以下に、添付図面を参照して、本発明に係る硬貨処理装置について詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る硬貨処理装置10の外観を示す斜視図である。図1に示すように、硬貨処理装置10の機体11上面にはシャッターで開閉される硬貨の入金口12等が形成されている。また、機体11の前面には、出金箱13、返却箱14、入金リジェクト箱15、収納投出部ユニット16及び金箱ユニット17等が、それぞれ引出可能に配設されている。
図2は、硬貨処理装置10の内部構成を説明するための模式図である。また、図3〜図5は、それぞれ硬貨処理装置10の内部構造を示す斜視図、正面図及び左側面図である。なお、図2では、硬貨処理装置10内部の構成を左右2つの図に分けて示しているが、一部の構成は重複して示されている。
図3〜図5に示すように、硬貨処理装置10の機体11の上部側に入金部20が配設され、この入金部20の下部側に金種別の一時保留部21が前後方向に沿って配設されている。一時保留部21より下部側の一側(図面左側)には、収納投出部ユニット16に搭載された金種別の収納投出部22が前後方向に沿って配設され、一時保留部21より下部側の他側(図面右側)には、金箱ユニット17に搭載された金種別の金箱23が前後方向に沿って配設されている。一時保留部21の下部側で収納投出部22と金箱23との間に返却箱14が配設され、収納投出部22の左側には、横搬送部24が前後方向に沿って配設されている。横搬送部24の後部側から入金部20に亘って縦搬送部25が配設され、横搬送部24の前側には、出金箱13を含む出金機構26が配設されている。
このように、一時保留部21の下側には、収納投出部22、返却箱14及び金箱23の3つの収納部27a、27b、27c(図6参照)が横方向(以下、左右方向と呼ぶ)に並んで配置されている。収納投出部22は、入金処理時に入金する硬貨を一時保留部21から受け入れて金種別に収納すると共に、出金処理時には出金する硬貨を投出する。金箱23は、硬貨処理装置10から回収する硬貨を一時保留部21から受け入れて収納する。返却箱14は、入金処理がキャンセルされた場合等に、一時保留部21に一時保留された硬貨を収納して返却するために利用する。収納可能な硬貨の枚数は、硬貨径や厚みによって異なるが、一時保留部21に収納可能な硬貨の枚数が数百枚(例えば500枚)であるのに対して、収納投出部22には数千枚(例えば2000枚)の硬貨を収納可能であり、金箱23にも数千枚(例えば4000枚)の硬貨を収納することができる。
入金部20は、入金口12からホッパ12a内に投入された硬貨を受け入れて所定量ずつ送り出す供給部30と、この供給部30又は縦搬送部25から送り込まれる硬貨を受け入れて1枚ずつ繰り出す繰出部31と、繰出部31から1枚ずつ繰り出される硬貨を搬送する搬送通路32とを有している。供給部30及び繰出部31では、例えば回転円盤を用いた硬貨繰出構造が採用されている。
搬送通路32では、通路内の硬貨が搬送ベルトによって搬送される。搬送通路32には、搬送される硬貨を識別する識別部33が配設され、この識別部33より搬送方向下流側には、機体11の前側から後側へ向けて選別通路が配設されている。選別通路には、識別部33による識別結果に基づいて硬貨を選別する複数の選別部34が配設されている。選別部34には、搬送方向上流側から、識別部33で識別不能と判別されたリジェクト硬貨を選別するリジェクト硬貨選別部、任意の金種又は任意の種類の硬貨を選別する任意硬貨選別部、5円硬貨、1円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、10円硬貨、500円硬貨の各金種の硬貨を選別する金種別選別部が含まれている。リジェクト硬貨選別部で選別されたリジェクト硬貨は入金リジェクト箱15に送り込まれ、任意硬貨選別部で選別された任意硬貨及び各金種硬貨選別部で選別された各金種の硬貨は一時保留部21に金種別に送り込まれる。
図6は、一時保留部21、収納投出部22、返却箱14及び金箱23について説明するための模式図である。一時保留部21は、機体11の前後方向に沿って、金種別に配設されている。また、収納投出部22及び金箱23は、各一時保留部21に対応して金種別に配設されている。
各一時保留部21は、上下に開口を有する断面矩形の筒状構造を有する保留枠40と、保留枠40の底面で下開口を開閉する底部材41とを有している。保留枠40は、機体11の左右方向に沿って、収納投出部22、返却箱14、金箱23の上方位置に移動できる。また、底部材41は、機体11の左右方向に沿って、収納投出部22及び返却箱14の上方位置に移動できる。保留枠40及び底部材41の移動はモータなどの電気的駆動手段によって行われるが、保留枠40及び底部材41は独立して移動できるようになっている。
図6に示すように、保留枠40が搬送通路32の下方(各選別部34の下方)かつ中央の収納部27bである返却箱14の上方にあって、底部材41によって底面を閉塞される位置を一時保留位置として、この一時保留位置で、搬送通路32の金種別選別部で金種別に選別された硬貨が、それぞれ対応する一時保留部21の保留枠40内に落下して一時保留される。一時保留された硬貨を収納投出部22へ収納する場合には、保留枠40のみが収納投出部22上に移動して、下開口から収納投出部22に硬貨を放出する。一時保留された硬貨を金箱23へ収納する場合には、保留枠40のみが金箱23上に移動して、下開口から金箱23に硬貨を放出する。また、一時保留された硬貨を返却する場合には、底部材41のみが収納投出部22上に移動して保留枠40の底面を開放することにより、硬貨を返却箱14に放出する。
収納投出部22及び金箱23の上方には、仕切枠42、43が配置されており、保留枠40の下開口から収納投出部22又は金箱23へ硬貨を放出する際に、硬貨が放出先を外れて外側へ飛び出さないようになっている。なお、仕切枠42、43は底部材41に固定されており、底部材41が移動する際には仕切枠42、43が底部材41と共に移動する。
各一時保留部21の保留枠40は、例えば、上面全面及び下面全面が開放された、装置前後方向に長い枠体の内部を、複数の筒形状に分割して形成される。また、装置前後方向に長い板部材を底部材41として、上面全面及び下面全面が開放された装置前後方向に長い枠体の内部を、対応する保留枠40に合わせて複数に分割して仕切枠42、43とする。すなわち、1列に金種別に配設された一時保留部21の各保留枠40は連結されており、1列に配設された底部材41と該底部材41の左右に配設された仕切枠42、43とが連結されている。
1つの一時保留部21で保留枠40を移動させようとすると、これに伴って全ての保留枠40が移動するので、一時保留部21から収納投出部22又は金箱23へ硬貨を放出する際には、全ての一時保留部21から、対応する収納投出部22又は金箱23に硬貨が放出されることになる。同様に、底部材41を移動させると、全ての一時保留部21から返却箱14に硬貨が放出される。
図2、図3〜図5に示すように、収納投出部22は、収納投出部ユニット16に搭載されており、機体11の前後方向に沿って金種別に配設されている。各収納投出部22は上面を開口した箱状に形成されており、一時保留部21のそれぞれから金種別に放出される硬貨が、対応する収納投出部22のそれぞれに金種別に収納される。各収納投出部22に収納されている硬貨は、下部に配設されている投出機構50によって1枚ずつ横搬送部24へ投出できるようになっている。投出機構50として、例えば回転円盤を用いた硬貨繰出構造が採用される。各収納投出部22には、例えば2000枚程度の硬貨を収納することができるが、出金処理に備えて、少なくとも200枚程度の硬貨を収納部内に維持するようになっている。
金箱23は、金箱ユニット17に搭載されており、機体11の前後方向に沿って金種別に配設されている。各金箱23は上面を開口した箱状に形成されており、各金箱23には、例えば4000枚程度の硬貨を収納することができる。各金箱23は個別に設けられており、金箱ユニット17を機体11から引き出した状態で、金箱ユニット17に対して各金箱23を脱着できるようになっている。
図2に示すように、金種別の一時保留部21の最前部には、搬送通路32の任意選別部で選別された任意硬貨を一括して一時保留する一括一時保留部21aが配設されている。また、収納投出部22の最前部には、一括一時保留部21aから放出される任意硬貨や後述する精査時におけるリジェクト硬貨を収納する一括収納箱22aが配設されている。一括収納箱22a中の硬貨は、収納投出部22と一体的に機体11の前面に引き出して取り出すことができる。また、金種別の金箱23の最前部には、一括一時保留部21aから放出される任意硬貨を収納する一括金箱23aが配設されている。
返却箱14は、上面が開口された、機体11の前後方向に沿って長い箱状に形成されており、一時保留部21(一括一時保留部21aも含む)から放出される硬貨を一括して受け入れて収納する。
横搬送部24は、機体11の前後方向に沿って配設されていて、各収納投出部22(一括収納箱22aは除く)から投出される硬貨を受け入れて搬送するベルトコンベヤによって構成されている。このベルトコンベヤは、回収時及び精査時には機体11の後部側へ硬貨を搬送し、出金時には機体11の前部側へ硬貨を搬送する。縦搬送部25は、横搬送部24によって後部側へ搬送された硬貨を受け入れて、上方の入金部20に搬送するベルトコンベヤによって構成されている。このベルトコンベヤは、表面に硬貨を引っ掛けて搬送する突起付きのベルトを用いることにより硬貨を上方へ搬送する。横搬送部24及び縦搬送部25によって、収納投出部22から投出された硬貨を入金部20に搬送する搬送部55が構成される。
出金機構26は、横搬送部24の前部側から送り込まれる出金硬貨を受け入れる出金一時保留部60、横搬送部24から出金一時保留部60に送り込まれる出金硬貨の金種を判別する判別部61、出金箱13を昇降させるリフト62等を有している。リフト62は、出金一時保留部60から出金硬貨を受け入れる下方の受取位置と、外部からの硬貨の取り出しを可能とする上方の取出位置との間で、出金箱13を昇降させる。
出金処理時には、投出機構50によって、収納投出部22から横搬送部24に出金硬貨が投出される。投出された硬貨は、横搬送部24の前部側に搬送されて判別部61によって判別され、一時保留位置にある出金一時保留部60内に一時保留される。判別部61が、一時保留した硬貨を出金できないと判別した場合には、出金一時保留部60が移動して出金リジェクト箱63に硬貨を放出する。一方、一時保留した硬貨を出金できると判別した場合には、出金一時保留部60が移動して、受取位置にある出金箱13に硬貨を放出する。そして、出金箱13が取出位置へ移動することにより硬貨を出金する。
図7は、硬貨処理装置10の機能構成概略を示す機能ブロック図である。硬貨処理装置10は、上述した構成の他に、制御部70、記憶部71及び通信部72を有している。制御部70は、各部を制御して本実施形態に記載する各機能及び各動作を実現する機能を有する。記憶部71は、半導体メモリ等の記憶装置から成り、制御部70の動作に必要なプログラムや設定情報等の各種データの保存に利用される。通信部72は、外部装置との間で各種データを送受信する機能を有する。例えば、コンピュータ装置から成る操作端末と制御部70とを、通信部72を介して接続して、操作端末の画面上に各種情報を表示しながら操作部を操作して、硬貨処理の実行や硬貨処理に係る各種の設定操作を行えるようになっている。硬貨処理装置10で報知処理が必要となった場合にも、操作端末を利用して報知が行われる。
硬貨処理装置10では、精査優先モード又は収納優先モードを選択することができる。動作モードを変更すると、各収納投出部22に収納する硬貨の枚数が変更され、精査処理の処理方法も変更される。なお、動作モードの変更は、操作端末を操作して、モード変更を指示する信号を通信部72から制御部70へ送信することによって行われる。
精査優先モードとは、精査処理を短時間で行うための動作モードである。精査優先モードを選択した際に収納投出部22の硬貨収納枚数を何枚にするかについては設定により変更可能であるが、精査優先モードでは、各収納投出部22の硬貨収納枚数が、対応する一時保留部21に一時保留可能な硬貨の最大枚数、又はこの最大枚数より少なくなるように設定される。制御部70は、各収納投出部22に収納中の硬貨の枚数が、設定された硬貨収納枚数以下となるように、各収納投出部22への硬貨の収納を制御する。
この結果、精査優先モードでは、一時保留部21を利用して短時間で精査処理を行うことができる。具体的には、精査優先モードで精査処理を開始すると、制御部70は、投出機構50によって収納投出部22から硬貨を投出して、投出した硬貨を横搬送部24及び縦搬送部25を経て入金部20に搬送し、識別部33で識別計数した後、選別部34で選別して、対応する一時保留部21に一時保留する。そして、制御部70は、収納投出部22から投出された全ての硬貨を一時保留部21に一時保留した後、一時保留部21に一時保留している硬貨を、空になった元の収納投出部22に放出して戻す。このように、精査優先モードでは、収納投出部22内の全ての硬貨を投出して一時保留部21に同時に収納して精査することができるので、短時間で精査処理を完了することができる。なお、精査処理は、一金種だけについて行うこともできるし、全金種について行うこともできる。
これに対して、収納優先モードとは、収納投出部22に大量の硬貨を収納するための動作モードである。収納優先モードを選択した際に収納投出部22の硬貨収納枚数を何枚にするかについては設定により変更可能であるが、収納優先モードでは、各収納投出部22の硬貨収納枚数が、対応する一時保留部21に一時保留可能な硬貨の最大枚数より多くなるように設定される。具体的には、硬貨収納枚数が、一時保留部21に一時保留可能な硬貨の最大枚数より多く、かつ、収納投出部22に収納可能な硬貨の最大枚数以下となるように設定される。制御部70は、各収納投出部22に収納中の硬貨の枚数が、設定された硬貨収納枚数以下となるように、各収納投出部22への硬貨の収納を制御する。
次に、各モードでの硬貨処理装置10内の硬貨収納処理について説明する。なお、一時保留部21、収納投出部22及び金箱23では、各収納部が満杯となる硬貨の最大枚数(フル枚数)が設定されており、動作モードによらず、このフル枚数を超えて硬貨を収納することはできない。硬貨径及び厚みによって同容積の収納部に収納される硬貨の枚数が変わるため、フル枚数は、収納される硬貨の金種に応じて設定される。以下では、一時保留部21が満杯になるフル枚数を一時保留部フル枚数、収納投出部22が満杯になるフル枚数を収納投出部フル枚数、金箱23が満杯になるフル枚数を金箱フル枚数として説明する。
また、硬貨処理装置10では、収納投出部22から硬貨を投出して出金処理を実行できるように、収納投出部22内の硬貨の枚数を、予め設定された範囲内に維持するようになっている。具体的には、各収納投出部22について、補充開始枚数及び補充終了枚数を設定して、各収納投出部22内の硬貨の枚数を、補充開始枚数と補充終了枚数との間に維持する。例えば、収納投出部22に収納されている硬貨の枚数が減少して補充開始枚数に達すると、硬貨の補充が開始され、制御部70は、入金処理時に入金する硬貨をこの収納投出部22に収納するための制御を実行する。このとき、制御部70は、各収納投出部22に収納されている硬貨の枚数が、補充終了枚数を超えないように制御する。以下では、補充終了枚数が一時保留部フル枚数と同一枚数に設定されているものとして説明する。
まず、精査優先モードの処理について説明する。図8は、精査優先モードの硬貨処理装置10で行われる処理例を示すフローチャートである。
以下では、精査優先モードを選択すると、各収納投出部22の硬貨収納枚数が、対応する一時保留部21の一時保留部フル枚数に設定されるものとする。また、各収納投出部22には、補充終了枚数、すなわち一時保留部フル枚数の硬貨が既に収納されており、精査優先モードでは、これ以上の硬貨を各収納投出部22に収納できない状態にあるものとする。一方、金箱フル枚数まで硬貨を収納するよう設定された金箱23では、収納されている硬貨の枚数が金箱フル枚数に達しておらず、硬貨を収納可能な状態にあるものとして説明する。
精査優先モードを選択した硬貨処理装置10で入金処理を開始すると、制御部70は、入金部20に受け入れた入金硬貨を繰出部31から1枚ずつ搬送通路32に繰り出して搬送する。
制御部70は、搬送通路32を搬送される入金硬貨を識別部33で識別して、処理対象外の硬貨や識別不能な硬貨を、入金リジェクト硬貨として、選別部34から入金リジェクト箱15に排出する。入金リジェクト硬貨は、機体11の前面から入金リジェクト箱15を引き出すことにより、装置外へ取り出せるようになっている。
制御部70は、識別部33での識別結果に基づいて、正常な入金硬貨を選別部34で選別して一時保留部21に金種別に一時保留する(ステップS1)。このとき、図6に示すように、一時保留部21では保留枠40が一時保留位置にあり、各保留枠40内の底部材41上に硬貨を集積することになる。
制御部70は、各一時保留部21に一時保留されている硬貨(以下「一時保留硬貨」と記載する)の枚数を監視する。1つ以上の一時保留部21で、一時保留硬貨の枚数が一時保留部フル枚数に達すると(ステップS2;Yes)、制御部70は、全ての一時保留部21への硬貨の一時保留を停止する。そして、制御部70は、全ての一時保留部21から一時保留硬貨を放出して、対応する金箱23に収納する(ステップS3)。
全ての一時保留部21が硬貨を収納可能な状態であれば(ステップS2;No)、制御部70は、一時保留部21の一時保留硬貨の枚数と、対応する金箱23に収納されている硬貨の枚数との合計が、金箱フル枚数に達する一時保留部21が存在するか否かを判定する(ステップS4)。
制御部70は、全ての一時保留部21から一時保留硬貨を放出して、対応する金箱23に収納しても、全ての金箱23で硬貨収納枚数が金箱フル枚数に達しない間は(ステップS4;No)、一時保留部21への入金硬貨の収納が完了するまで、硬貨枚数を監視しながら、入金硬貨を一時保留部21へ一時保留する処理を継続する(ステップS5;No)。一時保留部21への入金硬貨の収納が完了した場合は(ステップS5;Yes)、制御部70は、全ての一時保留部21から一時保留硬貨を放出して、対応する金箱23に収納する(ステップS6)。具体的には、図6に示す保留枠40のみを金箱23上に移動させて、各保留枠40の一時保留硬貨を金箱23に放出して収納し、処理を完了する。
一時保留部21に入金硬貨を一時保留している間に、一時保留硬貨の枚数と、金箱23に収納されている硬貨の枚数との合計が、金箱フル枚数に達する一時保留部21が発生すると(ステップS4;Yes)、これを検知した制御部70は、一時保留部21への硬貨の一時保留を停止する。言い換えれば、1つ以上の一時保留部21で、一時保留硬貨を対応する金箱23に収納した際に、この金箱23に収納された硬貨の枚数が、金箱23の硬貨収納枚数として設定された設定枚数に達する状態となった所で、一時保留部21への硬貨の一時保留を停止する。
そして、制御部70は、全ての一時保留部21から一時保留硬貨を放出して、対応する金箱23に収納する(ステップS7)。具体的には、図6に示す保留枠40のみを金箱23上に移動させて、各保留枠40の一時保留硬貨を金箱23に放出して収納する。この結果、先に制御部70が検知した一時保留部21に対応する金箱23で、収納されている硬貨の枚数が金箱フル枚数に達する。
硬貨処理装置10で一時保留部21から金箱23へ硬貨を収納する際には、全ての一時保留部21で、対応する金箱23への硬貨の収納が行われるため、1つの金箱23で硬貨を収納できなくなると、たとえ他の金箱23に硬貨を収納できる状態であっても、これ以上、一時保留部21から金箱23へ硬貨を放出する処理を行うことはできない。
このため、少なくとも1つの金種について、収納投出部22に収納されている硬貨の枚数が、精査優先モードを選択した際に設定された設定枚数に達し、かつ、金箱23に収納されている硬貨の枚数が金箱23に収納可能な硬貨の設定枚数に達すると、制御部70は、これ以上、入金硬貨の処理を続けることはできないと判定する。
そして、制御部70は、硬貨処理装置10内で硬貨を収納できなくなったことを報知するために、エラー報知処理を実行する(ステップS8)。具体的には、例えば、金箱23に収納されている硬貨を回収して、硬貨を収納可能な状態にするよう指示する情報を、通信部72から出力して操作端末の画面上に表示させる。画面上の情報を確認した利用者が、金箱23から硬貨を回収すると、入金硬貨の処理を再開して入金処理を完了することができる。
精査優先モードでは、こうして入金処理を完了した後も、収納投出部22に収納されている硬貨の枚数が、精査優先モードを選択した際に設定された、一時保留部フル枚数以下の設定枚数に維持されているので、上述したように収納投出部22に収納されている全ての硬貨を、対応する一時保留部21に同時に収納することにより、精査処理を短時間で完了することができる。
なお、硬貨処理装置10では、精査優先モードで動作するように硬貨処理装置10を設定しながら、処理の途中で、収納優先モードで動作するように動作モードを切り替えることも可能となっている。具体的には、精査優先モードで処理を行っている間に、例えば図8のステップS7に示したように硬貨を収納することができなくなった場合に、制御部70は、これを報知する操作端末の画面上に、動作モードの切替要否を問う情報を表示する。そして、利用者が、精査優先モードから収納優先モードへ動作モードを切り替える操作を行った場合には、制御部70が、動作モードを収納優先モードへ切り替える。この結果、硬貨処理装置10では、後述する収納優先モードでの動作が開始され、収納投出部22に、一時保留部フル枚数を超える硬貨を収納することが可能となり、停止していた処理を再開して、収納投出部22に硬貨を収納しながら処理を継続することができる。
次に、収納優先モードの処理について説明する。図9は、収納優先モードの硬貨処理装置10で行われる処理例を示すフローチャートである。
以下では、収納優先モードを選択すると、各収納投出部22の硬貨収納枚数が、収納投出部フル枚数に設定されるものとする。また、各収納投出部22には、補充終了枚数として設定された一時保留部フル枚数の硬貨が既に収納されているが、金箱フル枚数まで硬貨を収納するよう設定された金箱23では、収納されている硬貨の枚数が金箱フル枚数に達しておらず、硬貨を収納可能な状態にあるものとする。すなわち、収納優先モードを選択して収納投出部フル枚数に設定された各収納投出部22の硬貨収納枚数を除いて、図8を参照しながら説明した精査優先モードによる処理開始時と同じ状況にあるものとする。
収納優先モードを選択した硬貨処理装置10で入金処理を開始すると、制御部70は、図9に示すステップS11から処理を開始するが、ステップS11〜S17の各処理は、図8に示す精査優先モードのステップS1〜S7の各処理と同じであるため説明を省略する。
図8に示す精査優先モードでは、ステップS7の処理を行った後、ステップS8で、これ以上の硬貨を収納できないと判定した制御部70がエラー報知処理を行うのに対して、図9に示す収納優先モードでは、ステップS17の処理を行った後、同じ状況から、さらに収納投出部22に硬貨を収納しながら入金処理を継続することができる。
具体的には、入金硬貨を識別計数して一時保留部21に一時保留する処理を開始して(ステップS11)、一時保留部21の一時保留硬貨の枚数と、金箱23に収納されている硬貨の枚数との合計が、金箱フル枚数に達する一時保留部21が発生すると(ステップS14;Yes)、これを検知した制御部70は、一時保留部21への硬貨の一時保留を停止して、全ての一時保留部21から一時保留硬貨を放出して金箱23に収納する(ステップS17)。この結果、先に制御部70が検知した一時保留部21に対応する金箱23で、収納されている硬貨の枚数が金箱フル枚数に達し、金箱23への硬貨の収納ができなくなるが、制御部70は、一時保留部21の一時保留硬貨の収納先を金箱23から収納投出部22に切り替えて、入金硬貨を一時保留部21に一時保留する処理を再開する(ステップS18)。
そして、制御部70は、各一時保留部21に一時保留される硬貨の枚数監視を再開して、1つ以上の一時保留部21で、一時保留硬貨の枚数が一時保留部フル枚数に達すると(ステップS19;Yes)、全ての一時保留部21から一時保留硬貨を放出して収納投出部22に収納する(ステップS20)。
全ての一時保留部21が硬貨を収納可能な状態であれば(ステップS19;No)、制御部70は、一時保留部21の一時保留硬貨の枚数と、対応する収納投出部22に収納されている硬貨の枚数との合計が、収納投出部フル枚数に達する一時保留部21が存在するか否かを判定する(ステップS21)。
制御部70は、全ての一時保留部21から一時保留硬貨を放出して、対応する収納投出部22に収納しても、全ての収納投出部22で硬貨収納枚数が収納投出部フル枚数に達しない間は(ステップS21;No)、一時保留部21への入金硬貨の収納が完了するまで、硬貨枚数を監視しながら、入金硬貨を一時保留部21へ一時保留する処理を継続する(ステップS22;No)。一時保留部21への入金硬貨の収納が完了した場合は(ステップS22;Yes)、制御部70は、全ての一時保留部21から一時保留硬貨を放出して、対応する収納投出部22に収納する(ステップS23)。具体的には、図6に示す保留枠40のみを収納投出部22上に移動させて、各保留枠40の一時保留硬貨を収納投出部22に放出して収納し、処理を完了する。
一時保留部21に入金硬貨を一時保留している間に、一時保留硬貨の枚数と、収納投出部22に収納されている硬貨の枚数との合計が、収納投出部フル枚数に達する一時保留部21が発生すると(ステップS21;Yes)、これを検知した制御部70は、一時保留部21への硬貨の一時保留を停止する。言い換えれば、1つ以上の一時保留部21で、一時保留硬貨を対応する収納投出部22に収納した際に、この収納投出部22に収納された硬貨の枚数が、収納投出部22の硬貨収納枚数として設定された設定枚数に達する状態となった所で、一時保留部21への硬貨の収納を停止する。
そして、制御部70は、全ての一時保留部21から一時保留硬貨を放出して、収納投出部22に収納する(ステップS24)。具体的には、図6に示す保留枠40のみを収納投出部22上に移動させて、各保留枠40の一時保留硬貨を収納投出部22に放出して収納する。この結果、先に制御部70が検知した一時保留部21に対応する収納投出部22で、収納されている硬貨の枚数が収納投出部フル枚数に達する。
硬貨処理装置10で一時保留部21から収納投出部22へ硬貨を収納する際には、全ての一時保留部21で、対応する収納投出部22への硬貨の収納が行われるため、1つの収納投出部22で硬貨を収納できなくなると、たとえ他の収納投出部22に硬貨を収納できる状態であっても、これ以上、一時保留部21から収納投出部22へ硬貨を収納する処理を行うことはできない。
このため、少なくとも1つの金種について、金箱23に収納されている硬貨の枚数が金箱23に収納可能な硬貨の設定枚数に達し、かつ、収納投出部22に収納されている硬貨の枚数が、収納優先モードを選択した際に設定された設定枚数に達すると、制御部70は、これ以上、入金硬貨の処理を続けることはできないと判定する。
そして、制御部70は、硬貨処理装置10内で硬貨を収納できなくなったことを報知するために、エラー報知処理を実行する(ステップS25)。具体的には、例えば、収納投出部22及び金箱23の少なくともいずれか一方から硬貨を回収して、硬貨を収納可能な状態にするよう指示する情報を、通信部72から出力して操作端末の画面上に表示させる。画面上の情報を確認した利用者が、例えば、金箱23から硬貨を回収すると、入金硬貨の処理を再開して入金処理を完了することができる。
収納優先モードでは、金箱23に硬貨を収納できなくなり、収納投出部22の硬貨収納枚数が、補充終了枚数として設定された枚数に達している場合でも、収納投出部22の硬貨収納枚数が、モード選択時に設定された硬貨収納枚数に達するまでの間は、入金処理を継続することができる。各収納投出部22には、数千枚の硬貨を収納可能であるため、各収納投出部22に収納する硬貨の枚数が数百枚の一時保留部フル枚数に制限される精査優先モードに比べて、処理を中断して硬貨を回収せざるを得ない事態の発生を抑制することができる。
なお、収納優先モードで動作する硬貨処理装置10においても、精査処理を実行することは可能である。具体的には、収納優先モードでは、収納投出部22に、一時保留部フル枚数を超える枚数の硬貨を収納可能であるため、精査優先モードの場合のように、収納投出部22から全ての硬貨を投出して一時保留部21に同時に一時保留する精査処理を行えない場合があるが、1金種ずつ、すなわち1つの収納投出部22毎に精査処理を行う。
例えば、収納投出部22に収納されている硬貨量が一時保留部フル枚数より多い1円硬貨の精査処理を行う場合には、制御部70は、1円硬貨を収納している収納投出部22から投出機構50によって1円硬貨を投出して、横搬送部24及び縦搬送部25を経て入金部20に搬送し、識別部33による識別計数及び選別部34による選別を経て一時保留部21に一時保留する。そして、一時保留部21に一時保留した1円硬貨の枚数が一時保留部フル枚数に達すると、これ以降、制御部70は、収納投出部22から投出された1円硬貨を一時保留部21まで搬送せず、一時保留部21より搬送方向上流側にある入金部20のホッパ12a内に保留する。
そして、収納投出部22から全ての1円硬貨を投出して内部が空になると、制御部70は、一時保留部フル枚数に達していた一時保留部21内の1円硬貨を、空になった収納投出部22に放出して戻す。こうして一時保留部21が空になると、続いて、制御部70は、入金部20のホッパ12a内に保留していた1円硬貨を送り出し、識別部33による識別計数及び選別部34による選別を経て一時保留部21に一時保留する。そして、制御部70は、一時保留部21に収納した1円硬貨を元の収納投出部22に放出して戻すことにより、1円硬貨の精査処理を完了する。他金種の硬貨についても同様の処理を繰り返すことにより、精査優先モードで行う精査処理に比べて時間はかかるが、収納投出部22に収納されている全ての硬貨について精査処理を行うことができる。
なお、ホッパ12aの利用については、先に一時保留部フル枚数を超えた分をホッパ12aに一時保留する態様に限らず、先に、収納投出部22から投出した全ての硬貨をホッパ12aに収納して、ホッパ12aから硬貨を送り出しながら精査処理を行う態様であっても構わない。
この他、例えば、収納投出部22で一時保留部フル枚数を超えている分の硬貨を、先に、収納投出部22から金箱23へ移動させる精査準備処理を行うことにより、収納優先モードで動作している硬貨処理装置10においても、精査優先モードで行う場合と同じ方法で精査処理を行うことができる。精査準備処理を行う必要があるため、この処理に必要な時間分だけ、精査優先モードで精査処理を行う場合に比べて時間はかかるが、精査処理の対象とする1つ又は複数の収納投出部22で、硬貨収納枚数を一時保留部フル枚数以下にすることにより、精査優先モードの場合と同様に、収納投出部22から全ての硬貨を投出して一時保留部21に同時に一時保留する精査処理を行うことができる。
また、硬貨処理装置10では、収納優先モードで動作するように硬貨処理装置10を設定しながら、精査優先モードと同じ方法で精査処理を実行可能な所定タイミングを報知するように設定することもできる。具体的には、各収納投出部22に対して、対応する一時保留部21の一時保留部フル枚数より少ない判定用枚数を予め設定して、各収納投出部22に収納されている硬貨の枚数が判定用枚数に達した収納投出部22が発生した場合には、制御部70が、精査処理実行の要否や、動作モード切替の要否を問う報知処理を実行するように設定する。なお、精査処理実行の報知については、各収納投出部22の収納硬貨枚数が判定用枚数に達しない任意のタイミングで行われるように設定することもできる。これにより、例えば、セキュリティを考慮して、不正が行われないように精査タイミングを利用者に知らせない運用にも対応することができる。
制御部70は、この設定を受けて、入金処理が完了する度に、収納投出部22に収納されている硬貨の枚数を確認して、硬貨枚数が判定用枚数に達すると、精査処理実行の要否や、動作モード切替の要否を問う報知処理を実行する。報知された情報を確認した利用者が精査処理を実行すると、精査優先モードの場合と同様に、収納投出部22に収納されている全ての硬貨を投出して一時保留部21に同時に収納する精査処理を実行することができる。また、報知された情報を確認した利用者が、収納優先モードから精査優先モードへ動作モードを切り替える操作を実行すると、硬貨処理装置10の動作モードを切り替えることができる。また、この他、利用者は、入金処理後に精査処理実行や動作モード切替の要否を問う報知処理が行われたことを受けて装置内の硬貨の収納状況を認識し、例えば、収納投出部22に収納されている一部の硬貨を金箱23へ移動させる処理や、金箱23から硬貨を回収する処理を実行することもできる。なお、収納投出部22の精査処理を不要とする利用者は、この所定タイミングの報知処理を実行しないように設定すればよい。
また、硬貨処理装置10では、収納優先モードでは精査処理を実行しないように設定することも可能となっている。具体的には、硬貨処理装置10で実行する処理を選択するメニューに精査処理のメニューを表示しないように設定したり、精査処理開始の指示がされても、これを受けた制御部70が、精査処理を実行せず、精査処理が実行できないことを示す情報を操作端末に表示して利用者に報知するように設定したりすることができる。
次に、硬貨処理装置10の金箱23から硬貨を回収する回収処理について説明する。硬貨処理装置10では、金箱23から硬貨を回収する際に、回収する硬貨の枚数が常に同じ枚数(固定枚数)となるように設定することができる。なお、この設定は、操作端末を操作して、設定を指示する信号を通信部72から制御部70へ送信することによって行われる。
図10は、回収処理の流れを示すフローチャートである。回収処理が開始されると、制御部70は、固定枚数の硬貨を回収する固定枚数回収処理を実行するよう設定されているか否かを判定する(ステップS31)。固定枚数回収処理を実行する設定になっていない場合は(ステップS31;No)、金箱23に収納されている硬貨をそのまま回収する処理が行われる。一方、固定枚数回収処理を実行する設定になっている場合には(ステップS31;Yes)、制御部70は、回収処理の処理対象となる金箱23に収納されている硬貨の枚数を確認する(ステップS32)。なお、固定枚数を何枚にするかについては設定により変更可能となっているが、以下では、金箱フル枚数の硬貨を回収するように設定されているものとして説明する。
金箱23から回収する硬貨の枚数が、回収時の硬貨枚数として設定された金箱フル枚数に達している場合には(ステップS32;No)、金箱23に収納されている硬貨をそのまま回収する処理が行われる。一方、金箱23から回収する硬貨の枚数が、金箱フル枚数より少ない場合には(ステップS32;Yes)、制御部70は、不足分の硬貨を、収納投出部22から金箱23へ移動させる処理を行う(ステップS33)。具体的には、収納投出部22から不足分の硬貨を投出して識別計数し、一時保留部21に一時保留した後、一時保留部21から放出して金箱23に収納する。そして、金箱23に収納されている硬貨の枚数が金箱フル枚数に到達すると、これを回収する処理が行われる(ステップS34)。
回収処理中は、制御部70が、処理状況を報知する報知処理を実行するようになっている。例えば、回収処理を開始した後、収納投出部22から金箱23へ不足分の硬貨を移動する処理が必要である場合には、硬貨の移動を終えるまで待機するよう指示する情報を通信部72から出力して、操作端末の画面上に表示する。また、収納投出部22から金箱23への硬貨の移動を終えて、金箱23から硬貨を回収可能な状態になると、金箱23から硬貨を回収するよう指示する情報を通信部72から出力して、操作端末の画面上に表示する。
なお、固定枚数回収の処理は、1つの金箱23のみで行うように設定することもできるし、複数の金箱23で行うように設定することもできる。例えば、1つの金箱23で固定枚数回収を行うよう設定した場合には、制御部70が、この金箱23に収納された硬貨の枚数を監視して、硬貨枚数が予め設定された固定枚数に達した所で、利用者に金箱23から硬貨を回収するよう指示する報知処理を行う。また、他の金箱23から硬貨を回収するために回収処理を開始した場合には、制御部70は、固定枚数回収を行うよう設定された金箱23から固定枚数の硬貨を回収できるように図10に示す処理を実行する。具体的には、例えば1円硬貨を収納する1つの金箱23で固定枚数回収を行うよう設定した場合には、この金箱23に収納された1円硬貨の枚数が固定枚数に達した所で、回収を指示する報知処理が行われる。また、金箱23の1円硬貨の枚数が固定枚数に達する前に、5円硬貨を収納する金箱23で5円硬貨を回収するための操作が開始されると、これを認識した制御部70が、1円硬貨を収納する金箱23の硬貨収納枚数を確認して、この金箱23から固定枚数の1円硬貨を回収できるように図10に示す処理を行うものである。
また、全ての金箱23で固定枚数回収を行うように設定した場合には、制御部70が、全ての金箱23で、収納された硬貨の枚数を監視して、硬貨枚数が予め設定された固定枚数に達した金箱23が発生すると、利用者に金箱23から硬貨を回収するよう指示する報知処理を行うと共に、全ての金箱23から固定枚数の硬貨を回収できるように、制御部70は、収納されている硬貨の枚数が固定枚数に達していない各金箱23について図10に示す処理を実行する。
また、硬貨処理装置10では、固定枚数回収を行う際に、対象とする金箱23の硬貨収納枚数が、予め設定されている固定枚数に満たない場合に、この不足分の硬貨を入金口12から投入して金箱23に収納することも可能となっている。具体的には、例えば、金箱23に不足分の硬貨を収納する必要があることを認識した制御部70が、不足分の硬貨を収納投出部22から金箱23へ移動させるか、入金口12から投入するかを、利用者に選択させるための情報を操作端末の画面上に表示する。利用者が、不足分の硬貨を収納投出部22から金箱23へ移動させることを選択した場合には、上述した処理を実行する。一方、利用者が、不足分の硬貨を入金口12から投入することを選択して、不足分の硬貨を入金口12へ投入した場合には、制御部70は、投入された硬貨を識別計数して、一時保留部21を経て金箱23へ収納する。これにより、金箱23から固定枚数の硬貨を収納可能な状態とすることができる。
このように、硬貨処理装置10では、金箱23から、予め設定した固定枚数の硬貨を回収する固定枚数回収処理を実行することができるので、例えば、硬貨を収納して運搬する硬貨袋の硬貨収納枚数を固定枚数として設定することにより、常に、固定枚数分の硬貨を硬貨袋に収納して運搬することができる。
上述してきたように、本実施形態に係る硬貨処理装置10によれば、硬貨処理装置10の動作モードとして、精査優先モード又は収納優先モードを選択することができる。動作モードを変更することにより、収納投出部22に収納可能な硬貨の枚数設定が変更されると共に、精算処理の処理方法が変更される。収納投出部22に大量の硬貨を収納するよりも、短時間で精査処理を完了することを優先したい場合は、精査優先モードを選択する。これにより、収納投出部22に収納する硬貨の枚数が一時保留部21に収納可能な硬貨の最大枚数以下に制限されるが、精査処理を短時間で完了することができる。一方、精査処理を短時間で行うよりも、収納投出部22に大量の硬貨を収納することを優先したい場合には、収納優先モードを選択する。これにより、精査処理を実行した場合には精査優先モードで行う場合に比べて精査処理に時間を要することになるが、一時保留部21に収納可能な硬貨の最大枚数による制限を受けることなく、大量の硬貨を収納投出部22に収納することができる。