JP6540474B2 - シート搬送装置、およびそれを備えた画像形成装置 - Google Patents

シート搬送装置、およびそれを備えた画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明はシートの搬送技術に関し、特にニップ搬送に関する。
「ニップ搬送」とは、ローラー、ベルト等の回転体を利用して、紙、フィルム、布、薄板等のシートを搬送する方式の1つである。ニップ搬送では、回転軸が互いに平行な回転体の対が外周面を互いに接触させた状態で互いに逆向きに回転する。両回転体の接触部(ニップ)では接線速度が同方向であるので、このニップへ片側から挿入されたシートは両回転体の外周面からの摩擦力でこのニップへ引き込まれて反対側へ送出される。ニップ搬送は、プリンター、コピー機等の画像形成装置を始め、スキャナー、自動販売機、現金自動預払機(ATM)、自動券売機、自動改札機等、シートを処理対象とするシステムの多くで利用される。
これらのシステムではシート搬送装置が一般に、ソフトローラーを回転体そのものとして、または回転体であるベルトを駆動し、もしくは緊張させるローラー(「プーリー」と呼ぶ。)として利用する。「ソフトローラー」とは、アルミ等の金属製、または高硬度の樹脂製の円筒軸または円柱軸(「芯金」と呼ぶ。)のまわりをシリコーンゴム等の弾性体層で覆ったローラーをいう。これに対し、芯金のみで弾性体層を含まないローラーを「ハードローラー」という。ソフトローラーはハードローラーと比べて、たとえば、騒音が低い点、シートを損傷させにくい点、ICカード等、紙厚が大きく、または材質の硬いシートでも搬送可能である点で有利である。ソフトローラーはまた外周面の高弾性によりニップ幅を拡大して外周面をシートに密着させやすい。これにより、ソフトローラーはレーザープリンター等、電子写真式の画像形成装置の定着部(たとえば、特許文献1〜3参照。)または転写部(たとえば、特許文献4、5参照。)でよく利用される。回転体とシートとの間の密着性が高いほど定着と転写とはいずれも効果が高いので、ソフトローラーはトナー像の高品質化にも有利である。しかし、この高密着性は逆に、シートがニップの出口でローラーの外周面から分離しにくいことにつながりやすく、ニップから離脱する際の反り(カール)に起因する皺(しわ)をシートに残しかねず、さらに紙詰まり(ジャム)を引き起こしかねない。
ローラーからのシートの分離しやすさ(分離性)を向上させるための工夫としてはたとえば次の技術が知られている。(1)ソフトローラーをハードローラーと組み合わせて、シートがニップから離脱する際にハードローラーの外周面と成す角度(以下、「離脱角」と呼ぶ。)を拡大する。(2)ローラーの外周面をフッ素樹脂等の離型層で覆う(たとえば、特許文献1参照)。さらに、ソフトローラーと、それと対を成す他のローラーとの間で周速度の差を制御することも有効である。大まかには、この差が大きいほどシートの分離性が高い。しかし、この差が過大であればシートの分離性がかえって低下する。それだけでなく、トナー像の画質が損なわれる危険性がある。したがって、周速度の差を適正な範囲内に維持することが、シートの高い分離性をトナー像の高画質と両立させるためには重要である。
たとえば、特許文献2に開示された技術では、加熱ローラー(「定着ローラー」ともいう。)と加圧ローラーとのシャフト間がギアで接続されることにより、両ローラーの一方が他方の従動ローラーとして設計される。このギアの比により両ローラーの回転数の間に1%〜7%の差が機械的に維持される。特許文献3に開示された技術では、加熱ローラーと加圧ローラーとの両方が独立に駆動される。この場合、各ローラーの回転数の制御目標値は、これらの間の差が画像データから推定されるシートの表裏間でのトナー量の差に起因するシートの反りを相殺するように決定される。特許文献4に開示された技術では、中間転写ベルトと転写ローラーとの両方が独立に駆動される。この場合、まずジョブ処理の合間に中間転写ベルトが回転すると共にその従動ローラーとして転写ローラーが回転し、そのときの転写ローラーの回転数が測定される。次に、この測定値がジョブ処理では転写ローラーの回転数の制御目標値に設定される。特許文献5に開示された技術では、中間転写ベルトと2次転写ベルトとの両方が独立に駆動される。このとき、各ベルトの周速度が光センサーで実測され、これらの実測値に基づいて各ベルトの駆動ローラーの回転数が独立に制御される。
特開平07−092840号公報 特開2003−149969号公報 特開2004−029563号公報 特開2010−134061号公報 特開2011−095368号公報
岡本紀明、大谷和弘、三沢恵一郎、吉田賢治、「ゴムローラによる紙搬送の速度特性と支配メカニズムの解明」、日本機械学会論文集(C編)、67巻654号(2001−2)
近年のニップ搬送技術では、シートの搬送速度の上昇と搬送間隔(紙間)の短縮とに伴い、回転体の対の間で周速度の差を更に高精度に制御することが重要視されている。しかし、周知の技術はいずれもこの制御の高精度化には不十分である。実際、たとえば特許文献2〜4に開示された技術では各回転体の周速度がその駆動モーターの回転数を通して間接的に監視され、特許文献5に開示された技術ではその周速度が光センサーで直接的に監視される。これらの監視対象である回転体の周速度はいずれも、その回転体がソフトローラーである場合にはニップでの接線速度に対して誤差を含む。これは、ソフトローラーの外周面がその高弾性により厳密にはニップで潰れるように変形するのに伴い、ニップでの接線速度が正確には周速度から外れることによる(たとえば、非特許文献1参照)。シートの分離性、および転写と定着との画質に対する効果はいずれもニップでの接線速度で決まるので、これらの向上にはこの接線速度と周速度との間の誤差を更に高精度に把握することが必要である。しかし、この誤差を表す関数関係はたとえば、摩耗等の劣化に起因するソフトローラーの表面形状の経年変化、または、環境温度もしくは湿度の変化に起因するソフトローラーの半径もしくは弾性率の変化に応じて変化する。したがってこの関数関係を、シート搬送装置の製造時に行われる実験またはシミュレーションで一律に決めることはできない。それ故、周知の技術ではソフトローラーと他の回転体との間で、ニップでの接線速度の差を更に高精度に制御することは困難である。
本発明の目的は上記の課題を解決することであり、特に、ニップでのソフトローラーの変形に起因するそのニップでの接線速度と周速度との間の関数関係を動的に決定してそのソフトローラーからのシートの分離性を、そのシートに形成された画像の高品質を維持したまま向上させることの可能なシート搬送装置を提供することにある。
本発明の1つの観点におけるシート搬送装置は、シートに対してニップ搬送を行うシート搬送装置であり、回転軸が互いに平行であり、かつ外周面が互いに接触してニップを形成し、少なくとも一方が弾性体層を含む第1ローラーと第2ローラーと、これらのローラーを各回転軸のまわりに目標の回転数で回転させる駆動部であり、第1ローラーと第2ローラーとの一方を駆動ローラーとして回転させ、他方を従動ローラーとして回転させる調整モードと、第1ローラーと第2ローラーとの両方を互いに独立に回転させる実働モードとが切換可能であり、調整モードと実働モードとのいずれかで第1ローラーと第2ローラーとを目標の回転数で回転させる駆動部と、第1ローラーと第2ローラーとの各周速度を測定する測定部と、駆動部が第1ローラーと第2ローラーとを調整モードで回転させる間に測定部が測定した周速度に基づき、第1ローラーと第2ローラーとの周速度とニップでの接線速度との間の関数関係を推定する推定部と、推定部が推定した関数関係を利用して、駆動部が第1ローラーと第2ローラーとを実働モードで回転させる間、第1ローラーと第2ローラーとの各回転数の目標値を決定して駆動部に指示する決定部とを備えている。
推定部は、第1ローラーと第2ローラーとがシートを搬送する動作期間の合間に、駆動部に第1ローラーと第2ローラーとを調整モードで回転させるべき準備期間を設定してもよい。決定部は、その動作期間中、駆動部に第1ローラーと第2ローラーとを実働モードで回転させてもよい。
第1ローラーは弾性体層を含み、第2ローラーは第1ローラーに対して外周面の弾性が無視可能であってもよい。この場合、推定部は、準備期間に測定部が測定した周速度から第1ローラーの周速度と第2ローラーの周速度との比を求め、その比を第1ローラーの周速度とニップでの接線速度との間の比例係数として推定し、決定部はその比例係数を回転数の目標値の決定に利用してもよい。
第1ローラーと第2ローラーとはいずれも弾性体層を含んでもよい。この場合、推定部は準備期間において駆動部に第1ローラーと第2ローラーとを交互に駆動ローラーと従動ローラーとして回転させ、その準備期間に測定部が測定した周速度から、駆動ローラーの周速度と従動ローラーの周速度との比を第1ローラーと第2ローラーとがそれぞれ駆動ローラーである場合について求め、第1ローラーが駆動ローラーである場合での比と第2ローラーが駆動ローラーである場合での比との相乗平均を、第1ローラーの周速度とそのニップでの接線速度との間の第1比例係数と、第2ローラーの周速度とそのニップでの接線速度との間の第2比例係数との比として推定し、決定部は第1比例係数と第2比例係数との比を回転数の目標値の決定に利用してもよい。
このシート搬送装置は、それが搭載されるシステムの環境条件または動作条件を検出する検出部と、第1ローラーのニップでの接線速度と第2ローラーのニップでの接線速度との比の目標値をそのシステムの環境条件または動作条件に対応付けた表を記憶した記憶部とを更に備えてもよい。この場合、決定部は、検出部が検出したシステムの環境条件または動作条件に対応する目標値を記憶部から検索し、この目標値と推定部が推定した関数関係とを利用して、動作期間において測定部が測定した第1ローラーと第2ローラーとの少なくとも一方のニップでの接線速度から第1ローラーと第2ローラーとの回転数の目標値を決定してもよい。
測定部は、動作期間中、第1ローラーと第2ローラーとの各周速度の測定を定期的に繰り返し、決定部は、動作期間において測定部が周速度を測定する度に、その周速度と推定部が推定した関数関係とを利用して回転数の目標値を更新してもよい。
本発明の1つの観点における画像形成装置は、シートに画像を形成する作像部と、その作像部が画像を形成すべき、または形成したシートを搬送する上記のシート搬送装置とを備えている。
作像部はシートに画像をトナーで形成し、第1ローラーと第2ローラーとは、作像部からニップに通紙されるシートに対して熱と圧力とを加えて、作像部がそのシートに形成したトナー像を熱定着させてもよい。
本発明による上記のシート搬送装置はまず、準備期間において第1ローラーを駆動ローラーとして回転させ、第2ローラーを従動ローラーとして回転させて各ローラーの周速度を測定し、それらの周速度とニップでの接線速度との間の関数関係を推定する。シート搬送装置は次に、この関数関係を利用して動作期間における第1ローラーと第2ローラーとの各回転数の目標値を決定する。したがって、第1ローラーと第2ローラーとのいずれかのニップでの形状がシステムの環境条件または動作条件の変動に応じて変化しても、それに伴うニップでの接線速度と周速度との間の関数関係の変化に従って各ローラーの回転数が変化し、ニップでの接線速度の差を適正な範囲内に維持する。こうしてこのシート搬送装置はそれらのローラーからのシートの分離性を、そのシートに形成された画像の高品質を維持したまま向上させることができる。
本発明の実施形態による画像形成装置の外観を示す斜視図である。 図1が示す画像形成装置の内部構造を模式的に示す正面図である。 図2が示す画像形成装置が内蔵するシートの搬送経路を示す模式図である。 (a)は、図2が示す定着部の含むローラー対とそれらの駆動機構との模式的な斜視図であり、(b)は、(a)が示すローラー対の、直線(b)−(b)に沿った断面図である。 図1が示す画像形成装置の電子制御系統のブロック図である。 図5が示すシート搬送装置の電子制御系統のブロック図である。 図4が示す加熱ローラーの温度の経時的変化を示すグラフである。 (a)は、図4が示すローラー対のニップでの接線速度を示す模式図であり、(b)は、(a)の示すニップに挟まれたシートの表裏が受ける摩擦力と、それらの間の差に起因してシートに作用する剪断力とを示す模式図である。 (a)は、図2が示す定着部の環境条件と動作条件とを表すパラメーターの値を、図8の(a)が示すローラー対からのシートの分離しにくさの指標値(ポイント)に対応付ける表であり、(b)は、(a)が示すポイントの合計とニップ速度比の目標値との間の対応表である。 (a)は、図4の示すローラー対がソフトローラーとハードローラーとの組み合わせである場合における周速度とニップでの接線速度とを示す模式図であり、(b)は、(a)の示すニップの拡大図である。 (a)は、図4の示すローラー対がソフトローラーとハードローラーとの組み合わせである場合に図7が示す準備期間での周速度とニップでの接線速度とを示す模式図である。(b)は、図4の示すローラー対がソフトローラー同士の組み合わせである場合、準備期間において加熱ローラーを駆動ローラーとし、加圧ローラーを従動ローラーとしたときでの周速度とニップでの接線速度とを示す模式図であり、(c)は、同じ準備期間において加熱ローラーを従動ローラーとし、加圧ローラーを駆動ローラーとしたときでの周速度とニップでの接線速度とを示す模式図である。 (a)は、図11の(a)が示すソフトローラーとハードローラーとの組み合わせについて図7が示す動作期間での周速度とニップでの接線速度とを示す模式図であり、(b)は、図11の(b)が示すソフトローラー同士の組み合わせについて動作期間での周速度とニップでの接線速度とを示す模式図である。 図11の(a)が示すソフトローラーとハードローラーとの組み合わせのうちソフトローラーの内部速度比を推定する処理のフローチャートである。 図11の(b)が示すソフトローラー同士の組み合わせの間での内部速度比の比率を推定する処理のフローチャートである。 動作期間におけるローラー対の回転制御のフローチャートである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[画像形成装置の外観]
図1は、本発明の実施形態による画像形成装置の外観を示す斜視図である。この画像形成装置100は胴内排紙型の複合機(multi-function peripheral:MFP)であり、スキャナー、カラーコピー機、およびカラーレーザープリンターの機能を併せ持つ。図1を参照するに、このMFP100の筐体の上面には自動原稿送り装置(auto document feeder:ADF)110が開閉可能に装着されている。ADF110の直下に位置する筐体の上部にはスキャナー120が内蔵され、下部にはプリンター130が内蔵され、更にその底部には複数段の給紙カセット133が引き出し可能に取り付けられている。スキャナー120とプリンター130との間には隙間DSPが開けられ、その中に排紙トレイ46が配置されている。この隙間DSPの奥には排紙口42が設置され、そこから排紙トレイ46へシートが排紙される。隙間DSPの横に位置する筐体の前面部分には操作パネル51が取り付けられている。操作パネル51の前面にはタッチパネルが埋め込まれ、その周囲に各種の機械的な押しボタンが配置されている。タッチパネルは、操作画面、各種情報の入力画面等のGUI画面を表示し、それの含むアイコン、仮想ボタン、メニュー、ツールバー等のガジェットを通してユーザーの入力操作を受け付ける。
[プリンターの構造]
図2は、プリンター130の構造を模式的に示す正面図である。図2にはプリンター130の要素が、あたかも筐体の前面を透かして見えているように描かれている。図2を参照するに、プリンター130は電子写真式のカラープリンターすなわちカラーレザープリンターであり、給送部10、作像部20、定着部30、および排紙部40を含む。給送部10から排紙部40までは協働してMFP100の画像形成部として機能し、画像データに基づいてシートに画像を形成する。
給送部10は搬送ローラー群12P、12F、12R、13、15を利用して、給紙カセット11a、11b、または手差しトレイ16からシートSHTを1枚ずつ作像部20へ給送する。シートSHTの材質はたとえば紙または樹脂であり、紙種はたとえば、普通紙、上質紙、カラー用紙、または塗工紙であり、サイズはたとえば、A3、A4、A5、またはB4である。
作像部20は、給送部10から送られたシートSH2の上にトナー像を形成する。具体的には、4つの作像ユニット21Y、21M、21C、21Kのそれぞれがまず感光体ドラム25Y、25M、25C、25Kの表面を帯電させ、光走査部26からのレーザー光を利用してその表面を画像データに基づいたパターンで露光する。これにより、その表面には静電潜像が作成される。各作像ユニット21Y、…は次にその静電潜像を、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(K)の各色のトナーで現像する。得られた4色のトナー像は1次転写ローラー22Y、22M、22C、22Kと感光体ドラム25Y、…との間の電界によって感光体ドラム25Y、…の表面から順番に中間転写ベルト23の表面上の同じ位置へ転写される。こうしてその位置に1つのカラートナー像が構成される。このカラートナー像は更に中間転写ベルト23と2次転写ローラー24との間の電界により、両者23、24の間のニップへ通紙されたシートSH2の表面へ転写される。その後、シートSH2に分離電圧が印加されることによりそのシートSH2が2次転写ローラー24から剥がされ、定着部30へ送り出される。
定着部30は、作像部20から送り出されたシートSH2の上にトナー像を熱定着させる。具体的には、加熱ローラー31と加圧ローラー32との間のニップへそのシートSH2が通紙されるとき、加熱ローラー31はそのシートSH2の表面へ内蔵のヒーターの熱を加え、加圧ローラー32はそのシートSH2の加熱部分に対して圧力を加えて加熱ローラー31へ押し付ける。加熱ローラー31からの熱と加圧ローラー32からの圧力とにより、トナー像がそのシートSH2の表面上に定着する。その後、定着部30はこのシートSH2を上部からガイド板41に沿って排紙口42へ送り出す。
排紙部40は、定着部30から送り出されたシートSH2を、排紙ローラー43によって排紙口42から排出し、排紙トレイ46に収容する。
[シート搬送部]
図2の示すとおり、MFP100では給送部10と排紙部40との他にも、中間転写ベルト23の駆動ローラー23R、2次転写ローラー24、加熱ローラー31、加圧ローラー32等、作像部20と定着部30との一部がシートの搬送部として機能する。
図3は、この搬送部が構成するシートの搬送経路を示す模式図である。図3を参照するに、この搬送経路は次のように構成されている。まず、給紙カセット11a、11b、および手差しトレイ16からの3本の給紙経路が合流点MPで1本の経路にまとまり、この経路が作像部20と定着部30とを貫いて排紙口42へ繋がる。この搬送経路上には、図2の示すローラー群12P、…に加えて複数の光学センサー1FS、2FS、CS、TS、ESが設置されている。各光学センサー1FS、…はその設置場所を通過中のシートを検知する。具体的には、各光学センサーは発光部と受光部とを含む。発光部は赤外線等、所定波長の光を出射し、受光部はその波長の光を検出する。各光学センサーの設置場所を1枚のシートが通過する間、そのシートは発光部の出射光を受光部の手前で遮断し、または受光部へ向けて反射する。この出射光の遮断または反射に応じて受光部の出力が変化することから、各光学センサーの設置場所を通過中のシートが検知される。これらの検知を搬送部10、…は後述の主制御部60(図5参照)へ通知する。この通知に応じて主制御部60は、ジャム等に起因して搬送のタイミングに異常が生じているか否かを判断する。
給送部10と作像部20との境界付近には合流点MPよりも下流にタイミングローラー27とタイミングセンサーTSとが設置されている。タイミングローラー27は一般に停止しており、給紙カセット11a、11b、および手差しトレイ16のいずれから移動してくるシートもその場で一旦停止させる。タイミングローラー27は更に、主制御部60からの駆動信号が示すタイミングで回転を開始することにより、停止させていたシートをそのタイミングで作像部20へ送り出す。これによりこのシートは中間転写ベルト23の表面上のトナー像と同時に、中間転写ベルト23と2次転写ローラー24との間のニップを通過する。タイミングセンサーTSの出力が示すシートの通過タイミングに遅れがないか否かに応じて、それらのシートがタイミングローラー27に正常なタイミングで到達しているか否かと、タイミングローラー27から正常なタイミングで送出されたか否かとが判断される。
搬送経路の周辺には搬送ローラー群12P、…に対する駆動モーター群M1、M2、M3、M4、TM、MM、FM1、FM2、DMが設置されている。各駆動モーターM1、…はたとえば直流ブラシレス(BLDC)モーターであり、ギア、ベルト等の伝達系統を通して駆動対象のローラーに回転力を与える。給紙カセット11a、11bの近傍では給送モーターM1、M2が給送ローラー群12P、12F、12Rを回転させる。2段目の給紙カセット11bからの経路の近傍では縦搬モーターM3が縦搬ローラー13を回転させる。手差しトレイ16からの経路の近傍では給送モーターM4が給送ローラー15を回転させる。給送部10と作像部20との境界付近ではタイミングモーターTMがタイミングローラー27を回転させる。作像部20ではメインモーターMMが中間転写ベルト23の駆動ローラー23Rを回転させる。定着部30では、第1モーターFM1が加熱ローラー31を回転させ、第2モーターFM2が加圧ローラー32を回転させる。排紙部40では排紙モーターDMが排紙ローラー43を回転させる。
[定着部の構造]
図4の(a)は、図2が示す定着部30の含むローラー対とそれらの駆動機構との模式的な斜視図であり、(b)は、(a)が示すローラー対の、直線(b)−(b)に沿った断面図である。図4を参照するに、定着部30は、加熱ローラー31、加圧ローラー32、第1周速度センサー33、第2周速度センサー34、ヒーター35、第1伝達機構36、第2伝達機構37、第1モーターFM1、および第2モーターFM2を含む。
加熱ローラー31と加圧ローラー32とは回転軸が互いに平行に配置され、外周面が互いに接触している。この接触部すなわちニップNPは、図4の(b)が示すように、両ローラー31、32の回転軸を含む仮想的な平面に対して垂直な方向(図4の(b)では上下方向)に数mmの幅で拡がっている。このニップNPに、作像部20から送り出されたシートSH2が挟み込まれる。
加熱ローラー31は、芯金311、弾性体層312、および離型層313を含む。芯金311はたとえば直径数十mmの円筒部材であり、主に、アルミ、鉄等の金属から成る。弾性体層312は、芯金311の外側を覆う、主にシリコーンゴム等、高弾性の耐熱性樹脂から成る層であり、その厚さはたとえば1mm未満である。離型層313は、弾性体層312の外側を覆うフッ素樹脂等の薄膜であり、加熱ローラー31の外周面を形成している。芯金311の内側の中空部にはヒーター35が設置されている。ヒーター35は細い棒状のハロゲンランプであり、発光に伴う熱放射で芯金311を内側から加熱する。この熱が弾性体層312と離型層313とを通して外周面に伝わるので、その温度がたとえば摂氏百数十度〜数百度の範囲に維持される。この高温により、ニップNPに挟まれたシートSH2の表面に付着したトナーが溶融する。この溶融したトナーがシートSH2の表面から加熱ローラー31の外周面へ転移する現象(オフセット現象)を離型層313は防止する役割を果たす。
加圧ローラー32は、芯金321、弾性体層322、および離型層323を含む。芯金321はたとえば直径数十mmの円筒部材であり、主に、アルミ、鉄等の金属から成る。弾性体層322は、芯金321の外側を覆う主にシリコーンゴム等、高弾性の耐熱性樹脂から成る層である。この層の厚さはたとえば数mmであり、加熱ローラー31の弾性体層312の厚さよりも大きい。離型層323は、弾性体層322の外側を覆うフッ素樹脂等の薄膜であり、加圧ローラー32の外周面を形成している。加圧ローラー32は、図4には示されていないバネまたは電磁石等の付勢部材から加熱ローラー31に向かう力を受けている。これにより加圧ローラー32はニップNPに位置する部分がたとえば106Pa程度のオーダーの圧力で加熱ローラー31へ押し付けられるので、図4の(b)が示すようにその部分が窪むように変形する。加圧ローラー32のこの圧力と変形とにより、ニップNPに挟まれたシートSH2の部分には十分な熱量が加熱ローラー31から伝わるので、その部分に付着したトナーが、むらを残すことなくシートSH2の表面に定着する。
周速度センサー33、34はたとえばレーザードップラー速度計であり、測定対象にレーザー光を照射してその対象からの反射光を検出し、照射光と反射光との間に生じる周波数の差からその対象の速度を求める。第1周速度センサー33は、加熱ローラー31の外周面のうちニップNPから外れた部分の接線速度を測定し、第2周速度センサー34は、加圧ローラー32の外周面のうちニップNPから外れた部分の接線速度を測定する。「接線速度」とは、回転体の場合、その回転に伴ってその表面上の1点が描く軌跡の接線方向におけるその1点の速度をいう。この軌跡のうち半径が一定の円弧を成す部分における接線速度を特に「周速度」と呼ぶ。
モーターFM1、FM2はたとえばBLDCモーターである。第1モーターFM1はシャフトが第1伝達機構36の一端に接続され、第1伝達機構36の他端は加熱ローラー31の芯金311の一端に接続されている。第2モーターFM2はシャフトが第2伝達機構37の一端に接続され、第2伝達機構37の他端は加圧ローラー32の芯金321の一端に接続されている。各伝達機構36、37はたとえばクラッチと複数のギアとを含む。クラッチはギアを各ローラー31、32の芯金311、321に分離可能に接続させる。ギアは各モーターFM1、FM2のシャフトの回転数に対して接続先のローラー31、32の回転数を所定の割合に維持する。第1モーターFM1は第1伝達機構36を通してトルクを加熱ローラー31へ伝えてそれを回転させる。第2モーターFM2は第2伝達機構37を通してトルクを加圧ローラー32へ伝えてそれを回転させる。
加熱ローラー31と加圧ローラー32との回転には調整モードと実働モードとの2通りの態様がある。「調整モード」では、いずれかの伝達機構36、37がクラッチでギアをローラー31、32の芯金311、321から分離する。これにより、両ローラー31、32の一方はモーターFM1、FM2からのトルクを受けて駆動ローラーとして回転し、他方はニップNPで摩擦力を受けて従動ローラーとして回転する。「実働モード」では、いずれの伝達機構36、37もクラッチでギアをローラー31、32の芯金311、321に接続し続ける。これにより、両ローラー31、32が互いに独立に回転する。
[画像形成装置の電子制御系統]
図5は、MFP100の電子制御系統の構成を示すブロック図である。図5を参照するにこの系統では、ADF110、スキャナー120、プリンター130に加えて操作部50と主制御部60とがバス90を通して互いに通信可能に接続されている。
−プリンターの駆動部−
プリンター130の各要素10、20、30、40は駆動モーター群10A、20A、30A、40Aとそれらの駆動部10D、20D、30D、40Dとを含む。駆動モーター群10A、…は、図2、図3の示す搬送ローラー群12P、12F、12R、13、15、23R、24、27、31、32、43、感光体ドラム25Y、…、および1次転写ローラー22Y、…を回転させる。各駆動部10D、…は、MFP100に内蔵された1枚の印刷回路基板に実装された電子回路であり、駆動モーターに対する制御回路と駆動回路とを含む。制御回路は、マイクロプロセッサ(MPU/CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはプログラム可能な集積回路(FPGA)等の論理回路であり、モーターの回転数に対する目標値を設定して駆動回路に指示する。具体的にはたとえば、モーターからフィードバックされる実際の回転数に基づいてそのモーターに対する印加電圧の目標値を駆動回路に指示する。駆動回路はインバーターであり、パワートランジスター(FET)等のスイッチング素子を利用してモーターに電力を供給する。
駆動部10D、…は更に多種多様なセンサーを利用してプリンター130の要素10−40の動作状態とシートの搬送状態とを監視し、それらの状態に応じて要素10−40を制御する。いずれかの要素10、…から不具合を検出した場合、駆動部10D、…はその不具合を主制御部60へ通知する。これらのセンサーには、図3の示す光学センサー1FS、…に加え、感光体ドラム25Y、…、中間転写ベルト23等の可動部材の位置または姿勢を検知するための位置センサー、それらの可動部材を駆動するアクチュエーターまたはその駆動回路の過熱を検知するための温度センサー、給紙カセット11a、11bにおける紙切れを検知するためのセンサー、作像ユニット21Y、…におけるトナー不足を検知するためのセンサー等が含まれる。定着部30の駆動部30Dは特に、定着部30内に設置された温度センサーを通して加熱ローラー31の温度を監視し、その温度の変化に応じてヒーター35の発熱量を調節する。これにより、加熱ローラー31の温度が目標値に維持される。
−操作部−
操作部50はユーザーの操作または外部の電子機器との通信を通してジョブの要求と印刷対象の画像データとを受け付けて、それらを主制御部60へ伝える。図5を参照するに操作部50は操作パネル51と外部インタフェース(I/F)52とを含む。操作パネル51は、図1が示すように、押しボタン、タッチパネル、およびディスプレイを含む。操作パネル51は、操作画面および各種パラメーターの入力画面等のGUI画面をディスプレイに表示する。操作パネル51はまた、ユーザーが押下した押しボタンを識別し、またはユーザーが触れたタッチパネル上の位置を検出し、その識別または検出に関する情報を操作情報として主制御部60へ伝える。特に印刷ジョブの入力画面がディスプレイに表示されている場合、操作パネル51は、印刷対象のシートのサイズ、紙種、姿勢(縦置きと横置きとの別)、部数、カラー/モノクロの別、画質等、印刷に関する動作条件をユーザーから受け付けて、これらの条件を示す項目を操作情報に組み込む。外部I/F52はUSBポートまたはメモリーカードスロットを含み、それらを通してUSBメモリー、HDD等の外付けの記憶装置から直に印刷対象の画像データを読み込み、またはそれらの記憶装置へスキャナー120で取り込んだ画像データを書き出す。外部I/F52はまた外部ネットワーク(図5は示していない。)に有線または無線で接続され、そのネットワーク上の他の電子機器から印刷対象の画像データを受信し、またはその電子機器へスキャナー120で取り込んだ画像データを送信する。
−主制御部−
主制御部60は、MFP100に内蔵された1枚の印刷回路基板に実装された集積回路であり、CPU61、RAM62、およびROM63を含む。CPU61は1つのMPUで構成され、各種ファームウェアを実行することにより、他の要素50、110−130に対する制御主体としての多様な機能を実現する。たとえばCPU61は操作部50に操作画面等のGUI画面を表示させてユーザーの入力操作を受け付けさせる。この入力操作に応じてCPU61は、稼動モード、待機モード、スリープモード等の動作モードのいずれかを選択して、その動作モードに応じた処理を各要素110、120、130に指示する。RAM62は、DRAM、SRAM等の揮発性半導体メモリー装置であり、CPU61がファームウェアを実行する際の作業領域をCPU61に提供すると共に、操作部50が受け付けた印刷対象の画像データを保存する。RAM62は特に、操作部50からの操作情報が示す印刷等の動作条件、CPU61が選択した現時点での動作モード、およびCPU61がMFP100内のセンサーを通して検出した温度、湿度等の環境条件を、他の要素から参照可能に保持する。ROM63は書き込み不可の不揮発性記憶装置と書き換え可能な不揮発性記憶装置との組み合わせで構成されている。前者はファームウェアを格納する。後者は、EEPROM、フラッシュメモリー、SSD等の半導体メモリー装置、またはHDDを含み、CPU61に環境変数等の保存領域を提供する。
操作部50がユーザーから印刷ジョブを受け付けたとき、主制御部60はまず操作部50に印刷対象の画像データをRAM62へ転送させる。主制御部60は次に、そのジョブの示す印刷条件に従い、給送部10には給送すべきシートの種類とその給送のタイミングとを指定し、作像部20には形成すべきトナー像を表す画像データを提供する。主制御部60は特に、印刷条件の示す画質、消費電力、またはシートの紙種もしくは紙厚に応じてシートの搬送速度の目標値を選択してプリンター130の各要素10、…に指示する。たとえば印刷対象の紙種が厚紙である場合、シートの搬送速度は普通紙である場合の値よりも低く設定される。これにより、駆動モーター群M1、…の消費電力量が搬送対象のシートの秤量にかかわらず安定化する。主制御部60は更に定着部30の駆動部30Dにはジョブの処理における動作条件を通知する。動作条件にはたとえば、維持すべき加熱ローラー31の目標温度、印刷対象のシートの秤量、形成対象の画像濃度(白黒(BW)比)、シート先端に残すべき余白のサイズが含まれる。
[シート搬送装置の電子制御系統]
図5が示す定着部30の駆動部30Dは、図4が示す、加熱ローラー31、加圧ローラー32、周速度センサー33、34、伝達機構およびモーターFM1、FM2と共に、本発明の実施形態によるシート搬送装置200を構成する。
図6は、このシート搬送装置200の電子制御系統のブロック図である。図6を参照するに、駆動部30Dは、制御回路210、第1駆動回路221、第2駆動回路222、および回転速度実測部230を含む。制御回路210は、MPU/CPU、ASIC、またはFPGA等の論理回路であり、モーターFM1、FM2の各回転数に対する目標値を設定して各駆動回路221、222に指示する。制御回路210はまた、定着部30の環境条件と動作条件とを検出する検出部としても機能する。環境条件にはたとえば、定着部30内に設置された温度センサーと湿度センサーとが検出した加熱ローラー31の温度と定着部30内の雰囲気の湿度とが含まれる。動作条件には主制御部60から通知された動作条件、すなわち、加熱ローラー31の目標温度、印刷対象のシートの秤量等が含まれる。各駆動回路221、222はインバーターであり、FET等のスイッチング素子を利用してモーターFM1、FM2に電力を供給する。回転速度実測部230は、各モーターFM1、FM2に内蔵されたエンコーダーの出力信号FGPを監視し、これらの信号FGPから各モーターの実際の回転数Nmsを計算して制御回路210へフィードバックする。
図6を更に参照するに、シート搬送装置200の電子制御系統は、測定部241、推定部242、決定部243、および記憶部244を含む。前の3つ241−243は、MPU/CPU、ASIC、またはFPGA等の論理回路である。記憶部244は書き込み不可の不揮発性記憶装置、または、EEPROM、フラッシュメモリー、SSD、HDD等の書き換え可能な不揮発性記憶装置である。これらの要素241−244は単一のチップに集積化され、駆動部30Dと同じ印刷回路基板に実装されている。
測定部241は周速度センサー33、34の出力を監視し、これらの出力が表す加熱ローラー31と加圧ローラー32との各周速度の測定値を推定部242へ通知する。推定部242は、駆動部30Dが両ローラー31、32を調整モードで回転させる間に測定部241が測定した両ローラー31、32の周速度から、それらとニップNPでの接線速度との間の関数関係を推定する。決定部243はこの関数関係を利用して、駆動部30Dが両ローラー31、32を実働モードで回転させる間、各回転数の目標値を決定して駆動部30Dに指示する。決定部243は特に、加熱ローラー31のニップNPでの接線速度と加圧ローラー32のニップNPでの接線速度との比(以下、「ニップ速度比」と呼ぶ。)に対して目標値を選択し、この目標値を各ローラー31、32の回転数の目標値の決定に利用する。記憶部244は速度比表を記憶している。「速度比表」とは、両ローラー31、32の間でのニップ速度比の目標値と定着部30の環境条件または動作条件との間の対応関係を規定する表をいう。この速度比表から決定部243は、制御回路210が検出した定着部30の環境条件または動作条件に対応するニップ速度比の目標値を検索する。
[準備期間と動作期間]
「動作期間」とは、たとえばプリンター130による印字処理の実行に伴い、加熱ローラー31と加圧ローラー32とがシートを搬送する期間をいう。「準備期間」とは、推定部242が動作期間の合間に駆動部30Dに両ローラー31、32を調整モードで回転させるべき期間をいう。
推定部242は準備期間を、MFP100の電源投入または稼動モードへの移行に応じて加熱ローラー31の温度が稼動モードでの目標値に達した時点から印刷ジョブの処理、すなわち印字処理が実際に開始される時点までの期間に設定する。具体的には、推定部242は加熱ローラー31の温度を監視し、その温度が稼動モードでの目標値に到達した時刻に準備期間の始点を設定する。
決定部243は、主制御部60から印字処理の開始指示を受けた時刻を動作期間の始点に設定する。動作期間中、決定部243は駆動部30Dに、両ローラー31、32の回転数の目標値を繰り返し指示して両ローラー31、32を実働モードで回転させる。
図7は、加熱ローラー31の温度の経時的変化を示すグラフである。図7を参照するにMFP100の電源投入時t0、定着部30の駆動部30Dがヒーター35を起動して加熱ローラー31の温度を初期値T0から上昇させ始める。この温度はその後、第1時刻t1で稼動モードでの目標値Ttgに到達する。MFP100の電源投入時t0から第1時刻t1までの期間WUTのように、加熱ローラー31が昇温し続ける期間を「ウォームアップ期間」と呼ぶ。第1時刻t1以後、駆動部30Dは、主制御部60から待機モードへの移行を指示されない限り、ヒーター35の発熱量を加減して加熱ローラー31の温度を稼動モードでの目標値Ttgに維持し続ける。第2時刻t2では主制御部60が印字処理の開始を各要素10、…に指示する。この指示に応じて駆動部30Dは両ローラー31、32によるシートの搬送処理とトナー像の定着処理とを開始する。この場合、第1時刻t1から第2時刻t2までの期間PRTを推定部242は準備期間に設定し、第2時刻t2以降の期間DRTを決定部243は動作期間に設定する。
図7を更に参照するに、第3時刻t3では印刷ジョブの終了に伴い、主制御部60が稼動モードから待機モードへの移行を各要素10、…に指示する。この指示に応じて定着部30の駆動部30Dはヒーター35の発熱量を抑えて加熱ローラー31の温度を待機モードでの目標値Twtへ降下させてその値に維持する。こうして待機モードの期間WTTでは加熱ローラー31の温度が待機モードでの目標値Twtに維持される。その後、第4時刻t4では、操作部50による印刷ジョブの受け付けに応じて主制御部60が待機モードから稼動モードへの移行を各要素10、…に指示する。この指示に応じて駆動部30Dがヒーター35の発熱量を増加して加熱ローラー31の温度を稼動モードでの目標値Ttgまで上昇させる。第4時刻t4以降のウォームアップ期間WUTでは第5時刻t5に加熱ローラー31の温度が稼動モードでの目標値Ttgに再び到達する。第5時刻t5以降、駆動部30Dは主制御部60から待機モードへの移行を指示されない限り、ヒーター35の発熱量を加減して加熱ローラー31の温度を稼動モードでの目標値Ttgに維持し続ける。第6時刻t6では主制御部60が印字処理の開始を各要素10、…に指示する。この指示に応じて駆動部30Dは両ローラー31、32によるシートの搬送処理とトナー像の定着処理とを開始する。この場合、第5時刻t5から第6時刻t6までの期間PRTを推定部242は準備期間に設定し、第6時刻t6以降の期間DRTを決定部243は動作期間に設定する。
[加熱/加圧ローラーの回転制御]
−制御の概略−
シート搬送装置200は加熱ローラー31と加圧ローラー32との回転数を次のように制御する。まず、制御回路210が定着部30の環境条件または動作条件を検出し、決定部243がこの条件に対応するニップ速度比の目標値を、記憶部244が記憶している速度比表から検索する。次に、推定部242が準備期間PRTにおいて駆動部30Dに両ローラー31、32を調整モードで回転させ、測定部241が各ローラー31、32の周速度を測定する。このときの測定値から推定部242は、両ローラー31、32の周速度とニップNPでの接線速度との間の関数関係を推定する。続いて動作期間DRTではこの関数関係とニップ速度比の目標値とを利用して決定部243が、両ローラー31、32の少なくとも一方の周速度の測定値から各ローラー31、32の回転数の目標値を決定して駆動部30Dに指示する。この指示に応じて駆動部30Dは両ローラー31、32を実働モードで回転させ、各ローラー31、32の回転数が目標値と一致するようにモーターFM1、FM2を制御する。
動作期間DRT中、決定部243は定期的に各ローラー31、32の回転数の目標値の決定を繰り返す。これにより、各回転数が逐次補正されてニップ速度比が目標値に維持される。その結果、両ローラー31、32からのシートの高い分離性がトナー像の高画質と両立する。
−ニップ速度比がシートの分離性とトナー像の画質とに関係する理由−
図8の(a)は、加熱ローラー31と加圧ローラー32とのニップNPでの接線速度VN1、VN2を示す模式図であり、(b)は、そのニップNPに挟まれたシートSH2の表裏が受ける摩擦力FF1、FF2と、それらの間の差に起因してシートSH2に作用する剪断力SHFとを示す模式図である。図8を参照するに、両ローラー31、32間ではニップNPでの接線速度VN1、VN2に差があるので、この差に起因して各ローラー31、32とシートSH2との間の摩擦力FF1、FF2にも差が生じる。この差によりシートSH2には表面に対して垂直な方向に剪断力SHFが生じる。各ローラー31、32の外周面に対する剪断力SHFの方向に応じてシートSH2と各外周面との間の離脱角θ1、θ2の一方が拡がり、他方が狭まる。したがって、ニップNPでの接線速度VN1、VN2の差が適正な範囲に保たれていれば、いずれの離脱角θ1、θ2もある程度の大きさ以上に維持される。また、剪断力SHFが大きいほどニップNPに挟まれたシートSH2の部分に付着したトナーからワックスが多量に滲み出す。これらの結果、大まかには、ニップNPでの接線速度VN1、VN2の差が大きいほどシートSH2の分離性が高い。
しかし、その反面、ニップNPでの接線速度VN1、VN2の差が過大であればトナー像の画質が損なわれる危険性がある。これは、この差に起因するシートSH2の表裏間での摩擦力FF1、FF2の差がトナーをシートSH2の表面に沿って変位させることによる。このようなトナーの量が過大であるとトナー像の歪みが視認可能な程度にまで増大しかねない。また、ニップNPにシートが挟まれていないときには両ローラー31、32の外周面同士が直に擦れ合うので、接線速度VN1、VN2間の過大な差は両外周面間の摩擦力を過剰に増大させて各外周面に摩耗に起因する凹凸を増大させる。これらの凹凸もトナー像の歪みの原因となり得る。
このように、両ローラー31、32間におけるニップNPでの接線速度VN1、VN2の差は、ある程度大きければ両ローラー31、32にシートの高い分離性を維持させるが過大になるとトナー像の高画質を損なわせかねない。したがって、シートの高分離性とトナー像の高画質とを両立させるには、ニップNPでの接線速度VN1、VN2の差を適正な範囲内に維持することが重要である。この差がその適正な範囲に維持される場合におけるニップ速度比の値が目標値として速度比表に設定される。
−ニップ速度比の目標値の選択−
加熱ローラー31と加圧ローラー32とにおけるシートの分離性は、印刷ジョブを処理する際の定着部30の環境条件とその処理における動作条件とに依存する。したがって、これらの環境条件と動作条件とに応じて、両ローラー31、32間のニップNPでの接線速度VN1、VN2の間に確保すべき差の適正な範囲は変化する。この適正な範囲を速度比表はたとえば次のように規定する。
図9の(a)は、定着部30の環境条件と動作条件とを表すパラメーターの値を、加熱ローラー31と加圧ローラー32とからのシートの分離しにくさの指標値(ポイント)に対応付ける表であり、(b)は、(a)が示すポイントの合計とニップ速度比の目標値との間の対応表である。以下、前者を「採点表」と呼び、後者を「集計表」という。これらの表の組み合わせで速度比表は構成される。
図9の(a)を参照するに、ポイントは“1”から“6”までの整数値で表され、その値が大きいほどシートがローラーから分離しにくい。ポイントは各パラメーターと、たとえば次のように対応付けられる。(A)定着部30内の雰囲気の湿度が高いほどシートが多くの水分を含んで柔らかくなるのでローラーからは分離しにくい。したがって、湿度が高いほどポイントは大きい値に規定される。(B)シートは秤量が小さいほど柔らかいのでローラーからは分離しにくい。したがって、シートの秤量が小さいほどポイントは大きい値に規定される。(C)画像濃度(BW比)が高いほどシートに付着するトナーが多量であるのでローラーの表面に対するシートの表面の粘性が高く、シートはローラーから分離しにくい。したがって、画像濃度が高いほどポイントは大きい値に規定される。(D)シート先端の余白、すなわちトナーが付着していない領域が狭いほどローラーの表面に対するシート先端の粘性が高いので、シートはローラーから分離しにくい。したがって、シート先端の余白が狭いほどポイントは大きい値に規定される。(E)図7の示す準備期間PRTが短いほど、ウォームアップ期間WUTでの加熱により加熱ローラー31の温度が稼動モードでの目標値Ttgに到達した時点t1、t5からの経過時間が短い。この時間が短いほど、加熱ローラー31の外周面の温度分布にむらが残されている可能性が高いので、その外周面がシートにトナーを熱定着させる効果が低い。この効果が低いほどシートの表面には未定着のトナーが多量に残るのでローラーの表面に対するシートの表面の粘性が高く、シートはローラーから分離しにくい。したがって、準備期間が短いほどポイントは大きい値に規定される。
図9の(b)を参照するに、ポイントの合計値が大きいほどニップ速度比の目標値は大きい。これは次の理由による。図9の(a)が示す採点表の規定から理解されるとおり、ポイントの合計値が高いほどローラーからシートを分離しにくくする条件が揃っている。したがって、ニップ速度比の目標値を高く設定することにより、両ローラ−31、32にトナー像の高画質の維持よりもシートの分離性の向上を優先させる。
なお、ポイントの合計値が“9”以下である等、十分に小さい場合、定着部30の環境条件と動作条件とはローラーからのシートの分離がかなり容易であることを示す。この場合、ニップ速度比の目標値は“0”に設定される。これは、駆動部30Dに加熱ローラー31と加圧ローラー31との一方を他方に従動させ続ければよいことを意味する。これにより両ローラー31、32は自律的にニップ速度比を実質的に“1”に等しい値に安定化させる。その結果、両ローラー31、32間の密着性が向上するので、トナー像の高画質が確実に維持される。
決定部243はニップ速度比の目標値を選択する際、制御回路210から定着部30の環境条件と動作条件とを取得し、これらの条件を表すパラメーターの各値に対応するポイントを記憶部244の保管する採点表から検索する。たとえば、環境条件が「湿度=78%」を規定し、動作条件が「シートの秤量=52g/m2」、「画像濃度(BW比)=86%」、「シート先端の余白長=2.7mm」、および「ウォームアップ終了時からの経過時間=45秒」を規定する場合、図9の(a)に丸で示すように、「湿度70〜80%」に応じてポイント“4”が検索され、「秤量50〜60g/m2」に応じてポイント“5”が検索され、「画像濃度≧80%」に応じてポイント“6”が検索され、「余白2〜3mm」に応じてポイント“5”が検索され、「経過時間40〜100秒」に応じてポイント“3”が検索される。こうして検索したポイントを決定部243は合計し、その合計値に対応するニップ速度比の目標値を記憶部244の保管する集計表から検索する。たとえば図9の(b)に丸で示すように、ポイントの合計値が4+5+6+5+3=23である場合には目標値“1.03”が検索される。
−周速度とニップでの接線速度との間の関数関係の推定−
推定部242は準備期間PRTに加熱ローラー31と加圧ローラー32とを回転させ、そのときの周速度の測定値から周速度とニップNPでの接線速度VN1、VN2との間の関数関係を推定する。この推定処理の詳細は、加熱ローラー31と加圧ローラー32とをソフトローラーとハードローラーとの組み合わせとみなして扱うことができる場合と、ソフトローラー同士の組み合わせとして扱うべき場合とで異なる。
<ソフトローラーとハードローラーとの組み合わせの場合>
図4の(b)が示す例では、加熱ローラー31と加圧ローラー32とがいずれも弾性体層321、322を含むので、厳密にはソフトローラーである。したがって、いずれの外周面もニップNPでは潰れるように変形するので、ニップNPでの接線速度が正確には周速度から外れる。しかし、この例では更に、加熱ローラー31の弾性体層312よりも加圧ローラー32の弾性体層322が厚い。それ故、ニップNPでの変形は加熱ローラー31よりも加圧ローラー32で大きく、その変形に伴うニップNPでの接線速度と周速度との間の誤差も加熱ローラー31よりも加圧ローラー32で大きい。
この例に限らず、一般に定着部では加熱ローラーと加圧ローラーとの一方がソフトローラーである。他方はハードローラーである場合もあれば、ソフトローラーである場合もある。ソフトローラーとハードローラーとが組み合わされる場合、ニップでの変形がソフトローラーに比べてハードローラーでは無視できるので、ハードローラーではニップでの接線速度が周速度に等しいとみなせる。ソフトローラー同士が組み合わされる場合でも、弾性体層の厚さの差が十分に大きい等により外周面の弾性が一方のローラーに対して他方のローラーでは無視され得る。すなわち、ニップでの変形に伴う接線速度と周速度との間の誤差には、弾性の高いローラーに対して低いローラーでは無視可能な場合がある。
このように加熱ローラーと加圧ローラーとがソフトローラーとハードローラーとの組み合わせである場合、またはその組み合わせと同等とみなせる場合を想定する。具体的には図4の(b)の例において加圧ローラー32をそのままソフトローラーとして扱う一方、加熱ローラー31をハードローラーとみなして扱う。
図10の(a)は、加熱ローラー31がハードローラーであり、加圧ローラー32がソフトローラーである場合に両ローラー31、32の回転数N1、N2、周速度VC1、VC2、およびニップNPでの接線速度VN1、VN2を示す模式図であり、(b)は、(a)の示すニップNPの拡大図である。図10を参照するに、ニップNPでは加熱ローラー31の外周面は変形しない。したがって、ニップNPでの接線速度VN1は周速度VC1と等しい:VN1=VC1。これに対し、加圧ローラー32の外周面は加熱ローラー31の外周面に押し潰されて凹む。この凹みに伴って加圧ローラー32の外周面の輪郭は、図10の(b)が破線で示す本来の円弧形状LCから、一点鎖線で示す実際の曲線形状LNへ変形する。いずれの形状LC、LNもこれらを見込む中心角φは一定である。したがって加圧ローラー32の回転数N2が一定であれば、加圧ローラー32の外周面上の1点がいずれの形状LC、LNに沿って移動する時間も等しい。一方、変形前の円弧形状LCよりも変形後の曲線形状LNは一般に長い:LC<LN。これは、その曲線形状LNの接線方向における速度、すなわちニップNPでの接線速度VN2が円弧形状LCの接線方向における速度、すなわち周速度VC2よりも大きいことを意味する:VN2>VC2。
このように加圧ローラー32はソフトローラーであるので、ニップNPでの接線速度VN2と周速度VC2との間に誤差が生じる。この誤差を表す関数関係として推定部242はたとえばニップでの接線速度VNが周速度VCに比例するとみなす:VN=α×VC。この比例係数α、すなわち周速度VCに対するニップでの接線速度VNの比α=VN/VCを、以下、「内部速度比」と呼ぶ。
図10についての説明のとおり、ハードローラーはニップでは変形しないのでニップでの接線速度VNは周速度VCに等しい:VN=VC。したがって、ハードローラーの内部速度比αは実質的に“1”に等しい:α≒1。一方、ソフトローラーはニップで凹むのでニップでの接線速度VNが周速度VCよりも大きい:VN>VC。したがって、ソフトローラーの内部速度比αは“1”よりも高い:α>1。図10の例では、加熱ローラー31の内部速度比α1は実質的に“1”に等しく、加圧ローラー32の内部速度比α2は“1”よりも高い:α1≒1、α2>1。
ローラーの周速度VCはローラーの半径Rに依存し、ニップでの接線速度はニップでの外周面の凹み具合に依存するので、内部速度比αはローラーの半径Rと弾性率との関数である。半径Rと弾性率とはたとえば、摩耗等の劣化に起因するローラーの表面形状の経年変化、環境温度の変化に伴う芯金の伸縮、または環境湿度の変化に伴う弾性体層の含む水分量の増減に応じて変動する。したがって、推定部242は内部速度比αを以下に述べるように、準備期間PRTごとに周速度VCの新たな測定値から推定し直す。
推定部242はまず、準備期間PRTにおいて駆動部30Dに加熱ローラー31と加圧ローラー32とを調整モードで回転させる。具体的には、たとえば加熱ローラー31を駆動ローラーとし、加圧ローラー32を従動ローラーとする場合、駆動部30Dはまず、第1伝達機構36にはクラッチでギアを加熱ローラー31の芯金311に接続させ、第2伝達機構37にはクラッチでギアを加圧ローラー32の芯金321から分離させる。この状態で駆動部30Dは第1駆動回路221に第1モーターFM1へ電力を供給させる。これにより、加熱ローラー31は第1モーターFM1からのトルクを受けて回転する。一方、加圧ローラー32はニップNPを通して加熱ローラー31から受ける摩擦力で回転する。
駆動部30Dは両ローラー31、32をたとえば数回転させる。この間に測定部241は各ローラー31、32の周速度を周速度センサー33、34で測定する。この測定値を推定部242は測定部241から取得し、それらの比を加圧ローラー32の内部速度比α2の推定値に設定する。この推定値はたとえば記憶部244に保存される。
図11の(a)は、準備期間PRTでの加熱ローラー31と加圧ローラー32との周速度VC1、VC2とニップNPでの接線速度VN1、VN2とを示す模式図である。図11の(a)では、駆動ローラーである加熱ローラー31が斜線で示され、従動ローラーである加圧ローラー32が白抜きで示されている。加熱ローラー31が第1モーターFM1から受けるトルクにより回転数NDで回転する場合、加圧ローラー32はニップNPで加熱ローラー31から受ける摩擦力により回転数NFで回転する。
ここで、駆動ローラーのニップでの接線速度に対する従動ローラーのニップでの接線速度の比γを「滑り率」と呼ぶ。従動ローラーはニップで駆動ローラーから受ける摩擦力により回転するので、従動ローラーのニップでの接線速度は駆動ローラーのそれを超えることはない。すなわち、滑り率γは一般に“1”以下である:γ≦1。
図11の(a)の例では、加圧ローラー32はニップNPでの変形により加熱ローラー31に十分に密着している。したがって、両ローラー31、32間では滑り率γが“1”に等しいとみなしてよい:γ≒1。すなわち、両ローラー31、32間ではニップNPでの接線速度VN1、VN2が実質的に等しい:VN1≒VN2。加熱ローラー31はハードローラーであるので内部速度比α1が“1”に等しい。すなわち、ニップNPでの接線速度VN1は周速度VC1に等しい:VN1=α1×VC1=VC1。一方、加圧ローラー32はソフトローラーであるので、ニップNPでの接線速度VN2は内部速度比α2と周速度VC2との積に等しい:VN2=α2×VC2。したがって、加圧ローラー32の内部速度比α2は次式(1)のとおり、両ローラー31、32の周速度VC1、VC2の比で表される:
α2=VN2/VC2=VN1/VC2=VC1/VC2。 (1)
推定部242は式(1)の右辺に、測定部241から取得した準備期間PRTにおける各ローラー31、32の周速度の測定値を代入して加圧ローラー32の内部速度比α2の推定値を算定する。
たとえば、加熱ローラー31の周速度VC1の測定値が150mm/秒であり、加圧ローラー32の周速度VC2の測定値が147mm/秒である場合、加圧ローラー32の内部速度比α2の推定値は150/147=1.02である。
<ソフトローラー同士の組み合わせの場合>
図4の(b)が示す加熱ローラー31と加圧ローラー32とは実際にはいずれもソフトローラーであるので、いずれの外周面もニップNPでは潰れるように変形する。両ローラー31、32間で外周面の弾性が互いに無視できない場合、ニップNPでの変形に伴う接線速度と周速度との間の誤差も互いに無視できない。したがって、両ローラー31、32はそのままソフトローラー同士の組み合わせとして扱われる。
推定部242はまず、準備期間PRTにおいて駆動部30Dに、両ローラー31、32を交互に駆動ローラーと従動ローラーとして回転させる。具体的にはたとえば、駆動部30Dはまず、第1伝達機構36にはクラッチでギアを加熱ローラー31の芯金311に接続させ、第2伝達機構37にはクラッチでギアを加圧ローラー32の芯金321から分離させ、第1駆動回路221に第1モーターFM1へ電力を供給させる。これにより、加熱ローラー31は第1モーターFM1からのトルクを受けて回転し、加圧ローラー32は加熱ローラー31との摩擦力で回転する。両ローラー31、32を数回転させた後、駆動部30Dは、第1伝達機構36にはクラッチでギアを加熱ローラー31の芯金311から分離させ、第2伝達機構37にはクラッチでギアを加圧ローラー32の芯金321に接続させ、第2駆動回路222に第2モーターFM2へ電力を供給させる。これにより、加圧ローラー32は第2モーターFM2からのトルクを受けて回転し、加熱ローラー31は加圧ローラー32との摩擦力で回転する。
駆動部30Dは各ローラー31、32を駆動ローラーとしてたとえば数回ずつ回転させる。この間に測定部241は各ローラー31、32の周速度を周速度センサー33、34で測定する。これらの測定値を推定部242は測定部241から取得する。
推定部242は次に、準備期間PRTにおける各ローラー31、32の周速度の測定値から駆動ローラーの周速度と従動ローラーの周速度との比を、各ローラー31、32が駆動ローラーである場合について求める。推定部242は更に、これらの比の相乗平均を両ローラー31、32間での内部速度比の比率の推定値に設定する。この推定値はたとえば記憶部244に保存される。
図11の(b)は、準備期間PRTにおいて加熱ローラー31を駆動ローラーとし、加圧ローラー32を従動ローラーとしたときでの周速度VC1、VC2とニップNPでの接線速度VN1、VN2とを示す模式図である。図11の(b)では、駆動ローラーである加熱ローラー31が斜線で示され、従動ローラーである加圧ローラー32が白抜きで示されている。加熱ローラー31が第1モーターFM1から受けるトルクにより回転数NDで回転する場合、加圧ローラー32は加熱ローラー31との摩擦力により回転数NFで回転する。このとき、駆動ローラー=加熱ローラー31に対する従動ローラー=加圧ローラー32の滑り率γと加熱ローラー31のニップNPでの接線速度VN1との積が加圧ローラー32のニップNPでの接線速度VN2に等しい:γ×VN1=VN2。また、各ローラー31、32のニップNPでの接線速度VN1、VN2は内部速度比α1、α2と周速度VC1、VC2との積に等しい:VN1=α1×VC1、VN2=α2×VC2。したがって、滑り率γは両ローラー31、32の内部速度比α1、α2と周速度VC1、VC2とを用いて次式(2)で表される:
γ=VN2/VN1=(α2×VC2)/(α1×VC1)
=(α2/α1)×(VC2/VC1)。 (2)
図11の(c)は、準備期間PRTにおいて加熱ローラー31を従動ローラーとし、加圧ローラー32を駆動ローラーとしたときでの周速度VC1*、VC2*とニップNPでの接線速度VN1*、VN2*とを示す模式図である。図11の(c)では、駆動ローラーである加圧ローラー32が斜線で示され、従動ローラーである加熱ローラー31が白抜きで示されている。加圧ローラー32が第2モーターFM2から受けるトルクにより回転数ND*で回転する場合、加熱ローラー31は加圧ローラー32との摩擦力により回転数NF*で回転する。このとき、加熱ローラー31のニップNPでの接線速度VN1*は駆動ローラー=加圧ローラー32に対する従動ローラー=加熱ローラー31の滑り率γ*と加圧ローラー32のニップNPでの接線速度VN2*との積に等しい:VN1*=γ*×VN2*。また、各ローラー31、32のニップNPでの接線速度VN1*、VN2*は内部速度比α1*、α2*と周速度VC1*、VC2*との積に等しい:VN1*=α1*×VC1*、VN2*=α2*×VC2*。したがって、滑り率γ*は両ローラー31、32の内部速度比α1*、α2*と周速度VC1*、VC2*とを用いて次式(3)で表される:
γ*=VN1*/VN2*=(α1*×VC1*)/(α2*×VC2*
=(α1*/α2*)×(VC1*/VC2*)。 (3)
ここで、両ローラー31、32のいずれが駆動ローラーであるかにかかわらず、両ローラー31、32間の滑り率と各ローラー31、32の内部速度比とは一定であることを仮定する:γ=γ*、α1=α1*、α2=α2*。この仮定の下では式(2)、(3)から次のように式(4)が得られる:
(α2/α1)×(VC2/VC1)=(α1*/α2*)×(VC1*/VC2*
=(α1/α2)×(VC1*/VC2*
∴ α1/α2={(VC2/VC1)×(VC2*/VC1*)}1/2。 (4)
式(4)が表すとおり、両ローラー31、32間での内部速度比の比率α1/α2は加熱ローラー31が駆動ローラーである場合における周速度の比VC2/VC1と加圧ローラー32が駆動ローラーである場合における周速度の比VC2*/VC1*との相乗平均に等しい。推定部242は式(4)の右辺に、測定部241から取得した準備期間PRTにおける各ローラー31、32の周速度の測定値を代入して内部速度比の比率α1/α2の推定値を算定する。
たとえば、加熱ローラー31が駆動ローラーであるときに測定された加熱ローラー31の周速度VC1が150mm/秒であり、加圧ローラー32の周速度VC2が144mm/秒であり、加圧ローラー32が駆動ローラーであるときに測定された加熱ローラー31の周速度VC1*が150mm/秒であり、加圧ローラー32の周速度VC2*が150mm/秒である場合、内部速度比の比率α1/α2の推定値は{(144/150)×(150/150)}1/2=0.98=1/1.02である。
−ローラーの回転数の目標値の決定−
決定部243は、推定部242が推定した関数関係、具体的にはソフトローラーの内部速度比αまたは両ローラー31、32間での内部速度比の比率α1/α2を利用して、動作期間DRTにおける両ローラー31、32の周速度の測定値から、各ローラー31、32の回転数の目標値を決定する。この決定処理の詳細は、加熱ローラー31と加圧ローラー32とをソフトローラーとハードローラーとの組み合わせとみなして扱うことができる場合と、ソフトローラー同士の組み合わせとして扱うべき場合とで異なる。
<ソフトローラーとハードローラーとの組み合わせの場合>
たとえば加圧ローラー32がソフトローラーである場合、推定部242はその内部速度比α2を推定する。この推定値を決定部243は次のように利用して、動作期間DRTに両ローラー31、32の周速度の測定値から各ローラー31、32の回転数の目標値を決定する。
図12の(a)は、動作期間DRTでの加熱ローラー31と加圧ローラー32との周速度VC1、VC2とニップNPでの接線速度VN1、VN2とを示す模式図である。図12の(a)ではいずれのローラー31、32も駆動ローラーであるので、いずれも白抜きで示されている。加熱ローラー31は第1モーターFM1から受けるトルクにより回転数N1で回転し、加圧ローラー32は第2モーターFM2から受けるトルクにより回転数N2で回転する。このように両ローラー31、32は互いに独立に駆動されるので、両ローラー31、32間ではニップNPでの接線速度VN1、VN2が一般に異なる:VN1≠VN2。すなわち、ニップ速度比RVNが一般に“1”とは異なる:RVN=VN1/VN2≠1。加熱ローラー31はハードローラーであるので、ニップNPでの接線速度VN1は周速度VC1に等しい:VN1=VC1。一方、加圧ローラー32はソフトローラーであるので、ニップNPでの接線速度VN2は内部速度比α2と周速度VC2との積に等しい:VN2=α2×VC2。したがって、ニップ速度比RVNは加圧ローラー32の内部速度比α2と両ローラー31、32の周速度VC1、VC2とを用いて次式(5)で表される:
RVN=VN1/VN2=VC1/VN2=VC1/(α2×VC2)。 (5)
たとえば、加熱ローラー31の回転数N1がシートの搬送速度に対応する値に固定される場合、決定部243は式(5)に、ニップ速度比RVNの目標値RTG、推定部242から取得した内部速度比α2の推定値、および測定部241から取得した動作期間DRTにおける加熱ローラー31の周速度VC1の測定値を代入して、加圧ローラー32の周速度VC2の目標値を算定する。すなわち、この周速度VC2の目標値は次式(6)で表される:
VC2=VC1/(α2×RTG)。 (6)
たとえば、ニップ速度比の目標値RTGが“1.03”であり、内部速度比α2の推定値が“1.02であり、加熱ローラー31の周速度VC1の測定値が135mm/秒である場合、加圧ローラー32の周速度VC2の目標値は135/(1.02×1.03)=128mm/秒と算定される。これに対し、加圧ローラー32の周速度VC2の測定値が130mm/秒であれば、決定部243はこの周速度VC2の測定値に対する目標値の比128/130と加圧ローラー32の現在の回転数N2との積を、このローラー32の回転数の目標値に決定する。
<ソフトローラー同士の組み合わせの場合>
推定部242は両ローラー31、32間での内部速度比の比率α1/α2を推定する。この推定値を決定部243は次のように利用して、動作期間DRTに両ローラー31、32の周速度の測定値から各ローラー31、32の回転数の目標値を決定する。
図12の(b)は、動作期間DRTでの加熱ローラー31と加圧ローラー32との周速度VC1、VC2とニップNPでの接線速度VN1、VN2とを示す模式図である。図12の(b)ではいずれのローラー31、32も駆動ローラーであるので、いずれも白抜きで示されている。加熱ローラー31は第1モーターFM1から受けるトルクにより回転数N1で回転し、加圧ローラー32は第2モーターFM2から受けるトルクにより回転数N2で回転する。各ローラー31、32のニップNPでの接線速度VN1、VN2は内部速度比α1、α2と周速度VC1、VC2との積に等しい:VN1=α1×VC1、VN2=α2×VC2。したがって、ニップ速度比RVN=VN1/VN2は次式(7)が表すとおり、両ローラー31、32間での内部速度比の比率α1/α2と周速度の比率VC1/VC2との積に等しい:
RVN=VN1/VN2=(α1×VC1)/(α2×VC2)
=(α1/α2)×(VC1/VC2)。 (7)
たとえば、加熱ローラー31の回転数N1がシートの搬送速度に対応する値に固定される場合、決定部243は式(7)に、ニップ速度比RVNの目標値RTG、推定部242から取得した内部速度比の比率α1/α2の推定値、および測定部241から取得した動作期間DRTにおける加熱ローラー31の周速度VC1の測定値を代入して、加圧ローラー32の周速度VC2の目標値を算定する。すなわち、この周速度VC2の目標値は次式(8)で表される:
VC2=(α1/α2)×(VC1/RTG)。 (8)
たとえば、ニップ速度比の目標値RTGが“1.03”であり、内部速度比の比率α1/α2の推定値が1/1.02であり、加熱ローラー31の周速度VC1の測定値が135mm/秒である場合、加圧ローラー32の周速度VC2の目標値は(1/1.02)×(135/1.03)=128mm/秒と算定される。これに対し、加圧ローラー32の周速度VC2の測定値が130mm/秒であれば、決定部243はこの周速度VC2の測定値に対する目標値の比128/130と加圧ローラー32の現在の回転数N2との積をこのローラー32の回転数の目標値に決定する。
動作期間DRTの開始時、駆動部30Dは各ローラー31、32を実働モードで回転させ、各回転数をデフォルト値に制御する。すなわち、駆動部30Dは加熱ローラー31を第1モーターFM1からのトルクによりデフォルトの回転数Nd1で回転させ、加圧ローラー32を第2モーターFM2からのトルクによりデフォルトの回転数Nd2で回転させる。これらのデフォルト値Nd1、Nd2はたとえばシートの搬送速度に基づいて設定される。各ローラー31、32の回転数N1、N2がデフォルト値Nd1、Nd2に安定化し、または安定化したとみなされる程度に時間が経過した時点で測定部241が各ローラー31、32の周速度VC1、VC2の測定を開始する。これらの周速度VC1、VC2の測定値、推定部242が推定したソフトローラーの内部速度比α、または両ローラー31、32間での内部速度比の比率α1/α2、およびニップ速度比の目標値RTGを上記のとおりに利用して決定部243は各ローラー31、32の回転数N1、N2の目標値を決定して駆動部30Dに指示する。駆動部30Dはこれらの目標値に各ローラー31、32の回転数N1、N2が一致するように各モーターFM1、FM2を制御する。
たとえば、加熱ローラー31の回転数N1がデフォルト値Nd1=3200rpmに固定され、加圧ローラー32の回転数N2がデフォルト値Nd2=3000rpmである状態で、加圧ローラー32の周速度VC2の目標値=128mm/秒が算定され、その周速度VC2の測定値=130mm/秒が得られた場合、加圧ローラー32の回転数N2の目標値は次式(9)で表される:
N2=(VC2の目標値)/(VC2の測定値)×Nd2
=128/130×3000rpm=2954rpm。
駆動部30Dはこの目標値に加圧ローラー32の回転数N2が一致するように第2モーターFM2を制御する。
[回転制御の流れ]
図13は、加熱ローラー31と加圧ローラー32とがソフトローラーとハードローラーとの組み合わせである場合に推定部242がソフトローラーの内部速度比を推定する処理のフローチャートである。この処理は、図7が示すウォームアップ期間WUTに開始される。
ステップS101では、推定部242が加熱ローラー31の温度を監視し、その温度が稼動モードでの目標値Ttgに到達したか否かを確認する。到達していれば処理がステップS102へ進み、到達していなければ処理がステップS101を繰り返す。
ステップS102では、加熱ローラー31の温度が目標値Ttgに到達しているので、推定部242は駆動部30Dに、加熱ローラー31と加圧ローラー32との一方を駆動ローラーとして回転させ、他方を従動ローラーとして回転させる。その後、処理はステップS103へ進む。
ステップS103では、加熱ローラー31と加圧ローラー32との各周速度VC1、VC2を測定部241が周速度センサー33、34で測定する。その後、処理はステップS104へ進む。
ステップS104では、推定部242が測定部241から各ローラー31、32の周速度の測定値VC1、VC2を取得し、式(1)に従ってそれらの比をソフトローラーの内部速度比αの推定値に算定する。その後、処理は終了する。
図14は、加熱ローラー31と加圧ローラー32とがソフトローラー同士の組み合わせである場合に推定部242が両ローラー間での内部速度比の比率を推定する処理のフローチャートである。この処理は図13が示す処理とは、ステップS104に代えてステップS102*、S103*、S104*を含む点で異なる。
ステップS101では、推定部242が加熱ローラー31の温度を監視し、その温度が稼動モードでの目標値Ttgに到達したか否かを確認する。到達していれば処理がステップS102へ進み、到達していなければ処理がステップS101を繰り返す。
ステップS102では、加熱ローラー31の温度が目標値Ttgに到達しているので、推定部242は駆動部30Dに、加熱ローラー31と加圧ローラー32との一方を駆動ローラーとして回転させ、他方を従動ローラーとして回転させる。その後、処理はステップS103へ進む。
ステップS103では、加熱ローラー31と加圧ローラー32との各周速度VC1、VC2を測定部241が周速度センサー33、34で測定する。その後、処理はステップS102*へ進む。
ステップS102*では、推定部242は駆動部30Dに、ステップS102で従動ローラーであった方を駆動ローラーとして回転させ、ステップS102で駆動ローラーであった方を従動ローラーとして回転させる。その後、処理はステップS103*へ進む。
ステップS103*では、加熱ローラー31と加圧ローラー32との各周速度VC1*、VC2*を測定部241が周速度センサー33、34で測定する。その後、処理はステップS104*へ進む。
ステップS104*では、推定部242が測定部241から各ローラー31、32の周速度の測定値VC1、VC2、VC1*、VC2*を取得し、式(5)に従って両ローラー31、32間での周速度の比の相乗平均を内部速度比の比率α1/α2の推定値に算定する。その後、処理は終了する。
図15は、動作期間における加熱ローラー31と加圧ローラー32とに対する回転制御のフローチャートである。この処理は、制御回路210が定着部30の環境条件または動作条件を検出したときに開始される。
ステップS111では、決定部243が制御回路210から定着部30の環境条件と動作条件とを取得する。その後、処理はステップS112へ進む。
ステップS112では、ステップS111で取得した条件に基づいて決定部243が、加熱ローラー31と加圧ローラー32とからのシートの分離しにくさを表すポイントを求める。具体的には決定部243はその条件が規定するパラメーターの各値に対応するポイントを、記憶部244の保管する採点表(図9の(a)参照。)から検索する。その後、処理はステップS113へ進む。
ステップS113では、決定部243はステップS112で検索したポイントを合計して、その合計値に対応するニップ速度比RVN=VN1/VN2の目標値RTGを、記憶部244の保管する集計表(図9の(b)参照。)から検索する。その後、処理はステップS114へ進む。
ステップS114では、駆動部30Dが各ローラー31、32に回転を開始させる。その後、処理はステップS115へ進む。
ステップS115では、測定部241が各ローラー31、32の周速度を測定する。その後、処理はステップS116へ進む。
ステップS116では、決定部243が推定部242からはソフトローラーの内部速度比αまたは内部速度比の比率α1/α2の推定値を取得し、測定部241からはステップS115での測定値を取得する。これらの値と、ステップS113で検索したニップ速度比の目標値RTGとを式(5)または式(7)に代入して決定部243は、両ローラー31、32の周速度の目標値を算定する。その後、処理はステップS117へ進む。
ステップS117では、決定部243はステップS115での周速度の測定値とステップS116で算定した周速度の目標値とに基づいて各ローラー31、32の回転数の目標値を決定して駆動部30Dに指示する。この指示された目標値に各ローラー31、32の回転数を駆動部30Dが一致させる。その後、処理はステップS118へ進む。
ステップS118では、主制御部60から印刷ジョブの処理終了が指示されたか否かを制御回路210が確認する。指示されていれば処理が終了し、指示されていなければ処理がステップS115から繰り返される。
[実施形態の利点]
本発明の実施形態によるMFP100では上記のとおり、シート搬送装置200が準備期間PRTに加熱ローラー31と加圧ローラー32との一方を駆動ローラーとして回転させ、他方を従動ローラーとして回転させ、各ローラー31、32の周速度の測定値から周速度とニップNPでの接線速度との間の関数関係を推定する。この関数関係とニップ速度比の目標値とを利用してシート搬送装置200は、動作期間DRTに各ローラー31、32の周速度の測定値に基づいて各ローラー31、32の回転数の目標値を、ニップ速度比が目標値に一致するように決定する。
シート搬送装置200は特に、上記の関数関係を規定するソフトローラーの内部速度比αまたは両ローラー31、32間での内部速度比の比率α1/α2を、準備期間PRTごとに各ローラー31、32の周速度の新たな測定値から推定し直す。したがって、ローラー31、32のニップNPでの形状が定着部30の環境条件または動作条件の変動に応じて変化しても、それに伴う内部速度比の比率α1/α2の変化に従って各ローラー31、32の回転数が変化して、ニップ速度比を目標値に維持する。こうしてシート搬送装置200はそれらのローラー31、32からのシートの分離性を、トナー像の高品質を維持したまま向上させることができる。
[変形例]
(A)本発明の上記の実施形態による画像形成装置100はMFPである。本発明の実施形態による画像形成装置はその他に、レーザープリンター、インクジェット等の他方式のプリンター、コピー機、スキャナー、FAX等のいずれの単機能機であってもよい。画像形成装置はまた、定着処理を終えたシートをスイッチバックさせる正逆両回転が可能な反転ローラー、定着部30からシートを裏返して作像部20へ戻す反転経路等、両面印刷のための機構を含んでいてもよい。
(B)加熱ローラー31と加圧ローラー32とはいずれも、弾性体層321、322を含むソフトローラーであり、さらに加熱ローラー31の弾性体層312よりも加圧ローラー32の弾性体層322が厚い。その他に、加熱ローラーと加圧ローラーとのいずれかが弾性体層を含まないハードローラーであってもよく、加熱ローラーの弾性体層が加圧ローラーの弾性体層よりも厚くてもよい。
(C)周速度センサー33、34はいずれもレーザードップラー速度計である。周速度センサーはその他に、撮像素子で検出対象の画像を連写して連続する画像間の変化からその検出対象の速度を割り出すセンサー等、他の非接触方式の速度センサーであってもよい。周速度センサーはまた、各ローラーの外周面に接触してその外周面との摩擦力で回転するロータリーエンコーダー等、接触方式の速度センサーであってもよい。
(D)加熱ローラー31に内蔵されたヒーター35はハロゲンランプである。ヒーターはその他に誘導加熱装置であってもよい。定着部30はまた、加熱ローラー31とヒーター35との組み合わせに代えて、シートに接触する定着ベルトとそれを加熱する装置との組み合わせを備えていてもよい。この場合、定着ベルトを駆動し、または緊張させるプーリーと加圧ローラーとの組み合わせが行うニップ搬送に対して上記の実施形態による回転制御が適用されてもよい。
(E)伝達機構36、37はいずれも、モーターFM1、FM2のシャフトとローラー31、32の芯金311、321との接続にギアを利用する。伝達機構はその他にベルトとプーリーとの組み合わせを利用してもよい。
(F)定着部30の駆動部30Dは調整モードでは、いずれかの伝達機構36、37にクラッチでギアを芯金321、322から分離させることにより、加熱ローラー31と加圧ローラー32との一方を他方に従動させる。その他に、たとえば電源から分離された各モーターFM1、FM2を回転させる際のトルクが十分に小さければ、駆動部30Dはいずれの伝達機構36、37にもクラッチを切らせることなく、加熱ローラー31と加圧ローラー32との一方を他方に従動させてもよい。
(G)図11の(a)の示すソフトローラーとハードローラーとの組み合わせでは、両ローラー間での滑り率γが“1”に等しいとみなされる。その他に両ローラー間の滑り率γが、製造時の実験またはシミュレーション等によって得られた値に設定似されてもよい。この場合、加熱ローラー31に対する加圧ローラー32の滑り率γと加熱ローラー31のニップNPでの接線速度VN1との積が加圧ローラー32のニップNPでの接線速度VN2に等しい:γ×VN1=VN2。したがって、滑り率γの設定値と式(1)の右辺との積を加圧ローラー32の内部速度比α2として推定すればよい。
図11の(b)、(c)の示すソフトローラー同士の組み合わせでは、加熱ローラー31が駆動ローラーである場合の滑り率γと、加圧ローラー32が駆動ローラーである場合の滑り率γ*とが互いに等しいという近似の下で式(4)が導出される。その他に各滑り率γ、γ*が、製造時の実験またはシミュレーション等によって得られた値に設定されてもよい。この場合、各設定値と両ローラー31、32の周速度の測定値VC1、VC2、VC1*、VC2*とを式(2)、(3)に代入して両ローラー31、32間での内部速度比の比率α1/α2、α1*/α2*を求め、それらの相乗平均または相加平均を内部速度比の比率の推定値として算定してもよい。
(H)上記の実施形態による回転制御は定着部30の加熱ローラー31と加圧ローラー32とを対象とする。この回転制御はその他に、給送部10の搬送ローラー対12F、12R、排紙ローラー43等、ニップ搬送を行うローラー対全般を対象としてもよい。
本発明は、ニップ搬送に利用される回転体の制御に関し、上記のとおり、一方の回転体を他方に従動させたときの各回転体の周速度から周速度とニップでの接線速度との間の関数関係を推定し、この関数関係を利用して両回転体を互いに独立に回転させたときの各回転体の周速度の測定値から各回転体の回転数の目標値を決定する。このように、本発明は明らかに産業上利用可能である。
100 画像形成装置
10 給送部
20 作像部
30 定着部
200 シート搬送装置
30D 定着部の駆動部
210 制御回路
221 第1駆動回路
222 第2駆動回路
230 回転速度実測部
241 測定部
242 推定部
243 決定部
244 記憶部
31 加熱ローラー
32 加圧ローラー
33 第1周速度センサー
34 第2周速度センサー
35 第1伝達機構
36 第2伝達機構
FM1 第1モーター
FM2 第2モーター
FGP 各モーターに内蔵のエンコーダーの出力信号
Nms 各モーターの実際の回転数
VC1 加熱ローラーの周速度
VC2 加圧ローラーの周速度

Claims (8)

  1. シートに対してニップ搬送を行うシート搬送装置であり、
    回転軸が互いに平行であり、かつ外周面が互いに接触してニップを形成し、少なくとも一方が弾性体層を含む第1ローラーと第2ローラーと、
    前記第1ローラーと前記第2ローラーとの一方を駆動ローラーとして回転させ、他方を従動ローラーとして回転させる調整モードと、両方を互いに独立に回転させる実働モードとが切換可能であり、前記調整モードと前記実働モードとのいずれかで前記第1ローラーと前記第2ローラーとを目標の回転数で回転させる駆動部と、
    前記第1ローラーと前記第2ローラーとの各周速度を測定する測定部と、
    前記駆動部が前記第1ローラーと前記第2ローラーとを調整モードで回転させる間に前記測定部が測定した周速度に基づき、前記第1ローラーと前記第2ローラーとの周速度と前記ニップでの接線速度との間の関数関係を推定する推定部と、
    前記推定部が推定した関数関係を利用して、前記駆動部が前記第1ローラーと前記第2ローラーとを実働モードで回転させる間、前記第1ローラーと前記第2ローラーとの各回転数の目標値を決定して前記駆動部に指示する決定部と、
    を備えたシート搬送装置。
  2. 前記推定部は、前記第1ローラーと前記第2ローラーとがシートを搬送する動作期間の合間に、前記駆動部に前記第1ローラーと前記第2ローラーとを調整モードで回転させるべき準備期間を設定し、
    前記決定部は、前記動作期間中、前記駆動部に前記第1ローラーと前記第2ローラーとを実働モードで回転させる
    ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
  3. 前記第1ローラーは弾性体層を含み、前記第2ローラーは前記第1ローラーに対して外周面の弾性が無視可能であり、
    前記推定部は、前記準備期間に前記測定部が測定した周速度から前記第1ローラーの周速度と前記第2ローラーの周速度との比を求め、当該比を前記第1ローラーの周速度と前記ニップでの接線速度との間の比例係数として推定し、
    前記決定部は当該比例係数を回転数の目標値の決定に利用する
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシート搬送装置。
  4. 前記第1ローラーと前記第2ローラーとはいずれも弾性体層を含み、
    前記推定部は前記準備期間において前記駆動部に前記第1ローラーと前記第2ローラーとを交互に駆動ローラーと従動ローラーとして回転させ、前記準備期間に前記測定部が測定した周速度から、駆動ローラーの周速度と従動ローラーの周速度との比を前記第1ローラーと前記第2ローラーとがそれぞれ駆動ローラーである場合について求め、前記第1ローラーが駆動ローラーである場合での比と前記第2ローラーが駆動ローラーである場合での比との相乗平均を、前記第1ローラーの周速度と前記ニップでの接線速度との間の第1比例係数と、前記第2ローラーの周速度と前記ニップでの接線速度との間の第2比例係数との比として推定し、
    前記決定部は前記第1比例係数と前記第2比例係数との比を回転数の目標値の決定に利用する
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシート搬送装置。
  5. 前記シート搬送装置が搭載されるシステムの環境条件または動作条件を検出する検出部と、
    前記第1ローラーの前記ニップでの接線速度と前記第2ローラーの前記ニップでの接線速度との比の目標値を前記システムの環境条件または動作条件に対応付けた表を記憶した記憶部と、
    を更に備え、
    前記決定部は、前記検出部が検出した前記システムの環境条件または動作条件に対応する目標値を前記記憶部から検索し、当該目標値と前記推定部が推定した関数関係とを利用して、前記動作期間において前記測定部が測定した前記第1ローラーと前記第2ローラーとの少なくとも一方の前記ニップでの接線速度から前記第1ローラーと前記第2ローラーとの回転数の目標値を決定する
    ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載のシート搬送装置。
  6. 前記測定部は、前記動作期間中、前記第1ローラーと前記第2ローラーとの各周速度の測定を定期的に繰り返し、
    前記決定部は、前記動作期間において前記測定部が周速度を測定する度に、当該周速度と前記推定部が推定した関数関係とを利用して回転数の目標値を更新する
    ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載のシート搬送装置。
  7. シートに画像を形成する作像部と、
    前記作像部が画像を形成すべき、または形成したシートを搬送する請求項1から請求項6までのいずれかに記載のシート搬送装置と、
    を備えた画像形成装置。
  8. 前記作像部はシートに画像をトナーで形成し、
    前記第1ローラーと前記第2ローラーとは、前記作像部から前記ニップに通紙されるシートに対して熱と圧力とを加えて、前記作像部が当該シートに形成したトナー像を熱定着させる
    ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
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