JP6537196B2 - 乗員保護装置 - Google Patents
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Description
シートベルトは、一般的に三点式であり、シートに着座した乗員の腰周りのラップ部、および上体前にたすき掛けされるショルダ部を有する。そして、衝突前にリトラクタでシートベルトを巻き取って弛みを減らし、衝突時にシートベルトの送り出しを規制する。これにより、衝突時にシートから前へ移動しようとする乗員の身体を、シートに着座した状態に保持するように作動できる。
フロントエアバッグは、乗員室においてシートの前に設けられるハンドルまたはダッシュボードに設けられ、シートへ向かって後向きに展開する。そして、衝突時に前へ倒れ込む乗員の上体を、展開したフロントエアバッグで支えて衝撃を吸収する。
たとえば前面衝突においても、衝突の衝撃によりシートに着座した乗員が前へ移動する可能性がある。そして、乗員の腰部がシートの着座位置から前へ滑って移動してしまうと、腰部を軸としてその周りで前へ倒れ込もうとする上体は、フロントエアバッグに近づいた状態から前へ倒れ込むことになる。この場合、フロントエアバッグと上体との接触状態は、腰部がシートの着座位置にある場合に想定していたものとは異なる。
特に、車両が構造物などに全面衝突して急に止まるような衝突形態では、乗員は前へ投げ出されるように滑って大きく移動する可能性がある。
その結果、衝突の際にシートに着座した乗員の腰部が前へ滑って移動することを抑制でき、乗員の上体を、前へ大きく滑っていない腰部の周りで前へ倒れるようにすることができる。乗員の上体は、膝部が押さえられることによりシートの着座位置に安定した腰部の周りで前へ倒れることができ、安定した所望の挙動で倒れることができる。そして、たとえばフロントエアバッグやシートベルトにより、倒れ込む上体の衝撃を好適に吸収することができる。たとえば衝突前に三点式のシートベルトについての腰周りを支えるラップ部が若干緩んでいたとしても、膝前エアバッグにより腰部が前へ滑って移動してしまうことを抑制でき、しかもその押さえている間にラップ部の緩みを取り除いてシートの着座位置において腰部をシートベルトで支持することができる。
しかも、膝前エアバッグは直接的には膝部を押さえており、腹部を押さえていない。これに対して、仮にたとえば衝突の際にシートに着座した乗員の腹部の中央部分のみを前から押さえた場合、腹部の中央部分は柔らかいので、乗員が前へ移動してしまうことを効果的に抑制することが難しい。しかも、押さえる力が強くなると、腹部に対して押さえつける力が直接的に強く作用してしまう。膝前エアバッグは、乗員の腰部が前へ滑って移動しないように強い力で、前から押さえることができる。
また、膝前エアバッグは、シートに着座した乗員の右膝部に右側から接触する右側傾斜面および左膝部に左側から接する左側傾斜面の中の少なくとも一方の傾斜面を有する。よって、乗員がたとえば左右両方の膝部の間を開く姿勢でシートに着座していたとしても、膝前エアバッグは、少なくとも一方の傾斜面により少なくとも一方の膝部を他方へ向かって押し当てて、左右両方の膝部を揃えた状態で膝部を前から押圧することができる。
特に、膝前エアバッグが、右側傾斜面および左側傾斜面の双方を向かい合わせに有し、後向きに展開する際に右側傾斜面と左側傾斜面との間に前記右膝部および前記左膝部を挟む、とよい。これにより、左右両方の膝部をシートの左右方向の中央に揃えることができ、前面衝突の際に腰部が滑って移動し難くなるように効果的に押さえることができる。
図1は、本発明の実施形態に係る乗員保護装置10が適用可能な自動車1の説明図である。
図1には、シートベルト19、フロントエアバッグ16が図示されている。
シートベルト19は、一般的に三点式である。三点式のシートベルト19は、シート4に着座した乗員の腰周りのラップ部、および上体前にたすき掛けされるショルダ部を有する。そして、衝突前に図示外のリトラクタでシートベルト19を巻き取ってたるみを減らし、さらに衝突時にシートベルト19の送り出しを規制する。これにより、衝突時にシート4から前へ移動しようとする乗員の身体をシート4に着座した状態に保持するように作動できる。
フロントエアバッグ16は、乗員室2においてシート4の前に設けられるハンドルまたはダッシュボード6に設けられ、シート4へ向かって後向きに展開する。そして、衝突時に前へ倒れ込む乗員の上体を、展開したフロントエアバッグ16で支えて衝撃を吸収できる。
しかしながら、このような乗員保護装置10を用いても、すべての衝突形態において乗員を適切に保護できる訳ではない。たとえば正面衝突であっても、少なくともフルラップ衝突、オフセット衝突、オブリーク衝突の衝突形態がある。そして、衝突の形態が違えば、衝突の際の車体3および乗員の身体に作用する衝撃力の大きさや向きが異なり、車体や乗員の挙動も異なる。
乗員がシート4に着座した状態で正面衝突が起きると、図2(A)に示すように、衝突の衝撃によりシート4に着座した乗員には相対的に前へ移動しようとする力が作用する。
この際に乗員がシートベルト19により押さえられていないとすると、図2(B)に示すように、乗員の腰部はシート4の着座位置から前へすべって移動する。
特に、車両が構造物などに全面衝突して急に止まるような衝突形態では、乗員は前へ投げ出されるように滑って大きく移動する可能性がある。
そして、乗員はたとえば膝部がダッシュボード6の下部に当たった状態で腰部は止まり、乗員の上体は、図2(C)に示すように、その位置の腰部を軸としてその周りで前へ倒れ込むことになる。
図2(C)でのフロントエアバッグ16に対する上体の接触状態は、図3と比較すれば明らかなように腰部が着座位置にある場合において想定したものとは異なる。乗員の上体は、フロントエアバッグ16に近づいた位置において前へ倒れ込んでいる。展開したフロントエアバッグ16と上体との接触状態は、想定したものから異なる。この場合、展開したフロントエアバッグ16により、適切に倒れ込んだ上体を支持して衝撃を吸収することができない可能性がある。
また、上体は腰部の移動が止まった後に短時間で急に前へ倒れることになる。
車外撮像センサ41は、たとえば車体3の前方を撮像する。これにより、たとえば走行中の車体3に対して前から近づく他の車体を画像として撮像することができる。
操舵アクチュエータ43は、ハンドルの替わりに、自動車1の操舵装置を駆動する。
ブレーキアクチュエータ44は、ブレーキペダルの替わりに、自動車1の制動装置を駆動する。
動力源45は、たとえばガソリンエンジン、電気モータである。
自動運転制御部42は、自動車1の走行を自動制御する。自動運転制御部42は、たとえば目的地までの走行経路情報にしたがって、操舵アクチュエータ43、ブレーキアクチュエータ44、および動力源45を制御する。また、自動運転制御部42は、車外撮像センサ41の画像に基づいて接近物を特定し、接近物との衝突を予想する。そして、接近物との衝突を予想した場合には、自動運転制御部42は、その衝突を回避するように操舵アクチュエータ43、ブレーキアクチュエータ44、および動力源45を制御する。
展開した膝前エアバッグ装置20は、シートと同等の左右幅で前後方向に沿って長尺に展開される基本展開部23と、基本展開部23の後端面の右端から後向きに突出して展開する右突出展開部24と、基本展開部23の後端面の左端から後向きに突出して展開する左突出展開部25と、を有する。そして、右突出展開部24には、シート4の中央側の傾斜面として、右側傾斜面26が形成され、左突出展開部25には、シート4の中央側の傾斜面として、左側傾斜面27が形成される。右側傾斜面26と左側傾斜面27とは、シート4の左右方向の中央に対して対称となる、前へ凹なV字形状を形成する。
この状態で、乗員保護制御部14は、たとえば車外撮像センサ41による車体3の前方の撮像画像、自動運転制御部42からの走行状態情報に基づいて、衝突の可能性を予想する。走行状態情報には、操舵アクチュエータ43の操舵量、ブレーキアクチュエータ44および動力源45による加減速量などがある。乗員保護制御部14は、これらの情報に基づいて車体3の進行経路を判断する。また、車体3の前方の撮像画像に基づいて進行経路上または近傍の対象物を特定する。乗員保護制御部14は、これらの情報に基づいて、対象物との正面衝突の可能性を判断する。なお、これらの判断を自動運転制御部42で実行し、乗員保護制御部14はその判断結果を自動運転制御部42から取得してもよい。
乗員保護制御では、乗員保護制御部14は、まず、図6(B)に示すように、膝前エアバッグ21を展開させる。乗員保護制御部14は、膝前エアバッグ装置20の膝前インフレータ22へ点火信号を出力する。これにより、膝前エアバッグ21は、前後方向に沿って展開を開始し、シート4に着座した乗員の右膝部および左膝部へ向かって展開する。膝前エアバッグ21は、右膝部および左膝部を、右側傾斜面26および左側傾斜面27によるV字形状において前から押さえられる。乗員の腰部は、右膝部および左膝部が膝前エアバッグ21の右側傾斜面26と左側傾斜面27との間に挟まれた状態で前から支えられることにより、シート4の着座位置から前へ移動し難くなる。
その結果、衝突の際にシート4に着座した乗員の腰部が前へ滑って移動することを抑制でき、乗員の上体を、前へ大きく滑っていない腰部の周りで前へ倒れるようにすることができる。乗員の上体は、左右両方の膝部が押さえられることによりシート4の着座位置に安定した腰部の周りで前へ倒れることができ、安定した所望の挙動で倒れることができる。そして、たとえばフロンドエアバッグやシートベルト19により、倒れ込む上体の衝撃を好適に吸収することができる。たとえば衝突前に三点式のシートベルト19についての腰周りを支えるラップ部が若干緩んでいたとしても、膝前エアバッグ21により腰部が前へ滑って移動してしまうことを抑制でき、しかもその押さえている間にラップ部の緩みを取り除いてシート4の着座位置において腰部をシートベルト19で支持することができる。
しかも、膝前エアバッグ21は直接的には両膝部を押さえており、腹部を押さえていない。これに対して、仮にたとえば衝突の際にシート4に着座した乗員の腹部の中央部分のみを前から押さえた場合、腹部の中央部分は柔らかいので、乗員が前へ移動してしまうことを効果的に抑制することが難しい。しかも、押さえる力が強くなると、腹部に対して押さえつける力が直接的に強く作用してしまう。膝前エアバッグ21は、乗員の腰部が前へ滑って移動しないように強い力で、前から押さえることができる。
次に、第2実施形態に係る乗員保護装置10について説明する。以下の説明では、主に第1実施形態との相違点について説明し、第1実施形態と重複する説明は省略する。
膝前エアバッグ21は、右側傾斜面26と左側傾斜面27との間に膝前接触面28を有する。膝前接触面28は、左右方向に延在して設けられ、前記右膝部および前記左膝部に前から接する。
そして、右側傾斜面26は、膝前接触面28に対して鈍角で傾斜して形成される。左側傾斜面27は、膝前接触面28に対して鈍角で傾斜して形成される。右側傾斜面26と左側傾斜面27とは、シート4の左右方向の中央に対して対称に形成される。
次に、第3実施形態に係る乗員保護装置10について説明する。以下の説明では、主に第1実施形態との相違点について説明し、第1実施形態と重複する説明は省略する。
図8において、右側傾斜面26と左側傾斜面27とは、膝前接触面28に対して異なる角度で傾斜して形成される。具体的には、右側傾斜面26と膝前接触面28との成す角度は、左側傾斜面27と膝前接触面28との成す角度より小さい鈍角となっている。
また、右側傾斜面26は、左側傾斜面27より前後方向に長く形成され、大きな面積に形成される。
このように、右側傾斜面26と左側傾斜面27とは、シート4の左右方向の中央に対して非対称に形成される。
次に、第4実施形態に係る乗員保護装置10について説明する。以下の説明では、主に第1実施形態との相違点について説明し、第1実施形態と重複する説明は省略する。
図9において、膝前エアバッグ21は、基本展開部23から後へ向かって展開して、シート4に着座した乗員の腰部と当たる後方展開部29を有する。
また、本実施形態では、基本展開部23から後へ向かって展開して、シート4に着座した乗員の腰部と当たる後方展開部29を有する。よって、乗員の左右両方の膝部とともに腰部を押さえて、乗員が前へ移動することをより一層抑制することができる。
この他にもたとえば、膝前エアバッグ21は、たとえば右側傾斜面26のみを有し、シートに着座した乗員の右膝部を右側から左へ押すようにしてもよい。これにより、左右両方の膝部を揃えた状態で膝部を前から押圧することができる。
Claims (4)
- 車両のシートに着座した乗員についての膝部の前方から前記膝部へ向けて後向きに展開して前記膝部を前から押圧する膝前エアバッグを有し、
前記膝前エアバッグは、
前記シートに着座した乗員の右膝部に右側から接触する右側傾斜面および左膝部に左側から接する左側傾斜面を有し、
前記右側傾斜面と前記左側傾斜面とは、非対称に形成され、
前記右側傾斜面と前記左側傾斜面の前記車両のドア側の接触面は、反対側の接触面より左右方向に対して小さな鈍角である、
乗員保護装置。 - 前記膝前エアバッグは、前記シートの左右方向中央に沿って展開する、
請求項1に記載の乗員保護装置。 - 前記膝前エアバッグは、シートの座面の高さ位置において展開する、
請求項1または2に記載の乗員保護装置。 - 前記膝前エアバッグは、
前後方向において前記シートに対応する幅で展開される基本展開部と、
前記基本展開部の後端面の右端から後向きに突出して展開して、前記右側傾斜面を形成する右突出展開部と、
前記基本展開部の後端面の左端から後向きに突出して展開して、前記左側傾斜面を形成する左突出展開部と、
前記基本展開部から後へ向かって展開して、前記シートに着座した乗員の腰部と当たる後方展開部と、
を有する、
請求項1から3のいずれか一項記載の乗員保護装置。
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