以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の実施形態の一例について図1を参照して説明する。図1は同実施形態の説明に供する機能ブロック図である。
入力画像のデータ1が処理部2に入力され、処理部2で中間調データに変換される。中間調データは、処理部2から判別する手段及び算出する手段である判断部3に送られる。
判断部3は、駆動周期(印刷周期)ごとに、液体吐出ヘッド11の各ノズルの吐出の有無を判断するとともに、前回の吐出から今回の吐出までの吐出間隔を算出して、吐出を行うときに吐出間隔から駆動波形の補正が必要であるかを判断する。
なお、この場合、滴種(滴サイズ、滴の大きさ)の異なる2種類状の滴を使用する場合には、相対的に大きな滴について吐出の有無を判別するようにするができる。これにより、残留振動に影響を与えない小さな滴についてまで吐出の有無を判別し、滴の情報を記憶する必要がなくなり、処理が簡単になる。
記憶する手段である記憶部4は、印刷モードで使用する滴種の駆動波形、吐出間隔、前回と今回で吐出する滴(吐出滴)の吐出順に対応した駆動波形の補正テーブルと、各ノズルから吐出された最終の吐出滴の情報を記憶する。
最終の吐出滴の情報は、今回の駆動周期から見れば前回の吐出滴の情報となる。また、少なくとも2種類の大きさの滴を使用するときには各滴の種類の情報も記憶される。ただし、上記判断部3で吐出の有無を判別しない滴種があるときには、当該滴種の情報を記憶されない。
補正テーブルは、駆動波形の補正に用いる電圧倍率の補正値や駆動波形内で補正を実施する区間(領域)についての情報を格納している。
判断部3は、駆動波形の補正が必要である場合、該当ノズルから液体を吐出させる駆動波形について補正テーブルに応じて電圧補正を行う補正データを作成する。
制御部5は、判断部3より液体吐出ヘッド6の各ノズルについて液体を吐出させる駆動波形を受け取り、駆動周期のタイミングで、液体吐出ヘッド6の各ノズルについて圧力発生手段に対して駆動波形を与えて吐出及び非吐出を制御する。
ステージ7は、制御部5から信号を受け取って移動する。
液体吐出ヘッド6による吐出とステージ7による媒体の移動を繰り返すことで媒体上に画像が形成される。
本実施形態において、制御部5よりも上流側の各部でデータを作成する装置を構成し、制御部5より下流側の各部で液体を吐出する装置を構成しているが、液体を吐出する装置で各部を構成することもできる。
次に、本実施形態における駆動波形の補正データを作成する処理について図2のフロー図を参照して説明する。この補正処理は、本発明に係るプログラムに従ってコンピュータが実行する。
印刷データを受領し、印刷データに対して中間調処理を行って、各ノズルの駆動周期ごとの吐出滴の種類を表す中間調データ(ドットデータ)を作成する。
その後、該当ノズルの吐出の有無を判別する。
ここで、該当ノズルが吐出有りであるときには、該当ノズルの吐出間隔を算出し、算出した吐出間隔が予め定めた閾値以下であるか否かを判別する。なお、吐出間隔は、前回(直前)の吐出から今回の吐出までの間隔(例えば駆動周期数)である。
このとき、吐出間隔が閾値以下であるときには、前回(直前)の吐出滴と今回の吐出滴の滴種の組み合わせ順序から、補正テーブルを使用して、駆動波形の補正量(電圧補正値:補正倍率を使用する。)を決定する。
すなわち、吐出間隔があいており、残留振動の影響が今回の吐出に及ばないときには駆動波形の補正を行わない。
そして、決定した補正量に従って該当ノズルに与える、滴を吐出させる駆動波形の電圧値を補正する。すなわち、個々のノズルについて吐出間隔から個別的に駆動波形の電圧(電圧値)を補正する。
その後、該当ノズルの駆動波形を生成し、該当ノズルに対応する圧力発生手段に与えて該当ノズルから滴を吐出させて印刷する。
次に、駆動波形の電圧補正方法の第1例について図3を参照して説明する。図3は同説明に供する駆動波形の異なる補正結果を示す説明図である。
ここでは、3つの駆動パルスP1、P2、P3で、滴を吐出させる1つの駆動波形(滴を吐出させる駆動波形を「吐出駆動波形」という。)を構成している。駆動パルスP1、P2、P3は、いずれも中間電位Veから立ち下がる波形要素aと、波形要素aの立ち下がり電位を保持する波形要素bと、保持電位から中間電位Veに立ち上がる波形要素cとで構成されている。なお、各パルスP1〜P3は波形要素aの立ち下がり電位は同じではないが、同じにすることもできる。
連続する駆動周期おける駆動波形の波形間、1つの駆動波形を構成する各駆動パルス間においては、同じ電位である中間電位(基準電位)Veの電圧に保持され、連続吐出を行うときに異なる吐出駆動波形が直前や直後につながる場合や各駆動パルスにマスク処理をかけて1つ駆動波形から複数の吐出駆動波形を生成する場合に、波形やマスクの切り替えのタイミングで急激な電圧変化がないようにされている。
図3(a)では、吐出駆動波形に対して電圧方向に正の補正倍率を乗じて、一律に波高値の大きさを変化させている。また、図3(b)では、吐出駆動波形に対して電圧方向に負の補正倍率を乗じて、一律に波高値の大きさを変化させている。
このとき、電圧補正を行うことで、駆動波形を構成する駆動パルスの長さが変化しないように、同位の電圧を保持する時間(波形要素bの時間など)は固定とし、波形要素bの立ち上げの傾きと、波形要素aの立ち下げの傾きを変化させている。
また、中間電位Veは変化させないので、電圧補正を行うことで、各駆動パルスの中間電位Veに対する電圧差が大小に変化する。
そこで、中間電位Veとの電圧差が大きくなる場合を波高値が大きくなると表現すると、補正倍率が正の場合には、補正のない場合に比べて、波高値が大きくなり、滴速度や滴体積が増加する。一方、補正倍率が負の場合には、補正のない場合に比べて、波高値が小さくなり、滴速度や滴体積が減少する。
次に、駆動波形の電圧補正方法の第2例について図4を参照して説明する。図4は同説明に供する駆動波形の補正結果を示す説明図である。
ここでは、吐出駆動波形の一部の区間(領域)で電圧値を補正している。
この例では、3つの駆動パルスP1、P2、P3で1つの吐出駆動波形を構成している。そして、補正区間(補正を行う領域)は先頭の駆動パルスP1のみとし、駆動パルスP1の波高値が大きくなるように正の補正倍率で補正を行っている。なお、補正区間は、前述したように記憶部4に記憶されている。
ここでも、電圧補正について、駆動波形を構成する駆動パルスの長さが変化しないよう、波形要素bの保持時間や中間電位Veは変化させないで、波形要素bの立ち上げの傾きと、波形要素aの立ち下げの傾きを変化させている。
この例は、滴種が混在する滴を連続して吐出するときなど、直前の滴の残留振動によって今回の吐出滴が安定して吐出しないとき、最初の駆動パルスP1による滴の滴速度を上げて吐出させる。また、補正について、負の補正倍率の補正を強くした場合には、当該駆動パルスで圧力発生手段が駆動しないようにすることができ、当該ノズルを非吐出にすることができる。
次に、倍率補正による連続吐出時の滴速度の補正について図5を参照して説明する。
ここでは、駆動波形として、図5(a)に示すように、非吐出駆動波形と、吐出駆動波形Paを使用するものとする。なお、ここでの、駆動波形は、図3、図4の駆動波形(圧電アクチュエータを使用する場合の引き−押し打ちの駆動波形)と異なり、基準電位に対して電位が高くなることで滴を吐出させる波形(圧電アクチュエータを使用する場合の押し打ちの駆動波形)である。
また、図5における記録周期は吐出間隔と同義であり、印刷を行うときに、各ノズルが画像に応じてどれくらいの時間間隔で吐出するかを表すものである。駆動周期は、ある印刷モードにおいて、波形を設けることのできる時間間隔であり、最小時間間隔の記録周期が駆動周期となる。
まず、図5(c3)に示すように、連続する駆動周期のうち、先行の駆動周期では滴を吐出させないで、後行の駆動周期でのみ吐出駆動波形Paを与える場合には、図5(b)に示すように、滴速度Vjは目標滴速度Vjaに近い速度となる。
これに対し、図5(c1)に示すように、連続する駆動周期で同じ吐出駆動波形Paを与えてノズルから連続して滴を吐出すると、図5(b)に示すように、後行の駆動周期の吐出駆動波形Paで吐出される滴の滴速度Vjが、目標滴速度Vjaよりも速くなる。
そこで、図5(c2)に示すように、連続する駆動周期で滴吐出を行うとき、先行する駆動周期の吐出駆動波形Paに続いて与える後行の駆動周期の吐出駆動波形としては、吐出駆動波形Paに負の補正倍率を乗じて波高値を小さくした吐出駆動波形Pa1を使用して滴を吐出させる。このように波高値が小さい吐出駆動波形Pa1で滴を吐出させることにより、滴速度Vjが遅くなって目標滴速度Vjaに近づけることができる。
このときの補正は、予めメニスカスを揺れ動かす構成でないので、組み合わせで必要な補正量を見積もることで多値(なし、小滴、中滴、大滴の組み合わせなど)の印刷モードでも補正が可能である。
このようにして、波形長を長くすることなく、残留振動による影響を低減することができる。
ここで、比較例における連続吐出時の滴速度の補正について図6を参照して説明する。
ここでは、駆動波形として、図6(a)に示すように、非吐出駆動波形と、吐出駆動波形Paと、滴を吐出しない程度にメニスカスを揺らす微駆動波形Pbを使用するものとする。
まず、図6(c1)に示すように、連続する駆動周期で、同じ吐出駆動波形Paを与えてノズルから連続して滴を吐出すると、図6(b)に示すように、2つ目の吐出駆動波形Paで吐出される滴の滴速度Vjも目標滴速度Vjaに近い速度が得られる。
この構成では、図6(c3)に示すように、連続する駆動周期のうち、後行の駆動周期でのみ吐出駆動波形Paを与えて滴を吐出する場合には、図6(b)に示すように、滴速度Vjは目標滴速度Vjaよりも遅くなる。
そこで、この比較例では、図6(c2)に示すように、連続する駆動周期のうち、後行の駆動周期でのみ吐出駆動波形Paを与えて滴を吐出する場合には、先行の駆動周期で微駆動波形Pbを与えた後、後行の駆動周期で吐出駆動波形Paを与えることで、後行の駆動周期で吐出する滴の滴速度Vjを速めて目標滴速度Vjaに近づけるようにしている。
次に、この比較例において、滴種(滴サイズ)の異なる2種類以上の滴を吐出する場合について図7を参照して説明する。
ここでは、駆動波形として、図7(a)に示すように、2つの駆動パルスで構成される大滴用吐出駆動波形Pcと、1つの駆動パルスで構成される小滴用吐出駆動波形Pdを使用するものとする。
連続する駆動周期において、図7(c1)に示すように、大滴用吐出駆動波形Pcを与えて連続して大滴を吐出した場合と、図7(c2)に示すように、先行の駆動周期で小滴用吐出駆動波形Pdを与えて小滴を、後行の駆動周期で大滴用吐出駆動波形Pcを与えて大滴を吐出させた場合とでは、後行の駆動周期における大滴の滴速度Vjが異なる。つまり、先行の駆動周期で小滴を吐出した場合は、大滴を吐出した場合に比べて滴速度Vjが遅くなる。
なお、図7(c3)には、先行の駆動周期は非吐出で、後行の駆動周期が大滴である場合を示している。
このように、比較例では、滴種が異なる滴を連続して吐出するときと、同じ滴種の滴を連続して吐出する場合とでは滴速度にばらつきが生じる。また、小滴吐出後に小滴用吐出駆動波形Pdを用いてメニスカスを所望の状態に揺らすことができる場合であっても、大滴吐出前に小滴用吐出駆動波形Pdを挿入するために波形長が長くなり、生産性が低下することになる。
これに対し、本発明では、上述したように、別途メニスカスを揺れ動かすための駆動波形を挿入しないので、波形長が長くなることがなく、生産性の低下を抑制できる。
次に、倍率補正による連続吐出時の滴体積の補正について図8を参照して説明する。
ここでは、駆動波形として、図8(a)に示すように、非吐出駆動波形と、吐出駆動波形Paを使用するものとする。
まず、図8(c3)に示すように、連続する駆動周期のうち、先行の駆動周期では滴を吐出させないで、後行の駆動周期でのみ吐出駆動波形Paを与える場合には、図8(b)に示すように、滴体積Mjは目標滴体積Mjaに近い体積となる。
これに対し、図8(c1)に示すように、連続する駆動周期で同じ吐出駆動波形Paを与えてノズルから連続して滴を吐出すると、図8(b)に示すように、後行の駆動周期の吐出駆動波形Paで吐出される滴の滴体積Mjが、目標滴体積Mjaよりも大きくなる。
そこで、図8(c2)に示すように、連続する駆動周期で滴吐出を行うとき、先行する駆動周期の吐出駆動波形Paに続いて与える後行の駆動周期の吐出駆動波形としては、吐出駆動波形Paに負の補正倍率を乗じて波高値を小さくした吐出駆動波形Pa1を使用して滴を吐出させる。このように波高値が小さい吐出駆動波形Pa1で滴を吐出させることにより、滴体積Mjが小さくなって目標滴体積Mjaに近づけることができる。
このときの補正は、予めメニスカスを揺れ動かす構成でないので、組み合わせで必要な補正量を見積もることで多値(なし、小滴、中滴、大滴の組み合わせなど)の印刷モードでも補正が可能である。
特に、媒体の搬送速度が遅いが、滴の体積差が画質として問題になりやすいような、高解像度を少量の滴で埋める印刷モードではこのように滴体積を基準とする補正を行うことが有用である。
次に、駆動周期と滴速度及び滴体積の関係の一例について図9を参照して説明する。
滴体積Mjは、滴吐出後のリフィル周期に依存し、滴速度Vjは滴吐出によるメニスカス振動に依存するため、記録周期との関係に差異が生じる。差異が大きい記録周期では、滴速度Vjと滴体積Mjの関係と、補正が必要な項目に補正効果の高い倍率の倍率値(補正倍率)とする。
次に、補正テーブルの一例について図10を参照して説明する。
この補正テーブルでは、前回吐出した滴の種類と今回吐出する滴の種類の組み合わせと、吐出間隔が最高駆動周波数に対応する周期であるとき、吐出間隔が最高駆動周波数の1/2の駆動周波数に対応する周期であるとき、吐出間隔が最高駆動周波数の1/4の駆動周波数に対応する周期であるときと、の組み合わせについて、それぞれ補正倍率を定めている。
大滴と小滴の組み合わせと吐出間隔に応じて補正量(補正倍率)を変化させている。また、組み合わせによって残留振動の影響が小さいものは補正を行わないことから、駆動波形の補正を行わない条件については補正倍率(倍率値)を0%にしている格納している。
次に、本実施形態による画像上での印刷品質への補正効果をについて図11を参照して説明する。
本実施形態に係る補正を行わない場合には、図11(a)に示すように、連続吐出の滴の滴速度が速くなり、着弾位置が搬送方向の上流側にずれる。また、滴の体積も増加して媒体上のドット径が大きくなる。
これに対し、本実施形態に係る補正を行った場合には、図11(b)に示すように、連続吐出の滴の駆動波形の電圧を補正することで、着弾位置とドット径が先頭滴とほぼ同じ滴速度と滴体積になるようにすることができ、媒体上で、ほぼ均一なサイズのドットを正確な着弾位置に形成できる。
次に、本実施形態による補正タイミング(データ量)への補正効果について図12を参照して説明する。
画像データをドットデータに変換する中間調処理により各ノズルの吐出間隔と直前(前回)の吐出滴との組み合わせを計算可能である。
しかしながら、画像データと同時に補正計算を実施した場合、図12(b)に示すように、画像の中間調データと補正倍率データを送信する必要がある。中間調データが4値で2bitのデータ量であっても、補正テーブルが12種類であれば、1画素当たりで8bitのデータとなり、大量のジョブを生成する必要があるときに印刷開始までのデータ転送待機時間が長くなる。
これに対し、本実施形態では、図12(a)に示すように、吐出状態をリアルタイムで検知しながら補正を行うことで、転送時間を短くすることができる.ここでリアルタイム検知とは,ホスト側や液体を吐出する装置側で生成した中間調処理済みのデータに対して,記録ヘッド側で中間調処理データを受信するタイミングで各ノズルに必要な補正を実施する処理である.
次に、本発明による補正タイミング(印字中のジョブ転送時間)への補正効果について図13を参照して説明する。
ここでは、ジョブ1とジョブ2が転送済みの状態でジョブ3を印字中に追加する場合を示している。
本実施形態のように、印字データと補正データを同時生成する場合、画像データに応じて、予め補正倍率を計算した結果も転送データに含ませることができる。
ジョブ3の追加タイミングがジョブ1の終了直前であった場合、転送データが大きくなるほどジョブ3の印刷開始までの時間がかかってしまうことになる。
本実施形態では、リアルタイム検知を行うことで、追加ジョブがある場合の転送時間を短縮でき、追加ジョブの転送による印刷の待ち時間を短縮できる。
次に、液体吐出ヘッドを備える液体を吐出する装置の一例について図14を参照して説明する。図14同装置の機構部の平面説明図である。
この装置は、シリアル型装置である。左右の側板に架け渡した主ガイド部材401などでキャリッジ403を主走査方向に移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して主走査方向に往復移動する。
このキャリッジ403には、液体吐出ユニット404が搭載されている。液体吐出ユニット404は、液体吐出ヘッド434a、434b、ヘッドタンク435a、435bをそれぞれ一体化したものである。
ここで、液体吐出ヘッドヘッド434a、434b(区別しないときは、「ヘッド434」という。)は、それぞれ複数のノズルを配列した2つのノズル例を有している。
そして、例えば、液体吐出ヘッド434aの一方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、他方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を吐出するように割り当てられている。また、液体吐出ヘッド434bの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を吐出するように割当てられている。
なお、液体吐出ヘッドとしては、例えば、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータを用いることができる。
そして、装置本体側には、各色の液体を収容したメインタンク450(450y、450m、450c、450k)が交換可能に装着されるカートリッジホルダ451が配置されている。このカートリッジホルダ451には送液ポンプ部452が設けられ、メインタンク450から送液ポンプ部452によって各色の供給チューブ(液体供給経路ともいう。)456を介して各ヘッドタンク435に各色の液体が供給される。
一方、用紙Pを搬送するために、用紙Pを静電吸着して液体吐出ユニット404に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト412を備えている。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413とテンションローラ414との間に掛け渡されている。
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。この搬送ベルト412は、周回移動しながらここでは図示しない帯電ローラによって帯電(電荷付与)される。
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド434の維持回復を行う維持回復機構420が配置され、他方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド434から空吐出を行う空吐出受け428がそれぞれ配置されている。
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド434のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングする吸引キャップ421、ノズル面を払拭するワイパ部材422、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出受け423などで構成されている。
また、キャリッジ403の主走査方向に沿って両側板間に、所定のパターンを形成したエンコーダスケール483を張り渡し、キャリッジ403にはエンコーダスケール483のパターンを読取る透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ484を設けている。これらのエンコーダスケール483とエンコーダセンサ484によってキャリッジ403の移動を検知するリニアエンコーダ(主走査エンコーダ)を構成している。
また、搬送ローラ413の軸にはコードホイール485を取り付け、このコードホイール485に形成したパターンを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ486を設けている。これらのコードホイール485とエンコーダセンサ486によって搬送ベルト412の移動量及び移動位置を検出するロータリエンコーダ(副走査エンコーダ)を構成している。
この装置においては、用紙Pが帯電された搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド434を駆動することにより、停止している用紙Pに液滴を吐出して1行分を記録する。そして、用紙Pを所定量搬送後、次の行の記録を行う。
記録終了信号又は用紙Pの後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙Pを図示しない排紙トレイに排紙する。
次に、液体吐出ヘッドの一例について図15及び図16を参照して説明する。図15は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)の断面説明図、図16は同じくノズル配列方向(液室短手方向)の断面説明図である。
この液体吐出ヘッドは、ノズル板101と、流路板102と、振動板部材103とを接合している。そして、振動板部材103を変位させる圧電アクチュエータ111と、共通流路部材としてフレーム部材120とを備えている。
これにより、液滴を吐出する複数のノズル104に通じる個別液室(圧力室、加圧室などとも称される。)106、個別液室106に液体を供給する流体抵抗部を兼ねた液体供給路107と、液体供給路107に通じる液導入部108とを形成している。隣り合う個別液室106はノズル配列方向で隔壁106Aによって隔てられている。
そして、フレーム部材120の共通流路としての共通液室110から振動板部材103に形成したフィルタ部109を通じて、液導入部108、液体供給路107を経て複数の個別液室106に液体を供給する。
圧電アクチュエータ111は、振動板部材103の個別液室106の壁面を形成する変形可能な振動領域130を挟んで、個別液室106とは反対側に配置されている。
この圧電アクチュエータ111は、ベース部材113上に接合した複数の積層型圧電部材112を有している。圧電部材112にはハーフカットダイシングによって溝加工して、駆動波形を与える柱状の圧電素子(圧電柱)112Aと、支柱112Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
そして、圧電素子112Aを振動板部材103の振動領域130に形成した島状の凸部103aに接合している。また、支柱112Bを振動板部材103の凸部103bに接合している。
この圧電部材112は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極が設けられ、圧電素子112Aの外部電極に駆動波形を与えるための可撓性を有するフレキシブル配線基板としてのFPC115が接続されている。
フレーム部材120には、ヘッドタンクや液体カートリッジから液体が供給される共通液室110が形成されている。
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば圧電素子112Aに印加する電圧を基準電位Veから下げることによって圧電素子112Aが収縮し、振動板部材103の振動領域130が下降して個別液室106の容積が膨張することで、個別液室106内に液体が流入する。
その後、圧電素子112Aに印加する電圧を上げて圧電素子112Aを積層方向に伸長させ、振動板部材103の振動領域130をノズル104方向に変形させて個別液室106の容積を収縮させる。これにより、個別液室106内の液体が加圧され、ノズル104から液体が吐出(噴射)される。
そして、圧電素子112Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材103の振動領域130が初期位置に復元し、個別液室106が膨張して負圧が発生するので、共通液室110から液体供給路107を通じて個別液室106内に液体が充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の吐出のための動作に移行する。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
次に、同装置の制御部の概要について図17のブロック説明図を参照して説明する。
この制御部500は、装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501が実行するプログラムを含む各種プログラムなどの固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503とを含む主制御部500Aを備えている。
また、制御部500は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
また、制御部500は、液体吐出ヘッド434を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ403側に設けた液体吐出ヘッド434を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509とを備えている。
また、制御部500は、キャリッジ403を移動走査する主走査モータ405、搬送ベルト412を周回移動させる副走査モータ416、維持回復機構420の吸引キャップ421やワイパ部材422の移動、吸引ポンプの駆動などを行なう維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510を備えている。
また、制御部500は、搬送ベルト412を帯電させる帯電ローラ415にACバイアスを供給するACバイアス供給部511と、送液ポンプ521を駆動する供給系駆動部512などを備えている。
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
また、制御部500は、ホスト600側のプリンタドライバ601などとデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、画像読み取り装置、撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する。
この印刷制御部508は、ROM502に格納されている駆動波形のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含む。そして、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ509に対して出力する。
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される液体吐出ヘッド434の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択して液体吐出ヘッド434の圧力発生手段に対して与える。これにより、液体吐出ヘッド434を駆動する。
印刷制御部508及びヘッドドライバ109によって、ノズル104数だけ圧力発生手段(上記のヘッドでは圧電アクチュエータ)に与える駆動波形を生成出力している。なお、ノズル毎の駆動波形の生成出力は、主制御部500A側で行うこともできるし、あるいは、キャリッジ33側に同様の駆動波形生成手段を設けることによっても行うことができる。
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、この画像形成装置の制御に必要な情報を抽出し、各種の制御に使用する。
この制御部500においては、液体吐出ヘッド434の各ノズル104に対応する圧力発生手段としての圧電アクチュエータ111に与える吐出駆動波形のデータがROM502に格納されている。そして、このROM502から読み出す吐出駆動波形のデータに対して、各ノズル104毎に補正データに従って電圧値を補正する処理を施し、印刷制御部508によって各ノズル104毎の吐出駆動波形データを生成して出力する。
また、ホスト600側には、前記実施形態における駆動波形の補正データの作成に係わる処理をコンピュータに行わせるためのプログラムを有し、ホスト600側で中間調データを作成するときに補正データも作成して、液体を吐出する装置に与えている。
なお、液体を吐出する装置側で、ホスト600から与えられる印刷データから吐出間隔を算出して吐出駆動波形を補正する補正データを作成する処理をプログラムに従ってコンピュータ(主制御部500A)が行うこともできる。
本願において、「液体を吐出する装置」とは、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置である。
この「液体を吐出する装置」には、液体を吐出する部分だけでなく、液体が付着する部材の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
また、「液体を吐出する装置」には、従前の記録装置、印刷装置、画像形成装置、液滴吐出装置、液体吐出装置、処理液塗布装置、立体造形装置などと称される装置そのものが含まれる。
また、「液体を吐出する装置」は、吐出されて付着した液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
なお、上記「液体が付着するもの」とは液体が一時的にでも付着可能なものを意味する。そして、「液体が付着する部材」の用語に代えて、用紙、媒体、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙、粉体層(粉末層)などの代替用語を使用するとき、当該代替用語は、特に限定しない限り、すべての液体が付着する部材を含む意味であるものとする。
また、「液体が付着する部材」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤なども含まれる。
また、「液体を吐出する装置」には、特に限定しない限り、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
また、「液体吐出ユニット」とは、液体を吐出させる部分を一体化したものを意味する。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持機構、主走査移動機構の構成を任意に液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
例えば、「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドとヘッドタンクを一体化したもの、液体吐出ヘッドとキャリッジを一体化したもの、液体吐出ヘッド、ヘッドタンク及びキャリッジを一体化したものなども含まれる。
また、これらの液体吐出ユニットにフィルタユニットを追加したものも含まれる。
また、液体吐出ヘッドと維持機構を一体化したもの、液体吐出ヘッドと維持機構と主走査移動機構を一体化したもの、液体吐出ヘッド、主走査移動機構、供給機構を一体化したものなども含まれる。
上記主走査移動機構は、キャリッジ、キャリッジを案内するガイド部材、あるいは、これらに駆動源、キャリッジの移動機構を組み合わせて構成される。供給機構は、メインタンクを装着する装填部、チューブと、ヘッドタンクなどで構成される。維持機構は、キャップ、ワイパ部材、キャップに通じる吸引ポンプなどの吸引手段、空吐出受けのいずれか2以上を組み合わせたものである。
さらに、「液体吐出ユニット」には、前記実施形態で説明した機構部から液体が付着するものを搬送する機構を除いた部分で構成されるものを含む。
また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上記実施形態で説明したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。