JP6535799B1 - 延伸樹脂膜の製造方法、偏光子の製造方法、および延伸樹脂膜の製造装置 - Google Patents

延伸樹脂膜の製造方法、偏光子の製造方法、および延伸樹脂膜の製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】外観不良の検出が容易である延伸樹脂膜の製造方法を提供する。【解決手段】本発明の延伸樹脂膜の製造方法は、長尺状の非吸水性フィルムの片側に吸水性の樹脂層が形成された積層体を搬送しながら、積層体に水中延伸処理と洗浄処理とをこの順に施すことにより、非吸水性フィルム上に延伸樹脂膜を形成する、延伸樹脂膜の製造方法であって、洗浄処理後の延伸樹脂膜の厚みに基づいて、延伸樹脂膜の外観不良を検出することを含む。【選択図】図1

Description

本発明は、延伸樹脂膜の製造方法、偏光子の製造方法、および延伸樹脂膜の製造装置に関する。
長尺状のフィルムの片側に樹脂層が形成された積層体を延伸することにより、樹脂層の厚みが非常に薄い場合であっても樹脂層を破断させることなく延伸し、厚みが薄い延伸樹脂膜を得る方法が知られている。このような延伸樹脂膜の一例として、ポリエステル系樹脂フィルムとポリビニルアルコール系樹脂層(PVA系樹脂層)との積層体を延伸および染色することにより、ポリエステル系樹脂フィルム上に偏光子を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、上記の方法によって得られる延伸樹脂膜は、外観不良の検出が容易ではない。
特開2001−343521号公報
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、外観不良の検出が容易である延伸樹脂膜の製造方法、そのような製造方法を用いた偏光子の製造方法、および延伸樹脂膜の製造装置を提供することにある。
本発明の延伸樹脂膜の製造方法は、長尺状の非吸水性フィルムの片側に吸水性の樹脂層が形成された積層体を搬送しながら、上記積層体に水中延伸処理と洗浄処理とをこの順に施すことにより、上記非吸水性フィルム上に延伸樹脂膜を形成する、延伸樹脂膜の製造方法であって、上記洗浄処理後の上記延伸樹脂膜の厚みに基づいて、上記延伸樹脂膜の外観不良を検出することを含む。
本発明の延伸樹脂膜の製造方法は、長尺状の非吸水性フィルムの片側に吸水性の樹脂層が形成された積層体を搬送しながら、上記積層体に水中延伸処理と洗浄処理とをこの順に施すことにより、上記非吸水性フィルム上に延伸樹脂膜を形成する、延伸樹脂膜の製造方法であって、上記洗浄処理後の上記延伸樹脂膜の水分率に基づいて、上記延伸樹脂膜の外観不良を検出することを含む。
1つの実施形態においては、上記洗浄処理の後に、上記積層体を搬送しながら上記延伸樹脂膜の厚みを非接触で測定することと、測定された上記延伸樹脂膜の厚みに基づいて、上記洗浄処理後の上記延伸樹脂膜の水分率を算出することと、をさらに含む。
本発明の別の局面によれば、偏光子の製造方法が提供される。この偏光子の製造方法は、上記の製造方法により、上記非吸水性フィルム上に偏光子を形成する、偏光子の製造方法であって、上記非吸水性フィルムがポリエステル系樹脂フィルムであり、上記樹脂層がポリビニルアルコール系樹脂層であり、上記ポリエステル系樹脂フィルムと上記ポリビニルアルコール系樹脂層との積層体に染色処理を施すことをさらに含む。
本発明の別の局面によれば、延伸樹脂膜の製造装置が提供される。この延伸樹脂膜の製造装置は、長尺状の非吸水性フィルムの片側に吸水性の樹脂層が形成された積層体を搬送しながら、上記積層体に処理を施すことにより、上記非吸水性フィルム上に延伸樹脂膜を形成する、延伸樹脂膜の製造装置であって、上記積層体を水中延伸する水中延伸処理部と、水中延伸の後に上記積層体を洗浄する洗浄処理部と、上記洗浄処理後の上記延伸樹脂膜の厚みまたは水分率に基づいて、上記延伸樹脂膜の外観不良を検出する検査部と、を含む。
本発明によれば、洗浄処理後の前記延伸樹脂膜の厚みまたは水分率に基づいて延伸樹脂膜の外観不良を検出することにより、外観不良を容易に検出することができる。
本発明の1つの実施形態に係る偏光子の製造工程を示す概略図である。 洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みと水分率との関係を示すグラフである。 洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みと得られる偏光子の外観不良レベルとの関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
A.延伸樹脂膜の製造方法
本発明の延伸樹脂膜の製造方法は、長尺状の非吸水性フィルムの片側に吸水性の樹脂層が形成された積層体を搬送しながら、積層体に水中延伸処理と洗浄処理とをこの順に施すことにより、非吸水性フィルム上に延伸樹脂膜を形成する、というものである。上記の製造方法は、洗浄処理後の延伸樹脂膜の厚みまたは水分率に基づいて、延伸樹脂膜の外観不良を検出することを含む。1つの実施形態においては、洗浄処理の後に、積層体を搬送しながら延伸樹脂膜の厚みを非接触で測定することと、測定された延伸樹脂膜の厚みに基づいて、洗浄処理後の延伸樹脂膜の水分率を算出することと、をさらに含む。上記の製造方法によれば、製造工程中で(インラインで)延伸樹脂膜の外観不良を容易に検出し得、さらには、外観不良が発生した場合に水中延伸処理工程などの前工程での処理条件を改善することにより、製造される延伸樹脂膜の品質を改善し得る。
非吸水性フィルムの吸水率は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは2%以下であり、特に好ましくは0.1%〜1%である。吸水率は、JIS K 7209−2000に準じて求められる値である。非吸水性フィルムの厚みは、好ましくは10μm〜200μmである。非吸水性フィルムとしては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切なフィルムを用いることができ、代表的には、熱可塑性樹脂により構成されたフィルムを用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。
吸水性の樹脂層の吸水率は、好ましくは25%以上であり、より好ましくは25%〜130%であり、特に好ましくは25%〜110%である。延伸処理前の吸水性の樹脂層の厚みは、好ましくは3μm〜20μmである。吸水性の樹脂層を構成する樹脂材料としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な樹脂材料を用いることができ、代表的には、PVA系樹脂を用いることができる。
本発明の延伸樹脂膜の製造方法は、偏光子の製造方法として利用することができる。以下では、延伸樹脂膜として偏光子を例に挙げて、偏光子の製造方法について説明する。
B.偏光子の製造方法
本発明の偏光子の製造方法は、長尺状のポリエステル系樹脂フィルムの片側にポリビニルアルコール系樹脂層(PVA系樹脂層)が形成された積層体を搬送しながら、積層体に染色処理を施すこと、および水中延伸処理と洗浄処理とをこの順に施すことにより、ポリエステル系樹脂フィルム上に偏光子を形成する、というものである。上記の製造方法は、洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みまたは水分率に基づいて、PVA系樹脂層の外観不良を検出することを含む。
本発明者らの検証によれば、従来の製造方法に比べて積層体の搬送速度を高めた場合、最終的に得られる偏光子(延伸樹脂膜)に外観不良(例えば、スジ状痕)が発生することがわかった。しかしながら、積層体を搬送しながら、インラインでPVA系樹脂層の外観不良を検出することは容易ではない。そこで、本発明者らは、更なる検証の結果、洗浄処理後のPVA系樹脂層の水分率と得られる偏光子の外観不良のレベルとの間に相関があることを発見した。これにより、洗浄処理後のPVA系樹脂層の水分率に基づいて、偏光子の外観不良を検出することができる。特に、洗浄処理後のPVA系樹脂層の水分率をインラインで測定することにより、インラインでPVA系樹脂層の外観不良を検出することができる。
インラインでPVA系樹脂層(延伸樹脂膜)の水分率を測定する場合、一般的には、IR水分率計等の非接触式の水分率計が用いられる。しかしながら、本発明者らの検証によれば、非接触式の水分率計を用いてインラインでPVA系樹脂層の水分率を測定する方法では、空気中の水分やPVA系樹脂層の表面に付着した水膜等の影響により、高精度で水分率を測定することができないことがわかった。そこで、本発明者らは、更なる検証の結果、図2に示すように、洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みとPVA系樹脂層の水分率との間に相関があることを発見した。これは、PVA系樹脂層が吸水することによる面内方向の寸法変化は非吸水性のポリエステル系樹脂フィルムによって拘束されており、PVA系樹脂層は、吸水量に応じて厚み方向に膨張することが原因のひとつであると考えられる。これにより、洗浄処理後の延伸樹脂膜の厚みに基づいて、偏光子の外観不良を検出することができる。特に、洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みをインラインで測定することにより、インラインでPVA系樹脂層の外観不良を検出することができる。なお、図2のグラフは、下記表1に示す様々な延伸条件(具体的には、延伸浴のホウ酸濃度)で積層体に水中延伸処理を施したときの、洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みおよび水分率のデータをプロットしたものである。グラフ中の近似曲線は、プロットデータから指数関数となるように最小二乗法で求めた近似曲線である。図2中の水分率は、乾燥重量法に基づき、以下の式により算出したものである。
PVA系樹脂層の水分率=(洗浄処理後のPVA系樹脂層の重量−乾燥後のPVA系樹脂層の重量)/乾燥後のPVA系樹脂層の重量
図1は、本発明の1つの実施形態に係る偏光子の製造工程を示す概略図である。本実施形態に係る偏光子の製造工程は、代表的には、ポリエステル系樹脂フィルムとPVA系樹脂層との積層体200を、繰り出し部101から繰り出し、搬送ロールによってホウ酸水溶液の浴110中に浸漬した後(膨潤処理)、二色性物質(ヨウ素)およびヨウ化カリウムの水溶液の浴120中に浸漬する(染色処理)。次いで、ホウ酸およびヨウ化カリウムの水溶液の浴130中に浸漬する(架橋処理)。次いで、積層体200を、ホウ酸水溶液の延伸浴140中に浸漬しながら、速比の異なるロールで縦方向(長手方向、搬送方向、MD方向)に張力を付与して延伸する(水中延伸処理)。次いで、水中延伸した積層体200を、ヨウ化カリウム水溶液の浴150中に浸漬して洗浄する(洗浄処理)。次いで、検査部160により、洗浄処理後の積層体200におけるPVA系樹脂層の厚みまたは水分率に基づいて、最終的に得られる偏光子の外観不良を検出する。次いで、オーブン170により積層体200を乾燥する(乾燥処理)ことにより、ポリエステル系樹脂フィルム上に偏光子が形成された光学積層体100が得られる。その後、得られた光学積層体100を巻き取り部180にて巻き取る。図示は省略するが、積層体200に膨潤処理を施す前に、空中延伸処理を施してもよい。なお、図1に示す製造工程は一例であり、上記の処理の回数、順序等は、特に限定されない。
B−1.積層体
ポリエステル系樹脂フィルムとPVA系樹脂層との積層体を作製する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。好ましくは、ポリエステル系樹脂フィルムの表面に、PVA系樹脂を含む塗布液を塗布し、乾燥することにより、ポリエステル系樹脂フィルム上にPVA系樹脂層を形成する。
塗布液の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)等が挙げられる。上記塗布液の塗布・乾燥温度は、好ましくは50℃以上である。
乾燥後のPVA系樹脂層の厚みは、好ましくは、3μm〜40μm、さらに好ましくは3μm〜20μmであり、特に好ましくは5μm〜15μmである。
PVA系樹脂層を形成する前に、ポリエステル系樹脂フィルムに表面処理(例えば、コロナ処理等)を施してもよいし、ポリエステル系樹脂フィルム上に易接着層を形成してもよい。このような処理を行うことにより、ポリエステル系樹脂フィルムとPVA系樹脂層との密着性を向上させることができる。
B−1−1.ポリエステル系樹脂フィルム
ポリエステル系樹脂フィルムの厚みは、好ましくは20μm〜300μm、より好ましくは50μm〜200μmである。20μm未満であると、PVA系樹脂層の形成が困難になるおそれがある。
ポリエステル系樹脂フィルムは、好ましくは、その吸水率が0.2%以上であり、さらに好ましくは0.3%以上である。ポリエステル系樹脂フィルムは、水を吸収し、水が可塑剤的な働きをして可塑化し得る。その結果、延伸応力を大幅に低下させることができ、高倍率に延伸することができる。一方、ポリエステル系樹脂フィルムの吸水率は、好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。このようなポリエステル系樹脂フィルムを用いることにより、製造時にポリエステル系樹脂フィルムの寸法安定性が著しく低下して、得られる偏光子の外観が悪化するなどの不具合を防止することができる。また、水中延伸時にポリエステル系樹脂フィルムが破断したり、ポリエステル系樹脂フィルムからPVA系樹脂層が剥離したりするのを防止することができる。
ポリエステル系樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは120℃以下である。このようなポリエステル系樹脂フィルムを用いることにより、PVA系樹脂層の結晶化を抑制しながら、積層体の延伸性を十分に確保することができる。さらに、水によるポリエステル系樹脂フィルムの可塑化と、水中延伸を良好に行うことを考慮すると、100℃以下、さらには90℃以下であることがより好ましい。一方、ポリエステル系樹脂フィルムのガラス転移温度は、好ましくは60℃以上である。このようなポリエステル系樹脂フィルムを用いることにより、上記PVA系樹脂を含む塗布液を塗布・乾燥する際に、ポリエステル系樹脂フィルムが変形(例えば、凹凸やタルミ、シワ等の発生)するなどの不具合を防止して、良好に積層体を作製することができる。また、PVA系樹脂層の延伸を、好適な温度(例えば、60℃程度)にて良好に行うことができる。なお、ポリエステル系樹脂フィルムのガラス転移温度は、例えば、構成材料に変性基を導入する、または、結晶化材料を用いて加熱することにより調整することができる。ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準じて求められる値である。
ポリエステル系樹脂フィルムを構成するエステル系樹脂として、1つの実施形態においては、非晶質の(結晶化していない)ポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましく用いられる。中でも、非晶性の(結晶化しにくい)ポリエチレンテレフタレート系樹脂が特に好ましく用いられる。非晶性のポリエチレンテレフタレート系樹脂の具体例としては、ジカルボン酸としてイソフタル酸および/またはシクロヘキサンジカルボン酸をさらに含む共重合体や、グリコールとしてシクロヘキサンジメタノールやジエチレングリコールをさらに含む共重合体が挙げられる。
ポリエステル系樹脂フィルムは、予め(PVA系樹脂層を形成する前)、延伸されていてもよい。1つの実施形態においては、長尺状のポリエステル系樹脂フィルムの横方向に延伸されている。横方向は、好ましくは、後述の積層体の延伸方向に直交する方向である。なお、本明細書において、「直交」とは、実質的に直交する場合も包含する。ここで、「実質的に直交」とは、90°±5.0°である場合を包含し、好ましくは90°±3.0°、さらに好ましくは90°±1.0°である。ポリエステル系樹脂フィルムの延伸温度は、ガラス転移温度(Tg)に対し、好ましくはTg−10℃〜Tg+50℃である。ポリエステル系樹脂フィルムの延伸倍率は、好ましくは1.5倍〜3.0倍である。ポリエステル系樹脂フィルムの延伸方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体的には、固定端延伸でもよいし、自由端延伸でもよい。延伸方式は、乾式でもよいし、湿式でもよい。ポリエステル系樹脂フィルムの延伸は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、上述の延伸倍率は、各段階の延伸倍率の積である。
B−1−2.PVA系樹脂を含む塗布液
上記塗布液は、代表的には、上記PVA系樹脂を溶媒に溶解させた溶液である。溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、各種グリコール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類が挙げられる。これらは単独で、または、二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、好ましくは、水である。溶液のPVA系樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部〜20重量部である。このような樹脂濃度であれば、ポリエステル系樹脂フィルムに密着した均一な塗布膜を形成することができる。
塗布液に、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、界面活性剤等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤が挙げられる。これらは、得られるPVA系樹脂層の均一性や染色性、延伸性をより一層向上させる目的で使用され得る。1つの実施形態においては、塗布液はハロゲン化物をさらに含む。ハロゲン化物としては、例えば、ヨウ化物および塩化ナトリウムが挙げられる。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、およびヨウ化リチウムが挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ヨウ化カリウムである。塗布液におけるハロゲン化物の含有量は、好ましくは、PVA系樹脂100重量部に対して5重量部〜20重量部である。これにより、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、PVA系樹脂層を液体に浸漬したときのポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。その結果、得られる偏光子の光学特性を向上し得る。
上記PVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコールおよびエチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%〜100モル%であり、好ましくは95.0モル%〜99.95モル%、さらに好ましくは99.0モル%〜99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光子が得られ得る。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択し得る。平均重合度は、通常1000〜10000であり、好ましくは1200〜4500、さらに好ましくは1500〜4300である。なお、平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
B−2.空中延伸処理
特に、高い光学特性を得るためには、乾式延伸(補助延伸)とホウ酸水中延伸を組み合わせる、2段延伸の方法が選択される。2段延伸のように、補助延伸を導入することにより、ポリエステル系樹脂フィルムの結晶化を抑制しながら延伸することができ、後のホウ酸水中延伸においてポリエステル系樹脂フィルムの過度の結晶化により延伸性が低下するという問題を解決し、積層体をより高倍率に延伸することができる。さらには、ポリエステル系樹脂フィルム上にPVA系樹脂を塗布する場合、ポリエステル系樹脂フィルムのガラス転移温度の影響を抑制するために、通常の金属ドラム上にPVA系樹脂を塗布する場合と比べて塗布温度を低くする必要があり、その結果、PVA系樹脂の結晶化が相対的に低くなり、十分な光学特性が得られない、という問題が生じ得る。これに対して、補助延伸を導入することにより、ポリエステル系樹脂フィルム上にPVA系樹脂を塗布する場合でも、PVA系樹脂の結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVA系樹脂の配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVA系樹脂の配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。
空中補助延伸の延伸方法は、固定端延伸(たとえば、テンター延伸機を用いて延伸する方法)でもよいし、自由端延伸(たとえば、周速の異なるロール間に積層体を通して一軸延伸する方法)でもよいが、高い光学特性を得るためには、自由端延伸が積極的に採用されうる。1つの実施形態においては、空中延伸処理は、上記積層体をその長手方向に搬送しながら、加熱ロール間の周速差により延伸する加熱ロール延伸工程を含む。空中延伸処理は、代表的には、ゾーン延伸工程と加熱ロール延伸工程とを含む。なお、ゾーン延伸工程と加熱ロール延伸工程の順序は限定されず、ゾーン延伸工程が先に行われてもよく、加熱ロール延伸工程が先に行われてもよい。ゾーン延伸工程は省略されてもよい。1つの実施形態においては、ゾーン延伸工程および加熱ロール延伸工程がこの順に行われる。また、別の実施形態では、テンター延伸機において、フィルム端部を把持し、テンター間の距離を流れ方向に広げることで延伸される(テンター間の距離の広がりが延伸倍率となる)。この時、幅方向(流れ方向に対して、垂直方向)のテンターの距離は、任意に近づくように設定される。好ましくは、流れ方向の延伸倍率に対して、自由端延伸により近くなるように設定されうる。自由端延伸の場合、 幅方向の収縮率=(1/延伸倍率)1/2で計算される。
空中補助延伸は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、延伸倍率は、各段階の延伸倍率の積である。空中補助延伸における延伸方向は、好ましくは、水中延伸の延伸方向と略同一である。
空中補助延伸における延伸倍率は、好ましくは2.0倍〜3.5倍である。空中補助延伸と水中延伸とを組み合わせた場合の最大延伸倍率は、積層体の元長に対して、好ましくは5.0倍以上、より好ましくは5.5倍以上、さらに好ましくは6.0倍以上である。本明細書において「最大延伸倍率」とは、積層体が破断する直前の延伸倍率をいい、別途、積層体が破断する延伸倍率を確認し、その値よりも0.2低い値をいう。
空中補助延伸の延伸温度は、好ましくはポリエステル系樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)以上であり、さらに好ましくはポリエステル系樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)+10℃以上、特に好ましくはTg+15℃以上である。一方、延伸温度の上限は、好ましくは170℃である。このような温度で延伸することで、PVA系樹脂の結晶化が急速に進むのを抑制して、当該結晶化による不具合(例えば、延伸によるPVA系樹脂層の配向を妨げる)を抑制することができる。
B−3.膨潤処理
必要に応じて、空中延伸処理の後、水中延伸処理や染色処理の前に、膨潤処理(不溶化処理)を施す。上記膨潤処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬することにより行う。膨潤処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与し、水に浸漬した時のPVAの配向低下を防止することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜4重量部である。膨潤浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜50℃である。
B−4.染色処理
上記染色処理は、代表的には、PVA系樹脂層をヨウ素で染色することにより行う。具体的には、PVA系樹脂層にヨウ素を吸着させることにより行う。当該吸着方法としては、例えば、ヨウ素を含む染色液にPVA系樹脂層(積層体)を浸漬させる方法、PVA系樹脂層に当該染色液を塗工する方法、当該染色液をPVA系樹脂層に噴霧する方法等が挙げられる。好ましくは、染色液(染色浴)に積層体を浸漬させる方法である。ヨウ素が良好に吸着し得るからである。
上記染色液は、好ましくは、ヨウ素水溶液である。ヨウ素の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.05重量部〜0.5重量部である。ヨウ素の水に対する溶解度を高めるため、ヨウ素水溶液にヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ヨウ化カリウムである。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜10重量部、より好ましくは0.3重量部〜5重量部である。染色液の染色時の液温は、PVA系樹脂の溶解を抑制するため、好ましくは20℃〜50℃である。染色液にPVA系樹脂層を浸漬させる場合、浸漬時間は、PVA系樹脂層の透過率を確保するため、好ましくは5秒〜5分であり、より好ましくは30秒〜90秒である。
染色条件(濃度、液温、浸漬時間)は、最終的に得られる偏光子に求められる光学特性(単体透過率および偏光度)に応じて適切に設定することができる。このような染色条件としては、例えば、染色液としてヨウ素水溶液を用い、ヨウ素水溶液におけるヨウ素およびヨウ化カリウムの含有量の比を、1:5〜1:20とする。ヨウ素水溶液におけるヨウ素およびヨウ化カリウムの含有量の比は、好ましくは1:5〜1:10である。これにより、上記のような光学特性を有する偏光子が得られ得る。
B−5.架橋処理
必要に応じて、染色処理の後、水中延伸処理の前に、架橋処理を施す。上記架橋処理は、代表的には、ホウ酸水溶液にPVA系樹脂層を浸漬させることにより行う。架橋処理を施すことにより、PVA系樹脂層に耐水性を付与し、後の水中延伸で、高温の水中へ浸漬した際のPVAの配向低下を防止することができる。当該ホウ酸水溶液の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜5重量部である。また、上記染色処理後に架橋処理を行う場合、さらに、ヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜5重量部である。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。架橋浴(ホウ酸水溶液)の液温は、好ましくは20℃〜50℃である。
B−6.水中延伸処理
水中延伸処理は、積層体を延伸浴に浸漬させて行う。水中延伸処理によれば、上記ポリエステル系樹脂フィルムやPVA系樹脂層のガラス転移温度(代表的には、80℃程度)よりも低い温度で延伸し得、PVA系樹脂層を、その結晶化を抑えながら、高倍率に延伸することができる。その結果、優れた光学特性を有する偏光子を製造することができる。
積層体の延伸方法は、任意の適切な方法を採用することができる。具体的には、固定端延伸でもよいし、自由端延伸(例えば、周速の異なるロール間に積層体を通して一軸延伸する方法)でもよい。好ましくは、自由端延伸が選択される。積層体の延伸は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、後述の積層体の延伸倍率(最大延伸倍率)は、各段階の延伸倍率の積である。
水中延伸は、好ましくは、ホウ酸水溶液中に積層体を浸漬させて行う(ホウ酸水中延伸)。延伸浴としてホウ酸水溶液を用いることで、PVA系樹脂層に、延伸時にかかる張力に耐える剛性と、水に溶解しない耐水性とを付与することができる。具体的には、ホウ酸は、水溶液中でテトラヒドロキシホウ酸アニオンを生成してPVA系樹脂と水素結合により架橋し得る。その結果、PVA系樹脂層に剛性と耐水性とを付与して、良好に延伸することができ、優れた光学特性を有する偏光子を製造することができる。
上記ホウ酸水溶液は、好ましくは、溶媒である水にホウ酸および/またはホウ酸塩を溶解させることにより得られる。ホウ酸濃度は、水100重量部に対して、好ましくは1重量部〜10重量部であり、より好ましくは2.5重量部〜6重量部であり、特に好ましくは3重量部〜5重量部である。ホウ酸濃度を1重量部以上とすることにより、PVA系樹脂層の溶解を効果的に抑制することができ、より高特性の偏光子を製造することができる。なお、ホウ酸またはホウ酸塩以外に、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等を溶媒に溶解して得られた水溶液も用いることができる。
好ましくは、上記延伸浴(ホウ酸水溶液)にヨウ化物を配合する。ヨウ化物を配合することにより、PVA系樹脂層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物の具体例は、上述のとおりである。ヨウ化物の濃度は、水100重量部に対して、好ましくは0.05重量部〜15重量部、より好ましくは0.5重量部〜8重量部である。
延伸温度(延伸浴の液温)は、好ましくは40℃〜85℃、より好ましくは60℃〜75℃である。このような温度であれば、PVA系樹脂層の溶解を抑制しながら高倍率に延伸することができる。具体的には、上述のように、ポリエステル系樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)は、PVA系樹脂層の形成との関係で、好ましくは60℃以上である。この場合、延伸温度が40℃を下回ると、水によるポリエステル系樹脂フィルムの可塑化を考慮しても、良好に延伸できないおそれがある。一方、延伸浴の温度が高温になるほど、PVA系樹脂層の溶解性が高くなり、優れた光学特性が得られないおそれがある。積層体の延伸浴への浸漬時間は、好ましくは15秒〜5分である。
水中延伸による延伸倍率は、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは3.0倍以上である。積層体の総延伸倍率は、積層体の元長に対して、好ましくは5.0倍以上であり、さらに好ましくは5.5倍以上である。このような高い延伸倍率を達成することにより、光学特性に極めて優れた偏光子を製造することができる。このような高い延伸倍率は、水中延伸方式(ホウ酸水中延伸)を採用することにより、達成し得る。
B−7.洗浄処理
洗浄処理は、代表的には、ヨウ化カリウム水溶液を入れた洗浄浴に積層体を浸漬することにより行う。ヨウ化カリウムの濃度は、好ましくは2重量%〜5重量%である。
B−8.PVA系樹脂層の厚み測定
洗浄処理後、積層体を搬送しながらPVA系樹脂層の厚みを非接触で測定する。PVA系樹脂層の厚みは、例えば、分光干渉計により測定することができる。厚みの測定頻度は、好ましくは15秒〜120秒に1回、より好ましくは30秒から90秒に1回である。図2のグラフに示されるPVA系樹脂層の厚みと水分率との関係を参照することにより、洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みからPVA系樹脂層の水分率を算出することができる。
B−9.乾燥処理
乾燥処理における乾燥温度は、好ましくは30℃〜100℃である。
C.偏光子
上記の製造方法により得られる偏光子は、実質的には、ヨウ素が吸着配向されたPVA系樹脂層である。偏光子の厚みは、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは7.5μm以下であり、特に好ましくは5μm以下である。一方、偏光子の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.5μm以上である。厚みが薄すぎると得られる偏光子の光学特性が低下するおそれがある。偏光子は、好ましくは、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、好ましくは40.0%以上、より好ましくは41.0%以上、さらに好ましくは42.0%以上である。偏光子の偏光度は、好ましくは99.8%以上、より好ましくは99.9%以上、さらに好ましくは99.95%以上である。
D.延伸樹脂膜の製造装置
本発明の実施形態による延伸樹脂膜の製造装置は、長尺状の非吸水性フィルムの片側に吸水性の樹脂層が形成された積層体を搬送しながら、積層体に処理を施すことにより、非吸水性フィルム上に延伸樹脂膜を形成する、延伸樹脂膜の製造装置である。この製造装置は、積層体を水中延伸する水中延伸処理部と、水中延伸の後に積層体を洗浄する洗浄処理部と、洗浄処理後の延伸樹脂膜の厚みまたは水分率に基づいて、延伸樹脂膜の外観不良を検出する検査部と、を含む。上記水中延伸処理部は、上記B−6項で説明した水中延伸処理を施し得る任意の適切な延伸装置である。上記洗浄処理部は、上記B−7項で説明した洗浄処理を施し得る任意の適切な洗浄装置(洗浄浴)である。検査部は、延伸樹脂膜の厚みまたは水分率と得られる偏光子の外観不良レベルとの関係が予めメモリーされており、洗浄処理後の延伸樹脂膜の厚みまたは水分率に基づいて偏光子の外観不良を検出する。上記製造装置は、さらに、上記B項で説明した各処理を実施するのに適した任意の適切な構成を含み得る。また、上記製造装置は、非接触式の膜厚計、および/または、洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みに基づいてPVA系樹脂層の水分率を算出する算出部を含み得る。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
(1)PVA系樹脂層の厚み
PVA系樹脂層の厚みを、光干渉膜厚計(オーシャンオプティクス社製、XUSB4)を用いて測定した。なお、ポリエステル系樹脂フィルム/PVA系樹脂層からなる積層体のポリエステル系樹脂フィルム側に光干渉膜厚計を配置し、PVA系樹脂層の厚みを測定した。
(2)PVA系樹脂層の水分率
洗浄処理後のPVA系樹脂層の水分率を、PVA系樹脂層の厚みおよび図2に示すグラフに基づいて求めた。
(3)偏光子の外観
実施例および比較例で得られた偏光子を目視で確認し、以下の基準で外観の良否を判断した。
○・・・スジ状痕が目視で確認されなかった、または、目視で確認されたが後工程でフィルムに貼り合せた状態ではスジ状痕は視認されなかった
△・・・スジ状痕が目視で確認されたが、後工程で貼り合せるフィルムによってスジ状痕が視認されなくなる場合と視認される場合とがあった
×・・・スジ状痕が目視ではっきりと確認され、かつ、後工程でフィルムに貼り合せた状態でスジ状痕が確認された
また、実施例および比較例で得られた偏光子を目視で確認し、スジ状痕のレベルに応じて0(スジ状痕なし)から8(大きなスジ状痕あり)までの数値付与し、外観不良レベルを数値化した。
[実施例1]
ポリエステル系樹脂フィルムとして、長尺状で、吸水率0.75%、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用いた。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ410」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加し、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
ポリエステル系樹脂フィルムの一方の面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を所定の搬送速度で搬送しながら、以下の各処理を施した。
第一に、積層体を、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.4倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の膨潤浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に40秒間浸漬させた(膨潤処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が約43%となるように濃度を調整しながら50秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に40秒間浸漬させた(架橋処理)。
次いで、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度3.6重量%)に50秒間浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
次いで、積層体を液温20℃のヨウ化カリウム水溶液(ヨウ化カリウム濃度2.8重量%)に5秒間浸漬させた(洗浄処理)。洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みを測定したところ、7.34μmであった。
その後、70℃に保たれたオーブン中で積層体を乾燥することにより、ポリエステル系樹脂フィルム上に形成された厚み5.50μmの偏光子を得た。さらに、同様の手順により、合計2つの偏光子を作製した。
得られた偏光子を上記(3)の評価に供した。結果を表2に示す。洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みと、外観不良レベルとの関係を図3に示す。
[実施例2]
積層体の搬送速度を実施例1の搬送速度の1.1倍としたこと以外は実施例1と同様にして偏光子を作製した。洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みは、7.95μmであった。
得られた偏光子を上記(3)の評価に供した。結果を表2に示す。また、洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みと、外観不良レベルとの関係を図3に示す。
[比較例1]
積層体の搬送速度を実施例1の搬送速度の1.2倍としたこと、膨潤浴の液温を45℃としたこと、水中延伸処理におけるホウ酸水溶液のホウ酸濃度を3.5重量%としたこと、および、洗浄処理におけるヨウ化カリウム水溶液のヨウ化カリウム濃度を4.0重量%としたこと以外は実施例1と同様にして偏光子を作製した。洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みは、8.24μmであった。さらに、同様の手順により、合計2つの偏光子を作製した。
得られた偏光子を上記(3)の評価に供した。結果を表2に示す。また、洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みと、外観不良レベルとの関係を図3に示す。
表2から明らかなように、洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みが厚いほど、PVA系樹脂層の水分率が高かった。また、洗浄処理後の厚み7.95μm以下である実施例の偏光子は、スジ状痕が発生しなかった。さらに、図3から明らかなように、洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みと外観不良レベルとの間には相関があった。また、外観不良レベルが0〜4の場合、OK(偏光子の外観:○)であり、外観不良レベルが4〜5の場合、グレー(偏光子の外観:△)であり、外観不良レベルが5〜8の場合、NG(偏光子の外観:×)であった。例えば、洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みが約8.25μm以上の場合、外観不良レベルが5以上となり、偏光子として実用に耐えないレベルであった。上記のとおり、洗浄処理後のPVA系樹脂層の厚みまたは水分率に基づいて、インラインで、スジ状痕などの外観不良を検出することができる。
本発明の延伸樹脂膜の製造方法は、画像表示装置に用いられる偏光子の製造に好適に用いられる。
160 膜厚測定部
200 積層体

Claims (4)

  1. 長尺状の非吸水性フィルムの片側に吸水性の樹脂層が形成された積層体を搬送しながら、前記積層体に水中延伸処理と洗浄処理とをこの順に施すことにより、前記非吸水性フィルム上に延伸樹脂膜を形成する、延伸樹脂膜の製造方法であって、
    前記洗浄処理後の前記延伸樹脂膜の厚みに基づいて水分率を算出し、算出された水分率に基づいて前記延伸樹脂膜の外観不良を検出することを含む、延伸樹脂膜の製造方法。
  2. 前記洗浄処理の後に、前記積層体を搬送しながら前記延伸樹脂膜の厚みを非接触で測定することをさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法により、前記非吸水性フィルム上に偏光子を形成する、偏光子の製造方法であって、
    前記非吸水性フィルムがポリエステル系樹脂フィルムであり、前記樹脂層がポリビニルアルコール系樹脂層であり、
    前記ポリエステル系樹脂フィルムと前記ポリビニルアルコール系樹脂層との積層体に染色処理を施すことをさらに含む、偏光子の製造方法。
  4. 長尺状の非吸水性フィルムの片側に吸水性の樹脂層が形成された積層体を搬送しながら、前記積層体に処理を施すことにより、前記非吸水性フィルム上に延伸樹脂膜を形成する、延伸樹脂膜の製造装置であって、
    前記積層体を水中延伸する水中延伸処理部と、
    水中延伸の後に前記積層体を洗浄する洗浄処理部と、
    前記洗浄処理後の前記延伸樹脂膜の水分率に基づいて、前記延伸樹脂膜の外観不良を検出する検査部と、を含む、延伸樹脂膜の製造装置。
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