まず、この発明の縦型洗濯乾燥機の実施の形態を説明する前に、ノズルの流路内の損失およびその流路の吹出口以降の損失について説明する。
流体を吹き出すノズルの流路内の損失は、断面積Sとその断面の濡れ縁長さLによって変化する。例えば、流路の入口から出口までの断面積Sが一定の場合には、断面の濡れ縁長さLが長い程、流路の摩擦抵抗が増加するため、流路内の損失が増加する。つまり、流路の断面がアスペクト比1に近い円形状で断面形状の変化が少ない場合、濡れ縁長さが短いため、流路内での損失が小さいという利点がある。その一方で、流路の吹出口を出た空気の到達距離は短い。ノズルの断面積は一定でも、急に折れ曲がっていたり、急に幅が広がっていたりすると、流路の形状変化に流れがついてくることができずに、圧損が高まったり、縮流が起きたりして、ノズルの流路内で送風効率が低下する。反対に、吹出口が細長い形状の場合、到達距離を伸ばせるが、流路内での損失が比較的大きくなる。
例えば、流体供給手段から供給される流体の流速,流量などは同じ条件とし、ノズルの流路の断面積を一定として、次の第1〜第3比較例のノズルとこの発明のノズルを考える。
(1) 入口側から出口側に向かって断面形状が同心円の円筒形状をした第1比較例のノズル。
(2) 入口側が円形の断面形状から出口側に向かって徐々に細長い断面形状をした第2比較例のノズル。
(3) 入口側が円形の断面形状から出口側に向かって徐々に細長い断面形状をしており、入口側から出口側に向かって断面積が徐々に広くなるように形成された膨らみ部を有するこの発明のノズルの一例。
(4) 入口側が円形の断面形状から出口側が入口側よりも小径の円形の断面形状である円錐台形状(絞り形状)をした第3比較例のノズル。
ノズルから吹き出す流体の到達距離の阻害要因としては、
(i) 流路内の形状による送風効率(第1比較例を基準の1とする)の低下
(ii) 吹出口を出た後に流速が侵食されることによる送風能力(第1比較例を基準の1とする)の低下
が挙げられる。この送風効率と送風能力の掛け合わせによって、ノズルから吹き出す流体の到達仕事を定義することができる。
図1に示す表は、上記(1)〜(4)の夫々のノズルの形状における送風効率Aと送風能力Bと到達仕事A×Bを表す図である。
上記(1)の第1比較例の到達仕事を1とすると、(2)の第2比較例では、ノズルの内壁面の摩擦損失が大きくなって送風効率が2割程度低下するが、周囲の空気を誘引することによる運動エネルギーの浸食が第1比較例より半減するため、到達距離が6割程度延長され、到達風量も増加する。
また、上記(3)のこの発明のノズルの一例は、(1)の第1比較例に対して送風効率が1割程度低下するが、(2)の第2比較例よりも1割程度損失が軽減され、周囲の空気を誘引することによる運動エネルギーの侵食が第1比較例より半減し、第2比較例と略同等であるため、到達仕事が第1比較例に対して8割程度向上し、到達距離が1.8倍に延長される。
また、単に吹出口を絞った形状である(4)の第3比較例のノズルでは、流路の圧損が大きくなって流量が激減し、初速の増加によるポテンシャルコアの延長効果を鑑みても、到達風量は減少するため、到達仕事という観点では第1比較例よりも低い値(0.9)を示す。
<到達距離が向上するメカニズム>
次に、流体供給手段の下流側に存在するノズルの形状に関連し、到達距離が向上するメカニズムについて説明する。
噴流の流速は流路の吹出口から吹出された直後から減衰する。ここで、噴流の到達距離は、噴流のポテンシャルコアの長さに関係する。
図2はポテンシャルコアについて説明する概略図を示している。図2(a)は円筒形状をした第1比較例のノズルの噴流のポテンシャルコア領域を示し、図2(b)は上記(3)のこの発明のノズルの一例の噴流のポテンシャルコア領域を示している。
一般に、流路の出口から流出した直後の噴流中央部の速度分布は一様である。速度分布が一様の部分は、両側から発達する自由混合層によって侵食されて減少し、ある距離のところで消滅する。この速度分布が一様な噴流部分はくさび状であって、ポテンシャルコアとよばれる。
静止流体中に流出する自由噴流の場合、ポテンシャルコアの長さは、ノズルの吹出口の形状、ノズルの吹出口の壁面に沿う境界層の状態、初期乱れ等によって異なるが、2次元乱流噴流では吹出口高さ(あるいは直径)の5〜7倍程度、軸対称乱流噴流では吹出口高さ(あるいは直径)の5〜8倍程度になることが知られている。
このポテンシャルコアの長さが長くなるにつれて、噴流の到達距離が延長される。例えば、吹出口高さを一定にして、吹出口横幅を無限長さに設定すれば、既に説明の通り2次元乱流噴流となり、ポテンシャルコア長は吹出口高さ(あるいは直径)の5〜7倍程度となる。また、例えば吹出口高さと吹出口横幅を同一(アスペクト比:1)に設定すれば、軸対称乱流噴流と同様になり、ポテンシャルコア長は吹出口高さおよび吹出口横幅の5〜8倍程度になる。ノズルの流路の吹出口のアスペクト比を最適化し、例えば吹出口高さに対して横幅を適切に設定してやれば、ポテンシャルコア長は、吹出口高さだけでなく吹出口横幅の影響も受けるため、吹出口高さと吹出口横幅の平均値の5〜8倍程度となり、同一の吹出口高さの場合の2次元乱流噴流や軸対称乱流噴流の場合に比べて飛躍的に延長されることが知られている。
図3に示すグラフは、図1の(3)に示すこの発明のノズルの一例と図1の(2)に示す第2比較例との比較を示しており、吹出口部近傍の断面のアスペクト比と、ポテンシャルコア長との関係を表している。
図3中の「▲」は、図1の(3)に示すこの発明のノズル(出口開口が細長い形状の出口細長部と膨らみ部を備えたノズル)の吹出流速、吹出流量、吹出口面積を固定し、アスペクト比(吹出口幅/吹出口高さ)を変化させたときのポテンシャルコア長を、アスペクト比が1(吹出口が正方形)となるときのポテンシャルコア長で割って無次元化したものである。
また、図3中の「□」は、図1の(2)に示す第2比較例のノズル(膨らみ部を有しない細長吹出口を有するノズル)の吹出流速、吹出流量、吹出口面積を固定し、アスペクト比(吹出口横幅/吹出口高さ)を変化させたときのポテンシャルコア長を、アスペクト比が1(吹出口が正方形)となるときのポテンシャルコア長で割って無次元化したものである。
また、図3中の「○」は、吹出口高さから予測されるポテンシャルコア長をアスペクト比が1となるときのポテンシャルコア長で割って無次元化したものである。
さらに、図3中の「◇」は、吹出口高さと横幅の平均値から予測されるポテンシャルコア長をアスペクト比が1となるときのポテンシャルコア長で割って無次元化したものである。
図3によれば、図1の(3)に示すこの発明のノズルの一例の無次元ポテンシャルコア長は、アスペクト比が5程度までは吹出口高さと横幅の平均値から予測される値(「◇」)に近似し、アスペクト比が30以上においては2次元乱流噴流となり吹出口高さから予測される値(「○」)に近似し、アスペクト比が5〜30の領域では、吹出口高さと横幅の平均値から予測される値(「◇」)と吹出口高さから予測される値(「○」)の間をなだらかに結ぶ特性を示す。
この発明のノズルの一例(図1の(3))の無次元ポテンシャルコア長は、第2比較例のノズルと比較して、アスペクト比が2以上で優位性を有し、平均して10〜15%の優位性を有していることが分かる。図3に示すように、この発明のノズルの一例は、アスペクト比が2以上で無次元ポテンシャルコア長がアスペクト比1に比べて優位となり、アスペクト比が20以上で優位性を失う。なお、この特性は、流体の種類(物性)、吹出口形状、吹出口壁面に沿う境界層の状態、初期乱れ等によって異なる場合もある。
この発明のノズルは、吹出口面積および吹出口流速が同じ(同一流量)であれば、吹出口のアスペクト比を最適にすることでポテンシャルコア長(流体の到達距離)を延長することができる。言い換えれば、同じポテンシャルコア長(流体の到達距離)が同一の場合、流量を小さくできるため、ノズルに流体を供給する流体供給手段の消費電力および騒音値を低減することができる。
なお、本明細書におけるアスペクト比とは、断面の形状を決定する長さのパラメータ同士の比であり、
アスペクト比:AR=(長い方のパラメータ)/(短い方のパラメータ)
で決定される値である。よって、断面が長方形の場合には、
アスペクト比:AR=(長辺)/(短辺)
で表され、断面が楕円の場合には、
アスペクト比:AR=(長径)/(短径)
で表される。
例えば、断面が正方形の場合には、
アスペクト比:AR=1
となり、長辺と短辺の比が2:1の長方形の場合には、
アスペクト比:AR=2
となり、断面が真円の場合には、
アスペクト比:AR=1
となる。本明細書におけるアスペクト比は、常に1以上の値をとる。
この発明のノズルにおいては、ノズルの流路の吹出口を構成する長辺と短辺のアスペクト比(または長手側と短手側のアスペクト比)を最適化し、噴流のポテンシャルコアを延長することにより、流速の減衰を抑制しているため、流体の到達距離が従来技術に比べて延長されている。
なお、この発明のノズルの吹出口の断面積は、入口側の断面積に対して大きく設定されるのが望ましい。このように、ノズルの流路をディフューザーの働きを持つように設計することにより、流体の運動エネルギーを静圧に変換することができ、送風手段の能力を助けることができるため、流体が各部を流通する際に生ずる圧力損失の全てが流体供給手段にかかる場合に比べて、流量が増加すると共に、騒音も低くなる。
<ノズルの形状例>
次に、この発明のノズルの形状例について説明する。
図4Aはこの発明のノズルの基本的な形状の第1の例を示している。図4Aの左側に、出口開口が細長い矩形状の出口細長部11と、出口細長部11の長辺側の両壁面に設けられ、外側に向かって膨らんだ膨らみ部12,13とを有するノズル10を示している。このノズル10は、図4Aの右側に示すように、入口側(図4Aの下方)から出口側(図4Aの上方)に向かって広がる四角錐の立体と、円錐台(アスペクト比1)の立体を合成した形状をしており、流路の断面積は一定である。
なお、上記第1の例のノズル10は、図4Bに示すように、入口開口が円形で出口開口が細長い矩形状の出口細長部11と、出口細長部11の長辺側の両壁面に設けられた膨らみ部12,13で構成されている。膨らみ部12,13は、入口側から出口側に向かって徐々に断面積が広くなっている。
また、図5Aはこの発明のノズルの基本的な形状の第2の例を示している。図5Aの左側に、出口開口が細長い矩形状の出口細長部21と、出口細長部21の一方の長辺側の壁面に設けられ、外側に向かって膨らんだ膨らみ部22とを有するノズル20を示している。このノズル20は、図5Aの右側に示すように、入口側(図5Aの下方)から出口側(図5Aの上方)に向かって広がる四角錐の立体と、円錐台(アスペクト比1)の立体を合成した形状をしており、流路の断面積は一定である。
なお、上記第2の例のノズル20は、図5Bに示すように、入口開口が円形で出口開口が細長い矩形状の出口細長部21と、出口細長部21の一方の長辺側の壁面に設けられた膨らみ部22で構成されている。膨らみ部22は、入口側から出口側に向かって徐々に断面積が広くなっている。
また、図6Aはこの発明のノズルの基本的な形状の第3の例を示している。図6Aの左側に、出口開口が細長い矩形状の出口細長部31と、出口細長部31の一方の長辺側の壁面に設けられ、外側に向かって膨らんだ膨らみ部32とを有するノズル30を示している。このノズル30は、図6Aの右側に示すように、入口側(図6Aの下方)から出口側(図6Aの上方)に向かって広がる四角錐の立体と、円錐台(アスペクト比1)の立体を合成した形状をしており、流路の断面積は一定である。
なお、上記第3の例のノズル30は、図6Bに示すように、入口開口が円形で出口開口が細長い矩形状の出口細長部31と、出口細長部31の一方の長辺側の壁面に設けられた膨らみ部32で構成されている。膨らみ部32は、入口側から出口側に向かって徐々に断面積が広くなっている。
また、図7Aはこの発明のノズルの変形例を示している。図7Aの左側に、出口開口が細長い弧状の出口細長部41と、出口細長部41の長手側の一方の壁面に設けられ、外側に向かって膨らんだ膨らみ部42とを有するノズル40を示している。このノズル40は、図7Aの右側に示すように、入口側(図7Aの下方)から出口側(図7Aの上方)に向かって広がる四角錐を湾曲させた立体と、円錐台(アスペクト比1)の立体を合成した形状をしており、流路の断面積は一定である。
なお、上記変形例のノズル40は、図7Bに示すように、入口開口が円形で出口開口が細長い弧状の出口細長部41と、出口細長部41の長手側の一方の壁面に設けられた膨らみ部42で構成されている。膨らみ部42は、入口側から出口側に向かって徐々に断面積が広くなっている。
ここで、この発明のノズルは、入口側から出口側における各断面の重心を繋いだ中心線に沿って断面を2分割すると、風量を半々に分けることが可能である。
また、この発明のノズルは、風量を低下させることなく、到達距離の延長または風圧の増大を行いたい場合には、上記中心線は、出口の位置で、目的の方向に対して接線方向になっているのが望ましい。また、ノズルの入口の位置で、ノズル内に流入する方向は、上記中心線に対して接線方向になっているのが望ましい。
上記構成のノズル10,20,30,40によれば、出口開口が細長い形状の出口細長部11,21,31,41と、出口細長部11,21,31,41の長手側の両壁面のうちの少なくとも一方の壁面に設けられ、外側に向かって膨らんだ膨らみ部12,13,22,32,42で、流体が流れる流路が形成される。その出口細長部11,21,31,41と膨らみ部12,13,22,32,42で形成される流路のうちの膨らみ部12,13,22,32,42の流路部分の断面積が入口側から出口側に向かって徐々に広くなるように膨らみ部12,13,22,32,42を形成している。これによって、出口開口が細長い形状の出口細長部11,21,31,41により吹出口を絞ることによって吹き出しの流速を上げることが可能になると共に、膨らみ部12,13,22,32,42により流路の損失を少なくして到達距離を延ばすことができる。
また、上記出口細長部11,21,31,41と膨らみ部12,13,22,32,42で形成される流路のうちの出口細長部11,21,31,41の流路部分の断面は、流路の入口側から出口側に向かって、アスペクト比が1の形状またはその近似形状から細長い形状に変化することによって、主流が乱れることなく膨らみ部12,13,22,32,42による到達距離を延ばす効果を得ることができる。また、外部の流体供給手段から供給される流体の速度を上げることなく、流路を流れる流体の速度低下を抑制でき、到達距離を延ばすことができる。
また、上記ノズル10,20,30,40によれば、流路の入口側から出口側に向かって断面積の変化率が0以上でかつ上記変化率が略一定とすることによって、単に幅を狭める場合に比較して、効率のよい吹き出しが可能となり、流量を下げずに流速を上げることが可能となる。なお、上記流路の広げ方は、流路が連続的に滑らかかつ広がり角度が10°以内であることが望ましい。
次に、この発明のノズルをそれぞれ備えた送風装置、ヘアドライヤー、空気清浄機、乾燥機および縦型洗濯乾燥機を図示の実施の形態により詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図8はこの発明の第1実施形態の送風装置の一例としてのヘアドライヤーを示している。
この第1実施形態のヘアドライヤー100は、図8に示すように、円筒状の把持部101と、その把持部101に連なるノズル102を備えている。ノズル102は、出口開口が細長い矩形状の出口細長部103と、出口細長部103の一方の長辺側の壁面に設けられ、外側に向かって膨らんだ膨らみ部104とを有する。
また、図9はヘアドライヤー100の断面図を示しており、把持部101内に入口開口101a側から順に、送風手段の一例としての送風ファン111とその送風ファン111を回転駆動するモータ112を配置している。さらに、モータ112の下流側である流路内に加熱機構としてのヒータ(図示せず)を配置している。このヒータは、本体部である把持部101に設けられたスイッチ(図示せず)により動作モードを切り換えることができる。ヒータを作動させたときには、出口開口102aから加熱された温風が吹き出され、ヒータを作動させないときには、出口開口102aからそのままの冷風が吹き出される。
また、送風ファン111の下流側には、モータ112を支持する整流翼113を設けている。この整流翼113は、略円筒状の筒状部113aと、その筒状部113aから内方に突設される翼部113bを介して筒状部113aに支持されるモータ支持部113cとを備えている。この整流翼113は、把持部101の内側空間に連続して空気流の流れる風洞を形成している。
上記モータ支持部113cは、略円形状に形成される底壁とその底壁の外周からモータ112の出力軸の軸方向に向けて延設される周壁とを備えた断面略コの字状に形成されている。筒状部113aから突設された翼部113bは、モータ支持部113cの周壁に結合されており、入口開口を介して流入される空気流の流量を低下させないように、周方向に適宜間隔を空けて複数配置されている。また、モータ支持部113cの底壁の略中央部分には、モータ112の出力軸を挿通させる孔が設けられている。このモータ支持部113cの孔から露出させるようにモータ112の出力軸を周壁に差し込んで、モータ112をモータ支持部113c内に嵌着している。
図10はヘアドライヤー100の側面図を示しており、図10に示すように、ノズル102は、膨らみ部104と反対の側に湾曲している。これにより、送風ファン111により入口開口101a側から吸い込まれた空気は、ノズル102内で曲がって出口開口102aから吹き出す。
図11はヘアドライヤー100のノズル102の部分の断面形状を説明するための図である。図11の上段には、ヘアドライヤー100の把持部101側から出口開口102a(下流側)に向かって順に、A−A断面、B−B断面、C−C断面、D−D断面、E−E断面の位置を示している。
図11の中段には、ノズル102のA−A断面、B−B断面、C−C断面、D−D断面、E−E断面を示している。
このように、この第1実施形態のヘアドライヤー100のノズル102の部分の断面形状は、図11の下段に示すように、入口開口(A−A断面)が略丸形状から、出口開口(E−E断面)に向かって丸形状と細長い矩形状を合成したものに変形している。
この第1実施形態にかかる送風装置としてのヘアドライヤー100は、使用者が手で持つ把持部101が送風手段を有する部分となっている。そこから下流側にノズル102が設けられ、把持部101とノズル102は分割されずに滑らかにつなげられ、従来よくある略T字状あるいは略L字状の外観を呈するヘアドライヤーの構成とは異なる。なお、把持部は、必ずしもこの場所を持つと指定するものでもなく、設置しての使用も可能である。
また、ヘアドライヤー100の外壁をなすケースは、複数の分割体を継ぎ合わせて構成されている。このケースの内部には空洞が形成されており、この空洞内に、各種電気部品が収容されている。
図9に示すようにヘアドライヤー100の内部には、送風ファン111を回転させることによって空気流が形成される。空気流は、外部から入口開口101aを介してヘアドライヤー100内に流入し、送風ファン111を通過した後、ノズル102の入口に滑らかに流入し、吹出口から外部に排出される。
ここで、この第1実施形態のヘアドライヤー100のノズル102の形状について説明する。
この発明のヘアドライヤー100のノズル102は、出口細長部103の壁面に設けられた膨らみ部104を有する構成によって、損失なく風を送出することができ、送風の範囲を広げることが可能である。また、出口細長部103によって、吹出口(出口開口102a)の先端の形状を絞ることで、風速を上げることができる。その結果、風量の低減・騒音の増大を極力抑え、幅広の口によって、面積の広い風が送風可能となる。このノズル102によれば、出口開口が細長い形状のノズルと、アスペクト比が1に近い形状のノズルの役割を一手に担うことができる。これにより、髪の毛の乾燥時間を短縮し、髪のダメージを抑制しながら、頭皮まで風を到達させることが可能となる。
また、この第1実施形態のヘアドライヤー100のノズル102は、入口開口が略円形状であり、吹出口(出口開口102a)では、出口細長部103がアスペクト比の大きい細長い形状に滑らかに変化し、断面を形成する長辺が下流に行くに従って徐々に長くなる。ノズル102の流路が円形から滑らかに細長い形状に変化することで、膨らみ部104によって主流が乱れてしまうことなく、膨らみ部104の効果を得ることができる。また、送風ファン111の回転数を上げることなく風速の低下を抑制でき、到達距離が延びる。
また、上記ノズル102の断面積は、入口側から出口側にかけて略一定である。単に送風口の幅を狭めて絞っただけでは、圧力損失が高まることにより、風量が減少してしまうのに対して、この第1実施形態のノズル102の断面積が略一定であることによって、単に幅を狭める場合に比較して、効率の良い送風が可能となり、風量を下げずに風速を上げることが可能となる。
また、上記構成のノズル102によると、送風手段(送風ファン111)からの風は、ノズル102の流路形状によって吹出口の場所により異なり、不均一性を生じる。そのため、濡れて束になった毛髪を風速の違いによってばらすことが可能になり、乾燥時間を短縮することができる。
ヘアドライヤーにおいて、速乾に必要な風の重要な要素としては風圧があげられるが、製品としての持ちやすさや風の吹出し方向に関しては、保持する人の腕の角度等と関連が深い。そこで、ノズルの流路の中心線を吹き出し方向の接線方向に向けながらノズルを緩やかに湾曲させることで、早くかつ、腕に負担が少なく髪を乾かすことが可能な形状をとることが可能である。
また、ヘアドライヤーにおいては、
・ 乾燥時間の短縮
・ 消費電力1200Wにおいて最大の風量
・ 髪のセット
・ 毛髪へのダメージが少ない
ということが求められている。
従来のヘアドライヤーでは、吹出風速を高めて高温の風で一気に乾かすために、吹出口を単に絞る形状が取られてきた。このようなヘアドライヤーの吹出口の形状は、楕円もしくは円などが一般的である。しかし、そのような形状の吹出口から送出される風は広がりがなく、風速が速く面積が狭い風であるため、頭全体に生えている髪を乾かすのに時間が掛かったり、一部分だけを過乾燥したりする場合が多かった。加えて、髪ケア関連商品は髪のみをケアするだけの商品ではなく、頭皮のケアも重要となってきている。頭皮のケアが可能であるためにはまず、毛髪を風で掻き分け、頭皮まで風を送ることの可能な風の直進性と風圧が必要となってくる。
しかしながら、従来のヘアドライヤーは、主に毛髪の乾燥およびスタイリングの用途に用いられ、頭皮を十分に乾かすことができなかった。髪の毛をいくら十分に乾かしても頭皮を十分に乾燥させることができないと、頭皮には雑菌が繁殖し、かゆみや湿疹、もしくは臭いなどを引き起こす原因にもなる。頭皮に近づければ確かに頭皮を乾かすことが可能であるが、ドライヤーの温風の温度は高く、頭皮の過乾燥または頭皮付近の髪のダメージに繋がる恐れもある。髪の毛のダメージを抑えながら頭皮まで風を到達させるために、送風ファンの静圧を上げて到達距離を延ばすと、髪の毛を吸込口から巻き込んでしまうというデメリットがある。
よって、送風ファンの静圧を上げずに到達距離を延ばす必要がある。一方、送風ファンの静圧を上げずに到達距離を延ばす方法として、吹出口を絞って吹き出し風速を高めるという方法があるが、そうすると風量が激減するので、頭皮を十分に乾燥させるだけの風量が得られない。
これに対して、上記第1実施形態のヘアドライヤーによれば、送風ファン111からの風をノズル102の流路に送ることによって、吹き出しの風速を高めつつ到達距離を延ばすことができ、髪の毛へのダメージを抑えながら頭皮まで風を到達させることが可能になる。
なお、上記第1実施形態では、送風装置としてヘアドライヤーについて説明したが、この発明の送風装置は、ヘアドライヤーに限らず、ノズルとそのノズルの流路に風を送る送風手段とを備えた構成の他の送風装置にこの発明のノズルを適用してもよい。ここで、送風手段は送風ファンに限らず、ノズルの流路に風を送る手段であればよい。
また、この第1実施形態では、ヒータを備えたヘアドライヤーについて説明したが、ヒータを備えず、冷風のみで髪の毛を乾かすヘアドライヤーにこの発明を適用してもよい。
〔第2実施形態〕
次に、この発明の第2実施形態の空気清浄機について説明する。
従来の空気清浄機においては、室内における吸塵スピードを上げたい場合には、気流の到達距離をさらに上げるために吹き出しの風速を上げる必要がある。そこで、空気清浄機において、風速を上げるために吹出口を絞ると、圧損が高くなって吹き出しの風量が減少してしまう。さらに、空気清浄機において、風量が減少すると、吹出口の開口面積が同じである場合には風速が低下する。このため、送風ファンの回転数を上げて風速を高めようとするが、その結果、消費電力・騒音が悪化してしまうという課題があった。
従来の空気清浄機において、吹出口を絞って風をせき止めてしまうと、風量が低下したり、ルーバーが抵抗となったりして、効率良く集塵運転を行えない。この従来の空気清浄機では、風向変更のためにルーバーの角度を変えると、ルーバーの表面に空気が沿わずに剥離する。空気清浄機では、いかに室内の空気を素早く循環できるかが重要である。
空気清浄機における空気清浄性能としては、集塵能力と吸塵速度が挙げられる。集塵能力とは、いかに早く室内全体の空気を清浄できるかを表す指標で、主に風量により左右される。できる限り多くの、室内の空気を吸い込むには、それなりの風量が必要となる。
一般的には、空気清浄機の風量が多いほど集塵性能も高いと考えられる。この風量が多いことは、空気清浄機を持続的に使用する場合に重視される性能である。また、吸塵速度とは、いかに室内の遠くの空気を効率よく吸い込むかを表す指標で、主に風速により左右される。対面する壁際付近にある粉塵が本体吸込み口付近まで到達する時間が計測される。これによって、室内の遠くの空気を如何に早く吸いこむことができるかを知ることができるため、集塵能力と併せて、空気清浄性能とされる。吸塵速度は、瞬間的に使用する場合に、重視される性能である。
これまで、空気清浄機の吸塵スピードを上げたい場合には、風速を上げる必要があったが、吹出口を絞ると風速は上がるが、吹出口を絞ることにより圧力損失が増えて風量が減少してしまっていた。
図12はこの発明の第2実施形態の空気清浄機の断面図を示している。また、図13は上記第2実施形態の空気清浄機の吹出口を含む要部の上面図を示し、図14は比較例の空気清浄機の吹出口を含む要部の上面図を示している。なお、図12において、203は空気清浄用フィルタ、204は加湿ユニット、207は風向板、208は前面パネルである。
また、この第2実施形態の空気清浄機は、設置された室内の臭気を脱臭する空気調和動作、室内の塵、ホコリ、花粉などを集塵する空気調和動作、帯電粒子である正イオンおよび負イオン(以下、単にイオンという)を放出する空気調和動作、室内を加湿する空気調和動作を可能としている。
また、この空気清浄機は、縦型直方体状のハウジング201を備え、壁および床を有する室内において、ハウジングの背面側が壁に対面する姿勢で床に設置される。
上記空気清浄機は、図12に示すように、ハウジング201内に、送風手段としての送風ファン205を備えている。例えば、送風ファン205はシロッコファンであり、羽根車と、羽根車を駆動するファンモータとを有する。この送風ファン205のファンモータは、送気室Pを構成する壁面に固定されている。また、送風ファン205の羽根車は、送気室P内に突出するファンモータの出力端に固定され、隔壁の下部に設けた開口に対向配置している。送風ファン205の羽根車は、ファンモータの駆動によって回転する。羽根車が回転した場合、後面パネル202に設けた吸気口202a,空気清浄用フィルタ203,加湿ユニット204を介して送気室P内に導かれる。そして、送気室Pから斜め後ろ上方向に延在する吹出風路206の吹出口210aを経て外部に送り出される。
上記第2実施形態の空気清浄機は、加湿ユニット204による加湿機能を有している。
また、第2の送風ファン220から前面吹出口221aに至る送風経路221には、イオン発生器(図示せず)が配設されている。
なお、送風ファン205により吹出風路206を介してノズル210の吹出口210aから吹き出した空気は、空気清浄機本体の背面の室内の壁に沿って上昇し、天井に沿って壁から離れる方向へ流れる。室内の天井に沿って流れる空気は、室内の空気清浄機と反対の側の壁付近で下降するので、イオンを含んだ空気を空気清浄機から比較的遠い場所に届かせることができる。また、室内の反対側の壁付近で下降した空気は、床に沿って空気清浄機の方向に流れて、室内を循環する。
次に、この第1実施形態における空気清浄機のルーバー構造について詳細に説明する。
この空気清浄機のノズル210は、図13に示すように、入口開口は横225mm×縦75mmの矩形であるに対して、出口細長部211の最下流部中央部に設けられた膨らみ部212の寸法は横125mm×縦30mmであり、ノズル210の入口側から出口側に向かって膨らみ部212の断面積を徐々に拡大している。これにより、図14の比較例に示す膨らみ部のないノズル230に比べて、圧力損失なく風を送出することができ、到達距離を延長することが可能である。
また、図12に示すように、ノズル210を矢印Rの方向に回動させることにより吹出口210aの先端の形状を絞ることで、送風ファン205の回転数を上げることなく吹き出しの風速を上げることができる。その結果、風量の低減や騒音の増大を極力抑えつつ、幅広の吹出口210aによって、面積の広い風が送風可能となる。このノズル210によれば、膨らみ部212により風速の減衰が抑制されるため、到達距離が延びて吸塵速度が上昇する。
また、上記第1実施形態のノズル210の断面積の変化率は、ノズル210の回動角を調整して、0以上でかつ略一定にすることにより、単に幅を狭める場合に比較して、効率の良い送風が可能となり、風量を下げずに風速をあげることが可能となる。
また、上記第1実施形態のノズル210の膨らみ部212は、滑らかな曲面で形成される。これにより、膨らみ部212が主流に対する抵抗となって流れをせき止めてしまうことがない。
また、上記第1実施形態では、ノズル210が回動可能なルーバー構造としているため、風速の調整が可能となり、使用場面によって吸塵スピードが調整可能である。
上記構成の空気清浄機によれば、ノズル210の出口細長部211に設けられた膨らみ部212により、徐々に断面積を拡大することにより、膨らみ部のないノズルに比べて、圧力損失なく風を送出することができ、到達距離を延長することが可能である。また、送風ファン205の回転数を上げることなく吹き出しの風速を上げることができ、風量の低減や騒音の増大を極力抑えると共に、ノズル210の幅広の吹出口によって、面積の広い風が送風可能となる。また、上記ノズル210の膨らみ部212により吹き出しの風速の減衰を抑制することによって、到達距離が延びて吸塵速度が上昇する。
〔第3実施形態〕
図15はこの発明の第3実施形態の乾燥機の一例としてのドラム式洗濯乾燥機の要部の斜視図を示している。図15では、乾燥空気が吹き出す箇所を示している。
このドラム式洗濯乾燥機は、図15に示すように、外枠等により外装を成す筐体(図示せず)と、この筐体に支持されて乾燥時に内部が乾燥室となる外槽301と、この外槽301内に回転自在に配置され、洗濯物を収容する槽の一例としての回転ドラム302を備えている。そして、加熱装置の一例としての乾燥ユニット303からの温風を回転ドラム302内に送風して、乾燥対象物である洗濯物から水分を蒸発させる。
乾燥ユニット303は、送風手段としての送風ファン(図示せず)と、空気を加熱する加熱手段としてのヒータ(図示せず)とを備える。乾燥ユニット303からの温風を、送風ダクト304を介して回転ドラム302内の洗濯物に導く。この送風ダクト304の吹出口にノズル310を設けている。
ドラム式洗濯乾燥機は、まず、洗濯工程においては、回転ドラム302内に洗濯物を投入し、排水弁を閉じた状態で給水して外槽301に洗濯水を溜め、回転ドラム302を回転させて洗濯物を洗濯する。ドラム式洗濯乾燥機の場合、回転ドラム302の回転に伴って、リフターにより洗濯物を回転ドラム302の頭頂部に持ち上げた後、重力により回転ドラム302底部に落とすたたき洗いを主に行う。
次に、脱水工程においては、排水弁を開いて外槽301内の洗濯水を排水した後、回転ドラム302を回転させて遠心脱水する。
次の乾燥工程では、乾燥ユニット303のヒータにより加熱して温風となった空気を回転ドラム302内へ、送風ダクト304の吹出口であるノズル310を介して供給して、洗濯物と熱交換させると共に洗濯物から水分を蒸発させる。蒸発した水分を含んで高湿となった空気を、ダクト(図示せず)を通して乾燥ユニット303の吸込口に導き、再び乾燥ユニット303のヒータにより必要に応じて加熱して、送風ファンによりノズル310を経て回転ドラム302内へ送風する。このように、回転ドラム302内の空気を乾燥ユニット303を介して循環させる。
図16は上記ドラム式洗濯乾燥機のノズル310の正面図を示しており、図16に示すように、ノズル310は、出口開口が細長い形状の出口細長部311と、その出口細長部311の長手側の両壁面のうちの片側の壁面の中央付近に、外側に膨らむように形成された膨らみ部312を有する。出口細長部311と膨らみ部312で形成される流路のうちの膨らみ部312の流路部分の断面積が、入口側から出口側に向かって徐々に広くなるように膨らみ部312が形成されている。
また、上記ノズル310は、断面積が入口側から出口側に向かって略一定であり、そのノズル310の流路の内面は滑らかな曲面で構成されている。
これにより、滑らかなカーブのノズル310の流路に沿って風の抵抗を低減して、損失なく風を回転ドラム302内に送り込むことができると共に、ノズル310の吹出口の断面積を変えずに先端の形状を絞りつつ、外側に膨らむ膨らみ部312を設けることで、風量を落とさずに風速を上げることができる。その結果、風量の低減や騒音の増大を極力抑えると共に、幅広の吹出口によって、面積の広い風が送風可能となる。
また、ノズル310の出口開口が幅広部分と、その幅広部分に比較して幅狭部分が存在するため、幅広部分では温風を幅広く、幅狭部分では強い風を発生するように分岐させることが可能であり、回転ドラム302内で団子状になっている洗濯物をバラけさせるために強い風を供給するという役割と、大風量で乾燥時間を短縮するという役割とをノズル310に持たせることが可能である。
また、外気を回転ドラム302に導入する吸気弁(図示せず)を全開にした状態での乾燥運転において、ノズル310からの吹出空気の風量や風速、到達距離などは、洗濯物の布量や布質などから意図した乾燥所要時間と消費電力量のバランスにより定めるのが好ましい。
洗濯乾燥機(縦型およびドラム型を含む)においては、
・ 乾燥時間の短縮
・ 消費電力の低減
・ 乾燥の仕上がり(衣類のしわが少ない)
・ 衣類へのダメージが少ない
というような要望がある。
従来の乾燥機としては、回転ドラム内の空気を吸い込み吐き出す送風手段と、複数個の吹出口と、乾燥運転中に温風の吹き出し先を切り換える切り換え手段を有し、複数個の吹出口は、回転ドラムの前側から風を吹き付ける前吹出口と、回転ドラムの後側から風を吹き付ける後吹出口を備え、後吹出口の面積を、前吹出口の面積より大きくし、回転ドラムの後側から風を吹き付ける場合、回転ドラムの前側から風を吹き付けるときと比べて、送風手段の回転数を下げ、後吹出口の風速を、前吹出口の風速よりも遅くしたものがある(例えば、特許5325689号参照)。
また、従来の他の乾燥機としては、乾燥モードを実行する際に、ハンガーを内槽の上面開口部に装着し、ハンガーに衣類等の洗濯物を掛けた状態で乾燥モードを実行することができるように、選択的に使用する構成とした洗濯乾燥機がある(例えば、特開2013−27415公報参照)。
しかしながら、上記従来のいずれの乾燥機においても、乾燥空気の吹出口のノズルが絞られており、アスペクト比が1に近い形状と比較すると、ノズルの流路内における送風損失の増大は避けられない上に、到達距離、風量、効率などの向上を望むさらなるニーズが存在する。
従来の乾燥機は、乾燥対象物を十分に乾かすことができなかったり、十分に乾燥するためには時間が掛かったりするという問題があった。これは、風の到達距離が短い場合と、風は到達するものの風量が不足している場合とが考えられる。
乾燥対象物を十分に乾燥できないと、雑菌が繁殖したり臭いなどを引き起こす原因にもなる。吹出口の距離と被乾燥物の距離を近づければその部分に関してはしっかり乾かすことが可能であるが、被乾燥物全体に適用するには非常に大きな送風口が必要となる。被乾燥物のダメージを抑えながらしっかりと乾燥させるために、送風ファンの静圧を上げずに到達距離を延ばす必要がある。
一方、送風ファンの静圧を上げずに風速を高め、到達距離を延ばす方法として、吹出口を絞って吹き出し風速を高めるという方法があるが、単に絞るだけでは、圧損が高まることにより、風量が激減し、被乾燥物を十分に乾燥させるだけの風量が得られなくなる。
これに対して、上記第3実施形態の乾燥機によれば、循環経路の出口側に設けられたノズル310からの吹き出し空気の風速を高めつつ到達距離を延ばすことができるので、乾燥ユニット303(加熱装置)により加熱された乾燥空気を回転ドラム302(槽)内の乾燥対象物に効率よく供給でき、乾燥運転の効率を向上できる。
なお、上記第3実施形態では、乾燥機としてのドラム式洗濯乾燥機について説明したが、この発明の乾燥機は、これに限らず、乾燥専用の乾燥機にこの発明のノズルを適用してもよい。
〔第4実施形態〕
図17はこの発明の第4実施形態の縦型洗濯乾燥機400の外観斜視図を示し、図18は縦型洗濯乾燥機400の断面図を示している。なお、図17では、蓋部408(図18に示す)を省略している。
この第4実施形態の縦型洗濯乾燥機400は、図17に示すように、上方に開口した開口部401aを有する外筐401と、外筐401の内側に設けられ、開口部401aを介して洗濯物が出し入れされる縦型の洗濯槽402(脱水槽としても機能する槽)を備える。
また、縦型洗濯乾燥機400は、図18に示すように、外筐401内に配置され、洗濯槽402を収納する水槽403と、外筐401にヒンジ機構によって上下に回動可能となるように取り付けられており、回動によって開口部401aを開閉する蓋部408とを備えている。洗濯槽402の上部開口の周縁に、洗濯物の脱水時に洗濯槽402を高速回転させたときに振動を抑制する働きをする環状のバランサ405を装着している。洗濯槽402内の底面に撹拌翼406(パルセータ)を回転可能に配置している。
また、外筐401内の水槽403の下側に、クラッチ・ブレーキ機構と駆動モータとを有する駆動ユニット407を取り付けている。この駆動ユニット407の回転軸407aに撹拌翼406および洗濯槽402を接続している。
上記縦型洗濯乾燥機400は、蓋部408を開けて洗濯物の出し入れ等が可能であると共に、蓋部408を閉じて内部を閉空間とすることが可能である。また、縦型洗濯乾燥機400は、洗濯槽402内に供給された水を攪拌翼406を用いて撹拌することによって洗濯動作を行い、洗濯槽402内に温風を供給することによって乾燥動作を行う。
また、縦型洗濯乾燥機400は、洗濯槽402内にハンガー430を用いて衣類を吊り下げておき、この衣類を乾燥させること(吊り干乾燥)が可能としている。吊り干乾燥によれば、洗濯槽402の底に積まれている衣類を乾燥させるような場合に比べて、一般的に乾燥効率が良く、また、衣類の皺等が付き難いため、好ましい状態での仕上がりが期待される。
また、縦型洗濯乾燥機400の蓋部408における出入口に対向する面(内側の面)には、ハンガー430(吊り具)を掛けるためのハンガー係止部409が設けられている。これにより、ユーザーは、蓋部408を開けた状態で、衣類(乾燥対象物)を取り付けたハンガー430をハンガー係止部409に掛けることが可能である。したがって、吊り干乾燥させる際の作業性が良い。
この衣類を取り付けたハンガー430をハンガー係止部409に掛けた状態から、ユーザーが蓋部408を閉じると、洗濯槽402内において衣類が吊り下げられた状態になる。この縦型洗濯乾燥機は、ハンガー430を用いて吊り下げられた衣類に対して、吊り干乾燥を行うことが可能となっている。
また、外筐401の後部の上面板上には、加熱装置の一例としての乾燥ユニット420が設置されている。乾燥ユニット420は、送風手段やヒータなどを有すると共に、吊り干乾燥動作の実行時に、洗濯槽402の内周壁に沿って温風を吹き出す(洗濯槽402内に温風を供給する)送風口を有している。
また、吊り干乾燥動作は、温風を洗濯槽402内に供給して循環させることにより、吊り下げられた衣類の乾燥(吊り干乾燥)を行う動作である。すなわち、縦型洗濯乾燥機は、予め衣類が吊り下げられた状態で吊り干乾燥動作を行うことにより、衣類の吊り干乾燥を実現させることも可能である。
従来の乾燥機では、乾燥時に温風の供給口にルーバーを形成したものがある(例えば、特開2004−8546公報参照)。この従来の乾燥機では、衣類に対して効率よく温風を当てることができる。
しかしながら、上記従来の乾燥機では、槽内の中央向きに風を当てるようにすると、垂直下向きの風を送出できなくなり、槽内下部の撹拌翼が回転したところで、中央にしか風が届かないので、外側下方で埋もれている乾燥対象物に風が全く当たらず、乾燥ができない。また、中央に向けて風を送る場合には真下に向けて送る場合と比較して、距離が遠いので大風量の風が届かない。多くの縦型洗濯乾燥機で採用されているように、真下に吹出すのがやはり、最も効率的な乾燥方法である。
また、従来の他の洗濯乾燥機では、蓋部の内側に、乾燥対象物を取り付けたハンガーが掛けられるフックが備えられ、吊り下げられた乾燥対象物を乾燥させる吊り干乾燥動作(ハンガードライ)を行うものがある(例えば、特開2013−27415公報参照)。
この場合には、吊り下げ運転時に対象物がよく乾くようにするためには、衣類に風を直に当てるのがよく、槽内の中央に向けて送出するのが効率的である。
しかしながら、乾燥対象物を効果的に乾燥するためには、風の直進性と大風量が必要となってくる。従来の縦型洗濯乾燥機では、上述の通り、被乾燥物を十分に乾かすことができない場合があった。あるいは、十分に乾燥するためには時間が掛かってしまうという問題があった。これは、風の到達距離が短い場合と、風は到達するものの風量が不足している場合とが考えられる。乾燥対象物を十分に乾燥できないと、雑菌が繁殖したり臭いなどを引き起こす原因にもなる。吹出し口の距離と被乾燥物の距離を近づければその部分に関してはしっかり乾かすことが可能であるが、被乾燥物全体に適用するには非常に大きな送風口が必要となる上に、過乾燥や被乾燥物のダメージに繋がる恐れもあり、乾燥効率も悪い。
乾燥対象物をしっかりと短時間で乾燥させるために、送風ファンの静圧を上げずに到達距離を延ばす必要がある。一方、送風ファンの静圧を上げずに風速を高め、到達距離を延ばす方法として、吹出口を絞って吹き出しの風速を高めるという方法があるが、単に絞るだけでは、圧損が高まることにより、風量が激減し、被乾燥物を十分に乾燥させるだけの風量が得られなくなる。
そこで、この第4実施形態の縦型洗濯乾燥機では、図17,図18に示すように、乾燥ユニット420の投入口カバー440の下側の送風口にノズル410が取り付けられている。
図19はノズル410の断面形状を説明するための図である。図19の上段には、入口側(上流側)から出口側(下流側)に向かって順に、ノズル410のA−A断面、B−B断面、C−C断面、D−D断面の位置を示している。また、図19の中段には、ノズル410のA−A断面、B−B断面、C−C断面、D−D断面を示している。
このように、ノズル410の断面形状は、図19の下段に示すように、入口開口(A−A断面)が略丸形状から、出口開口(D−D断面)に向かって丸形状と細長い矩形状を合成したものに変形している。
このノズル410は、図19に示すように、出口開口が細長い形状の出口細長部411と、その出口細長部411の長手側の両壁面のうちの片側の壁面の中央付近に、外側に膨らむように形成された膨らみ部412を有する。出口細長部411と膨らみ部412で形成される流路のうちの膨らみ部412の流路部分の断面積が、入口側から出口側に向かって徐々に広くなるように膨らみ部412が形成されている。
また、上記ノズル410は、断面積が入口側から出口側に向かって略一定であり、そのノズル410の流路の内面は滑らかな曲面で構成されている。ノズル410の出口細長部411の断面をアスペクト比が1に近い形状からスムーズに細長い形状に変化する。
これにより、滑らかなカーブの流路に沿って風の抵抗を低減できると共に、損失なく風を洗濯槽402(図17,図18に示す)内に送り込むことができ、かつノズル410の吹出口の断面積を変えずに先端の形状を絞りつつ、膨らみ部412を設けることで、風量を落とさずに風速を上げることができる。その結果、風量の低減や騒音の増大を極力抑え、幅広の吹出口によって、面積の広い風が送風可能となる。
また、図20は他の例としてのノズル420の断面形状を説明するための図である。図20の上段には、入口側(上流側)から出口側(下流側)に向かって順に、ノズル420のA−A断面、B−B断面、C−C断面、D−D断面の位置を示している。また、図20の中段には、ノズル420のA−A断面、B−B断面、C−C断面、D−D断面を示している。
このように、ノズル420の断面形状は、図20の下段に示すように、入口開口(A−A断面)が略丸形状から、出口開口(D−D断面)に向かって丸形状と細長い矩形状を合成したものに変形している。
このノズル420は、図20に示すように、出口開口が細長い形状の出口細長部421と、その出口細長部421の長手側の両壁面のうちの片側の壁面の中央付近に、外側に膨らむように形成された膨らみ部422を有する。出口細長部421と膨らみ部422で形成される流路のうちの膨らみ部422の流路部分の断面積が、入口側から出口側に向かって徐々に広くなるように膨らみ部422が形成されている。
なお、ノズル410,420の流路は、断面が略一定の比率で複数の分岐流路に分割してもよい。しかしながら、単に、仕切りの板を設けるだけでは、板が圧損体となってしまい、風量の減少や音の発生が生じる。そこで、ノズル410,420において、略一定の面積を略一定の割合で板などによって分割させることによって、圧損を上昇させることなく、吹き出し方向(角度)のガイドとなり安定した方向に吹き出すことが可能となる。また、ノズル410,420の出口細長部411,421と膨らみ部412,422の吹き出し方向と風量の調整によって、空気の循環を高めたり、風速の違いを、より顕著に設定したりすることができる。また、ノズル410,420の吹き出し位置によって、風速の速い部分と遅い部分に区分させるための膨らみ部を設けることが可能である。
また、ノズル410,420は、吹出口が幅広部分(膨らみ部が形成された部分)と、その幅広部分に比較して幅狭部分が存在するため、幅広部分では温風を幅広く、幅狭部分では強い風を発生するように分岐させることが可能であり、ハンガードライの時により顕著な役割を果たす。
この第4実施形態では、ノズル410,420の膨らみ部412,422は洗濯槽402の径方向外側を向いて膨らんでいる。
これにより、ノズル410,420が細長い形状の出口細長部411,421の壁面に膨らみ部412,422を有する形状であることで、大風量の風の到達が強化される。膨らみ部412,422により損失なく風を送出することができ、送風の範囲を広げることが可能となる。ノズル410,420では、細長い形状で、幅広い風を送出することと、膨らみ部412,422の形状で到達距離を延長することが可能となり、一つの吹出口から送出される風がそれぞれ二つの役割を持つ。また、洗濯槽402の中央から離れた位置にノズル410,420の吹出口が設けられることによって、洗濯物の取り出し等を妨げる心配が少ない。
また、この第4実施形態では、蓋部408の裏面側に、乾燥対象物を取り付けたハンガー430が掛けることができるハンガー係止部409が備えられ、ハンガー係止部409から洗濯槽402内に向けて吊り下げられた乾燥対象物を乾燥させる吊り干乾燥動作を行うこときに、中央向きに送出された風が乾燥対象物に直で当たる。これにより、ハンガー430を掛けて吊り下げ運転をして、風を中央部に向かって送出する風により被乾燥物を直に乾かす風と、下向きに吹き出して洗濯槽402内を循環する風の両者で乾燥対象物を包み込むことで、下向きにのみ送出する場合や中央向きにのみ送出する場合と比較して、乾燥時間を短縮することが可能である。また、乾燥対象物の皺をのばすことができ、乾燥の仕上がりが良好になる。
また、この第4実施形態では、ノズル410,420の吹出口の長辺の長さを8cmとしている。これにより、ハンガードライの使用時あるいはスポット乾燥でジェットタオルなどとして利用する時に、乾燥対象物に直に当たる部分に丁度乾燥対象物が存在するので、風量当たりの乾燥効率が良い。
また、この第4実施形態では、ノズル410,420を覆う投入口カバー440から、ノズル410,420の終端が突出は1mm程度である。
単にノズルの細長い形状の出口開口の幅を狭めて絞ると、圧損が高まることにより、風量が減少してしまう。また、急にノズルの流路を広げると、流路の急な拡大縮小など、形状の変化に流れがついてくることができず、圧損が高まったり、縮流が起きたりする。さらに、アスペクト比の大きい細長い形状のみで構成すると、到達距離は確かに延長されるが、遠くまで届く一方で、幅広の風によって送風される範囲が限定される。
そこで、この発明のノズルでは、出口開口が細長い形状の出口細長部の壁面に膨らみ部を設けることにより、損失なく風を送出することができ、送風の範囲を広げることが可能である。また、ノズルの吹出口の先端の形状を絞ることで、風速を上げることができる。その結果、風量の低減や騒音の増大を極力抑え、幅広の吹出口によって、面積の広い風が送風可能となる。このノズルによれば、出口開口が細長い形状のノズルと、アスペクト比が1に近い形状のノズルの役割を一手に担うことができる。
また、この第4実施形態では、図19,図20に示すように、ノズル410,420の断面がアスペクト比1に近い形状から細長い形状に変化することを特徴とする。この構成によると、送風路が円形から滑らかに細長い形状に変化することで、膨らみ部412,422によって主流が乱れてしまうことなく、膨らみ部412,422による効果を得ることができる。また、送風ファンの回転数を上げることなく風速の低下を抑制でき、到達距離が延びる。ノズルの出口開口の長辺が下流に行くに従い徐々に長くなる場合(アスペクト比が大きくなる場合)、または、ノズルの流路の断面積が下流に行くに従い徐々に拡大する場合、ノズルの出口開口の長辺の拡大率および断面積の拡大率を適切な値に選定すれば、ディフューザーの効果が得られるため、送風能力を高めることができる。
また、単にノズルの幅を狭めて絞ると、上述の通り圧損が高まることにより、風量が減少してしまう。この第4実施形態では、ノズルの流路の断面積は略一定にしているため、単に細長い形状の出口開口の幅を狭める場合に比較して、効率の良い送風が可能となり、風量を下げずに風速をあげることが可能となる。なお、これらの場合の送風路の幅の広げ方は、ノズルの流路が連続的に滑らかでかつ広がり角度が10°以内であることが望ましい。
また、この発明に係る縦型洗濯乾燥機は、ノズルの膨らみ部の形状は、図20に示すように、一旦長手方向にくびれていることが望ましい。この構成によると、膨らみ部が圧損体とならずに、より、風速に違いをつける効果が顕著に得られる。
縦型洗濯乾燥機は、製品の上方奥部に乾燥機構(この第4実施形態では乾燥ユニット420)が設置されているが、乾燥風は強くかつ遠くまで届くことが望ましい。そのために風を2分岐させる場合には、垂直方向下向きに風量の多い風を送風し、ノズルから見て斜め前方には風速の速い風を送風できるよう、ノズルの分岐形状を定めるのが効率的である。
上記構成の縦型洗濯乾燥機によれば、循環経路の出口側に設けられたノズル410,420からの吹き出し空気の風速を高めつつ到達距離を延ばすことができる。また、洗濯槽402の上部開口の上側かつ洗濯槽402の中心よりも径方向外側に、加熱装置420により加熱された乾燥空気を洗濯槽402内に向かって吹き出すようにノズル410,420を配置すると共に、洗濯槽402の中心に対して径方向外側に向かって膨らむ膨らみ部412を設けたので、幅広い方向に十分な量の乾燥空気を吹き出す。これにより、加熱装置420により加熱された乾燥空気を洗濯槽402内の洗濯物に効率よく供給でき、乾燥運転の効率を向上できる。
また、上記ノズル410,420の出口細長部の長手方向の寸法を5cm以上かつ15cm未満にすることによって、ハンガードライ(ハンガーに掛けた乾燥対象物の乾燥)やスポット乾燥などの運転時に、乾燥対象物を想定すると、ノズル410,420の出口細長部の長手方向の寸法が15cm以上になると、ハンガードライやスポット乾燥でも使えない部分が増加するので、風量当たりの乾燥効率が低下することになる。また、逆に5cm未満の場合には、一部にしか風が当たらないので、乾燥対象物を効果的に乾燥できない。したがって、ノズルの出口開口の長手方向の寸法を5cm以上かつ15cm未満に設定することで乾燥効率がよくなる。
〔第5実施形態〕
図21はこの発明の第5実施形態の縦型洗濯乾燥機のノズルの断面形状を説明するための図を示している。この第5実施形態の縦型洗濯乾燥機は、ノズルを除いて第4実施形態の縦型洗濯乾燥機と同一の構成をしており、図17,図18を援用する。
図21の上段には、入口側(上流側)から出口側(下流側)に向かって順に、ノズル510のA−A断面、B−B断面、C−C断面、D−D断面の位置を示している。また、図21の中段には、ノズル510のA−A断面、B−B断面、C−C断面、D−D断面を示している。
このノズル510は、図21に示すように、出口開口が細長い形状の出口細長部511と、その出口細長部511の長手側の両壁面のうちの片側の壁面の中央付近に、外側に膨らむように形成された膨らみ部512を有する。出口細長部511と膨らみ部512で形成される流路のうちの膨らみ部512の流路部分の断面積が、入口側から出口側に向かって徐々に広くなるように膨らみ部512が形成されている。
また、図22は上記ノズル510の斜め下方から見た斜視図を示し、図23は上記ノズル510の上面図を示し、図24は上記ノズル510の下面図を示している。また、図25は上記ノズル510の斜め上方から見た斜視図を示し、図26は上記ノズル510の斜め下方から見た斜視図を示している。また、図27は図23のA−A線から見た断面図を示している。図22〜図27において、図21と同一の構成部には、同一参照番号を付している。
この発明の縦型洗濯乾燥機の基本的な構造は第5実施形態の縦型洗濯乾燥機と同じであり、第5実施形態と異なるノズル510について以下に説明する。
図21〜図27に示すように、ノズル510は、仕切板513により流路を2つの分岐流路に分割している。
この第5実施形態では、図21に示すように、ノズル510の流路が略一定の面積比(前4:後6)で仕切板513により2つの分岐流路に分割されている点で第4実施形態と異なる。ノズル510において、出口細長部511の流路の面積と膨らみ部512の流路の面積の比が4:6である。
ノズル510の一方の出口細長部511を洗濯槽402の中央向きに設け、もう一方の膨らみ部512を下向きに設けることで、洗濯槽402の中央付近への送風と、下方向への送風を確実に分離することができる。
これにより、下方向のみへの送風では乾かすことができなかった洗濯槽402の中央部に風を送出することによって、乾きムラを低減することが可能である。
単にノズルに仕切板を設けるだけでは、仕切板が圧損体となってしまい、風量の減少や音の発生が生じる。これに対して、この第5実施形態の縦型洗濯乾燥機において、ノズル510を略一定の面積を略一定の割合で仕切板513によって分割することによって、圧損を上昇させることなく、吹き出し方向(角度)のガイドとなり、安定した方向に吹き出すことが可能となる。また、ノズル510の出口細長部511と膨らみ部512の吹き出し方向と風量の調整によって、空気の循環を高めたり、各方向の風速の違いをより顕著に設定したりすることができる。ノズル510の吹き出し位置によって、風速の速い部分と遅い部分に区分させるための膨らみ部を設けることが可能である。
上記構成の縦型洗濯乾燥機によれば、循環経路の出口側に設けられたノズル510からの吹き出し空気の風速を高めつつ到達距離を延ばすことができる。また、洗濯槽402の上部開口の上側かつ洗濯槽402の中心よりも径方向外側に、加熱装置420により加熱された乾燥空気を洗濯槽402内に向かって吹き出すようにノズル510を配置すると共に、洗濯槽402の中心に対して径方向外側に向かって膨らむ膨らみ部512を設けたので、幅広い方向に十分な量の乾燥空気を吹き出す。これにより、加熱装置420により加熱された乾燥空気を洗濯槽402内の洗濯物に効率よく供給でき、乾燥運転の効率を向上できる。
また、上記ノズル510の流路の断面を分割する2つの分岐流路のうち、一方の分岐流路を洗濯槽402の中心側に向かって吹き出すように設け、他方の分岐流路を洗濯槽402の底部に向かって吹き出すように設けることによって、洗濯槽402の中央付近への送風と洗濯槽402の底部への送風とを分離して、洗濯槽402の底部への送風だけでは乾かすことができなかった中央側に送風することにより、乾燥ムラを低減できる。
また、図28は上記ノズルの突出量に対する洗濯物の引っ掛かり発生回数を示しており、図29は上記ノズルの突出量について説明するための図である。なお、図29では、蓋部408(図18に示す)を省略している。
図28において、横軸はノズル510の投入口カバー440からの突出量[mm]を表し、縦軸は洗濯物が引っ掛かった発生回数[回]を表している。ここで、洗濯物が引っ掛かった発生回数は、突出量を0mm〜13mmまで1mm毎に、洗濯物の出し入れを30回行ったうちの洗濯物が引っ掛かった回数である。また、図28におけるノズル510の突出量は5mmである。
また、図29に示すように、この縦型洗濯乾燥機の洗濯槽402の上部開口402aは、直径Dが400mmの円形である。洗濯槽402の上部開口402aの上側かつ洗濯槽402の中心よりも径方向外側の一部の領域を覆うように、カバー部の一例としての投入口カバー440を設けている。この投入口カバー440は、上部開口402aの内縁(点線で示す)から洗濯槽402の中心に向かってせり出している寸法Lは70mmである。
図28の結果から明らかなように、ノズル510を投入口カバー440から突出させるほど、洗濯物が引っ掛かって利便性が悪くなる。
上記第5実施形態によれば、洗濯槽402の上部開口の上側かつ洗濯槽402の中心よりも径方向外側の一部の領域を覆うように設けられたカバー部440の縁から洗濯槽402の中心側へのノズル510の突出量を5mm以内とすることによって、洗濯槽402内から洗濯物を取り出すときにノズル510の突出部への引っ掛かりを少なくできる。
また、この発明に係る縦型洗濯乾燥機用のノズルは、循環経路の出口側(吹出口)に着脱自在に取り付けられるノズルでもよい。この構成によると、ノズルは本体吹出口と着脱自在であることから、清掃や交換が容易になる。
上記第1〜第5実施形態では、ノズルの流路を流れる流体を空気としたが、流体は空気に限らず、他の気体や液体であってもよい。
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記第1〜第5実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
この発明および実施形態をまとめると、次のようになる。
この発明のノズル10,20,30,40,102,210,310,410,510は、
出口開口が細長い形状の出口細長部11,21,31,41,103,211,311,411,511と、
上記出口細長部11,21,31,41,103,211,311,411,511の長手側の両壁面のうちの少なくとも一方の壁面に設けられ、外側に向かって膨らんだ膨らみ部12,13,22,32,42,104,212,312,412,512と
を備え、
上記出口細長部11,21,31,41,103,211,311,411,511と上記膨らみ部12,13,22,32,42,104,212,312,412,512で形成される流路のうちの上記膨らみ部12,13,22,32,42,104,212,312,412,512の流路部分の断面積が、上記流路の入口側から出口側に向かって徐々に広くなるように上記膨らみ部12,13,22,32,42,104,212,312,412,512が形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、出口開口が細長い形状の出口細長部11,21,31,41,103,211,311,411,511と、出口細長部11,21,31,41,103,211,311,411,511の長手側の両壁面のうちの少なくとも一方の壁面に設けられ、外側に向かって膨らんだ膨らみ部12,13,22,32,42,104,212,312,412,512で、流体が流れる流路が形成される。その出口細長部11,21,31,41,103,211,311,411,511と膨らみ部12,13,22,32,42,104,212,312,412,512で形成される流路のうちの膨らみ部12,13,22,32,42,104,212,312,412,512の流路部分の断面積が入口側から出口側に向かって徐々に広くなるように、膨らみ部12,13,22,32,42,104,212,312,412,512を形成しているので、出口開口が細長い形状の出口細長部11,21,31,41,103,211,311,411,511により吹出口を絞ることによって吹き出しの流速を上げることが可能になると共に、膨らみ部12,13,22,32,42,104,212,312,412,512により流路の損失を少なくして到達距離を延ばすことができる。
また、一実施形態のノズル10,20,30,40,102,210,310,410,510では、
上記出口細長部11,21,31,41,103,211,311,411,511と上記膨らみ部12,13,22,32,42,104,212,312,412,512で形成される流路のうちの上記出口細長部11,21,31,41,103,211,311,411,511の流路部分の断面が、上記流路の入口側から出口側に向かって、アスペクト比が1の形状またはその近似形状から上記細長い形状に変化する。
上記実施形態によれば、出口細長部11,21,31,41,103,211,311,411,511と膨らみ部12,13,22,32,42,104,212,312,412,512で形成される流路のうちの出口細長部11,21,31,41,103,211,311,411,511の流路部分の断面は、流路の入口側から出口側に向かって、アスペクト比が1の形状またはその近似形状から細長い形状に変化することによって、主流が乱れることなく膨らみ部12,13,22,32,42,104,212,312,412,512による到達距離を延ばす効果を得ることができる。また、外部の流体供給手段から供給される流体の速度を上げることなく、流路を流れる流体の速度低下を抑制でき、到達距離を延ばすことができる。
また、一実施形態のノズル10,20,30,40,102,210,310,410,510では、
上記出口細長部11,21,31,41,103,211,311,411,511と上記膨らみ部12,13,22,32,42,104,212,312,412,512で形成される流路は、上記流路の入口側から出口側に向かって断面積の変化率が0以上でかつ上記変化率が略一定である。
単にノズルの吹出口の幅を狭めて流路を絞ると、圧損が高まるために風量が減少してしまう従来のノズルに対して、上記実施形態によれば、流路の入口側から出口側に向かって断面積の変化率が0以上でかつ上記変化率が略一定とすることによって、効率のよい吹き出しが可能となり、流量を下げずに流速を上げることが可能となる。なお、上記流路の広げ方は、流路が連続的に滑らかかつ広がり角度が10°以内であることが望ましい。
また、一実施形態のノズル10,20,30,40,102,210,310,410,510では、
上記出口細長部11,21,31,41,103,211,311,411,511と上記膨らみ部12,13,22,32,42,104,212,312,412,512で形成される流路は、断面を少なくとも2つに分割する複数の分岐流路からなり、
上記複数の分岐流路の断面積の比が略一定である。
単に、ノズルの流路を分割するための仕切板を設けるだけでは、仕切板自体が圧損体となってしまい、風量の減少や音の発生が生じる。これに対して、上記実施形態によれば、出口細長部11,21,31,41,103,211,311,411,511と膨らみ部12,13,22,32,42,104,212,312,412,512で形成される流路が、断面を少なくとも2つに分割する複数の分岐流路からなり、各分岐流路の断面積の比を略一定にすることによって、圧損を上昇させることなく、吹き出し方向(角度)のガイドとなって安定した方向に吹き出すことが可能となる。また、複数の分岐流路の吹き出し方向や風量の調整(断面積の比の調整)を行うことによって、流量,流速の違いをより顕著に設定できる。さらに、複数の分岐流路のうちのどの分岐流路に膨らみ部12,13,22,32,42,104,212,312,412,512を設けるかによって、流速の速い部分と遅い部分に区分することが可能である。
また、この発明の送風装置では、
上記のいずれか1つのノズル102と、
上記ノズル102の流路に風を送る送風手段111と
を備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、ノズル102の流路に送風手段111により風を送ることによって、吹き出しの風速を高めつつ到達距離を延ばすことができる。
また、この発明のヘアドライヤーでは、
上記のいずれか1つのノズル102と、
上記ノズル102の流路に風を送る送風ファン111と
を備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、送風ファン111からの風をノズル102の流路に送ることによって、吹き出しの風速を高めつつ到達距離を延ばすことができ、髪の毛へのダメージを抑えながら頭皮まで風を到達させることが可能になる。
また、この発明の空気清浄機では、
上記のいずれか1つのノズル210と、
空気清浄用フィルタ203と、
上記空気清浄用フィルタ203を介して吸い込んだ空気を上記ノズル210から吹き出す送風ファン205と
を備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、ノズル210の出口細長部211に設けられた膨らみ部212により、徐々に断面積を拡大することにより、膨らみ部のないノズルに比べて、圧力損失なく風を送出することができ、到達距離を延長することが可能である。また、送風ファン205の回転数を上げることなく吹き出しの風速を上げることができ、風量の低減や騒音の増大を極力抑えると共に、ノズル210の幅広の吹出口によって、面積の広い風が送風可能となる。また、吹き出しの風速の減衰が抑制されるため、到達距離が延びて吸塵速度が上昇する。
また、この発明の乾燥機では、
乾燥対象物を収容する槽302と、
上記槽302内の上記乾燥対象物を乾燥させるための加熱装置303と、
上記槽302内の空気を上記加熱装置303を介して循環させる循環経路と、
上記循環経路の出口側に設けられた上記のいずれか1つのノズル310と
を備えたことを特徴とする。
上記構成によれば、循環経路の出口側に設けられたノズル310からの吹き出し空気の風速を高めつつ到達距離を延ばすことができるので、加熱装置303により加熱された乾燥空気を槽302内の乾燥対象物に効率よく供給でき、乾燥運転の効率を向上できる。
また、この発明の縦型洗濯乾燥機では、
洗濯物を収容する縦型の洗濯槽402と、
上記洗濯槽402内の上記洗濯物を乾燥させるための加熱装置420と、
上記洗濯槽402内の空気を上記加熱装置420を介して循環させる循環経路と、
上記循環経路の出口側に設けられた上記のいずれか1つのノズル410,420,510と
を備え、
上記循環経路の出口側の上記ノズル410,420,510は、上記洗濯槽402の上部開口の上側かつ上記洗濯槽402の中心よりも径方向外側に、上記加熱装置420により加熱された乾燥空気を上記洗濯槽402内に向かって吹き出すように配置され、
上記ノズル410,420,510の上記膨らみ部412,512は、上記洗濯槽402の中心に対して径方向外側に向かって膨らんでいることを特徴とする。
上記構成によれば、循環経路の出口側に設けられたノズル410,420,510からの吹き出し空気の風速を高めつつ到達距離を延ばすことができる。また、洗濯槽402の上部開口の上側かつ洗濯槽402の中心よりも径方向外側に、加熱装置420により加熱された乾燥空気を洗濯槽402内に向かって吹き出すようにノズル410,420,510を配置すると共に、洗濯槽402の中心に対して径方向外側に向かって膨らむ膨らみ部412,512を設けたので、幅広い方向に十分な量の乾燥空気を吹き出す。これにより、加熱装置420により加熱された乾燥空気を洗濯槽402内の洗濯物に効率よく供給でき、乾燥運転の効率を向上できる。
また、一実施形態の縦型洗濯乾燥機では、
上記ノズル510の流路は、断面を少なくとも2つに分割する複数の分岐流路からなり、
上記複数の分岐流路のうち、少なくとも1つの分岐流路が上記洗濯槽402の中心側に向かって吹き出すように設けられ、少なくとも他の1つの分岐流路が上記洗濯槽402の底部に向かって吹き出すように設けられている。
上記実施形態によれば、ノズル510の流路の断面を少なくとも2つに分割する複数の分岐流路のうち、少なくとも1つの分岐流路を洗濯槽402の中心側に向かって吹き出すように設け、少なくとも1つの他の分岐流路を洗濯槽402の底部に向かって吹き出すように設けることによって、洗濯槽402の中央付近への送風と洗濯槽402の底部への送風とを分離して、洗濯槽402の底部への送風だけでは乾かすことができなかった中央側に送風することにより、乾燥ムラを低減できる。
また、一実施形態の縦型洗濯乾燥機では、
上記洗濯槽402の上部開口を覆う蓋部408と、
上記蓋部408の裏面側に設けられ、乾燥対象物を吊り下げるハンガー430を係止するためのハンガー係止部409と
を備え、
上記ハンガー係止部409に係止させた上記ハンガー430によって上記洗濯槽402内に吊り下げられた上記乾燥対象物に対して、上記加熱装置420により加熱された乾燥空気を上記ノズル410,420,510から吹き出す。
上記実施形態によれば、洗濯槽402の上部開口を覆う蓋部408のハンガー係止部409に掛けられたハンガー430により乾燥対象物を吊り下げて、その乾燥対象物を吊り下げた状態で乾燥運転を行うと、加熱装置420により加熱された乾燥空気をノズル410,420,510から吹き出して、被乾燥物を直に乾かす乾燥空気と、洗濯槽402の底部に吹き出し洗濯槽402内を循環する風の両者で乾燥対象物を包み込むことで、洗濯槽402の底部への送風だけの場合や洗濯槽402の中央付近への送風だけの場合と比較して、乾燥時間を短縮することができる。また、洗濯槽402内に吊り下げた状態で乾燥対象物を乾燥することにより、乾燥対象物の皺を伸ばすことができ、乾燥の仕上がりが良好になる。
また、一実施形態の縦型洗濯乾燥機では、
上記ノズル510の上記出口細長部の長手方向の寸法は、5cm以上かつ15cm未満である。
上記実施形態によれば、ハンガードライ(ハンガーに掛けた乾燥対象物の乾燥)やスポット乾燥などの運転時に、乾燥対象物を想定すると、ノズル510の出口細長部の長手方向の寸法が15cm以上になると、ハンガードライやスポット乾燥でも使えない部分が増加するので、風量当たりの乾燥効率が低下することになる。また、逆に5cm未満の場合には、一部にしか風が当たらないので、乾燥対象物を効果的に乾燥できない。したがって、ノズルの出口開口の長手方向の寸法を5cm以上かつ15cm未満に設定することで乾燥効率を向上できる。
また、一実施形態の縦型洗濯乾燥機では、
上記洗濯槽402の上部開口の上側かつ上記洗濯槽402の中心よりも径方向外側の一部の領域を覆うように設けられたカバー部440を備え、
上記ノズル410,510は、上記カバー部440の下側に配置され、
上記カバー部の縁から上記洗濯槽402の中心側への上記ノズル410,510の突出量は5mm以内である。
図28に示すノズルの突出量に対する洗濯物の引っ掛かり発生回数から明らかなように、ノズルの突出量が5mmを超えると、洗濯槽402内から洗濯物を取り出すときにノズルの突出部への引っ掛かりが多くなるために利便性が悪くなる。これに対して、上記実施形態によれば、洗濯槽402の上部開口の上側かつ洗濯槽402の中心よりも径方向外側の一部の領域を覆うように設けられたカバー部440の縁から洗濯槽402の中心側へのノズル410,510の突出量を5mm以内とすることによって、洗濯槽402内から洗濯物を取り出すときにノズル410,510の突出部への引っ掛かりを少なくできる。