以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る撮像装置について説明する。図1は、本実施形態に係る撮像装置の概略構成を示す説明図である。本実施形態に係る撮像装置100は、デジタルカメラであり、より具体的には例えばデジタルビデオカメラである。
図1に示すように、本実施形態に係る撮像装置100は、筐体101と、光学素子(レンズ)群300と、フォーカスレンズユニット400と、撮像ユニット200と、冷却ファン500と、シート状磁性体600とを備えている。
筐体101において、被写体に向けられる前方の壁部には、例えば自動又は手動で開閉可能なレンズカバー等が設けられた窓部102が設けられている。筐体101内には、前方側から後方側に向かって順に、光学素子群300と、フォーカスレンズユニット400と、撮像ユニット200とが配置されている。また、筐体101内において、撮像ユニット200に対しては、後述するようにシート状磁性体600が配置されている。さらに、筐体101内において、撮像ユニット200の後方に冷却ファン500が配置されている。
撮像ユニット200は、撮像素子201と、プリント回路基板202とを有している。撮像素子201は、例えばCMOSイメージセンサである。なお、撮像素子201は、CMOSイメージセンサに限定されるものではなく、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサその他のイメージセンサであってもよい。一方、プリント回路基板202は、駆動回路、電源回路、AD変換回路、通信インターフェイス回路等を搭載している。
撮像素子201は、ガラスリッドを備えたIC(Integrated Circuit)パッケージに格納されている。撮像素子201が格納されたICパッケージがプリント回路基板202上に実装されて撮像ユニット200が形成されている。撮像ユニット200は、プリント回路基板202の基板面が筐体101の前後方向に垂直になるように配置されている。プリント回路基板202上の撮像素子201は、フォーカスレンズ401側に位置し、その受光面をフォーカスレンズ401側に向けている。
光学素子群300は、例えば、複数のレンズ301、302、303を有しており、ズームレンズを含んでいる。光学素子群300は、フォーカスレンズユニット400とともに、被写体の光学像を撮像素子201の受光面に結像する結像光学系を構成している。
光学素子群300の後段に配置されたフォーカスレンズユニット400は、フォーカスレンズ401と、レンズホルダ402と、ボイスコイルモータ406とを有している。レンズホルダ402には、撮像素子201の手前に位置するようにフォーカスレンズ401が取り付けられて固定されている。ボイスコイルモータ406は、フォーカスレンズ401が取り付けられたレンズホルダ402を駆動するものである。具体的には、ボイスコイルモータ406によりレンズホルダ402を駆動し、フォーカスレンズ401が光軸方向に平行移動されることで、被写体にフォーカスを合わせることができる。
ボイスコイルモータ406は、リニア駆動型のものであり、コイル403と、永久磁石404と、磁性体ヨーク405とを有している。なお、ボイスコイルモータ406におけるコイル403を第1のコイル403と適宜称する。磁性体ヨーク405は、筐体101の前後方向を長手方向とする中空矩形の枠状に形成されたロの字型のものである。磁性体ヨーク405は、コイル403の磁性体コアとして機能する。永久磁石404は、磁性体ヨーク405の中空部の内側に取り付けられており、中空部の空間に上下方向に一様な直流磁界(静磁界)を形成する。第1のコイル403は、その磁性体コアとなる磁性体ヨーク405の下側長手部分を前後方向に移動可能なように、磁性体ヨーク405の下側長手部分に巻回されている。なお、第1のコイル403は、磁性体ヨーク405の下側長手部分が挿通されたボビンに巻回されていてもよいし、ボビンレスで磁性体ヨーク405の下側長手部分に巻回されていてもよい。第1のコイル403にはレンズホルダ402が固定されており、第1のコイル403の前後方向の移動によりレンズホルダ402も前後方向に移動するようになっている。
ボイスコイルモータ406の駆動時において、第1のコイル403には、後述するように駆動電流が供給される。第1のコイル403に駆動電流が供給されると、その電流の向きが磁性体ヨーク405の中空部の空間内の一様な直流磁界と直交するため、フレミングの左手の法則によって、電流と磁界に直交する光軸平行方向に電流力が発生する。この電流力によって、第1のコイル403及び第1のコイル403に固定されたレンズホルダ402が、筐体101の前後方向である光軸方向に沿ってスライド動作する。こうしてレンズホルダ402がスライド動作することにより、フォーカスレンズ401が光軸方向に沿って平行移動して被写体にフォーカスが合わせられる。
撮像時においては、光学素子群300及びフォーカスレンズ401を介して撮像素子201の受光面に被写体からの光が入射する。撮像素子201の受光面に入射した光は、撮像素子201内部のマトリックス状に形成された多数の画素回路にてそれぞれフォトダイオードにより光電変換されて、画像信号として信号電荷が蓄積される。その後、マトリックス状の画素回路から1行ずつ画像信号の読み出し動作が順次行われる。読み出し動作では、まず、画素回路内に蓄積された信号電荷が、電圧信号として撮像素子201内部の列回路に転送される。そして、プリアンプによって所定のゲインで信号が増幅される。さらに水平方向に転送されて、メインアンプを介して撮像素子201外部に出力される。外部に出力された画像信号は、プリント回路基板202において、AD変換回路を介してデジタル信号に変換される。そして、通信インターフェイス回路によって、別のプリント回路基板(図示せず)に転送された後、画像信号処理回路によって画像が構成される。構成された画像は、メモリに格納されるとともに、液晶画面等に表示される。
撮像ユニット200の背面に配置された冷却ファン500は、筐体101内の発熱部を強制的に空冷するためのファンである。筐体101内の発熱部としては、撮像素子201、画像信号処理回路を例示することができる。冷却ファン500が回転することにより、筐体101に設けられた吸気口(図示せず)から外部の空気が取り込まれる。筐体101内に取り込まれた空気は、冷却ファン500により、撮像素子201等の発熱部が設けられた空間に送り込まれてその空間を通過し、その後、筐体101に設けられた排気口(図示せず)から外部に排出される。こうして、冷却ファン500は、筐体101内の撮像素子201、画像信号処理回路その他の回路等の発熱部で発生した熱を筐体101の外部に排出することができる。なお、冷却ファン500により筐体101内に形成される空気の流れは、前述した流れに限定されるものではなく、発熱部で発生した熱を筐体101の外部に排出することができるものであればよい。
図1では、冷却ファン500の一例として、ブラシレスDCモータを用いたファンを示している。冷却ファン500に用いられたブラシレスDCモータは、アウターロータ型であり、回転子である羽部501と、固定子である中心のコイル503と、コイル503のコアとなる磁性体コア505とを有している。なお、冷却ファン500におけるコイル503を第2のコイル503と適宜称する。
羽部501は、光軸に沿った軸を回転軸とする回転子である。羽部501には、固定子が挿入される円筒状の凹部が中央に設けられている。羽部501の凹部の内周壁面には、周回方向に沿ってS極、N極、…の順に交互に逆の磁極を示すように帯磁された環状の永久磁石504が取り付けられている。固定子である中心の第2のコイル503には、第2のコイル503のコアとなる磁性体コア505が、第2のコイル503の外周で複数のギャップ部を有するように形成されている。第2のコイル503は、光軸に沿った回転軸を軸方向とする円筒状に磁性体コア505に巻回されている。磁性体コア505のギャップ部は、第2のコイル503の周回方向に周期的に並んでいる。第2のコイル503に直流電流が流れると、そのギャップ部に発生する磁界の向きは、第2のコイル503の周回方向に1つおきに反転する向きとなる。このギャップ部に発生する磁界と、対向する環状の永久磁石504の直流磁界(静磁界)とが交互に引き寄せ合い、反発し合うことで、モータの回転力が発生する。こうして発生する回転力により羽部501が回転して空気の流れが形成される。
上述のように、撮像装置100の筐体101内には、ボイスコイルモータ406を構成する第1のコイル403と、冷却ファン500を構成する第2のコイル503とが設けられている。第1のコイル403には、ボイスコイルモータ406の駆動に際して駆動電流が供給されることになる。また、第2のコイル503には、冷却ファン500の駆動に際して駆動電流が供給されることになる。第1のコイル403及び第2のコイル503のいずれも、以下に述べるように駆動電流が供給されることにより漏洩磁界を発生する磁界発生源となる。
まず、第1のコイル403に供給される駆動電流は、実際には、例えば、パルス幅変調(PWM、Pulse Width Modulation)方式により変調された直流成分に交流成分が重畳された波形を有するパルス電流になっている。このパルス電流は、高速な制御が可能になっている。パルス電流でも、時間的な平均値をとると直流電流が流れていることになるため、その直流成分により、第1のコイル403をスライド動作させる電流力が形成される点は保証される。また、パルス電流の交流成分は、高速に変化させることができるため、第1のコイル403の位置の高速で安定な制御が可能になる。その一方で、電流の交流成分は、交流磁界をも形成してしまう。この交流磁界は、磁性体ヨーク405内を通過するだけでなく、漏洩磁界として周囲に磁界ノイズを多く発生させる。交流で周波数が高くなると、磁界を打ち消す向きに磁性体ヨーク405に渦電流が流れるようになる。すると、磁性体ヨーク405の実効的な透磁率が低下してしまう。そのため、磁界が磁性体ヨーク405だけには集中しにくくなり、周囲に漏洩磁界が多く発生される。
また、冷却ファン500における第2のコイル503に供給される駆動電流は、実際には、例えば、直流成分に交流成分が重畳された波形を有し、冷却ファン500の回転数や制御に応じたパルス電流が供給されている。パルス電流でも、時間的な平均値をとると直流電流が流れていることになるため、その直流成分により羽部501を回転させる回転力が形成される点は保証される。また、パルス電流の交流成分は、高速に変化させることができるため、冷却ファン500の高速で安定な制御が可能になる。その一方で、電流の交流成分は、交流磁界をも形成してしまう。この交流磁界は、磁性体コア505を通過するだけでなく、漏洩磁界として周囲に磁界ノイズを多く発生させる。交流で周波数が高くなると、磁界を打ち消す向きに磁性体コア505に渦電流が流れるようになる。すると、磁性体コア505の実効的な透磁率が低下してしまう。そのため、磁界が磁性体コア505だけに集中しにくくなり、周囲に漏洩磁界が多く発生される。また、磁性体コア505のギャップ部から漏洩した成分は永久磁石504の直流磁界(静磁界)とは作用しないため、さらにその外部に漏洩することになる。
また、冷却ファン500の駆動音は、デジタルビデオカメラにおいてはマイクによって拾われてしまうために、なるべく小さいことが望ましい。そのため、冷却ファン500として大型のファンを用い、大型のファンを低速回転させて駆動音を低減した構成がとられることが多い。その場合、大型のファンを駆動するDCモータも大型になり、漏洩磁界自体も大きくなる。
このように撮像素子201を挟んで配置された第1のコイル403及び第2のコイル503の2つのコイルからそれぞれ漏洩磁界が発生する。漏洩磁界は、撮像素子201に到達すると、撮像素子201により生成される画像に乱れが発生する場合がある。また、撮像素子201が搭載されたプリント回路基板202に到達すると、プリント回路基板202上の回路の動作に影響が生じる場合がある。このため、漏洩磁界が撮像素子201及びプリント回路基板202に到達する到達量を低減する必要がある。
そこで、本実施形態に係る撮像装置100においては、撮像素子201及びプリント回路基板202を有する撮像ユニット200に対して、シート状磁性体600が配置されている。以下、シート状磁性体600について、さらに図2を基に詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る撮像装置100におけるシート状磁性体600の詳細を示す説明図である。なお、本願明細書における「シート状」との用語は、「シート状」それ自体の意味のほか、「板状」、「フィルム状」の意味をも含むものである。また、「シート」との用語には、「シート」それ自体の意味のほか、「板」、「フィルム」の意味をも含むものである。
シート状磁性体600は、図2に示すように、シート状の部分として、第1の磁性体シート部601と、第2の磁性体シート部602と、磁性体接続部603とを有している。図2において、矢印に対して左側の図は撮像ユニット200に対してシート状磁性体600が配置される前の状態を示しており、矢印に対して右側の図は撮像ユニット200に対してシート状磁性体600が配置された状態を示している。なお、シート状磁性体600の材料及び比透磁率の詳細については後述する。
第1の磁性体シート部601は、ボイスコイルモータ406の第1のコイル403と撮像素子201の一方の側である受光面の側との間に配置されている。第1の磁性体シート部601は、そのシート面が、撮像素子201の受光面及びプリント回路基板202の基板面とほぼ平行になるように配置されている。
第1の磁性体シート部601の外周端部は、撮像素子201の画素領域よりも外側に位置するように設けられている。また、第1の磁性体シート部601には、フォーカスレンズ401から撮像素子201へ光が透過するように、撮像素子201の画素領域を露出する開口部6011が設けられている。
第1の磁性体シート部601の平面形状は、特に限定されるものではなく、種々の形状とすることができる。例えば、第1の磁性体シート部601は、図2に示すように、開口部6011に露出する撮像素子201の画素領域の3辺の端部に沿って配置された部分を有するものとすることができる。また、第1の磁性体シート部601は、開口部6011に露出する撮像素子201の画素領域の4辺の端部に沿って配置された環状の部分を有するものとすることができる。
さらに、第1の磁性体シート部601は、第1のコイル403の磁性体ヨーク405の面4051の一部又は全部に対して対向する面を有している。なお、磁性体ヨーク405の面4051は、磁性体ヨーク405における第1の磁性体シート部601の側の面である。
一方、第2の磁性体シート部602は、冷却ファン500の第2のコイル503と撮像素子201の他方の側である背面の側との間に配置されている。第2の磁性体シート部602は、そのシート面が、撮像素子201の受光面及びプリント回路基板202の基板面とほぼ平行になるように配置されている。
第2の磁性体シート部602は、撮像素子201の背面の全面を覆うように形成されている。すなわち、第2の磁性体シート部602は、撮像素子201が光軸方向に投影された領域の面積よりも広い面積を有している。なお、第2の磁性体シート部602は、撮像素子201の背面の少なくとも一部の面を覆っていればよく、この場合であっても、漏洩磁界の影響を低減することができる。また、プリント回路基板202への漏洩磁界の影響をも十分に低減するため、第2の磁性体シート部602は、撮像素子201の背面のみならず、プリント回路基板202における回路形成領域の背面の全面をも覆うように形成されていてもよい。
第2の磁性体シート部602は、第2のコイル503の磁性体コア505の面5051の一部又は全部に対して対向する面を有している。なお、磁性体コア505の面5051は、磁性体コア505における第2の磁性体シート部602の側の面である。
上記第1の磁性体シート部601と第2の磁性体シート部602とは、撮像ユニット200を跨ぐように配置された磁性体接続部603により接続されている。磁性体接続部603の一方の端部は、第1の磁性体シート部601の上側の端部に接続されている。磁性体接続部603の他方の端部は、第2の磁性体シート部602の上側の端部に接続されている。なお、磁性体接続部603は、必ずしも第1の磁性体シート部601の上側の端部及び第2の磁性体シート部602の上側の端部に接続されている必要はなく、第1の磁性体シート部601及び第2の磁性体シート部602に接続されたものであればよい。
これら第1の磁性体シート部601、第2の磁性体シート部602、及び磁性体接続部603は、同一材料の磁性体よりなる同一のシート状部材から一体的に形成されていてもよい。また、第1の磁性体シート部601、第2の磁性体シート部602、及び磁性体接続部603は、同一又は異種材料の磁性体よりなる互いに別個のシート状部材から形成され、これらが接続されていてもよい。
具体的には、同一材料の磁性体よりなる同一のシート状部材を折り曲げることにより、第1の磁性体シート部601、第2の磁性体シート部602、及び磁性体接続部603が連なるようにシート状磁性体600を形成してもよい。また、同一材料又は異なる材料の磁性体よりなる何点かの部品を重ね合わせてこれら部品を接続することによりシート状磁性体600を形成してもよい。また、異なる磁性体材料を組み合わせて複合部材としてシート状磁性体600を形成してもよい。
なお、シート状磁性体600において、撮像素子201の背面を覆うのは第2の磁性体シート部602に限定されるものではない。シート状磁性体600の第1の磁性体シート部601、第2の磁性体シート部602、及び磁性体接続部603を含むいずれかの部分が、撮像素子201の背面を覆う構成となっていればよい。
本実施形態に係る撮像装置100は、上述したシート状磁性体600により、第1のコイル403から発生する漏洩磁界、及び第2のコイル503から発生する漏洩磁界が撮像素子201及びプリント回路基板202に到達する到達量を低減することができる。以下、本実施形態の作用について、図3を基に説明する。図3は、本実施形態に係る撮像装置100におけるコイル403、503から発生する漏洩磁界を示す説明図である。
図3(a)は、ボイスコイルモータ406における第1のコイル403から発生する漏洩磁界を示す説明図である。フォーカスレンズ401の駆動用のボイスコイルモータ406を動作させるために、第1のコイル403には、上述のように交流成分を含んだ駆動電流が流れる。第1のコイル403に駆動電流が流れると、駆動電流の交流成分に起因する交流磁界として、磁性体ヨーク405内に磁界700が発生するとともに、第1のコイル403の周辺の空間には漏洩磁界701が発生する。磁気回路の観点から、撮像素子201手前に配置された第1の磁性体シート部601の透磁率が周囲よりも高いため、コイル403から発生した漏洩磁界701が第1の磁性体シート部601に吸い寄せられる。
第1の磁性体シート部601に吸い寄せられた漏洩磁界701は、2つの異なる磁気伝達経路702、703に分流される。磁気伝達経路702は、第1の磁性体シート部601の下側の端部まで通過する経路である。磁気伝達経路703は、第1の磁性体シート部601から磁性体接続部603を介して、もう一方の第2の磁性体シート部602を通過する経路である。第1のコイル403から発生した漏洩磁界701が磁気伝達経路702、703に迂回されるため、その間にある撮像素子201及びプリント回路基板202に分流される磁界を低減することができる。結果として、第1のコイル403から発生する漏洩磁界701が撮像素子201及びプリント回路基板202に到達する到達量を抑制することができる。磁気伝達経路702、703に伝えられた磁界は、それぞれ最終的には撮像素子201の下側の空間を通じて第1のコイル403に戻る伝搬経路をとって、閉じた磁力線を形成する。
なお、第2の磁性体シート部602は、磁性体コア505に対向している。このため、図3(a)には示していないが、磁気伝達経路として、第2の磁性体シート部602の磁性体コア505と対向する部分から第2のコイル503の磁性体コア505を通過して、第1のコイル403に戻る経路も形成されうる。これは、第2の磁性体シート部602が対向している磁性体コア505の面5051に向かって、磁気伝達経路703を伝搬する磁界が空間伝搬するためである。つまり、第2の磁性体シート部602と磁性体コア505の面5051が対向して結合磁気回路を形成しているといえる。そのため、第1のコイル403から発生した漏洩磁界が、撮像素子201と反対側に配置されている第2のコイル503の磁性体コア505に伝搬する。したがって、撮像素子201側に到達する磁界は、磁性体コア505に伝搬する磁界の分だけ低減される。磁性体コア505に伝搬した漏洩磁界は、撮像素子201から十分に離れた位置で、磁性体コア505から外部空間に伝わり、最終的には第1のコイル403に戻る伝搬経路をとって、閉じた磁力線を形成する。
こうして、本実施形態では、ボイスコイルモータ406における第1のコイル403から発生した漏洩磁界701が、撮像素子201及びプリント回路基板202を回避して、第1の磁性体シート部601に形成される磁気伝達経路702に迂回される。また、本実施形態では、第1のコイル403から発生した漏洩磁界701が、撮像素子201及びプリント回路基板202を回避して、第1の磁性体シート部601、磁性体接続部603、及び第2の磁性体シート部602に形成される磁気伝達経路703に迂回される。これらの結果、本実施形態では、第1のコイル403が撮像素子201に近接して配置されていても、第1のコイル403から発生した漏洩磁界701が撮像素子201及びプリント回路基板202に到達する到達量を低減することができる。
一方、図3(b)は、冷却ファン500における第2のコイル503から発生する漏洩磁界を示す説明図である。冷却ファン500を動作させるために、第2のコイル503には、上述のように交流成分を含んだ駆動電流が流れる。なお、冷却ファン500における第2のコイル503に流れる駆動電流の交流成分は、ボイスコイルモータ406における第1のコイル403に流れる電流の交流成分と異なる周波数であってもよいし、同じ周波数であってもよい。第2のコイル503に駆動電流が流れると、駆動電流の交流成分に起因する交流磁界として、磁性体コア505内に磁界800が発生するとともに、第2のコイル503の周辺の空間には漏洩磁界が発生する。磁気回路の観点から、撮像素子201背面に配置された第2の磁性体シート部602の透磁率が周囲よりも高いため、第2のコイル503から発生した漏洩磁界が第2の磁性体シート部602に吸い寄せられる。
第2の磁性体シート部602に吸い寄せられた漏洩磁界は、2つの異なる磁気伝達経路801、802に分流される。磁気伝達経路802は、第2の磁性体シート部602の下側の端部まで通過する経路である。磁気伝達経路801は、第2の磁性体シート部602から磁性体接続部603を介して、もう一方の第1の磁性体シート部601を通過する経路である。一方の磁気伝達経路802は、撮像素子201と反対側の空間を介して第2のコイル503に戻る経路をとって閉じた磁力線を形成する。
ここで、もう一方の磁気伝達経路801は、さらに、第1の磁性体シート部601から第1のコイル403の磁性体ヨーク405を通過している。これは、第1の磁性体シート部601が対向している磁性体ヨーク405の面4051に向かって、磁気伝達経路801を伝搬する磁界が空間伝搬するためである。つまり、第1の磁性体シート部601と磁性体ヨーク405の面4051が対向して結合磁気回路を形成しているといえる。そのため、第2のコイル503から発生した漏洩磁界が、撮像素子201と反対側に配置されている第1のコイル403の磁性体ヨーク405に伝搬する。したがって、撮像素子201側に到達する磁界は、磁性体ヨーク405に伝搬する磁界の分だけ低減される。磁性体ヨーク405に伝搬した漏洩磁界は、撮像素子201から十分に離れた位置で、磁性体ヨーク405から外部空間に伝わり、最終的には第2のコイル503に戻る伝搬経路をとって、閉じた磁力線を形成する。
こうして、本実施形態では、冷却ファン500における第2のコイル503から発生した漏洩磁界が、撮像素子201及びプリント回路基板202を回避して、第2の磁性体シート部602に形成される磁気伝達経路802に迂回される。また、本実施形態では、第2のコイル503から発生した漏洩磁界が、撮像素子201及びプリント回路基板202を回避して、第2の磁性体シート部602、磁性体接続部603、及び第1の磁性体シート部601に形成された磁気伝達経路801に迂回される。磁気伝達経路801は、さらに第1のコイル403の磁性体ヨーク405にまで形成されている。これらの結果、本実施形態では、第2のコイル503が撮像素子201に近接して配置されていても、第2のコイル503から発生した漏洩磁界が撮像素子201及びプリント回路基板202に到達する到達量を低減することができる。
上述のとおり、本実施形態では、撮像素子201及びプリント回路基板202を挟んで配置された2つのコイル403、503から発生した漏洩磁界が撮像素子201及びプリント回路基板202に到達する到達量を低減することができる。
次に、本実施形態において、シート状磁性体600の配置により撮像素子201に到達する磁界の到達量を低減できる効果について、実施例を基に詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1の詳細について図2を基に説明する。実施例1では、3.96mm×5.28mmの画素領域を有する7.5mm×8.0mmの撮像素子201がワイヤボンディングにて縦12.6mm×横14.0mm×厚さ2.0mmのセラミックリードパッケージに実装されている。この半導体パッケージが、厚さ1.0mmの放熱用銅板を間に挟んで、プリント回路基板202として、約25mm×27mmのリジッド部を有するリジッドフレキシブル基板に実装されている。
撮像素子201の素子表面から2.1mm離れた位置に、ロの字型の磁性体ヨーク405の第1の磁性体シート部601に対向する面4051が位置するように、ボイスコイルモータ406が設けられている。磁性体ヨーク405の外寸は、高さ5mm(中空部の高さ3mm)、幅5mm、光軸方向長さ18.5mmである。磁性体ヨーク405の材料は、冷間圧延鋼板であるSPCC材料である。磁性体ヨーク405の中空部内には幅5mm、光軸方向長さ15mmの永久磁石404が設けられている。第1のコイル403は、内周が2.7mm×7.0mmの角状、外周が4.6mm×8.9mmの角状に巻き幅3.0mmで巻かれている。第1のコイル403は、その軸が光軸と平行になるように配置されている。このボイスコイルモータ406における第1のコイル403に対して、127kHzのパルス電流が供給されて、モータとして駆動される。
また、撮像素子201が搭載されたプリント回路基板202の背面から26.5mmの位置に冷却ファン500が設けられている。冷却ファン500の中心部におけるアウターロータ型のDCブラシレスモータは、固定子として、直径が17.0mmの磁性体コア505を有している。第2のコイル503は、内径5.9mm、外径10.2mmの円状に巻き幅2.0mmで巻かれている。第2のコイル503は、その軸が光軸と平行になるように配置されている。この冷却ファン500における第2のコイル503に対して、300Hzのパルス電流が供給されて、モータとして駆動される。
シート状磁性体600としては、直流に近い周波数30Hzでの比透磁率が40,000であり、厚さが18μmのナノ結晶磁性体シートを用いている。シート状磁性体600では、ナノ結晶磁性体シートが折り曲げられて、第1の磁性体シート部601、第2の磁性体シート部602、及び磁性体接続部603が一体的に形成されている。
第1のコイル403と撮像素子201との間には、5mm×10mmの第1の磁性体シート部601が配置されている。第1の磁性体シート部601は、撮像素子201の素子表面から1.1mmの距離に位置し、磁性体ヨーク405の対向面からは1.0mmの距離に位置している。また、磁性体ヨーク405の面4051の約50%が、第1の磁性体シート部601と対向している。また、図2に示す第1の磁性体シート部601の、撮像素子201の左右2辺の端部に沿って下側まで延伸されている部分は、幅1mm、長さ14mmとしている。
また、第2のコイル503と撮像素子201との間には、20mm×20mmの第2の磁性体シート部602が配置されている。第2の磁性体シート部602は、撮像素子201が搭載されたプリント回路基板202の背面から1.7mm離れた位置に配置されている。また、第2の磁性体シート部602は、7.5mm×8.0mmの撮像素子201の背面側を覆うように形成されている。
第1の磁性体シート部601と第2の磁性体シート部602とを接続する磁性体接続部603は、上述のように、第1の磁性体シート部601及び第2の磁性体シート部602と同一材料で形成されている。磁性体接続部603のサイズは、横幅10.0mm、長さ6.7mmとなっている。
(比較例1)
比較例1は、図4に示された構成である。比較例1は、第1の磁性体シート部601、第2の磁性体シート部602、及び磁性体接続部603のすべてが設けられていない点で実施例1と異なる。すなわち、比較例1では、シート状磁性体600が設けられていない。シート状磁性体600が設けられていない点以外の点は、実施例1と同様である。
(比較例2)
比較例2は、図5に示された構成である。比較例2は、第1の磁性体シート部601及び第2の磁性体シート部602が設けられているが、磁性体接続部603が設けられていない点で実施例1と異なる。すなわち、比較例2では、第1の磁性体シート部601と第2の磁性体シート部602とが接続されておらずに別個独立に分離されている。第1の磁性体シート部601と第2の磁性体シート部602とが接続されていない点以外の点は、実施例1と同様である。
上述した実施例1及び比較例1、2のそれぞれについて、市販の電磁界解析ソフトウェアを用いて電磁界シミュレーションを行い、撮像素子201に到達する磁界の到達量を求めた。電磁界シミュレーションには、電磁界解析ソフトウェアとしてANSYS社製「Maxwell 3D」を用いた。
電磁界シミュレーションにおいて、第1のコイル403、第2のコイル503に供給する電流は、それぞれに実際に供給される電流の周波数を有する正弦波交流とした。そして、周波数毎に独立に解析を行っている。つまり、各コイル403、503から発生する漏洩磁界をそれぞれ独立に解析して、各コイル403、503から撮像素子201に到達する磁界の到達量を独立に求めている。
図6は、実施例1及び比較例1、2のそれぞれについて、電磁界シミュレーションにより撮像素子201の半導体部に到達する磁界の到達量を求めた結果を示すグラフである。図6では、実施例1及び比較例1、2のそれぞれについて、第1のコイル403から到達する磁界の到達量を左側の棒グラフ、第2のコイル503から到達する磁界の到達量を右側の棒グラフに示している。なお、磁界の到達量としては、撮像素子201の半導体部における磁束密度を求めている。また、磁界の到達量は、比較例1の到達量を100%とした場合の比率で表示している。
シート状磁性体600自体が配置されていない比較例1に対して、比較例2では、互いに接続されていない第1の磁性体シート部601及び第2の磁性体シート部602が配置されている。この比較例2では、第1のコイル403からの磁界の到達量が、比較例1に対して約40%までしか低減されていない。これは以下の理由による。
図4(a)は、比較例1における第1のコイル403からの漏洩磁界を示している。この図4(a)では、シート状磁性体600が配置されていないため、磁気伝達経路702、703のいずれもが撮像素子201にかかる経路となっている。
これに対して、図5(a)は、比較例2における第1のコイル403からの漏洩磁界を示している。この図5(a)では、第1の磁性体シート部601が配置されていることにより、磁気伝達経路702、703のうち、磁気伝達経路702は、撮像素子201を迂回している。しかしながら、第1の磁性体シート部601が第2の磁性体シート部602に接続されていないため、磁気伝達経路703は、撮像素子201にかかる経路となっている。
このように、比較例2では、磁気伝達経路702が迂回するため、撮像素子201に到達する磁界の到達量はある程度低減される。ただし、比較例2では、磁気伝達経路703が撮像素子201にかかる経路となっているため、第1のコイル403から撮像素子201に到達する磁界の到達量は、比較例1に対して約40%までしか低減されていないのである。
また、比較例2では、第2のコイル503からの磁界の到達量が、比較例1に対して約82%までしか低減されていない。これは以下の理由による。
図4(b)は、比較例1における第2のコイル503からの漏洩磁界を示している。この図4(b)では、シート状磁性体600が配置されていないため、磁気伝達経路801、802のいずれもが撮像素子201にかかる経路となっている。
これに対して、図5(b)は、比較例2における第2のコイル503からの漏洩磁界を示している。この図5(b)では、第2の磁性体シート部602が配置されていることにより、磁気伝達経路801、802のうち、磁気伝達経路802は、撮像素子201を迂回している。しかしながら、第2の磁性体シート部602が第1の磁性体シート部601に接続されていないため、磁気伝達経路801は、撮像素子201にかかる経路となっている。
このように、比較例2では、磁気伝達経路802が迂回するため、撮像素子201に到達する磁界の到達量はある程度低減される。ただし、比較例2では、磁気伝達経路801が撮像素子201にかかる経路となっているため、第2のコイル503から撮像素子201に到達する磁界の到達量は、比較例1に対して約82%までしか低減されていないのである。
一方、実施例1では、第1のコイル403からの磁界の到達量が、比較例1に対して約30%まで低減されている。これは以下の理由による。
図3(a)は、実施例1における第1のコイル403からの漏洩磁界を示している。この図3(a)では、磁性体接続部603により互いに接続された第1の磁性体シート部601及び第2の磁性体シート部602が配置されているため、磁気伝達経路702、703のいずれもが撮像素子201を迂回している。そのため、実施例1では、第1のコイル403からの磁界の到達量が、比較例1に対して約30%まで低減されているのである。
また、実施例1では、第2のコイル503からの磁界の到達量が、比較例1に対して約45%まで低減されている。これは以下の理由による。
図3(b)は、実施例1における第2のコイル503からの漏洩磁界を示している。この図3(b)では、磁性体接続部603により互いに接続された第1の磁性体シート部601及び第2の磁性体シート部602が配置されているため、磁気伝達経路801、802のいずれもが撮像素子201を迂回している。そのため、実施例1では、第2のコイル503からの磁界の到達量が、比較例1に対して約45%まで低減されているのである。
特に、比較例2と比べて、実施例1は、供給される電流が第1のコイル403よりも低い周波数である第2のコイル503からの漏洩磁界に対する抑制効果が高いことが分かる。本実施形態は、磁界の迂回及び磁界の別デバイスへの結合を実現する独自の構成により、撮像素子201に到達する磁界の到達量を低減している。すなわち、本実施形態における独自の構成は、まず、シート状磁性体600によって磁界を迂回させる。さらに、本実施形態における独自の構成は、磁界の迂回路となるシート状磁性体600から撮像素子201側に伝搬する磁界の漏れを、撮像素子201の逆側の別デバイスであるボイスコイルモータ406における磁性体ヨーク405に結合させる。こうして、本実施形態における独自の構成は、撮像素子201、さらには撮像素子201が搭載されたプリント回路基板202に到達する磁界の到達量を低減するというものである。第2のコイル503からの漏洩磁界に対する抑制効果が比較例2よりも実施例1が高いという結果は、独自の構成による効果が顕著に現れていることを示している。
このように、撮像素子201への到達する磁界の到達量を例えば実施例1における到達量まで低減することができると、高感度な撮像素子201で発生する画像の乱れを十分に抑制することが可能である。
次に、上述した磁界の迂回及び磁界の別デバイスへの結合を実現する独自の構成について、詳細に調べた結果について説明する。
まず、第1の磁性体シート部601と磁性体ヨーク405とが対向する対向面積を変化させて、磁界の結合の大小を変化させた。この結合が大きいほど、撮像素子201に到達する磁界の到達量が小さくなれば、上記独自の構成により撮像素子201に到達する磁界の到達量が低減されていることを示すことができる。
図7は、第1のコイル403の磁性体ヨーク405の面4051の、第1の磁性体シート部601に対向する面積比率が変化した場合を示す図である。図7(a)は、磁性体ヨーク405の面4051の面積比率100%が第1の磁性体シート部601に対向している実施例2の場合を示している。図7(b)は、磁性体ヨーク405の面4051の面積比率50%が第1の磁性体シート部601に対向している上述した実施例1の場合を示している。図7(c)は、磁性体ヨーク405の面4051の面積比率18%が第1の磁性体シート部601に対向している実施例3の場合を示している。以下、これらについて詳細に説明する。
(実施例2)
実施例2について、図7(a)を基に実施例1と異なる点のみ説明する。実施例2では、磁性体ヨーク405の上面よりも高くなるように、第1の磁性体シート部601の上部方向の長さを実施例1よりも3.5mm以上拡張した。そのため、実施例2では、磁性体ヨーク405の面4051の面積比率100%が第1の磁性体シート部601に対向している。
(実施例3)
実施例3について、図7(c)を基に実施例1と異なる点のみ説明する。実施例3では、第1の磁性体シート部601の上部方向の長さを1.1mm短くした。このため、実施例3では、磁性体ヨーク405の面4051の面積比率18%が第1の磁性体シート部601に対向している。なお、第1の磁性体シート部601の上部方向の長さを短くしたことに伴い、磁性体接続部603は折り曲げて形成されている。
図8は、実施例1〜3のそれぞれについて、電磁界シミュレーションにより撮像素子201の半導体部に到達する磁界の到達量を求めた結果を示すグラフである。電磁界シミュレーションは、図6に示す場合と同様にして行った。図8では、実施例1〜3のそれぞれについて、第2のコイル503から到達する磁界の到達量を棒グラフに示している。なお、磁界の到達量としては、撮像素子201の半導体部における磁束密度を求めている。また、磁界の到達量は、上述した比較例1の到達量を100%とした場合の比率で表示している。
図8をみると、実施例1〜3のいずれの場合も、図6に示す比較例2の場合よりも磁界の到達量は低くなっている。そして、磁性体ヨーク405の面4051が第1の磁性体シート部601と対向する面積比率を高めるにつれて、撮像素子201に到達する磁界の到達量がさらに低減されていることが分かる。この図8に示す結果は以下のように説明することができる。
図7(a)、図7(b)、及び図7(c)は、それぞれ実施例2、実施例1、及び実施例3について、第2のコイル503から発生した漏洩磁界が伝搬する様子を示した図である。いずれの図でも、漏洩磁界が、磁気伝達経路801を通り、第1の磁性体シート部601を介して、第1のコイル403の磁性体ヨーク405の面4051に伝搬している。
このように伝搬する漏洩磁界の伝搬量は、実施例1〜3のうち、図7(c)に示す実施例3で最も少ない。次いで、図7(b)に示す実施例1、図7(a)に示す実施例2の順に漏洩磁界の伝搬量が多くなっている。それは、磁性体ヨーク405の面4051の第1の磁性体シート部601に対向する面積比率が、実施例1〜3のうち実施例3で最も小さく、次いで、実施例1、実施例2の順で大きくなっているためである。図7(c)に示す実施例3、図7(b)に示す実施例1、図7(a)に示す実施例2の順で、磁性体ヨーク405の面4051の第1の磁性体シート部601に対向する面積比率が増加するにつれて、漏洩磁界の磁性体ヨーク405への伝搬量が高まっている。
つまり、磁性体ヨーク405側への磁界の伝搬量が増加したことは、撮像素子201を迂回する磁界量が増加することに相当する。そのため、磁界を迂回させる効果が高まって撮像素子201に到達する磁界の到達量が低減したのである。これは、磁気回路として考えると、磁気伝達経路である第1の磁性体シート部601と磁性体ヨーク405との間の磁気抵抗を、磁性体同士の対向面積を増加させることによって減少させたことを意味している。
このように、シート状磁性体600により漏洩磁界を迂回させ、さらにその迂回路からの磁界の漏れを、撮像素子201の逆側の別デバイスにおける磁性体ヨーク405に結合させることで、撮像素子201等への磁界の到達量が減少されることが証明された。
上述した磁性体ヨーク405の面4051の第1の磁性体シート部601に対向する面積比率は、10%以上であることが好ましい。対向する面積比率を10%以上とすることにより、磁性体ヨーク405側への磁界の伝搬量を十分に増加させて、撮像素子201への磁界の到達量を十分に低減することができる。
次に、第1の磁性体シート部601と第1のコイル403の磁性体ヨーク405との位置関係について、さらに詳細に図9を用いて説明する。
図9において、第1の磁性体シート部601と、第1のコイル403の磁性体ヨーク405の面4051との間の距離がa1である。また、第1の磁性体シート部601と撮像素子201の素子表面との間の距離がa2である。この距離a1と距離a2との関係によって、撮像素子201への磁界の到達量が変化する。
ここで、具体的な実施例を基に説明する。上述した実施例2では、距離a1が1.0mmであり、距離a2が1.1mmである。
(実施例4)
実施例4では、図9において、距離a1が1.5mmであり、距離a2が0.6mmである。それ以外の点は、実施例2と同様である。
(実施例5)
実施例5では、図9において、距離a1が0.5mmであり、距離a2が1.6mmである。それ以外の点は、実施例2と同様である。
上記実施例2、4、5では、実施例4、実施例2、実施例5の順に、距離a2が大きくなり、距離a1がその分小さくなっている。
ここで、実施例4、2、5のそれぞれについて、電磁界シミュレーションにより撮像素子201の半導体部に到達する磁界の到達量を求めた。図10は、実施例4、2、5のそれぞれについて、電磁界シミュレーションにより撮像素子201の半導体部に到達する磁界の到達量を求めた結果を示すグラフである。電磁界シミュレーションは、図6に示す場合と同様にして行った。図10では、実施例4、2、5のそれぞれについて、第2のコイル503から到達する磁界の到達量を棒グラフに示している。なお、磁界の到達量としては、撮像素子201の半導体部における磁束密度を求めている。また、磁界の到達量は、上述した比較例1の到達量を100%とした場合の比率で表示している。
図10では、実施例4、2、5の順に、すなわち、距離a2が大きく、かつ距離a1が小さくなるにつれて、撮像素子201に到達する磁界の到達量が低減されていることが分かる。この図10に示す結果は、図9を用いて以下のように説明することができる。
第2のコイル503から発生し、磁気伝達経路801を通って第1の磁性体シート部601まで通過してきた漏洩磁界は、第1のコイル403の磁性体ヨーク405に伝搬する経路、及び撮像素子201に向かう経路の2種類の経路に伝搬しうる。そして、この距離a1、a2によっていずれの経路に伝搬するかが決定される。すなわち、距離a1が距離a2よりも小さいと、磁性体ヨーク405へ伝搬する経路の磁気抵抗の方が十分低くなる。そのため、撮像素子201側への経路への磁界伝搬量をさらに減少させることができ、よって、撮像素子201に到達する磁界の到達量を低減することができる。
したがって、第1の磁性体シート部601は、距離a1が距離a2よりも小さくなるように磁性体ヨーク405と撮像素子201との間に配置されることが好ましい。すなわち、第1の磁性体シート部601は、撮像素子201よりも磁性体ヨーク405の近くに配置されることが好ましい。なお、距離a1、a2については、実際の製品で必要とされる画像の乱れの抑制量に応じて適宜設定することができる。
なお、第2の磁性体シート部602についても、上述した第1の磁性体シート部601と同様に構成することができ、第1のコイル403から発生する漏洩磁界が撮像素子201に到達する到達量を低減することができる。
第2のコイル503の磁性体コア505は、図9に示すように、第2の磁性体シート部602に対向する面5051を有している。図9では、磁性体コア505の面5051の面積比率100%が第2の磁性体シート部602に対向している。磁性体コア505の面5051が第2の磁性体シート部602と対向する面積比率は、100%に限定されるものではないが、これを高めることにより、第1のコイル403から発生する漏洩磁界が撮像素子201に到達する到達量をさらに低減することができる。
なお、磁性体コア505の面5051の第2の磁性体シート部602に対向する面積比率は、10%以上であることが好ましい。対向する面積比率を10%以上とすることにより、磁性体コア505側への磁界の伝搬量を十分に増加させて、撮像素子201への磁界の到達量を十分に低減することができる。
また、第2のコイル503の磁性体コア505の面5051と第2の磁性体シート部602との間の距離を、第2の磁性体シート部602と撮像素子201の素子表面との間の距離よりも小さくすることができる。図9において、磁性体コア505の面5051と第2の磁性体シート部602との間の距離がb1である。また、第2の磁性体シート部602と撮像素子201の素子表面との間の距離がb2である。
第2の磁性体シート部602は、距離b1が距離b2よりも小さくなるように磁性体コア505と撮像素子201との間に配置することができる。すなわち、第2の磁性体シート部602は、撮像素子201よりも磁性体コア505の近くに配置することができる。距離b1が距離b2よりも小さいと、磁性体コア505へ伝搬する経路の磁気抵抗が低くなる。そのため、撮像素子201側への経路への磁界伝搬量をさらに減少させることができ、よって、撮像素子201に到達する磁界の到達量を低減することができる。なお、距離b1、b2についても、距離a1、a2と同様、実際の製品で必要とされる画像の乱れの抑制量に応じて適宜設定することができる。
第2の磁性体シート部602についても上記のように構成することにより、第1のコイル403から発生する漏洩磁界701が、磁性体接続部603を介して、第2の磁性体シート部602に伝搬し、そこからさらに磁性体コア505側に伝搬するようになる。そのため、撮像素子201に到達する磁界の到達量がさらに低減する効果が得られる。
続いて、上述したシート状磁性体600に用いられる材料、すなわち第1の磁性体シート部601、第2の磁性体シート部602、及び磁性体接続部603に用いられる材料について説明する。
シート状磁性体600の材料としては、例えば、SUS430、SUS630等のステンレス鋼板、SPCC鋼板(冷間圧延鋼板)、一部のシルバートップ(登録商標)等の亜鉛メッキ鋼板を使用することができる。これらは、比較的低い比透磁率の磁性体であり、特に比透磁率が50以上で1000以下のものである。これらをシート状磁性体600の材料として好適に使用することができる。ただし、アルミニウム、銅、SUS304、導電性プラスティック等の比透磁率がほぼ1のいわゆる磁性体ではないものは、シート状磁性体600の材料として使用することはできない。
また、シート状磁性体600の材料として、比較的高い比透磁率の磁性体であるファインメット(登録商標)等のナノ結晶軟磁性体を使用することもできる。その他に、パーマロイ、アモルファス磁性体、フェライト、電磁鋼、バスタレイド(登録商標)等の高透磁率のノイズ抑制シート(磁性粉や磁性体フィラー、磁性体膜を含有したもの)等も適用できる。この場合は、より高い効果が期待できる。
ここで、シート状磁性体600を構成する材料の比透磁率について説明する。磁性体の比透磁率は、磁界の周波数によって変化する。このような磁性体の比透磁率は、図11に示す測定系を用いて測定することができる。図11は、比透磁率を測定する測定系を示す説明図である。
図11に示す測定系では、JISC2556に規定される「電磁鋼板単板磁気特性試験方法」により板状の測定サンプル313が測定可能な治具31が用いられている。治具31は、下側ヨーク312aと上側ヨーク312bとを有する複ヨーク枠312と、複ヨーク枠312により囲まれたコイル311とを有している。コイル311には、LCRメータ32が接続されている。なお、LCRメータ32に代えて、インピーダンスアナライザを用いることもできる。
比透磁率の測定では、複ヨーク枠312内に板状に成形した測定サンプル313を挟んでコイル311に挿入する。次に、LCRメータ32によりコイル311に交流信号を周波数掃引して、インダクタンス値の周波数特性を取得する。そして、サンプル非挿入状態のインダクタンス値を基準として、測定サンプル313を挿入した場合のインダクタンス値から、以下の式(1)によって複素比透磁率の実部μ’が求められる。なお、測定サンプル313に印加する磁束密度は、各周波数で1[μT]以下となっている。このため、微弱な磁界ノイズに対して作用する材料の初透磁率が求められる。
ここで、Nはコイル311の巻き数である。μ0は真空の透磁率であり、その値は4π×10−7[H/m]である。Aは測定サンプル313の断面積である。Lは測定サンプル313の長さである。LeffはLCRメータ32で得られたインダクタンス測定値である。Lwは測定サンプル313を挿入しない場合のインダクタンス測定値である。
ちなみに、JISC2561に規定される「フェライト磁心の材質性能試験方法」による測定では、リング状の測定サンプルを用いた測定となっているため、シート状磁性体の透磁率の、特に厚さ依存性を正確に求めることはできない点に注意が必要である。
ここで、上記図11に示す測定系により各種材料の比透磁率を測定した結果を図12に示す。図12は、ナノ結晶軟磁性体シート、パーマロイ、フェライト、SPCC、SUS430、及び銅の各種材料について比透磁率を測定した結果を示すグラフである。
図12をみると、ほぼすべての磁性体材料で、周波数が高くなると比透磁率が減少している様子が観察される。これは、シート状磁性体に周波数が高い磁界が入った場合に、磁界を打ち消す方向に渦電流がシート状磁性体に流れるためである。この渦電流の効果によって、磁界が磁性体内部に入りにくくなる。このことは、実効的な比透磁率が低下することに相当する。このため、周波数が高くなると比透磁率が減少する様子が観察される。比透磁率が減少し始める周波数が材料ごとに異なっているのは、磁性体材料の導電率とその厚さによって渦電流の流れやすくなる周波数帯域が異なるためである。
なお、シート状磁性体600の厚さは特に限定されるものではないが、同じ磁性体材料でも薄くする方が、実効的な比透磁率を高くすることができる。このため、シート状磁性体600を構成する際には、その材料の種類とともにその厚さをも考慮することが望ましい。
シート状磁性体600の比透磁率は、磁界ノイズとなる漏洩磁界の周波数である1kHz〜10MHzの範囲において、10以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。このような比透磁率を有するシート状磁性体600であれば、磁界を伝搬させる効果が十分に得られる。なお、シート状磁性体600の比透磁率の上限値は特に限定されるものではないが、工業的に利用可能な材料の比透磁率である例えば20万以下の範囲で、シート状磁性体600の比透磁率を選定することができる。
上記図12に示すグラフのように磁性体材料の比透磁率を測定したグラフに基づき、撮像素子201への到達を抑制すべき漏洩磁界の周波数に応じて、効果のある磁性体材料を選定することができる。図12に示される材料以外の材料を使用する場合でも、ここに示した測定方法により比透磁率の測定を行うことで、磁界ノイズの抑制に適した磁性体材料を選定することができる。
また、本実施形態において、シート状磁性体600は、必ずしも単一の磁性体材料により構成する必要はなく、異なる磁性体材料を組み合わせて複合部材として構成することもできる。
例えば、図2に示すシート状磁性体600において、第1の磁性体シート部601及び磁性体接続部603を比較的高い比透磁率を示す薄いナノ結晶軟磁性体を用いて構成することができる。一方、第2の磁性体シート部602は、第1の磁性体シート部601及び磁性体接続部603と比較して低い比透磁率を示す厚いSUS430又はSPCCを用いて構成することができる。
こうすると、高い周波数で駆動される第1のコイル403の漏洩磁界は、対向する第1の磁性体シート部601を構成する、元々高い比透磁率のナノ結晶軟磁性体によって、効果的に吸収される。これは、漏洩磁界の周波数が高いため、第1の磁性体シート部601の比透磁率は、減少するのだが、元々の比透磁率が高いため減少しても効果のある値以上となるためである。そして、漏洩磁界は、撮像素子201の背面に配置される第2の磁性体シート部602まで伝搬される。このため、第2の磁性体シート部602が、相対的に低い比透磁率の材料で構成されていても、磁界を迂回する一定の効果が得られて、撮像素子201への磁界の到達量を低減することができる。
一方、第1のコイル403と比較して低い周波数で駆動される第2のコイル503から発生する漏洩磁界は、第1のコイル403から発生する漏洩磁界と比較して周波数が低い。このため、第2のコイル503から発生する漏洩磁界は、第2の磁性体シート部602を構成する、相対的に低い透磁率を示す厚いSUS430やSPCCによっても、十分に効果的に吸収される。そのため、第1のコイル403の漏洩磁界と同様に、第2のコイル503の漏洩磁界についても、磁界の迂回効果が得られて、撮像素子201への磁界の到達量を低減することができる。
上記の場合、第1の磁性体シート部601、第2の磁性体シート部602、及び磁性体接続部603のすべての材料として、高い比透磁率を示す薄いナノ結晶磁性体を用いた場合に比べて、安価に構成することができる。
また、第2の磁性体シート部602を構成する厚いSUS430やSPCCに対して、撮像素子201を搭載するプリント回路基板202をビス留め等により取り付けて固定することができる。このように剛性の高いSUS430やSPCCに対してプリント回路基板202を固定することで、撮像ユニット200の剛性も高めることができる。この結果、撮像装置100の落下時における衝撃に対する耐性が向上し、結果として機器の信頼性が向上するという付随した効果も得られる。
なお、複合部材の材料は、上記の組み合わせに限定されるものでなく、種々の材料を適宜組み合わせることが可能である。
本実施形態によれば、2つのコイル403、503に撮像素子201が挟まれた場合においても、それぞれから発生する漏洩磁界が撮像素子201に到達する到達量を低減することができる。そのため、撮像素子201が画像信号を読み出す読み出し動作を行っても、磁界の影響が少なく、本来の画像信号を良好に読み出すことができる結果、画像の乱れの発生を抑制することができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る撮像装置について説明する。なお、上記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
本実施形態に係る撮像装置の基本的構成は、第1実施形態に係る撮像装置の構成とほぼ同様である。本実施形態に係る撮像装置は、第1の磁性体シート部601の端部及び第2の磁性体シート部602の端部が折り曲げられている点で、第1実施形態に係る撮像装置と異なっている。以下、図13を用いて第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
図13に示すように、本実施形態に係る撮像装置では、第1の磁性体シート部601の磁性体接続部603が接続されていない下側の端部6012が、撮像素子201とは反対側の第1のコイル403の側に折り曲げられている。また、第2の磁性体シート部602の磁性体接続部603が接続されていない下側の端部6022が、撮像素子201とは反対側の第2のコイル503の側に折り曲げられている。
本実施形態では、第1の磁性体シート部601の端部6012が折り曲げられていることにより、漏洩磁界の強度がより大きい領域である、第1のコイル403の近傍により近く、第1の磁性体シート部601が設けられている。このため、第1のコイル403から発生する漏洩磁界は、より効果的に第1の磁性体シート部601に吸い寄せられる。この結果、撮像素子201に到達する磁界の到達量をさらに低減することが可能である。
そして、第1の磁性体シート部601から磁性体接続部603を介して第2の磁性体シート部602に伝搬した漏洩磁界は、その端部から外部空間に伝搬する。その際、第2の磁性体シート部602の端部6022が撮像素子201とは反対側の第2のコイル503の側に折り曲げられているために、端部6022から放出される漏洩磁界が、撮像素子201とは反対側に伝搬される。この結果、撮像素子201に到達する磁界の到達量をさらに低減する効果も併せて得られる。
第2のコイル503から発生する漏洩磁界についても同様の効果が得られる。すなわち、第2の磁性体シート部602の端部6022が折り曲げられていることにより、漏洩磁界の強度がより大きい領域である、第2のコイル503の近傍により近く、第2の磁性体シート部602が設けられている。このため、第2のコイル503から発生する漏洩磁界は、より効果的に第2の磁性体シート部602に吸い寄せられる。この結果、撮像素子201に到達する磁界の到達量をさらに低減することが可能である。
そして、第2の磁性体シート部602から磁性体接続部603を介して第1の磁性体シート部601に伝搬した漏洩磁界は、その端部から外部空間に伝搬する。その際、第1の磁性体シート部601の端部6012が撮像素子201とは反対側の第1のコイル403の側に折り曲げられているために、端部6012から放出される漏洩磁界が、撮像素子201とは反対側に伝搬される。この結果、撮像素子201に到達する磁界の到達量をさらに低減する効果も併せて得られる。
こうして、本実施形態では、第1のコイル403に対して、第1の磁性体シート部601の端部6012が折り曲げられた簡便な構成で、第1のコイル403からの漏洩磁界が撮像素子201に到達する到達量を低減する効果が高まる。また、第2のコイル503に対して、第2の磁性体シート部602の端部6022が折り曲げられた簡易な構成で、第2のコイル503からの漏洩磁界が撮像素子201に到達する到達量を低減する効果が高まる。
本実施形態よれば、2つのコイル403、503に撮像素子201が挟まれた場合においても、それぞれから発生する漏洩磁界が撮像素子201に到達する到達量をさらに低減することができる。そのため、撮像素子201が画像信号を読み出す読み出し動作を行っても、磁界の影響がさらに少なく、本来の画素信号をさらに良好に読み出すことができる結果、画像の乱れが発生をさらに抑制することができる。
なお、上記では、第1の磁性体シート部601の端部6012及び第2の磁性体シート部602の端部6022のいずれもが折り曲げられている場合について説明したが、必ずしも端部6012、6022のうちのいずれもが折り曲げられている必要はない。端部6012、6022のうちのいずれか一方が折り曲げられていてもよい。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る撮像装置について説明する。なお、上記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
本実施形態に係る撮像装置の基本的構成は、第1実施形態に係る撮像装置の構成とほぼ同様である。本実施形態に係る撮像装置は、磁性のない金属板900をさらに有している点で、第1実施形態に係る撮像装置と異なっている。以下、図14を用いて、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
図14に示すように、本実施形態に係る撮像装置では、第2の磁性体シート部602と撮像素子201との間に、磁性のない金属板900が設けられている。金属板900は、第2の磁性体シート部602と平行に配置されている。
金属板900は、撮像素子201が光軸方向に投影された領域の面積よりも広い面積を有している。また、金属板900の厚さは、第1のコイル403の駆動周波数における表皮厚さの1/8よりも厚く、その表皮厚さの2倍よりも薄くなっている。
磁性のない金属板900の作用について説明する。第1のコイル403から発生する漏洩磁界は、その一部が第1の磁性体シート部601をすり抜ける。このため、第1のコイル403から発生した漏洩磁界により、僅かながら撮像素子201に磁界704が到達する。これは、撮像素子201の背面側に配置されている第2の磁性体シート部602に磁界704が引き寄せられるためである。この磁界704は、特に撮像素子201の受光面に垂直な成分を含んでいる。その磁界704の受光面に垂直な成分は、撮像素子201を貫通して、撮像素子201の背面側に配置された金属板900に入射する。金属板900には、入射してきた磁界704を打ち消す向きに渦電流901が流れる。この渦電流901は、金属板900内部の磁界を打ち消すだけでなく、その周囲の磁界、つまり撮像素子201の領域の磁界も打ち消す効果がある。このように磁界を打ち消す効果は、第1のコイル403の駆動周波数、すなわち磁界の周波数における表皮厚さの1/8よりも厚いとその効果が十分大きくなり、表皮厚さの2倍程度で効果が飽和する。
こうして、金属板900により磁界704を打ち消すことで、撮像素子201に到達する磁界の到達量をさらに低減することができる。
さらに、第1のコイル403からの漏洩磁界の成分としては、第1の磁性体シート部601に吸収されて、磁性体接続部603を介して、第2の磁性体シート部602に伝搬される磁界成分705もある。この第2の磁性体シート部602の表面からその外側へ向かっての磁界成分705の漏れが僅かに存在している。この磁界成分705の漏れに対しても、金属板900が第2の磁性体シート部602と撮像素子201との間に配置されているために、同様に磁界を打ち消す向きの渦電流902が流れる。金属板900に渦電流902が流れることにより、第2の磁性体シート部602の表面から僅かに漏れて、撮像素子201に到達してしまう、僅かな磁界成分の到達量も低減することができる。
なお、金属板900の材料としては、特に限定されるものではないが、磁性のないステンレス、銅、銅系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金等の、導電率が高く、比透磁率がほぼ1で磁性のない金属材料を好適に使用することができる。具体的には、金属板900の材料として、導電率が約5.7×107[S/m]の銅、導電率が約1.3×107[S/m]のアルミニウム、導電率が約1.0×107[S/m]の磁性のないステンレスを例示することができる。表皮厚さは、周波数と導電率と比透磁率との積の2乗根に逆比例する。そのため、金属板900の材料として特に導電率が高いこれらの材料を使用すれば、他の材料を使用した場合よりも薄くても同等の磁界打ち消し効果が得られるため、機器の薄型化に有利である。
また、金属板900は、撮像素子201又はこれが実装されたプリント回路基板202と熱的に結合させて配置することができる。導電率の高い金属板900は熱抵抗も低い。このため、導電率の高い金属板900を撮像素子201又はプリント回路基板202と熱的に結合させて配置した場合、撮像素子201の放熱効果を高めて、熱による画像の乱れを抑制するという付随的な効果も得られる。金属板900と撮像素子201又はプリント回路基板202とは、例えば、互いに近接して配置することにより、熱的に結合せることができる。また、金属板900と撮像素子201又はプリント回路基板202とを伝熱材で接続することにより、熱的に結合することもできる。
なお、上述のように金属板900を配置する場合、冷却ファン500による冷却効果を確保するため、金属板900及び第2の磁性体シート部602には、それぞれ複数の貫通孔を設けることができる。
この場合、図15に示すように、金属板900には、複数の貫通孔903が設けられている。各貫通孔903は、金属板900の撮像素子201の側の主面から冷却ファン500の側の主面に金属板900を貫通するように設けられている。複数の貫通孔903は、例えば正方格子状又は千鳥格子状に配列されている。
また、第2の磁性体シート部602には、複数の貫通孔6021が設けられている。各貫通孔6021は、第2の磁性体シート部602の撮像素子201の側の主面から冷却ファン500の側の主面に第2の磁性体シート部602を貫通するように設けられている。複数の貫通孔6021は、例えば正方格子状又は千鳥格子状に配列されている。図16は、正方格子状に配列された複数の貫通孔6021が第2の磁性体シート部602に形成されている場合を示している。
このように、金属板900に複数の貫通孔903を設け、第2の磁性体シート部602に複数の貫通孔6021を設けることができる。この場合、貫通孔903、6021を空気が流れることができ、冷却ファン500により形成される空気の流れにより効果的に撮像素子201及びプリント回路基板202を冷却することができる。
なお、金属板900が配置されていない第1実施形態又は第2実施形態の場合においても、第2の磁性体シート部602には、複数の貫通孔6021が設けられていてもよい。
また、上記では磁性のない金属板900を第2の磁性体シート部602と撮像素子201との間に設ける場合について説明したが、磁性のない金属板は、第1の磁性体シート部601と撮像素子201との間に設けることもできる。
この場合、図17に示すように、第1の磁性体シート部601と撮像素子201との間に、磁性のない金属板900aが設けられている。金属板900aは、第1の磁性体シート部601と平行に配置されている。なお、金属板900aの材料としては、上述した金属板900と同様の材料を用いることができる。
金属板900aは、その外形形状が撮像素子201の面積よりも広くなっている。また、金属板900aの厚さは、第2のコイル503の駆動周波数における表皮厚さの1/8よりも厚く、その表皮厚さの2倍よりも薄くなっている。
金属板900aには、撮像素子201の画素領域が露出する開口部が設けられており、撮像素子201の画素領域へ光が透過するようになっている。金属板900aに開口部があっても、金属板900と同様に一定の磁界打ち消し効果が得られる。上述した金属板900により第1のコイル403の漏洩磁界が撮像素子201に到達する到達量をさらに低減できるのと同様に、金属板900aにより、第2のコイル503から発生する漏洩磁界が撮像素子201に到達する到達量をさらに低減することができる。
なお、必ずしも金属板900、900aの両方を設ける必要はなく、金属板900、900aのいずれか一方を設けることもできる。
本実施形態によれば、2つのコイル403、503に撮像素子201が挟まれた場合においても、それぞれから発生する漏洩磁界が撮像素子201に到達する到達量をさらに低減することができる。そのため、撮像素子201が画像信号を読み出す読み出し動作を行っても、磁界の影響がさらに少なく、本来の画像信号をさらに良好に読み出すことができる結果、画像の乱れの発生をさらに抑制することができる。
なお、上記では、第1実施形態に係る撮像装置と同様の構成において金属板900、900aを設ける場合について説明したが、第2実施形態に係る撮像装置と同様の構成においても金属板900、900aを同様に設けることができる。
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係る撮像装置について説明する。なお、上記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
上記実施形態では、ボイスコイルモータ406における第1のコイル403と冷却ファン500における第2のコイル503とが、撮像素子201を挟むように配置されていた場合について説明した。しかしながら、撮像素子201に対しては、必ずしも2つのコイル403、503が配置されている必要はなく、1つのコイルだけが配置されていてもよい。以下、本実施形態では、冷却ファン500が設けられておらず、撮像素子201に対して第2のコイル503が配置されていない場合について図18を用いて説明する。
図18に示すように、本実施形態に係る撮像装置100aは、第1実施形態に係る撮像装置100とは異なり、撮像ユニット200の後方に冷却ファン500が設けられていない。例えば、筐体101内の撮像素子201等の発熱部の発熱が小さく、発熱部の強制的な空冷を必ずしも必要としない場合には、このように冷却ファン500を設けないことができる。また、撮像装置100aをデジタルビデオカメラではなくデジタルスチルカメラとして構成した場合には、撮像時間がごく短時間であるため、冷却ファン500を設けないことができる。なお、冷却ファン500が設けられていない点以外の点は、第1実施形態に係る撮像装置100と同様である。
本実施形態に係る撮像装置100aにおいても、シート状磁性体600が、第1実施形態に係る撮像装置100と同様に配置されている。このため、本実施形態に係る撮像装置100aも、シート状磁性体600により、上述したように第1のコイル403から発生した漏洩磁界が撮像素子201に到達する到達量を低減することができる。
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能であり、その趣旨を逸脱しない範囲で他の構成にも適用することができる。
例えば、上記実施形態では、撮像装置がデジタルビデオカメラである場合について説明したが、撮像装置はこれに限定されるものではない。撮像装置は、デジタルビデオカメラのほか、デジタルスチルカメラであってもよいし、デジタルビデオカメラ及びデジタルスチルカメラの両者の機能を有するものであってもよい。
また、上記実施形態では、撮像素子201に対してコイル403、503がそれぞれ前面側、背面側に配置されている場合について説明したが、撮像素子201に対するコイルの配置はこれに限定されるものではない。例えば、撮像素子201の上面側と下面側に撮像素子201を挟むようにコイル403、503がそれぞれ配置されている場合においても、上記実施形態と同様にシート状磁性体600を配置することができる。
また、上記実施形態では、第1の磁性体シート部601が磁性体ヨーク405に対向し、第2の磁性体シート部602が磁性体コア505に対向している場合について説明したが、このような場合に限定されるものではない。第1の磁性体シート部601が磁性体ヨーク405に対向しているか、第2の磁性体シート部602が磁性体コア505に対向していればよい。
また、上記実施形態では、撮像素子201を挟んで配置される第1のコイル403及び第2のコイル503として、ボイスコイルモータ406におけるコイル、及び冷却ファン500に用いられるDCブラシレスモータにおけるコイルについて説明した。しかしながら、撮像素子201を挟んで配置される第1及び第2のコイルはこれらに限定されるものではない。例えば、第1及び第2のコイルは、撮像素子に近接配置される、スイッチング電源回路の出力フィルタ部のインダクタ、シャッターを駆動するためのDCブラシモータにおけるコイル等であってもよい。