JP6521942B2 - 樹脂変性フィラー、エポキシ樹脂組成物、およびその硬化物 - Google Patents
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Description
さらには、フリップチップタイプのパッケージにおいて、安価製造方法という側面からアンダーフィルを使用せず、一気に封止してしまうというMUFという手法が注目されている。本用途においてはチップとパッケージ基板の非常に狭い隙間を樹脂が通り抜ける必要があり、フィラーの微細化が重要となっており、この微細化により、系の粘度が上昇、ボイドの原因となる。
さらにはウエハーレベルパッケージなど再配線層に使用する封止樹脂や、ビルドアップ層に使用される相関絶縁膜等においては層の厚みが薄いこと、また線膨張率を下げるため、微細フィラーの充填が必要となる。したがって、本用途においても先と同様、系の低粘度が必要となる(非特許文献1)。
そこで、こういった用途に対し、結晶性のエポキシ樹脂の提供が検討されているが、樹脂自体のハンドリング特性が良くても溶融混練した後に結晶化が進まず、ベタツキを持つ場合がある。これは混練時に均一にしているつもりであっても、工業的な製造においては混練のクリアランスが大きく、均一に混練が難しいことから表面に樹脂塊が残ってしまい、これによるブロッキングが促進される等の問題が生じるためである。
このような従来の問題点に鑑み、本発明はエポキシ樹脂組成物の流動性に寄与し、耐ブロッキング性に優れた樹脂変性フィラー、それを用いたエポキシ樹脂組成物、その硬化物を提供することを課題とする。
すなわち本発明は、下記[1]〜[4]に関する。
[1] 無機フィラー(a)と、一分子内に平均2〜10個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(b)とを含む樹脂変性フィラーであって、
(a)と(b)の重量比が(a):(b)=70:30〜98:2であり、長径が5cm以下である樹脂変性フィラー。
[2] エポキシ樹脂(b)の軟化点が35〜75℃である[1]に記載の樹脂変性フィラー。
[3] [1]または[2]に記載の樹脂変性フィラーと、エポキシ樹脂用硬化剤および/または重合触媒とを含むエポキシ樹脂組成物。
[4] [3]に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
その粒径においては種々挙げられるが、その平均粒径が0.1〜100μmが好ましく、0.1〜60μmがより好ましく、特に0.1〜30μmが好ましい。平均粒径の測定としては、例えば、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製:LMS−30)等を使用して測定することができる。
尚、平均粒径はパッケージ形状によって選択することが好ましい。フリップチップタイプであれば、0.1〜10μmが好ましく、0.1〜5μmがより好ましい。また、ワイヤボンディングタイプであれば1〜30μmが好ましく、特には1〜25μmが好ましい。
また150℃における好ましい溶融粘度は0.2Pa・s以下である。溶融粘度が150℃よりも高いと成型性に課題が出る恐れがある。粘度が低ければ低いほど有用であるため、本発明においては下限を設けない(通常の粘度計では測定も困難となる。)
また本発明に使用するエポキシ樹脂のエポキシ当量は150〜750g/eq.であることが好ましく、特に好ましくは150〜500g/eq.である。本範囲内にあることで、組成物において流動性、硬化性が良好となる傾向にあり、またその硬化物において、耐熱性、熱分解特性、吸水特性、機械強度に優れる傾向にあり、良好な半導体装置の製造に好適に使用できる。
(a):(b)=70:30の比率と比べてフィラー量の割合が少なくなると、特に軟化点60℃以下のエポキシ樹脂を用いた場合、室温での取り扱いにおいてブロッキングが生じる可能性が高く、ハンドリングが非常に難しくなる。例えば軟化点50℃以下のエポキシ樹脂を用いた場合、細かく砕き、粒状、もしくはフレーク状もしくは小さなブロック状にすることも困難となる。すなわち、流動性、ハンドリング等の特性の面から(a):(b)=70:30〜98:2である。
好ましいカップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤;イソプロピル(N−エチルアミノエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、チタニウムジ(ジオクチルピロフォスフェート)オキシアセテート、テトライソプロピルジ(ジオクチルフォスファイト)チタネート、ネオアルコキシトリ(p−N−(β−アミノエチル)アミノフェニル)チタネート等のチタン系カップリング剤;Zr−アセチルアセトネート、Zr−メタクリレート、Zr−プロピオネート、ネオアルコキシジルコネート、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデカノイル)ベンゼンスルフォニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノエチル)ジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノフェニル)ジルコネート、アンモニウムジルコニウムカーボネート、Al−アセチルアセトネート、Al−メタクリレート、Al−プロピオネート等のジルコニウム、或いはアルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。
これらカップリング剤は1種又は2種以上を混合して用いても良い。
カップリング剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物において通常0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部が必要に応じて含有される。
溶剤の留去は減圧下で行われる。溶剤の留去温度は通常50〜200℃、特に好ましくは50〜180℃である。この際、残溶剤が1%以下であることが好ましく、これを超えた場合、成型時にボイド・剥離の原因となる場合がある。
なお、本発明においてその沸点が150℃以下のものが好ましく、特に130℃以下が好ましい。沸点が高すぎると残溶剤が残りやすく好ましくない。
本発明においては100μm以上の着磁金属異物は10gあたり1個以下であることが好ましく、さらに好ましくは30gあたり1個以下、特に50gあたり1個以下であることが好ましい。100gあたり1個以上着磁異物が混入した場合、出来上がった半導体装置に致命的な問題を与える恐れがある。
本発明の樹脂変性フィラーは、例えば、無機フィラー同士がエポキシ樹脂によって結着したフィラーや無機フィラーにエポキシ樹脂が含浸されているような状態で存在している。そして、このような樹脂変性フィラーの粒径について長径は5cm以下であり、0.1μm〜1cmが好ましく、0.3μm〜5mmがより好ましい。ここで、長径は、粒状、塊状または粉状の粒子の一番直径が長い箇所の直径を示し、測定方法としては、定規を使用して測定するか、測定したい一定の大きさの網目を有するメッシュを通過させて通過の有無を確認することで測定することができる。また、顕微鏡を使用して長径を測定することも可能である。尚、平均粒径としては、通常5cm以下であり、0.1μm〜1cmが好ましく、0.3μm〜5mmがより好ましい。測定方法は同様である。
本発明の樹脂変性フィラーの形状の例としては、従来のエポキシ樹脂と無機フィラーの混合物(全体で一体化して板状の形態をしている:図3)のものと比較すると各々図1〜2に示された形状である。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、硬化剤および/または重合触媒を必須成分として使用する。尚、さらに別途エポキシ樹脂を含有させることも考えられ、その場合、使用できるエポキシ樹脂は特に限定されないが、例えば前述したエポキシ樹脂を使用できる。
アミン系化合物、アミド系化合物;ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂などの含窒素化合物;
酸無水物系化合物、カルボン酸系化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、などの酸無水物;各種アルコール、カルビノール変性シリコーン、と前述の酸無水物との付加反応により得られるカルボン酸樹脂;
その他;イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体の化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。本発明においては特に信頼性の面からフェノール樹脂の使用が好ましい。
本発明においては、特に3級アミン類、フォスフィン類、4級フォスフォニウム塩等が好ましい。
なお、3級アミン類などのアミン系の化合物を重合触媒として使用する場合、硬化剤無に、または硬化剤量を既定の量より少ない量で硬化させても構わず、アニオン重合により硬化させても構わない。
光安定剤としては、ヒンダートアミン系の光安定剤、特にHALS等が好適である。HALSとしては特に限定されるものではないが、代表的なものとしては、ジブチルアミン、1,3,5−トリアジン、N,N’―ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、等が挙げられる。HALSは1種のみが用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
以下に実施例で用いた各種分析方法について記載する。
・エポキシ当量: JIS K 7236(ISO 3001)に準拠
・ICI溶融粘度: JIS K 7117−2(ISO 3219)に準拠
・軟化点: JIS K 7234 に準拠
溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)、エポキシ樹脂として軟化点52℃のオルソクレオゾールノボラックタイプのエポキシ樹脂(EP1:日本化薬製 EOCN−1020−52)、軟化点55℃のオルソクレオゾールノボラックタイプのエポキシ樹脂(EP2:日本化薬製 EOCN−1020−55)、軟化点52℃のビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(EP3:日本化薬製 NC−3000−L)、軟化点45℃のトリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(EP4:トリスフェノールメタン(本州化学工業製 TrisP−M)をグリシジルエーテル化したもの)、軟化点40℃のビスフェノールフルオレンエチレンオキサイド付加物のエポキシ化物(EP5:大阪瓦斯化学製)、無機フィラーとして溶融シリカ(瀧森製 MSR−2122)を用いて下記表1の組成で以下の操作を行った。
得られた樹脂変性フィラーを取り出し、試料をプラチナスパッタ後に樹脂包埋し、CP3.5kVで断面試料を作成後、SEM(無蒸着低真空 加速電圧10kV)にて試料を観察した結果、いずれも粒度が5.0cm以下の粒径であり、樹脂とフィラーが集まった形状をしていることを確認した。また、25℃下で1週間かけてブロッキングテストを行った。結果を表1に示す。
溶剤としてアセトンとメチルイソブチルケトン(1:1)溶液、エポキシ樹脂として軟化点58℃のビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(EP6:日本化薬製 NC−3000)、無機フィラーとして球状シリカ(アドマファイン1030 アドマテックス株式会社製 平均粒径0.3μm)を用いて溶液150、エポキシ樹脂10、球状シリカ90の組成(実施例8)、および溶液150、エポキシ樹脂20、球状シリカ80の組成(実施例9)で以下の操作を行った。
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、各々上記の組成で投入後、25℃で30分撹拌した。その後、ロータリーエバポレータで溶剤を留去し、最終的に、120℃で20torrの減圧下で溶剤が出てこなくなるまで留去した。
得られた樹脂変性フィラーを取り出し、試料をプラチナスパッタ後に樹脂包埋し、CP3.5kVで断面試料を作成後、SEM(無蒸着低真空 加速電圧10kV)にて試料を観察した結果、いずれも粒度が1mm以下の粒径であり、樹脂とフィラーが集まった形状をしていることを確認した。図4〜9より、樹脂とフィラーが混在しており、最表面がフィラーで覆われている様子がわかる。また、25℃下で1週間かけてブロッキングテストを行ったところ、いずれもブロッキング(樹脂同士が多数、互いにくっ付き合っている状態)は見られなかった。
なお、本出願は、2014年2月19日付で出願された日本国特許出願(特願2014−029097)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
Claims (3)
- 無機フィラー(a)と、一分子内に平均2〜10個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(b)とを含み、長径が5cm以下である樹脂変性フィラーの製造方法であって、
(a)はシリカゲルであって、
(b)として軟化点が35〜58℃のものを使用し、
(a)と(b)の重量比を(a):(b)=70:30〜98:2とし、(a)と(b)を溶剤と共に混練した後、減圧下、50〜200℃の温度で残溶剤を1%以下まで留去する樹脂変性フィラーの製造方法。 - 前記成分(a)の平均粒子径が0.1〜5μmである請求項1に記載の製造方法。
- 前記溶剤がケトン類である請求項1又は2に記載の製造方法。
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