基づき前記任意の微小時間における溶鋼の脱炭速度定数を求め、溶鋼の脱ガス処理前あるいは処理中に溶鋼サンプリング試料を分析して得た溶鋼中炭素濃度を初期値とする逐次計算に該脱炭速度定数を用いること
    によって前記任意の微小時間の終期における溶鋼中の炭素濃度を推定すること
    を特徴とする溶鋼の脱炭処理方法。
  3. 溶鋼内部に攪拌あるいは環流用の不活性ガスを吹き込むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 浸漬管の本数が1本であることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
  5. 浸漬管の本数が2本であることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
  6. 前記真空容器あるいは真空槽上方の天蓋あるいは側面に設けたランスから不活性ガスを上吹きすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 請求項1〜6に記載のいずれかの方法のうち、一つを用いることを特徴とする炭素濃度28ppm以下の溶鋼製造方法。
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