JP6540474B2 - シート搬送装置、およびそれを備えた画像形成装置 - Google Patents
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Description
第1ローラーは弾性体層を含み、第2ローラーは第1ローラーに対して外周面の弾性が無視可能であってもよい。この場合、推定部は、準備期間に測定部が測定した周速度から第1ローラーの周速度と第2ローラーの周速度との比を求め、その比を第1ローラーの周速度とニップでの接線速度との間の比例係数として推定し、決定部はその比例係数を回転数の目標値の決定に利用してもよい。
本発明の1つの観点における画像形成装置は、シートに画像を形成する作像部と、その作像部が画像を形成すべき、または形成したシートを搬送する上記のシート搬送装置とを備えている。
[画像形成装置の外観]
図1は、本発明の実施形態による画像形成装置の外観を示す斜視図である。この画像形成装置100は胴内排紙型の複合機(multi-function peripheral:MFP)であり、スキャナー、カラーコピー機、およびカラーレーザープリンターの機能を併せ持つ。図1を参照するに、このMFP100の筐体の上面には自動原稿送り装置(auto document feeder:ADF)110が開閉可能に装着されている。ADF110の直下に位置する筐体の上部にはスキャナー120が内蔵され、下部にはプリンター130が内蔵され、更にその底部には複数段の給紙カセット133が引き出し可能に取り付けられている。スキャナー120とプリンター130との間には隙間DSPが開けられ、その中に排紙トレイ46が配置されている。この隙間DSPの奥には排紙口42が設置され、そこから排紙トレイ46へシートが排紙される。隙間DSPの横に位置する筐体の前面部分には操作パネル51が取り付けられている。操作パネル51の前面にはタッチパネルが埋め込まれ、その周囲に各種の機械的な押しボタンが配置されている。タッチパネルは、操作画面、各種情報の入力画面等のGUI画面を表示し、それの含むアイコン、仮想ボタン、メニュー、ツールバー等のガジェットを通してユーザーの入力操作を受け付ける。
図2は、プリンター130の構造を模式的に示す正面図である。図2にはプリンター130の要素が、あたかも筐体の前面を透かして見えているように描かれている。図2を参照するに、プリンター130は電子写真式のカラープリンターすなわちカラーレザープリンターであり、給送部10、作像部20、定着部30、および排紙部40を含む。給送部10から排紙部40までは協働してMFP100の画像形成部として機能し、画像データに基づいてシートに画像を形成する。
[シート搬送部]
図2の示すとおり、MFP100では給送部10と排紙部40との他にも、中間転写ベルト23の駆動ローラー23R、2次転写ローラー24、加熱ローラー31、加圧ローラー32等、作像部20と定着部30との一部がシートの搬送部として機能する。
図4の(a)は、図2が示す定着部30の含むローラー対とそれらの駆動機構との模式的な斜視図であり、(b)は、(a)が示すローラー対の、直線(b)−(b)に沿った断面図である。図4を参照するに、定着部30は、加熱ローラー31、加圧ローラー32、第1周速度センサー33、第2周速度センサー34、ヒーター35、第1伝達機構36、第2伝達機構37、第1モーターFM1、および第2モーターFM2を含む。
図5は、MFP100の電子制御系統の構成を示すブロック図である。図5を参照するにこの系統では、ADF110、スキャナー120、プリンター130に加えて操作部50と主制御部60とがバス90を通して互いに通信可能に接続されている。
−プリンターの駆動部−
プリンター130の各要素10、20、30、40は駆動モーター群10A、20A、30A、40Aとそれらの駆動部10D、20D、30D、40Dとを含む。駆動モーター群10A、…は、図2、図3の示す搬送ローラー群12P、12F、12R、13、15、23R、24、27、31、32、43、感光体ドラム25Y、…、および1次転写ローラー22Y、…を回転させる。各駆動部10D、…は、MFP100に内蔵された1枚の印刷回路基板に実装された電子回路であり、駆動モーターに対する制御回路と駆動回路とを含む。制御回路は、マイクロプロセッサ(MPU/CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはプログラム可能な集積回路(FPGA)等の論理回路であり、モーターの回転数に対する目標値を設定して駆動回路に指示する。具体的にはたとえば、モーターからフィードバックされる実際の回転数に基づいてそのモーターに対する印加電圧の目標値を駆動回路に指示する。駆動回路はインバーターであり、パワートランジスター(FET)等のスイッチング素子を利用してモーターに電力を供給する。
操作部50はユーザーの操作または外部の電子機器との通信を通してジョブの要求と印刷対象の画像データとを受け付けて、それらを主制御部60へ伝える。図5を参照するに操作部50は操作パネル51と外部インタフェース(I/F)52とを含む。操作パネル51は、図1が示すように、押しボタン、タッチパネル、およびディスプレイを含む。操作パネル51は、操作画面および各種パラメーターの入力画面等のGUI画面をディスプレイに表示する。操作パネル51はまた、ユーザーが押下した押しボタンを識別し、またはユーザーが触れたタッチパネル上の位置を検出し、その識別または検出に関する情報を操作情報として主制御部60へ伝える。特に印刷ジョブの入力画面がディスプレイに表示されている場合、操作パネル51は、印刷対象のシートのサイズ、紙種、姿勢(縦置きと横置きとの別)、部数、カラー/モノクロの別、画質等、印刷に関する動作条件をユーザーから受け付けて、これらの条件を示す項目を操作情報に組み込む。外部I/F52はUSBポートまたはメモリーカードスロットを含み、それらを通してUSBメモリー、HDD等の外付けの記憶装置から直に印刷対象の画像データを読み込み、またはそれらの記憶装置へスキャナー120で取り込んだ画像データを書き出す。外部I/F52はまた外部ネットワーク(図5は示していない。)に有線または無線で接続され、そのネットワーク上の他の電子機器から印刷対象の画像データを受信し、またはその電子機器へスキャナー120で取り込んだ画像データを送信する。
主制御部60は、MFP100に内蔵された1枚の印刷回路基板に実装された集積回路であり、CPU61、RAM62、およびROM63を含む。CPU61は1つのMPUで構成され、各種ファームウェアを実行することにより、他の要素50、110−130に対する制御主体としての多様な機能を実現する。たとえばCPU61は操作部50に操作画面等のGUI画面を表示させてユーザーの入力操作を受け付けさせる。この入力操作に応じてCPU61は、稼動モード、待機モード、スリープモード等の動作モードのいずれかを選択して、その動作モードに応じた処理を各要素110、120、130に指示する。RAM62は、DRAM、SRAM等の揮発性半導体メモリー装置であり、CPU61がファームウェアを実行する際の作業領域をCPU61に提供すると共に、操作部50が受け付けた印刷対象の画像データを保存する。RAM62は特に、操作部50からの操作情報が示す印刷等の動作条件、CPU61が選択した現時点での動作モード、およびCPU61がMFP100内のセンサーを通して検出した温度、湿度等の環境条件を、他の要素から参照可能に保持する。ROM63は書き込み不可の不揮発性記憶装置と書き換え可能な不揮発性記憶装置との組み合わせで構成されている。前者はファームウェアを格納する。後者は、EEPROM、フラッシュメモリー、SSD等の半導体メモリー装置、またはHDDを含み、CPU61に環境変数等の保存領域を提供する。
図5が示す定着部30の駆動部30Dは、図4が示す、加熱ローラー31、加圧ローラー32、周速度センサー33、34、伝達機構およびモーターFM1、FM2と共に、本発明の実施形態によるシート搬送装置200を構成する。
図6は、このシート搬送装置200の電子制御系統のブロック図である。図6を参照するに、駆動部30Dは、制御回路210、第1駆動回路221、第2駆動回路222、および回転速度実測部230を含む。制御回路210は、MPU/CPU、ASIC、またはFPGA等の論理回路であり、モーターFM1、FM2の各回転数に対する目標値を設定して各駆動回路221、222に指示する。制御回路210はまた、定着部30の環境条件と動作条件とを検出する検出部としても機能する。環境条件にはたとえば、定着部30内に設置された温度センサーと湿度センサーとが検出した加熱ローラー31の温度と定着部30内の雰囲気の湿度とが含まれる。動作条件には主制御部60から通知された動作条件、すなわち、加熱ローラー31の目標温度、印刷対象のシートの秤量等が含まれる。各駆動回路221、222はインバーターであり、FET等のスイッチング素子を利用してモーターFM1、FM2に電力を供給する。回転速度実測部230は、各モーターFM1、FM2に内蔵されたエンコーダーの出力信号FGPを監視し、これらの信号FGPから各モーターの実際の回転数Nmsを計算して制御回路210へフィードバックする。
「動作期間」とは、たとえばプリンター130による印字処理の実行に伴い、加熱ローラー31と加圧ローラー32とがシートを搬送する期間をいう。「準備期間」とは、推定部242が動作期間の合間に駆動部30Dに両ローラー31、32を調整モードで回転させるべき期間をいう。
図7は、加熱ローラー31の温度の経時的変化を示すグラフである。図7を参照するにMFP100の電源投入時t0、定着部30の駆動部30Dがヒーター35を起動して加熱ローラー31の温度を初期値T0から上昇させ始める。この温度はその後、第1時刻t1で稼動モードでの目標値Ttgに到達する。MFP100の電源投入時t0から第1時刻t1までの期間WUTのように、加熱ローラー31が昇温し続ける期間を「ウォームアップ期間」と呼ぶ。第1時刻t1以後、駆動部30Dは、主制御部60から待機モードへの移行を指示されない限り、ヒーター35の発熱量を加減して加熱ローラー31の温度を稼動モードでの目標値Ttgに維持し続ける。第2時刻t2では主制御部60が印字処理の開始を各要素10、…に指示する。この指示に応じて駆動部30Dは両ローラー31、32によるシートの搬送処理とトナー像の定着処理とを開始する。この場合、第1時刻t1から第2時刻t2までの期間PRTを推定部242は準備期間に設定し、第2時刻t2以降の期間DRTを決定部243は動作期間に設定する。
−制御の概略−
シート搬送装置200は加熱ローラー31と加圧ローラー32との回転数を次のように制御する。まず、制御回路210が定着部30の環境条件または動作条件を検出し、決定部243がこの条件に対応するニップ速度比の目標値を、記憶部244が記憶している速度比表から検索する。次に、推定部242が準備期間PRTにおいて駆動部30Dに両ローラー31、32を調整モードで回転させ、測定部241が各ローラー31、32の周速度を測定する。このときの測定値から推定部242は、両ローラー31、32の周速度とニップNPでの接線速度との間の関数関係を推定する。続いて動作期間DRTではこの関数関係とニップ速度比の目標値とを利用して決定部243が、両ローラー31、32の少なくとも一方の周速度の測定値から各ローラー31、32の回転数の目標値を決定して駆動部30Dに指示する。この指示に応じて駆動部30Dは両ローラー31、32を実働モードで回転させ、各ローラー31、32の回転数が目標値と一致するようにモーターFM1、FM2を制御する。
−ニップ速度比がシートの分離性とトナー像の画質とに関係する理由−
図8の(a)は、加熱ローラー31と加圧ローラー32とのニップNPでの接線速度VN1、VN2を示す模式図であり、(b)は、そのニップNPに挟まれたシートSH2の表裏が受ける摩擦力FF1、FF2と、それらの間の差に起因してシートSH2に作用する剪断力SHFとを示す模式図である。図8を参照するに、両ローラー31、32間ではニップNPでの接線速度VN1、VN2に差があるので、この差に起因して各ローラー31、32とシートSH2との間の摩擦力FF1、FF2にも差が生じる。この差によりシートSH2には表面に対して垂直な方向に剪断力SHFが生じる。各ローラー31、32の外周面に対する剪断力SHFの方向に応じてシートSH2と各外周面との間の離脱角θ1、θ2の一方が拡がり、他方が狭まる。したがって、ニップNPでの接線速度VN1、VN2の差が適正な範囲に保たれていれば、いずれの離脱角θ1、θ2もある程度の大きさ以上に維持される。また、剪断力SHFが大きいほどニップNPに挟まれたシートSH2の部分に付着したトナーからワックスが多量に滲み出す。これらの結果、大まかには、ニップNPでの接線速度VN1、VN2の差が大きいほどシートSH2の分離性が高い。
加熱ローラー31と加圧ローラー32とにおけるシートの分離性は、印刷ジョブを処理する際の定着部30の環境条件とその処理における動作条件とに依存する。したがって、これらの環境条件と動作条件とに応じて、両ローラー31、32間のニップNPでの接線速度VN1、VN2の間に確保すべき差の適正な範囲は変化する。この適正な範囲を速度比表はたとえば次のように規定する。
推定部242は準備期間PRTに加熱ローラー31と加圧ローラー32とを回転させ、そのときの周速度の測定値から周速度とニップNPでの接線速度VN1、VN2との間の関数関係を推定する。この推定処理の詳細は、加熱ローラー31と加圧ローラー32とをソフトローラーとハードローラーとの組み合わせとみなして扱うことができる場合と、ソフトローラー同士の組み合わせとして扱うべき場合とで異なる。
図4の(b)が示す例では、加熱ローラー31と加圧ローラー32とがいずれも弾性体層321、322を含むので、厳密にはソフトローラーである。したがって、いずれの外周面もニップNPでは潰れるように変形するので、ニップNPでの接線速度が正確には周速度から外れる。しかし、この例では更に、加熱ローラー31の弾性体層312よりも加圧ローラー32の弾性体層322が厚い。それ故、ニップNPでの変形は加熱ローラー31よりも加圧ローラー32で大きく、その変形に伴うニップNPでの接線速度と周速度との間の誤差も加熱ローラー31よりも加圧ローラー32で大きい。
図10の(a)は、加熱ローラー31がハードローラーであり、加圧ローラー32がソフトローラーである場合に両ローラー31、32の回転数N1、N2、周速度VC1、VC2、およびニップNPでの接線速度VN1、VN2を示す模式図であり、(b)は、(a)の示すニップNPの拡大図である。図10を参照するに、ニップNPでは加熱ローラー31の外周面は変形しない。したがって、ニップNPでの接線速度VN1は周速度VC1と等しい:VN1=VC1。これに対し、加圧ローラー32の外周面は加熱ローラー31の外周面に押し潰されて凹む。この凹みに伴って加圧ローラー32の外周面の輪郭は、図10の(b)が破線で示す本来の円弧形状LCから、一点鎖線で示す実際の曲線形状LNへ変形する。いずれの形状LC、LNもこれらを見込む中心角φは一定である。したがって加圧ローラー32の回転数N2が一定であれば、加圧ローラー32の外周面上の1点がいずれの形状LC、LNに沿って移動する時間も等しい。一方、変形前の円弧形状LCよりも変形後の曲線形状LNは一般に長い:LC<LN。これは、その曲線形状LNの接線方向における速度、すなわちニップNPでの接線速度VN2が円弧形状LCの接線方向における速度、すなわち周速度VC2よりも大きいことを意味する:VN2>VC2。
図11の(a)は、準備期間PRTでの加熱ローラー31と加圧ローラー32との周速度VC1、VC2とニップNPでの接線速度VN1、VN2とを示す模式図である。図11の(a)では、駆動ローラーである加熱ローラー31が斜線で示され、従動ローラーである加圧ローラー32が白抜きで示されている。加熱ローラー31が第1モーターFM1から受けるトルクにより回転数NDで回転する場合、加圧ローラー32はニップNPで加熱ローラー31から受ける摩擦力により回転数NFで回転する。
図11の(a)の例では、加圧ローラー32はニップNPでの変形により加熱ローラー31に十分に密着している。したがって、両ローラー31、32間では滑り率γが“1”に等しいとみなしてよい:γ≒1。すなわち、両ローラー31、32間ではニップNPでの接線速度VN1、VN2が実質的に等しい:VN1≒VN2。加熱ローラー31はハードローラーであるので内部速度比α1が“1”に等しい。すなわち、ニップNPでの接線速度VN1は周速度VC1に等しい:VN1=α1×VC1=VC1。一方、加圧ローラー32はソフトローラーであるので、ニップNPでの接線速度VN2は内部速度比α2と周速度VC2との積に等しい:VN2=α2×VC2。したがって、加圧ローラー32の内部速度比α2は次式(1)のとおり、両ローラー31、32の周速度VC1、VC2の比で表される:
α2=VN2/VC2=VN1/VC2=VC1/VC2。 (1)
推定部242は式(1)の右辺に、測定部241から取得した準備期間PRTにおける各ローラー31、32の周速度の測定値を代入して加圧ローラー32の内部速度比α2の推定値を算定する。
<ソフトローラー同士の組み合わせの場合>
図4の(b)が示す加熱ローラー31と加圧ローラー32とは実際にはいずれもソフトローラーであるので、いずれの外周面もニップNPでは潰れるように変形する。両ローラー31、32間で外周面の弾性が互いに無視できない場合、ニップNPでの変形に伴う接線速度と周速度との間の誤差も互いに無視できない。したがって、両ローラー31、32はそのままソフトローラー同士の組み合わせとして扱われる。
推定部242は次に、準備期間PRTにおける各ローラー31、32の周速度の測定値から駆動ローラーの周速度と従動ローラーの周速度との比を、各ローラー31、32が駆動ローラーである場合について求める。推定部242は更に、これらの比の相乗平均を両ローラー31、32間での内部速度比の比率の推定値に設定する。この推定値はたとえば記憶部244に保存される。
γ=VN2/VN1=(α2×VC2)/(α1×VC1)
=(α2/α1)×(VC2/VC1)。 (2)
図11の(c)は、準備期間PRTにおいて加熱ローラー31を従動ローラーとし、加圧ローラー32を駆動ローラーとしたときでの周速度VC1*、VC2*とニップNPでの接線速度VN1*、VN2*とを示す模式図である。図11の(c)では、駆動ローラーである加圧ローラー32が斜線で示され、従動ローラーである加熱ローラー31が白抜きで示されている。加圧ローラー32が第2モーターFM2から受けるトルクにより回転数ND*で回転する場合、加熱ローラー31は加圧ローラー32との摩擦力により回転数NF*で回転する。このとき、加熱ローラー31のニップNPでの接線速度VN1*は駆動ローラー=加圧ローラー32に対する従動ローラー=加熱ローラー31の滑り率γ*と加圧ローラー32のニップNPでの接線速度VN2*との積に等しい:VN1*=γ*×VN2*。また、各ローラー31、32のニップNPでの接線速度VN1*、VN2*は内部速度比α1*、α2*と周速度VC1*、VC2*との積に等しい:VN1*=α1*×VC1*、VN2*=α2*×VC2*。したがって、滑り率γ*は両ローラー31、32の内部速度比α1*、α2*と周速度VC1*、VC2*とを用いて次式(3)で表される:
γ*=VN1*/VN2*=(α1*×VC1*)/(α2*×VC2*)
=(α1*/α2*)×(VC1*/VC2*)。 (3)
ここで、両ローラー31、32のいずれが駆動ローラーであるかにかかわらず、両ローラー31、32間の滑り率と各ローラー31、32の内部速度比とは一定であることを仮定する:γ=γ*、α1=α1*、α2=α2*。この仮定の下では式(2)、(3)から次のように式(4)が得られる:
(α2/α1)×(VC2/VC1)=(α1*/α2*)×(VC1*/VC2*)
=(α1/α2)×(VC1*/VC2*)
∴ α1/α2={(VC2/VC1)×(VC2*/VC1*)}1/2。 (4)
式(4)が表すとおり、両ローラー31、32間での内部速度比の比率α1/α2は加熱ローラー31が駆動ローラーである場合における周速度の比VC2/VC1と加圧ローラー32が駆動ローラーである場合における周速度の比VC2*/VC1*との相乗平均に等しい。推定部242は式(4)の右辺に、測定部241から取得した準備期間PRTにおける各ローラー31、32の周速度の測定値を代入して内部速度比の比率α1/α2の推定値を算定する。
決定部243は、推定部242が推定した関数関係、具体的にはソフトローラーの内部速度比αまたは両ローラー31、32間での内部速度比の比率α1/α2を利用して、動作期間DRTにおける両ローラー31、32の周速度の測定値から、各ローラー31、32の回転数の目標値を決定する。この決定処理の詳細は、加熱ローラー31と加圧ローラー32とをソフトローラーとハードローラーとの組み合わせとみなして扱うことができる場合と、ソフトローラー同士の組み合わせとして扱うべき場合とで異なる。
たとえば加圧ローラー32がソフトローラーである場合、推定部242はその内部速度比α2を推定する。この推定値を決定部243は次のように利用して、動作期間DRTに両ローラー31、32の周速度の測定値から各ローラー31、32の回転数の目標値を決定する。
RVN=VN1/VN2=VC1/VN2=VC1/(α2×VC2)。 (5)
たとえば、加熱ローラー31の回転数N1がシートの搬送速度に対応する値に固定される場合、決定部243は式(5)に、ニップ速度比RVNの目標値RTG、推定部242から取得した内部速度比α2の推定値、および測定部241から取得した動作期間DRTにおける加熱ローラー31の周速度VC1の測定値を代入して、加圧ローラー32の周速度VC2の目標値を算定する。すなわち、この周速度VC2の目標値は次式(6)で表される:
VC2=VC1/(α2×RTG)。 (6)
たとえば、ニップ速度比の目標値RTGが“1.03”であり、内部速度比α2の推定値が“1.02であり、加熱ローラー31の周速度VC1の測定値が135mm/秒である場合、加圧ローラー32の周速度VC2の目標値は135/(1.02×1.03)=128mm/秒と算定される。これに対し、加圧ローラー32の周速度VC2の測定値が130mm/秒であれば、決定部243はこの周速度VC2の測定値に対する目標値の比128/130と加圧ローラー32の現在の回転数N2との積を、このローラー32の回転数の目標値に決定する。
推定部242は両ローラー31、32間での内部速度比の比率α1/α2を推定する。この推定値を決定部243は次のように利用して、動作期間DRTに両ローラー31、32の周速度の測定値から各ローラー31、32の回転数の目標値を決定する。
図12の(b)は、動作期間DRTでの加熱ローラー31と加圧ローラー32との周速度VC1、VC2とニップNPでの接線速度VN1、VN2とを示す模式図である。図12の(b)ではいずれのローラー31、32も駆動ローラーであるので、いずれも白抜きで示されている。加熱ローラー31は第1モーターFM1から受けるトルクにより回転数N1で回転し、加圧ローラー32は第2モーターFM2から受けるトルクにより回転数N2で回転する。各ローラー31、32のニップNPでの接線速度VN1、VN2は内部速度比α1、α2と周速度VC1、VC2との積に等しい:VN1=α1×VC1、VN2=α2×VC2。したがって、ニップ速度比RVN=VN1/VN2は次式(7)が表すとおり、両ローラー31、32間での内部速度比の比率α1/α2と周速度の比率VC1/VC2との積に等しい:
RVN=VN1/VN2=(α1×VC1)/(α2×VC2)
=(α1/α2)×(VC1/VC2)。 (7)
たとえば、加熱ローラー31の回転数N1がシートの搬送速度に対応する値に固定される場合、決定部243は式(7)に、ニップ速度比RVNの目標値RTG、推定部242から取得した内部速度比の比率α1/α2の推定値、および測定部241から取得した動作期間DRTにおける加熱ローラー31の周速度VC1の測定値を代入して、加圧ローラー32の周速度VC2の目標値を算定する。すなわち、この周速度VC2の目標値は次式(8)で表される:
VC2=(α1/α2)×(VC1/RTG)。 (8)
たとえば、ニップ速度比の目標値RTGが“1.03”であり、内部速度比の比率α1/α2の推定値が1/1.02であり、加熱ローラー31の周速度VC1の測定値が135mm/秒である場合、加圧ローラー32の周速度VC2の目標値は(1/1.02)×(135/1.03)=128mm/秒と算定される。これに対し、加圧ローラー32の周速度VC2の測定値が130mm/秒であれば、決定部243はこの周速度VC2の測定値に対する目標値の比128/130と加圧ローラー32の現在の回転数N2との積をこのローラー32の回転数の目標値に決定する。
N2=(VC2の目標値)/(VC2の測定値)×Nd2
=128/130×3000rpm=2954rpm。
駆動部30Dはこの目標値に加圧ローラー32の回転数N2が一致するように第2モーターFM2を制御する。
図13は、加熱ローラー31と加圧ローラー32とがソフトローラーとハードローラーとの組み合わせである場合に推定部242がソフトローラーの内部速度比を推定する処理のフローチャートである。この処理は、図7が示すウォームアップ期間WUTに開始される。
ステップS102では、加熱ローラー31の温度が目標値Ttgに到達しているので、推定部242は駆動部30Dに、加熱ローラー31と加圧ローラー32との一方を駆動ローラーとして回転させ、他方を従動ローラーとして回転させる。その後、処理はステップS103へ進む。
ステップS104では、推定部242が測定部241から各ローラー31、32の周速度の測定値VC1、VC2を取得し、式(1)に従ってそれらの比をソフトローラーの内部速度比αの推定値に算定する。その後、処理は終了する。
ステップS101では、推定部242が加熱ローラー31の温度を監視し、その温度が稼動モードでの目標値Ttgに到達したか否かを確認する。到達していれば処理がステップS102へ進み、到達していなければ処理がステップS101を繰り返す。
ステップS103では、加熱ローラー31と加圧ローラー32との各周速度VC1、VC2を測定部241が周速度センサー33、34で測定する。その後、処理はステップS102*へ進む。
ステップS103*では、加熱ローラー31と加圧ローラー32との各周速度VC1*、VC2*を測定部241が周速度センサー33、34で測定する。その後、処理はステップS104*へ進む。
図15は、動作期間における加熱ローラー31と加圧ローラー32とに対する回転制御のフローチャートである。この処理は、制御回路210が定着部30の環境条件または動作条件を検出したときに開始される。
ステップS112では、ステップS111で取得した条件に基づいて決定部243が、加熱ローラー31と加圧ローラー32とからのシートの分離しにくさを表すポイントを求める。具体的には決定部243はその条件が規定するパラメーターの各値に対応するポイントを、記憶部244の保管する採点表(図9の(a)参照。)から検索する。その後、処理はステップS113へ進む。
ステップS114では、駆動部30Dが各ローラー31、32に回転を開始させる。その後、処理はステップS115へ進む。
ステップS116では、決定部243が推定部242からはソフトローラーの内部速度比αまたは内部速度比の比率α1/α2の推定値を取得し、測定部241からはステップS115での測定値を取得する。これらの値と、ステップS113で検索したニップ速度比の目標値RTGとを式(5)または式(7)に代入して決定部243は、両ローラー31、32の周速度の目標値を算定する。その後、処理はステップS117へ進む。
ステップS118では、主制御部60から印刷ジョブの処理終了が指示されたか否かを制御回路210が確認する。指示されていれば処理が終了し、指示されていなければ処理がステップS115から繰り返される。
本発明の実施形態によるMFP100では上記のとおり、シート搬送装置200が準備期間PRTに加熱ローラー31と加圧ローラー32との一方を駆動ローラーとして回転させ、他方を従動ローラーとして回転させ、各ローラー31、32の周速度の測定値から周速度とニップNPでの接線速度との間の関数関係を推定する。この関数関係とニップ速度比の目標値とを利用してシート搬送装置200は、動作期間DRTに各ローラー31、32の周速度の測定値に基づいて各ローラー31、32の回転数の目標値を、ニップ速度比が目標値に一致するように決定する。
(A)本発明の上記の実施形態による画像形成装置100はMFPである。本発明の実施形態による画像形成装置はその他に、レーザープリンター、インクジェット等の他方式のプリンター、コピー機、スキャナー、FAX等のいずれの単機能機であってもよい。画像形成装置はまた、定着処理を終えたシートをスイッチバックさせる正逆両回転が可能な反転ローラー、定着部30からシートを裏返して作像部20へ戻す反転経路等、両面印刷のための機構を含んでいてもよい。
(F)定着部30の駆動部30Dは調整モードでは、いずれかの伝達機構36、37にクラッチでギアを芯金321、322から分離させることにより、加熱ローラー31と加圧ローラー32との一方を他方に従動させる。その他に、たとえば電源から分離された各モーターFM1、FM2を回転させる際のトルクが十分に小さければ、駆動部30Dはいずれの伝達機構36、37にもクラッチを切らせることなく、加熱ローラー31と加圧ローラー32との一方を他方に従動させてもよい。
10 給送部
20 作像部
30 定着部
200 シート搬送装置
30D 定着部の駆動部
210 制御回路
221 第1駆動回路
222 第2駆動回路
230 回転速度実測部
241 測定部
242 推定部
243 決定部
244 記憶部
31 加熱ローラー
32 加圧ローラー
33 第1周速度センサー
34 第2周速度センサー
35 第1伝達機構
36 第2伝達機構
FM1 第1モーター
FM2 第2モーター
FGP 各モーターに内蔵のエンコーダーの出力信号
Nms 各モーターの実際の回転数
VC1 加熱ローラーの周速度
VC2 加圧ローラーの周速度
Claims (8)
- シートに対してニップ搬送を行うシート搬送装置であり、
回転軸が互いに平行であり、かつ外周面が互いに接触してニップを形成し、少なくとも一方が弾性体層を含む第1ローラーと第2ローラーと、
前記第1ローラーと前記第2ローラーとの一方を駆動ローラーとして回転させ、他方を従動ローラーとして回転させる調整モードと、両方を互いに独立に回転させる実働モードとが切換可能であり、前記調整モードと前記実働モードとのいずれかで前記第1ローラーと前記第2ローラーとを目標の回転数で回転させる駆動部と、
前記第1ローラーと前記第2ローラーとの各周速度を測定する測定部と、
前記駆動部が前記第1ローラーと前記第2ローラーとを調整モードで回転させる間に前記測定部が測定した周速度に基づき、前記第1ローラーと前記第2ローラーとの周速度と前記ニップでの接線速度との間の関数関係を推定する推定部と、
前記推定部が推定した関数関係を利用して、前記駆動部が前記第1ローラーと前記第2ローラーとを実働モードで回転させる間、前記第1ローラーと前記第2ローラーとの各回転数の目標値を決定して前記駆動部に指示する決定部と、
を備えたシート搬送装置。 - 前記推定部は、前記第1ローラーと前記第2ローラーとがシートを搬送する動作期間の合間に、前記駆動部に前記第1ローラーと前記第2ローラーとを調整モードで回転させるべき準備期間を設定し、
前記決定部は、前記動作期間中、前記駆動部に前記第1ローラーと前記第2ローラーとを実働モードで回転させる
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。 - 前記第1ローラーは弾性体層を含み、前記第2ローラーは前記第1ローラーに対して外周面の弾性が無視可能であり、
前記推定部は、前記準備期間に前記測定部が測定した周速度から前記第1ローラーの周速度と前記第2ローラーの周速度との比を求め、当該比を前記第1ローラーの周速度と前記ニップでの接線速度との間の比例係数として推定し、
前記決定部は当該比例係数を回転数の目標値の決定に利用する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシート搬送装置。 - 前記第1ローラーと前記第2ローラーとはいずれも弾性体層を含み、
前記推定部は前記準備期間において前記駆動部に前記第1ローラーと前記第2ローラーとを交互に駆動ローラーと従動ローラーとして回転させ、前記準備期間に前記測定部が測定した周速度から、駆動ローラーの周速度と従動ローラーの周速度との比を前記第1ローラーと前記第2ローラーとがそれぞれ駆動ローラーである場合について求め、前記第1ローラーが駆動ローラーである場合での比と前記第2ローラーが駆動ローラーである場合での比との相乗平均を、前記第1ローラーの周速度と前記ニップでの接線速度との間の第1比例係数と、前記第2ローラーの周速度と前記ニップでの接線速度との間の第2比例係数との比として推定し、
前記決定部は前記第1比例係数と前記第2比例係数との比を回転数の目標値の決定に利用する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシート搬送装置。 - 前記シート搬送装置が搭載されるシステムの環境条件または動作条件を検出する検出部と、
前記第1ローラーの前記ニップでの接線速度と前記第2ローラーの前記ニップでの接線速度との比の目標値を前記システムの環境条件または動作条件に対応付けた表を記憶した記憶部と、
を更に備え、
前記決定部は、前記検出部が検出した前記システムの環境条件または動作条件に対応する目標値を前記記憶部から検索し、当該目標値と前記推定部が推定した関数関係とを利用して、前記動作期間において前記測定部が測定した前記第1ローラーと前記第2ローラーとの少なくとも一方の前記ニップでの接線速度から前記第1ローラーと前記第2ローラーとの回転数の目標値を決定する
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のシート搬送装置。 - 前記測定部は、前記動作期間中、前記第1ローラーと前記第2ローラーとの各周速度の測定を定期的に繰り返し、
前記決定部は、前記動作期間において前記測定部が周速度を測定する度に、当該周速度と前記推定部が推定した関数関係とを利用して回転数の目標値を更新する
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載のシート搬送装置。 - シートに画像を形成する作像部と、
前記作像部が画像を形成すべき、または形成したシートを搬送する請求項1から請求項6までのいずれかに記載のシート搬送装置と、
を備えた画像形成装置。 - 前記作像部はシートに画像をトナーで形成し、
前記第1ローラーと前記第2ローラーとは、前記作像部から前記ニップに通紙されるシートに対して熱と圧力とを加えて、前記作像部が当該シートに形成したトナー像を熱定着させる
ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
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