JP6524838B2 - 鉛蓄電池 - Google Patents

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Description

本発明は、浸透短絡を抑制する技術に関する。
鉛蓄電池は、例えば、酸化による劣化を抑制することを目的に、セパレータの正極板と相対する正極面にリブを設けていることがある。ところで、鉛蓄電池は、電解液の硫酸濃度が低下すると、浸透短絡(デンドライトショート)が起こり易くなることが知られている。浸透短絡は、電解液の硫酸濃度が低い状態での充電により、負極板から析出した鉛がデンドライト(針状結晶)に成長して、正極板と接触することにより起こる。下記特許文献1には、セパレータの負極側のフラット面(負極面)から正極面のリブの頂面に向かってデンドライトが成長することで浸透短絡が発生する点が記載されている。さらに、浸透短絡の発生を抑制するために、セパレータの負極面にもリブを設ける点が記載されている。また、下記特許文献2には、セパレータの表裏(正負極面)に背中合わせにリブを設ける点が記載されている。
特開2013−211115公報(段落番号「0009」) 特開平7−105929公報
しかしながら、特許文献1、2に記載のようにセパレータの負極面にリブを設けても、浸透短絡が十分に抑制されないことがあった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、負極板より析出して成長するデンドライトが、セパレータの正極面に設けられた正極リブに到達するまでの経路を長くすることにより、浸透短絡を抑制することを目的とする。
本明細書により開示される鉛蓄電池は、正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板との間に位置するセパレータと、を備えた鉛蓄電池であって、前記セパレータは、ベース部と、前記ベース部のうち前記正極板と相対する正極面に設けられた正極リブと、前記ベース部のうち前記負極板と相対する負極面に設けられた負極リブと、を有し、前記負極リブは、前記正極面と垂直な方向から見て、前記正極リブの中心と少なくとも一部が重なる位置に有り、かつ前記正極リブの前記ベース部に対する付け根の外縁部と前記負極リブの前記ベース部に対する付け根の外縁部とが、前記垂直な方向から見て、重ならない位置に有る。
本明細書により開示される鉛蓄電池によれば、デンドライトがセパレータの正極リブに到達するまでの経路を長くして、浸透短絡を抑制することが出来る。
本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池の斜視図 鉛蓄電池の正面図 電槽の平面図 鉛蓄電池の垂直断面図(図1中のA−A線断面図) 極板群の展開斜視図 セパレータの展開図(正極面を示す) セパレータの展開図(負極面を示す) 極板群の水平断面図 図8のB部を拡大した図 比較例を示す極板群の断面図 比較例を示す極板群の断面図 他の実施形態を示す極板群の断面図
(本実施形態の概要)
初めに、本実施形態の鉛蓄電池の概要について説明する。鉛蓄電池は、正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板との間に位置するセパレータと、を備えた鉛蓄電池であって、前記セパレータは、ベース部と、前記ベース部のうち前記正極板と相対する正極面に設けられた正極リブと、前記ベース部のうち前記負極板と相対する負極面に設けられた負極リブと、を有し、前記負極リブは、前記正極面と垂直な方向から見て、前記正極リブの中心と少なくとも一部が重なる位置に有り、かつ前記正極リブの前記ベース部に対する付け根の外縁部と前記負極リブの前記ベース部に対する付け根の外縁部とが、前記垂直な方向から見て、重ならない位置に有る。
本発明者らは、セパレータの負極面に負極リブを設けても、浸透短絡が十分に抑制されないことがある原因を特定しようと試みた。例えば、ベース部や正極リブを変更しない場合に、その原因としては、負極リブの高さ、負極リブの幅、負極リブの配置など種々考えられ、特定作業は困難をきわめた。発明者らは、負極リブが正極リブから離れて配置されていると、極群に圧迫する力が作用した際に、負極リブを支点として、セパレータの正極リブの周辺部が負極板側へ撓んでしまうことを知見した。そして、ベース部の負極面のうち正極リブの真裏の部分が負極板に接触してしまい、この接触部を起点してデンドライトが成長して浸透短絡が発生することを突き止めた。
そこで、発明者らは、ベース部の負極面のうち正極リブの真裏の部分が負極板に接触しないように、この真裏の部分に正極リブと同じ形状の負極リブを設けてみた。すると、浸透短絡を抑制する効果は、負極リブを設けていない場合に比べて向上したものの、まだ不十分であった。
一方、発明者らは、デンドライトの成長経路を鋭く観察することで、デンドライトはリブの内部を成長するよりも外面に沿って成長していることを初めて知見した。この知見により、発明者らは、ベース部内において、デンドライトは負極リブのベース部に対する付け根の外縁部から正極リブのベース部に対する付け根の外縁部に向かって成長していることを初めて突き止めた。したがって、発明者らは、ベース部の正極リブの真裏の部分に正極リブと同じ形状の負極リブを設けても、デンドライトがベース部内を面に垂直な方向に最短距離で成長したため、浸透短絡を抑制する効果が不十分であったと突き止めた。
以上から、本発明者らは、ベース部の負極面のうち正極リブの真裏の部分が負極板に接触するという不具合を突き止め、かつ、リブにおけるデンドライトの成長経路を知見したからこそ、本発明を着想するに至った。本発明のように、負極リブが、正極面と垂直な方向から見て、正極リブの中心と少なくとも一部が重なる位置に有り、かつ正極リブのベース部に対する付け根の外縁部と負極リブのベース部に対する付け根の外縁部とが、前記垂直な方向から見て、重ならない位置に有ることで、以下の効果を奏する。
負極リブを正極リブの中心と少なくとも一部が重なる位置に設けているので、正極リブの周辺部分でセパレータが撓むように変形することを防止できる。そのため、ベース部の負極面のうち正極リブの真裏の部分を、負極リブの高さ分、負極板から確実に離すことが出来る。以上のことから、負極板から成長したデンドライトが、正極リブに到達するまでの距離が長くなる。そのため、浸透短絡の発生を抑制する(遅らせる)ことが出来る。しかも、負極リブと正極リブは、ベース部に対する付け根の外縁部の位置が重なっていないので、負極リブの外面に沿って成長したデンドライトが、正極リブの外面に到達するまでの距離が長くなるので、浸透短絡をより一層抑制することが出来る。
以上説明した理由から、正極リブと負極リブの位置関係だけではなく、正極リブの外縁部と負極リブの外縁部との位置関係をも考慮することで、浸透短絡の問題を著しく改善することができ、実用上の浸透短絡に対する信頼性が極めて高い、これまでに無かった鉛蓄電池を作製することができる。
また、鉛蓄電池の実施態様として、以下の構成が好ましい。
前記ベース部の厚さが0.3mm以下であり、前記正極リブの前記外縁部と前記負極リブの前記外縁部との距離がベース部の厚さの1.3倍以上であることが好ましい。この構成では、セパレータの抵抗を小さくしたまま、浸透短絡を抑制することが出来る。
前記負極リブのリブ幅が前記正極リブのリブ幅よりも狭いことが好ましい。これによると、負極リブのリブ幅を狭くしておけば、負極板に対する負極リブの接触面積が少なくなる。また、負極リブのリブ幅を正極リブのリブ幅より大きくした場合に比べて、正極リブと負極リブの重なる部分が少なくなる(ただし、正極リブのリブ幅は同一と仮定)ので、セパレータの抵抗を小さくしたまま、浸透短絡を抑制することができる。この構成は、負極リブのベース部に対する付け根の外縁部の位置と正極リブのベース部に対する付け根の外縁部の位置とを重ならせないという本発明の着想に至ったからこそ、想到できたことである。
前記負極板の負極電極材料は、黒鉛を含有していることが好ましい。黒鉛粒子はサイズが大きな導電体で、硫酸鉛への電子の通り道となることにより、負極の充電を容易にする。一方、本出願人は、PSOC寿命の向上を検討する過程で、負極電極材料中の黒鉛が、浸透短絡の原因となることを見出した。この原因として、黒鉛粒子が負極板表面に露出し、黒鉛粒子の露出部が金属鉛の析出の中心となることが考えられる。即ち、露出した黒鉛粒子から金属鉛のデンドライトが成長し、セパレータを貫通して短絡を引き起こすことが考えられる。黒鉛が浸透短絡の原因になることはこれまで知られておらず、出願人が初めて知見したものである。したがって、本実施形態のように、正極リブと負極リブの位置関係だけではなく、正極リブの外縁部と負極リブの外縁部との位置関係をも考慮することで、負極板の負極電極材料に黒鉛を含有した電池特有の浸透短絡の問題を著しく改善することができる。
アイドリングストップ車用であることが好ましい。近時、環境問題に対する関心の高まりや、原油価格の高騰等にともない、自動車においても様々な燃費改善技術の開発が進められている。その一つに、ブレーキ制動の際に、運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、これを電池に蓄えて利用する回生エネルギーの利用が挙げられる。そして、アイドリングストップ車では、アイドリングストップ時の電気負荷を電池から賄う必要があること、及びエンジンの再始動回数が多いことから放電量が多くなる。そのため、短い時間でより多くの回生エネルギーを受け入れることが電池にとって重要な特性となる。一般的に回生充電受入性能は低い充電状態、いわゆる部分充電状態(PSOC(Partial State of Charge))であるほど高くなる。そのため、回生エネルギーの受入性能を必要とする電池はPSOC制御下で使用されることが多くなる。
アイドリングストップ車用鉛蓄電池は上記の通り放電量が多く、またPSOC制御下で使用されることから耐久性に優れる必要がある。耐久性を向上させる手段として、正、負極の活物質量を増加することが一般的である。しかし、活物質を増加するとそれに対する電解液量が減少するため放電時に電解液の濃度が低下しやすくなり、浸透短絡が起こりやすくなる。
ところで、鉛蓄電池では、充放電が繰り返されると、放電時には水が生成し、充電時には濃い硫酸が生成される。そして、濃い硫酸は水に比べて濃度が高く下部に沈降しやすいことから、電解液(硫酸)濃度が上下で異なってくる成層化という現象が生じる。アイドリングストップ車ではないエンジン車では、走行時に過充電されるので、この際に正及び負極板から発生する酸素及び水素ガスによる電解液の攪拌作用によって、成層化は緩和される。しかし、PSOC制御下では、減速時に充電されるため充電時間が極めて短く、充電不足の状態が続くので、酸素及び水素ガスによる電解液の攪拌作用が発現せず、成層化が生じやすい。成層化が発生すると上部の電解液濃度が低下するため、セル上部での浸透短絡が発生しやすくなる。
以上のように、アイドリングストップ車用の鉛蓄電池は設計上の理由(電解液量に対して活物質量が多い)、及び使用上の理由(成層化しやすい)から、アイドリングストップ車用ではない電池に比べて浸透短絡が起こりやすくなる。したがって、本実施形態のように、正極リブと負極リブの位置関係だけではなく、正極リブの外縁部と負極リブの外縁部との位置関係をも考慮することで、アイドリングストップ車用の鉛蓄電池特有の浸透短絡の問題を著しく改善することができる。
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図11によって説明する。
1.鉛蓄電池10の構造
鉛蓄電池10は自動車などの車両用、具体的にはアイドリングストップ車用であり、例えば、車両のエンジンルーム内やラゲッジスペース内に設置され、エンジン始動装置や様々な車両負荷へ電力を供給する。尚、アイドリングストップ車両とは、車両停止時、または停止前の減速時から車両停止中まで自動的にエンジンを停止させ発進時に再始動させる車両である。
鉛蓄電池10は、図1から図5に示すように、電槽20と、極板群30と、一対の端子部60P、60Nを有する蓋部材50を備える。尚、以下の説明において、端子部60P、60Nの並び方向をX方向とし、端子部60P、60Nの並び方向に対して直交する方向(電槽20の前後方向)をZ方向とする。そして、Z方向における端子部60P、60Nが設けられた側を「前側」、その反対側を「後側」とする。また、電槽20の高さ方向(上下方向)をY方向とする。
電槽20は合成樹脂製である。電槽20は4枚の外壁21A〜21Dと底壁22を有し、上面が開放した箱型をなす。電槽20の内部は、図3に示すように隔壁23により複数のセル室25に仕切られている。セル室25は、電槽20の横幅方向(図3のX方向)に6室設けられており、各セル室25には、流動可能な電解液と共に極板群30が配置されている。
極板群30は、図4に示すように、正極板30Pと、負極板30Nと、両極板30P、30Nを仕切るセパレータ40とから構成されており、セル室25の並び方向(X方向)に沿って配列されている。各極板30P、30Nは、格子体に活物質が充填されて構成される。尚、正極板30Pの活物質の主成分は二酸化鉛、負極板30Nの活物質の主成分は鉛である。
また、各極板30P、30Nの上部には耳部31P、31Nが設けられている。耳部31P、31Nは、ストラップ32P、32Nを介して、同じ極性の極板30P、30Nを各セル室25内にて連結するために設けられている。
ストラップ32P、32Nは、例えばX方向に長い板状であり、セル室に正極用と負極用の2組が設けられている。各ストラップ32は、図4に示すように、極板群30の上方に位置している。正極用のストラップ32Pは、耳部31Pを介して極板群30の正極板30Pを連結し、負極用のストラップ32Nは、耳部31Nを介して極板群30の負極板30Nを連結する構造となっている。
セパレータ40は、両極板30P、30Nの間に配置されて、両極板間の短絡を防止する機能、両極板の間隔を保つ機能を果たす。セパレータ40は、微孔性のポリエチレンシートからなる。また、本例では、ポリエチレンシートを2つ折りにして両側端部をメカニカルシールすることで、袋状に形成している。そして、図5に示すように、袋状に形成したセパレータ40の内部に負極板30Nを収容しており、正極板30Pは、セパレータ40の外側に配置されている。
図1に示すように、蓋部材50は合成樹脂製であって、電槽20の上面を封口する基部51と、基部51の外周縁に沿って形成された外周壁57とを備える。外周壁57は、基部51の外周縁から下向きに延びている。
基部51の前端両側には、正極側の端子部60Pと、負極側の端子部60Nが設けられている。正極側の端子部60Pと、負極側の端子部60Nの構造は、同一であるため、以下、負極側の端子部60Nを例にとって構造を説明する。
図4に示すように、負極側の端子部60Nは、ブッシング61と、極柱65とを含む。ブッシング61は鉛合金等の金属製であり中空の円筒状をなす。ブッシング61は、図4に示すように、蓋部材50の基部51に対して一体形成された筒型の装着部53を貫通しており、上半分が基部51の上面から突出している。ブッシング61のうち、基部51の上面から露出する上半部は端子接続部であり、ハーネス端子などの接続端子(図略)が組み付けされる。
尚、蓋部材50はブッシング61をインサートした金型に樹脂を流して一体成形することから、装着部53はブッシング61と一体化され、ブッシング61の下部外周を隙間なく覆う構造となっている。
極柱65は鉛合金等の金属製であり、円柱形状をしている。極柱65は、ブッシング61の内側に下方より挿入されている。極柱65のうち、上端部65Aはブッシング61に対して溶接により接合され、基端部65Bは、極板群30のストラップ32Nに接合されている。
また、図1に示すように、基部51上には、突出部70が設けられている。突出部70は、蓋部材50の後側の概ね全体と、蓋部材50の前側中央に設けられている。図1に示すように、突出部70の一部は、一対の端子部60P、60Nの間に設けられており、一対の端子部60P、60Nよりも高さ方向(Y方向)で突出している。このようにすることで、例えば、金属バーなどが電池上部に置かれたとしても、金属バーが、端子部60P、60Nの上面に同時に接触することがないので、一対の端子部60P、60Nが短絡するのを防止することができる。
2.セパレータ40のリブ構造と浸透短絡の抑制
セパレータ40は、微孔性のポリオレフィン製(本実施形態では、ポリエチレン製)のシートからなり、扁平なベース部41と、正極リブ43と、負極リブ45とを備えている。ベース部41の厚さは、概ね0.2〜0.25mm程度である。ベース部41は、フラットな板形状をしている。セパレータ40は、図6、図7に示す中心線Mで、2つ折りした後、Z方向の両側部47、48を圧着(メカニカルシール)することで、袋状に加工して使用される。具体的には、図5に示すように、セパレータ40は、袋の内部に負極板30Nを収容しつつ、正極板30Pと交互に配列して使用される。尚、図6はセパレータ40の展開図(正極面41A側を示す)、図7はセパレータ40の展開図(負極面41B側を示す)である。
正極リブ43は、図6、図8に示すように、ベース部41のうち正極板30Pに相対する正極面(外面)41Aに設けられている。具体的には、正極リブ43は、Y方向に直線的に延びており、Z方向に一定間隔で複数形成されている。図8、図9に示すように、正極リブ43の断面形状は台形であり、付け根側から先端側に向かって緩やかに傾斜している。正極リブ43は、正極板30Pの表面に当接して、正極板30Pとベース部41との間に隙間を確保する。正極板30Pとベース部41との間に隙間を設けることで、酸化によるセパレータ40の劣化を抑制できる。
そして、上記のように正極リブ43をZ方向に一定間隔で形成することで、正極板30Pとベース部41との間の隙間を、Z方向で均一にすることが出来る。また、正極リブ43は、ベース部41に対してY方向の全体に設けられているので、Y方向も同様に、隙間を均一にすることができる。
負極リブ45は、図7、図8に示すように、ベース部41のうち負極板30Nに相対する負極面(内面)41Bに設けられている。負極リブ45は、正極リブ43と同様、Y方向に直線的に延びており、Z方向に一定間隔で複数形成されている。負極リブ45の断面形状は、正極リブ43と同様に台形であり、付け根側から先端側に向かって緩やかに傾斜している。
そして、各負極リブ45は、各正極リブ43の位置に対応して形成されている。具体的には、各正極リブ43とZ方向の位置が一致しており、図8、図9に示すように、正極リブ43の真裏に位置する。すなわち、負極リブ45の中心は、正極面41Aと垂直な方向(X方向)から見て、正極リブ43の中心Lと重なっており、負極リブ45の少なくとも一部が、正極リブ43の中心Lと重なる関係となっている。尚、「正極リブの中心」とは、リブの垂直断面形状における付け根の中心、すなわち図9に示す正極リブ43の付け根のZ方向(リブ幅方向)の中心Lである。
また、図9に示すように、負極リブ45の付け根のリブ幅D2は正極リブ43の付け根のリブ幅D1よりも狭く、負極リブ45のベース部41に対する付け根の外縁部bは、正極リブ43のベース部41に対する付け根の外縁部aに対して、正極面41Aと垂直な方向(X方向)から見て、重ならない位置に有る。
上記したように、負極リブ45は、正極リブ43に対して次の関係となっている。
(A)負極リブ45は、正極面41Aと垂直な方向(X方向)から見て、正極リブ43の中心Lと少なくとも一部が重なる位置に有る。
(B)負極リブ45のベース部41に対する付け根の外縁部bと、正極リブ43のベース部41に対する付け根の外縁部aとが、正極面41Aと垂直な方向(X方向)から見て、重ならない位置に有る。
負極リブ45と正極リブ43の位置を上記の(A)、(B)の関係にすることで、浸透短絡を抑制することが出来る。
具体的に説明すると、浸透短絡は、電解液の硫酸濃度が低い状態での充電により、負極板30Nから析出した鉛がデンドライトに成長して正極板30Pと接触することにより発生し、図10にて波線矢印で示すように、正極リブ43の周辺部で発生する傾向にある。
本実施形態では、負極リブ45を正極リブ43の中心Lと少なくとも一部が重なる位置に設けている。従って、正極リブ43の周辺部分でセパレータ40が撓むように変形することを防止できる。そのため、図9に示すように、ベース部41の負極面41Bのうち正極リブ43の真裏の部分を、負極リブ45の高さ分、負極板30Nから確実に離すことが出来る。以上のことから、図10に示すように、負極リブ45が設けられていない場合に比べて、負極板30Nから成長したデンドライトが、正極リブ43に到達するまでの距離が長くなる。そのため、浸透短絡の発生を抑制する(遅らせる)ことが出来る。
また、発明者らは、デンドライトの成長経路を鋭く観察することで、デンドライトはリブの内部を成長するよりも、リブの外面に沿って成長することを初めて知見した。そして、更に、浸透短絡に至る場合、デンドライトは、ベース部41内において、2つのリブ43、45の付け根の外縁部a、bを結ぶ直線Labを最短経路として、成長することを突き止めた(図11参照)。尚、図11に示すセパレータ140は、正極リブ143の真裏に、同じリブ幅の負極リブ145を設けた構成であり、浸透短絡に至る場合のデンドライトの成長経路を波線矢印にて示している。
上記知見から、本実施形態では、負極リブ45のベース部41に対する付け根の外縁部bと、正極リブ43のベース部41に対する付け根の外縁部aとが、正極面41Aと垂直な方向(X方向)から見て、重ならないようにした。
このようにすることで、デンドライトは、図9にて波線矢印で示すように、ベース部41内において、負極リブ45の付け根の外縁部bから正極リブ43の付け根の外縁部aに向かって斜めに成長する経路を、最短経路として成長する。
そのため、図11に示ように、デンドライトが、ベース部41内においてX方向に沿って真っ直ぐに成長する場合に比べて、ベース部41内におけるデンドライトの成長経路が長くなることから、浸透短絡をより一層抑制(遅らせる)出来る。
すなわち、両リブ43、45の外縁部a、b間の距離Labが長くなる分、ベース部41内における、デンドライトの成長経路が長くなり、浸透短絡をより一層抑制(遅らせる)出来る。さらに、デンドライトの成長経路を長くする場合に、2つのリブ43、45を長くした場合と、両リブ43、45の外縁部a、b間の距離Labを長くした場合とを比較すると、同じ距離長くしたとしても、両リブ43、45の外縁部a、b間の距離Labを長くした方が浸透短絡を抑制する効果が高い。これは、デンドライトが成長する速度が、リブの外面沿いよりもベース部41内において遅くなるためと考えられる。したがって、両リブ43、45の外縁部a、b間の距離Labを長くすることは、浸透短絡を抑制するために非常に効果的である。
以上のように、正極リブ43と負極リブ45の位置関係だけではなく、正極リブ43の付け根の外縁部aと負極リブ45の付け根の外縁部bとの位置関係をも考慮することで、浸透短絡の問題を著しく改善することができ、実用上の浸透短絡に対する信頼性が極めて高い、これまでに無かった鉛蓄電池を作製することができる。
尚、ベース部41の厚さTは「0.3mm」以下であり、両リブ43、45の外縁部a、b間の距離Labはベース部41の厚さTよりも大きいことが好ましい。このようにすることでセパレータ40の抵抗を小さくしたまま、浸透短絡を抑制することが出来る。また、ベース部41の厚さTは「0.15mm」以上であり、両リブ43、45の外縁部a、b間の距離Labはベース部41の厚さTよりも大きいことが好ましい。このようにすることでベース部41の厚さが薄いことによる浸透短絡を抑制しつつ、さらに、浸透短絡を抑制する効果を高めることが出来る。
すなわち、セパレータ40のベース部41の厚さTは、従来相当の厚さとしつつ、ベース部41内におけるデンドライトの成長経路だけ長くすることが出来るため、セパレータ40の抵抗を小さくしたまま、浸透短絡を抑制することが出来る。
また、本実施形態では、正極リブ43のリブ幅D1よりも負極リブ45のリブ幅D2を狭くしている。これによると、負極リブ45のリブ幅D2を狭くしておけば、負極板30Nに対する負極リブ45の接触面積が少なくなる。また、負極リブ45のリブ幅D2を正極リブ43のリブ幅D1より大きくした場合に比べて、正極リブ43と負極リブ45の重なる部分が少なくなる(ただし、正極リブ43のリブ幅D1は同一と仮定)ので、セパレータ40の抵抗を小さくしたまま、浸透短絡を抑制することができる。この構成は、負極リブ45の付け根の外縁部aと正極リブ43の外縁部bの位置とを重ならせないという着想に至ったからこそ、想到できたことである。
また、図9に示すように、負極リブ45の高さH2は、正極リブ43の高さH1よりも低い。負極リブ45の高さを低くすることで、僅かなスペースを活用して、負極リブ45を形成することが可能であり、電槽など既存部品のサイズ(X方向のサイズ)を変更することなく、浸透短絡の対策が可能になるというメリットがある。また、正極板30Pとセパレータ40との距離を確保できるので、酸化によるセパレータ40の劣化を抑制することが出来る。
また、鉛蓄電池10は、アイドリングストップ車用である。アイドリングストップ車用の鉛蓄電池10は設計上の理由(電解液量に対して活物質量が多い)、及び使用上の理由(成層化しやすい)から浸透短絡が起こりやすくなる。したがって、本実施形態のように、正極リブ43と負極リブ45の位置関係だけではなく、正極リブ43の外縁部aと負極リブ45の外縁部bとの位置関係をも考慮することで、アイドリングストップ車用の鉛蓄電池特有の浸透短絡の問題を著しく改善することができる。
また、例えば、アイドリングストップ車用の鉛蓄電池10では、ベース部41の厚さを0.3mm以下とした場合に、浸透短絡を効果的に抑制することは困難であった。しかしながら、本実施形態のように、正極リブ43と負極リブ45の位置関係だけではなく、正極リブ43の外縁部aと負極リブ45の外縁部bとの位置関係をも考慮し、かつ、距離Labをベース部41の厚さTの1.3倍以上にすることで、アイドリングストップ車用の鉛蓄電池特有の浸透短絡の問題を著しく改善し、かつ、セパレータの抵抗を小さくすることができる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態では、セパレータ40をポリエチレンシートとしたが、微孔性の樹脂シートであれば、これに限定されない。また、上記実施形態では、袋形状のセパレータ40を例示したが、形状は袋状に限定されず、例えば、板形状でもよい。
(2)実施形態では、(A)、(B)の位置関係を満たすため、負極リブ45を正極リブ43の真裏に設け、更に、負極リブ45のリブ幅D2を、正極リブ43のリブ幅D1より狭くした例を示した。負極リブ45と正極リブ43は、(A)、(B)の関係を満たしていればよく、実施形態の例に限定されない。例えば、図12に示す、セパレータ240のように、リブ形状は同一として、正極リブ243に対して負極リブ245の位置をZ方向でずらすことにより、(A)、(B)の関係を満たすようにしてもよい。また、同一形状の負極リブ45を正極リブ43の真裏に設ける場合でも、リブ幅D2、D1の大小関係を反転して、正極リブ43のリブ幅D1よりも負極リブ45のリブ幅D2を厚くすることにより、(A)、(B)の関係を満たすようにしてもよい。
(3)実施形態では、正極リブ43や負極リブ45の断面形状を台形としたが、断面形状について特に制約はなく、台形以外の形状、例えば、長方形型や円弧形状にしてもよい。
(4)負極板30Nの活物質(負極電極材料)には、黒鉛が含有されていてもよい。黒鉛粒子はサイズが大きな導電体で、硫酸鉛への電子の通り道となることにより、負極板30Nの充電を容易にする。一方、本出願人は、PSOC寿命の向上を検討する過程で、活物質中の黒鉛が、浸透短絡の原因となることを見出した。この原因として、黒鉛粒子が負極板30N表面に露出し、黒鉛粒子の露出部が金属鉛の析出の中心となることが考えられる。即ち、露出した黒鉛粒子から金属鉛のデンドライトが成長し、セパレータを貫通して短絡を引き起こすことが考えられる。黒鉛が浸透短絡の原因になることはこれまで知られておらず、出願人が初めて発見したものである。したがって、上述した実施形態のように、正極リブ43と負極リブ45の位置関係だけではなく、正極リブ43の外縁部aと負極リブ45の外縁部bとの位置関係をも考慮することで、負極板30Nの活物質に黒鉛を含有した電池特有の浸透短絡の問題を著しく改善することができる。
10...鉛蓄電池
20...電槽
30P...正極板
30N...負極板
40...セパレータ
41...ベース部
43...正極リブ
45...負極リブ
50...蓋部材
60P、60N...端子部
D1、D2...リブ幅

Claims (5)

  1. 正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板との間に位置するセパレータと、を備えた鉛蓄電池であって、
    前記セパレータは、
    ベース部と、
    前記ベース部のうち前記正極板と相対する正極面に設けられた正極リブと、
    前記ベース部のうち前記負極板と相対する負極面に設けられた負極リブと、を有し、
    前記負極リブは、前記正極面と垂直な方向から見て、前記正極リブの中心と少なくとも一部が重なる位置に有り、かつ前記正極リブの前記ベース部に対する付け根の外縁部と前記負極リブの前記ベース部に対する付け根の外縁部とが、前記垂直な方向から見て、重ならない位置に有る、鉛蓄電池。
  2. 請求項1に記載の鉛蓄電池であって、
    前記ベース部の厚さが0.3mm以下であり、
    前記正極リブの前記外縁部と前記負極リブの前記外縁部との距離が、前記ベース部の厚さの1.3倍以上である、鉛蓄電池。
  3. 請求項1または請求項2に記載の鉛蓄電池であって、
    前記負極リブのリブ幅が前記正極リブのリブ幅よりも狭い、鉛蓄電池。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の鉛蓄電池であって、
    前記負極板の負極電極材料は、黒鉛を含有している、鉛蓄電池。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の鉛蓄電池であって、
    アイドリングストップ車用である、鉛蓄電池。
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