以下、図面に基づいてこの発明による電力変換装置について説明する。
尚、各図面中において、同一符号は同一あるいは相当のものであることを示す。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る電力変換装置に搭載されるトランスを示す斜視図、図2は、図1に示されるトランスのコア用放熱プレートを取り外した状態を示す斜視図、図3は、図1に示されるトランスを示す分解斜視図、図4は、この発明の実施の形態1に係る電力変換装置に搭載されるトランスを構成するコイル体を示す斜視図、図5は、図4に示されるコイル体を示す分解斜視図、図6は、図4に示されるコイル体を構成する1次巻線を示す斜視図、図7は、図4に示されるコイル体を構成する2次巻線を示す斜視図、図8は、図4に示されるコイル体を構成する巻線間絶縁プレートを示す斜視図、図9は、図4に示されるコイル体を構成する巻線用放熱プレートを示す斜視図、図10は、図4に示されるコイル体における1次巻線、2次巻線および巻線間絶縁プレートが組み立てられた状態を示す斜視図、図11は、図4に示されるコイル体における1次巻線、2次巻線、巻線間絶縁プレートおよび巻線用放熱プレートが組み立てられた状態を示す斜視図である。図12Aは、図4に示されるコイル体の第3突起部周りを示す要部断面図、図12Bは、第1の実施態様のコイル体の第3突起部周りを示す要部断面図、図12Cは、第2の実施態様のコイル体の第3突起部周りを示す要部断面図である。図13は、図2のA−A矢視断面図である。
図1、図2および図3において、電磁誘導機器であるトランス1は、I型コア2とE型コア3とからなり、閉磁路を構成する磁性コアと、E型コア3の中脚部3aを囲むように配置されたコイル体4と、を備えている。
I型コア2とE型コア3は、フェライトなどの磁性材料により作製されている。E型コア3は、中脚部3aを下方からコイル体4の中央に設けられた中央孔4aに挿入してコイル体4に装着されている。I型コア2は、上方からコイル体4に装着されている。そして、I型コア2とE型コア3とが、粘着テープ11により締着固定されている、これにより、E型コア3の中脚部3aおよび側脚部3bとI型コア2とが突き合わされ、閉磁路が構成される。さらに、コア用金属部材であるコア用放熱プレート10が、I型コア2の上面に、放熱グリスもしくは接着剤(図示せず)を介して装着されている。コア用放熱プレート10は、設定された熱伝導性および剛性を有するアルミニウム、銅などの非磁性の金属板をプレス成形して作製されている。コア用放熱プレート10は、I型コア2上からI型コア2の長手方向に突出しており、その両突出端部には、折り曲げ部10aが設けられている。また、コア用放熱プレート10の平面部10bの領域には、設定された直径を有する穴部10cが複数設けられている。
コイル体4は、図5に示されるように、1次巻線5、2次巻線6、巻線間絶縁プレート7、巻線用放熱プレート8および成形樹脂9を備えている。コイル体4は、2次巻線6、巻線間絶縁プレート7、1次巻線5、巻線用放熱プレート8の順に積層された積層体を金型内に配置し、エポキシ樹脂などの絶縁性の封止材を金型内に充填硬化して作製される。これにより、積層された2次巻線6、巻線間絶縁プレート7、1次巻線5および巻線用放熱プレート8が、PPS、PET、エポキシ樹脂などの封止材の硬化体である成形樹脂9で充填され、一体化される。
1次巻線5および2次巻線6は、それぞれ、図6および図7に示されるように、設定された線幅および巻き数の1層の渦巻状のコイルに作製されている。つまり、1次巻線5および2次巻線6は、それぞれ、1層の渦巻状のコイルからなる1部品で構成されている。1次巻線5および2次巻線6は、断面矩形の巻線であり、平面方向に隣り合う線間に設定された隙間を有している。1次巻線5および2次巻線6の中央部には、E型コア3の中脚部3aが挿入される中央孔5a,6aが設けられている。1次巻線5および2次巻線6の端子部5b、6bは、1次巻線5および2次巻線6の外周端部および内周端部を、直角に折り曲げて作製されている。1次巻線5の平面方向に隣り合う線間の隙間の位置に、1次巻線5の板厚方向に貫通する第1穴部5cが複数設けられている。
ここで、1次巻線5および2次巻線6は、銅、アルミニウムなどの金属平板をプレス金型などにより打ち抜いて作製された板金である。1次巻線5および2次巻線6は、プレス金型による打ち抜きに代えて、金属平板にレーザー加工、エッチングなどを施して作製されてもよい。ここでは、トランス1は、1次巻線5より2次巻線6の巻き数が多い昇圧トランスとして構成されている。また、1次巻線5および2次巻線6は、材料の種類による電気抵抗率、板厚、線幅、巻き数などにより、設定された電気抵抗に調整されている。
絶縁部材である巻線間絶縁プレート7は、図8に示されるように、設定された絶縁性および強度を有するPPS、PET、エポキシ樹脂などの樹脂材料を用いて、設定された厚みに成形された平板である。巻線間絶縁プレート7の中央部には、E型コア3の中脚部3aが挿入される中央孔7aが設けられている。巻線間絶縁プレート7の両面には、1次巻線5の平面方向に隣り合うコイル間の隙間、および2次巻線6の平面方向に隣り合うコイル間の隙間に挿入される第1突起部7bが設けられている。第2突起部7cが、巻線間絶縁プレート7の両面から突出して、巻線間絶縁プレート7の中央孔7aの開口縁部に全周に渡って一続きに、さらに巻線間絶縁プレート7の外周縁部に全周に渡って一続きに設けられている。巻線間絶縁プレート7の両面に配置された1次巻線5と2次巻線6との間の沿面距離が設定された沿面距離となるように、第2突起部7cの高さが設定されている。第3突起部7dが、1次巻線5の第1穴部5cのそれぞれに対応するように巻線間絶縁プレート7の一面に複数設けられている。第3突起部7dは、第1穴部5cの穴径より小径の直径で、第1穴部5cから突き出る高さに設けられている。第4突起部7eが、巻線間絶縁プレート7の一面の中央孔7aの縁部に、1次巻線5を避けて、設けられている。貫通穴7fが第4突起部7eを貫通するように設けられている。
金属部材である巻線用放熱プレート8は、図9に示されるように、設定された熱伝導度、機械的強度、厚みを有するアルミニウム、銅などの非磁性の金属平板をプレス成形して作製されている。巻線用放熱プレート8には、E型コア3の中脚部3aを貫通させるための中央孔8aが設けられている。巻線用放熱プレート8は、中央孔8aを中心として、1周とならないように、切り欠き部8bが設けられている。すなわち、巻線用放熱プレート8は、C字状に形成されている。折り曲げ部8cが、巻線用放熱プレート8の相対する両側部に2つずつ設けられている。第2穴部8dが、1次巻線5の第1穴部5cと同等、もしくはそれ以上の穴径で、第1穴部5cのそれぞれに対応するように、巻線用放熱プレート8に複数設けられている。
コイル体4を組み立てるには、まず、図10に示されるように、1次巻線5が巻線間絶縁プレート7の一面に配置され、2次巻線6が巻線間絶縁プレート7の他面に配置される。このとき、1次巻線5の平面方向に隣り合うコイル間の隙間に第1突起部7bが挿入される。これにより、1次巻線5が位置決めされて巻線間絶縁プレート7に配置される。また、2次巻線6の平面方向に隣り合うコイル間の隙間に第1突起部7bが挿入される。これにより、2次巻線6が位置決めされて巻線間絶縁プレート7に配置される。さらに、2次巻線6の内周側の端子部6bが巻線間絶縁プレート7の第4突起部7eに形成された貫通穴7fから突き出ている。
ここで、1次巻線5および2次巻線6は、巻線間絶縁プレート7に設けられた突起部(図示せず)を用いた熱カシメ、接着剤を用いた接着などの接合手段により、巻線間絶縁プレート7に固定される。なお、成形樹脂9により1次巻線5、巻線間絶縁プレート7および2次巻線6の積層体を一体化する工程において、積層体を金型に載置した時に、1次巻線5および2次巻線6が自重により巻線間絶縁プレート7に移動を規制された状態に配置される場合には、1次巻線5および2次巻線6と巻線間絶縁プレート7との固定を省略してもよい。
ついで、図11に示されるように、巻線用放熱プレート8が1次巻線5上に重ねられる。第3突起部7dが、第2穴部8dのそれぞれに挿入される。これにより、巻線用放熱プレート8が、1次巻線5、巻線間絶縁プレート7および2次巻線6の積層体に対して平面方向において位置決めされる。
ついで、巻線用放熱プレート8、1次巻線5、巻線間絶縁プレート7および2次巻線6の積層体を金型(図示せず)内に配置し、絶縁樹脂が金型内に注入される。これにより、巻線用放熱プレート8、1次巻線5、巻線間絶縁プレート7および2次巻線6の積層体が成形樹脂9により一体化されたコイル体4が得られる。
このように作製されたコイル体4においては、図4に示されるように、折り曲げ部8cが、成形樹脂9の両側部から1次巻線5および2次巻線6の積層方向と直交する方向に突出する巻線用放熱プレート8の突出端部に2つずつ上記積層方向に折り曲げられて設けられている。コイル体4には、E型コア3の中脚部3aが挿入される中央孔4aが設けられている。巻線用放熱プレート8の上面である1次巻線5と反対側の面の一部が成形樹脂9から露出し、露出部4bを構成している。図13に示されるように、2次巻線6の下面である巻線間絶縁プレート7と反対側の面の一部が成形樹脂9から露出し、露出部4dを構成している。コイル体4には、成形樹脂9からなる一対のフランジ部4eが、中央孔4aを挟んで相対して形成されている。一対のフランジ部4eは、I型コア2およびE型コア3の位置決め、およびコイル体4、トランス1の筐体に対する高さ方向における位置決めとして機能する。
ここで、露出部4bは、樹脂成形時に、巻線用放熱プレート8の一部を金型に接触せることにより、形成される。露出部4dは、樹脂成形時に、2次巻線6の一部を金型に接触せることにより、形成される。そして、巻線用放熱プレート8を金型に接触せることにより、巻線用放熱プレート8の金型に対する上下方向の位置が決まる。また、第2穴部8dから露出する第3突起部7dが金型に接触することで、巻線間絶縁プレート7の金型に対する上下方向の位置が決まる。これにより、1次巻線5および2次巻線6の金型に対する上下方向の位置が決まる。なお、上下方向とは、巻線用放熱プレート8、1次巻線5、巻線間絶縁プレート7および2次巻線6の積層方向である。
このように、巻線間絶縁プレート7および巻線用放熱プレート8の上下方向の位置が、それぞれ、金型により決まる。したがって、巻線間絶縁プレート7と巻線用放熱プレート8とを直接接触させる必要はない。
また、コイル体4を構成する各部品の金型に対する上下方向の位置は決まるが、各部品の金型に対する平面方向の位置は決まらない。なお、平面方向とは、上下方向と直交する平面における方向である。そこで、巻線用放熱プレート8においては、第2穴部8dと異なる穴部(図示せず)を巻線用放熱プレート8に設け、突起部(図示せず)を金型に設け、突起部を当該穴部に挿入させることにより、巻線用放熱プレート8の金型に対する平面方向の位置を決めることができる。巻線間絶縁プレート7においては、穴部(図示せず)を金型に設け、1次巻線5および2次巻線6の端子部5b、6bを当該穴部に挿入させることで、1次巻線5および2次巻線6の金型に対する平面方向の位置が決まる。これにより、巻線間絶縁プレート7の金型に対する平面方向の位置が決まる。なお、巻線間絶縁プレート7においては、巻線間絶縁プレート7の平面方向の端部を金型に接触させるなどにより、巻線間絶縁プレート7の金型に対する平面方向の位置を決めてもよい。
コイル体4においては、成形機により金型内に注入された成形樹脂9が、巻線用放熱プレート8の第2穴部8dと巻線間絶縁プレート7の第3突起部7dとの間の隙間内に充填される。これにより、図12Aに示されるように、巻線間絶縁プレート7と1次巻線5と巻線用放熱プレート8との間に形成される隙間が成形樹脂9により埋められ、各構成部品が一体化される。そして、巻線間絶縁プレート7の第3突起部7dの上面と巻線用放熱プレート8の上面と成形樹脂9の上面とが段差のない状態、すなわち面一となっている。第3突起部7dと巻線用放熱プレート8とが直接接触していない。そこで、本構成は、図12A中矢印で示されるように、第3突起部7dと巻線用放熱プレート8とが接触している構成に比べて、1次巻線5と巻線用放熱プレート8との間の沿面距離を長くすることができる。これにより、本構成は、1次巻線5と巻線用放熱プレート8との間の絶縁距離を確保することができる。なお、第3突起部7dと巻線用放熱プレート8とが接触する場合では、1次巻線5と巻線用放熱プレート8との間の上下方向の隙間距離しか沿面距離が確保できない。
ここで、第3突起部7dの上面と巻線用放熱プレート8の上面とは、必ずしも面一である必要はない。例えば、図12Bに示される様に、第3突起部7dが第2穴部8d内の途中までしか挿入されない構成としてもよい。また、図示していないが、第3突起部7dが第2穴部8dに全く挿入されない構成としてもよい。すなわち、第3突起部7dの上面の高さが巻線用放熱プレート8の下面以下の高さであってもよい。これらの場合においても、図12Aに示される構成と同等の沿面距離が確保される。
また、図12Cに示されるように、巻線用放熱プレート8の上面の第2穴部8dの外周部に成形樹脂9の延長部9aを設けてもよい。この場合、図12Cに矢印で示されるように、沿面距離がさらに長くなり、1次巻線5と巻線用放熱プレート8との間の絶縁距離を長くすることができる。このように、図12Aおよび図12Bに示される構成において、1次巻線5と巻線用放熱プレート8との間の絶縁距離が不十分な場合には、図12Cの構成とすることで簡易に対応できる。さらに、延長部9aの設置範囲を調整することで、1次巻線5と巻線用放熱プレート8との間の絶縁距離を調整することができる。
つぎに、トランス1を組み立てるには、まず、図3に示されるように、一対のフランジ部4eを案内にして中脚部3aを中央孔4aに挿入して、E型コア3が下方からコイル体4に装着される。ついで、一対のフランジ部4eを案内にして、I型コア2が上方からコイル体4に装着される。ついで、図2に示されるように、E型コア3の中脚部3aと側脚部3bとがI型コア2に接した状態で、粘着テープ11をコアの長手方向に複数回巻き回して、I型コア2とE型コア3とが締着固定される。ついで、一対のフランジ部4eを案内にして、コア用放熱プレート10が上方から締着固定されたI型コア2とE型コア3との上に装着される。なお、コア用放熱プレート10を装着する際には、放熱グリス、接着剤(図示せず)などがI型コア2の上面に塗布される。これにより、図1に示されるトランス1が組み立てられる。
このように組み立てられたトランス1においては、図13に示されるように、コイル体4を構成する巻線間絶縁プレート7および2次巻線6の一部が成形樹脂9に覆われていない露出部4b,4dが設けられている。すなわち、コイル体4を構成する2次巻線6、巻線間絶縁プレート7、1次巻線5および巻線用放熱プレート8の積層体が、露出部4b,4dを除いて、成形樹脂9内に埋め込まれている。そこで、I型コア2およびE型コア3からなる磁性コアと巻線間絶縁プレート7とが直接接触することはない。
つぎに、トランス1が搭載される電力変換装置12について説明する。図14は、この発明の実施の形態1に係る電力変換装置を示す分解斜視図、図15は、この発明の実施の形態1に係る電力変換装置においてトランスが筐体に搭載された状態を示す斜視図、図16は、図15のB−B矢視断面図、図17は、この発明の実施の形態1に係る電力変換装置においてトランスを筐体に搭載する方法を説明する斜視図である。なお、図15および図17では、トランスを除く部品が省略されている。
図14において、電力変換装置12は、上部を開口とする筐体13と、筐体13にねじなどにより固定されて筐体13の上部開口を塞ぎ、筐体13内を密閉構造とする蓋22と、を有する。トランス1が、筐体13の内底面13gに設けられた小部屋壁13a内に搭載される。フィルタ回路部17、コンデンサ部18、リアクトル部19などの部品が、筐体13の内底面13gに搭載されている。冷媒流路部13dが、トランス1およびリアクトル部19を取り囲むように筐体13の内底面13gに配置されている。冷媒流路部13dには、冷媒供給パイプ13e1と冷媒排出パイプ13e2とが接続されている。冷媒流路部13dの上部には、複数個のスイッチング素子20が搭載されている。筐体13内に搭載された部品の上部には、部品間の配線および電力変換装置12の制御を実施する制御基板部21が搭載される。各部品の端子が、制御基板部21内のスルーホール(図示せず)内に挿入され、半田付けなどにより接続、配線される。
このように構成された電力変換装置12は、例えば、トランス1の出力電力を外部機器に供給するコンバータとして機能する。主要の発熱部品であるトランス1およびリアクトル部19を取り囲むように冷媒流路部13dが配置されている。そこで、トランス1およびリアクトル部19より発生した熱損失が、両側の冷媒流路部13dを流れる冷媒を介して効率良く放熱、冷却される。さらに、スイッチング素子20により発生した熱損失が、冷媒流路部13dを流れる冷媒を介して放熱される。これにより、電力変換装置12の小型化、軽量化および低コスト化が実現可能となる。
ここで、筐体13は、設定された強度および熱伝導度を有する金属材料、例えばアルミニウムのダイカスト(鋳造品)又は切削品により構成される。冷媒流路部13dが、筐体13の内底面13gに一体に設けられている。さらに、小部屋壁13a、突起部13bおよび凸部13cが、筐体13の内底面13gに一体に成形されて、設けられている。小部屋壁13aは、図17に示されるように、トランス1の外形形状に適合する内形形状の枠状に形成されている。突起部13bは、トランス1を固定するための固定部材14が締着固定可能に、小部屋壁13aの外側に配置されている。凸部13cは、小部屋壁13a内に搭載されたコイル体4の2次巻線6の露出部4dと相対する位置に配置されている。凸部13cの筐体13の内底面13gからの突出高さは、露出部4dと凸部13cとの間に設定された隙間が形成されるように、設定されている。
トランス1を筐体13に搭載するには、まず、図17に示されるように、トランス1が上方から小部屋壁13a内に挿入される。ついで、ディスペンサ装置などにより、樹脂部材であるポッティング樹脂材16が小部屋壁13a内に充填され、設定された硬化温度、効果時間にて硬化される。これにより、ポッティング樹脂材16が、トランス1と小部屋壁13aとの間の隙間に充填・硬化される。固定部材14を上方からコア用放熱プレート10の平面部10bにあてがい、ねじ15により固定部14aが突起部13bの上面部に締着固定される。これにより、図15に示されるように、トランス1が筐体13内に搭載される。
1次巻線5、2次巻線6、I型コア2およびE型コア3と小部屋壁13aとの隙間は、コイル体4と筐体13の構造により決定される。例えば、コイル体4に位置決め用の樹脂ピン(図示せず)を成形樹脂9で設け、筐体13に樹脂ピンが挿入される位置決め用穴(図示せず)を設け、上記樹脂ピンを挿入することで位置決めを行ってもよい。なお、I型コア2とE型コア3とからなる磁性コアがコイル体4に固定されていないので、E型コア3が筐体13の内底面13gに接触する構成であってもよい。
固定部材14は、凸状の湾曲部14bと、湾曲部14bの両端に配置された一対の固定部14aと、を有し、ステンレス、鉄などのばね性、すなわち弾性を有する金属平板をプレス成形して作製される。固定部材14は、湾曲部14bをコア用放熱プレート10の平面部10bに向けて配置されている。そこで、固定部14aが突起部13bに締着固定されることにより、湾曲部14bが弾性変形する。この弾性変形した湾曲部14bの弾性力が押圧荷重となり、磁性コアおよびトランス1が筐体13に固定される。なお、本実施の形態では、固定部材14の設置領域は、上方から見て、コア用放熱プレート10、すなわちI型コア2の設置領域内に限定されているが、上記領域以外の部分に及んでも実現可能である。
コア用放熱プレート10の折り曲げ部10aの先端側が、図16に示されるように、ポッティング樹脂材16内に埋め込まれている。同様に、巻線用放熱プレート8の折り曲げ部8cの先端側が、ポッティング樹脂材16内に埋め込まれている。これにより、コア用放熱プレート10および巻線用放熱プレート8がポッティング樹脂材16に接続される。
巻線においては、1次巻線5は、成形樹脂9、巻線用放熱プレート8およびポッティング樹脂材16を介して筐体13に接続されている。ここで、成形樹脂9、巻線用放熱プレート8およびポッティング樹脂材16が、1次巻線5と筐体13とを接続する接続部材となる。これにより、1次巻線5−成形樹脂9−巻線用放熱プレート8−ポッティング樹脂材16−筐体13からなる1次巻線放熱経路が構成される。また、2次巻線6は、露出部4dと凸部13cとの間の隙間に充填されたポッティング樹脂材16を介して筐体13に接続されている。ここで、ポッティング樹脂材16が、2次巻線6と筐体13とを接続する接続部材となる。これにより、2次巻線6−ポッティング樹脂材16−筐体13からなる2次巻線放熱経路が構成される。
磁性コアにおいては、I型コア2は、コア用放熱プレート10およびポッティング樹脂材16を介して筐体13に接続されている。また、I型コア2は、コア用放熱プレート10および固定部材14を介して筐体13に接続されている。これにより、I型コア2−コア用放熱プレート10−ポッティング樹脂材16−筐体13からなる放熱経路と、I型コア2−コア用放熱プレート10−固定部材14−筐体13からなる放熱経路が構成される。E型コア3が筐体13の内底面13gに接触している場合には、E型コア3は、筐体13に直接接続されている。これにより、E型コア3−筐体13からなる放熱経路が構成される。E型コア3が筐体13の内底面13gに接触していない場合には、E型コア3は、E型コア3と筐体13の内底面13gとの間の隙間に充填されているポッティング樹脂材16を介して筐体13に接続されている。これにより、E型コア3−ポッティング樹脂材16−筐体13からなる放熱経路が構成される。
このように構成されるI型コア2、E型コア3、1次巻線5および2次巻線6の放熱経路は、互いに独立した放熱経路となる。
ポッティング樹脂材16は、設定された熱伝導性、絶縁性および硬度を有したシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂材料で構成されている。小部屋壁13a内におけるポッティング樹脂材16の充填高さは、図16に示されるように、コイル体4の上部までを完全に埋め込まない、E型コアとI型コアの突合せ面より下となる高さ、具体的にはI型コア2とポッティング樹脂材16とが接触せず、I型コア2とポッティング樹脂材16との間に空間を有する高さに制約されている。
実施の形態1によれば、トランス1を構成する、1次巻線5および2次巻線6からなる巻線と、I型コア2およびE型コア3からなる磁性コアとが、それぞれ、筐体13に対して接続経路を有している。これにより、巻線および磁性コアにおける放熱性が高くなり、電力変換装置12の駆動時、巻線および磁性コアで発生する熱損失を効率良く、筐体13に放熱することができる。その結果、トランス1の小型・軽量化、低コスト化が図られ、電力変換装置12の小型・軽量化、低コスト化が図られる。
トランス1は、1次巻線5と2次巻線6との積層方向が筐体13の内底面13gに直交するように筐体13内に配置されている。2次巻線6は、筐体13の内底面13gと相対している。そこで、2次巻線6は、ポッティング樹脂材16を介して筐体13と接続されている。つまり、2次巻線6−ポッティング樹脂材16−筐体13からなる2次巻線放熱経路が構成される。この2次巻線放熱経路は短いので、2次巻線6で発生した熱損失が筐体13に効率的に放熱される。一方、1次巻線5は、筐体13の内底面13gと相対していない。しかし、1次巻線5は、成形樹脂9、巻線用放熱プレート8およびポッティング樹脂材16を介して筐体13と接続されている。つまり、1次巻線5−成形樹脂9−巻線用放熱プレート8−ポッティング樹脂材16−筐体13からなる1次巻線放熱経路が構成される。そして、1次巻線5と巻線用放熱プレート8との間に成形樹脂9が充填されているので、1次巻線5と巻線用放熱プレート8との間の熱抵抗が小さくなる。また、1次巻線5から筐体13に至る1次巻線放熱経路中には、金属部材である巻線用放熱プレート8が存在しているので、1次巻線放熱経路の熱抵抗が小さくなる。そこで、1次巻線5で発生した熱損失が筐体13に効率的に放熱される。このように、1次巻線5および2次巻線6で発生した熱損失が効率的に放熱されるので、電力変換装置12の低背小型化が実現される。さらに、1次巻線放熱経路と2次巻線放熱経路とが、互いに独立している。そこで、1次巻線5と2次巻線6との間での熱干渉の影響が抑制され、1次巻線5および2次巻線6の放熱性が高められる。
また、I型コア2、E型コア3、1次巻線5および2次巻線6が、それぞれ、独立した放熱経路を保有している。これにより、各コアでの放熱性を高めることができ、更に各部品間での熱干渉の影響が抑制されるので、熱干渉の観点からも、各部品の放熱性が高められる。
また、1次巻線5から筐体13に至る1次巻線放熱経路には、成形樹脂9および巻線用放熱プレート8が存在する。そこで、成形樹脂9の厚み、熱伝導率(樹脂材料)を変更、もしくは巻線用放熱プレート8の厚み、幅、熱伝導率(材質)を変更させることにより、1次巻線5の放熱性の度合いを容易に調整することができる。これにより、トランス1の製品管理および製品開発・設計が容易となる。また、管理・開発・設計面で容易になることから、開発期間短縮、開発費・管理費削減が可能となる。また、1次巻線5と巻線用放熱プレート8とが、成形樹脂9により接合されて、一体化されている。そこで、特許文献2のように空気層が介在する懸念がなく、熱抵抗の増大を抑制することができる。その結果、1次巻線5から発生した熱損失を効率的に筐体13に放熱することができる。これにより、トランス1の小型化が可能となり、電力変換装置12の小型軽量化、低コスト化が実現される。
さらに、コイル体4を構成する巻線用放熱プレート8は、E型コア3の中脚部3aに対して、1周とならないように、切り欠き部8bが設けられている。これにより、1次巻線5の電力が巻線用放熱プレート8に電送されるワンターンショートを防止することができる。その結果、トランス1および電力変換装置12を安定的に駆動させることができる。
また、1次巻線5および2次巻線6は、金属平板をプレス金型などにより打抜いて作製された板金であり、断面が矩形の、かつ平面方向において隣り合う金属間に隙間を有する1層の渦巻状のコイルに構成されている。トランス1の巻線部は、板金で作製された1次巻線5と2次巻線6とを積層配置して構成されている。そこで、特許文献1のように丸線をボビンに複数層巻回させる従来構成に比べて、巻線部での薄型化が可能となり、トランス1の低背化が実現される。その結果、トランス1を含む電力変換装置12の薄型化が可能となる。これにより、電力変換装置12が電気自動車内に搭載される場合において、車内搭載時におけるレイアウト自由度を高めることができ、車両における居住スペース拡大を実現できる。
また、1次巻線5および2次巻線6は、いずれも1層の渦巻状のコイルに構成された巻線である。トランス1の巻線部は、1層の巻線を積層して構成されている。そこで、トランス1は、従来のボビン構成のように、丸線を複数層巻回させて構成されたトランスに比べ、巻線部の内部に熱が籠りにくくなり、巻線部の放熱性を高めることができる。また、積層される1次巻線5および2次巻線6が、それぞれ、1層の渦巻状のコイルに構成された巻線であるので、積層方向における高さのバラツキが抑制され、漏れインダクタンス、巻線での熱損失、電気特性、および放熱特性が安定化される。これにより、トランス1および電力変換装置12の小型化・高効率化・低コスト化が実現できると同時に特性、品質管理も容易となる。
また、コイル体4は、1次巻線5および2次巻線6をその他の部品とともに成形樹脂9により一体化して構成されている。これにより、従来のボビン構成のように、導線を複数層巻回させて構成されるコイル体に比べて、コイル体4を容易に製造でき、加工時間および加工費用を低減することができる。
また、1次巻線5と2次巻線6の断面は、一般的に使用される丸線の円形状ではなく、矩形であるので、1次巻線5と2次巻線6とが相対する表面積が大きくなる。これにより、トランス1の巻線に高周波の矩形波などの交流電流が流れる場合において、表皮効果に伴う電流が流れる断面積を大きくすることができる。そこで、電流密度を丸線よりも低減させることができ、高周波領域における電気抵抗を低減することができる。その結果、1次巻線5および2次巻線6での損失密度を低減することができ、1次巻線5および2次巻線6の熱損失を丸線で構成する巻線よりも大幅に低減させることができる。そこで、トランス1および電力変換装置12の高電力効率化による電力エネルギー消費量の削減、小型軽量化、低コスト化を実現できる。また、巻線の断面が矩形であることから、1次巻線5と2次巻線6との間で対面する表面積(幅)を大きくでき、低損失化の状態を維持しつつ板厚を低減することができる。これにより、断面が矩形の巻線を用いたものは、丸線で構成したものに対して、トランス1および電力変換装置12の高さを低減することができる。また、巻線の隣り合う金属間に隙間を有しているので、1次巻線5および2次巻線6間に発生する磁界を低減させることができる。これにより、巻線で発生する熱損失を更に低減させることができ、電力変換装置12のさらなる高効率化、小型化、低コスト化が図られる。
また、1次巻線5および2次巻線6は、プレス金型で打ち抜いて作製された板金で構成されているので、丸線を渦巻き状に巻回させて構成される巻線および特許文献1のように丸線をボビンに複数層巻回させる従来構成に比べ、寸法精度を大幅に向上させることができる。それにより、1次巻線5および2次巻線6における構造特性、放熱特性、電気特性のバラツキを抑制することができ、製品管理も容易にすることができる。また、原材料が金属平板であり、設備も巻線機などの特殊設備を必要としないので、巻線が丸線で構成される場合に比べ、トランス1および電力変換装置12の低コスト化が図られる。また、巻線を丸線で構成する場合、寸法精度を確保するために、テープなどにより巻線を束ねる工程が必要である。しかし、巻線を板金で構成する場合、プレス金型で打ち抜かれた段階で寸法精度が確保されているので、束ねる工程を削除することができ、作業性および工数削減に伴う低コスト化が図られる。また、巻線を板金で構成する場合、金型形状を変更することにより板幅を変更することが可能となるので、巻線の放熱特性および電気効率などの電気特性を容易に調整することができる。また、端子部5b、6bは、1次巻線5および2次巻線6のそれぞれの内周部と外周部とに配置されている。そこで、内周側の端子部5b、6bに別の金属材料を接合して外周側に引き回す必要がない。また、板金の一部を折り曲げて、端子部5b、6bを構成できる。これにより、1次巻線5および2次巻線6の低コスト化が図れるとともに、1次巻線5および2次巻線6を作製する作業性が向上される。
また、1次巻線5および2次巻線6は、巻線間絶縁プレート7を挟む形態で積層配置されている。これにより、1次巻線5と2次巻線6との間の絶縁性を容易に確保することができ、電力変換装置12を安定して駆動させることができる。また、巻線間絶縁プレート7の内周縁部および外周縁部に全周にわたって設定された高さを有する第2突起部7cが設けられている。そこで、巻線間絶縁プレート7を特許文献2のように、絶縁距離を確保するために平面方向に大型化させることなく、第2突起部7cの高さを調整することで、1次巻線5と2次巻線6との間における沿面方向の必要な絶縁距離を確保することができる。これにより、トランス1および電力変換装置12の小型化を図ることができる。なお、第2突起部7cにおいては、必ずしも内周縁部および外周縁部に全周にわたって一続きに設ける必要はなく、絶縁距離が不要な箇所では部分的に排除しても成立可能である。
また、1次巻線5および2次巻線6の隣り合う金属間の隙間に挿入可能な第1突起部7bが巻線間絶縁プレート7の両面に形成されている。これにより、1次巻線5および2次巻線6を巻線間絶縁プレート7の両面に位置決めされた状態で装着でき、1次巻線5および2次巻線6の平面方向での位置ずれが防止される。その結果、コイル体4の組立作業性が向上され、コイル体4の寸法精度が向上される。また、2次巻線6の端子部6bが巻線間絶縁プレート7に設けられた第4突起部7eの貫通穴7fに挿入されている。これにより、2次巻線6の端子部6bと1次巻線5との間の沿面距離を確保することができるとともに、巻線間絶縁プレート7に対する2次巻線6の装着作業性を向上させることができる。なお、第4突起部7eの突起高さを変更することにより、2次巻線6の端子部6bと1次巻線5との間の沿面距離を容易に調整することも可能である。
また、第3突起部7dが、巻線間絶縁プレート7に設けられている。第3突起部7dより大径の第1穴部5cおよび第2穴部8dが、1次巻線5および巻線用放熱プレート8の第3突起部7dに対応する位置に設けられている。そして、1次巻線5および巻線用放熱プレート8が、巻線間絶縁プレート7の上に積層された際に、第3突起部7dが、1次巻線5および巻線用放熱プレート8と接触することなく、第1穴部5cおよび第2穴部8d内に挿入されている。これにより、1次巻線5と巻線用放熱プレート8との間の沿面距離が確保され、1次巻線5と巻線用放熱プレート8との間の絶縁破壊を防止することができる。その結果、トランス1および電力変換装置12の駆動を安定化させることができる。
トランス1が、筐体13の小部屋壁13a内に格納されている。ポッティング樹脂材16が、小部屋壁13a内に、巻線用放熱プレート8を完全に埋め込む高さではなく、巻線用放熱プレート8の一部が露出する充填高さに充填されている。上述通り、1次巻線5と巻線用放熱プレート8との間の沿面距離が確保されているので、巻線用放熱プレート8の一部が露出していても、1次巻線5と筐体13との間の絶縁破壊を防止することができる。なお、ポッティング樹脂材16の充填高さが、巻線用放熱プレート8が完全に埋め込まれる高さとなる場合、巻線間絶縁プレート7と巻線用放熱プレート8とを直接接触させてもよい。
また、トランス1において、I型コア2およびE型コア3の磁性コアと巻線間絶縁プレート7との間には、成形樹脂9が介在しており、磁性コアと巻線間絶縁プレート7とが直接接触しない。これにより、磁性コアと1次巻線5および2次巻線6とが確実に絶縁され、電力変換装置12の駆動を安定化させることができる。また、巻線間絶縁プレート7の磁性コアから離れた側の両端部においても、巻線間絶縁プレート7が露出することなく、成形樹脂9により覆われている。これにより、トランス1が筐体13の小部屋壁13a内に格納される場合においても、1次巻線5および2次巻線6と筐体13とが確実に絶縁される。なお、巻線間絶縁プレート7の第2突起部7cの突起高さを調整することで、各巻線と磁性コアとの間、および各巻線と筐体13との間の絶縁距離を確保してもよい。この場合、巻線間絶縁プレート7の磁性コア側の両端部、および磁性コアから離れた側の両端部を成形樹脂9により覆う構成とする必要がない。これにより、巻線間絶縁プレート7の磁性コア側の両端部、および磁性コアから離れた側の両端部を覆う成形樹脂9がない分、トランス1の平面方向の面積を低減することができ、電力変換装置12の小型化が図られる。
また、コイル体4において、磁性コアを挟むように、一対のフランジ部4eが成形樹脂9に設けられている。これにより、磁性コアおよびコア用放熱プレート10をコイル体4に装着させる際、フランジ部4eを平面方向における位置決めとして用いることができる。その結果、トランスとしての特性バラツキを抑制でき、磁性コアおよびコア用放熱プレート10の装着作業性を向上させることができる。さらに、フランジ部4eの下面を筐体13の内底面13gに接触させることで、コイル体4およびトランス1の上下方向の位置決めを実施することが可能となる。さらに、フランジ部4eの高さを調整することにより、磁性コアと、各巻線の端子部5b、6bとの間の絶縁距離を容易に確保、調整することができる。
なお、コイル体4において、成形樹脂9に設けられたフランジ部4eに代えて、一対のフランジ部を、磁性コアを挟むように、巻線間絶縁プレート7に設けてもよい。
また、図4に示すように、露出部4bがコイル体4に設けられているので、成形樹脂9の成形時に、金型を巻線用放熱プレート8に接触させることが可能となる。これにより、上下方向における巻線用放熱プレート8の位置を高精度に決めることができる。さらに、成形樹脂9を充填する際、溶融樹脂の成形圧力により巻線用放熱プレート8が変形することを防止することができる。また、第2穴部8dから巻線間絶縁プレート7の第3突起部7dが露出するように構成されているので、コイル体4の製造時、金型を突出した第3突起部7dに接触させることが可能となる。これにより、上下方向における巻線間絶縁プレート7の位置を高精度に決めることができる。さらに、上下方向における1次巻線5および2次巻線6の位置を高精度に決めることができる。このとき、巻線間絶縁プレート7の第3突起部7dが金型に接触するので、成形樹脂9を充填する際、巻線間絶縁プレート7、1次巻線5および2次巻線6の変形を抑制することができる。
なお、コイル体4の上面には、大きな面積の露出部4bが4個設けられているが、露出部4bの形状、構成は、これに限定されず、例えば、小さな面積の穴を多数個所設けてもよい。また、第3突起部7dが断面円形に構成されているが、これに限定されず、例えば、断面矩形でもよい。
また、図13に示されるように、コイル体4には、2次巻線6の一部が成形樹脂9から露出する露出部4dが設けられている。筐体13には、露出部4dと相対する箇所に凸部13cが設けられている。さらに、ポッティング樹脂材16が、凸部13cと2次巻線6の露出部4dとの間の隙間に充填されている。これにより、2次巻線6が、露出部4d−ポッティング樹脂材16−筐体13の2次巻線放熱経路を介して筐体13に接続される。そこで、2次巻線6から発生した熱損失をポッティング樹脂材16を介して筐体13に効率的に放熱することができる。さらに、コイル体4に露出部4dがあることから、成形樹脂9の成形時に、露出部4dに金型を接触させることができる。その結果、成形樹脂9の充填時における成形圧力に起因する、2次巻線6、巻線間絶縁プレート7および1次巻線5の変形の発生を抑制することができる。
なお、コイル体4において、露出部4dがなくても、2次巻線6の放熱性が確保できる場合には、露出部4dを省略し、2次巻線6を成形樹脂9により完全に覆ってもよい。この場合、2次巻線6で発生する熱損失は、2次巻線6−成形樹脂9−ポッティング樹脂材16−筐体13からなる2次巻線放熱経路を介して筐体13に放熱される。また、筐体13と2次巻線6との間の絶縁をより確実に確保することができる。
また、巻線用放熱プレート8およびコア用放熱プレート10の両端部を折り曲げて折り曲げ部8c,10aが設けられている。これにより、各コア・巻線での熱損失を放熱させながら、トランス1の平面方向の面積を低減することができ、トランス1の小型化が実現される。また、ポッティング樹脂材16の充填高さを低くしても、折り曲げ部8c,10aの長さを調整することにより、巻線用放熱プレート8およびコア用放熱プレート10を確実にポッティング樹脂材16に接触させることができる。これにより、コアおよび巻線での熱損失が、巻線用放熱プレート8およびコア用放熱プレート10からポッティング樹脂材16を介して筐体13に確実に伝熱される。
なお、実施の形態1では、I型コア2とコア用放熱プレート10との間に放熱グリス、接着剤などを介在させている。しかし、I型コア2とコア用放熱プレート10との間での熱抵抗が問題にならない場合、もしくはI型コア2とコア用放熱プレート10とを別部材により一体化、接合させる場合には、放熱グリス、接着剤などを省略してもよい。
また、図14、図15および図16に示されるように、筐体13に固定された固定部材14による押圧荷重が上方からトランス1の磁性コアに印加されて、トランス1が筐体13に固定されている。これにより、電力変換装置12が車両走行時の振動又は衝撃に曝される場合においても、トランス1および電力変換装置12としての強度、耐振性を確保することができる。さらにまた、固定部材14をステンレスなどのばね部材により構成することにより、トランス1を構成する磁性コア、コア用放熱プレート10などでの主に高さ方向の寸法バラツキを吸収しながら、規定の荷重を印加させることができる。これにより、製造時の生産性を向上させることが可能となり、製造管理も容易になることから、製造段階でのコストを低減することができる。また、2部品で構成された磁性コアの上部から固定部材14で荷重を印加させることから、I型コア2とE型コア3との密着性を高めることができる。これにより、I型コア2とE型コア3との間での伝熱性を高めることができ、磁性コアの放熱性を高めることができる。また、I型コア2とE型コア3との間の密着性が高まり、I型コア2とE型コア3との間の空気層を排除することができるので、トランス1における励磁インダクタンスなどの電気特性を安定化させることも可能となる。
実施の形態2.
図18は、この発明の実施の形態2に係る電力変換装置におけるトランスのコイル体を構成する巻線用放熱プレートを示す斜視図である。
図18において、金属部材である巻線用放熱プレート8Aには、折り曲げ部8cに加えて、折り曲げ部8eが設けられている。折り曲げ部8eは、巻線用放熱プレート8Aの、折り曲げ部8cとは異なる相対する両側部に1つずつ設けられている。
なお、実施の形態2は、巻線用放熱プレート8に代えて巻線用放熱プレート8Aを用いている点を除いて、上記実施の形態1と同様に構成されている。
実施の形態2では、コイル体を作製した際、折り曲げ部8cと同様に、折り曲げ部8eの先端側がポッティング樹脂材16内に埋め込まれている。これにより、1次巻線5から巻線用放熱プレート8Aの折り曲げ部8cおよびポッティング樹脂材16を介して筐体13に至る放熱経路に加えて、1次巻線5から巻線用放熱プレート8Aの折り曲げ部8eおよびポッティング樹脂材16を介して筐体13に至る放熱経路が構成される。また、巻線用放熱プレート8Aとポッティング樹脂材16との接触面積が折り曲げ部8eの接触領域分増加する。
したがって、実施の形態2によれば、1次巻線5での熱損失をより効率的に筐体13に放熱することが可能となる。これにより、トランスおよび電力変換装置のさらなる小型化が可能となる。その結果、それに伴うトランスおよび電力変換装置の軽量化・低コスト化も実現可能となる。
実施の形態3.
図19は、この発明の実施の形態3に係る電力変換装置におけるトランスのコイル体を示す斜視図、図20は、この発明の実施の形態3に係る電力変換装置におけるトランスのコイル体の成形樹脂部を除いた状態を示す斜視図、図21は、この発明の実施の形態3に係る電力変換装置におけるトランスのコイル体を構成する巻線用放熱プレートを示す斜視図、図22は、この発明の実施の形態3に係る電力変換装置の磁性コア周りを示す断面図である。なお、図22は、図14のB-B断面と同一箇所における断面図を示している。
図21において、金属部材である巻線用放熱プレート8Bは、アルミニウム、銅などの金属平板をプレス成形して矩形平板に作製されている。折り曲げ部8cが、巻線用放熱プレート8Bの両側部に設けられている。第2穴部8dが、巻線用放熱プレート8Bに複数設けられている。巻線用放熱プレート8Bは、図20に示されるように、1次巻線5上に、中央孔5a,6a,7aを挟んで、互いに離間して、相対して平行に配置されている。巻線用放熱プレート8Bは、1次巻線5の第1穴部5cから突き出ている巻線間絶縁プレート7の第3突起部7dを第2穴部8dに通して、1次巻線5上に位置決めされている。コイル体4Aは、図19に示されるように、巻線用放熱プレート8B、1次巻線5、巻線間絶縁プレート7および2次巻線6からなる積層体を成形樹脂9により一体化して、構成されている。
なお、実施の形態3は、コイル体4に代えてコイル体4Aを用いている点を除いて、上記実施の形態1と同様に構成されている。
上記実施の形態1では、単一の巻線用放熱プレート8を用いているが、実施の形態3では、中央孔4aを避けて配置された2つの巻線用放熱プレート8Bを用いている。そして、2つの巻線用放熱プレート8Bは、1次巻線5上に、中央孔5a,6a,7aを挟んで、相対して平行に配置され、I型コア2と1次巻線5との間に存在していない。これにより、巻線用放熱プレート8Bは、切り欠き部8bが設けられた巻線用放熱プレート8に比べて、プレート形状が著しく簡略化され、低コスト化が図られるとともに、ワンターンショートを確実に防止することができる。さらに、図22に示されるように、巻線用放熱プレート8BがI型コア2の下部に存在していないので、磁性コアの配置領域におけるコイル体4Aの高さを低減することができる。これにより、トランス1Aおよび電力変換装置12Aのさらなる低背化が図られる。
なお、上記実施の形態3においても、折り曲げ部8cがポッティング樹脂材16に接しており、1次巻線5−成形樹脂9−巻線用放熱プレート8B−ポッティング樹脂材16−筐体13からなる1次巻線放熱経路が構成される。また、巻線用放熱プレート8Bの中央孔5aと反対側を成形樹脂9から突出させ、その突出端部を折り曲げて、折り曲げ部8eを設けてもよい。
また、上記実施の形態3において、磁性コアの配置領域におけるコイル体4Aの高さ方向に余裕がある場合、巻線の放熱性を向上させたい場合などにおいては、2つの矩形平板状の巻線用放熱プレートを、中央孔5aを挟んで、かつI型コア2の下部に位置するように、1次巻線5上にさらに延長させて配置してもよい。
実施の形態4.
図23は、この発明の実施の形態4に係る電力変換装置におけるトランスのコイル体を示す斜視図、図24は、この発明の実施の形態4に係る電力変換装置においてトランスが筐体に搭載された状態を示す斜視図、図25は、図24のC−C矢視断面図である。なお、図24では、トランスを除く部品が省略されている。
図23から図25においては、コイル体4Bは、巻線用放熱プレート8Bに代えて巻線用放熱プレート8Cを用いている点を除いて、実施の形態3におけるコイル体4Aと同様に構成されている。金属部材である巻線用放熱プレート8Cは、巻線用放熱プレート8Bにおける折り曲げ部8cの曲げ方向を下方向から上方向に変えて形成された固定部8fを有する。突起部13fが筐体13の小部屋壁13aに設けられている。I型コア2とE型コア3をコイル体4Bに装着して作製されたトランス1Bは、小部屋壁13a内に収納され、ポッティング樹脂材16が小部屋壁13a内に充填・硬化される。ついで、固定部8fが突起部13fにねじ15により締着、固定され、コイル体4Bが筐体13に固定される。また、固定部材14の固定部14aが突起部13bにねじ15により締着・固定され、トランス1Bが筐体13に固定される。
実施の形態4では、巻線用放熱プレート8Cの固定部8fが筐体13に絞着・固定されているので、1次巻線5から発生した熱損失は成形樹脂9と巻線用放熱プレート8Cとを介して直接筐体13に放熱することが可能となる。これにより、1次巻線5の放熱経路には、ポッティング樹脂材16が不要となる。そこで、図25に示すように、ポッティング樹脂材16は2次巻線6の放熱経路にのみ存在すればよい。これにより、ポッティング樹脂材16の使用量を低減することが可能となり、電力変換装置12Bの軽量化、および低コスト化が図られる。
2つの巻線用放熱プレート8Cが、1次巻線5上に、中央孔5a,6a,7aを挟んで、相対して平行に配置され、I型コア2と1次巻線5との間に存在していない。これにより、ワンターンショートを防止することができる。巻線用放熱プレート8Cが筐体13に固定されているので、筐体13に対するコイル体4Bおよびトランス1Bの固定がより強固となり、トランス1Bの強度および耐振性を向上させることができる。
なお、実施の形態4では、2次巻線6の放熱および2次巻線6と筐体13との絶縁のためにポッティング樹脂材16を充填しているが、2次巻線6の放熱性および2次巻線6と筐体13との絶縁性を確保できるのであれば、ポッティング樹脂材16に代えて接着剤、シートなどの別部材を用いてもよい。この場合、接着剤、シートなどの別部材が、2次巻線放熱経路の一部を構成する樹脂部材となる。
また、実施の形態4では、巻線用放熱プレート8Cの端部を上側に折り曲げた後、水平に折り曲げて固定部8fを設けているが、巻線用放熱プレートの端部を下側に折り曲げて、もしくは折り曲げずに直線的に伸ばして固定部を設けてもよい。
また、実施の形態4では、巻線用放熱プレート8Cを4箇所の固定部8fで筐体13の突起部13fに締着・固定しているが、必要に応じて、巻線用放熱プレート8Cの固定部8fの個数を変更してもよく、例えば、各巻線用放熱プレート8Cの一端のみを固定部8fとし、2箇所の固定部8fを筐体13の突起部13fに締着・固定してもよい。
また、上記実施の形態1−4では、コイル体は、上から、巻線用放熱プレート、1次巻線、巻線間絶縁プレート、2次巻線の順に積層して構成されているが、コイル体は、上から、巻線用放熱プレート、2次巻線、巻線間絶縁プレート、1次巻線の順に積層して構成されてもよい。
また、上記実施の形態1−4では、1次巻線および2次巻線は、銅、アルミニウムなどの金属平板をプレス金型などにより打抜いて作製された、一層の渦巻き状のコイルの板金により構成されているが、1次巻線および2次巻線は、丸線または平角線を一層の渦巻き状のコイルに巻回して構成されてもよい。
また、上記実施の形態1−4では、I型コアが筐体の開口側に配置され、E型コアが筐体の内底面側に配置されているが、E型コアが筐体の開口側に配置され、I型コアが筐体の内底面側に配置されてもよい。また、磁性コアは、I型コアとE型コアとにより構成されているが、磁性コアは、I型コアとE型コアとの組み合わせに限定されず、閉磁路を構成できればよく、例えば、2個共にE型コア、EER型コア、PQ型コア、UU型コアでもよい。
また、上記実施の形態1−4では、コア用放熱プレートの端部を折り曲げて形成された折り曲げ部をポッティング樹脂材に接触させて磁性コアの放熱性を向上させているが、磁性コアの放熱性上、折り曲げ部をポッティング樹脂材16に接触させる必要が無い場合には、コア用放熱プレートの折り曲げ部を省略してもよい。
また、上記実施の形態1−4では、1次巻線と巻線用放熱プレートとの間に成形樹脂を介在させているが、介在される部材は成形樹脂に限定されず、1次巻線と巻線用放熱プレートとの間の絶縁性および放熱性が確保されていればよく、例えば、接着剤、シート、ポッティング樹脂材、グリスなどの部材を介在させてもよい。この場合、接着剤、シート、ポッティング樹脂材、グリスなどの部材が、1次巻線放熱経路の一部を構成する樹脂部材となる。
また、上記実施の形態1−4では、I型コアの上面にコア用放熱プレートを配置しているが、磁性コアでの熱損失が小さく、熱損失を積極的に放熱する必要がない場合には、コア用放熱プレートを省略してもよい。
また、上記実施の形態1−4では、固定部材の両端が筐体に固定されているが、設定された荷重が筐体に固定された固定部材によりトランスに印加されていれば、固定部材の一端のみが筐体に固定されてもよい。
また、上記実施の形態1−4では、磁性コアは、固定部材の弾性力により、コア用放熱プレートとともに筐体に保持されているが、磁性コアは、固定部材の弾性力により、単体で筐体に保持されてもよい。
実施の形態5.
図26は、この発明の実施の形態5に係る電力変換装置に搭載されるトランスを示す斜視図、図27は、この発明の実施の形態5に係る電力変換装置に搭載されるトランスを構成するコイル体を示す斜視図、図28は、図27に示されるコイル体を示す分解斜視図である。
図27および図28において、コイル体4Cは、下から、第1の2次巻線6−1、第1の巻線間絶縁プレート7−1、第1の1次巻線5−1、第1の巻線用放熱プレート8−1、第2の1次巻線5−2、第2の巻線間絶縁プレート7−2、第2の2次巻線6−2、第2の巻線用放熱プレート8−2の順に積層された積層体が、その周囲を成形樹脂9Aにより包まれて一体化されて構成されている。第1の1次巻線5−1と第1の巻線用放熱プレート8−1との間、第2の1次巻線5-2と第1の巻線用放熱プレート8−1との間、および第2の2次巻線6−2と第2の巻線用放熱プレート8−2との間には、それぞれ、隙間が形成されており、これらの隙間のそれぞれには、成形樹脂9Aが充填されている。ここで、第1の巻線間絶縁プレート7−1および第2の巻線間絶縁プレート7−2が絶縁部材である。第1の巻線用放熱プレート8−1および第2の巻線用放熱プレート8−2が金属部材である。
第1の1次巻線5−1および第2の1次巻線5−2は、上記実施の形態1の1次巻線5と同様に構成されている。第1の1次巻線5−1および第2の1次巻線5−2は、巻数、巻線幅、厚みが同じに構成されているが、各端子部5bは、互いに接触しないように、平面方向にずらして構成されている。第1の2次巻線6−1および第2の2次巻線6−2は、上記実施の形態1の2次巻線6と同様に構成されている。第1の2次巻線6−1および第2の2次巻線6−2は、巻数、巻線幅、厚みが同じに構成されているが、各端子部6bは、互いに接触しないように、平面方向にずらして構成されている。
第1の巻線用放熱プレート8−1は、実施の形態1の巻線用放熱プレート8と同様に、中央にはE型コア3の中脚部3aを貫通させるための中央孔8aが設けられており、E型コア3が貫通する中央孔8aを中心として、1周とならないように、切り欠き部8bが設けられている。また、第1の巻線用放熱プレート8−1には、巻線用放熱プレート8の折り曲げ部8cに代えて、実施の形態2の巻線用放熱プレート8Aの折り曲げ部8eが設けられている。折り曲げ部8eが、成形樹脂9Aの相対する両側部から突出している。第2の巻線用放熱プレート8−2は、実施の形態3の巻線用放熱プレート8Bと同様に構成されている。第2の巻線用放熱プレート8−2は、第2の2次巻線6−2の中央孔6aを挟んで、第2の2次巻線6−2上に配置される。折り曲げ部8cが、成形樹脂9Aの相対する両側部から2つずつ突出している。更に、I型コア2が配置されるコイル体4Cの中央孔4a付近の領域には、第2の巻線用放熱プレート8−2は存在していない。
このように構成されたコイル体4Cに、I型コア2、E型コア3およびコア用放熱プレート10が装着されて、図26に示されるトランス1Cが構成される。トランス1Cは、1次巻線よりも2次巻線の巻数が多い昇圧トランスとして構成されている。トランス1Cは、実施の形態1と同様に、他の構成部品とともに筐体に搭載される。そして、第1の1次巻線5−1および第2の1次巻線5−2が並列接続されて、さらに第1の2次巻線6−1および第2の2次巻線6−2が並列接続されて制御基板部21に配線され、電力変換装置が構成される。
実施の形態5では、コイル体4Cは、第1の1次巻線5−1、第2の1次巻線5−2、第1の2次巻線6−1および第2の2次巻線6−2を備え、第1の1次巻線5−1と第2の1次巻線5−2とが並列接続され、第1の2次巻線6−1と第2の2次巻線6−2とが並列接続されている。これにより、各巻線に流れる電流値を半減させることができるので、各巻線での熱損失を低減することができる。その結果、各巻線での温度上昇を実施の形態1よりも小さくすることができる。また、各巻線での熱損失が低減されるので、トランス1C全体としての熱損失が低減され、高出力化、高効率化の電力変換装置が実現される。
また、各巻線での通電電流値を半減させることができるので、トランス1Cは、小型化を維持しながら電流容量を大きくすることができ、電力容量も大きくすることができる。その結果、電力変換装置の高出力化を容易に実現できる。
また、各巻線の積層構成において、同極性の巻線、ここでは第1の1次巻線5−1と第2の1次巻線5−2とを中間の2層に配置して、且つ第1の1次巻線5−1と第2の1次巻線5−2との間に第1の巻線用放熱プレート8−1を配置させている。これにより、上下の巻線間での誘導発熱により第1の巻線用放熱プレート8−1自体が発熱することを防止することができる。その結果、電力変換装置の駆動を安定化させることができ、電力効率の悪化を防止することができる。
ここで、第1の2次巻線6−1は、ポッティング樹脂材16を介して筐体13に接続されている。つまり、ポッティング樹脂材16が第1の2次巻線6−1と筐体13とを接続する接続部材となる。これにより、第1の2次巻線6−1−ポッティング樹脂材16−筐体13からなる放熱経路が構成される。第2の2次巻線6−2は、成形樹脂9A、第2の巻線用放熱プレート8-2およびポッティング樹脂材16を介して筐体13に接続されている。つまり、成形樹脂9A、第2の巻線用放熱プレート8-2およびポッティング樹脂材16が第1の2次巻線6−1と筐体13とを接続する接続部材となる。これにより、第2の2次巻線6−2−成形樹脂9A−第2の巻線用放熱プレート8-2−ポッティング樹脂材16−筐体13からなる放熱経路が構成される。第1の1次巻線5−1は、成形樹脂9A、第1の巻線用放熱プレート8−1およびポッティング樹脂材16を介して筐体13に接続されている。つまり、成形樹脂9A、第1の巻線用放熱プレート8−1およびポッティング樹脂材16が第1の1次巻線5−1と筐体13とを接続する接続部材となる。これにより、第1の1次巻線5−1−成形樹脂9A−第1の巻線用放熱プレート8−1−ポッティング樹脂材16−筐体13からなる放熱経路が構成される。第2の1次巻線5−2は、成形樹脂9A、第1の巻線用放熱プレート8−1およびポッティング樹脂材16を介して筐体13に接続されている。つまり、成形樹脂9A、第1の巻線用放熱プレート8−1およびポッティング樹脂材16が第2の1次巻線5−2と筐体13とを接続する接続部材となる。これにより、第2の1次巻線5−2−成形樹脂9A−第1の巻線用放熱プレート8−1−ポッティング樹脂材16−筐体13からなる放熱経路が構成される。このように、実施の形態5においても、各巻線が放熱経路を保有している。
第1の1次巻線5−1の放熱経路は、金属製の第1の巻線用放熱プレート8−1を有し、成形樹脂9Aが第1の1次巻線5−1と第1の巻線用放熱プレート8−1との間に充填されている。これにより、第1の1次巻線5−1での熱損失が効率的に筐体13に放熱される。また、第2の1次巻線5−2の放熱経路は、金属製の第1の巻線用放熱プレート8−1を有し、成形樹脂9Aが第2の1次巻線5−2と第1の巻線用放熱プレート8−1との間に充填されている。これにより、第2の1次巻線5−2での熱損失が効率的に筐体13に放熱される。さらに、第2の2次巻線6−2の放熱経路は、金属製の第2の巻線用放熱プレート8−2を有し、成形樹脂9Aが第2の2次巻線6−2と第2の巻線用放熱プレート8−2との間に充填されている。これにより、第2の2次巻線6−2での熱損失が効率的に筐体13に放熱される。
また、I型コア2においては、I型コア2−コア用放熱プレート10−ポッティング樹脂材16−筐体13からなる放熱経路と、I型コア2−コア用放熱プレート10−固定部材14−筐体13からなる放熱経路が構成される。E型コア3においては、E型コア3−筐体13からなる放熱経路と、E型コア3−ポッティング樹脂材16−筐体13からなる放熱経路と、が構成される。このように、実施の形態5においても、I型コア2およびE型コア3は、独立した放熱経路を保有している。
なお、実施の形態5では、中間の2層を第1の1次巻線5−1と第2の1次巻線5−2とで構成しているが、中間の2層を第1の2次巻線6−1と第2の2次巻線6−2とで構成してもよい。また、実施の形態5では、第1の1次巻線5−1と第2の1次巻線5−2とが並列接続され、第1の2次巻線6−1と第2の2次巻線6−2とが並列接続されているが、第1の1次巻線5−1と第2の1次巻線5−2とが直列接続され、第1の2次巻線6−1と第2の2次巻線6−2とが直列接続されてもよい。この場合、コイル体4Cのサイズを大きくすることなく、小型化を維持しながら、各巻線の巻数を増加させることができる。また、1次巻線と2次巻線とが共に並列接続、もしくは直列接続される構成ではなく、例えば1次巻線は直列接続、2次巻線は並列接続される構成としてもよい。
また、第1の巻線用放熱プレート8-1の折り曲げ部8eと、第2の巻線用放熱プレート8-2の折り曲げ部8cとが、互いに重ならないように配置されている。これにより、第1の巻線用放熱プレート8−1と第2の巻線用放熱プレート8−2とのそれぞれをポッティング樹脂材16に確実に接触させることができるとともに、第1の巻線用放熱プレート8−1と第2の巻線用放熱プレート8−2との間の熱干渉の影響を抑制することができる。その結果、各巻線での熱損失を確実に、かつ高効率に放熱することができ、トランス1Cおよび電力変換装置の小型軽量化、低コスト化を実現できる。
また、第2の巻線用放熱プレート8-2は、切り欠き部8bを設けず、コイル体4Cの中央孔4aを挟んで相対して配置されている。これにおり、第2の巻線用放熱プレート8−2の低コスト化が図られるとともに、ワンターンショートを防止することができる。また、I型コア2の配置領域の下部に第2の巻線用放熱プレート8−2が存在していないので、磁性コアの配置箇所におけるコイル体4Cの高さを低減することができ、トランス1Cおよび電力変換装置のさらなる低背化を実現できる。
なお、コイル体4Cの高さ方向において余裕がある場合、また巻線の放熱性を向上させたい場合には、磁性コアが配置されるコイル体4Cの中央孔4a付近の領域に、巻線用放熱プレートを延長配置してもよいし、放熱プレートを分割することなく、1部品で構成してもよい。また、第1の巻線用放熱プレート8-1においても、2つの巻線用放熱プレートに分割して構成してもよい。
なお、上記実施の形態5では、1次巻線および2次巻線のそれぞれ2部品の構成としているが、1次巻線および2次巻線のそれぞれを2部品より多い構成としてもよい。また、1次巻線と2次巻線との部品数は、同数でなくてもよく、例えば、1次巻線を2部品とし、2次巻線を1部品としてもよい。
なお、上記各実施の形態では、電磁誘導機器としてトランスを用いているが、電磁誘導機器は、トランスに限定されず、例えば、リアクトル、チョークコイルでもよい。
なお、上記各実施の形態では、板金により作製されたコイルからなる巻線、巻線間絶縁プレートおよび巻線用放熱プレートを成形樹脂により一体成形してコイル体を構成しているが、コイル体は、導体パターンにより巻線を形成し、巻線間絶縁プレートおよび成形樹脂の役割をガラスエポキシ樹脂に持たせたプリント基板体により構成されてもよい。この場合、巻線用放熱プレートは、プリント基板体と一体化させることなく、放熱グリス、ポッティング樹脂などによりプリント基板体に接続させればよい。
また、この発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。